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介護現場における『営業の基本』

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<著者> 株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記  「利用者を増やし、稼働率をあげるにはどうしたら良いか?」という相談が介護事業者からは寄せられます。介護保険が施行され22年経ちましたが、介護現場で活躍する方のなかには、「営業」という言葉に馴染めない人も多いと思います。今回は、「営業の基本」について紹介します。 1.営業の3原則 ⑴営業は「間接営業」  私達にとってお客様は2種類にわけられます。一方は直接サービスを使う「お客様」、もう一方は、そのお客様を紹介して下さる取引先としての「お客様」です。特に、取引先の信認や評判に関わるリスクを回避するよう努めることが営業の第一歩です。 ⑵営業は「数」と「質」  重要なポイントを逃して「数」ばかりに目を向けた営業を繰り返しても顧客紹介には至りません。また、「内容」ばかりに目を向けて件数が少なければ、顧客紹介の確率も一向に上がりません。常に、数と質の両方を追求する姿勢を持ってください。 ⑶「印象」→「内容」→「信頼」→「紹介」  顧客紹介に繋げるためには、まず、私たちが担当者に「良い第一印象」を持ってもらえるように対応して信頼を得ることが不可欠です。その後のサービス提供をきちんと実施することはもちろんのこと、「継続フォロー」としての「報告・連絡・相談」があってこそ、磐石な関係が構築されるのです。 2.営業の基本 ~日々の心がけで顧客のニーズ掘り起こし~ ⑴第一印象は、「0.6秒」で決まる!  会って最初の一瞬で印象は決まってしまいます。髪形・服装・身だしなみ・振舞い・声のトーンなど、最初の一瞬を大事にしましょう。 ⑵PUSH型(サービス売込型)の営業は止めましょう!  自分の担当しているサービスの売込に注力しすぎると、取引先担当者が発している顧客ニーズを見逃してしまいがちです。過度な売込は止めましょう。 ⑶「エピソードトーク」(成功事例)は5つ以上用意する!  私たちと取引先担当者が最も共感を得られるのは、お客様やサービスに関する話題です。  「どのサービスを、どのように利用して、どのようにお客様の自立支援に結びついたのか」など、最低でも5つ以上の成功事例を用意し、訪問先の状況(担当者のタイプや地域性)に合わせた事例を伝えます。  当然、お客様のプライバシー保護と、嘲笑・侮蔑に感じられることのないよう配慮することは絶対条件です。具体的なイメージを元にした話を進めることが、担当者との心理的な距離を縮めるきっかけとなります。 ⑷スケールメリットや数の論理を前面に出さない!   謙虚に進めていく為にも、スケールメリットを前面に出した話は厳禁です。あくまで「地域において、皆様に支えられながら事業展開させて頂いている」という認識で話しましょう。 ⑸「ありがとうございます」を意識!  「ありがとうございます(お礼)」と「すみません/申し訳ありません(謝罪)」は、違う言葉として使い分けてください。「今日は、お忙しいところお時間を頂いて○○○○○」。  皆さんは○に当てはまる言葉はどちらを使っていますか?ほとんどの方は何気なく「すみません/申し訳ありません」を使いがちです。全ての場面において、「ありがとうございます!」を心がけて使うようにして下さい。相手の反応が変わり、自分の心理状況も大きく変化します。 ⑹会話のキャッチボールを心がける!  一方的に話をするよりは、様々な話題で会話が弾むことが重要です。話題として最も良いのは、お客様自身のことや介護保険などであることを忘れないでください。  難しいサービスのことではなく、今、目の当たりにしているお客様の状況を仮定し、ニーズの掘り起こしを進めましょう。その中で、「担当者が気づいていなかった」「担当者が最も重視していた」内容に合致することで、担当者との連帯感は格段に上がります。 3.営業の基本 ~コミュニケーションの一工夫で信頼関係構築~ ⑴相手にとことん集中!  話を進める上で、最も重要なのが「相手が何に興味を持っているか」を見極めることです。相手の「目の動き」「手の動き」「メモの取り方」「質問の進め方」などにその兆候が顕著に現れます。  それらを見逃さないためには、例えば資料やタブレット端末を使って説明する際にも、相手に目を配りながら話を進めることが必要です。その準備として、説明の内容は完全に把握しておく必要があります。時間を忘れるくらい、とことん相手に集中しましょう。 ⑵「なるほどね」「そうそう」などの種類の反応はチャンス! 「驚き・発見・共感」などの意思表示が見られた場合、その日の訪問営業は概ね成功です。  逆に、このような反応を引き出すためには地域で起こった事や介護保険関連のニュースなど、様々な話題の引出しを持って面談に臨む必要があります。 ⑶「~ですか?」よりも「~ですよね」形式!  相手に対して判断を仰ぐ質問は、答えをネガティブにさせる傾向があります。反対に、相手に同意を求める形式の内容は、よほど大きく否定される内容ではない限り、「そうねぇ」から「そうそう」まで肯定的な返答を導き出しやすいものです。  また、最初の質問であればあるほど、ある程度抽象的な質問の方が、ポイントを小さく絞った質問より、簡単に返答いただけることが多いです。  例えば、「グループホームに興味を持たれているお客様はいらっしゃいますか?」と言う質問よりも、「認知症をお持ちのお客様、いらっしゃいますよね」のほうが、肯定的で、次に続く返答を導きやすいものです。 ⑷「YES・NO」形式で返答できる簡単な質問から!  一種の「フット・イン・ザ・ドア」テクニックの応用として、「簡単な承諾=小さな答えの導き出し」を繰り返すことで、大きな情報の引出しやサービスに依頼に繋げることができます。  最初に「YES」と答えた相手は、次の依頼に対して否定する確率が数段下がってくることは、科学的に証明されています。  例えば、お客様に関する情報を引き出す際、「担当CM名」や「要介護度」などの個人情報の核心に迫る質問よりは、「男性の方ですか?」といった限りなく一般的な質問のほうが、応えて頂き易いものです。 ⑸「両面呈示」の説得力!  聞かれて都合の悪い点(デメリットなど)は、こちらから話をすることで説得力が増すことがあります。  物事には、全てメリットとデメリットがあります。しかし、サービスを利用して頂きたいと思うあまり、そのメリットの面しか話さない場合があります。これを片面(一面)呈示と呼びます。  しかし、説得力のある話をする場合には、デメリットも敢えて呈示することの方が効果的です。  例えば、洋服を買いに行った時、全ての商品が「お似合いですよ!」と言う販売員よりも、「こちらの柄は、あまりお顔映りが良くないですね」と、ある程度のネガティブな情報を呈示する販売員の方が信用したくなるのではないでしょうか。  但し、信頼を損なうと判断される可能性のある情報を、むやみに呈示することは却ってマイナスになる場合があるので、必ずカウンターパートとなるポジティブ情報を吟味して活用して下さい。 ⑹一度会えたからといって窓口を増やすのはご法度!  営業していると、話を聞いてくれる取引先とそうではない取引先に分かれます。話を聞いてくれる取引先は「好印象で関係が出来ている」と思いがちで、次々と違う担当者を連れて同行営業を重ねる人がいます。これは、タイミングを間違うと、折角出来つつある関係を崩す危険性がありますので注意してください。  日々の営業活動で、まずはできることから始めてみましょう!

スタッフが退職しやすいタイミングと退職を防ぐモチベーションアップ策

スタッフが退職しやすいタイミングと退職を防ぐモチベーションアップ策

<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 人材の確保は歯科医院にかぎらず、あらゆる業界に当てはまる経営課題となっていますが、確保した人材に定着してもらうことも重要です。その裏返しとして「離職防止策」があります。退職しやすいタイミングを見計らった対策も講じる必要があるようです。 また、スタッフの退職理由は「仕事や職場への不安」「組織からの評価」「将来のキャリア」など、職歴に応じて変化していきます。スタッフの属性に合わせたモチベーションアップ策が必要になるようです。  スタッフがなかなか定着してくれないというお悩みを多くの院長から伺います。苦労して採用したスタッフが半年もしないで退職してしまったり、一人前になったスタッフが他のクリニックへ転職してしなったりして困っているというのです。 スタッフの退職は医院にとって痛手であるだけでなく、スタッフ自身にとっても早期退職や転職を繰り返すことは、キャリアを積むうえでマイナスになります。 目次 01:スタッフが退職しやすいタイミング 02:入職3カ月以内の新人の場合 03:入職2~3年目の中堅スタッフの場合 04:入職5年以上のベテランの場合 05:スタッフの成長段階によって対応が変わってくる 06:退職を防ぐモチベーションアップ策 07:入社3カ月以内のスタッフへの対応法 08:入社後2~3年目のスタッフへの対応法 09:入社5年以上経過したスタッフへの対応法 10:まとめ スタッフが退職しやすいタイミング 一般的に、入職後3カ月以内、入職後3年のタイミングでの退職が多いと言われているほか、勤続が長いベテランスタッフが退職する場合もあります。それぞれの原因を整理してみます。 入職3カ月以内の新人の場合 入社したてのスタッフは不安と緊張でいっぱいです。職場にも仕事にも慣れていません。先輩が声を掛けてフォローしてくれる職場であればすぐに溶け込み、仕事も少しずつ慣れていきますが、放っておかれるような職場であれば、自分の居場所が見つけられず、すぐに退職してしまいます。また、採用時と入社後の条件が違った場合にも、早期退職します。 入職2~3年目の中堅スタッフの場合 仕事を一通りできるようになり、一人前との戦力として認めて欲しい時期です。この時期に、院長や先輩スタッフが出来ていない事を注意し、指導ばかりしていると、いつまでたっても認めてくれないと職場への不満がたまり、仕事への意欲も低下してしまいます。 入職5年以上のベテランの場合 歯科医院のなかで見本となり、後輩の指導を期待される時期です。一方で仕事への慣れとマンネリ感も出てくるため、常に「このままここで働き続けていいのか……」という悩みを抱えている可能は高いです。そのような時に、院長が「あなたなら出来て当たり前」という態度で接していると、スタッフは評価されているのか、何を期待されているのかわからず、モチベーションが下がっていきます。 スタッフの成長段階によって対応が変わってくる このように、スタッフの不安や不満、意欲の低下は、マズローの欲求段階説で考えると理解しやすくなります。心理学者マズローは、人間の欲求には5段階あると提唱しました(*図1)。 ①の入社3カ月以内のスタッフは安全欲求の段階にあります。職場が安心できる場所であれば安全欲求が満たされ、1つ上位の社会的欲求の段階に移ります。職場のメンバーから認められることで社会的欲求が満たされると、さらに上位の尊厳欲求の段階に入ります。 *【図①】マズローの欲求段階説 退職を防ぐモチベーションアップ策 スタッフが退職を防ぐためには、成長の段階に対応を決めておくとよいでしょう。入社したばかりのタイミングで起こりやすい退職と、ある程度仕事を覚え一人前になったのちの退職、ベテランスタッフの退職は、それぞれ背景が違っている可能性が高いです。 入社3カ月以内のスタッフへの対応法 新人は「仕事を覚えられるか」「職場の人間関係に馴染めるか」という不安を抱いています。この2つの不安を解消するため、以下のような方法があります。 1.業務手順をマニュアル化する 新人はマニュアルがあると安心します。先輩社員にとっても、新人受入れの準備が楽になるうえ、歓迎しているという意思表示にもなります。 2.チェックリストを用意する チェックリストによって、スキル習得の目標設定と進捗状況が分かります。きちんとした教育の仕組みがあると安心です。 3.3カ月以内に実技試験をする 入社後早い時期に実技試験に合格することで、新人に自信がつきます。先輩は、新人の練習に付き合うことで、新人と関わる機会ができます。 入社後2~3年目のスタッフへの対応法 入社2~3年目になると、自分の仕事は一通りこなせるようになります。新人扱いがなくなり一人前に扱われるようになる一方、できないことを注意、指摘されることが増えます。 スタッフが抱いている「自分はこの仕事に向いているのか」「自分は役に立っているのか」「このまま続けていいのだろうか」という不安を解消するためには以下のような方法みがあります。 1.年に1回、スタッフとの個別面談を実施する スタッフの日頃考えていること(困っている事や要望)を聞き、その後に院長が期待している役割や目指してほしいことを伝えます。 2.業務改善の役割を任せる 日常業務以外に業務改善係を任せます。この取り組みを通じて、改善する方法を考え、実行し、改善し成果を上げるプロセスを体験することができ、仕事の幅が広がります。 3.外部研修への参加を支援する このままでよいのか迷っているスタッフには、外部研修への参加させることも考えましょう。スキルアップの達成感を味わえ、学ぶ意欲を支援する制度を整えるのも一つの方法です。 入社5年以上経過したスタッフへの対応法 入社5年目以上のスタッフは医院の戦力となっているはずです。医院全体のことを考えてくれる人か、自分のことだけを考える人かに分かれる時期でもあります。自分の経験を後輩に伝え、育成してくれれば、経営を支える存在となります。 1.リーダーに任命する 組織のリーダーとして公式に任命します。公式に任命することにより、リーダーとして活動しやすくします。 2.リーダーの役割を明確化する リーダーに任命されたスタッフの不安を解消するためにも、リーダーの役割、期待をはっきりさせます。 3.手当をつけ評価する リーダー手当をつけることによってモチベーションを上げるとともに、役割を評価していることを伝えます。後輩にとっては、目指すべきポジションとなります。 まとめ このようにスタッフの成長の段階に応じ、適切な対応は変わってきます。「そこまで気にしなきゃいけないの⁉」という意見もあるかもしれませんが、そこまで院長が気にしていただきたいのです。歯科医院は、院長とスタッフで構成される組織です。組織のメンバー次第で、できることも大きく変わり、雰囲気も違ってきます。さまざまな取り組みをご紹介しましたが、成果はすぐに表れないかもしれません。しかし、組織は徐々に変わってくるのです。ぜひ長い目で見てください。 制作年月:2022年11月14日

【新着ニュース】医科クリニック ┃毎週(水)更新┃

【新着ニュース】医科クリニック ┃毎週(水)更新┃

厚生労働省、WAM(独立行政法人 福祉医療機構)からの配信された情報のなかから、医科クリニックに関係する情報に絞り、配信いたします。(毎週(水)更新) 目次  ▶ 2022年11月 New!!   ・4週目(11/20-11/26)New!!   ・3週目(11/13-11/19) ▶ 2022年11月 ☞4週目(11/20-11/26) 【報道発表】 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月26日版) インフルエンザの発生状況(令和4年11月25日) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月25日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月24日版) 新型コロナウイルス治療薬の緊急承認について(令和4年11月23日) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月23日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月22日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月21日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月20日版) 【審議会等】 疾病・障害認定審査会 (感染症・予防接種審査分科会新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査部会) 審議結果(令和4年11月24日) 第102回社会保障審議会介護保険部会 <議事> ・地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について ・「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」の取りまとめについて(報告) 【重要情報】 病床確保計画(令和4年11月18日更新) 宿泊療養施設確保計画(令和4年11月18日更新) 臨時医療施設等確保計画(令和4年11月18日更新) 【その他】 自費検査を提供する検査機関一覧を更新しました。(令和4年11月21日(月)) 第107回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料(令和4年11月22日)を掲載しました 「新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」を更新しました。(令和4年11月25日) 令和4年11月11日 第88回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第18回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録(令和4年11月25日更新) ☞3週目(11/13-11/18) 【報道発表】 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月17日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月16日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月15日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月14日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月13日版) 新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS):Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19(令和4年11月16日) 【審議会等】 第2回腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会 資料(令和4年11月17日) 第156回社会保障審議会医療保険部会 議事録(令和4年11月15日更新) <議題> 1.医療保険制度改革について 2.国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について 3.オンライン資格確認等システムについて 厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)(令和4年11月14日更新) 1.新型コロナワクチンに関する副反応への対応について 【政策分野】 モデルナ社のオミクロン株対応2価ワクチンに関する情報を更新しました(令和4年11月18日) 「令和4年度健康保険被保険者実態調査 調査票等作成支援システム 及び 被保険者証記号・番号変換ツール」について (令和4年11月16日) 新型コロナワクチン 令和4年秋開始接種の情報が更新されました。(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ(令和4年11月14日) オミクロン株対応2価ワクチンの追加接種後の健康状況調査(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンQ&Aを更新しました。(令和4年11月14日) 新型コロナワクチン接種後健康状況調査(オンライン)の中間報告を更新しました。(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)後の健康状況調査(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの初回接種後の健康状況調査(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの副反応疑い報告について(令和4年11月14日) 【その他】 新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォースページを更新しました(令和4年11月18日) 新型コロナウイルス感染症対策に係る各医療機関内の病床の確保状況・使用率等の報告を掲載しました。(令和4年11月18日更新) 新型コロナウイルスに関する受診・相談センター/診療・検査医療機関等の情報を更新しました(令和4年11月18日更新) 新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」を更新しました。(令和4年11月18日更新) 都道府県の医療提供体制等の状況(医療提供体制等の負荷・感染の状況)についてを更新しました。(令和4年11月18日更新) 「療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について」を更新しました(令和4年11月16日更新) 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Applicationについて更新しました。(令和4年11月17日)(アプリ機能停止のお知らせ) 自費検査を提供する検査機関一覧を更新しました。(令和4年11月14日更新) 都道府県の医療提供体制等の状況(医療提供体制等の負荷・感染の状況)についてを更新しました。(令和4年11月14日更新) (出典:厚生労働省ホームページより引用) 更新日:2022年11月30日

【新着ニュース】介護事業者向け|厚生労働省 新着情報|毎週(水)更新

【新着ニュース】介護事業者向け|厚生労働省 新着情報|毎週(水)更新

《介護事業者向け》 厚生労働省の新着ニュース|まとめ掲示板|~毎週水曜更新~ ●介護保険 最新情報等 ■介護保険最新情報vol.1112(11月16日) ←New!! (令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和4年度調査)への協力依頼(3回目)について) ■介護保険最新情報vol.1111(11月9日) (感染対策における業務継続計画(BCP)の策定のための「集団研修(オンライン研修)」に係る募集について) ■介護保険最新情報vol.1110(11月7日) (令和4年度における感染対策のための実地研修に係る二次募集について) 過去のリリース情報はこちらから(厚労省サイト)→ ●社会保障審議会【介護保険部会】 ■第102回/2022年11月24日開催(予定) ▸開催案内はこちら ←New!! 【議題】  1.地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について  2.介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会のとりまとめについて(報告) ■第101回/2022年11月14日開催 ▸資料はこちら ←New!! 【議題】  1.地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について ■第100回/2022年10月31日開催 ▸資料はこちら 【議題】  1.給付と負担について 過去の開催概要はこちらから(厚労省サイト)→ ●介護・高齢者福祉分野【トピックスニュース】 ■介護保険事業状況報告(暫定)(11月11日掲載) ←New!! (令和4年8月分|結果の概要・統計表[全国集計表/都道府県別/保険者別]) ■介護給付費等実態統計月報(10月26日掲載) (令和4年7月審査分) ■令和4年度地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金の内示(第1次)について(10月19日掲載) (令和4年度地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金の内示(第1次))

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【クリニック(医科・歯科) 専用】開業医のための経営相談箱

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【無料・会員登録不要】税会計士や専門家に、皆様の経営課題を相談してみませんか? <ご質問例> ■ 診療報酬 ・増収につながる診療報酬改定内容、対応方法を知りたい ■ 経営管理 ・コロナ後、赤字経営となり、立て直したい ・経費(材料費、人件費 等)を削減したい ■ 人事 ・スタッフの退職率を下げたい ■ 承継 ・高齢のため、診療所を承継したい ・相続について何をすべきか知りたい 開業医は医師でもあり、経営者でもあります。クリニック経営は資金管理、人事・労務管理、会計管理、費用管理 等、やるべきことが多くありますが、勤務医時代には、どれもこれまで経験したことがないことばかりであり、苦労が多いのも事実です。 そのような課題解決につながる情報のご提供をしています。ぜひともご利用ください。 *当サイトは東証プライム上場「芙蓉総合リース株式会社」が運営しております。

ICTを核に生産性向上 やさしい手の「財務管理手法」に迫る

ICTを核に生産性向上 やさしい手の「財務管理手法」に迫る

<取材先> 株式会社やさしい手 同社が取り組む財務管理テクニックやICT活用とは? 「人依存」脱却し、サービスの持続可能性追求 訪問介護やデイサービス、ショートステイ、訪問看護など在宅系サービスを主軸に、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護、住宅型有料老人ホームなどの介護事業16種、全国で約300事業所を手がけるやさしい手(東京都目黒区)。介護事業者向けコンサルティングやシステムの開発・販売・導入サポートまで幅広く展開している。今回は、同社が取り組む財務管理のテクニックやICT活用について、管理本部の有賀和敏本部長、通所統括支社の下田哲也支社長、コンサルティング事業本部ソリューション事業部の前田和世副部長の3名に話を聞いた。 【本文】 ――2年前より、固定費のコントロールに向けた各種取り組みを行っていると聞きました。 有賀 介護事業を運営する上での固定費は、その多くを人件費が占めます。固定費の削減は利益率を上げるためにも重要な取り組みと捉え、全社で取り組んできました。 なお、固定費は売上高の増減に関わらず発生する費用であるのに対し、変動費は売上高の増減に比例して発生する費用になります。固定費を圧縮するほど、利益が出やすい組織になるということです。 当社の基幹事業となる訪問介護における人材は、大きく正社員と非常勤社員(登録ヘルパー)の2つに分かれます。正社員は固定費、非常勤社員は変動費の扱いになるため、正社員の比率を下げ、非常勤比率を上げることで変動費率を高めています。  介護事業は、3年に一度の介護報酬改定の影響で収益が変動する上、昨今のコロナ禍など災害・社会情勢による影響も大きく受けます。進展する超高齢社会においても、ニーズが高まる一方で、高齢者数の変化などには地域差も大きい。こうした不確実性のリスクに柔軟に対応しつつ、利用者の方々にサービスを提供し続けられる会社であるために、当社ではこうした策を取っています。 ニーズが高まっている繁忙期に確保した人材が、その後余剰となってしまったり、研修・教育のコストがかかりすぎてしまったりするリスクへの対応です。  他方で、訪問介護事業では人材確保が難しいと言われて久しい現状がある中、主婦層などには、時間に柔軟で働きやすい登録ヘルパーとしての雇用に需要があるという実感もあります。 就職希望者の生活に合った形で、無理なく働き続けてもらえる環境整備にも力を入れています。 ――これらのコントロールを行いつつ、サービスの質を維持・向上するための仕組みとは。 有賀 以前は拠点ごとに勘定科目などを見てきましたが、これをサービスラインごとに見られるようにした上で、科目ごとの「標準ライン」を設定しました。例えば住宅系サービスでは、施設規模に応じて朝、昼、夜の時間帯ごとに最適な人員配置基準を定め、その中で収めるよう取り組んでいます。 サービスごとにこうした細かいルールを作り、それぞれの勘定科目を横串で見ることで、「標準ライン」を超えてしまっている拠点について検討することができます。この際、変動比率で見たり、損益分岐で見てみたりと様々な角度から見ることで異常値が見えてくるので、「売上に応じた投資になっているか」常に確認することが可能です。  同時に、この「標準ライン」はサービス品質を守るものでもあります。これを下回っているようなケースもすぐに拾い上げ対応することが可能です。会社の持続可能性と、サービスの質、どちらも維持する上で、当社にとって重要な指標です。 ――デイサービスにおける、コロナ禍の影響と対応について教えてください。 下田 ここにきて、第7波で閉鎖する事業所が増えているように感じます。当社にとっても新型コロナ長期化の影響はもちろんありますが、常に「稼働率を落とすことなく通常営業を続ける」ための取り組みを行っています。  職員にはワクチン接種を積極的に進めることで罹患の際にも重度化しないよう管理していることに加え、2年前の新型コロナ流行直後よりICTも活用しています。「ばいたるイルカ」という、出勤前に職員が体温を入力することで発熱者を把握するためのシステムを自社開発し活用してきました。 出勤時に検温を行う場合、万が一陽性であった際すでに事業所にいることがリスクになりますが、システムを活用することで出勤前に情報を共有することができます。発熱した職員への速やかな検査誘導などフォローも可能で、蔓延防止に寄与してきました。  「ばいたるイルカ」は外販も行っており、導入には、各都道府県で実施しているコロナ禍の介護事業所等を対象としたサービス提供体制確保のための補助金も活用できます。 ――積極的にシステム導入を行っていますが、その真の目的とは。 前田 職員の負担軽減、業務の可視化・効率化など目的は様々ありますが、最も重要なのは「業務の標準化」だと考えます。 介護の仕事は「人依存」の側面が強いため、「人」ごとの業務のバラつきが収益にも影響します。例えば、ある登録ヘルパーが月170時間勤務したというデータがあるとして、そのうち実際にサービス提供をしたのは何時間か、という分析まで可能な仕組みが、当社にはあります。こうしたデータを基に、より生産性を上げていけるということです。  現在、デイサービスの送迎ルートの作成でもシステムを活用しているところです。他システムとの連携などまだ課題はありますが、ゆくゆくはルート作成業務を、人ではなくシステムが行えるよう活用していきたい考えです。  こうしたルート作成やシフト作成などは、立場のある職員が行うケースが多いですが、これも「人依存」と言えます。これらの業務はAさんにしかできなかったが、システムを活用することでBさん、Cさんもできるようになる。 これが業務の標準化であり、こうして生まれた時間によって、AさんはBさん、Cさんの育成に時間をかけることができるようになります。「業務の標準化」が「サービスの質の向上」に直結するケースと言えるでしょう。  ほかにも、訪問介護では、ご利用者様のサービス予定とヘルパーの就労予定を照らし合わせ、最も近くにいるヘルパーをボタン1つで派遣する、といったことが1つのシステムでできるものもあります。当社は基本的に開発側なので補助金を活用できませんが、こうしたシステムをパッケージで取り入れる事業者は、経済産業省や各都道府県が実施しているICT導入補助金を活用できます。  また、当社では、各種処遇改善加算の使途の管理にもシステムを活用しています。先にお話ししたように、職員それぞれの生産性なども把握可能なので、頑張っている人に頑張った分支払う制度、評価に基づいて支払う制度など手当を15種類創設し、運用しています。 本社直轄で行うプロジェクトチームの評価などもあり、職員それぞれのやる気や生産性の向上につながる仕組みになっています。「人」に依存せず、「システム」にも依存しない、当社ならではの運営を目指していく考えです。

クラウド会計ソフト導入を検討されている方必見!税理士から見たメリットと思わぬ落とし穴とは?

クラウド会計ソフト導入を検討されている方必見!税理士から見たメリットと思わぬ落とし穴とは?

<著者> 米本合同税理士法人 昨今、弊社でも従来のPCインストール型の会計ソフトに加えて、クラウド型の会計ソフトを選択するお客様も増えてきました。 今回はクラウド会計ソフトの導入にあたり、メリットや注意点についてお話しします。 目次 ■クラウド会計ソフトを選ぶメリット ■クラウド会計ソフトの分類 ■年間の売り上げが一定規模以上の企業は導入に注意が必要 ■クラウド会計ソフトを過信してはいけない ■クラウド会計ソフトを選ぶメリット 1.入力の自動化で手間を省くことができる 銀行口座やクレジットカードの明細情報を、インターネットを通じて自動取得し、あらかじめ指定しておいたルールに従って自動で仕訳を行えます。対応するPOSレジや、大手通販サイトの売上情報を連携して仕訳を作成することもできます。入力の二度手間や転記ミスを防止でき、手入力を大幅に減らすことで会計業務の手間を省けます。 2.インターネットにつながる環境があれば利用できる インターネットにつながる環境があれば利用できるので、場所を選ばずに利用できます。在宅勤務などのリモートワークにも柔軟に対応が可能です。基本的にパソコンの機種やOSを問わずに利用できるので、新たに専用の機器を用意する手間もかかりません。 3.リアルタイムにデータを活用できる ソフトとデータの両方がクラウド上にあるメリットを活かして、複数台での同時利用ができます。例えば、経理担当者が複数いる企業であれば効率よく業務分担ができます。経営者が自社の資金繰りなどの状況を手元のスマートフォンでリアルタイムに確認するといったことも可能です。 4.経理領域との連携で業務改善ができる クラウド型の経費精算、請求管理などの機能を組み合わせることで、更なる経理業務の省力化や生産性の向上が可能です。 ■クラウド会計ソフトの分類 クラウド会計ソフトは成り立ちにより大きく2つに分類できます。 1.従来のPCインストール型の会計ソフトをクラウド化したもの(MJS、弥生など) 従来のPCインストール型のソフトの使い勝手を踏襲しつつ、クラウド化によるメリットを加えたものです。既存の利用者に配慮して操作性や機能は従来の製品と大きく変わらないように作られています。 既にいずれかの会計ソフトを利用中で、使い慣れた操作方法でクラウド化によるメリットを活用されたいお客様や、基本的な簿記の知識がある方にお勧めです。 2.完全クラウド型として新たに開発されたもの(マネーフォワード、freeeなど) 一般的な会計ソフトの基本要件を備えながら、クラウドを活用して入力を自動化し、手入力をできるだけなくして会計業務の負担を減らすことを目的に作られています。 また、初心者向けの機能として、仕訳作成時にAIを活用した勘定科目選択のサポート機能も備えています。会計と連携する経費精算や請求管理などの機能を標準で一通り備えていますので、これからはじめて会計ソフトを利用する方にお勧めです。 利用料金は、使用する機能や従業員数によって変動します。 クラウド会計ソフトは利用期間に応じて料金を支払うサブスクリプション型のため、買い取り型が一般的なPCインストール型の会計ソフトに比べると割高になります。 また、経費精算などの経理領域の機能は、利用する従業員数に応じて追加料金が必要になるケースが殆どですが、料金に見合うだけのメリットがありますので、会計業務の省力化だけでなく経理業務の効率化も含めて検討してはいかがでしょうか。料金は各メーカーのWebサイトで試算が可能です。 ■年間の売り上げが一定規模以上の企業は導入に注意が必要 現状のクラウド会計ソフトはPCインストール型の会計ソフトに比べると操作性が劣ります。また仕訳の入力件数が多くなると処理が遅くなるケースもあります。 クラウド会計ソフトの導入により、日常の入力業務は省力化できますが、年間の仕訳件数が一定の規模以上になりますと、操作性の問題などで月次決算の際に思わぬ時間が取られるなど、逆に業務負担が増えてしまうことも考えられます。 そのような場合は、まずは経費精算や請求管理などの経理領域からクラウド化し、会計処理は従来のPCインストール型の会計ソフトを使う方法もご検討ください。 最近はPCインストール型の会計ソフトでも、銀行口座やクレジットカードの明細情報を連携できる製品が増えています。 クラウド会計ソフトはメリットだけでなく、制限も多くあります。経理業務の何もかもをクラウドで行おうとすると、業務手順をクラウドに合わせて変える必要もでてきます。 業務規模が大きいと自社だけでの対応が難しいケースも考えられますので、専門のコンサルタントへの相談もご検討ください。 ■クラウド会計ソフトを過信してはいけない クラウド会計ソフトを導入することで、多くのケースで業務の手間を省くことできますが、それで正しい会計処理ができるかは別です。 例えば、仕訳自動化の登録の際に処理方法を誤って登録してしまうと、誤ったまま自動で仕訳が繰り返し登録される恐れがありますし、取込方法を間違えると仕訳が二重で計上されてしまうといったこともあります。他にも、経理初心者の方がAIによる判断を過信すると、処理を誤るケースも考えられます。 現状では、従来の会計ソフトと同様に判断は人が行う必要があるため、利用には正しい経理知識が必要になります。 米本合同税理士法人では各ソフトウェアメーカーの認定パートナーとして、お客様の導入をサポートいたします。導入をご検討の際はぜひご相談をいただければと思います。 (他の情報についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/column/index.html   (医療関係情報についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/iryou/index.html  

【補助金情報】2022年度版 東京都の診療所・クリニック(医科・歯科) が活用できる補助金を紹介

【補助金情報】2022年度版 東京都の診療所・クリニック(医科・歯科) が活用できる補助金を紹介

<著者> 芙蓉総合リース株式会社 東京都のすべての補助金が掲載されている「TOKYO補助金サーチ見える化ボード(運営者:東京都)」の情報のなかから、補助対象者が診療所(医科*、歯科)の補助金情報をご紹介いたします。是非、診療所経営でご活用ください。 *訪問看護を含む。 *補助対象者が病院のものは除いております。 *コロナに伴う補助金において、申請期限が過ぎているものは除いております。 目次 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所  ■ 目的:保育所設置促進(工事費補助)   ・院内保育事業運営費補助金   ・院内保育事業運営費補助事業  ■ 目的:看護職員 離職防止(研修費用補助)   ・東京都新人看護職員研修事業費補助金(民間団体) ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護  ■ 目的:訪問看護支援(雇用支援補助)   ・令和4年度訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業(補助金)  ■ 目的:訪問看護師の勤務環境の向上(給与補助)   ・令和4年度訪問看護ステーション代替職員(研修及び産休等)確保支援事業≪産休等代替≫ ▶ 給付対象診療所:医科・歯科 診療所  ■ 目的:外国人患者受入れ(整備補助)   ・東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業補助金 ~~<令和4年度 交付終了>~~ ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護  ■ 目的:教育体制の強化(人件費補助)   ・*令和4年度終了*令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所  ■ 目的:医療提供体制の改善(研修費用補助)   ・*令和4年度終了*東京都専門医認定支援事業補助金  ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助)   ・*令和4年度終了*東京都産科医等確保支援事業補助金 / 分娩手当に係る補助金  ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助)   ・*令和4年度終了*東京都産科医等育成支援事業補助金 / 研修医手当に係る補助金  ■目的:オンライン診療促進(設備投資補助)   ・*令和4年度終了*東京都オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業補助金(民間団体) ▶ 給付対象診療所:歯科 診療所  ■ 目的:在宅歯科診療促進(設備整備補助)   ・*令和4年度終了*東京都在宅歯科診療設備整備費補助金 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所  ■ 目的:保育所設置促進(工事費補助)   ・院内保育事業運営費補助金 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 目的 病院内保育所の施設整備に要する経費の一部を補助することにより、病院内保育所の設置促進を図り、医療従事者の確保、離職防止及び再就業の促進に資することを目的とする。    ▶ 補助対象経費 1.病院内保育所を新たに開設するために行う新築、増改築及び改修に要する工事費及び工事請負費 2.既存の病院内保育所の新築及び増改築に要する工事費及び工事請負費   ▶ 基準額 次に掲げる基準面積に下記単価及び所要の調整率を乗じた額とする。     ・基準面積 収容定員(ただし、30人を限度とする。)×5平方メートル   ・1平方メートル当たりの単価     鉄筋コンクリート 155,800円    ブロック 136,400円    木造 155,800円 ▶ 補助率 0.66(ただし、都の予算の範囲内。) ▶ スケジュール 時期 内容 4月上旬 事業計画提出 5月頃 都審査会 6月頃 内示通知 (内示後に着工) 意向調査(翌年度補助金を受ける意向の有無を回答) 11月頃 交付申請 1月頃 交付決定 4月上旬 実績報告 5月中旬 額の確定(補助金の支出) 9月頃 消費税仕入控除税額報告提出   ※上記スケジュールは見込みであり、前後する可能性があります。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 病院内保育所運営事業について   ・院内保育事業運営費補助事業 ▶ 目的 都内の病院及び診療所に従事する職員のために院内保育施設を運営する事業について助成し、医療従事者の離職防止及び再就業を促進するとともに、医療機関による入院治療の必要はないが、安静の確保に配慮する必要がある集団保育が困難な児童の保育(以下「病児等保育」という。)を行うことを目的とする。   ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 補助対象経費 区分 保育児童数 保育士等職員数 保育時間 月額保育料 A型特例 1人以上 2人以上 8時間以上 10,000円以上 A型 4人以上 2人以上 8時間以上 B型 10人以上 4人以上 10時間以上 B型特例 30人以上 10人以上 10時間以上   ▶ 基準額  各病院内保育施設につき次により算定した額より別に定める病院内保育施設の運営に係る設置者の負担能力指数による調整率を乗じて得た額の合計額    基準額=[基本額{( ア × 180,800円 × 12月 )- イ }× ウ ]+ 加算額(エ)     ア 型別人員(A型特例:1人、A型:2人、B型:4人、B型特例:6人)   イ 保育料収入相当額   ウ 負担能力指数による調整率   エ 加算項目による加算額   ・24時間保育 23,410円 × 運営日数 ・病児等保育 187,560円 × 運営月数 ・緊急一時保育 20,720円 × 運営日数 ・児童保育 10,670円 × 運営日数 ・休日保育 11,630円 × 運営日数   ▶ 補助率 2/3(ただし、都の予算の範囲内。)   ▶ スケジュール 時期 内容 6月頃 意向調査(当該年度補助金を受ける意向の有無を回答) 12月から1月頃 交付申請 3月頃 交付決定(補助金の支出) 5月頃 実績報告 7月から8月頃 額の確定(補助金の返還) 9月頃 消費税仕入控除税額報告   ※上記スケジュールは見込みであり、前後する可能性があります ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 病院内保育所運営事業について  ■ 目的:看護職員 離職防止(研修費用補助)   ・東京都新人看護職員研修事業費補助金(民間団体) ▶ 補助対象 診療所 この補助金の交付対象は、新人看護職員を採用する都内の病院等とする。ただし、国立の病院及び国立高度専門医療研究センターを除く。   ▶ 目的 都内の病院等が実施する新人看護職員、新人保健師及び新人助産師が基本的な臨床実践能力を獲得するための研修に要する経費を補助することにより、新人看護職員研修体制の整備を促進し、看護の質の向上及び早期離職防止を図る。   ▶ 補助対象経費 新人看護職員研修の実施に必要な経費(研修費用、教育担当者経費) <詳細>この補助金の対象とする経費は、別表の第2欄に定める経費とする。   ▶ 基準額 1.別表の第1欄に定める基準額と第2欄に定める対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。 2.前項により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に別表の第3欄に定める補助率を乗じて得た額を都の予算の範囲内で交付するものとする。ただし、算出された額に 1,000 円未満の端数が生じた場合は、これを切り捨てるものとする。   ▶ 補助率 1/2 ▶ スケジュール 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 東京都新人看護職員研修事業   【過去事例】有床診療所における研修事例(平成23年度の事例) 岩手県:一関中央クリニック[176KB] 埼玉県:鶴ヶ島在宅診療所[198KB] 和歌山県:紀の川クリニック[247KB] ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護  ■ 目的:訪問看護支援(雇用支援補助)   ・令和4年度訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業(補助金) ▶ 補助対象 診療所 ① 介護保険法第41条1項本文の指定を受けている者で、同法第8条第4項に規定する訪問看護を行う事業者であること(※みなし指定の病院及び診療所は含まれません。)。 ② 対象となる訪問看護ステーションの所在地が都内であること ③ 指定から1年以内で当該訪問看護ステーションに事務職員の配置がないこと。ただし、令和3年度本事業を活用して新たに配置したステーションは対象とする。   ▶ 目的 訪問看護ステーションの労働環境の改善を図るため、小規模な訪問看護ステーションが新たに事務職員を雇用し、看護職員の事務負担を軽減することで、看護職員が専門業務に注力できる環境を整備することを支援し、もって在宅における療養環境の向上と地域包括ケアの推進を図る。   ▶ 補助対象経費・基準額・補助率 項目 対 象 経 費 上限額 補助率 事務職員 給与費 事業計画に基づき新たに雇用する事務職員の人件費 (給料、報酬、賃金、法定福利費、福利厚生費、賞与及び手当含。) 1,041円(時) 10/10 交通費 訪問看護ステーションが負担する事務職員の交通費 800円(日)   ▶ スケジュール 提出期限:令和4年5月31日(火) ※ただし、6月1日(水)以降に新規開設する事業所等は、事務職員を雇用しようとする月の前月10日までに、都担当者にご連絡の上提出してください。   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 【補助金】令和4年度訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業について  ■ 目的:訪問看護師の勤務環境の向上(給与補助)   ・令和4年度訪問看護ステーション代替職員(研修及び産休等)確保支援事業≪産休等代替≫ ▶ 補助対象 診療所 (1)研修代替事業 当該訪問看護ステーションの業務に従事する保健師、助産師、看護師又は准看護師について、交付申請の時点において、常勤換算方法で2.5以上かつ7未満となる員数を配置していること。   (2)産休等代替事業 当該訪問看護ステーションの業務に従事する保健師、助産師、看護師又は准看護師について、交付申請の時点において、常勤換算方法で2.5以上かつ7未満となる員数を配置していること。   ▶ 目的 訪問看護ステーションに勤務する看護職員が研修等を受講する場合又は、出産、育児又は家族の介護のため長期間にわたって休業する場合に、当該訪問看護ステーションが代替職員の確保にかかる経費を支援することにより、訪問看護師の勤務環境の向上及び定着の推進を図り、もって在宅における療養環境の向上と地域包括ケアの推進を図るため、東京都(以下「都」という。)が予算の範囲内で補助するために必要な事項を定めることを目的とする。   ▶ 補助対象経費 代替職員に支払う給与費等(1時間当たり3,200円上限)   ▶ スケジュール 提出期限:事業計画書提出期限 令和4年5月31日(火) ※ただし、上記締切日を過ぎた後に開設したステーション等は、研修を始めようとする月の前月10日までに、都担当者まで連絡の上、申請すること。   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 【補助金】令和4年度訪問看護ステーション代替職員(研修及び産休等)確保支援事業≪産休等代替≫ ▶ 給付対象診療所:医科・歯科 診療所  ■ 目的:外国人患者受入れ(整備補助)   ・東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業補助金 ▶ 目的 外国人が言葉や文化の隔てなく、症状に応じて安心して医療機関を受診できるよう、医療機関が外国人患者を受入れるに当たり必要な整備への補助を行います。   ▶ 補助対象 診療所 都内医療機関(診療所を含む。)のうち「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」に選定されている医療機関又は「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」への応募を検討している医療機関。   >>>補助対象 医療機関リストはこちら(2022年10月時点、都内医療機関に限る)<<<   ▶ 補助対象経費 ア 多言語対応ツールの導入   受付・会計、診療、検査、入院の各場面において利用できる多言語対応ツール  (会話集や指差しツール、翻訳機、通訳機能等を備えたタブレット端末)等の作成又は導入に係る費用 イ 院内文書の多言語化   院内文書(問診票や検査の説明資料、院内スタッフの名札等)の多言語化のための    翻訳・作成に係る費用 ウ 案内表示の多言語化   多言語化のための翻訳・作成に係る費用 エ ホームページの多言語化   多言語化のための翻訳・作成に係る費用 オ 外国人患者の受入れに対応するためのシステムの導入   多言語対応のためのシステム(電子カルテ等)及び外国人患者の受入れ状況の   把握のためのシステムの導入又は改修 カ 職員の語学力の向上等(研修、通信講座等の受講)   民間団体等が実施している医療通訳養成研修・通信講座その他の医療従事者  向けの語学に関連した研修・通信講座等の受講に係る費用   ▶ 基準額 130万円 ▶ 補助率 2分の1 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年11月25日(金曜日)必着 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 令和4年度東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業 追加募集 ~~<令和4年度 交付終了>~~ 今年度の交付は終了しておりますが、来年度も募集継続となる可能性もあるため、ご参考として紹介いたします。 ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護  ■ 目的:教育体制の強化(人件費補助)   ・*令和4年度終了*令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業 ▶ 補助対象 診療所(令和4年度補助対象事業者の要件(一部抜粋)) (1)開設から1年以上経過している、都内の訪問看護ステーションであること。 (2)前年度の月平均訪問看護件数が、常勤看護職1名当たり60件以上であること。 (3)前年度に、サービス提供体制強化加算・ターミナルケア加算・緊急時訪問看護加算等の算定実績があること。ただし、サービス提供体制強化加算の算定実績がない場合は、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第10号をすべて満たすこと。(研修・カンファレンス・健康診断の実施) (4)管理者又は指導者の訪問看護経験が5年以上であること。 (5)本補助金の交付を過去に受けたことがない事業所であること。(※令和2年度以前の「新任訪問看護師就労応援事業」の交付は含まない) (6)訪問看護経験3年以上かつ当該事業所に1年以上勤務する常勤の看護職員を2名以上配置していること。 (7)訪問看護経験が豊富な常勤の看護職を指導者として充てること。 (8)常勤換算方法で2.5人以上かつ7人未満であること。(新卒採用は、2.5人以上。) (9)事業所に「管理者・指導者育成研修」の「育成定着推進コース」研修受講修了者がいること。(当年度の研修修了でも可。)   ▶ 目的 訪問看護未経験の看護職を雇用し、育成を行う訪問看護ステーションに対し、教育体制の強化を図るための支援をすることで、訪問看護ステーションで働く看護職員の勤務環境の向上及び定着の推進を図り、もって在宅における療養環境の向上と地域包括ケアの推進を図ること   ▶ 補助対象経費 訪問看護未経験の看護職を雇用・育成する訪問看護ステーションに対する人件費等を助成する。   ▶ 基準額 項目 対象経費 基準額(上限) 補助率 給与費 (1)新たに雇用した新任訪問看護師(新卒者除く)  雇用後2か月にかかる人件費 2,400円/1時間 1/2 (2)新たに雇用した新卒訪問看護師(*)  雇用後6か月にかかる人件費 外部研修受講経費 (1)新たに雇用した新任訪問看護師(新卒者除く)  雇用後8か月までに受講する外部研修にかかる受講経費 (事業所負担分のみ) 50,000円/1人 (2)新たに雇用した新卒訪問看護師(*)  雇用後8か月までに受講する外部研修にかかる受講経費 (事業所負担分のみ) 100,000円/1人 (*)新卒訪問看護師の詳細は、【補助金】令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業の「補助対象となる新任訪問看護師の条件(概要)」をご参照ください。   ▶ 補助率 1/2 ▶ スケジュール 令和4年度終了 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 【補助金】令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所  ■ 目的:医療提供体制の改善(研修費用補助)   ・*令和4年度終了*東京都専門医認定支援事業補助金 ▶ 補助対象 診療所 東京都内に所在する診療所   ▶ 目的 専門医制度の仕組みが円滑に構築され、地域医療への配慮や研修機会の確保に資するよう、指導医派遣等を行う医療機関に対する支援を行うことにより、専門医の質の一層の向上や医療提供体制の改善を図ることを目的とする。   ▶ 補助対象経費 ■医療機関が以下の事業を実施する場合、必要な経費(※)を補助いたします。  ※具体的な対象経費及び基準額につきましては、「東京都専門医認定支援事業補助金交付要綱」をご確認ください。   1 .東京都の医師不足地域の研修医療機関において専門研修を促進するため、地域医療に配慮した専門研修プログラムの策定を行う。 2 .東京都の医師不足地域の研修医療機関において、地域医療に配慮した形で小児科、救急科、産婦人科及び総合診療の専門医研修を促進するため、以下に示すいずれかの手法で指導医の派遣等を行う。   (1)指導医の派遣 (2)指導医による出張指導   3 東京都のキャリア形成支援プログラムに基づき、東京都の研修医療機関において専門医研修を促進するため、以下に示すいずれかの手法で指導医の派遣等を行う。   (1)指導医の派遣 (2)指導医による出張指導   4 地域医療に従事する総合診療専門医の育成を促進するため、東京都のへき地・離島の医療機関において、総合診療研修を行う。   ▶ 基準額 補助金の交付額は、次の(1)及び(2)により算出された額を予算の範囲内で交付するものとする。ただし、算出した額に 1,000 円未満の端数が生じた場合には、これを切り捨てるものとする。 (1) 別表1の第1欄に定める基準額と第2欄に定める対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。 (2)(1)により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に2分の1を乗じて得た額を交付額とする。   詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 補助率 1/2 ▶ スケジュール 【提出期限】 令和4年10月5日(水曜日)   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 専門医認定支援事業(補助金)  ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助)   ・*令和4年度終了*東京都産科医等確保支援事業補助金 / 分娩手当に係る補助金 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 目的 産科医等の処遇改善により産科医療機関及び産科医等の確保を図るため、分娩手当等に係る経費を補助   ▶ 補助対象経費 「差引事業費」と「対象経費の実支出予定額」と「基準額」とを比較していずれか少ない方   ▶ 基準額 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 補助率 東京都、独立行政法人(地方独立行政法人を除く。)及び国立大学法人等が開設者の医療機関にあっては1/3、その他の医療機関等(分娩施設)は2/3 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年10月31日(月曜日)   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 産科医等育成・確保支援事業補助金関係様式(分娩手当・研修医手当)  ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助)   ・*令和4年度終了*東京都産科医等育成支援事業補助金 / 研修医手当に係る補助金 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 目的 臨床研修修了後の専門的な研修において産科を選択する医師に対し支給する研修手当等に係る経費を補助 ▶ 補助対象経費 「差引事業費」と「対象経費の実支出予定額」と「基準額」とを比較していずれか少ない方の額   ▶ 基準額 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。   ▶ 補助率 東京都、独立行政法人(地方独立行政法人を除く。)及び国立大学法人等が開設者の医療機関にあっては1/3、その他の医療機関は2/3   ▶ スケジュール 提出期限:令和4年10月31日(月曜日)   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 産科医等育成・確保支援事業補助金関係様式(分娩手当・研修医手当)  ■目的:オンライン診療促進(設備投資補助)   ・*令和4年度終了*東京都オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業補助金(民間団体) ▶ 目的 かかりつけ医等によるオンライン医療相談、オンライン受診勧奨及びオンライン診療(以下「オンライン医療相談・診療等」という。)を推進するため、医療機関が実施する環境整備を支援することを目的とする。 ▶ 補助対象 診療所 都内に所在する病院又は診療所(歯科診療所は除く。以下「医療機関」という。)であって、東京都知事が適当と認める者。   ただし、以下の者を除く。 (1) 次の者が開設する医療機関  ア 地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人及び同条第2項に規定する特定独立行政法人  イ 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人及び同条第2項に規定する特定独立行政法人  ウ 国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人 (2) 健康保険法(大正11年法律第70号)第63条第3項第1号に規定する保険医療機関ではない医療機関 (3) この補助金の交付を受けたことがある医療機関   ▶ 補助対象経費 オンライン医療相談・診療等のための専用の情報通信機器等の初期経費(パソコン、タブレット(スマートフォンは除く。)、カメラ、マイク、ヘッドセット、ルーター等)  ※ リース料、保守費用、通信費等の経常的な経費は補助対象外 ■ 対象経費 詳細→補助金申請手続きの手引き P1   ▶ 基準額 基準額 40万円 ▶ 補助率 補助率 1/2 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年11月9日(水曜日)【当日消印有効】     ※交付申請受付期間中に到着した申請書類等は、順次審査いたします。   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 令和4年度オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業について ▶ 給付対象診療所:歯科 診療所  ■ 目的:在宅歯科診療促進(設備整備補助)   ・*令和4年度終了*東京都在宅歯科診療設備整備費補助金 ▶ 補助対象 診療所 下記、すべての条件に適合する事業者。 1.区市町村、公的団体及び民間事業者のいずれかとする。 2.事業の実施主体において別表に定める研修等を受講した、歯科医師が常に勤務していること。   ▶ 目的 主に高齢期・寝たきり者等に対する在宅歯科医療の推進に資するため、在宅歯科医療を実施する医療機関に対し、在宅歯科医療機器等の設備を整備することにより、安全で安心な質の高い歯科医療提供体制の充実を図ることを目的とする。   ▶ 補助対象経費 在宅歯科医療に必要な医療機器等の備品購入費 (※ 1品100,000円に満たないものについては、対象外)   ▶ 基準額 基準額 1か所あたり 3,638千円   ▶ 補助率 補助率 2/3   ▶ スケジュール 令和4年10月14日(金曜日)まで   ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 東京都在宅歯科医療設備整備事業 引用元:「TOKYO補助金サーチ見える化ボード」 <医師向け おすすめ記事> <歯科医向け おすすめ記事>

効果的な「指導者研修」の方法 まずは「リーダーになるメリット」を

効果的な「指導者研修」の方法 まずは「リーダーになるメリット」を

<著者>株式会社スターコンサルティンググループ 糠谷和弘 代表コンサルタント  新卒が入社して半年、入所施設なら夜勤で独り立ち、通所施設なら送迎に1人で行くようになっている頃だと思います。指導計画通りに順調に進んでいますか?  新人教育において絶対にやってはならないのは、「職人的指導」になります。〝背中で教える教育〞、〝経験と勘に頼った指導〞から脱却しなくてはなりません。基本から応用に進むように手順を決め、座学とOJTに分けて効率的、効果的に指導するのが重要でした。しかし、いくらプログラムを作りこんでも、実際に指導するトレーナー役がそのことを理解していなければ台無しになってしまいます。  そこで、愛知県のある法人では、毎年下期に「指導者研修」を実施することにしました。対象は入社して2〜5年目の職員。どのようなことを行っているのか、具体的に見ていきましょう。 ■指導者になるメリット  指導者になることをネガティブに受け止める人は多くいます。確かに仕事が増えるということはありますが、人に指導するには、自分のしている業務を整理して言語化し、噛み砕いて説明しなければなりませんから、より業務を深く理解し、自分自身のスキルを向上させるきっかけになります。そのため、この法人ではまずリーダー予定者に「メリット」から伝えることにしています。 ■指導者の役割  指導者の役割は、ただ教えてスキル向上をサポートするだけではありません。「習得状況の把握」「指導計画の見直し」「不安の解消」のほか、それらの情報を上司やほかのスタッフに発信し、協力してもらわなければいけません。指導者研修では、テーマごとの具体的な動きを伝えます。  例えばこの法人では、毎月、リーダー会議で、下記のフォームによって指導の進捗報告をすることを義務付けています。報告内容から、個別に今後の対策を練るのです。議論する時間は1人5分程度ですが、とても成果が上がっています。 ■面談の方法  指導上もっとも大事なのが、トレーナーと新人との面談です。研修では、面談手順の指導だけでなく、ロールプレイまで行います。内容は、 ①アイスブレイク ②まず長所、できていることを褒める ③チェックリストでの評価から、習得が遅れているところ(目標)を共有する ④②の項目の指導日(時間)を決める ⑤不安点を聞き出す  また、指導が不慣れなトレーナーの場合には、面談に上司が同席することもあります。この法人では、以下のようにルールを決めています。 【面談頻度】月1回ユニット会議の前 【面談時間】20分程度 【面談者】トレーナー 【ユニットリーダーの同席】トレーナー初心者は3回目まで同席、トレーナー経験者は2回に1度同席 ■対象者別の指導のポイント  介護業界では、新人は学校を卒業したての人材ばかりではありません。年上の新人に指導することもよくあります。年下が先輩でも謙虚に聞いてくれれば良いですが、うまくいかないこともあります。また、相手が外国人ということもあるでしょう。研修では、想定される対象者ごとに指導のポイントや注意点を伝えています。  例えばこの法人では、50代以上で無資格未経験の中途採用者が多いため、以下のようなことを伝えています。 □年上であることに配慮した言葉遣いで指導する(敬語をしっかり使う) □熟年者にありがちな「落とし穴」をあらかじめ伝える(知ったかぶりしてしまう等) □介助方法の間違いを正すときは、他のスタッフのいないところで行う □面談ではできる限り上長を同席させる  いまの時期は、新人のスキルに差がでてくるころです。裏を返せば指導者のテクニックに差が出る時期とも言えます。この時点での反省を次に活かせるように、しっかりと準備しましょう。 監修:㈱高齢者住宅新聞社 制作年月:2022年10月 著者:㈱スターコンサルティンググループ 代表コンサルタント 糠谷和弘 (ぬかや かずひろ)●介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)などがある。

【解説】医業承継のポイントについて

【解説】医業承継のポイントについて

<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 現在日本では、中小企業を中心とした後継者不足が顕在化しています。もちろん医療業界も例外ではなく、診療所経営者の高齢化が進んでおり、次世代への事業承継が大きな課題となっています。今回は「親族承継」に焦点をあてた事業承継の進め方についてご紹介いたします。 目次 01:医業承継のパターン 02:個人診療所の親族承継のポイント 03:医療法人の親族承継のポイント 04:出資持分有りの医療法人の親族承継 05:出資持分無しの医療法人の親族承継 医業承継のパターン 診療所の事業承継には、診療所の経営主体が「個人」か「医療法人」かによって、また承継者が「親族」か「第三者(他人)」かによって解決すべき課題が異なります。 個人診療所の親族承継のポイント 親族承継は、他人に診療所を引継ぐ、いわゆる「第三者承継」に比べ、診療所の職員や患者の理解が得やすく円滑に承継を進めることができます。しかし事業承継には、事前に解決すべき課題が多々あります。 (ポイント1) 承継時期・診療方針・スタッフの入替・借入金の引継ぎなど、診療所の承継において親族間で話し合うべき事項が多々あります。これらの話し合いを経ないまま承継を行うと、診療所の承継者にとって思わぬトラブルが生じるおそれがありますので、親族間で腹を割って話し合いましょう。   (ポイント2) 診療所を承継するためには、医療機器やクリニック(土地または建物)など事業用資産を次世代に承継することとなります。承継方法には、「親から子に売却するケース」や「親が子に相続(贈与)するケース」がありますが、いずれの方法がよいのか検討する必要があります。 戸建開業の場合、クリニックの建物や土地の金額が高額になるので、一般的に相続により承継するケースが多く見受けられますが、相続人が複数いる場合には相続を円滑に進めるために遺言書を作成しておくことをお勧めします。 医療法人の親族承継のポイント 診療所の経営主体が医療法人である場合には、クリニックの事業用資産を承継する個人診療所とは異なり、医療法人の「経営権」及び「財産権」を承継することとなります。医療法人には、設立時期によって「出資持分あり」の医療法人と「出資持分なし」の医療法人が存在することとなりますが、「出資持分あり」の医療法人と「出資持分なし」の医療法人では承継方法が異なることとなります。 出資持分有りの医療法人の親族承継 「出資持分あり」の医療法人の場合、医療法人の出資持分(財産権)を承継することとなるため、医療法人の出資持分の価値が高ければ高いほど、承継する際に税負担が重くなります。 出資持分無しの医療法人の親族承継 「出資持分なし」の医療法人の場合、出資持分(財産権)が存在しませんので、「経営権」のみ承継することとなります。そのため、個人診療所を承継する場合、あるいは「出資持分あり」の医療法人の出資持分を承継する場合とは異なり、贈与税や相続税などの税負担を考慮に入れる必要はありません。 ただ「出資持分なし」の医療法人を解散させる場合には、医療法人の財産は国に帰属することとなるため、退職金を支給するなど医療法人に財産が残らないような対策を講じる必要があります。   親族に医師がいる場合、診療所経営の出口戦略として親族承継が挙げられますが、今回ご紹介したように親族承継には診療方針の引継ぎ、患者・スタッフとの人間関係の引継ぎ、課税面での課題、相続にまつわる問題など事前に検討すべき事項が多々あります。円滑な親族承継を迎えるためにも、専門家にご相談されることをお勧めします。 制作年月:2022年11月15日

【最新】新型コロナ関連 最新の助成金・融資を解説!

【最新】新型コロナ関連 最新の助成金・融資を解説!

新型コロナ関連 介護事業者向け助成最新情報まとめ 10月以降の見直し項目 要確認を 2020年より世界的な流行が続く新型コロナウイルス感染症。依然としてその猛威は衰える兆しがなく、第7波も介護サービス事業者に大きな影響を与えている。今回は、新型コロナ対策として事業者にかかる負担を軽減するべく、行政より発出されている助成金・融資などの最新情報を一部紹介する。 【本文】 ■コロナ禍におけるかかり増し費用の助成  まずは、新型コロナ関連の支援で最も多く活用されているであろう厚生労働省「新型コロナウイルス感染症流行下における介護サービス事業所等のサービス提供体制確保事業」。新型コロナ陽性者、濃厚接触者に対応した介護事業所の「かかり増し費用」に対する助成だ。地域医療介護総合確保基金を活用したもので、22年度予算額は137億円に上る。  同事業による助成の対象となるのは▽新型コロナ感染者が発生又は濃厚接触者に対応した介護サービス事業所・施設等(休業要請を受けた事業所を含む)▽新型コロナ流行に伴い居宅でサービスを提供する通所系サービス事業所▽感染者が発生した施設等の利用者の受け入れ及び応援職員の派遣を行う事業所――。 対象経費については、「通常の介護サービスの提供では想定されないかかり増し費用」として▽緊急時の介護人材確保に係る費用▽職場環境の復旧・環境整備に係る費用▽連携により緊急時の人材確保支援を行うための費用――が該当する。 なお、基準単価は以下の通り。 〈図①〉 ■施設内療養に対する支援  22年9月末までとされていた「高齢者施設等における施設内療養に関する支援」については、12月末まで期間が延長された。  これは、病床逼迫等によりやむを得ず施設内療養を行うこととなった場合に、必要な感染予防策を講じた上でのサービス提供等を行った際、施設内療養者1名につき15 万円の支援を行う補助制度。これに加え、まん延防止等重点措置区域等において、施設内療養者数が一定数を超える場合には、施設内療養者1名あたり更に1万円/日(通常補助制度とあわせて最大30万円)を追加補助するもの。  なお、22年10月1日より、補助期間が見直されていることに留意が必要。10月以前の補助期間は発症日から起算して15日間を原則としていたが、これが10日に見直されている。ただし、発症日から10日間経過後も療養解除基準を満たさない場合は、当該基準を満たす日まで最大15日間とする。 ■福祉医療機構による優遇融資  融資では、20年より実施されている独立行政法人福祉医療機構による福祉貸付事業「新型コロナウイルス感染症により機能停止等となった社会福祉施設等に対する優遇融資」がある。福祉医療機構では、社会福祉施設等を整備する際に必要となる設置・整備資金や経営資金を長期・固定・低利で融資しており、新型コロナにより、当該施設の責に帰することができない事由で機能停止等になった場合の経営資金については、通常の融資条件から貸付利率の引き下げ等の優遇措置を講じた融資を行っている。  同融資においては、情勢に応じ、貸付利率の引き下げや一定額までの無担保融資化等も随時行われたが、22年10月より当初5年間の無利子の取扱いが終了するなど一部融資条件が変更となった。  現在の融資条件については以下の通り。 〈図②〉  福祉医療機構は資金用途について、「新型コロナの影響による減収の補てん等に充てる経営資金であり、人件費や経費に充てていただくもの」としている。なお、本貸付金を既往借入金の繰上返済、建築資金への流用、他法人への流用又は転貸等に充てることは、目的外使用にあたり、繰上償還を求める可能性があるため留意。 ■新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金  次に、厚労省が支給する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」。これは、新型コロナ罹患及びまん延防止措置の影響により休業させられた労働者のうち、休業手当の支払いを受けられなかった人が、当該労働者の申請により休業支援金・給付金を受け取ることができるものだ。22年10月~11月末の期間においては、1日あたり支給額が上限8800円とされている。この期間の休業に対する申請期限は23年2月末。 〈図③〉  事業主においては、休業の事実について確認するための書類作成などは必要になるが、金銭的負担はない。事業所の所在する地域によっては、一定以上の罹患者が発生した場合には事業所閉鎖などの要請を受けることがあるのが現状だ。こうした事態に備え、従業員に周知するなどして活用することが望ましい。 ■経産省による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」  新型コロナの影響により、一時的に業況悪化を来している事業者を対象とする「国民生活事業」および一時的に売上の減少など業況悪化をきたしているが、中長期的には業況が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者を対象とする「中小企業事業」の2種が用意されている。日本政策金融公庫による貸付で、どちらも無担保で利用可能。  「国民生活事業」対象者は、具体的には▽最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している者▽業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が「過去3ヵ月の平均売上高」「令和元年12月の売上高」「令和元年10月から12月の平均売上高」のいずれかと比較して5%以上減少している者――となる。融資限度枠は8000万円、返済期間は20年以内。  「中小企業事業」の対象の要件は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期に比し5%以上減少していること、またはこれと同様の状況にあること、そして、中長期的にみて業況が回復し、かつ発展することが見込まれること。融資限度額は直接貸付6億円で、このうち4億円を限度として、当初3年間は基準利率から0.9%低減した利率が適用される。こちらも返済期間は20年以内。なお、実質無利子化・利子補給については22年9月30日を以て取り扱いが終了しているため留意。  22年3月、政府により中小企業への支援策として「中小企業活性化パッケージ」(資金繰り支援、収益力改善・事業再生・再チャレンジ支援)が公表されたが、その後4月、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」により決定した「日本公庫等の実質無利子・無担保融資等の期限延長」が9月末に終了したところ。そして9月8日に策定された「中小企業活性化パッケージNEXT」により、ポストコロナへの段階的移行をはかることを目的に、コロナ禍における資金繰り支援の継続・拡充が中小企業庁より発表された。厳しい経営環境の中で抱えた負債の返済という視点から、収益力改善や事業再生などを加速させたいという前向きな視点への転換が促される。 〈図④〉 (出典:経済産業省ウェブサイト(当該ページのURL) ■経産省による「セーフティネット保証5号」  経済産業省が行う「セーフティネット保証5号」制度に関しては、20年3月より社会福祉施設等関連業種についても新たに指定がなされた。同制度は、経営の安定に支障が生じている中小企業者を、一般保証(最大2.8億円)とは別枠で借入債務の80%を保証する資金繰り支援制度。新型コロナによる利用控え等による減収にも適用が可能だ。 社会福祉施設等関連の対象業種は▽看護業▽特別養護老人ホーム▽介護老人保健施設▽通所・短期入所介護事業▽訪問介護事業▽認知症グループホーム▽有料老人ホーム▽地域密着型特別養護老人ホーム▽地域密着型通所介護▽養護老人ホーム▽経費老人ホーム▽その他の老人福祉・介護事業▽その他の児童福祉事業▽その他の障害福祉事業――など。 新型コロナの長期化・拡大による経済活動の抑制等に伴う影響を受けている事業者等について、認定基準の運用の緩和も実施している。利用の際は、取引のある金融機関又は最寄りの信用保証協会に相談のこと。 ■内閣府による「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」  20年閣議決定の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として創設された「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」。新型コロナの影響を受けている地域経済や住民生活を支援し地方創生を図るため、各自治体が地域の実情に応じた事業を行うための交付金として活用されている。22年9月、この中から「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」が新たに創設された。  当該交付金は、エネルギー・食料品価格等の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対 し、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施する取り組みに、より重点的・効果的に活用することとされている。予算額は6000億円、実施主体は都道府県及び市区町村。この推奨事業者として、「医療・介護・保育施設、公衆浴場等に対する物価高騰対策支援」が挙げられた。  一般社団法人日本デイサービス協会が218の加盟事業所に対して22年7月に行った調査によると、休業や利用控えなどの影響が大きく見られた通所介護事業者においては、特に燃料費高騰の影響として、電気代約16%、ガス代約28%、ガソリン代約22%の上昇が見られたという。こうした事態を受け、内閣府としても、当該交付金のより一層の活用を促している。

専門技術を磨き、顔の見える関係を広げ紹介患者を増やすー他院との付き合い方ー

専門技術を磨き、顔の見える関係を広げ紹介患者を増やすー他院との付き合い方ー

<取材先>金子耳鼻咽喉科(大阪市阿倍野区) 金子敏彦院長 「1度の手術で治し切る医療」をモットーに、年間200件以上(延べ800件超)の日帰り手術を行う金子耳鼻咽喉科。来院患者は当初、大半がホームページ経由でしたが、他科診療所や大阪府内の手術施設のない耳鼻咽喉科診療所からの紹介も増えています。 その背景には、地道な信頼関係の構築があります。 「開業以降、横のつながりを特に大切にしてきました。医局を離れた後、医師一人で診察を続けることは、臨床・経営両方の面で、ある意味、とても危険です。大きな組織に属しているうちは最新の医療情報は勝手に入ってきますが、開業するとそうはいきません。医療の進化は加速度的に早くなっているので、漫然と同じことをしていると、診療レベルが低下しかねません」と話す金子敏彦院長。 専門性を高く保ち、他院との差別化を図るために、自己研鑚を積むとともに常時アンテナを張るよう心がけているそうです。加えて、「誘われた飲み会を断らない」のもポリシーだと言います。 「お酒の席でざっくばらんに情報交換をするのは、結果的に臨床レベルの向上だけでなく、営業にもつながっています」 意思を同じくする耳鼻科医とは3、4カ月毎に勉強会を行っています。「症例をもとに議論することで、私の診療スタイルや技術は相手に伝わります。力量のわからない医師に大切な患者さんは紹介できないでしょう。もちろん知識のアップデートにも役立ちます」と金子院長。 同じ耳鼻咽喉科でも「めまい診療が得意」「睡眠時無呼吸症候群に詳しい」「発声を研究している」など、それぞれに得意分野がある医師とは患者を紹介し合う連携をしています。 最適な医療を受けられるため患者にとっての利点も大きいです。同院では完全予約制を敷いているものの、他院からの紹介患者を速やかに受け入れられるよう、常時「新患枠」を設けています。 紹介患者の診察後は、専門的所見を添えて丁寧に返事を書きます。どのように診断を下したのかを順序立てて根拠をもとに説明し、必要ならばCT画像も添付する。日帰り手術という特徴があるため、同一診療科からの紹介も多いですが、紹介患者に対しては、きちんと説明し手術後は紹介元の診療所に戻します。 紹介患者と紹介元へのきめ細かな配慮で、次の紹介につなげているのです。 「診療所の技術と姿勢を周囲に理解してもらう機会づくりは必要です。業界は狭いので、悪いうわさが立つようでは誰も患者を紹介しようとは思いません。営業活動という意識はありませんが、横のつながりを大事にし、日々の診療を地道にまじめに続けていくことは、新患獲得の両輪ではないでしょうか」 取材先:金子耳鼻咽喉科(大阪市阿倍野区) 金子敏彦院長 監修:日本医療企画 (取材・掲載年:2019年5月)

心や個人の問題に留めずメンタルヘルスをサポートしよう

心や個人の問題に留めずメンタルヘルスをサポートしよう

<取材先>株式会社IDO 代表取締役 井戸 和宏 メンタルヘルスと聞くと、「心の病」「繊細な人がなる」といったイメージを持つ人もいるでしょう。 しかし、実際のメンタルヘルスは心の状態のみならず、日々の生活や働き方とも大きく関わってきます。 介護事業者向けのメンタルヘルス研修を行っている株式会社IDO代表取締役の井戸和宏さんに話を伺いました。 メンタルヘルス不調への気付きと対応が必要 ──新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、介護現場における職員の心理的ストレスも大きくなっています。そうした中、介護事業所にも職員のメンタルヘルス対策への取り組みがますます求められるようになってきました。最初に、事業所におけるメンタルヘルス対策とはどのようなものか教えていただけますか。 メンタルヘルス対策の基本は、厚生労働省が掲げている『職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜』の中で示されている「4つのケア」になります。 ①職員自身がストレスを理解して自らのストレスを予防・軽減する「セルフケア」、②管理者が職場環境の改善や職員の相談対応に努める「ラインによるケア」、③産業医などが専門的立場から職員や管理者を支援する「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、④職場外の機関や専門家を活用する「事業場外資源によるケア」の4つで、職場のメンタルヘルスケアはこれらのケアで構成されます。 例えば、職員が自身のストレスに気付いた場合、それを上手く解消する方法を身に付けてセルフケアを行えれば、問題はそこで解決します。ところが、セルフケアで対応しきれない場合は、管理者に相談して解決を図ります。あるいは、職員本人が不調を自覚していないときは、管理者が早期に気付いて声をかけ、職員の健康回復に努めます。しかし、管理者でも対応が困難な場合は、産業医や人事労務管理の職員などに介入してもらい、環境改善などに取り組む必要が生じます。それでもなお、解決困難なケースでは、外部の専門的な相談機関に依頼し、支援やサービスを提供してもらい改善を図る、という流れになります。 ——メンタルヘルス対策というと、精神的にかなり深刻な状態に陥った人に対して行われるものというイメージがあります。 介護現場でのメンタルヘルスというと、うつ病の人や業務の継続が困難になってしまった人など、かなり重症のケースを想像しがちですが、いわゆる「メンタルヘルス不調」と呼ばれる状態に対してメンタルヘルスケアが必要であると考えられています。 「メンタルヘルス不調」とは、「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」と定義されています。具体的には、人間関係のトラブルで悩んでいる、ストレスで飲酒量が増えてしまったなど、誰でも思い当たるような心理や行動の変化を幅広く含んでいます。 職員のメンタルヘルスは経営に大きく関わる問題 ──「精神力の弱い人が心を病んでしまうのであり、メンタルヘルスは個人の問題」という考え方もあると思います。メンタルヘルス対策に法人全体で取り組む意味はどこにあるのでしょうか。 たしかに、ストレス耐性には個人差があるので、同じ職場にいてもストレスに耐えられなくなってしまう人と、大丈夫な人がいます。しかし、ストレスに弱い人が耐えられなくなって職場を去ってしまうと、残されたストレス耐性の高い人に仕事が集中し、その人もいずれバーンアウトして離職する恐れが出てきます。そうなると、最終的には組織の働き手がいなくなり、経営も立ち行かなくなる。メンタルヘルスケアは、ストレスに弱い個人の問題に留まらないのです。 ──ストレス耐性の高い人だけを集めることができれば、上手くいくようにも思えます。 働き手が辞めても、すぐに補充の人が入ってきてくれた時代もありましたが、今はそうはいきません。特に介護現場のような労働集約型の職場では、人手が減ってしまうことは経営上の大きなマイナスになります。 ストレス耐性やパフォーマンスの高い人に依存して、仕事を集中させるのではなく、“できる人にも無理をさせない”マネジメントが求められているのです。図表1のように、ストレスが小さいと「低パフォーマンス」になりますが、大きすぎると、本来、高パフォーマンスを発揮できる人も「バーンアウト・メンタル不調」に陥る。メンタルヘルス対策では、そのどちらにも偏らない“中庸”をめざすことが重要です。それが個人としても、組織としても「最適なパフォーマンス」に繋がるのです。 モチベーションを保つには自分の目標を持たせる ──介護業界特有のメンタルヘルス上の問題はありますか。 どんな仕事にもストレスは付き物です。それでも多くの人が簡単に離職しないのは、モチベーションが保たれているからです。モチベーションを高める要素には、身体の健康状態が良いこと、明確な目標があること、使命感が持てること、そして、どんな状況にも適応できる柔軟性があることなどが挙げられます。 介護職の人は、使命感が強いのです。目の前の利用者を元気にしたい、幸せにしたいという強い思いを持っている人が多いと思います。しかし、自分の目標が明確にある人は意外と少ないのではないでしょうか。ここでいう“目標”とは、「リーダーになりたい」とか「資格を取って専門性を高めたい」といった、具体的な“なりたい自分像”のことです。使命感だけで仕事をしていると、例えば、全身全霊で介護した利用者が中々改善しないとか、亡くなってしまったといった場面で力尽きてしまいやすいのです。将来の目標も、介護に携わる意義も見失って、仕事を辞めてしまう人もいます。 職員の“なりたい自分像”を明確にすることは人材育成の上でも極めて重要です。本人が自分でそれを見つけられないときは、上司などが話を聞きながら一緒に目標を考えてあげることも必要です。 ──介護事業所の場合、上司にあたる管理職が現場に出るケースも多く、職員の相談に乗り、目標を一緒に考えるとなると負担です。 そうですね。事業所の規模が小さくなるほど管理職の負担は大きくなりやすく、一般職の3倍以上の業務量を抱えている管理職も珍らしくありません。 図表2に、経営者、部長職、課長職、一般職に分けて、それぞれの立場における悩みやストレスを示していますが、最も負担が重くなるのが、課長職やリーダー職です。この立場の人は、上司(部長職)とのコミュニケーションに悩まされる一方、部下(一般職)からの相談や要望にも応えなければなりません。上と下との“板挟み”になりやすいポジションで、心労もかさみやすいのです。 課長職の業務量が過多で、一人ひとりの一般職員の相談に時間をかけられないケースでは、外部の専門機関に依頼して、職員個々の悩みには外部機関のカウンセラーに対応してもらい、事業所にフィードバックする仕組みを取り入れるのも一案です。職員が仕事上抱えた悩みは、怒りや嘆きなどの激しい感情を伴うこともあり、できるだけ早く対応してあげる方がよいでしょう。本人も、ひとまず“信頼できる相手”に話を聞いてもらえるだけで、気持ちがすっきりすることが多いのです。事業所が依頼している専門機関のカウンセラーであれば、職場の状況もある程度理解しているので、安心して相談を持ちかけやすいと言えます。 メンタルヘルスが良好なら介護の質も向上する ──これからメンタルヘルス対策に取り組もうとする事業所に、まずどこから手を付ければよいのか、アドバイスをいただけますか。 メンタルヘルス対策のキーパーソンとなる、組織の中間層に位置する課長職やリーダー職に向けて、メンタルヘルス対策の研修を行うことから始めるとよいでしょう。次いで、一般職にセルフケアの方法を学んでもらいます。そして、両者がお互いのストレスを理解し、一部の人に負荷がかかり過ぎないように調整しながら、業務を上手く進めていく方法を考え、工夫することが求められます。 このときに重要なのは、どの職員にもメンタルヘルス対策の全体像をきちんと把握してもらうということ。全体像というのは、職員から受けた相談が、その後どこでどう分析・検討され、最終的にどのような形で解決・改善に至るかという道筋のことです。職員が業務上の悩みを上司に相談すれば、職場の課題が解決され、環境が改善し、組織が良くなるという見通しが持てることが大切です。 ある調査では、職員同士の人間関係が円滑な事業所では、認知症利用者のBPSDが表れにくいと報告されています。職員が安心し、希望を持って働ける職場環境では、利用者も大きなメリットを享受できるということです。 ──メンタルヘルス対策は介護の質にも関わるということですね。 そうです。ただし、メンタルヘルス対策を常に優先するということではなく、他の課題とのバランスをとっていくことが大事です。例えば、介護の仕事は職員がまとまった休暇を取りにくく、負荷のかかった状態が続きやすいですが、個々人の状況や希望に応じて交代で休暇が取れるようにするといった配慮をすべきでしょう。負荷がかかり、ストレスのある時もあるけれど、ストレスから解放されて休める時期も用意することで、心身のバランスをとってもらうのです。こうした調整には、一人ひとりに合わせたきめ細かな対応が必要です。 職員のメンタルヘルス状態を知ることは、人材育成や事業運営にとっても大きな意味があります。どの職員が、どのタイミングで、どのような役割を担うと最も高いパフォーマンスが発揮できるかを考えてマネジメントすることができれば、職員自身にとっても、その職員から介護を受ける利用者にとっても、そして、介護事業を運営していく事業所にとってもプラスになるはずです。ですから、職員のメンタルヘルス対策は、介護経営において重視すべきテーマだと言えるのです。

予防歯科のカギを握る歯科衛生士の定着を実現しよう

予防歯科のカギを握る歯科衛生士の定着を実現しよう

<著者>坂田信及 社会保険労務士・医療経営士 多くの歯科医療機関は予防歯科機能を果たすことが求められる一方、歯科衛生士の採用は大変厳しい状況です。歯科衛生士の定着はきわめて重要な経営課題と言えそうですが、そのポイントとして「安心して働ける労働環境の整備」「歯科衛生士の使命感の充足」が挙げられるようです。 現在、多くの歯科医療機関は、予防歯科の機能を果たすことが求められています。その中でカギを握っているのが、歯科衛生士の採用・教育です。   歯科衛生士の求人倍率は現在、一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会などによるとおおよそ20倍程度であり、住居から通勤が近いところを選ぶ傾向も指摘されています。   筆者自身のこれまでの経験から言うと、歯科衛生士の採用ではやはり「職場環境の整備」が重要で、 ▽社会保険の完備(健保・厚生) ▽賠償責任保険 ▽有給の消化率 ▽福利厚生 なかでも ▽産休・育休の制度の充実 ▽セミナー・研修の受講支援 ――等を挙げることができる。   教育体制の整備や、それらを通じたやりがいの熟成も重要です。 先輩から後輩への教育すなわち、1年後に自分がどうなっているのかを肌で感じられるような職場環境の整備、また歯科医を中心とする診療チームのなかで、自分がいかに技術をあげ、自分がチームのなかで貢献できていくかを感じていけるかが大切です。   予防歯科の充実は、衛生士が自ら患者様を長期的に担当し、信頼関係を構築していく体制を構築することにつながります。 自らを信頼し頼ってくれる人々への口腔内を守り、健康を守る仕事という認識を熟成し、やりがいを持ってもらえます。予防歯科の場合、それこそ親子3代を診るというケースもあり、家族ぐるみになる場合もあり、患者様から信頼を得ることができるということになります。長期勤務すなわち離職率の低下につながっていくでしょう。   歯科衛生士に限らず、マズローの欲求5段階説「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」のうち、最も高い位置にある「承認欲求」「自己実現の欲求」を、医院のなかで満たしていくような組織を構築していくかが重要ですが、そこでは今お話ししたこと以外に、院長先生が、「スタッフを大切に思っている」ということが、スタッフに感じ取ることができる施策を行っていくことも欠かせません。 衛生士さんに限らず職員の離職率の低下にもつながり、地域にも必要とされる歯科医院が構築できると思います。 著者:坂田信及 社会保険労務士・医療経営士 掲載日:2022年10月

介護事業者が選択しうる資金調達手法・補助金活用

介護事業者が選択しうる資金調達手法・補助金活用

<取材先> 合同会社TYパートナーズ 代表社員 筒井祐智 介護事業者向けコンサルティング事業などを行うTYパートナーズ(東京都港区)。全国110ヵ所超でデイサービスを展開する早稲田エルダリーヘルス事業団の元社長である筒井祐智代表に、持続可能な介護事業経営に向けた、資金調達手法や補助金・助成金の活用について伺いました。 【本文】 ■負債による資金調達  まず、資金調達の手法についてですが、大きく4つに分かれます。1つ目は「負債による調達」(表①参照)。金融機関や自治体の制度融資、ノンバンク(ビジネスローン)、私募債などからの借入がこれに当たります。 金融機関からの融資について、具体的には、都市銀行や地方銀行、信用金庫、信用組合、政府系金融機関(政策金融公庫等)など。創業間もない事業者は銀行からの融資を受けるのが難しい場合もあり、信用保証協会を利用した融資や、政府系金融機関の創業融資を活用するケースも多くあります。福祉に特化した仕組みとしては、福祉医療機構(WAM)による福祉貸付事業の活用もできます。  2つ目は「自治体の制度融資」。地方自治体と民間金融機関、信用保証協会の3機関が連携して実行する融資です。創業間もない事業者や初めて融資を受ける事業者でも利用しやすいというメリットがあり、新型コロナウイルス感染症関連の制度もあります。  3つ目が「ノンバンク(ビジネスローン)」。銀行以外の金融機関であるノンバンクは、信販会社、消費者金融等が提供する事業資金に特化した金融商品です。金融機関からの調達に比べ、調達にかかる時間は短いが金利が高 く返済の負担が大きいのが特徴。介護給付費を担保に借入を行うといったローンもあります。  そして4つ目「私募債」は、企業が発行した社債を、投資家や取引先など50人未満の人々に販売し調達を行う手法です。手続きが公募債に比べて簡易で、保証人を立てる必要がない等のメリットある一方で、償還時の一括返済や調達コストが高いといったデメリットもあります。 ■資産の現金化による資金調達  次に、資産(債券や不動産)を売却することによる調達手法です(表②参照)。 まず「債券の流動化(ファクタリング)」ですが、これは介護報酬債権をファクタリング会社に譲渡することで資金を調達します。通常2ヵ月の介護報酬債権の現金化を早期化できる一方で、事務手数料等がかかるため、満額を受け取ることはできない点がデメリットと言えます。また、短期的な活用にとどめない場合、長期的には資金繰りを悪化させる可能性があるので注意が必要です。  そして、「不動産のオフバランス」。保有している不動産を売却して資金調達を行いますが、売却した不動産を不動産会社より借りる(リースバック)ため、そのままの拠点で運営を継続できます。  昨今では、クラウドファンディングの活用事例も増えてきました。これによる施設の流動化(オフバランス)も見られます。 ■資本の増強  さらに、「第三者割当増資」等により資本を増強する手法もあります(表③参照)。 負債ではないので返済の必要がない点がメリットですが、出資者による経営への関与・干渉が想定されるため、自由な経営が難しくなる可能性があるでしょう。 ■助成金・補助金の活用  また、助成金や補助金の活用は非常に重要です。事業の発展や雇用促進、設備投資等を目的として国や地方公共団体が提供する資金であるため、融資と違い、返済の必要がありません。申請の採択から入金までに時間は要しますが、活用しない手はないでしょう。例えば新型コロナ関連の貸付は、厚労省では現在約2兆円の規模で実行されています。なお、助成金と補助金の違いについて、助成金は厚労省管轄のものが多く、雇用の安定や職場環境の改善を目的とした制度であり、補助金は、主に経済産業省管轄で、創業支援や設備投資関連の事業が対象となります(表④参照)。  具体的に、「人材雇用」「人材育成」「従業員の待遇向上」「職場環境の整備」「介護機器の導入」に分けて、活用可能な助成金・補助金を見てみましょう(表⑤参照)。  まずは「人材雇用」関連の助成金です。「キャリアアップ助成金(正社員コース)」は、従業員の待遇や福利厚生制度を充実させたいと考える経営者を支援する制度。就業規則や労働協約等に基づいて、有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換・直接雇用した場合に助成金が支給されます。例えば有期雇用を正規雇用へ転換した場合では、1人あたり57万円~72万円支給となります。ほかにも、職業経験・技能等の理由で安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者等からの紹介を受けて一定期間試行雇用した場合に助成金を支給する「トライアル雇用助成金」制度や、高年齢者や障害者などの就職困難者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主を支援する「特定求職者雇用開発助成金」、中途採用による雇用の活性化を目的とする「中途採用等支援助成金」、65歳以上への定年の引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う場合に支給される「65歳超雇用推進助成金」等があります。   次に、「人材育成」関連の助成金を見てみましょう(表⑥参照)。 「人材開発支援助成金」は、職業訓練などの人材開発にかかった費用の一部を支給する助成金です。岸田政権が掲げる経済政策「新しい資本主義」において、「人への投資」が第一の優先課題として挙げられたことを受け、令和4年に「人への投資促進コース」が追加され、現在計8つのコースが用意されています。ほかに、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進する規則などを導入・推進する事業者を支援するための「キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)」や、非正規雇用労働者と正規雇用労働者に共通する諸手当に関する制度を策定する事業者の支援を目的とした「キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)」等があります。  「従業員の待遇向上」関連では、仕事と家庭を両立できるような環境づくりを推進するための「両立支援等助成金」、「職場環境の整備」関連では、中小企業団体が従業員の労働環境の向上や人材の確保を行い、雇用管理や雇用創出を行うことを推進する「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」も活用できます(表⑦参照)。  「介護機器の導入」に関する補助金には、例えば「IT導入補助金」があります。中小企業および小規模事業者が業務改善のためにITツールを導入する際、その経費の一部を補助することでこれらの施策を支援するためのもので、A類型とB類型に分かれており、B類型のほうが求められる条件のハードルが高い分、支給される補助額も高くなっています。補助対象はソフトウェア費用、クラウド利用料、ITツール導入関連費用。補助額はA類型で30万~150万円、B類型で150万~450万円(いずれも補助率は1/2以内)です。ほかに、「ICT補助金」「介護ロボット導入支援補助金」などがあります(表⑧参照)。 ■情報をキャッチすることが重要  助成金・補助金は、廃止になるものや新たに追加されるものがあり、管轄も各省庁、都道府県、自治体等様々で情報源も異なります。こうした情報に常にアンテナを張り、いち早くキャッチし続けることが重要です。WEB上での探し方としては、①厚労省、経産省、内閣府等の省庁のHPで探す②各自治体のHPで探す③中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」サイトで探す――等の方法で、地道に情報を集める必要があります。 介護業界では、「人材関連」「介護機器導入」に活用できるものが多くありますので、自社での取り組みに適用できる助成金・補助金を利用しない手はありません。持続可能な介護事業経営のために、資金調達や助成金・補助金の活用に関する知識を常にアップデートしておくことが重要でしょう。 ※本記事は、㈱高齢者住宅新聞社主催の、9月13日に開催した介護事業者向けセミナー「介護事業者に必要な財務・会計知識~持続可能な介護経営のために~」の内容を編集し作成したものです。 筒井 祐智(つつい・よしとも) 合同会社TYパートナーズ 代表社員 福岡市出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、富士銀行を経て、医療法人に入職。事務・管理業務に従事した後、グループ内の医薬品開発企業の経営企画責任者としてIPO、M&A等を主導。その後、早稲田エルダリーヘルス事業団 代表取締役を務め、日本デイサービス協会理事、全国介護事業者連盟東京支部副支部長等を歴任。

今さら聞けないふるさと納税の概要とメリット

今さら聞けないふるさと納税の概要とメリット

著者:米本合同税理士法人 ふるさと納税という言葉は、CMも流れており広く知られていますが、実際にどのような制度かと聞かれると、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、このふるさと納税について説明します。 目次 1.ふるさと納税は、どのような制度? 2.ふるさと納税のメリットは? 3.ふるさと納税を実際に行うには? 1.ふるさと納税は、どのような制度? ふるさと納税は納税とつきますが、実際には応援したい地域に対する寄付のことを言います。「ふるさと」とつくため故郷にしかできないと思われがちですが、実際にはどの地域に対してでも行うことが出来ます。 ふるさと納税をすることにより、寄付した金額のうち2,000円を超える部分については、所得税や住民税の控除が受けられますし、寄付金の使い道を指定でき、寄付した地域からお礼の品として名産品なども頂ける制度となっています。 2.ふるさと納税のメリットは? ふるさと納税のメリットは主に3つあります。 1つ目は、ふるさと納税をした地域からお礼の品として名産品などが届くことです。 地域や金額によって、食料品や温泉利用権、家電など様々なお礼の品があります。「ふるさと納税」と検索すると、専用サイトが出てきますので、そのサイトからお礼の品がどのようなものかを確認することもでき、お礼の品から寄付をする地域を選ぶことも可能です。 例えば、大阪市にふるさと納税する場合には、1万円以上の寄付で「大阪市立ミュージアム御招待証」が送られてきます。 2つ目は、寄付した金額の使い道を指定できることです。 ふるさと納税は、環境保全や産業の振興など様々な用途で使用されます。 自治体によっては、寄付した金額をどのように使って欲しいかを指定することもできます。   3つ目は、ふるさと納税額のうち、一定額が所得税、住民税から控除されることです。 ふるさと納税では、一定の控除限度額内であれば、寄付をした金額から2,000円を差し引いた額を所得税や住民税から控除することが出来ます。 そのため、限度額までであれば、実質的な負担は2,000円となりますが、お礼の品が届くため、このお礼の品の分が得するという形になります。(お礼の品の実際の購入価額が2,000円を超える場合には、その超えた分が得になります。) 控除限度額については、ふるさと納税をする方の収入や扶養人数などによって変わります。「ふるさと納税 限度額」と検索すると、簡易計算できるサイトもありますので、限度額を知りたいという方は一度計算してみてはいかがでしょうか。 また限度額については、ふるさと納税する年の1月1日から12月31日までの金額となります。限度額の寄付をした場合でも、年が変われば今まで寄付した分がリセットされ、 再度限度額が使えるようになります。 3.ふるさと納税を実際に行うには? ふるさと納税を行う手続きは、地域によって異なりますので、応援したい地域のホームページ等で確認するか、直接お問い合わせをして手続きをします。 また、ふるさと納税の専用サイトがありますので、お礼の品や寄附金の使用用途から選んで手続きを行うことも可能です。(サイト経由で寄付が出来ない地域もあります。)   昨今高所得者に対する課税強化や児童手当の廃止など、一定の所得を超えると制用が受けられない制度が増加しています。ふるさと納税は所得が多ければ多いほど限度額が増える仕組みですので、有効活用していくことで実質的に支出を減らすことが可能です。ある意味高所得者の方に対する救済措置と解釈することも出来ると個人的には考えています。   今年もあと3ヶ月をきり、そろそろふるさと納税を始めようかと考えている方もいると思います。弊社ホームページでは上記の他ふるさと納税の流れなどを図解を踏まえて解説しておりますので、まだふるさと納税をされたことがなく、気になっている方は是非アクセスしてみて下さい。   著者:米本合同税理士法人 (ふるさと納税に関する弊社コラムはこちら) https://www.yonemoto.or.jp/column/column13.html   (弊社についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/iryou/index.html

【解説】歯科診療所の開業費用の内訳と相場を知ろう。開業資金、テナントなら8500万円。

【解説】歯科診療所の開業費用の内訳と相場を知ろう。開業資金、テナントなら8500万円。

<取材先>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 開業にあたっては内装工事、ユニット設置、レセコン導入、ホームページ作成、内覧会――など、さまざまな準備が必要で、開業にあたってはこれらの支出も念頭に置かなければなりません。ここでは実際の相場感を踏まえて解説していただきます。 目次 01:テナントの家賃 02:内装費用 03:ユニットは開業時、何台くらい入れたらいいの? 04:レセコン 05:レントゲン、コンプレッサ他(機械室関係) 06:ホームページの作成 07:内覧会 08:リクルート費用・材料仕入れ・院内家電 09:開業前運転資金 10:開業前運転資金の考え方のポイント 開業するにはさまざまな費用がかかります。それぞれの費用のポイントを解説します。 1.テナントの家賃 テナント開業の場合には、敷金として家賃の6~10カ月分と不動産屋に仲介手数料として1カ月分、前家賃1カ月分の計8~12カ月分の家賃が最初にかかります。 【テナント開業の場合のポイント】 坪単価×坪数 ⇒ 何坪くらいの診療所を検討するか。 例 25坪で4台、30坪で5台くらいのイメージです。 2.内装費用 内装はさまざまですが、1つの目安として坪単価税抜きで80万~90万円です。 (例)30坪の診療所の場合、30坪×80万円=2400万円(税抜き) 3.ユニットは開業時、何台くらい入れたらいいの? 開業時には2台あれば十分に診療は回ります。配管は4台、5台分あったとしてもユニットを全部設置する必要はありません。患者さんの人数が1日平均で15人を超え始めたら3台目を検討してください。 ※ユニット1台あたりの相場は250万~350万円です。 4.レセコンについて レセコンについては、コンピューターですので5~6年くらいの期間で買い換えが必要になります。そのため、リースと購入のどちらでも構いません。ただし、購入の場合には銀行からの融資を受けないといけませんので、融資枠に余裕がない場合はリースを選択することをお勧めします。 5.レントゲン、コンプレッサ他(機械室関係) レントゲンについては、先生のやりたい診療によりCTを導入するのか、セファロも必要か、という観点で決めるとよいです。実際にCTを導入しても利用する頻度が著しく低い医院もあります。開業後の診療方針、ビジョンを考えて医療機器の導入を検討してください。 6.ホームページの作成 現在、ホームページは患者様を呼び込むツールとしては一番の効果的です。保険診療の新規の患者さんの来院動機として多いのは、「いつも医院の前を通っている」「家の近くだから」という来院動機も多いですが、そのような方々も、ホームページを確認してから来院します。 ➡金額として30万~150万円の予算が必要です。 7.内覧会 内覧会を行うか行わないかで、初月のレセプト件数は倍くらい変わります。内覧会の役割は周囲の方々に「ここに歯科医院がありますよ!」というアピールです。 内覧会の相場金額として130万円です。 8.リクルート費用・材料仕入れ・院内家電 (ア)リクルート費用は、知り合いの人を連れてくるかどうかでも費用は変わりますが、リクルート予算として20万円は確保しましょう。 (イ)材料仕入れ代については、概算で200万円を予算として確保します。実際はもっと下がるかもしれません。 (ウ)院内家電としてコピー機、冷蔵庫、レンジ、洗濯機、PC、待合室のイスなどが必要になります。予算として60万円は確保しておくとよいでしょう。 相場金額として下記の予算取りをしてください。 ※リクルート費用 ➡ 20万円 ※材料仕入れ費用 ➡ 200万円 ※院内備品 ➡ 60万円 9.開業前運転資金 開業前運転資金に含まれるものとしては、診療所の家賃や借入金利息、採用した従業員の給与、税理士費用や社労士費用などが入ります。 実際に家賃はいつから発生するのかなど、契約時にフリーレントの交渉ができると開業前運転資金の負担を減らすことができます。 10.開業前運転資金の考え方のポイント ➡開業前の家賃の支払う合計額+50万円ほどを予算に。1カ月でかかる費用の合計額の最低5カ月分の確保は必要と考えるべきです。 例)月に200万円かかる場合は、200万円×5カ月分=1000万円必要 制作年月:2022年9月21日 ~関連記事~                 >>記事一覧へ戻る  

最悪の場合は「保険医」取り消し 「指導・監査」に至る理由とは?

最悪の場合は「保険医」取り消し 「指導・監査」に至る理由とは?

<著者>株式会社日本医療企画 情報企画開発グループ 保険診療を行う上で、切っても切れないのが行政の指導・監査です。各地域の厚生局が担当していますが、そのキッカケとなるのは診療報酬請求に絡んだものが多いようです。 一般的に、開業時には医療法、健康保険法、労働法、不動産関連法、税法――と多方面で行政的手続きが必要になりますが、その後は必要になる場面は多くありません。承継時、あるいは分院展開する際は法人化しなければなりませんので、そのための手続きが発生しますが、目立ったものと言えばそのくらいのようです。 ただ、例外的に行政と深くかかわる機会として「指導・監査」があります。順序としては①集団指導、②集団的個別指導、③個別指導、④監査――が設けられており、指導で改善が見られない場合、監査に至るというケースで進みます。最悪の場合、保険医療機関の指定や保険医登録の取り消しも起こりえるだけに、注意が必要です。 個別指導・監査では、医院を訪問した指導医療官から多岐にわたって質問を受けます。診療の基本的な流れや患者の診療内容などについて、患者の診療内容明細書に基づいて確認することが一般的です。指導はおおむね2時間、監査は丸一日かけて行われ、通常は複数回に及ぶことになります。 取り消し処分にまで至ったケースを見ると、その理由として多いのは、 ▽架空請求(実際には行っていない保険診療を行ったとして請求) ▽水増請求(実施した保険診療に未実施の保険診療を水増しして請求) ▽振替請求(実施した保険診療を点数の高い別の診療に振り替えて請求) ▽保険適用外診療の保険請求(実施した保険適用外診療〈自由診療〉について、保険適用の診療として請求)――などです。 個別指導・監査に至るタイミングとしては、各地域の厚生局の担当官が「診療内容や診療報酬請求に不正または著しい不当があったことを疑うに足りる理由があると判断する場合」というのが一般的な解釈です。 しかし、実際のお話をうかがうと、医院とトラブルを起こした従業員が厚生局に駆け込むケースもあるそうです。 労務問題についても同様ですが、やはり退職する従業員は、気持ちよく、温かく送り出すことが求められると言えますが、不正請求は現に戒めなければならないことは、論を待ちません。

【歯科診療所の承継開業時のポイント、注意点】コンサルタントによる解説

【歯科診療所の承継開業時のポイント、注意点】コンサルタントによる解説

<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 目次 01:設備を引き継ぐ場合のメリット、注意点 02:スタッフを引き継ぐ場合の注意点 03:目に見えないものの引継ぎにも配慮しよう 04:親子承継時の注意点 設備を引き継ぐ場合のメリット、注意点 一般的に、事業承継で設備を引き継げるメリットとして「引き継いだその日から診療ができる」点が挙げられます。親子承継ならば、当該設備についての細かなチェックもかなり省略できそうです。ただ、「診療内容」については親子の間で確認しておく必要があるようです。 歯科医院の価値は、「事業価値(事業としての生み出される利益)」と設備などの「資産価値」の2つから決まってきます。後者には、土地建物の他にも、医療機器や事務機器、家具など、さまざまなものがあります。ここでは、「設備」について取り上げます。 事業承継で設備を引き継ぐメリットは、引き継いだその日から診療ができるということです。 設備投資を継続的に行っている医院を承継する場合には、新規開業してすべて揃えるよりもはるかに安価で必要な設備を手に入れることができます。内装も定期的に更新されているのであれば変える必要もありません。 一方で、設備投資を行っていない医院を承継する場合は、必要な設備を追加で購入したり、内装を更新したりする必要があります。同時に、更新するために診療を休まなければなりません。 設備を引き継ぐ際の注意事項としては、引き継ぐ設備や医療機器・備品については、すべてリスト化し、それぞれの現在価値(もしくは資産台帳の簿価)を確認します。その上で、引き継ぐ予定の機械・器具・内装を確認し、不具合がないかをチェックします。 <資産となる項目> ●土地・建物もしくは内装工事(設備工事、外構工事などを含む) ●医療機器や事務機器 ●医療法人の場合:出資金 ●車両 ●借入・リース等の債務 ●材料・備品等の在庫 ●賃貸の場合:敷金、保証金 ●印刷物・広告・HP そのため、継承にあたっての医院見学の際に、そのチェックを承継する側と後継者が一緒に進めておくべきです。そうすることで、引き継いだ後のトラブルを防止することができます。 その他、医療材料の在庫も必ず確認しましょう。特に高価なインプラントなどは、後継者が利用する予定があれば問題ありませんが、利用しないのであれば対象から外すと取り決めておきましょう。 リース設備などの負債の引継ぎをどうするかに関しては、レセコンなどについて、当事者だけで話を済ませるのではなく、リース会社に契約状況と残債(未払い金)を確認しておきます。その上で残債を引き継ぐ場合は、残債部分は売買価格から差し引くことになります。 親子承継の場合は、設備についての細かなチェックは必要ありません。むしろ、今後の設備投資についての方針が問題となります。 「先進的な治療方法をやりたい後継者」と「無駄な設備投資はさせたくない前院長」という構図になってしまうと、トラブルのもとと、なりがちであることも付け加えておきます。 スタッフを引き継ぐ場合の注意点 事業承継において「スタッフもそのまま引き継ぐ」ケースはしばしば見ることができますが、特に親子承継の場合、「先代の頃のやり方」が強く残ることが想定できそうです。患者の安心感を得やすい一方、後継者としてはやりづらい面もあるようです。注意点を解説していただきます。 歯科医院を承継する後継者にとって、あらかじめ患者の個性や性格が分かり、診療の流れを熟知しているスタッフを譲り受けられることは大きな魅力です。院長が変わっても同じスタッフが継続して勤めてくれれば、患者も安心して来院できます。 事業承継にあたり、スタッフを承継できるメリットは、①スタッフを採用する費用がかからない、②スタッフを教育訓練する費用がかからない、③採用教育の時間を削減できる、④患者との関係性ができているため、経営者交代による患者離れを防げる――という点が挙げられます。 デメリットは、①前院長のやり方を変えにくい、②スタッフの在職年数が長い場合、退職金の支払いが高額になる(隠れ債務の存在)――という点が挙げられます。 その中で、スタッフの処遇条件、退職金、有休の付与をどうするのかなど労務の問題をあらかじめ取り決めておくことはとても重要です。 明確な取り決めをせずに承継すると、新しい処遇にスタッフが不満を持ち、退職することが容易に考えられます。そうなると、スタッフ補充のために新たに採用・教育コストが発生するため、後継者は不満を持ちます。 したがって、事業を承継する側は、スタッフの退職リスクが少なくなるように手を打たなければなりません。 たとえば、「『処遇は少なくとも半年から1年は変わらない』という取り決めをする」「前院長が半年から1年程度残り、患者の引き継ぎやこれまでのやり方を伝える」という方法があります。 一定の引き継ぎ期間を設け、これまでのやり方やスタッフ、業績について後継者が理解をしたうえで、変更すべきものは変更するのであれば、理解も得られやすくなります。 合わせて、雇用契約書などの取り交わしができていないのであれば、この機会に取り交わし、安心して働ける環境を提供する経営者であることを示すのがよいでしょう。 親子承継の場合、処遇を変更しなければ、スタッフはそのまま勤めてくれることが多いものです。ただ、長年勤めているスタッフが後継者である新院長を子どものころから知っている場合、お互いにやりづらかったり、新しいやり方の導入にスタッフが消極的だったりすることが考えられます。 目に見えないものの引継ぎにも配慮しよう 事業承継で引き継ぐのは患者やスタッフ、設備など目に見えるものだけではありません。医院が育んできた雰囲気、そして経営を支えてきた経営・管理のシステムも承継の対象となります。患者、スタッフの安心感を得るためにも、こうした「目に見えないもの」にも配慮することが大切なようです。 競争が激しい歯科医院の環境では、新規開業よりも、患者を引き継げる事業承継のメリットは大きいと言えます。経営が順調な医院を、承継者が適切に承継できれば、一定の収益と認知度、ブランドを獲得することができます。 注意すべきは、開業から長年経過し、集患に力を入れていなかった医院では、患者が高齢化しており、新患が少ないことです。 それでも、患者を引き継げることは大きなメリットなのは、本来なら、開業から広告宣伝を行い、徐々に認知度を高め、ブランドイメージを確立していくところを、ショートカットすることができるからです。 しかし、「患者が高齢化している」「自分の診療方針に合わない患者が多い」といった場合は、患者の引き継ぎがかえってデメリットになることもあります。 そうならないためにも、承継する側と後継者の診療方針が合っているかを事前に確認しておきましょう。患者を引き継ぐ際には、前院長が後継となる医師を紹介したり、連名のあいさつ状を発送したり、来院者のカルテ内容を引き継いだりすれば、患者は安心します。 引き継ぎがうまくいかないと、新しい院長へのクレームにつながりかねません。たとえば、自由診療の保証期間など、承継に当たってはっきりさせておく必要のある問題は、新しい院長になってもそのまま引き継ぐかどうか、事前に取り決めて告知しておくことも大切です。 開業から長年経過している歯科医院は、患者数は多いものの、新患が少ない場合があり、将来的に患者が減っていくことが容易に想像できます。実際の新患数だけでなく、ホームページの内容が適切か、SEO・MEOの対策を打っているかどうかを必ず確認しましょう。打たれていない場合には、ホームページを作り直し、SEO・MEO対策に取り組みましょう。 親子承継の場合、患者は、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合もあると思います。大先生についている患者は、大先生と若先生のやり方を比較します。診療方針が一致している場合は問題ありませんが、異なる場合は患者から「大先生とは違う」と言われ、患者が離れるということが起こります。そのため、一定期間は引き継ぎ期間を設け、徐々に方針を変更するのが良いでしょう。 親子承継時の注意点 歯科医院にかぎらず、医療機関で親子承継がある場合、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合があります。この時に注意したいのが大先生と若先生の診療スタイルです。患者の多くは大先生のスタイルに馴染んでいると考えられます。スタイルや方針を変えるにしても、十分な移行期間を設ける必要がありそうです。 競争が激しい歯科医院の環境では、新規開業よりも、患者を引き継げる事業承継のメリットは大きいと言えます。経営が順調な医院を、承継者が適切に承継できれば、一定の収益と認知度、ブランドを獲得することができます。 注意すべきは、開業から長年経過し、集患に力を入れていなかった医院では、患者が高齢化しており、新患が少ないことです。 それでも、患者を引き継げることは大きなメリットなのは、本来なら、開業から広告宣伝を行い、徐々に認知度を高め、ブランドイメージを確立していくところを、ショートカットすることができるからです。 しかし、「患者が高齢化している」「自分の診療方針に合わない患者が多い」といった場合は、患者の引き継ぎがかえってデメリットになることもあります。 そうならないためにも、承継する側と後継者の診療方針が合っているかを事前に確認しておきましょう。患者を引き継ぐ際には、前院長が後継となる医師を紹介したり、連名のあいさつ状を発送したり、来院者のカルテ内容を引き継いだりすれば、患者は安心します。 引き継ぎがうまくいかないと、新しい院長へのクレームにつながりかねません。たとえば、自由診療の保証期間など、承継に当たってはっきりさせておく必要のある問題は、新しい院長になってもそのまま引き継ぐかどうか、事前に取り決めて告知しておくことも大切です。 開業から長年経過している歯科医院は、患者数は多いものの、新患が少ない場合があり、将来的に患者が減っていくことが容易に想像できます。実際の新患数だけでなく、ホームページの内容が適切か、SEO・MEOの対策を打っているかどうかを必ず確認しましょう。打たれていない場合には、ホームページを作り直し、SEO・MEO対策に取り組みましょう。 親子承継の場合、患者は、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合もあると思います。大先生についている患者は、大先生と若先生のやり方を比較します。診療方針が一致している場合は問題ありませんが、異なる場合は患者から「大先生とは違う」と言われ、患者が離れるということが起こります。そのため、一定期間は引き継ぎ期間を設け、徐々に方針を変更するのが良いでしょう。 <著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【歯科医院】安定経営のために知っておくべきこと・注意点

【歯科医院】安定経営のために知っておくべきこと・注意点

著者:日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 目次 01:目指すべき医業収入とは? 02:歯科クリニック経営にかかる費用 03:経営体質強化のため、職員が定着する組織を目指そう 04:職員のモチベーション向上の方法 05:キャッシュに着目した経営が大事 06:経営シミュレーションの作成方法 目指すべき医業収入とは? ● 医業収入は当面目標として「3000万円」を目指そう あるグループが統計をまとめたところ、歯科医院の年間医業収益は平均で、個人医院が約4600万円、医療法人医院が約1億2000万円といいます。事業規模が大きいほど自由診療が占める割合も高くなるようです。歯科医院経営の目安の一つとしていいのではないでしょうか。 私たち税理士が歯科医院の先生方と初めてお会いする場合、決算書を拝見することになります。 この時、まずどこに着目し、どう判断するかといったことを大まかに述べてみたいと思います。当法人も参加しているある職業会計人グループが作成している、歯科医院の統計データ(以下、データ)をもとにお話を進めます。 ● 医業収入はどのくらいか データによると、平均の年間医業収入は個人経営の医院で4598万円、医療法人で1億2190万円となっています。歯科医の先生方の会合でこのデータをお話したところ、「平均収入額が大きすぎるのではないか」といったご指摘を受けました。このデータはいずれも、夜間開業や午前中のみの診察といった歯科医院はほとんど含まれておらず、会計事務所に業務委託するようなフルタイムで稼働している歯科医院ばかりです。「これから拡大させよう」という先生方にはやはり、一つの目安としていただきたいと思います。 ● 自由診療の総収入に占める割合 医業収入における自由診療の割合は、個人医院で14%、医療法人院で25%となっています。矯正歯科を中心に扱う歯科医院でない場合でも、都市部では自由診療の割合が50%を超えるところも珍しくありません。 さらに、年間の医業収入が1億円を超える医院に限ってみると、自由診療費は27%となります。規模の大きい医院ほど診療内容のメニューが多く自由診療の収入比が高くなることがうかがえます。 歯科クリニック経営にかかる費用 ● 原価率 歯科医院の変動費は「材料費」と「外注技工料」に分けることができます。個人・医療法人を問わず、全医院で材料費が対医業収入比8%、外注技工料が同7%、両費用を合計すると15%となります。言うまでもなく医院の提供する診療内容によって変動費率は変わります。補綴の割合が高くなれば当然、変動費率は高くなりますし、予防中心なら下がります。 いずれにせよ、収入に連動する費用ですから事業計画を策定する際も原価率を念頭に置く必要があります。例えば、原価率が対収入比20%である場合、月間で収入を100万円増やしても手残りは、80万円となります。 ● 人件費率 歯科医院の最大の固定費は人件費です。データによると個人・医療法人全体で対医業収入比は平均21%となっています。この比率が30%を超えると経営は厳しくなります。 ただ、気をつけていただきたいのは、しっかり昇給し、休暇も取れる環境を用意し、厚生年金などの法定福利費も整備していかなければ、良いスタッフは集まらないという側面もあるということです。工夫することでなんとか25%程度に抑えていただきたいと思います。 ● 医業利益 個人医院の場合は所得額と言い換えてもいいでしょう。年間平均利益は1280万円です。個人医院の場合は所得から、専従者給与(つまり、家族への給与)を控除します。 ただ、専従者給与は家族への支払いで、就業時間や職種などが反映されているわけではありませんから、通常は専従者給与を控除する前の数値を参照します。控除前で見ると1634万円です。医療法人も役員報酬について、役員報酬を差し引く前で見ますと利益は2883万円となります。 年間利益が3000万円を超える歯科医院は全体の2~3割程度と推定されます。せっかくリスクを背負って開業したのですから、ここを一つの目標とされてはいかがでしょうか。 経営体質強化のため、職員が定着する組織を目指そう 医院の安定・拡大には職員の力が不可欠であることは言うまでもありません。ただ、歯科医院界はさまざまな業種のなかでも特に人の動きが激しいことで知られます。そこで力のある職員に長く働いてもらうには、組織の風通しをよくするなど、日頃からの経営サイドの配慮が求められるようです。 歯科医院の職員の採用は日に日に難しくなっており、さまざまな業種のなかでも人の動きが特に激しくなっている市場の一つです。ですから、採用後に即戦力として期待できる人材を確保することは、非常に困難なことになっています。 せっかく採用ができても、職員が医院の一員として働くということに誇りや喜びを持っていなければ、場合によっては院長の意志に反する行動をとりかねません。長く、そしてより良く働いてもらうには、医院の職員としての基本姿勢や規範、モラルなどをあらかじめ示し、十分な理解をはかった上で就労してもらうことが大切です。 ● 経営体質の強化のために 経営体質の強化には、スタッフの協力が欠かせません。歯科医院を動かすのはスタッフであり、歯科医院が評価されるのもスタッフ次第なのです。また、立案した診療方針や歯科医院のコンセプトを実現するには、スタッフの確保・育成に注力すべきです。そのためには、次のような意識を持って職員育成にあたることが重要となります。 ● 労働環境の整備とスタッフ満足度 スタッフ満足度を上げるためには医院の労働環境の整備が欠かせません。 ただ、いくら労働環境を整備しても、医院のコンセプトをスタッフが理解していなかったり、また理解していても納得して業務に取り組んでいなかったりすれば、想定される成果は得らません。スタッフの満足度を高めることは、これからの歯科医院経営にとっては必須です。より良い歯科医院経営を行うには、生き生きと働くスタッフが不可欠なのです。スタッフ満足は患者満足につながり、ひいては歯科医院に大きなメリットをもたらします。 職員のモチベーション向上の方法 医院の安定・拡大には職員の力が不可欠であることは言うまでもありません。ただ、歯科医院界はさまざまな業種のなかでも特に人の動きが激しいことで知られます。そこで力のある職員に長く働いてもらうには、組織の風通しをよくするなど、日頃からの経営サイドの配慮が求められるようです。 歯科医院の職員の採用は日に日に難しくなっており、さまざまな業種のなかでも人の動きが特に激しくなっている市場の一つです。ですから、採用後に即戦力として期待できる人材を確保することは、非常に困難なことになっています。 せっかく採用ができても、職員が医院の一員として働くということに誇りや喜びを持っていなければ、場合によっては院長の意志に反する行動をとりかねません。長く、そしてより良く働いてもらうには、医院の職員としての基本姿勢や規範、モラルなどをあらかじめ示し、十分な理解をはかった上で就労してもらうことが大切です。 ● 経営体質の強化のために 経営体質の強化には、スタッフの協力が欠かせません。歯科医院を動かすのはスタッフであり、歯科医院が評価されるのもスタッフ次第なのです。また、立案した診療方針や歯科医院のコンセプトを実現するには、スタッフの確保・育成に注力すべきです。そのためには、次のような意識を持って職員育成にあたることが重要となります。 ● 労働環境の整備とスタッフ満足度 スタッフ満足度を上げるためには医院の労働環境の整備が欠かせません。 ただ、いくら労働環境を整備しても、医院のコンセプトをスタッフが理解していなかったり、また理解していても納得して業務に取り組んでいなかったりすれば、想定される成果は得らません。スタッフの満足度を高めることは、これからの歯科医院経営にとっては必須です。より良い歯科医院経営を行うには、生き生きと働くスタッフが不可欠なのです。スタッフ満足は患者満足につながり、ひいては歯科医院に大きなメリットをもたらします。 キャッシュに着目した経営が大事 患者も増え、所得も安定しているにもかかわらず、思ったほどお金がない……そんな「勘定合って銭足らず」な事態はしばしば起こります。こうした事態を防ぐためにも、支払いや生活資金も踏まえた収支シミュレーションを描き、対策を講じる必要がありそうです。 医院経営を続けていくと、所得は高くなり多額の税金を納めているものの、思ったほどお金が残らないということがしばしば起こります。そこで重要になるのが「キャッシュ(現金)」の管理です。今回は利益だけではなくキャッシュに着目した経営について説明します。 ● 収入は多いが支出も多い 歯科医師の先生は、平均と比べて収入は比較的多いですが、支出についても平均と比べて大きくなることが少なくありません。もちろん、所得が増えたことに伴って税金が増えるという要素もありますが、気持ちに余裕ができ、金遣いが荒くなることが大きな要因です。子どもの学費・医院の設備投資・引退後の生活資金……。考えなければいけない事項は多岐にわたります。 経営シミュレーションの作成方法 ● 経営シミュレーションの作成 ・毎日頑張っているが、思ったほどお金が残らない ・思い通りの人生をおくるためには、どのくらいお金が必要なのか? ・どのくらいの売上高まで頑張れば、必要なお金が残せるのか? というようなことでお困りの先生は結構多くおられます。これを解決するために経営シミュレーションの作成が有効になります。 ● 経営シミュレーション作成のSTEP 経営シミュレーションの作成については以下のようなSTEPになります。 STEP1 現状把握 「今の状態で残っているお金はいくら?」を算出します。 STEP2 ライフプランから必要資金を出す ライフプランから、老後資金・教育資金・設備資金・住宅資金などの様々な必要資金を検討し、「そのためには、今年1年でお金をどれだけ残さなければならないのか……?」を算出します。 STEP3 ギャップを見つけて対策を練る 「今年1年でお金を残すために、どれだけ売上高が必要なのか?」 「医院経費や生活費をどれくらい使えるのか?」 などをライフプランから逆算してシミュレーションし、経営計画を作成します。 STEP4 図解で直感的に理解する シミュレーション結果を図解表示し、会計の知識がなくても簡単に理解できるようにします。経営シミュレーションを作成することにより、院長自身のありたい未来を思い描くとともに、それに向けてどう進んでいくかをご検討いただきたいと思います。 著者:日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年10月19日

「介護サービス」「食事の提供」「住まいの提供」 3つの「品質」を高くするために資金を投入

「介護サービス」「食事の提供」「住まいの提供」 3つの「品質」を高くするために資金を投入

<取材先>NPOヘルスケア・デザイン・ネットワーク 矢作 成実 全国33法人・622事業所を展開し、1万2,000人を超える職員が働く湖山グループ。 売上高は右肩上がりを続けており、2020年度は700億円にも上っています。 では、事業で得た収益は何に投じているのでしょうか。 ここでは、同グループの矢作成実氏に「湖山グループのお金の振り分け方」について伺いました。 給与体系と職能が連動 モチベーションを維持させる  図表にあるように、各法人全体の売上を合わせると、湖山グループ全体の売上高は年々上り続けています。規模感でいえば、上場企業の介護大手10社のなかに入る規模ではあります。 「介護事業の内訳は、『介護サービス』『食事の提供』、施設系であれば『住まいの提供』の3つ。これらの品質を高めることが重要であり、ここに資金を大きく投入しています」と、矢作氏が話すように、湖山グループの資金使途は、いたってシンプルです。さらにその使い道について、介護サービスであれば、 ●人材の採用レベルと教育レベルを上げる ●処遇に関しては、労働分配率の向上を徹底的に図る という風に分けています。  採用は全国各法人の人材部門と連携するNPOヘルスケア・デザイン・ネットワーク側で情報を共有します。新型コロナ禍以降はオンラインによる求人が増えたことから、大手サービスを利用したり、ウェブ面接を導入するなど、求職者とのタッチポイントを強化する面に投資しています。  処遇に関しては、無資格で入職した新卒職員の場合、入職後3年間で実務者養成講座を修了し介護福祉士の資格を取得し、27歳の時点で経営初級講座を受講する、というキャリアラダーを構築。その後、マネジメント職を希望する職員に対しては経営基礎講座の受講を認めるなど教育体制を整えており、こうした職能レベルに応じて給与を上げるシステムを構築しています。職員自身も、自身の入社年次や研修受講歴、取得資格などから給与がどのように上がるのかが分かるため、モチベーションアップにも繋がっているようです。  食事の提供については、食材などを本部が一括して購入・配布することでコスト軽減を図る、という手法を使っていないことに、大きな特徴があります。「メニュー作成も各施設に任せていますが、恐らく食材原価は売上の7〜8割というところが多いでしょう。新潟や会津など米どころに施設が多いからかこだわりがあるようで、かなり質の高いお米を使っています。ある施設の方は『この地域で一番食事がおいしいのはうちの施設』と話すくらいです」と、矢作氏。そこからは、「食材費を削って、利益率を高める」という考えが存在しないことがわかります。 職員に投資をすることが安定した運営に繋がる  建物は需要の高い特別養護老人ホームを中心に、年7〜8棟をコンスタントに開発しています。その際は金利上昇のリスクに備えて長期固定金利でしか借りていないといいます。「安心感が異なります。金融機関と長期的な関係をつくるため、中間・期末時は法人別・グループ全体の決算を報告し、事業計画発表会にもお越しいただき、事業内容をご確認いただきます」と、矢作氏。 施設運営は教育・情報開示・権限移譲の方針の下、現場で考え損益を意識するよう求めており、法人全体で適正利益が出ていれば問題ないとしています。 利益が出ることは喜ばしいこと、と考えがちですが、同グループではむしろ利益が出ると「人が足りていないのでは?」という発想になると言います。コストのなかでは人件費が大きい割合を占めているため、利益が出るということは適正な人員配置になっていない可能性がある、という意識をグループ全体が共有しているのです。 「赤字は出せませんが、利益を必要以上に追い求めることはしないという考えが、グループ全体に浸透しています。損益分岐点は各法人・施設が把握していますので、それを踏ま えて、どこまで費用を使っていいのかという計算を徹底して行っているのです」と、矢作氏は説明します。  そのため、期末に資金が残ると賞与として配るケースも珍しくありません。 「介護事業所は職員がいないと始まりません。ご利用者はもちろん、職員を大事にするのは湖山泰成代表の考えでもあります。新型コロナ禍にある今期は『職員を守るためにお金を使う』のスローガンのもと、各施設がPCRの検査キットなどを購入し、安心して働ける環境づくりに力を入れています」と矢作氏が説明するように、給与だけではなく福利厚生や環境整備などに利益を回すことで、職員が働き続けやすい体制を敷いているのです。2021年6月からは、一部の施設で全職員に対して朝食を無料で提供することも始めています。食費を気にせず食を楽しめる環境をつくることで、業務に集中できるようにしたいという、湖山代表の思いを具現化したものです。  その他、お祭りなどのイベントを積極的に開催するなど、地域貢献事業にも取り組んでいます。「地域包括ケアシステムの中、みなさんが仲間です。貢献できることをするからこそ地域の中で認められます。こういった事業にもお金は惜しまないのがグループ全体の方針です」 借り入れでは堅実な姿勢を示しつつ、必要なところでは投資を惜しみません。結果、利用者や職員の満足度は上がり、サービスに磨きがかかっていきます。理想的なサイクルではないでしょうか。

立地選定の手順とポイント 開業タイプ(テナント)~テナントの選び方、チェックすべきポイント~

立地選定の手順とポイント 開業タイプ(テナント)~テナントの選び方、チェックすべきポイント~

<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 開業するにあたって、自身で購入した不動産によりクリニックを開業するのか(戸建て開業)、不動産を賃借してクリニックを開業するのか(テナント開業)について、決断する必要があります。今回は、テナント開業のポイントをご紹介いたします。 目次 01:テナント開業のメリット・デメリット 02:どのようなテナントが理想的? 03:院外処方 04:テナントの設備・契約のチェック 05:おわりに テナント開業のメリット・デメリット テナント開業は、初期費用がおさえられ、自己資金が少なくて済み、立地の良いエリアに開業できる可能性が高いなどのメリットがあります。 一方で、撤退時の原状復帰にお金がかかる場合や、設計の自由度に制約のある場合、テナントオーナーの都合に左右される場合があるなどのデメリットがあります。さらに、契約や設備の面で気を付けるべき点もあります。 どのようなテナントが理想的? 場所がある程度定まったら、テナントの立地やサイズ感をチェックしましょう。例えば、手術を行う眼科であれば、通院が必要となり付き添いも多いことが予想されます。したがって、駐車場の有無や駅からの利便性、待合室において付添人が待つスペースがあるか否かなどについて検討する必要があります。 テナント自体が魅力的だとしても、テナントビル内に入っている他の会社の業種にも注意を払わなければいけません。クリニックに似つかわない業種が同じテナントビルに入っている場合、集患に悪影響が及んでしまうおそれがあります。医療モールの場合にはそのような懸念点はありませんが、同じ診療科目のクリニックが入っている場合は集患が難しくなることがあるのでご留意ください。 院外処方 場所を選定する初期段階で調剤薬局のことを念頭に置いておかなければなりません。院外処方を選ぶ際は、薬局からのアクセスがよい立地を選定すべきであります。この点、医療モールであれば、ビル内、ないしはビルの近くにすでに薬局がある可能性が高いです。 テナントの設備・契約のチェック テナントの設備や契約についてチェックすべき点を紹介します。 ・建築基準法上のチェック 耐震構造やアスベストの有無、消防設備について確認しておきましょう。 ・天井高や床下配管工事 医療機器を設置する関係上、天井高に留意が必要となります。医療機器を搬送する経路が確保されているかについてもご確認ください。また、電気設備やトイレの確認なども忘れずに行いましょう。 このような確認を行う際には、クリニック開業を専門としている業者さんに依頼されることをお勧めします。 ・契約期間 テナントを借りて開業する場合に契約期間に期限が設けられていることがあります(定期借家契約)。例えば契約を結んでから20年後に退去することを前提に契約を結んだ場合、順調にクリニック経営ができている場合であっても、期間が満了すれば退去を求められるケースがあります。したがって、賃貸借契約を結ぶ際には定期借家契約を避けるか、もしくは契約期間の縛りがどの程度のものなのか、テナントオーナーと相談するべきであります。 ・増築や改造 増築や改造はテナントオーナーの同意なしで行うことができません。医療法上の基準を満たすために改装が必要であれば、テナントの改装が可能かどうか確認しておきましょう。 ・広告の規制 広告は集患には大事なポイントとなります。例えば、〇〇クリニックなどの看板を立ててはいけないとなると、集患に大きな影響を与えます。 おわりに テナント開業のメリット・デメリットや気を付けるべきチェックポイントについてご紹介しました。これらのポイントを念頭に、納得のいく開業をしてください。

介護事業者に必要な「財務・会計」の基礎知識

介護事業者に必要な「財務・会計」の基礎知識

<取材先> 株式会社Moff 代表取締役社長 土田泰広 PEファンドで大手介護事業者の買収にも携わった経験を持つ土田泰広氏。公認会計士でありグロービス経営大学院経営研究科の准教授としても活躍する土田氏に、「財務・会計」の基礎知識について伺いました。 【本文】 ■【初級編】PL(損益計算書)とBS(賃借対照表) フローとストックの関係  まずは、PLとBSの活用について説明します。 介護事業経営においては、介護報酬や家賃収入、各種利用料などによる「売上」があります。売上から人件費や賃料、給食委託費などほぼ固定費となる「売上原価」、そして「販管費」「経常損益」などを足し引きしたものが「純利益」です。こうした現場のオペレーションのサイクルを表したものがPLとなります。 制度ビジネスである介護事業においては、売上が報酬改定等によって変動する中、いかに売上・コストを管理して利益を確保するかが重要と言えるでしょう。  厚生労働省「2020年度介護事業経営実態調査」によると、業界平均の収支差率は2.4%。人件費等の固定費が大きなウエイトを占める上、人員配置等の規制もあるためこの削減余地は乏しいと言えます。加えて、3年に1度の報酬改定による収益・利益への影響も大きい。人件費への投資効果を最大化するためには、生産性向上・コスト管理や、ノウハウ・情報共有でのチーム力向上、多様なフィールドで活躍できる「職員のマルチタレント化」といった取り組みが必要でしょう。  PLが現場のオペレーションのサイクルであることに対し、BSは経営マネジメントのサイクルです。企業が持つ「資産」における、銀行などからの借入金にあたる「負債」と起業の際の種銭や返済の必要のない出資金、利益など「純資産」の割合を表すのがBS。通常、企業は種銭を入れ、借入金を活用して資金を拡大し、事業資産へ投資する。そして生み出した利益が蓄積される、といったサイクルを回して運営しています(図①参照)。  介護事業と一言で言っても、施設系サービス企業と在宅系サービス企業とではBSはまったく異なります。仮に同じ売上規模の2社を比較してみても、施設系企業では、不動産などによる負債が大きくなり、その分資産も大きくなります。BSを軽く(小さく)するために、一部不動産をREIT等に売却し運営を受託するという方法もあります。一方で在宅系企業は、施設系の約5割と少ない資産で事業化ができるというメリットがあります(図②参照)。 安定成長のためには、地域内の需要・競合を踏まえた上で、こうしたアセットモデルとフローモデルをいかにミックスさせるかが重要です。 ■【中級編】ROE(自己資本利益率)活用のメリット  次に、ROE活用のメリットを紹介します。純資産における利益の割合を示すROEは、企業の価値を示す重要な指標となります。利益を純資産で割ることで算出します。 また、ROEは以下の3つの要素に分解することができます(図③参照)。 ①売上における利益の割合を示す「利益率」 ②総資産における売上を示す「総資産回転率」 ③総資産が自己資本の何倍となるかを示す「財務レバレッジ」 利益率や総資産回転率の数字を高めることは重要ですが、財務レバレッジに関しては、数値が高すぎる状態は負債過多と言えます。逆に低い場合は、事業拡大の余地ありと見ることができます。  サービスの質とコスト管理がどのような状態かを示す「利益率」、商売の作り方とビジネスモデルがどのような状態かを示す「総資産回転率」、そして成長の志と決断力を示す「財務レバレッジ」の3指標を可視化するROEについて、決算を公開する介護上場企業を例に比較してみると、それぞれの企業の経営課題や改善ポテンシャルが見えてきます(図④参照)。 それぞれの数値を最適化するための打ち手について、「利益率」改善のためには▽ICT導入による効率化・生産性向上▽現体制で算定できる加算強化▽各種調達コストの見直し。「総資産回転率」改善のためには▽資産不要の保険外サービスの強化▽運転資本の改善(回収・支払いサイクル)▽余剰資金・遊休資産の処分。「財務レバレッジ」改善のためには▽融資を活用したM&Aや事業所開設▽配当・自社株買いの拡大▽各種補助金の活用――など、具体的な対策も考えられるでしょう。 ■【発展編】経営力が高まるICT導入の考え方 最後に、重要な視点として、経営力が高まるICT導入の考え方について紹介します。現在、介護事業所で注目を集めるICT機器は主に、介護記録や請求ソフトなど「記録・申告系」、チャットボットやテレビ電話、インカムなど「コミュニケーション系」、シフト・送迎管理など「業務システム系」、ベッドセンサーやカメラなど「見守り系」、身体機能・認知機能測定など「リハビリ・アセスメント系」があります。 厚労省が行った「ICT導入の効果に関する調査」によると、導入した7割の事業所が間接業務の削減、直接ケア時間の増加、ミス減少等の効果を実感しているようです(図⑤参照)。 しかし、「削減した間接業務時間」は1人当たり月平均30分ほど、「増加した直接ケア時間」は30分未満もしくは変化なしの事業所が最多との結果。果たして、ICT導入に取り組んだ事業所が得たかった効果はこれでよいのでしょうか。 私は、ICTツールの導入効果を「経営貢献度」として確認する必要があると考えています。まずは、「アナログ業務の効率化に貢献しているか」。残業代や職員の心理的負担を削減し、本来のケアに集中できるといった効果があれば、人件費・離職率の抑制に貢献できており、PLにおけるコスト効率化に該当すると言えます。 次に、「スタッフの戦力アップに貢献しているか」。業務標準化により、経験・スキルに依存しない柔軟な人員体制が実現できていれば、固定的な人件費のフレキシブル化につなげられるでしょう。 そして、「新たな売上獲得に活用できるか」という視点です。ICTを最大限に活用し、このレベルを目指す意識が必要になります。 このレベルが指すのは、ICT導入で得たデータを活用することで、個人に最適な自費サービスの提供を行ったり、他社との差別化ツールとして入居率・稼働率の向上を実現したりするケースにあたります。新たな加算の算定や保険外収益を生み出すことで、利益率・ROEの向上に直接的に貢献します。効率化という視点だけでは不十分であり、固定費のフレキシブル化と、「稼ぐICT」を検討すべきなのです。 ■【雑談編】ファンドから見た介護業界の魅力 ちなみにこれは雑談ですが、昨今、介護業界におけるM&Aやファンドによる買収の動きが目立っています。2017年以降M&A件数は大きく伸びており、国内外の大手ファンドが、大手介護事業者を数百億~1000億円以上の価格で買収しています。近年では、20年のベインキャピタルによるニチイ学館の買収(約1100億円)、MBKパートナーズによるツクイホールディングス買収(約630億円)などが記憶に新しいところです。 介護業界でこうした投資ファンド案件が増えた理由について、第一に「安定的な需要と、報酬改定が行われるまでの数年間の安定的なキャッシュフロー」が挙げられます。中でも、不動産を有する施設系企業の企業価値評価がより確立されています。 また、介護保険法施行から約20年が経ち、事業承継のタイミングで「売りもの」が増えたこと、収益構造やオペレーションが類似しており規模の経済が働きやすいこと、ベストプラクティスの横展開がしやすいこと。そして、大手企業によるM&A意欲が高く、IPO以外のエグジットも見やすいことなどがあります。 これらを踏まえると、このM&A時代に経営者としてどうあるべきかが見えてきます。買い手となりたい場合は、エージェント等を通じて、定期的に売り案件の情報を確認しておくこと、そして、自ら興味ある企業をリストアップし、経営陣や株主にアプローチを仕掛けることなどが必要です。 売り手となりたい場合は、買い手の観点から客観的な自社事業の評価を常に確認しておくこと、M&Aに際しボトルネックとなりえる論点(法的、関係会社、株主等)を確認しておくこと、経営陣が買い手となるMBOも視野に入れてみること、などが効果的でしょう。 ※本記事は、9月13日開催の介護事業者向けセミナー「介護事業者に必要な財務・会計知識~持続可能な介護経営のために~」の内容を編集し作成したものです。 土田 泰広(つちだ・やすひろ) 株式会社Moff代表取締役 社長 早稲田大学政治経済学部卒。監査法人トーマツ経て、シカゴ大学にて経営学修士(MBA)課程を修了。経営コンサルティング会社A.T.カーニーにて企業再生等のプロジェクトを経験。その後、米系投資ファンド及び日系金融機関にてプライベートエクイティ投資にて、投資先企業のDD/審査及び投資後のM&A・アライアンス戦略を支援。Moff入社後は取締役CFOとして資金調達、事業開発に従事した後、2021年6月より代表取締役社長を務める。三菱総合研究所 介護サービス専門コンサルタント、グロービス経営大学院経営研究科准教授、日本公認会計士。

【院長のためのドラッカー講座】理念・使命とは何か

【院長のためのドラッカー講座】理念・使命とは何か

<著者>内藤孝司 医療法人る・ぷてぃ・らぱん 理事長兼CEO 使命が自分のものになると仕事にワクワクできる 組織には明確な使命が必要です。使命が希薄では、職員に対して組織や仕事が魅力的なものとはなり得ません。使命なき組織は、そこで働く人々に価値ある仕事を提供することは不可能です。ある会社では入社説明会でいつも使命についての話をしていましたが、1年間、使命を語ることなく新入社員を採用したところ、その世代の社員は仕事に対する意識が低くなったそうです。 そのため、一流の経営者や幹部は使命と成果について考えているものです。しかし、売り上げや規模を目標としている企業が多く、使命を持って事業を行っている組織は少数派です。また、使命を優秀な人材を獲得するため、あるいは売り上げを伸ばすための飾り物(ツール)と考えているところも多く、そういった組織ではトップ以下、使命を覚えていなかったり忘れていたりして対外的に語ることができないのが実情です。 私が学んだドラッカー塾では、使命の講義の際にサンタクロースが事例としてよく出てきます。サンタクロースの使命は、子どもたちに夢を与えることです。しかし、この仕事を単に時間給で考えたらどうでしょうか。 寒い冬に子どものいる家庭を一軒一軒訪れて煙突に登り、物音を立てないように息を潜めてプレゼントを置いていく。正直、割に合わない仕事と言えます。しかし、誰もがその仕事を崇高でかけがえのない仕事だと思っています。これが使命なのです。 使命は私たちに「仕事の価値」と「エネルギー」を与えてくれるとともに、自分がとるべき行動と決定の明確な指針となってくれます。また、価値ある使命が優秀な人材を獲得し、成長させ、到達すべき理想や目標を示し、具体的に何をすべきかを教えてくれるのです。使命が自分のものになっている人は、仕事に対してワクワクできるのです。 また、逆境にあっても諦めずに続ける力を持っています。反対に、使命がない人の多くは数年後に仕事が変わっています。それは、目的が地位やお金だからです。やってもやってもうまくいかないとき、使命がない人は諦めてしまいます。 離職者が多く悩んでいる診療所は、組織に使命がないか、あったとしても希薄、もしくはお金が目的で使命に共感していない人を雇用し続けているからかもしれません。自らの組織の使命と働く人々の価値観をもう一度チェックしたほうがいいでしょう。 スタッフに支持され大切にされる使命をつくる では、使命をどうつくったらいいのでしょうか。使命とは、世の中を変えたり、自らが基準の設定者になり得るものでなければならないと言われています。どういうことかをジョンソン・エンド・ジョンソンの例から解説します。 同社は1982年のタイレノール事件(シアン化合物混入事件)のとき、「タイレノールにシアン化合物混入の疑いがある」と判明した時点で、多額の損失が出ることを覚悟したうえで、速やかに消費者に対して、新聞の一面広告、専用フリーダイヤルの設置、10万回以上に及ぶテレビ放映などの手段で回収と注意を呼びかけました。これは当時としては異例でしたが、同社には「消費者の命を守る」ことを謳った使命があり、それが社内に徹底されていたため、このような対応を躊躇なく行いました。この対応法は、その後の企業の商品回収のモデルとなっています。 同社のような真の使命が最初からある診療所は少ないと言えます。私自身がそうでした。使命も理念もなく、ただ毎日働くだけで明確なビジョンもゴールも持ち合わせていませんでした。開業してから何年も経って、ほかの企業家から指摘を受けてようやく理念づくりに着手し、ドラッカー塾で学び始めてから使命をつくり上げました。今では診療所経営においての使命の重要さを痛感しています。 使命をつくる際の注意点としては、院長だけで作成すると、スタッフに共感を得られない場合、ただの飾り物になってしまうということです。トップダウンではなく、ボトムアップのほうが有効です。そこで働く人々が日常の仕事と使命がつながっていると感じられなければ、それは誤りなのです。また、使命はTシャツに一言で書けるような簡潔、明瞭なものでなければなりません。立派な意図を盛り込みすぎた長いものは覚えることができず、ぼやけてしまい、行動に移すことができないからです。 私の場合は、全スタッフに聞いてまとめ上げ、会議で賛同を得て、はじめて使命が完成しました。そのため、当法人の使命は今でもすべてのスタッフに支持され、大事にされています。使命があることでスタッフは上からの指示を待つことなく、使命に沿っているか否かで、自ら考えて行動に移すことができるようになりました。 最後に、使命は見直しが必要となる場合もあるため、組織や社会の変化、また時代に応じて変えていくことも必要です。使命達成と仕事の改善を考える場が必要であり、使命実現に向けた仕事を成し遂げた人を賞賛できるような組織にすることがリーダーである院長の重要な仕事となります。リーダーがなすべきことは、組織の使命と定めたことを、さらに個別に具体化していくことです。 使命や理念がなくとも遅くはありません。今から、あなた自身と診療所の価値観に合った使命や理念をつくり上げ、すぐに明確な行動に移せるようにしましょう。 (取材・掲載年:2017年6月)

新車の納期長期化 福祉車両への影響はいかに

新車の納期長期化 福祉車両への影響はいかに

<取材先>シャープファイナンス株式会社・芙蓉オートリース株式会社 昨今、半導体不足の影響により新車の納期が長期化しています。従来では数ヶ月の納期だったものが、現在では1年程かかることも珍しくありません。福祉車両も例外ではなく、入れ替えや調達の際になかなか車両が確保できず、お困りの介護事業者様も多いのではないでしょうか。 今回は、このようなお悩みを抱えている事業者様におすすめしたい、福祉車両の「中古リース」についてお話ししていきます。 購入でもリースでも、新車の入手が困難 訪問介護や通所介護で必須となる福祉車両ですが、現在は納期遅延の影響で新車がすぐに手に入らない状況が続いています。 福祉車両は架装装備の工程も加わりますので、一般車両よりも更に納期が長期化することとなります。 こうした納期遅延の影響は、福祉車両を“購入”する場合に限らず、“リース“で導入する際も同様です。 一般的にカーリースは、リース会社がカーディーラー等より新車を購入の上、お客様にリース車両として貸し出します。そのため、リース会社も新車の購入ができないとなれば、カーリースのお取組み自体も難しいということになります。 「新車の導入は現在考えていないので、自分たちにはあまり関係のない話だ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、想定外の事故や不具合で車両が修理不能となり、「急遽新たな車両が必要になったので急いでリースを契約したい」というご相談も少なくありません。 また、「人員の増加に伴い車両を増やすこととなった」、「サービスの質向上のために増車する必要がでてきた」というお問い合わせも多くいただきます。 突発的な車両の入れ替えや調達は、どの事業所にも起こりうることなのです。 意外と知られていない? 中古の福祉車両もリースが可能 近年、訪問介護や通所介護事業者様においては、福祉車両をリースでご導入するケースが増えています。 頭金や初期費用が不要であったり、車両の管理業務は全てリース会社が行うなど、購入よりもたくさんのメリットを享受できるためです。 >>「カーリースとは?」仕組みやメリットを解説 しかし、先ほどお話したとおり、現在は新車のリースをすぐにご利用いただけないケースも多々あります。 「中古車両の購入も考えたが、一時的に支出が膨らむことは避けたい。中古車両もリースできたらいいのに・・・」と考える方もいらっしゃるかと思います。 実は、中古車両もリースでご利用いただけるということをご存じでしょうか? 現在当社では、福祉車両の納期が長期化してお困りの介護事業者様には、中古車両のリースをご紹介しています。 というのも、車検整備と名義変更の完了次第で納車が可能なため、最短1ヵ月でお客様にお届けすることができるからです。 急に車両調達が必要となってしまったケースにおいては、まさに最適なサービスと言えます。 中古車両と聞くと、「古い」「汚い」など、マイナスなイメージをお持ちの方も多くいらっしゃいます。しかし、当社で扱う車両は基本的に4年落ちの型式のため、中古車両といっても見た目は新車とさほど遜色ありません。 また、性能面で「すぐに故障するのでは?」と心配するお声もよく聞かれますが、年式が比較的新しく走行距離も少ない車両を選定しておりますので、故障が頻発するようなことはありません。 万が一故障が発生した場合でも、新車リースと同様にメンテンスサービスが付いておりますので、修理後に安心・安全にご利用いただけます。 想定していなかった福祉車両の入れ替えや調達 どう対応する? ここまでお話ししてきたとおり、車両の調達といっても様々な方法が考えられます。 長期的目線で車両調達をご検討中なのか、あるいは短期間での納車を希望されているのかによっても、新車もしくは中古車、どちらを選ぶべきか変わります。 更には、コスト面や使用見込み期間、車両の管理業務軽減など、事業者様がどのような点を重視されるのかにより、リースもしくは購入どちらが最適かを選ぶ必要性もあります。 福祉車両の調達で悩まれている方がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。 Q1:リース契約の内容と、メンテナンス内容を教えてください。 →主な内容については、下表をご覧ください。 (注)一部地域においては、福祉架装のメンテナンスや故障時の代車サービスやをご提供できない場合があります Q2:メンテナンスリースで契約中の車両を修理に出したいのですが、別途費用が発生するのでしょうか? →部品交換や修理費用等も月額に含めてお支払いいただけます。そのため、修理の都度費用が発生することはありません。 (主な契約内容やメンテナンス内容については、Q1をご覧ください) Q3:メンテナンス内容についてですが、修理や部品交換に回数制限はありますか? →リース期間中であれば、回数制限なくご利用いただけます。   ※消耗部品(タイヤ、バッテリー、ワイパーゴム等)については、経年劣化・摩耗による交換となります。 Q4:都道府県別で、サービス提供地域に制限はありますか? →全国どこの事業者様でもご利用いただけます。当社は全国に営業所がありますので、各拠点よりきめ細やかなサービス提供が可能です。 また車両の故障時においても、全国に提携先の修理工場がありますので、すぐにご対応が可能です。 Q5:車両に社名やロゴを入れることは可能ですか? →はい、オプションでラッピングサービスも承っています。

他の業界での当たり前を 介護業界の当たり前に

他の業界での当たり前を 介護業界の当たり前に

<取材先>株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長 松田 吉時   「介護のプロ」を標榜する株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ。 2008年の創業から急成長していますが、そこには「利益を生み出す仕組みづくり」といった言葉では説明できない、シンプルかつ明快な経営戦略がありました。 マネジメントができる人材が活躍できるポストを作る 「『業績が急激に伸びていますが、どんな魔法を使っているんですか』と聞かれますが、そういうものは特にないんです。重要なのは、当たり前のことをコツコツと、論理立てて積み重ねること。これは会社が事業を展開する上でも、社員が事業所の管理者として成功する上でも同様だと考えています」と話すのは株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ取締役副社長の松田吉時さん。 「介護」×「IT」をコンセプトに、〝業界の当たり前を変えていく〟を命題としている同社は、訪問介護、居宅介護支援、通所介護などの在宅系サービスを中心に展開しています。2008年の創業以来、毎年約1.4倍のペースで成長を続けています。2022年8月現在、同社が運営する介護事業所は、訪問介護事業所を中心に200カ所。社員数は約2,200名で売上高は140億円(2021年度)に達しています。 同社が"経営の原則"として重視しているのは、まず従業員への対応だと言います。具体的には、業務の効率を上げて利益を生み出したら、その分平均給与を上げて、利益を社員に還元することが一つ。もう一つは、事業の規模を拡大することで、ポストの数を増やし、キャリアパスを示すことです。 同社の事業は、IT化などにより業務効率を上げると共に、地域への認知度と地域のシェアを高めるドミナント戦略に則って進められています。「訪問介護でいえば、1事業所あたりの売り上げが月1,000万円、利用者120〜130人程度の規模を一つの目安と考えています。その規模を超えると、非常に運営が難しくなります」と、松田さんは話します。 この規模の事業所では約20人の正社員ヘルパーが必要となりますが、利用者120人×ヘルパー20人の組み合わせを常にイメージしながらシフトを組まざるを得ず、シフト作成などの業務負担も多大になります。そこで、ひとつの事業所で売り上げが1,000万円を超えたところは、営業範囲を分割し、近隣に事業所を新規開設するという戦略を立てています。 このように、売り上げ規模に応じて事業所数を増やしていくと、必然的に新しい事業所をマネジメントする人材が常に必要となります。つまり、「事業所を増やす」という経営戦略と「各事業所をマネジメントできる人材を育成する」という人材育成を両立していく必要があります。 同社が目指す方向性について、松田さんはこう話します。 「介護は、電気や水道、道路などと同様の社会インフラだと考えています。なので、介護サービスを世の中に広く均等に供給することが私たちの責務と言えるでしょう。一方でお客様からの要望にできるだけ応えることも、介護事業者としては成すべきこと。従業員と会社とお客様の3つの思いを一つにして、妥協点を見つけるわけです。こういったことまで考えながらシフトを組んでいくことが、訪問介護事業の肝になります」 たとえば同社の場合、深夜帯での訪問介護のサービスは、従業員の負担を考えて行っていません。しかし、それを希望する利用者がいた場合、同社では「①なぜ深夜にサービスが必要なのか」「②それは深夜でないと叶えることはできないのか」「③深夜でなくても大丈夫であれば、シフトをどのように組めばいいのか」「④深夜でしか対応できないのであれば、ほかの事業者に対応を依頼することはできないのか」と深掘りして考えます。結果として④の結論に至った場合、もちろん同社の売り上げにはならなりません。しかし、「⑤イレギュラーだが深夜に職員を働かせる」といった対応は取りません。「お客様の要望すべてに応えることが、当社が目指す介護ではないからです。できること、できないことを見極め、当社でできない場合にはどうすればお客様の要望に対応できるか知恵を出し、提案する、ということが重要だと思っています」と、松田さんは強調します。 これは、社員への負担を増やすのではなく、今ある資源で適正に事業所が回るようにすることが、持続可能な介護サービスの提供には重要である、と同社では認識しているからです。それぞれの事業所がきちんと回っていくことが、同社の業績に直結します。事業所がマネジメントとサービス提供に専念できるよう、本社はサポート体制の拡充に余念がありません。 「請求業務を始め、労務や法務、介護保険等については、本社の専門部署がバックアップします。また、ITのツールを開発し、情報共有と情報の見える化を徹底するなど、現場業務負荷の削減は常に考えています」 新卒社員を2年目から管理者に登用  事業を拡大し、事業所の数が増えていくと、その分それを管理する人材が必要になります。同社でも最初は中途採用の人材にそうしたポストを任せていましたが、うまくいかないことも多かったと言います。そこで、思いきって新卒出身の社員に任せてみたところ、おおむね1年程度の現場経験があり、体系立った研修をしっかり受けた社員であれば、十分事業所のマネジメントを任せられることが分かってきました。そこで同社では、マネジメント・経営の経験を積みたい新卒社員に向けた「マネジメントコース」と、介護現場での専門性を高めたい新卒社員に向けた「プロフェッショナルコース(プロコース)」という二種類の採用枠を設け、それぞれに合わせたキャリアパスを構築しています(下図)。 マネジメントコースは常勤ヘルパーを経験した後、1〜2年で管理者となるのが目標です。一方、プロコースは3年後にサービス提供責任者を目指すというものです。明確に目指すもの、自身のキャリアパスが分かるため、社員にとっても働いた先が見えやすいと言います。 なお、管理者になると、担当している事業所の売り上げが伸びると、その分が給与に反映される仕組みとなっています。単に責任だけが重くなるのではなく、自身の働き方が待遇に直結するという点は、マネジメントを目指す人には魅力でしょう。なお、それぞれのコースを選ぶ比率は、マネジメントコース1に対してプロコース2の割合になっていると言います。 「介護業界で長く働いてきた人に、急に『マネジメントの視点を持て』と言っても、それまでの業界の常識などが邪魔をしてしまい、抵抗感を持つ人が多いのです。むしろ社会経験はないが優秀な新卒社員のほうが、フラットな価値観のところから経営的な視点を教育していくことができるので、合理的な判断ができるようになります。私たちが新卒に『マネジメントコース』を用意している意味はそこにあります」と同社取締役の太原有理さんは説明します。 「量」が不足する介護業界に一石を投じる 同社の大きな特徴として、訪問介護をメインにしていながらも、正社員の比率が高いことが挙げられます。中途採用に加え、創業3年目から新卒採用も開始し、今や全従業員のうち84%を正社員が占めるまでになりました。これにより、教育が行き届き、サービスの均質化が実現できると共に、シフト管理がしやすくなっていると言います。 「正社員は朝9時から夜6時まで、1日8時間×5日で週に40時間という、稼働できる枠が先に決まっています。一方、登録ヘルパーが主体だと、シフトはヘルパーさんの都合次第となり、スケジュールのコントロールが難しくなります」 また、「正社員に夜勤は付きもの」というイメージが強い介護業界にあって、夜勤がないことは採用の大きなアピールポイントになっています。 一方で、正社員の雇用を拡大することは、事業規模の拡大とセットになっているため、リスクも高くなります。 「私たちは、そもそも介護には『量』が足りていないと思っています。人手不足で十分なサービスが受けられない人が増えてきている現状においては、一定レベルのケアをしっかり世の中に広げていくことがまず重要だと思っています。そのためには、リスクを覚悟の上で規模を大きくしていかなくてはいけません。『理想の介護』を少数精鋭で追求したい、という事業者も多いですが、我々の目指すベクトルは違います」と太原さんは強調します。「事業所を増やすなかで『管理者が足りない』『でも、中途だとうまくいかない』と他業界のように新卒採用を始め、うまく回るようになりました。あくまで試行錯誤の連続ですが、他の業界では普通のことを、いかに介護業界にも取り入れていくか、これからも日々挑戦です」(松田さん) (写真キャプション) PH1 株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長の松田吉時さん 図表 松田吉時 株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長 東京都新宿区新宿4-1-6 JR新宿ミライナタワー15F Tel:03-6273-1925 URL:www.careritz.co.jp プロフィール 2008年の創業以来、IT技術を活用し介護業界No.1をめざす同社は、毎年約1.4倍のペースで成長を続ける。訪問介護を中心に200の事業所と施設を運営し、社員2,200名以上を雇用(2022年8月時点)。今後は首都圏と名古屋に加え、仙台、京都、大坂、兵庫など、全国主要都市へ事業を展開し、業界No.1を経営目標とし売り上げ1,000憶円をめざす。

ー「アイモvifa」後編 ー ヘッドマウント型から卓上型へ 患者の“受けやすさ”を最大限追求

ー「アイモvifa」後編 ー ヘッドマウント型から卓上型へ 患者の“受けやすさ”を最大限追求

<取材先>株式会社クリュートメディカルシステムズ 代表取締役 江口 哲也 社長 より気軽な緑内障検査の実施を目的に開発された、株式会社クリュートメディカルシステムズの卓上型視機能評価機「アイモvifa」。 従来の検査所要時間を大幅に短縮し、スタッフの労力を減らし、患者さんの負担も軽減する、まさに「三方よし」の製品となっています。しかし、これが実現するまでには、同社によるさまざまな試行錯誤がありました。 後編では、そんな「アイモvifa」の開発ストーリーをご紹介します。 >>前編 「今後も増加する緑内障検査のニーズ 、卓上型視野計「アイモvifa」がより効率的な検査を提供」 <㈱クリュートメディカルシステムズが開発した「imo vifa」> 従来機で得られた知見が「アイモvifa」に活かされた  “暗室がなくても検査ができる視野計”。このコンセプトのもと同社が最初に開発・販売したのが、「アイモvifa」の前身である「アイモ」です。 これは、ヘッドマウントディスプレイ型の視野計で、患者が頭部に装着することで外界の光を遮断。表示されるプログラムに沿って検査すれば、暗室・スタッフ付き添いなしでもスムーズに検査できるという設計でした。 「アイモ」の発売後、導入した眼科ユーザーからは検査プログラムの精度や、スタッフや暗室が必要ない点など、想定していた課題に対する一定の評価が得られました。しかし、一方で以下のような新しい課題もいくつか寄せられました。   ①事前準備の手間 従来の「アイモ」では、瞳孔間距離や焦点位置などを調整するためのダイヤルがついており、検査前にスタッフが患者ごとに手動で調整する仕組みでした。ダイヤル調整自体は難しい操作ではなく、慣れればスムーズにできたようですが、そうした新しい作業を覚えるのが手間だという、現場スタッフからの声もあったようです。   ②機器の重量 「アイモ」には、光学系やコンピュータなど、必要な機器やプログラムがすべて本体に搭載されていました。「アイモ」1台で完結するのがメリットですが、総重量が約1.8kgありました。従来の暗室検査より、はるかに短時間で場所を選ばず検査できる半面、「患者さんに装着してもらうには少々重い」といった意見が寄せられたのです。   そこで、こうしたユーザーからの意見をもとに、同社では後継機の「アイモvifa」の開発過程においてハード・ソフトの両面から試行錯誤を実施。これらの課題解決に取り組みました。 まず、ハード面では、“暗室がなくても検査ができる視野計”という当初からのコンセプトはそのままに、ヘッドマウントディスプレイ型ではなく、患者が機器を覗き込むことで光を遮断し検査する卓上型視野計へとデザインを変更しました。これにより、患者にかかる負担を低減したほか、「アイモvifa」の重さ自体も軽量化に着手。総重量は「アイモ」の半分近くまでカットできました。 <暗室不要。設置場所を選ばないため、換気の良い明室でも検査が可能> <両眼解放。アイパッチでの遮蔽が不要で、両眼を開いたまま視野検査が可能> ソフト面では、たとえば、「アイモvifa」の内蔵カメラが患者の眼球の動きや位置を検知。その情報から患者の瞳孔間距離や焦点位置を自動調整できるように、検査プログラムをアップデートしました。このように、従来はスタッフが操作しなければならなかった手順の自動化に努めたことで、かかる手間を省略しました。 <「imo vifa」 ユーザーインターフェース> 江口代表取締役は、「ユーザーの皆様からのご意見のもと、『アイモvifa』の開発・販売に至るまで、約4年かかりました。順調に開発が進んだかといえばそうではなく、機能を改善するためにレンズなどのパーツを大きくしたいが、そのうえでコンパクトにするにはどうすればいいか、検査の精度を保ったまま自動化・効率化するためのプログラムの改善──など、部品1つの位置も緻密に配置しました。プロフェッショナルである当社のエンジニアたちの試行錯誤が、実を結んだ結果です」と振り返りました。 眼科診療所の生の声、そして同社の開発陣の試行錯誤によって生まれた「アイモvifa」。 ぜひ、効率的で質の高い緑内障検査に役立ててはいかがでしょうか。 制作年月:2022年9月21日

医師転職の傾向と対策 選ばれる診療所になるにはこの6つから取り組むべし

医師転職の傾向と対策 選ばれる診療所になるにはこの6つから取り組むべし

取材先:日本医療企画 取材年月:2019年2月 目次 傾向と対策 ①開業トレーニング 傾向と対策 ②学べる環境 傾向と対策 ③人事評価 傾向と対策 ④柔軟な勤務形態 傾向と対策 ⑤診療支援 傾向と対策 ⑥目指す医療を明確にする 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 傾向と対策 ①開業トレーニング ここで一定期間働けば開業に向けた準備ができる 自院での勤務を、将来の開業に向けたトレーニングの場と位置づけ、それを〝売り〟にリクルートしている診療所もあります。 開業志向を持つ病院勤務医にとっては、地域医療や集患方法、患者およびスタッフ対応など、診療所のマネジメントを生で学べる、魅力的な職場環境です。これらの経験がないままに開業するのは容易ではないからです。そこでの仕事にやりがいを感じ、結果として長く働いてくれる医師もいるかもしれません。 もちろん、急な退職や患者を連れての開業などのリスクを避ける工夫も必要でしょう。勤務医がほしい診療所と開業ノウハウを知りたい医師、お互いWin-Winとなれるよう、①(次の医師をリクルートするため)独立開業する際は1年以上前に知らせてもらう、②自院と競合になるような半径数㎞以内での開業は避けてもらう――の2点については入職時に契約を交わしておくべきです。後からの契約だと揉めるもとになってしまいます。 傾向と対策 ②学べる環境 「診療所だからこそ学べる」そんな魅力的な要素がある 医師にとって学べる環境はやはり魅力があります。「学び」と言ってもテーマは多岐にわたりますが、診療所の場合、病院ではなかなか学べない領域で勝負するのが得策です。 他にはない専門性を持つケースは別ですが、専門医療や先端医療で競ってもかなわないことが多いです。 在宅医療や緩和ケア、認知症ケア、看取り、患者サービスなどは病院よりも診療所のほうが進んでいるケースが多いです。さらには、介護事業を含めた地域包括ケアシステムの構築や、地域貢献事業といった切り口もあります。もちろん、「傾向と対策①」の開業準備も有効でしょう。 傾向と対策 ③人事評価 頑張って仕事をした分はきちんと報酬で報いられる 自分の評価に不満を持つ医師は少なくありません。仕事の動機としてお金がすべてではないですが、成果報酬型の給与を望む医師は一定数います。病院では医局からの医師派遣もあり、大胆な給与体系はつくりにくいです、診療所の場合、トップの考え方次第。貢献してくれる医師を報酬で評価しやすいのは診療所の強みの1つでしょう。 診療所と勤務医双方にメリットが大きいのは、仕事をすればするほど給与が上がる出来高連動型。ただし、基準が曖昧だとトラブルになるため、医師に求めること、評価のポイント、患者数に合わせたインセンティブなどを明確にしたうえで契約することが大切です。 傾向と対策 ④柔軟な勤務形態 時短勤務など自分の時間を大切にできる 子育てや介護などで、限られた時間しか勤務できないという医師もいます。そのため「週2日午前中だけ」といったフレキシブルな勤務も「売り」になります。 ある在宅専門診療所では、子どもと過ごす時間を増やしたいという勤務医のニーズに応えるため、診療以外の仕事は、自宅でもできる仕組みをつくり、時短勤務を実現。子育て中の医師からは「宿題をしている子どもと向き合いながら、書類作成ができる」と好評です。時短勤務だと現場になじめない恐れもあるのでフォローも大切。これは事務長がいる診療所が総じて強いです。 傾向と対策 ⑤診療支援 周辺作業の必要がなく自分の診療に専念できる 「診療に専念したい」という医師は多いです。そのため、電子カルテの入力をはじめ検査や診療補助、治療の説明などの診療周辺業務から解放されることも魅力です。 医師が診療に専念し、多くの患者を診れば、売上も増加する。患者と向き合う時間が増えれば、患者の満足度も上がるでしょう。業務効率の向上は、結果として労働時間を短縮させる可能性も高い。生産性の向上や長時間勤務の解消のためにも医師が診療に専念できる環境づくりは重要です。 傾向と対策 ⑥目指す医療を明確にする 自分が本当に求めていた共感できるコンセプトがある 目指す医療コンセプトを明確に打ち出し、その意味や目的がより多くの医師に届くよう、ホームページやSNSで発信します。自院が本当にほしい医師から共感を得られるかもしれない。たとえば、ある救急医療専門の診療所では、その思いに賛同して「ここで働かせてほしい」という医師が大勢訪れています。 広範囲に分院展開している診療所を除いて、勤務医採用と言っても大半は数人でしょう。そうであれば「他にはない環境」「目指す医療」といった理念ややりがいで勝負するという選択肢もあります。自分がどんな医療、どんな社会を目指しているのか。多くの医師に届けるため、できればメディアを通じて発信したいです。 監修:日本医療企画 取材年月:2019年2月

社交ダンスで介護予防 習い事感覚で通って表情にも変化が

社交ダンスで介護予防 習い事感覚で通って表情にも変化が

<取材先>ダンス・ド・サロンマキ 管理者・生活相談員 牧野 愛 「ダンス・ド・サロンマキ」は、社交ダンスに特化したデイサービスです。 高齢者には少しハードルが高そうに思える社交ダンスを、どのようにデイサービスに取り入れているのでしょうか。管理者で生活相談員の牧野愛さんに話を聞きました。 本格的な指導のもと 社交ダンスを学ぶ場を提供 「ダンス・ド・サロンマキ」(神奈川県相模原市)は2017年にオープンした、社交ダンスに特化した生活支援型通所事業所です。管理者である牧野さん自身は社交ダンス経験者ではありませんが、市内で訪問介護と地域密着型の通所介護事業所を1カ所経営している自身の母親、そして娘が趣味で社交ダンスを楽しんでいます。そのような環境にあることから、社交ダンスと介護という組み合わせでのサービス提供に思い至ったと言います。 「社交ダンスは戦後に流行し、当時は各地にダンスホールもたくさんあったので、若い頃に社交ダンスに親しんだ高齢者は意外と多いのです」と牧野さん。長く社交ダンスを続けている人は、80代になっても90代になっても背筋がピンと伸びていて、若々しい人が多い。それならば、高齢者に引き続き社交ダンスを楽しんでもらう場をデイサービスで提供すればいいのではないか、と考えたそうです。そこで社交ダンスのスタジオを作りデイサービスを運営する傍ら、上階にある事務所で居宅介護支援事業所も運営しています。 「ダンス・ド・サロンマキ」は生活支援型通所サービスなので、対象は要支援者と要支援状態となる恐れのある高齢者。週2回、水曜日と金曜日の13時から15時までの2時間、サービスを提供しています。プログラムはバイタルチェックから始まり、準備体操をしてから社交ダンスのレッスンをスタート。プロまたはアマチュアのダンス講師による指導を受けたあと、最後にストレッチをして終了となります。ケガを防ぐためにもレッスン前後の体操やストレッチは、介護スタッフの指導のもと、入念に行っています。 「主に水曜日はラテンダンス、金曜日はスタンダードダンスと分けて、それぞれダンス講師に来てもらっており、プロA級や元アマチュアチャンピオンなど、一流の方に教えていただいています。母や娘が社交ダンスをやっている関係で様々なツテをたどり、お願いしています。ですから、デイサービスといえども指導は本格的。社交ダンスの経験がある利用者の方にも満足のいくものになっているのではないかと思います」 体力アップと同時に認知機能低下の防止にも 社交ダンスの経験はないが以前から興味がありやってみたいと思っていた人、家族に勧められた人、友達に誘われて……など、ここにやってくる利用者の参加理由は様々です。「教室に通うのは敷居が高いと思っている方や、何か趣味を見つけたいと思っている方などにはおすすめです。介護保険を使えるので、一般的な教室より費用面でもかなり気軽に通えて、お得だと思います」 実際に利用者はデイサービスというより習い事に来ているような雰囲気で、趣味の仲間と楽しんでいるような様子です。最初は地味だった服装もどんどんお洒落なものに変わったり、普通の室内履きで練習していた人が「ヒールを履きたい」と言うようになるといった変化も見られます。最初は姿勢が悪く、一人でデイサービスに来れなかった人が、通ううちに背筋がピンと伸び、一人で歩いて通えるようになったケースもあります。 「送迎はあえてしていません。ご自分で来てもらうことも訓練になります」と、工夫を示します。 利用者は趣味の仲間に会う感覚で通ってくるので、迎えに行かなくても「行きたくない」と言って休む人はほとんどいません。「ボケないように……」と言って通い始めた人が、いつしか「上達したい」と考えるようになるなど、目的が変化する点も大きなポイントです。 「社交ダンスは全身運動で、前や横だけでなく、後ろにも移動します。後退する動きというのは日常生活ではあまりしないので、普段は使わない筋肉も鍛えられます。それと、音楽に合わせなければいけないし、相手を感じながら動かなければいけないので、踊ると同 時にさまざまな感覚が刺激されるのです」と牧野さん。体力アップに加えて認知症予防の効果も期待できると言います。 現在、「ダンス・ド・サロンマキ」では、年に1回、トッププロを迎え、ダンスパーティを開催。利用者同士で一緒にダンスショップに行って衣装を選んだりするのも、通い続けるモチベーションになっています。また、成果発表の場もあり、見に来た家族からの「去年より上手になっていてすごい」などの声も、励みになっているようです。 牧野さんが利用者の変化を一番感じるのは、その表情だと言います。趣味もなく、ずっと家で過ごしていた人は表情が暗く、声も小さい。それがデイサービスに通ううちに笑顔が増え、声も大きくなってきます。「こんなに笑う人だったんだ」と驚くこともあるほどだと言います。 「課題があるとすれば、利用者数が少ないこと。別の事業所を持っているから運営できていますが、経営的には厳しい部分もあります」と、牧野さん。未経験の人でも練習すれば十分踊れるようになると、新たな利用者獲得に意欲を示します。「老後に趣味があるのとないのとでは大きな違いがあります。楽しみを見つけられると生活が豊かになりますし、介護が必要な状態になるのを遅らせることができると思います。社交ダンスは男女ペアで踊るのが基本なので、できれば男女同じくらいの人数が望ましい。男性にもぜひ参加してほしいなと思っています」

職員を大切にしたことで入職待機者が続出

職員を大切にしたことで入職待機者が続出

<取材先> 社会福祉法人あいの土山福祉会 特別養護老人ホーム エーデル土山 介護士長 岩田 秀信 求職者を集めるだけでも苦労が絶えない昨今、「職員の空きが出るまで待ちたい」と入職希望者が列をなしている施設が存在します。それが、特別養護老人ホーム エーデル土山です。 滋賀県ののどかな郊外に建つ特養のどこに、職を求める人たちを惹きつける理由があるのでしょうか。介護士長の岩田秀信さんに聞きました。 入職待機者が続出する6つのポイント 社会福祉法人あいの土山福祉会が運営する特別養護老人ホーム エーデル土山は、滋賀県の南部、甲賀市土山町に位置します。開設は1999年4月。従来型35床とショートステイ5床に加え、ユニット型を30床併設しています。 そんな同施設では、2021年10月現在15人以上が入職待ちだと言います。 「入職の応募があった時点で、職員が空くまで待つのか、一旦(応募を)取り下げるのかを確認します。そして、『待つ』と答えた人には一度施設見学をし、入職の意思を再度確認しています」と、岩田さんは説明します。 入職待機者がいたこともあり、2020年開設した地域密着型特別養護老人ホームリトルブックも、募集から1カ月で職員が揃いました。 同施設が掲げる“入職待機者が続出するポイント”は6つあります。 それが、「ワークライフバランス・働きやすい環境」「負担のかからないケア」「スタッフの健康促進」「スタッフ特典」「待遇・福利厚生」「キャリアアップ、育成」です。 まず、「ワークライフバランス・働きやすい環境」についてです。 同施設では、残業ゼロとともに、1日の勤務時間は7.5時間、年間休日は120日を実現しています。会議や研修は勤務時間内に行うとともに、定時になったら帰るよう促すなど、残業しない仕組みを作っています。 また、余剰人員を確保し配置に余裕を持たせることで、有休が取りやすい環境を整備。取得率は80%だそうです。 「負担のかからないケア」では、移乗用リフトの導入や、自動体圧分散式エアーマット、自動窓拭きロボなども使用し、スタッフの負荷や疲労の軽減に繋げています。 また、「スタッフの健康促進」では、スタッフ専用のフィットネスジムを設置。酸素カプセルも置くなど、スタッフの疲労回復に寄与しています。 「スタッフ特典」の中身は年1回の社員旅行ですが、日帰り旅行や国内・海外旅行など複数のコースから、気の合う職員同士で4名程度のグループを組み、好きなコースを選んで旅する仕組みです。 「待遇・福利厚生」では、年収450万円以上(介護福祉士経験10年以上の目安)を打ち出すとともに、正社員の定年を70歳とし、60歳以降の昇給も保証しています。 6つ目の「キャリアアップ、育成」では、「プリセプターシップ」と呼ばれる教育制度を採用しています。年齢の近いスタッフが新人職員の指導を、約2カ月間マンツーマンで行なった後、1年間ペアを組み、成長を促す仕組みです。 求職者が魅力を感じる点について、「残業がないことや、腰痛を抱えない介護を徹底している点。また、長めの連休が取れるのも理由の一つのようです。給与面も魅力的だと聞いています」と、岩田さんは推察します。 同施設では、求人サイトなどに情報を掲載していないため、ホームページからの応募が多いと言います。そのため、職場環境などをホームページ上で全面に押し出し、関心を引かせるように工夫、応募者のほとんどは中途採用で、地域も広島や名古屋、大阪など多方面です。 「中途の応募者は介護未経験が少なくありません。これは、未経験でもしっかり指導する当法人のシステムが、評価されたからだと思っています」と岩田さんは話します。 職員が自作したホームページ。介護施設らしくないデザインが目を引く 離職率40%から働き方改革を発起 開設当初は職場環境がひどい状態だった、と岩田さんは振り返ります。 「長時間労働が常態化し、サービス残業なども多く、労働基準監督署から是正勧告を受けたほどでした。その当時の離職率は40%に上っていました」 こうした事態に強い危機感を抱き、改革を押し進めていったのが、同施設の施設長の廣岡隆之さんです。 当時、事務局長だった廣岡さんは自身が子育て中だったこともあり、今でいう働き方改革をスタートさせ、まず残業をなくすことから取り組んだと言います。 働き方改革は、廣岡さんが施設長となったことで加速。介護施設における主な3つの離職理由「残業」「腰痛」「メンタル不調」をなくす「トリプルゼロ」の取り組みを推し進めました。改革の根底にあるのは「スタッフファースト」の考え方です。 働きやすい環境を実現し、職員の定着率を上げることで入居者に対するケアも充実し、施設の収益増につなげることに成功。同時に、ホームページや研修テキストを施設で独自に作成。浮いた経費を職員の給与等に還元しました。 学生に向けた介護の魅力発信にも注力する同施設。地域の中高生対象の職場体験に加え、小学生の施設訪問も実施しています。 小学校で出前授業を行い、介護機器の体験をしてもらうことも 「利用者と交流してもらったりと、介護の楽しさや面白さを伝えています。実際、見学に来た生徒がその後、職員になったこともあります」と手応えを話す岩田さん。 同施設の快進撃は止まりそうにありません。

立地選定の手順とポイント 開業タイプ(一戸建て)~診療圏調査のやり方、診療圏調査データ活用の仕方~

立地選定の手順とポイント 開業タイプ(一戸建て)~診療圏調査のやり方、診療圏調査データ活用の仕方~

<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 開業するにあたって、自身で購入した不動産によりクリニックを開業するのか(戸建て開業)、不動産を賃借してクリニックを開業するのか(テナント開業)について、決断する必要があります。今回は戸建て開業について、立地選定の手順とポイントをご紹介いたします。 目次 01:クリニックの理念/経営方針に沿った候補地のリストアップ 02:診療圏調査を行う 03:土地のチェック 04:戸建て開業のメリット・デメリット 05:おわりに クリニックの理念/経営方針に沿った候補地のリストアップ リストアップした土地は自身の理念に沿っていますでしょうか。 「地域医療に貢献したい」、「自費収入に注力したい」など自身の理念によって求められる立地・地域性が異なります。土地をリストアップする前に、自身の理念を明確にしましょう。 診療圏調査を行う 安定した医院経営を行うためには、いかに新規患者を呼び込むことができるかどうかがポイントになります。そこで候補となる開業予定地で、どの程度の患者数が見込めるのかについて調査する必要があります。 診療圏の調査結果は、金融機関との融資交渉を行う上でも重要な根拠資料となりますので、候補地を選定する際には診療圏調査を実施しましょう。 土地のチェック 候補地の選定には土地の特殊性について注意が必要となり、以下の代表的な注意点があります。 ・市街化調整区域 市街化調整区域とは市街化を抑制すべき区域として指定される区域となり、不動産の建築が原則認められません。行政に許可申請を行えば、クリニックの建築は可能ですが、市街化が抑制されている地域であることから、集患に苦労される場合があります。 ・農地 農地として定められた土地に開業する場合には、農地転用が必要です。手続きに時間を要することがあり、余裕を持った開業スケジュールを組む必要があります。 ・定期借地権 普通借地権とは異なり、地主を保護する権利となるため、契約期間が満了すると自動的に契約が更新されません。契約を更新できない場合には、契約満了後、地主に返還する必要がありますので、賃貸借契約を締結する際には契約更新の有無について地主と交渉することをお勧めします。 戸建て開業のメリット・デメリット ・メリット 戸建て開業は設計の自由度が高く、理想とするクリニックを建築することができます。また駐車場を確保しやすいため、車による通院が期待できます。 ・デメリット 不動産の取得費用がかかるため、テナント開業と比較して初期投資額が大きくなります。また不動産の老朽リスクを負うため、定期的なメンテナンスが必要です。 おわりに 開業を考えられる際には、まず初めに自身の理念・経営方針を明確にしてから土地の選定を進めるべきかと考えます。戸建て開業には上記に記載した通り自由度が高い等のメリットがある反面、初期投資が大きくなるデメリットもあるため、十分に検討し納得のいく決断が必要です。 人生において大きな決断となりますので不安を感じられる場合には、専門家にご相談ください。

整体やエステできれいになって 気持ちも明るく前向きに

整体やエステできれいになって 気持ちも明るく前向きに

<取材先>株式会社サンスマイル 取締役・統括部長 中井 恵光 整体やエステ、リフレクソロジーなどを行う「美スマイル」。サービスに美容を取り入れることで利用者の明るい表情や外出意欲を引き出すなどの効果を生んでいます。 「美スマイル」を運営する株式会社サンスマイル取締役・統括部長の中井恵光さんに話を聞きました。 自分たちが得意な整体や美容を武器に介護に参入 株式会社サンスマイルは、東京都町田市や八王子市などを中心にデイサービス、訪問介護事業所、有料老人ホームなどを展開。会社の立ち上げは2014年で、美容に特化したデイサービス「美スマイル」をオープンしたのが始まりでした。 「もとは整体の店舗を全国展開する会社だったのですが、当時、介護現場での虐待などの暗いニュースを耳にする機会が多く、従来の介護に疑問を感じていました。そこで立ち上げたのが、『美スマイル』です。私たちはたまたま整体や美容関連の事業をやっていたので、それを武器に介護をやってみよう、と思い至りました。どんな分野でもそうですが、特に後発の場合、何か特徴がないと闘っていけません。私たちが勝負できるのは美容だと思ったのです」と、中井さんは開設までの経緯を説明します。 もともと整体をはじめ、ヨガやマッサージ、エステ、リフレクソロジーなどのノウハウはありました。加えて、それらの施術を行うインストラクターなどを育てる学校も運営していたので、人材確保のルートもあります。こうしてデイサービス「美スマイル」をスタートすることとなりました。 デイサービスのプログラムは、健康チェックを済ませたあと、椅子に座って行うヨガを取り入れた体操からスタートします。20分ほどかけてゆっくり動いたあとは、整体を行います。整体といっても骨格の歪みを治すような施術ではなく、筋肉をほぐして可動域を広げ、股関節や肩などの動きを良くして生活しやすくすることが目的です。 整体のあとは、フェイシャルエステかリフレクソロジーでリフレッシュ。フェイシャルエステは顔のマッサージやパックが中心で、リフレクソロジーはふくらはぎを中心にオイルで足をマッサージすることで血行を促進し、むくみの解消を目指します。高齢者には冷え性の人が多いため、「足がポカポカ温まる」と好評です。どちらも施術は15〜20分ほど。この他に月1回、希望者にネイルのサービスも行っています。 可動域が広がったり、むくみが取れて歩きやすくなることで、転倒防止や健康維持に繋げるほか、エステなどで気持ちよさを感じてもらうことで、身体と心の両方のケアが可能になります。「エステのあと、『きれいになりましたね』と声をかけると、表情がパーッと明るくなります。デイに通うことで、外に出るようになったり、人と会うようになったり、会話が増えたりするきっかけになればと思っています」 リハビリ特化型に行く一歩手前のデイサービスに 介護事業を開始した当初は、「介護施設なのにリハビリはやらないんですか」「本当に結果は出るんですか」など、ケアマネジャーになかなか理解されない日々が続いたと言います。しかし、「また行きたい」「通いたい」という人が徐々に増え、口コミで利用者が広がっていきました。それに伴いケアマネジャーからの紹介数も増えていったと言います。 「いきなり機能訓練と言われても、『つらい』『面倒くさい』と、デイサービスに行かなくなってしまう人は多いと聞きます。当社ではそういう方に気軽に来てもらって、楽しんでもらいたいと考えています。リハビリに特化しているデイサービスは他にもあるので、差別化という意味でも、外に出るための第一歩として、当デイを捉えてもらえば良いと思っています。家に閉じこもっていると筋肉が落ちて寝たきりになってしまったり、認知症の問題なども出てくるので、そうならないための第一歩ですね」 2022年2月時点での利用者の平均介護度は2程度。全体の9割以上が女性です。デイサービスに通っていると知られたくない人もいるので、送迎車に介護事業所とわかるステッカーは貼っていません。 「『自分はまだ元気だから大丈夫』と思っている人が、通いたいと思ってくれるのが一番嬉しいです。重度化しないために利用するという目的で通ってもらうことが、私たちのサービスには合っていると思っています」と中井さん。利用者の状態に合わせてデイサービスを使い分けてほしい、と話します。 「美スマイル」は現在、町田と成城の2カ所で展開。どちらも好評で、利用者の家族からも「楽しく通っている」「表情が明るくなった」と言われることが多いと言います。 利用者に楽しく通ってもらうために心がけていることについて聞くと、「チームワークづくりです」と中井さん。どんなに知識があっても、どんなに技術があっても、介護の仕事は一人ではできません。スタッフがバラバラでは良いサービスはできないので、スタッフ間のコミュニケーションを重視。そのため、特に施設長の研修に力を入れ、スタッフ一人ひとりときちんと向き合い、悩みや不安があれば、いち早く気づいて対応するよう指導していると言います。 「従来の介護に疑問をもち、自分たちができる介護をやっていこう、との思いで立ち上げたときの気持ちを忘れずに、利用者やご家族ともしっかりコミュニケーションを図りながら、『ここに来てよかった』と思ってもらえる施設づくりを続けていきたいと思っています」

開業志望の勤務医を分院長へ 承継・独立を前提とした分院戦略

開業志望の勤務医を分院長へ 承継・独立を前提とした分院戦略

<取材先>医療法人隆由会(大阪市都島区ほか)大瀧隆博 院長 2010年、大阪市内で「整形外科おおたきクリニック」を開業した医療法人隆由会では、これまで本院合わせて通算8つの診療所を展開し、そのうち2診療所を分院長に承継売却しています。 昨今では、新型コロナウイルス感染症の流行もあるが、大瀧隆博理事長は分院展開への影響について、「戦略としてはコロナ禍前後で変わっていません」と説明する。 「もちろん、展開する予定だった分院の計画を見直すといったことはありましたし、すでに20年5月開業で準備が進んでいた7番目の分院に関しては、どうなるか未知数でした。ただ、いざ蓋を開けてみれば、1回目の非常事態宣言下でも特に大きな変化はなく、これまでの分院同様1日130~140人と順調に成長しました。分院長になった先生の熱意もあってのことでしょう」  また、分院展開の狙い自体も、一般的な自法人の規模拡大とは少々異なると言います。というのも、患者からのニーズはもちろんですが、大瀧理事長が新しい分院の立ち上げを検討する大きな要因の一つに、「開業志望の医師のニーズ」があるからです。 「1つ目の分院の際は特に承継などは意識しておらず、自法人で運営するつもりで開院しました。ただ、やはり勤務医の先生のなかには将来独立したい思いがある方も少なくありません。それならば、熱意のある先生であれば、最初から承継を前提に分院長になっていただくほうが、分院長は開業に関するリスクを抑えて独立できますし、当法人としても意欲のある医師に来てもらえるといった、WIN-WINの関係をつくれるのではと考え直したのです」(大瀧理事長) そのため、同法人が分院をつくるタイミングは、「承継前提で分院長になりたい」という医師の応募があったときです。なお、分院を手放すことによる経営面の影響も懸念されますが、実際には譲渡金による収益を次の投資に回せますし、分院長だけ独立のため退職した場合、次の分院長の募集やそれが決まるまでの運営などの経営課題も出てくるため、結果として経営リスクの低減にもつながっているそうです。 大瀧理事長は、「おそらく、当法人内の各診療所の経営がうまくいっているからこそ、勤務医の皆さんも『自分もやってみたい』と、より独立への気持ちが強くなるのかなと感じています。その気持ちに逆行して定着してもらうよりも、その流れに乗ってしまったほうが物事もうまくいくと思い、実際にこの方針に転換してよかったと思っています。現状は、当法人の規模拡大のための分院展開はまったく考えておらず、熱意のある先生からのニーズがあった際に、随時検討していくつもりです」と語りました。 分院長として働いてもらいながら将来の独立を後押しする、新しいスタイルの分院戦略と言えるでしょう。 (取材・掲載年:2022年7月) ~関連記事~                 >>記事一覧へ戻る

目玉を明確にすることで ブランド力を発信

目玉を明確にすることで ブランド力を発信

<取材先>有限会社新井湯 介護部長 渡邊 扶美 デイサービスセンター湯〜亀 管理者 渡邉 千尋 良いもの、質の高いもの、ユニークなものと大勢の人に認められるものを構築して的確に情報発信すれば、自社・自法人のブランド力の向上に直結します。それは「ものづくり」を行う製造業だけに留まりません。無形のサービス=対人サービスである介護でも可能なことです。 優れたサービス、ユニークなサービスは人の耳目を集められます。アイデアをどのように活かし、どのように浸透させていくかは、大きなカギになります。 目次 銭湯とデイサービスの一体化で地域に浸透 ー手足を伸ばせる大浴場は魅力的 ーサービスの質の高さが地域に浸透 銭湯とデイサービスの一体化で地域に浸透 手足を伸ばせる大浴場は魅力的 一般の住宅にも集合住宅の個室にも風呂やシャワーが普及した結果、大都市と地方都市とを問わず、年々銭湯は街から姿を消しています。しかし、大浴場で手足を伸ばしてのんびりとお湯に浸かれることを魅力的に思う人はいるし、飲食機能なども付加したスーパー銭湯のなかには、人気を博しているところもあります。 「私ども『デイサービス湯〜亀(ゆ~き)』は、原点は銭湯であり、そこに、ほかの事業所にはないユニークさがあると思います」と語るのは、同事業所の責任者である渡邉千尋さんです。  同事業所は、「新生湯」という屋号で銭湯を経営する有限会社新井湯が運営しています。銭湯の広々とした脱衣所を、昼間はデイサービスのホールとして活用し、食事やレクリエーション、機能回復訓練などの場としています。入浴時間にはそのまま銭湯の大型浴槽に入ることができます。サウナ、歩行訓練のできる水流浴槽など各種の浴槽があり、壁面のタイル画は、間違いなく銭湯であることを感じさせてくれます。銭湯としての営業は、デイサービスの利用者が帰宅後の15時半から始まります。  もともとは2000年に、地域に入浴が困難になった高齢者が増えたことから、従業員がヘルパー資格を取り、そうした高齢者を送り迎えし、銭湯への入浴介助を始めたことにあります。そして、2003年に、現在のスタイルのデイサービスセンターをスタートさせました。 「銭湯の常連のお客様が高齢になって、そのままデイのご利用者にスライドしてくるという形で、徐々に増えていきました」と、渡邉さんは説明します。利用定員18人未満の地域密着型デイサービスだが、利用率は高く、9割程度を維持しています。大浴槽に皆で一斉に入浴し、和気あいあいとした雰囲気で楽しめます。人気の理由はそこにあります。こうして昼はデイサービス、夜は銭湯という営業スタイルが定着したのです。 サービスの質の高さが地域に浸透 デイサービスが成功を収めると、2004年に訪問介護を開始。その後は、居宅介護支援、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅などに事業を広げていきました。 「昭和27年以来続く銭湯として地域に育ててもらい、地域に恩を返し、利益を還元するという思いが強かったのです」と語るのは介護事業部長の渡邊扶美さん。介護保険外の事業でも、フィットネスジム「P2M」や最寄りの荏原町駅周辺のスポット紹介や介護・健康づくりの相談窓口となっている「EBA4」などが地域の顔になっています。  新型コロナ禍では、2020年3月には利用者が2〜3人という日もあったと言います。しかし、入浴時に3密とならないように呼びかけるなど衛生面で十分に配慮し、信頼を回復。「おかげ様で、今は概ね8〜9割の稼働率を維持できています」という状況だそうです。 「事業所の食事で出すお弁当が、大変に評判がよいですね。最寄りの商店街のお米屋さんにつくってもらっていますが、精米がよく、ご飯がとても美味しいようです」と言う渡邊さん。ほかにも、常駐する理学療法士が考案した転倒予防体操のほか、健康づくりではフィットネスジムとコラボしたメニューもあると言います。また、音楽療法士を招いての歌声喫茶も事業所内の良い雰囲気をつくり出しています。 「事業所が気に入ってもらえるのはお風呂がきっかけですが、デイの本質は、来てもらってADLの向上に取り組んでもらうことだと考えています。特に独居のかたが、この新型コロナ禍で出かけられなくなり、筋力が低下するとそれを回復させることも大変です。そうしたことを防ぐことこそが、私どもの役割です」と、渡邊さんは強調します。珍しい銭湯+デイサービスを展開する湯〜亀は、地域の高齢者の自立支援の受け皿としてなくてはならない存在なのです。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2020年8月

大規模化の先に見える 新しいデイサービスの姿

大規模化の先に見える 新しいデイサービスの姿

<取材先>株式会社エムダブルエス日高 大規模化と一口に言っても、漫然と大きなものをつくるのではなく、広さの確保と集客を両立させなければなりません。空間や組織の余裕を活かし、新しいことにチャレンジすることが大切です。 目次 「大きいことは良いこと」を地で行く大規模デイサービス 新しい技術の導入に次々に挑戦する 斬新なアイデアを実現することで地域の顔に めざすは「かかりつけ」のデイサービス 「大きいことは良いこと」を地で行く大規模デイサービス 群馬県一円で介護事業を営む株式会社エムダブルエス日高。そのデイサービス事業の要となっているのが、高崎市にある「地域福祉交流センター」です。 デイサービス事業である「日高デイトレセンター」を中核とする複合施設です。 デイサービスの最大定員は何と400名に達します。建物の1階には広大なホールがあり、さらに、カフェスペースや機能訓練スペース、調理室、風呂、相談コーナーなどがあります。 2階も1階と同等の面積の機能訓練の場となっており、天候の悪い日でもウオーキングができるトラックも整備されています。さらに周囲に麻雀室、PC教室、図書室、機能訓練のマシン室、陶芸教室、ゴルフシミュレーションなどがあります。 保険外の事業として、55歳以上の人を対象とした会員制のシニア・トレーニングルームまであります。 「さすがに緊急事態宣言が出た前後には、定員に対する稼働率は50%程度に下がったのですが、それ以降は徐々に持ち直しました。現在は80%くらいまで戻しています」と、同社の代表取締役である北嶋史誉さんは、状況を説明します。 同センターは、大規模通所介護(Ⅱ)を算定する全国でも数少ない大型事業所です。 大規模な事業所のデメリットとして、多くの利用者が集まれば集まるほど、利用者同士、あるいは利用者と職員のつながりが希薄になることがあげられます。 現在のような危機のときには、個人間の仲の良いことが、その場に行こうという動機になる場合があるし、危機が小さくなったときに実績を取り戻すのにも都合が良いように思えます。 しかし、必ずしも、そうではないと北嶋さんは言います。 「そこに集まる人が、程よい距離感を保てるのが、大規模デイサービスの良いところです。当センターとしては、いつ、誰に来てもらっても構いません。随時利用できる場所もありますから、センター内の自分の好きなところへ行っていただいて構わないのです。ご利用者様にもいろいろな人がいます。濃密な関係のなかで利用者間のトラブルを抱えたり、人間関係にいやな思いをしたりということもあり得ます。そういうことが、当センターにはありません。そういう人から距離を置くことができるからです」と、北嶋さんは語ります。 もちろん、デイサービスとしての基本は外しません。 バイタルチェックに始まり、入浴、食事、レクリエーションなど。そこには、ただケアマネジャーに紹介された利用者が来て、ホールに座らされ、レクを押しつけられる……といったような窮屈さも感じられません。 距離感と自由さが、居心地のよさにつながります。 同センターのような事業所が、どこでもつくれるというものではないのも確かです。 人口希薄な地域では土地は入手しやすいでしょうが、大規模な施設をつくっても定員を満たすほどの人が集まりません。 大都市では人が集まっても、大きい施設を建てる土地を確保することが難しい。大規模化といっても、簡単に実現できるわけではないのです。 「当センターは十分に大都市である高崎市と前橋市の市境の地域に立地していますから、1個の政令指定都市に匹敵する商圏人口があります。それでいて、両市の郊外部にあたり、広大な土地が入手しやすかったのです」と、北嶋さんが語るように、ここには大規模デイを成立させる好条件が整っていたのです。 新しい技術の導入に次々に挑戦する 「せっかく大規模施設をつくって運営に余裕もあるのですから、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいと思っています」と、北嶋さんは語ります。 同社は医療法人社団日高会が形成する日高グループの一翼をなしており、このグループには介護・医療のICT化に取り組む会社・法人もあります。 それらと協力して、業務のICT化も進めているし、デイサービスのオンライン化も進めています。 特に「ICTリハ」と呼ばれるアプリにより、リハビリの利用者のデータをクラウドに集積。最適なリハビリメニューを自動的に作成しています。 そうしたICT基盤を活かして、さらなるチャレンジに乗り出しています。 「現在の新型コロナ禍において、デイサービスの訪問事業への振り替えや電話を使っての確認業務に介護報酬が付くようになりました。これは一つのチャンスであり、デイサービスのリモート化を進め、リアルなデイサービスとの組み合わせで『ハイブリット・デイサービス』を展開しているのです」と、北嶋氏は解説します。 これはデイサービスに行きたいが、新型コロナ感染症を避けるなどの理由により、自宅に待機している利用者に向けて考案したものです。 そうした利用者のスマホに専用アプリをインストールしてもらいます。 そのアプリを立ち上げると、簡単に同社のデイサービスにアクセスでき、テレビ電話機能を通じて、バイタルのチェック、簡単なリハビリ指導、各種の相談、デイに来ている利用者との会話などができます。 「普通デイに来れば、挨拶してまず、バイタルをチェックします。同じタイミングで、自宅にいる人にもスマホでアクセスしてバイタルをチェックします。さらに食事やリハなどのアクティビティのタイミングを合わせて、自宅のご利用者様とアクセスすれば、居ながらにして事業所に来ているような疑似的なサービスが行えるわけです」と、北嶋さんは説明します。 常時ではなく、今回のコロナ禍のような緊急事態下や、災害後の交通途絶が生じた場合に、特に有効な仕組みだと考えており、リアルなデイサービスと組み合わせるから「ハイブリット」となるわけです。 高齢者にはスマホの取り扱いは難しいと思われるかもしれませんが、その点でも万全です。 「ガラケーでもアクセスできるようにしています。また、弊社では保険外事業でエックスモバイルの代理店も展開しています。当センターで相談してもらえれば、スマホの購入の手続きもできますし、PC教室と平行してスマホの教室も行っています。一貫して対応できます」と、北嶋さんは笑顔を見せます。 斬新なアイデアを実現することで地域の顔に もともとエムダブルエス日高は、斬新なアイデアに次々に取り組んできました。 たとえば、「フレッシー便」。これは、地元のスーパーであるフレッセイと提携して、各事業所に移動販売車を回らせるサービスです。 足腰が弱ったり、近くのスーパーがなくなったりして、遠くまで買い物に行くのが大変になったという利用者が、各事業所の駐車場に乗りつけた販売車で買い物をします。 買ったものは、送迎車で利用者自身ともども運んでもらえます。足腰が弱ったり、車の運転ができなくなったりして、買い物難民となっていた利用者には好評のサービスです。 また、毎週火曜日に市内の各所を巡回する「モバイルスーパー」も行っています。 AIによる最適配車を可能にしたシステムを活用し、非通所日の利用者を送迎車に相乗りさせ、目的地で降ろす「福祉Mover」など、次々にユニークなアイデアを実現することで、地域における知名度を高めています。 また、「福祉Mover」を使った相乗りは、新潟県の阿賀野市でも実験を始めており、介護業界全体にも波及する様相を見せています。ネットを介して現場の声を集め、「KAIGO FUTURE」のように、介護業界全体のイメージアップを狙う動きもあります。 めざすは「かかりつけ」のデイサービス 次々に新しいアイデアを実現しているエムダブルエス日高ですが、決して奇抜さを狙っているわけではありません。 「孤独や社会的孤立といったものを解消し、ご利用者様の自立支援のお手伝いをするためにも、デイサービスは不可欠な事業であると考えています。その大切な事業を継続させるためにも、さまざまな経営努力が必要になります。確かに介護報酬の基本的なところでは苦しい状況が続いてきましたが、新型コロナウイルスの問題などもあって、厳しい規制が緩んでもいます。それを利用しない手はありません」と、北嶋さん。 特に地方都市では、大規模化がデイサービス経営の存続の鍵を握っていると考えています。ですが、前述のように大規模化はどこでもできるわけではありません。 「それならば、地域にサテライトのデイサービスをいくつか展開し、機能分担するという方法もあるでしょう。弊社でもこのセンターの近所に『日高在宅療養センター デイサービス』や『第2デイサービスセンター』があります。小規模でも良いので、そういうサテライト的な事業所を持ち、入浴中心、生きがいづくりの活動中心、リハビリ活動中心などを打ち出し、短時間サービスで回転させていくという方法もあるのではないでしょうか」と、北嶋さんは提案します。 そうすることで、一つの地域に事業所が集まり、地域で主導的な事業者になれるかもしれません。 そして、何よりも、福祉事業者として、利用者との関係性を構築することが大切だと言います。 「今考えているのは、『かかりつけデイサービス』という概念です」と、最後に北嶋さんは語りました。 もちろん、高齢者が介護サービスを受けていれば、地域包括支援センターやケアマネとも関係をもっているでしょうし、施設にいれば生活相談員だっています。 在宅でも、利用している事業所のスタッフとも密接な関係があるはずです。 「それでも在宅のご利用者様が何か困り事があったり、相談事があったときに、一番近くにある介護事業所は、デイサービスのはずです。医療の世界では『かかりつけ医』ということが長年にわたって言われ、最近では『かかりつけ薬局』も制度にあります。2025年に向け、高齢者介護の世界においても『かかりつけ』という気安く相談事に応じられる介護事業所が必要になってくると思います。その時には、デイサービスこそがその役割を果たせるように力を付けていく必要があると思います」と、北嶋さんは力強く語りました。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2020年8月

「眠れない」を徹底的に追及し誰もが安心できる環境をつくる

「眠れない」を徹底的に追及し誰もが安心できる環境をつくる

<取材先>青山・表参道睡眠ストレスクリニック(東京都港区) 2017年に開業した青山・表参道睡眠ストレスクリニック。「“睡眠”の面から心身の健康維持のサポートを」を理念に、患者の「眠れない」といった症状に対し、あらゆる角度から原因を追究し、治療に結びつけています。特に専門的に診ているのは、不眠やいびき、睡眠時無呼吸症やむずむず脚症候群などの睡眠障害と、ストレスによる不安や、抑うつ状態、パニック症状などです。 開業の経緯を中村真樹院長は、「以前勤務していた睡眠総合ケアクリニック代々木には、睡眠時無呼吸症の患者だけで1カ月1300人も訪れていました。そちらをサポートする診療所をつくりたいと、同じ沿線の表参道で開業しました。このエリアには日本を代表する企業が多いことも理由の1つです」と説明します。患者層は30~40代、働き盛りのビジネスパーソンが中心です。 「『眠れない』といった症状を訴える患者が多いです。また、不安や抑うつ状態の患者もいます。不眠と抑うつ状態を併発している人は、眠れないために精神的な疲れで抑うつ状態になっているのか、それとも鬱が原因で不眠になっているのかを見極める必要があります。さらに、最近多いのはむずむず脚症候群が原因の不眠です。また、本人はしっかり寝ているつもりでも、日中眠くなるといった人のなかに、周期性四肢運動障害という睡眠中の四肢の不随意の痙攣を認めることがあります。これにより熟睡ができずに日中の眠気の原因になり得ます。この確定診断には当院と連携する医療機関で本格的な検査をしています」 睡眠時無呼吸症の患者も多く来院する同院では、CPAP治療に注力しています。CPAP治療におけるボトルネックとなっていたのが、患者が受診時にCPAPの使用状況を保存したデータカードやUSBを自宅に置き忘れてしまうこと。データを確認できないと適切な指導管理ができないため、同院では通信回線によるクラウド型データ管理システムのCPAPを導入。患者はカードやUSBを持ってくる必要がなく、身軽に受診することができるといいます。 このように、ストレスを抱えた患者を対象としている同院では、職員の働きやすさを重視した残業のない就業環境づくりにも取り組んでいます。「スタッフが疲弊していては患者も不安になります。そのため、定時に帰宅できるよう綿密に受診予約を調整しています。その結果、レセプト業務で忙しくなる繁忙時期も定時で帰宅できています」 監修:日本医療企画 (取材・掲載年:2019年8月) ~関連記事~                 >>記事一覧へ戻る

ミスを責めない風土がミスを減らす第一歩

ミスを責めない風土がミスを減らす第一歩

<取材先>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 ミスは誰でも起こしますが、それが本当に大きな影響を及ぼすのは、起きたミスを皆で共有できず、対処が遅れた場合であるとの指摘があります。この「ミス共有の遅れ」を防ぐには、「ミスを責めない」風土が重要になるようです。 ミスは誰でも起こしてしまいますが、できるかぎり減らしたいものです。誰もミスをしたいとは思っていませんが、ミスは起こります。本稿では、ある歯科医院で行ったミーティングの取り組みをご紹介します。   〇「ミス」は医院の評判を下げる スタッフの皆さんに「ミスをする」とどうなるか順を追って尋ねていくと、図【悪循環】にあるように、最終的には「医院の評判が下がる」と答えていました。「ミスをなくす」とどうなるかを尋ねると、図【良循環】にある通り、「医院の評判が上がる」と答えていました。また、悪循環と良循環のどちらが良いかスタッフに尋ねると、全員が「良循環がいい」と答えました。 〇ミスは隠すと影響が大きくなる 今度は、「ミスがどうなったら困るのか」を聞きました。スタッフからは「ほかの業務に支障が出たら困る」「院長の機嫌が悪くなったらまずい」との意見がありました。さらに「どのような場合にミスの影響が大きくなりますか」と質問すると、「ミスしたことを隠していた場合」に影響が大きくなるとの意見で一致しました。   〇「ミス」を隠したくなる心理 一般的にミスを隠したくなるのは、「怒られたくない」という心理がありますからです。ミスを隠すことでどのような影響が出るかに思いが及ばず、「怒られる」「評価が下がる」という考えから離れられなくなっているのです。そのような気持ちになっている時には、指導されても「怒られた」という気持ちにしかならず、指導された内容は本人の頭には残りません。   〇「ミス」を認めることが、「ミス」を減らす第一歩 最後に「これまでに経験したミスを全部挙げてください」というワークを行いました。一定時間に、思いつく限りのミスを付箋に書いてもらうと、平均で一人10個以上のミスが挙がってきました。加えて、ベテランも若手も同じようなミスをしていたことも分かりました。 そこで筆者は、「誰でも同じようなミスをします。大事なのはミスを認め、すぐに報告し、リカバリーすることです」と伝え、起こったミスを自分だけでなく、先輩にも相談し、リカバリー策を打ち、他の業務にも影響をさせないことを重視すべきと強調しました。その上で、「再発防止のためにはどうしたらよいか策を考えること」を伝え、「リカバリー策と再発防止策」の検討につなげたのです。 制作年月:2022年8月17日

1店舗目との距離もポイント 職員の異動や送迎がスムーズに

1店舗目との距離もポイント 職員の異動や送迎がスムーズに

<著者>株式会社ポラリス 代表取締役 森 剛士 1つ目のデイサービスの運営がうまくいき黒字化を果たすと、次の展開を考えることになります。デイサービスもサービス業の1種であることを考えると物件取得は事業拡大を考えるうえで大きな要素の一つになります。 不動産はテナントと土地から建てる場合に分けられますが、土地から探す場合はどうしても費用が掛かるので事業拡大フェーズでもかなり財務基盤や信用が増した時期での実施をお勧めします。テナントを探す方法としては不動産情報サイトと地元の不動産、そして自分で開業希望地を車等で回り自分の目で探す方法があります。最近ではグーグルマップのストリートビューを活用することで効率化も図れます。 お勧めの場所は最初のデイサービスと商圏、すなわち送迎エリアがぎりぎり接する場所です。職員の行き来がしやすく、営業などの相乗効果が見込まれるからです。職員の通勤のしやすさや渋滞の有無にも気を付けましょう。 デイサービスの場合、用途変更という手続きが必要な場合があり、150㎡以上の場合は注意が必要です。建築許可証がない場合、用途変更ができずデイサービスの許可が出ない場合があります。デイサービスには相談室、事務室、静養室、食堂、機能訓練室、障害者用トイレが必要です。他にも必要に応じて、厨房、入浴設備などが必要になります。またローカルルールがあることもあるので開業予定地の地方自治体に問い合わせましょう。 工務店によっては自分たちで図面を書いてくれることもありますが、仕様がしっかり定まっていないと後々トラブルになることが多くお勧めはできません。デイサービスの設計経験のある設計士にお願いし、工務店は最低2カ所以上の見積もりを取ってできるだけ安い内装を行う事が重要です。内装のグレードによりますが120㎡の床面積で1,500万円以内に収まれば比較的リーズナブルだと考えていいでしょう。 またデイサービスは多くの送迎車を使います。職員が車通勤をする場合の駐車場も必要です。建物の横や裏面に縦列駐車を活用したりすると台数を確保しやすくなります。駐車場が足りずに、敷地外に月極駐車場を何台も借りることになる場合があるので注意しましょう。 内装に関してはここでは詳しく触れませんが建物の形が悪かったり、柱が多かったりすると死角が多くなり、デイサービス向きではない場合があります。同じテナントでも、床がモルタルで覆われていたりするとトイレの増設や給排水工事などで大きな出費になることもあります。 監修:日本医療企画㈱ 制作年月:2022年4月

新型コロナに振り回されながらも理念を掲げたホームページを開設!

新型コロナに振り回されながらも理念を掲げたホームページを開設!

<著者> 厚別ひばりクリニック 院長 野崎浩司 救急科専門医・麻酔科認定医 さて、執筆時(20年5月4日)に発表しましたが、新型コロナウイルス感染症(以下、新コロ)対策としての緊急事態宣言が今月末まで延長されることになりました。この3カ月ほどは感染防止のために面会制限を行う医療機関も多く、思った以上に挨拶回りや面談などは進んでいません。 当初の予定ではクリニック近隣の総合病院などへの挨拶回りを終えているはずだったのですが、実際は計3カ所(札幌市医師会厚別区支部長、副支部長、1施設の病院連携室)にしか挨拶できていない。緊急事態宣言が解除されない限り、これ以上は難しいでしょう。 そこで今考えているのは、自己紹介パンフレットを作成し、病院長や連携室、周辺施設や訪問看護ステーションなどへ事前に送付するという方法。もちろん、今回の流行が収まれば改めて施設まで挨拶に伺う予定です。 医療機関以外では、広告を掲載予定の地域新聞「まんまる新聞」や、近隣にある北海道情報大学などにも挨拶に行こうと考えていましたが、そこは医療機関への挨拶が終わってからアポイントを取る予定。 また、一緒に医療モールに入居予定の医師(4人)と、一度もご挨拶していないのも気になっていますが、こちらも現状が落ち着いて「3密」が許されてからになるでしょう。 挨拶回り以外にも、家具や什器のショールームが閉まっていて実物を見に行けてなかったり、機器展示を楽しみにしていた学会もウェブ開催や延期になったりと、細かい部分での予定も狂い始めてはいます。   理念を明示したホームページを開設 一方、まだ内容はスカスカではありますが、厚別ひばりクリニックのホームページを立ち上げて公開しました。開院5カ月前にHPを開設した目的としては、集患はもちろん、スタッフ募集の役割も大きいと考え、院長の挨拶とともにクリニックの理念も作成し掲載することに。 厚別ひばりクリニックの理念 ①常に最新の知識や技術を学び、ガイドラインを遵守した診療を心がけてまいります。 ②地域の皆様が住み慣れた地域で健康寿命を伸ばしていけるように、支えてまいります。 ③患者さんはもちろん、スタッフやその家族まで幸せにできるようなクリニックの運営を目指します。 ①は、ありがちですが、患者のためにも紹介先の若い医師などから陰で笑われることのないような診療を心がけたい。スタッフにも嫌がられない程度に勉強会もしていこうと思います(「クリニックに来たのに勉強会があるのはダルい」というようなスタッフはNG)。 ②は、国の進める「地域包括ケア」そのものですが、かかりつけ医&町医者として、地域の施設や多職種とも積極的に絡んで「顔の見える関係」を構築していきたい。 ③は、スタッフが働きやすく(母親が働きやすいシフトなど)、そして何かあれば(病気、家族の介護など)お互いに休みも取りやすい雰囲気、環境をつくりたい。スタッフ自身と家族の誕生日の計2日まで「特別休暇」を与えたりもしてみたい。「募集してもスタッフの集まらない時代に、そんなの無理。甘い」と諸先輩方は仰るかもしれませんが、スタッフが共通の目標に向けて、お互いに気遣いができ、長く勤めたくなるクリニックを目指していきたいです。   相見積もりで驚愕の価格差!内装業者も決定 HP公開にあたり、早急に完成させる必要があったのが、診療時間でした。リハビリやペインクリニックにおいては高齢者がメインターゲットではありますが、働き盛りの世代にも役立つためには、週2回程度は遅くまで診療する日も設ける必要があると考えていました。 近くに地下鉄ひばりが丘駅もあるので、仕事帰りに生活習慣病の薬をもらいに来たり、予防接種やリハビリの需要にも応えたい。他院で定期的な処方を受けているスタッフが、「遅くまで診療する曜日が固定されていれば、そこを目指して予定立てるので毎日遅くまで開く必要はない」と言っていたのを参考に決めました。   月・金 9:00〜17:30 火・木 9:00〜18:30 水・土 9:00〜12:30(午前のみ)   そして内装工事(C工事)に関しては、不動産会社が費用を負担して行う基本工事(A工事)の担当業者が決まらないため、設計事務所が早めに複数の業者に見積もりを依頼してそのなかで決めることになりました。 結論から言うと、高いところと安いところでは1000万円以上の価格差が出ることになった。そのなかで、医療関係の工事実績もあり、設計事務所からの情報も聞いたうえで、アイ・エム・コーポレーションに依頼することを決めました。   制作:株式会社日本医療企画 (取材年月:2020年6月) ~関連記事~                 記事一覧へ戻る  

開業時にかかる業務 ~開業時に行う業務一覧と開業スケジュール~

開業時にかかる業務 ~開業時に行う業務一覧と開業スケジュール~

<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 医師のクリニック開業を迎えるまでには様々な工程があります。開業に向けて必ず検討しておくべき事項について、具体的なスケジュールを交えながら、必要な手続き等をご紹介いたします。 目次 01:開業6か月前までに行う事項 02:開業2か月前までに行う事項 03:開業2か月~開業直前に行う事項 04:開業後に行う事項 開業スケジュール *1市町村により異なります。 開業6か月前までに行う事項 <医療方針確定~テナント契約(不動産購入)> 医療方針確定 12~10か月前 開業スケジュール作成 12~10か月前 立地の選定 12~6か月前 設計・建築業者/医療機器・設備/医薬品の選定 12~6か月前 事業計画策定 ~6か月前 銀行との融資交渉 ~6か月前 テナント契約(不動産購入) ~6か月前   開業したい時期が決まっているならば、遅くともその1年前から開業準備に取り掛かることをお勧めいたします。このうち特に重要な事項が「立地の選定」と「銀行との融資交渉」です。 「立地の選定」はクリニックの行く末を左右しますので、集患を見込める立地の選定が必要となります。また「銀行との融資交渉」の際には、先生のイメージを数値に落とし込んだ事業計画書を作成する必要があります。 開業2か月前までに行う事項 <医師会加入手続き~従業員研修> 医師会加入手続き ~2か月前 ロゴマーク・看板・HPデザイン作成 ~2か月前 診察券・名刺・封筒・チラシ作成 ~2か月前 求人広告 ~2か月前 インターネットが普及した現在、患者の多くはインターネットを通じて医療機関の情報を入手しています。開業にあたっては、見やすいホームページを作成し、情報発信を行うことで集患を試みる医療機関もございます。 なおホームページ作成にあたっては、「比較優良広告」、「患者の主観に基づく体験談の広告」、「誤認の恐れがある治療等の前・後の写真の広告」などについては規制されているため、掲載内容について十分な注意が必要です。 開業2か月~開業直前に行う事項 <面接実施~内覧会の実施> 面接実施 2か月前~開業前 従業員研修 2か月前~開業前 保健所・厚生局書類提出 おおよそ2か月前*1 開業前DM発送 1か月前~開業前 内覧会の実施 2~1週間前 *1市町村により異なります。 保険診療を行う場合には、厚生局に「保険医療機関指定申請」の提出が必要です。所定の期限内に「保険医療機関指定申請」ができていないと、保険請求を行うことができませんので、手続きの期限についてご留意ください。 開業後に行う事項 <税務手続き、社会保険・労働保険手続き> 税務手続き 開業届 開業後1か月以内 青色申告承認申請書 開業後2か月以内*2 社会保険・労働保険手続き   所定の期限 開業前DM発送 1か月前~開業前 内覧会の実施 2~1週間前 *2以前より不動産所得や事業所得がある場合には、開業した年の3/15までが提出期限となります。 開業される際には、税務関連や社会保険・労働保険関連の手続きを行う必要がございます。各手続きごとに期限が定められていますので、ご留意ください。   ~終わりに~ ご紹介しましたように、開業までには多くの事項を遂行する必要がございます。 どの事項も重要ですので、ご不安に感じられる先生方は税理士などの専門家にご相談いただければと思います。 ~関連記事~                

数字を見える化することで 職員の意識を高めていく

数字を見える化することで 職員の意識を高めていく

<取材先>社会福祉法人小田原福祉会 経営の数字の見える化というと、難しく感じたり、現場の職員に示しても意味がないと思われがちです。社会福祉法人小田原福祉会では、パート職員にいたるまで収入・支出の数字を見える化しています。 目次 担当エリアを細分化し リーダーの責任エリアを限定 数字を見せることで 収入・支出への意識が高まる 数字が見えることで 経営が理解できる 担当エリアを細分化し リーダーの責任エリアを限定 開設から45年を迎える社会福祉法人小田原福祉会。2018年の理事長の交代を機に、経営のあり方を大きく刷新しました。  その目的を、同法人理事長で介護福祉経営士2級の時田佳代子さんは次のように語ります。「これからの経営を考えたときに、極力職員全員が経営に参加する仕組みが必要と感じていました。特に当法人の事業は在宅サービスが7割を占め、事業所も2つの自治体にまたがり、40カ所ほどが地域内に分散し展開しています。その結果、法人本部からは日々の状況を直接把握することに困難を感じていました」  その当時、同法人はエリアを3つに分けてサービスを提供していました。エリアがカバーする地域が広い分、リーダー自身も十分にマネジメントを機能させることができませんでした。 そこで、7つへとエリアを再編成。サービス種別ごとに組織化して効率化を図るというアイデアもあったが、今後の地域包括ケアシステムの構築を視野に入れ、 担当エリアを小さくすることで、より地域のことを知ることができるようにしたのです。  この再編には、地域をよりよく知る以外に、もう一つ目的がありました。それが、リーダーの育成です。「3つのエリアごとにリーダーを置いていましたが、彼らは皆60代以上であり、次世代のリーダー育成が急務となっていました。7つのエリアに細分化することで、1つのエリアのリーダーが担う役割・業務を少なくし、若手がリーダーに登用された際も大きな負担感を感じないようにしました」と、時田さんは振り返ります。  法人経営を担う次世代リーダーの育成は、法人の未来を確かなものにし、同時に全員経営をスタートさせる鍵でもあったわけです。 数字を見せることで 収入・支出への意識が高まる 一人ひとりが組織の一員として経営に参加するためには、日々の業務が経営の数字に反映されることを理解しなければなりません。そのために毎月の収支を現場で管理する仕組みを整えました。  さらに2018年からはアメーバ経営※の手法を採用し、事業所ごとに毎月「部門別採算表」を作成し、収支の背景を把握できるようにしました (図表)。  採算表や月次報告書のフォーマットを作成した同法人事務局長の神矢孝之さんは「毎月数字をタイムリーに見せ、自分たちが行っていることの効果を確認できるようにしました。数字を見て、対策を考える習慣がつくようになり、ひと月ごと、科目ごとといった具合に収入と支出がどうなっているのか、職員全員が意識するようになりました」と、その効果を語ります。  事業所ごとに稼働率や延べ利用者数などから収入を、人件費や水道光熱費などから支出を把握し、前月との数字の違いなどを根拠をもって説明できるようにしていくことで、現場スタッフも注意するようになり、経費削減などの意識も高まっていったと言います。 「今月は収入が少ないから、修繕は来月に回して経費を削減するようにしたり、水道光熱費でソーラー電源を活用している事業所は、夏場はソーラーのお湯を使うようにするなど、身近な改善策が徹底されるようになってきました」と、神矢さんは職員の動きが変わったと話します。  一番費用が掛かるのは人件費だとわかると、利用者が少ない日はパート職員自ら早上がりなどを申し出るなどして、支出を下げる工夫も行われていると言います。 「開始当初は赤字部門の職員も、誰かがどうにかしてくれるものと思っていた雰囲気もありました。しかし、数字が見えるようになることで、自部門が赤字のままでは問題であると思うようになり、どうすればいいのかを考え、対策をとるようになる。その結果が出ると、達成感を感じられるようになり、数字への意識が定着していったのです」と、時田さんも職員の動きの変化を語ります。さらに、自部門の収支が理解できるようになると、その次に法人内での自部門の位置づけや、ほかの部門の取り組みも注視するようにもなってきていると言います。自部門だけでなく、一歩高い目線で法人全体を見ることにもつながっているそうです。  さらに2020年春から続く新型コロナ禍においても、同法人では経営を考えたうえでの事業活動の継続、という選択を多くの職員が支持したのも、見える化をした一つの成果なのかもしれません。 「もちろん感染対策を徹底したうえで行いました。私たちの仕事はどんなことがあってもご利用者様を引き受けなければならない責任とともに、ここでサービスを止めたら法人の経営がどうなるのか、という危機意識を職員全体がもっていたからこそ、自粛やサービスの停止といった話にはなりにくかったのだと思います」と、時田さんは話します。 数字が見えることで 経営が理解できる こうした数字を見せることに対し、介護や福祉の分野になじまないという声もたびたび聞かれます。しかし、「福祉だから、介護だからといって、経営を疎かにしてはならない」と、2人は口をそろえます。リーダーには経営に対する責任と権限が付与されるが、同時に報酬も伴うからこそ、未来に対する希望が生まれます。 「法人経営の安定を考えれば、介護報酬だけに依存する経営は見直さないといけません。職員が人生をかけて働くぐらいの気概をもてるような法人にしていくうえでは、働いた分職員の暮らしや人生にも見返りがあるようにしていかなければなりません」と時田さんは指摘し、職員の業務への向き合い方が、法人全体の経営にも大きな影響を与えることに気づかせていきたいと話します。  ここ数年で急速に見える化を進めた同法人だが、最初からすべて職員にオープンにしたのではないと言います。支出に含まれる人件費の割合が高いため、支出を減らすことを考える際に、人件費にばかり目が向かないように、当初は人件費以外の部分のみを一般の職員には見せていたと言います。「経費削減はある程度できて、これ以上削減するとサービス提供の質に影響する、という時点で人件費の削減を考える、という流れで進めました」と神矢さん。一つの数字に一喜一憂するのではなく、全体の流れを見ることを職員に再三指摘してきたと言います。 「数字を見える化することで、職員を、リーダーを育てていくのです。過去の数字を重視するのではなく、数字を見て次の目標をどのように立てるか、どのようなアクションをとるべきかを考える力を育てていくことが大切。今後は、数字を見て、予測し、達成するプロセスを組み立てていけるように、職員を育てていくことをめざします」と、時田さんは今後の展望を語ります。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2021年2月

出入管理システムを活用して施設内外の安全に担保する!

出入管理システムを活用して施設内外の安全に担保する!

<取材先>綜合警備保障株式会社(ALSOK) 診療所や介護施設には患者・利用者の個人情報、薬品・備品などをはじめ、外部流出が厳禁なモノも多く保管されています。施設によっては専用室を設け、スタッフの出入りも制限したほうがいい物品を有しているケースもあるでしょう。 ただ、誰が、いつ、何のために出入りしたか。アナログで確認・記録するのはなかなか難しいです。そんなニーズに応えるのが、ALSOKの出入管理システムです。 <ALSOK株式会社の出入管理システム> これは基本的に、出入管理したい扉などへ電気錠を設置し、専用の操作カードやキーで開錠、その情報を管理用パソコンなどで記録することで入退室を管理する仕組みとなっています。管理用端末に記録される情報は、出入時間、カード・キーのIDなどで、それを見れば、いつ、誰が、どこの電気錠の扉を開けたのかすぐにわかります。 また、手動での開錠のほか、管理用端末からの遠隔操作や、設定した時間以降は開錠できないようにするスケジュール管理機能、特に重要な場所には、2人以上でなければ入室・在室できない「2名照合機能」などを搭載することもできます。 設置する電気錠の数や機能に関しては、施設側のニーズや規模に応じて、同社の担当者がコストパフォーマンスおよびセキュリティ上最適なプランを選定します。   外部からの侵入だけではなく内部での不正行為防止にも  こうした出入管理システムを導入するメリットは、主に外部・内部の2つの観点から挙げられます。 まず、外部については、入口や重要な保管室などに設置することで外部からの侵入者に対する高い防犯効果を発揮します。あるいは、診療所などではスタッフに診療所の鍵を預けたい場合もありますが、万が一紛失すると鍵穴ごと交換しなければならなかったり、預けた人が自由に出入りできたりしてしまうリスクがあります。 その点、出入管理システムであれば、仮にカードやキーを紛失してもその登録情報を消去するだけで済み、鍵穴交換は不要です。加えて、開錠可能時間を設定しておけば、カード・キーを持つ人の開錠できる時間帯も制限できるでしょう。 一方、内部に関しては、カード・キーごとにアクセス制限を設定することで重要な場所には特定のスタッフのみ入退室可能にもできます。たとえば、医薬品などの保管室には備品管理担当のみ入れるようにするといった振り分けをすると、施設内の不正行為を未然に防止できるでしょう。 また、介護施設などでは、各個室すべてに設置するパターンもあれば、利用者は立ち入り禁止の場所にのみ設置するパターンの両方でニーズがあるそうです。 そのほか、生体認証やオンラインセキュリティ、設備管理システムなど、防犯・防災対策の多種多様な機器との連携が可能である点も、老舗の警備会社である同社ならではの強みと言えるでしょう。 テナント診療所から大型病院まで、幅広い場所での対応可能なラインナップを取り揃えた同社の出入管理システム。施設内外のセキュリティ強化を検討している経営者の皆様は、ぜひ一考されてはいかがでしょうか。 制作年月:2022年7月26日

人を育てる組織としてのガバナンスとは

人を育てる組織としてのガバナンスとは

<著者>北海道介護福祉道場あかい花 代表 菊地 雅洋 生産労働人口が大幅に減り続けているわが国では、全産業で人手不足が深刻化しています。そのなかで他産業より待遇が悪いと印象づけられている介護事業者には、募集をかけても応募してくる人材が少なく、より深刻な人材不足に直面しています。 それがゆえに介護事業者の一部では、応募してきた人の能力チェックを十分に行わないまま、機械的に採用してしまう傾向が強まっています。そうして採用された人のなかには、対人援助に不向きで、教育の力が及ばないスキルの低い人も存在することになります。 対人援助は人の感情に寄り添うサービスであるため、マニュアルに沿った機械的な作業だけを行っていればよい仕事ではなく、利用者の心理状態を慮りながら、自ら考えて裁量を働かせなければならない場面もあります。決して単純作業ではなく、知的労働です。そのような職業であるにもかかわらず、採用時の選択を放棄して、対人援助に不向きな人を採用すると、結果的にはほかの職員に負担がかかり、能力のある職員がバーンアウトします。さらに能力がない職員によって介護サービスの現場で不適切なサービスが生まれ、そうした行為がエスカレートして虐待に繋がるなどの深刻な経営リスクに直結する場合があります。そういう意味では、人材不足だからこそ採用はより慎重に行い、かつ介護事業者自らが、人を育てる組織としてのガバナンスを確立しなければならないのです。 しかし、応募してきた人の能力を採用段階ですべて的確に見抜くことは不可能です。面接担当者がどのように努力しようと、わずか一度の面接で、人の能力や性格を見抜くことはできず、良かれと思って採用した人物が期待外れで、仕事の成果を挙げられないばかりでなく事業運営上の障害となることもあります。事業者としてこのような問題にどう対処すべきでしょうか。それは試用期間という規定を活用することでしか解決しません。 試用期間は労働基準法等には定めがない、事業者の任意的事項です。よって試用期間の定めのない事業者も存在しますが、この期間は採用した職員の適格性・協調性を確認する期間であり、教育期間でもあるという理解のもと、必ず就業規則等に定めておくべきです。 ただし試用期間であっても、すでに労働契約は成立しているので、解雇権は乱用できません。しかし試用期間中の解雇については、通常の解雇よりも広い範囲でその自由が認められており、合理的理由により使用者が解約権を行使できるものと解釈されています。過去の判例で認められた解雇事由としては次のようなものがあります。   能力の大幅な不足→入社前に期待していた能力が入社後にはまったく発揮されず、担当業務をいくつか変えても勤務成績が上がらない場合が該当 勤務態度の不良→入社後の勤務態度が極めて悪く、協調性もなく、周囲の業務にも悪い影響を与える場合が該当   このような解雇事由にあたるかどうかを試用期間中に適切に判断するには、試用期間中にOJTを中心にして教育を担当する現場リーダーの判断が必要不可欠となります。リーダーは新入職員に業務や規則を教えるだけではなく、試用期間という限定された期間内に、その職員が組織にとってふさわしい人材として成長できるかを見極め、対人援助に不向きと判断した場合は、上司に報告しなければなりません。だからこそ介護事業者には、判断能力のあるリーダーを育てることが何よりも重要となってくるのです。そのことがガバナンスの肝になってくるとも言えるでしょう。

ー前編ー 今後も増加する緑内障検査のニーズ 、卓上型視野計「アイモvifa」がより効率的な検査を提供

ー前編ー 今後も増加する緑内障検査のニーズ 、卓上型視野計「アイモvifa」がより効率的な検査を提供

<取材先>株式会社クリュートメディカルシステムズ 代表取締役 江口 哲也 社長 過去の調査において、40歳以上の平均5%がり患している可能性があるとされた緑内障。近年の人口統計に当てはめると約500万人が該当すると思われますが、現在、実際に治療中または経過観察の緑内障患者は、100万人程度です。つまり、残りの約400万人は、高リスクまたはすでにり患しているにもかかわらず、眼科を受診していない潜在患者層と言えます。 「緑内障は自覚症状が出にくいため、なかなか受診につながらず放っておかれがちです。しかし、放置すれば当然悪化していく一方なので、かなり悪くなってからようやく眼科に行く人が多い。これが、この病気の一番の課題だと考えています」と、株式会社クリュートメディカルシステムズの江口哲也代表取締役は指摘します。 こうした潜在患者さんを迅速に検査へとつなげ、早期発見・治療へ導いていくことは、眼科診療所にとって重要な役割の一つであり、また、新規患者の獲得やリピーター定着といった経営的観点からも取り組むべきでしょう。 しかし、これに対し、診療所側の課題となるのが、オペレーション整備です。日本眼科学会の「緑内障診療ガイドライン(第5版)」内フローチャートによると、緑内障は複数の検査を実施した検査所見の総合評価によって診断します。特に、視野検査に関しては、暗室で片目ごとに5~10分程度集中して行う必要があり、患者さんにとっては検査だけでも負担も大きく時間がかかります。 一方、診療所にとっても、患者さんにスタッフがついていなければならないなど、なかなか効率的な実施が難しいのが現状とされています。 そこで、こうした検査の課題を解決し、より気軽に緑内障の視野検査を行えるように開発されたのが、同社の卓上型視機能評価機「アイモvifa」です。 卓上型視野検査機器で暗室いらず検査時間も大幅に短縮可能 「アイモvifa」の特徴の一つが、「グッドデザインアワード2021」も受賞したスマートで機能的な設計です。本体は、幅20cm×奥行18cm×高さ12cmの卓上設置型で、従来の検査機器と比べて非常にコンパクトになっています。ヘッドマウントディスプレイのような形の機械部分を両目で覗き込むことで、外界からの光を遮断し、暗室でなくても検査できる、画期的なデザインとなっています。 「これまでの視野計は、暗室内で片目ずつ行わなければならず、一度に検査できる人数は限られましたし、所要時間もかかりました。『アイモvifa』であれば、暗室以外にもどこでも設置でき、非常に省スペース化しています」(江口代表取締役) <暗室不要。設置場所を選ばないため、換気の良い明室でも検査が可能> さらに、検査プログラムに関しても工夫が凝らされています。たとえば、従来の視野計では、患者ごとに位置の微調整などを行うほか、検査中もスタッフが患者の目の動きなどをチェックする必要がありました。しかし、「アイモvifa」はディスプレイ内のカメラで患者の目の動きなどを検知し、従来は手動で行っていた各種チェックや調整を独自のプログラムが自動で判定してくれます。 「このように、診断精度に影響しない検査過程を機器内で自動化していった結果、所要時間の大幅短縮を実現しました。さらに、検査中にスタッフが患者さんにつきっきりになる必要もなくなるため、スタッフの業務効率や生産性アップも期待できます」と、江口代表取締役は説明します。 <両眼解放。アイパッチでの遮蔽が不要で、両眼を開いたまま視野検査が可能> 実際に、一般的な視野検査は1人当たり15~20分ほどかかるところ、「アイモvifa」ではわずか3~4分で完了するというから驚きです。 江口代表取締役は、「今後、超高齢社会の進行とともに、緑内障患者の割合はさらに増えていきます」と前置いたうえで、「アイモvifa」が果たす役割を次のように語ります。 「患者さんが増えれば当然必要な検査枠も増えますが、現状の体制では、暗室の回転効率やスタッフのマンパワーに依存するため、検査枠は限られます。そこで、暗室の運用に加えて『アイモvifa』を導入することで、より多くの患者さんへ迅速に検査を提供できる院内オペレーションへつながると考えています」 このように、画期的な緑内障の検査体制に寄与する「アイモvifa」ですが、その開発背景には、同社の度重なる試行錯誤がありました。後編では、そんな「アイモvifa」の開発ストーリーをご紹介します。 <「アイモvifa」 ユーザーインターフェース> 取材年月:2022年7月25日 (後編は近日公開) ~関連記事~                 記事一覧へ戻る

みんなが幸せになれる組織づくりが 経営であることに気づく

みんなが幸せになれる組織づくりが 経営であることに気づく

<取材先>社会福祉法人合掌苑 理事長 森 一成 経営というと利益を追求することと捉えがちですが、働きやすい組織づくりこそ経営であると考え、職員全員で取り組んでいるのが社会福祉法人合掌苑です。組織づくりの秘訣を、森一成理事長にインタビューしました。 経営責任の所在が 不明なところに問題あり ――社会福祉法人においては、経営という言葉を敬遠される傾向があるように感じることがありますが、それはなぜでしょうか。  経営というと数字の世界と勘違いし、社会福祉法人は非営利団体だから利益を上げちゃいけないと考えている人が多いです。でも、利益がなければ事業を継続することはできませんよね。利益は何のためにあるのか、ということを経営陣からしてよく理解していないからこういう考えになるのでしょう。  その根底には、介護の仕事は利用者のためにやるんだという思いが先に立ち、利益のためではないと考えていることがあるでしょう。しかし、利益を出すために働くのではなく、事業を継続させるために利益を出す必要があるのです。  また、社会福祉法人の場合は、誰が経営者なのかが明確でない点に問題があります。理事長をはじめとして理事会のメンバーがほぼボランティアでやっているようなところでは、経営責任を追及されてもそれに見合うだけの対価が支払われておらず、結果経営に無関心になってしまいやすい状態があります。  さらに、私が合掌苑に入った1990年頃、行政側のスタンスとしては「行政がすべきことを社会福祉法人に委託をしている」というもの。ですから、過不足ない委託料を社福に渡しているのだから、委託された事業以外のことはやるな、とすら言われていました。効率よく事業を行うことよりも、間違ったお金の使い方をしないことを社会福祉法人は求められていたのです。そのため、積極的に業務改善をしようとする土壌が生まれにくくなり、それが今も続いているのだと思います。  介護保険制度が2000年から始まりましたが、委託料と同様に介護給付費も公金であり、その扱い方は結局変わっていないと思います。 ――措置の時代の感覚が抜けておらず、経営への意識が弱いのでしょうか。  何もせずに利益が出ていれば、まじめに経営を考えることはありませんからね。介護事業は、サービス内容は行政によって決められているため提供できるサービス内容に制限があります。さらに公定価格のため、価格競争もできません。施設を建てればすぐに満室になる、という状態であれば、利益を得るために事業に取り組もう、という意識が希薄になるのは当然でしょう。  しかし、状況は激変しています。社福はもちろん、民間企業も参入しており、介護事業でも競争が激しくなっています。介護サービスを提供していれば、施設をもっていれば、自然と利用者も職員も来る、という時代ではありません。特に人手の確保が難しくなっており、人件費も上がり、赤字になる法人が増えています。 給与はそこそこでも 働きやすい職場に人は集まる ――合掌苑はアメーバ経営を取り入れているそうですね。  経営に興味をもつようになったのは、恥ずかしい話、当法人でも利益が出なくなったからです。最初は経営に関する本を読んだり、セミナーを受けていました。その過程で日本経営品質賞(※1)を知り、2015年頃からはアメーバ経営(※2)を学び、当法人でも実施しています。  一般に経営の方程式は、「売上−経費−人件費=利益」で計算されており、売上を上げて経費や人件費を圧縮することでたくさんの利益を出すのが良い会社とされています。一方、アメーバ経営では、「売上−経費=人件費+利益」と計算します。売上を大きくするとともに、経費を小さくして、そこで出た金額を人件費と利益に分けるのです。左辺の数字が大きくなるほど、人件費に回すお金も増える。人件費をコストと見ない点はユニークですし、「売上を上げると、給料も上がる」というのがわかりやすいですよね。  さらに言えば、アメーバ経営では左辺は総労働時間で割った時間当たりの数値で評価します。そのため、同じ数字であったとしても、労働時間が少ないほど良い評価になります。つまり、同じ仕事をしても、質や結果が一緒であるのならば、短い時間で終わらせたほうが、コストパフォーマンスが高くなるわけです。ですから、当法人では「給与は高く出せないしボーナスもない分、休みはきちんととり、残業もできる限りなくそう」と常々伝えています。  介護の場合、必ずしも高い給与を求めている人ばかりではありません。「給与はそこそこだけど、定時に帰れて、長期休みもとりやすい」というほうが良いと感じる人も多いのです。ですから、業務効率を上げて、一人当たりの総労働時間を減らすこと、負担軽減を図ることをめざすことにつながります。 ――業務効率を上げるという取り組みは、なかなか職員が実践に移せなさそうです。  当法人では子育て中の女性を多く雇用していますが、それは一番時間にシビアな世代だから。「早く帰りたい」「急な休みに対応してもらいたい」という思いから、業務効率を上げて早く終わらせる方法を、職員自らが日々考え、生産性を高め、働きやすい環境づくりにつなげています。  アメーバ経営導入以降、管理職以外でも職員が生産性を意識し、経営を考えるようになりました。数字を使って利益を出すのが経営だと思っていたのが、勉強するにつれて、みんなが幸せになれるような組織づくりをすることが経営だということを知り、自分たち一人ひとりが動かないと組織としてうまく回らないと理解しました。  現在、有給消化率は38%から84%に上がりました。年2回、10日間以上の連続休暇の制度も導入しました。経営に全員が参画することで、自分たちの暮らしがよくなることを職員が実感しつつあります。 (写真キャプション) イベントなども頻繁に行われている(写真はコロナ前のもの) ※1 日本経営品質賞 日本生産性本部が創設。顧客の視点から経営全体を見直し、自己革新を通じて新しい価値を創出し続ける「卓越した経営の仕組み」を有する企業を表彰する制度(経営品質協議会HPより) ※2 アメーバ経営 京セラ名誉会長の稲森和夫氏が考案した経営管理手法。組織をアメーバと呼ばれる独立採算で運営する小集団に分け、各小集団にリーダーを配置し、共同経営のような形で会社を経営する「全員参加経営」をめざすもの(京セラコミュニケーションシステムHPより)

テクノロジーの活用は介護職の社会的地位も変える

テクノロジーの活用は介護職の社会的地位も変える

<取材先> 一般社団法人全国介護事業者連盟 副理事長 永井 正史 現在、介護現場においてはどのような課題がありますか。 ――要介護高齢者が増えているにもかかわらず、少子高齢化で介護の担い手が減っており、需給バランスが崩れているという、構造的な問題が挙げられます。  その問題解決には、介護の担い手を増やすことが必要です。そこで、解決策として挙げられているのが外国人材の導入です。しかし、コミュニケーション能力や文化的な背景もあり、すべての要介護者に外国人材が対応できるかというと、難しいというのが正直なところです。外国人材には、間接業務や高度なコミュニケーションが比較的不要な状態の方の介護を担ってもらうといった、ワークシェアリングの考え方で業務分担をしていくのが現実的だと思います。 日本人の介護職を増やす方法はないのでしょうか? ――そもそも、日本人の介護職が増えない理由の一つに、給与水準が低いことが指摘されています。これは、業務内容が他産業に比べて単純肉体労働の側面が強いことが、給与水準の引き上げを阻んでいるためと考えられます。また、社会的地位も低く見られているため、介護職をめざしたいと思う人材が生まれにくいという点も大きな問題でしょう。  こうした状況でできることとしては、介護職のイメージアップなどに力を入れていくことがあります。たとえば、2025年に開催される大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、医療や介護・福祉がメインテーマとなっています。こうした場で、介護のイメージアップなどを図る展示などを行い、介護職の希望者を増やすことも大切です。  また、万博を通じて介護の現場を国内外から評価してもらい、介護の価値創出につなげていきたいですね。 介護現場側ができることには、どのようなことがあるのでしょうか。 ――働き方の見直しが必要です。介護の仕事は、直接介助、間接介助、周辺業務の3つに大別できます。現在、ワークシェアリングの考えに則り、直接介助は日本人の介護職が中心となって担い、間接介助や周辺業務は介護業務に慣れていない外国人材やシニア人材などが行っていくという形になっています。 私は一歩進んで、肉体労働系はすべてロボットがやれるようになる世界を目指せればと考えています。たとえば、センシング技術やスコアリング技術を活用して状態変化を予測し、先回りする指示をプログラミングしてロボットを動かす、といったことです。利用者の移動を支援する機器により、転倒してもけがをしないようにサポートする、といったことも可能になると思います。利用者の身体機能を向上させつつ、リハビリ等に伴う転倒リスクをテクノロジーで回避するといった考え方が、今後はより求められるようになるのではないでしょうか。 介護現場ではテクノロジーの活用が思うように進んでいません。 ――AIやIoTなどがなかなか浸透しない背景には、介護を科学的に見る人材が少ないということが挙げられます。医師や看護師、理学療法士などは、仮説を立てたうえで対応策を考えるという思考を学びます。介護ロボットなどはそうした思考をもとに生まれたテクノロジーであり、医療者はテクノロジーを活用するのに抵抗がありません。しかし、介護福祉士のカリキュラムにはそうした考え方を学ぶ項目はないため、活用に至らないという状況があります。  その一方で、スコアリング技術などが発達すると、新人でもベテランでも同じ結果が出る介護ができるようになります。そうなると、個々の介護職の専門性は単純な身体介助では発揮しにくくなります。スキルアップを考えるのであれば、介護職はITリテラシーを高め、テクノロジーを活用できるようになることが必要となります。 また、テクノロジーを活用することで、介護職の働き方が変わる可能性もあります。たとえば、肉体労働を介護ロボットが行うとなった場合、介護職は介護ロボットの働きや質などをチェック・判断する役割を担うことになるでしょう。知識労働の割合が増えることで、介護職の社会的地位の向上にもつながることが期待できます。

承継診療所による分院展開

承継診療所による分院展開

<取材先>医療法人翔誠会ふくだ内科 福田篤史事務長 目次 01:スタッフからの心配と反対 近隣診療所を承継した理由 02:診療所における承継の種類 03:診療所を承継するメリットとは? 04:診療所を承継するゆえのデメリットは何か? 05:分院展開の今後と総括 スタッフからの心配と反対 近隣診療所を承継した理由 年齢的な理由や新型コロナウイルス感染症の影響から、団塊の世代の開業医の方々が引退を考え始めていることもあり、当法人の分院展開も、今後は承継を中心にしていく予定です。具体的には、診療圏を少しずつずらし、都心に近くても医療過疎地域で必要とされる診療科での診療所開設を予定しています。 すなわち、同一科目での展開ではなく、法人内でいろいろな診療科目の診療所の展開を目指してみたいと思っています。 また、医療度のステージごとにも対応できる法人にしていく予定です。たとえば、▽未病の段階から啓発活動をする産業医、▽健康チェックのための健康診断・二次健診、▽定期的な診療で治療――という3つの流れです。 現在は、2番目の健康診断の領域が弱いので、健保組合との契約ができるように、内視鏡などの設備を整えていく予定です。健康診断・二次健診機能を持つことで法人として、予防から治療までシームレスな医療体制ができると考えています。 ただ、こうしたビジョンはありつつも、今回承継開業する外来中心の分院は、当初描いていた外来戦略とは必ずしも合致するものではありませんでした。というのも、本院との距離がわずか500mと近すぎたのです。スケールメリットよりも、診療所間での患者さんのカーニバリゼーションの発生や、力の分散など、むしろ管理コストが高まる可能性も考えられます。そのため、スタッフはとても心配してくれました。 私自身も外来診療中心の診療所では、徒歩での通院が難しくなる1・5㎞程度は離して分院展開していくことが望ましいと考えていました。しかし、コロナ禍に鑑みて、経営のリスク分散ができること、診療圏が魅力的であったこと、前院長の奥様から購入を希望されたことから、最終的にはその診療所を引き継ぐという意思決定をしました。 そして、引き継がせていただくからには、「よかった」と思ってもらえるように、最善の努力をして、最大限のシナジーを生む方法を考えました。 その一つとして、診療科目で本院(循環器内科中心)と分院1階(呼吸器内科中心)を分けて、診療時間(午前8時30分~12時、午後1時30分~午後6時※木曜日のみ午後8時まで診療)を少しカバーし合えるような体制を考えています。 さらに、今後分院1階が軌道に乗ったら、分院2階では消化器内科、または皮膚科、小児科といったまた別の診療科目の診療所を立ち上げ、法人内でスタッフの行き来や患者さんの紹介を頻繁に行える環境を整えていき、500mという近距離立地を逆に活かしていこうと思っています。 診療所における承継の種類 承継には主に「親族内承継」と「親族外承継(第三者承継)」があり、後者の場合は一般的に、承継アドバイザーと言われる承継の仲介会社が入りマッチングをして、承継手続きを行います。 今回の私の場合、親族ではないため第三者承継になりますが、個人診療所を開設していた前院長が体調不良により閉院されてから、土地と建物を購入するという形で引き継ぐことになりました。そのため、閉院せず患者さんやスタッフもそのまま継続して引き継ぐことができなかったため、本質的には、一般的な第三者承継とも異なっていました。 前院長が閉院されたのが2020年9月で、承継した当法人が改めて開業するのが、21年7月を予定しています。その間に当然、以前通院されていた患者さんは地域のさまざまな診療所へ分散してしまっています。そのため、「果たして、患者さんに戻ってきてもらえるのだろうか」と、とても心配ではありますが、やるべきことをやり、患者さんから評価してもらえる診療所になりたいと思っています。 診療所を承継するメリットとは? 承継開業する最大のメリットは、「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」が半分以上はすでに整っていることです。何もないところからゼロベースでの新規開業の場合、▽場所の選定、▽設計・改装、▽集患――という3つの大きな山を越える必要があります。さらには、医療機器の購入にともなう負担や、「本当に来院してくれるのか」という不安とも戦うことになります。 まず、「開業準備の7割は場所で決まる」とも言われていますが、開業場所の選定には相当な時間を要します。また、設計や改装には千万円単位でのコストがかかります。さらに、一番重要な集患については、このご時世ではスタートダッシュにかかわる内覧会も開催しにくい状況で、これもまた大変です。 今回、承継した診療所については、長く地域で開業されていたので、地盤があるのはとてもありがたいと言います。加えて、前診療所時代の経営データももらえました。きちんとやれば十分に採算はとれると、安心材料になりました。医療機器の追加購入についても400万円ほどで、一から購入するのと比べると費用ははるかに抑えられました。 もちろん、新規開業にしかないメリットや楽しさもたくさんあると思います。しかし、冒頭で説明したとおり、これから多くの開業医の引退が進んでいくことを踏まえると、今あるものを利活用するほうが、合理的で望ましいと考えています。 診療所を承継するゆえのデメリットは何か? 一方で、承継開業にもデメリットはあります。その一つとして、院長と経営者が変わることで、前院長の意思を引き継いでいきたいと思いながら、当法人との組織文化の統合を図っていく必要があり、これならではの難しさがあると思っています。異なる考え方のベースを統合していくには相応のコミュニケーションコストをかける必要があると感じています。 法人内に新旧多くのスタッフが入ることによって、思いもよらぬ軋轢や衝突が起きることもあります。そして、これまで何となくやってきた仕事の仕方を見直す必要性も出てきました。「どうすればよりよい組織になるのか」と、自身の不甲斐なさを痛感しながらもがいている最中であり、そうした状況も楽しめないと、なかなかしんどいような気がします。 また、細かいところだと、前診療所での構造的な瑕疵(漏水、アリの侵入等)などもあり、建物の保証が切れていたら、思わぬ出費となる可能性がありました。そして、リースアウトしている医療機器や物品もあり、見た目で使えるかどうかではないこともわかりました。 分院展開の今後と総括 今回、当法人では2分院同時に開設することになりましたが、この経験を経て、診療所の開設にはいくつかのステージがあることがよくわかりました。私の場合、片方は在宅診療所の新規開業、もう一つは承継に近い形での開業と、2診療所ともに一からつくっているわけではありません。だからこそ、2カ所同時に分院を開設する準備ができました。 そんななか、一番の収穫だと感じたのは、分院展開を準備していく過程で、人材の採用幅が広がり、優秀なスタッフが入職してくれていること、そして、組織化する過程で必要なことを見直して無駄なことを減らし、生産性を高める仕組みを取り入れられたことです。 今後も当法人の展開を楽しみながら、一緒に働ける新しい仲間を募集しています。ご興味のある方はぜひ、ご連絡をいただけたらと思います。 監修:日本医療企画

【2022年診療報酬改定】クリニック経営 増収につながる改定紹介

【2022年診療報酬改定】クリニック経営 増収につながる改定紹介

<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 今回の診療報酬改定においては、全体の改定率がマイナス0.94%でありマイナス改定となりましたが、オンライン診療における評価の拡充や処方箋の様式の見直しなど、今後増収に繋げることができる診療報酬改定についてご紹介いたします。 目次 01:オンライン診療における新設評価 02:オンライン資格確認システム導入における加算 03:外来診療時の感染防止対策の評価に対する加算 04:リフィル処方箋 ① オンライン診療における新設評価 オンライン診療における大きな改定として初診料が算定できるようになりました。 新型コロナウイルス感染症の流行により、医療機関を受診困難な患者や宿泊療養施設の患者との診察手段としてオンライン診療のニーズが高まりました。 そこで オンライン診療を行う十分な体制を整備し、厚生労働省の『オンライン診療の適切な実施に関する方針』に沿って診療を行った医療機関では、初診料251点、再診料73点を算定できることとなりました。 また、オンライン診療による医学管理料については今回14種類が追加となりました。 ・ウィルス疾患指導料 ・腎代替療法指導管理料 ・皮膚科特定疾患指導管理料 ・乳幼児育児栄養指導料 ・小児悪性腫瘍患者指導管理料 ・療養・就労両立支援指導料 ・がん性疼痛緩和指導管理料 ・がん治療連携計画策定料2 ・外来緩和ケア管理料 ・外来がん患者在宅連携指導料 ・移植後患者指導管理料 ・肝炎インターフェロン治療計画料 ・薬剤総合評価調整管理料 ・がん患者指導管理料 昨今の情勢や今回の改定によりオンライン診療のニーズが高まるのではないでしょうか。 ② オンライン資格確認システム導入における加算 カードリーダーの導入率が低いオンライン資格確認システムの導入に対して評価が新設されました。 オンライン資格確認についての説明を院内に掲示し、オンライン請求を行った場合に(初診料)電子的保健医療情報活用加算7点、(再診料)電子的保健医療情報活用加算4点が月1回算定できます。 初診料は7点(70円)であり収入としては少ないですが、保険証の廃止及びマイナンバーカード保険証対応義務化の検討が進んでいますので、補助金の利用によりオンライン資格確認システムを導入して、将来に備えることも検討の余地があるかと考えます。 ③ 外来診療時の感染防止対策の評価に対する加算 外来診療時における感染防止対策についての点数が新設されました。 以前、2021年4月から9月まで医科外来等感染症対策実施加算5点といった算定が限定的に創設されていましたが、2022年の診療改定では外来感染対策向上加算6点(患者1人につき月1回)が新設され、以下の要件を満たすことで算定することができます。 専任の院内感染管理者(院長)を配置する 年2回程度、「感染対策向上加算1」に係る届出を行った医療機関が主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加すること 新興感染症の発生時において、発熱外来体制を整えており、自治体のホームページにより公開していること こちらの外来感染対策向上加算を算定することで、連携強化加算3点とサーベイランス強化加算1点も算定できます。 連携強化加算は年4回以上、地域の大きな病院に感染症発生状況や抗菌薬の使用状況を報告すると算定できますし、サーベイランス強化加算はJANIS(院内感染対策サーベイランス)等に参加することで算定することができます。 ④ リフィル処方箋 処方箋様式が見直されました。今回の改定でリフィル処方箋の使用が可能となり、1回発行した処方箋で最大3回分の薬を処方することができます。(30日分×3回) しかしながら、リフィル処方箋が導入されたことで外来患者数の減少や病状悪化の見落としが懸念されます。現在においては医療機関の経営に課題が残る見直しとなりますが、制度が開始された以上は、リフィル処方箋のニーズへの対応をご検討いただく必要がありかと思われます。 リフィル処方箋へのニーズを掴むためにオンライン診療の導入も視野に入れられてはいかがでしょうか。 今回の改定では、大きな増収につながる改定はございませんが、算定できる点数をこまめに取得することで、今後の増収に繋がるかと思います。 <制作年月>2022年7月12日

スタッフ一人ひとりの主体性を重んじ 現場に委ねる覚悟が必要

スタッフ一人ひとりの主体性を重んじ 現場に委ねる覚悟が必要

<取材先>合同会社くらしラボ 一日の過ごし方が決まっていないデイサービスというと、スタッフによってサービス内容が異なり、ケアの質もバラつくのではないか、という懸念もあります。 合同会社くらしラボでは理念に基づいたケアを全スタッフが行うために試行錯誤しています。 理念の意味を 具体的な行動として説明する  青森県十和田市で2015年から、訪問介護やデイサービスなどの介護事業を幅広く展開している合同会社くらしラボ。「あなたの“ふつう”を考える」をコンセプトに掲げている同社では、その理念をスタッフ全員に理解させ、具体的な実践につなげていくために試行錯誤を重ねてきました。  代表の橘友博さんは、「当社では、利用者の“ふつう”に合わせた個別ケアを目指しているため、今日一日どう過ごすかを、朝、スタッフが利用者さんと話し合って決めています。しかし、一日の流れが決まっている介護スタイルに慣れているスタッフは、どうしても効率優先の“業務”にしてしまいがちでした。当社の理念を頭では理解しているけれど、どう実践に移したらいいのか分からなかったのだと思います」と、開業当初を振り返ります。  つまり、橘さんが考える“ふつう”に合わせた介護とはどういうものなのかを、本質的にスタッフが理解できていないことに大きな問題があったわけです。「なぜできないのか」と問うのではなく、地道に個別具体的な実践方法を伝えていくというやり方を、橘さんは選択しました。「『その人のことをきちんと理解しましょう』と言うだけでは漠然としています。利用者のことを理解するためには、デイに来ている時間だけを見るのではなく、自宅での生活はどうなのか、好きなものはどういったことがあるのかなど、細かく聞くことが必要。利用者の“ふつう”がどういうものかを知る方法には何があるのかを考えるようにしましょうといった具合に、具体的にやり方を説明していきました」と橘さん。資料を作成し、研修会を何度も開催していったと言います。  具体的にどう動いたらいいか分からなかったスタッフも、繰り返し学ぶことで次第に実践できるようになり、設立から5年を経た2020年頃から、ようやく「くらしラボ」流の個別ケアが定着しだしたと言います。 定期的な自己評価と面接でスタッフの理解を深める  2020年からは3カ月ごとにスタッフが自己評価を行う制度も導入。これにより、会社の理念がスタッフにきちんと浸透しているかどうかも把握できるようになったと言います。 「理念は浸透していても、スタッフがそれに沿った行動ができているか、また個々のスタッフのスキルの差はどれくらいあるのかなどを把握することを目的にしています。当社が求めている人材と合った働き方ができているのか、なども見えるようにしていきたいと考えています」と、導入の目的を語ります。  自己評価の方法は、コミュニケーションスキル、チームワークスキルなどの5つの領域について、スタッフ自身に評価してもらうもので、その結果をもとに、管理者との面談を行っています(図表)。  評価結果を見れば、同社が求める介護職像に照らして、どの部分が足りないのかがわかる仕組みになっています。本人が苦手なことやできていないことについては、管理者が一緒にスモールステップをつくり、少しずつステップアップが図れるよう支援しています。  理念の浸透を図った上で、その理念に沿った行動をとることができているのかを確認する場を設けます。できていない場合は、解決策も考えていきます。これにより、理念を唱えるだけではなく、具体的な行動に落とし込むことにつながるのでしょう。 「当初、3カ月ごとの面談は頻繁すぎるかなとも思いましたが、面談の機会を通じて、こちらからスタッフ一人ひとりに声を掛け、抱えている悩みや不満を引き出すことができるので、離職防止につながっていると実感しています。今後は、職場の人間関係や福利厚生、待遇などに対する社内サーベイも開始し、スタッフ満足度の向上を図っていく予定です」と橘さんは語ります。 「健全な意見の対立」のために “ものが言える”社内文化を  現場では、会社の理念に則った利用者の“ふつう”を尊重する介護に徹しようとするスタッフと、一定の効率やルールが必要と考えるスタッフの間で軋轢が生じることもあります。橘さんは「健全な意見の対立は大いに歓迎」と強調しつつも、「現状は意見のぶつかり合いにまでは至っておらず、お互いが言いたいことが言えずに、雰囲気だけが悪くなってしまっている感じ。おそらく“心理的安全性”が担保されていないために、スタッフが自分の意見を忌憚なく言えない空気があるのだと思う」と、分析します。 「健全な意見の対立」を促すために、“ものが言いやすい”雰囲気や新しいアイデアが受け入れられやすい社内文化をつくっていくことが現在の課題だと橘さんは感じています。しかし、スタッフ同士の軋轢が生じたときに、橘さんは自分から直接介入はしないことにしています。その理由は、スタッフの主体性を大事にしたいから。 「何かトラブルが生じたときには、私は大まかな方向性を示すだけで、『あとはみんなで考えてみて』とスタッフに投げるようにしています。各事業所の管理者にも、問題が起こったときには、時として管理者を加えずに、スタッフだけで話し合わせるよう指導しています」  このように現場に任せる体制になった背景には、橘さんの過去の経験があります。開業当初、現場で問題が起こりそうになると、橘さん自ら入っていって“軌道修正”をしていたと言います。しかし、それを続けているうちに、スタッフが自ら考えることをせず、指示待ち状態になったり、経営者や管理者の顔色をうかがいながら仕事をするようになったりしていることに気付いたのです。 「スタッフが主体的に考えて、自分で動くようにならなければダメだと思い、あるときから思い切って介入することをやめました」と言います。すると、現場で変化が起こりだしたのだ。たとえばそれまでは安全第一の行事を判で押したように繰り返していたが、利用者が包丁を握って魚をさばいたり、火を扱って焼き芋大会をしたりといった、これまでにない企画がスタッフから提案されるようになったのです。 「『事故や怪我があったときは会社が責任を負うから自由に考えていいよ』と任せたことで、少々危険を伴うとしても、利用者さんの目線に立った、独創的なアイデアが生まれるようになりました」  経営者としての思いを伝えるだけでなく、時としては現場に任せる。そうすることで、新たなアイデアが生まれ、利用者の満足度向上につながるだけでなく、スタッフ自身のやりがいにもなっていくわけです。 「当社の理念である『あなたの“ふつう”を考える』の『あなた』は、利用者でもあり、スタッフでもある。利用者の個性だけでなく、スタッフの個性も尊重しているということです。そして、多様な個性をもったスタッフ一人一人の“ふつう”を介護に活かしてもらいたいと思っているのです」

サービスの質を左右する人材採用とマネジメントを見直そう

サービスの質を左右する人材採用とマネジメントを見直そう

<取材先> 一般社団法人医療福祉介護研究協会 澁谷辰吉 目次 01:慣れと多忙によって 悪い性格が顕在化する 02:安易な採用は禁物 求める人材の明確化が先決 慣れと多忙によって悪い性格が顕在化する 医療が対人サービスである以上、診療所においてはサービスを提供する人の質がそのままサービスの質を決めてしまうと言っても過言ではありません。今回は、「対スタッフ」の課題です。 医師や看護師などの専門職はスキルに関しては一定の質が担保されていますが、性格については十人十色です。性格は「個性(良い性格)と「性癖(悪い性格)」に大別できますが、日々の業務の繰り返しのなかで、慣れと多忙が原因となって徐々に性癖が顕在化してしまいます。そのため現在の自院の状態は、スタッフ各人の個性の発揚具合と性癖のコントロール具合の結果と言えます。 「対スタッフの課題抽出チェックリスト」を使って、医師、看護師、受付などのスタッフが「やるべきことを決められたとおりに継続してきちんとやっているのか」をチェックしてみましょう。 安易な採用は禁物 求める人材の明確化が先決 診療所の人材マネジメントに関しては採用後の「スタッフ教育」が注目されがちですが、「採用の失敗は教育では取り返せない」と思っています。質の高いサービスを提供するためには、優秀な人材採用が第一歩になるのです。しかしながら「人が足らないから」と安易に採用活動を行っているケースが散見されるのが実情です。 一口に人材採用と言っても、▽自院の特性・経営方針の明確化、▽雇用形態を含めた採用方針の決定、▽求人広告および求人の実施、▽書類選考、▽面接の実施および見極め──など、数多くの必要な手続きや重要なポイントがあります。そもそも自院の特性・経営方針が明確でないと、自院が求める人材像も固まりません。 そこで、経営者として少なからず採用面において重視すべきことについて、フローチャートで募集から採用までの流れに沿う形で、チェックポイントを提示しました。自院の採用体制をチェックしてください。 監修:日本医療企画 (取材年月:2020年3月)

人的ミスは4タイプ、現場発の対策を実行する

人的ミスは4タイプ、現場発の対策を実行する

<取材先>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 人的ミスは100%防ぐことは不可能――というのが近年の一般的な考え方のようです。しかし、それをタイプ別に分けて対策を講じ、減らすことは十分、可能です。さらにその対策は現場スタッフ自身に考えてもらうと、より効果的なようです。 目次 01:人的ミスは「ついつい・うっかり型」と「あえて型」 02:歯科医院でのミスに当てはめる 03:スタッフからミス軽減策を出してもらう スタッフのミスを減らしたい、というお話は、どの院長からも伺います。「せっかくマニュアルを作ったのに」「手順・ルールはあるのに」というフレーズもよく聞きます。人的ミス(=ヒューマンエラー)を100%防ぐことは不可能ですが、減らすことはできます。 人的ミスは「ついつい・うっかり型」と「あえて型」 人的ミスは大きく、「ついつい・うっかり型」と「あえて型」に分けられます。「ついつい・うっかり型」はその名のとおり、意識はしているものの、うっかり、ついついやってしまったミスであり、「あえて型」は決まりを知っていてもあえてやらなかったタイプのミスです。 歯科医院でのミスに当てはめる スタッフが治療前に「治療する部位を間違えて先生に伝えてしまった」という例で考えてみます。 「カルテで確認するのを忘れて、部位を間違えた」というのは記憶エラーです。 「カルテを確認したが、左右を間違えた」というのは認知エラーです。 「この年齢の子が、乳歯の治療で来るはずがない」と思い込むのは判断エラーです。 「その判断のまま、先生に間違った情報を伝えてしまった」というのが行動エラーです。 このように、ヒューマンエラーは、「記憶する」「認知する」「判断する」「行動する」機能が適切に働かないために起こります。 スタッフからミス軽減策を出してもらう ミスを減らそうと取り組んでいる、ある医院では、ミーティングのなかでスタッフからの意見を出してもらいました。「部位の伝え間違い」については、「カルテを確認する」「サブカルテを確認する」「パノラマも確認する」「患者さんの口の中をよく見る」という対策案が出てきました。 スタッフから出てきた対策を実行し、効果があるかどうかを検証し、さらによい対策がないかも検討することにしています。 参考文献:厚生労働省「生活衛生関係営業の生産性向上を図るためのマニュアル(基礎編)」 制作年月:2022年7月

トリプル改定まであと2年 介護現場の課題と取り組むべきことを探る -後編-

トリプル改定まであと2年 介護現場の課題と取り組むべきことを探る -後編-

<取材先> 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長 斉藤 正行 介護事業の大規模化を国は進めていると言いますが、実際のところはどうなっているのですか。 ――介護業界でも意見が分かれている議題であり、大規模化というよりは協働といった表現のほうが適切だと言えるでしょう。制度などの方向性を見ていくと、大規模化・協働化の流れに動いているのがわかります。とはいえ、それは決して大規模な事業者をより高く評価する方向に向かっている、ということではありません。むしろ、規模の違いによって、それぞれの事業者が特性を活かしたサービスを提供し、質や専門性の高さでサービス競争が働くようにしていくことを目指していると考えられます。 たとえば、大規模な事業者は、規模の経済を活かして、データ・ノウハウの蓄積を最大化し、分析するといったことに注力する。一方で、小規模な事業者は大規模な事業者が対応できないきめ細やかさやクオリティにこだわり、専門性を強化していくことで、差別化を図るということです。そのなかで、人材の育成などを協働で行っていく、ということは必要だと思いますし、その点については国にはサポートをしていただきたいと思います。 ――介護の産業化とは、どういうことを意味するのでしょうか? 健全なサービス競争が働く環境をつくるということです。現状では、利用者からは大規模・小規模問わず、個々の介護事業者の違いが見えづらい状態です。そのため、必ずしも「質の高いサービスを提供しているから」という理由で利用者が集まっているわけではないケースも散見されます。介護は利用者の命を預かる職場だからこそ、しっかりした知識を身に付け、質の高いサービスが提供できる職員がいるかどうかを、利用者側がわかるようにしなければなりません。 そのため、そうしたサービスの質などを定量評価し、利用者がそれをもとに選択できるようにしていけるようにしていくことが求められます。自立支援や科学的介護に力を入れていくといった方向性は、このような質の評価や見える化につながるものです。介護事業者の立場を守ることも大切ですが、それと同時に利用者の視点に立って、介護の産業化を進める意味を考えることも重要です。 要介護度が下がると報酬も下がるなど、状態を良くしたことが適正に評価されていないなど、制度に対して懸念を示す声も少なくありません。 ――その点に関しては、前回の改定により道筋がつけられたと考えられます。その中心となるのがLIFE(科学的介護情報システム)です。LIFE=質ではないのですが、定量化のひとつにLIFEがなってきます。  とはいえ、介護事業者が考えなければならないのは、利用者のQOLです。QOLの向上がないままにLIFEを導入したところで意味はありません。LIFE自体は、現状ではフィードバックの質も良くないと言われていますが、一方でLIFEの導入によりアセスメントの質が高まっているという声も少なくありません。これは、ケアマネジメントの質が高まることにもつながります。そのうえでは、アセスメントを適正にとることができるような職場環境に変えていかなければなりません。本質的なアウトカムに評価がつくようになると、適正なアセスメントができていないところは、適正なフィードバックも出てこなくなるため、ケアの質向上が叶わなくなってしまいます。 生産性の向上によって、アセスメントを適正にできる時間を確保することができ、質の高いケアの向上につながっていくのだということを、利用者や職員、地域の人に理解してもらい、働き方を変えていくということが大切です。すぐにできることではないと思いますが、今の苦しい状況がどう変わるのかを伝え、変えるために何をしなければいけないのかを伝えていきましょう。 斉藤正行 さいとう・まさゆき 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長 1978年、奈良県生駒市生まれ。2000年に立命館大学を卒業後、株式会社ベンチャーリンク、メディカル・ケア・サービス株式会社、株式会社日本介護福祉グループで就業。2010年12月、一般社団法人日本介護ベンチャー協会を設立、代表理事に就任。2013年8月に株式会社日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立し、代表取締役に就任。 2018年2月、株式会社日本介護総研取締役会長に就任。同年6月に一般社団法人日本デイサービス協会理事長、一般社団法人全国介護事業者連盟専務理事・事務局長に就任 2020年6月、一般社団法人全国介護事業者連盟理事長に就任、2020年8月、一般社団法人日本デイサービス協会名誉顧問に就任

防犯カメラは診療所・介護施設だけではなく患者・利用者の安全・安心のためにも必須!

防犯カメラは診療所・介護施設だけではなく患者・利用者の安全・安心のためにも必須!

<取材先>綜合警備保障株式会社(ALSOK) 防犯カメラといえば、一般人にも広く知られる防犯対策の代表的なツールの一つです。巷の多くの場所で「防犯カメラ作動中」という掲示や、設置された防犯カメラを見かけることは、皆さんもよくあるでしょう。 そんな防犯カメラですが、「カメラなんてつけたら患者さん(利用者さん)との信頼関係が……」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、特に診療所の場合、診察室で診療している間の院長は待合室など院内の様子を知ることはできません。また、介護施設においても、職員が気づかない間に利用者さんが外やバックヤードなどに迷い出てしまう可能性もあります。 したがって、外からの侵入者への守りだけではなく、建物内で起きたトラブルの状況を迅速に確認するうえでも、防犯カメラは重要な役割を担うと言えます。 とはいえ、防犯カメラといっても販売されている種類は幅広く機能もピンキリです。そのなかで、自院や自施設での運用に合った防犯カメラをお探しの際は、ALSOKが提供する防犯カメラがおすすめです。 同社では、複数の企業の防犯カメラを取り扱っており、相談者のニーズにあった機種の提案が可能です。また、担当者が実際に現地を視察し、目的やプライバシー等に配慮した設置場所・台数などの確認を行うため、防犯対策やカメラに詳しくない人でも安心です。夜間も鮮明に撮影できるほか、特定の時間帯のみに作動するといったスペックも標準装備で対応できます。 録画データの保存方法は、カメラと付属のハードディスクレコーダー本体や、クラウドサーバなどが選べます。こうした設置プランに応じて費用は変わりますが、無料見積もりも可能なため、自院の予算と目的にあった提案を受けることができます。 他の防犯システムと組み合わせて自院・自施設の防犯を万全に また、同社で防犯カメラを選ぶメリットの一つが、同社の防犯システムとの連携です。たとえば、オンラインセキュリティと組み合わせることで、24時間365日いつでも、何かあれば同社の監視員が出動し現場に駆けつけるほか、110番、119番通報なども可能です。また、カメラの機種によっては、立ち入り禁止区域の設定や、侵入時のアラートメール機能などもあります。 万が一カメラが故障した場合も、年間保守契約(1000円/月)があればいつでも対応します。なお、カメラの異常を検知した際にも監視センターへ通報するといった設定もできるので、安心です。 担当者の中村さんは、診療所や介護施設における導入の意義を、「防犯カメラは、録画することで事後に何があったかを確認できるだけではなく、WEB機能を利用することで、院長や施設長が不在の時にも、リアルタイムで現地の状況を確認することもできます。特に、介護施設の場合は、職員による利用者の虐待、または利用者から職員への暴力などの事件がメディアで取り上げられることがあります。そのため、『内側』の安全に担保するという点でもニーズがあります」と話します。 警備会社として長い歴史と高い実績があるからこその選択肢と、確かな提案力。防犯強化を検討している方はぜひ一度相談してはいかがでしょうか。 制作年月:2022年6月

大手と中小を同列に考えず 地域資源として5年後、10年後の事業戦略を描け

大手と中小を同列に考えず 地域資源として5年後、10年後の事業戦略を描け

<取材先>シムウェルマン株式会社 代表取締役 飯村 芳樹 M&Aというと難しく考えがちですが、その実態はどのようなものなのでしょうか。 中小規模の介護事業所のM&Aなどの仲介を行っているシムウェルマン株式会社代表取締役の飯村芳樹さんに、介護事業所がM&Aを行う際のポイントをうかがいました。 目次 事業譲受した場合の利用者・職員のメリットを考える 買った後にも費用は発生する 見えないコストを忘れるな 思いを引き継ぐ重要性を売り手・買い手双方が理解しよう マッチング後こそ丁寧な対応が必要 1+1=2にならないのがM&A 戦略を立てて、実行すべし 事業譲受した場合の利用者・職員のメリットを考える 事業を譲り受け、事業所が一つ増えるということは、1+1=2という単純な計算で成り立つわけではないということを、頭に入れておきましょう。 利用者と職員さえいれば事業が回るわけではありません。その職員がもともと自社の職員でなければなおさらです。 特に中小の場合は、規模の経済ではなく、職員を含めた非常にミクロな顧客との関係性の中で培ってきた、事業所としての魅力が、事業の成否を握っているといっても過言ではありません。 仮に事業譲受をして、規模を広げたとしても、利用者と職員にどのようなメリットがあるのかを考える必要があります。 たとえば、サービス付き高齢者向け住宅を経営している事業者が、力をつけてきた職員をさらに活かしたいと考え、管理職ポストを増やすということを考えた場合に、事業を拡大し、そのポストを獲得するということも考えられます。 その場合、サ高住をやっている事業所を選んでもいいし、ヘルパーステーションや訪問看護、デイサービスなどを行っている事業所を選ぶことで、もともともっている資源の活用の幅を広げる、といった戦略も考えられます。 ただし、いずれの場合も、共通のビジョンを理解して取り組んでくれるような事業所がパートナーでないと、順調には進みませんが…… 買った後にも費用は発生する 見えないコストを忘れるな 事業を譲り受ける場合、なんとなくやれそうだというのではなく、最悪のケースを想定した試算をしておく必要があります。 ビジネスが成立する要件を定義して、譲り受ける先の事業所の職員たちの状況を調べる労務のデューデリジェンスをはじめ、財務、法務などのデューデリジェンスをしっかりと行う必要があります。 専門職に頼めば、それなりの費用がかかりますが、そのコストを嫌った結果、事業がうまく運ばなければ、多大な損失を被ることになります。 たとえば、譲り受け価格が1,000万円だとしても、事業を継続するためには5,000万円の投資が必要になるかもしれないとの試算が出たとします。譲り受けにかかる総費用が1,000万円と6,000万円では、判断が違ってきます。 譲り受け先の事業所の設備投資や新たに加わる職員の教育費用はもちろん、人が丸々入れ替わる危険性等々考えると、採用コストなど含めて5,000万円という金額もあり得る数字です。 ですから、表の見える金額だけで判断するのは危険です。 思いを引き継ぐ重要性を売り手・買い手双方が理解しよう 介護・福祉業界のM&Aの特徴として、売り主が「ご利用者に対する思いを引き継いでくれるのであればお金は気にしません」といった具合に進むケースもあります。 お買い得と言えるかもしれませんが、これは一方で、売り手側の思いを、買い手側がしっかりと継承しなければ、うまくマッチングに至らないということです。 仲介役としても、ご利用者にとって一番いいのはどうすることか、売り主、買い主のマッチングに気を遣うところです。 マッチングする上では、買い手側は売り手側がどういう思いで、どんな介護サービスを実践してきたのか、何を引き継いでほしいのかを把握すること、売り手側はそれらをきちんと伝えることが必要です。 マッチング後こそ丁寧な対応が必要 うまくマッチングできても、新たに加わる職員が買い手側の法人の文化に慣れるまでには1年ほどかかります。 時間も手間もかかりますが、そこをおざなりにすると、利用者も離れますし、職員の離職にもつながりかねません。 介護事業所は地域の資源です。ご利用者が困ることがないように、そこは丁寧に対応しています。 中小規模の介護事業者は、大規模事業者とは生産性(稼ぎ方)の形態が異なります。地域のご利用者と職員にどのようなメリットを見出すことができるのかに目を向けて、5年後、10年後の事業戦略を描いていくことが何より大切だと思います。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2021年6月

トリプル改定まであと2年 介護現場の課題と取り組むべきことを探る -前編-

トリプル改定まであと2年 介護現場の課題と取り組むべきことを探る -前編-

<取材先> 一般社団法人全国介護事業者連盟 理事長 斉藤 正行 ー2024年には介護報酬、診療報酬、障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が控えていますが、介護事業者が今すべきことは何がありますか? 斉藤●まずは、介護事業者の方には危機感を強くもっていただきたいと思います。 コロナの状況は2年後であれば一定の収束はしているでしょうが、コロナ対策などで国の借金が膨らんでおり、財政支援が厳しい状況になっているとも、コロナからの復興という名目で積極財政になっているとも、どちらもあり得る状況です。 そのため、報酬改定はマイナス改定もあり得るでしょう。こうした読みをしなければならないと考えています。   ートリプル改定はどのように変わるのでしょうか? 斉藤●単位だけでなく中身も大改定になることが予測されますが、その方向性はこれまでの改定から大体見えてきています。 まず、2021年度の介護報酬改定ではLIFE(科学的介護情報システム)や生産性の向上、自立支援、重度化防止など、新しい考え方が散りばめられています。次期改定ではさらにこれらが推し進められるでしょう。 注意したいのは、21年度改定では、科学的介護推進体制加算など新しい方向性に則った加算が出てきた一方で、わずかながらも基本報酬がアップしたこと。その結果、LIFEの導入などにそこまで積極的に取り組まなくても、経営面では大きな問題は起きませんでした。 つまり、新しい方向性への対応をしていなくても、どうにかなってしまっているのです。しかし、新しい方向性が今後拡充されるのは確かで、今それらに対応できていない事業者は取り残される可能性があります。 だから、科学的介護や自立支援といったことに、介護事業者は本格的に取り組んでいかなければなりません。 ー介護事業者が新しい方向性に取り組めない事情には何がありますか? 斉藤●人材不足が大きな問題であると思います。LIFEの重要性なども知っているが、人が足りていない状況では目の前の業務をこなすことに精一杯で、後回しになってしまうのでしょう。 しかし、LIFE導入などは今までと業務のやり方を変える必要があるため、導入には時間がかかります。だからこそICTを活用したDX化などを進め、生産性の向上を図り、人手不足という環境を変えていかなければなりません。 次の改定までに今からやっておかなければ、導入ハードルは高くなっていくばかりです。   ー生産性の向上とは、具体的にどういうことを示すのですか? 斉藤●生産性の向上とはいかに少ないインプットでアウトプットを最大化するか、ということになります。 一般の企業ではインプットを人員、アウトプットを利益と考えます。一方で、介護現場のアウトプットは利益ではなく、サービスの質と人員の定着を意味します。 このことは国もはっきりと示していますが、一般的な用語のイメージが先行し、生産性の向上という言葉に介護現場では眉を顰める人が少なくないのです。 サービスの質を高めつつも、職員が無理せずに働けるようにする。それによって仕事の効率も高まり、人材が定着し、さらにサービスの質も高まっていくという好循環が生まれます。 これこそが、介護現場が目指す生産性の向上なのです。このような言葉の意味を理解し、業務に落とし込むことが必要です。

国の方針変更にいち早く対応した リハビリ特化型デイサービスを展開

国の方針変更にいち早く対応した リハビリ特化型デイサービスを展開

<取材先>イー・ライフ・グループ株式会社  介護保険制度の方針変更にいち早く対応し、1日型リハビリデイサービスプラスを展開するイー・ライフ・グループ株式会社。 生活リハビリに特化したnagomiプラスが生活必需サービスとして中重度の利用者に受け入れられ始めています。 介護保険制度の方針変更に いち早く対応 1999年創業のイー・ライフ・グループ株式会社(小川義行社長)は現在、「ご利用者の健康維持・改善を通じて、関わる人々の幸福を増進する」ことを事業目的として、半日型リハビリデイサービス、1日型リハビリデイサービスプラス、リハビリ訪問入浴の3つの事業を展開しています。 東京を中心に直営店を出店し、地方についてはフランチャイズ方式で加盟店の経営支援を行っています。半日型は要介護度の低い高齢者、 プラスは中・重度の高齢者、訪問入浴nagomiは重度の高齢者を対象にサービスを提供しています。 nagomiのサービスの特徴は、リハビリにフォーカスしている点です。 半日型nagomi、nagomiプラスもレクリエーションは行わず、リハビリに特化しています。訪問入浴nagomiも、入浴後の体が温まった状態で可動域活性化などのリハビリを行います。 同社がnagomiプラスの1号店をオープンさせたのは2017年9月。 その前年の11月に、安倍晋三首相(当時)が未来投資会議で、「これまでのお世話をする介護から、自立を支援する介護に軸足を移していく」旨の発言をしています。 要介護度の中・重度者対応へのシフト、自立支援介護の重視という介護保険制度の流れにいち早く対応してのことです。 ニーズをしっかりと捉えた リハビリ特化の1日型デイ 入浴時に浴槽の縁を跨ぐ訓練風景。このように実際の生活課題に即した実践的な機能訓練を行う。 nagomiプラスは、自立支援介護とレスパイトケアを融合させた、機能訓練を中心とした1日型デイサービスです。 「在宅生活をいつまでも」をテーマに、自立支援介護の4つの基本ケア(水分ケア、栄養改善、自然排泄、運動・機能訓練)を軸とした「移動(歩行)」、「入浴」、「トイレ」、「食事」の自立をめざす生活実践リハビリを提供しています。 リハビリストレッチや口腔リハ体操、脳活性化トレーニングなどの集団リハビリ、症状別リハビリ、食事・入浴・トイレ・食事の行為動作ごとの生活課題別リハビリといったクループ別リハビリの合間に、生活行為の実践訓練などの個別実践リハビリがあります。 個別実践リハビリについては、本人や家族から在宅生活において具体的にどこが不安か、負担になっているかをヒヤリングをして、たとえば入浴であれば、着替えのところなのか、洗いのところなのか、浴槽に入る・立ち座りなのか、個別具体的に課題となっている生活行為を住環境に模したリハビリルームで反復訓練します。 「ご家族のレスパイト需要も考えると、食事も入浴もでき、生活行為のリハビリもできるリハビリ特化の1日型デイサービスは『あるようでなかったね』とケアマネジャーからよく言われます。そこがnagomiプラスの特徴です」と同社執行役員の鈴木貴仁さん。 nagomiプラスの社会的役割は大きく2つあります。 一つは、病院や介護老人保健施設から在宅へ移ったときの“リハビリの受け皿”としての役割。 病院へ入院後、回復期に病院や老健でリハビリを受けても、在宅に戻ってからもリハビリをしっかりと続けないとADLが低下してしまいます。 半日のリハビリでは足らず、生活課題への取り組みや家族のレスパイトという意味でも、リハビリに特化した1日型のデイサービスが求められています。 もう一つは、「在宅介護の負担を減らし、在宅生活を継続させる、言わば“施設入所への防波堤”の役割です」と鈴木さんは言います。 在宅介護でリハビリをしっかり行い、ADLを維持して、家族の負担を減らします。 そこで、入浴、トイレなど在宅生活のなかで課題になっている動作の維持・改善をめざすリハビリを行い、自立度を高め、家族の介護負担を減らすことで、“自分の家で暮らしたい”という本人・家族の願いをかなえる手伝いができます。 nagomiプラスは 生活必需サービス 新型コロナ禍は、デイサービス運営に大きな影響を与えました。しかし、nagomiプラスに関して言えば、その影響は軽微だったと言います。 緊急事態宣言下の2020年4、5月は10%ほど稼働率が落ちましたが、6月には回復し、現在では稼働率は元に戻っています。 新型コロナ禍の影響が小さかった理由について、「nagomiプラスはご利用者やご家族にとって、生活必需サービスとなっているからでしょう」と鈴木さん。 要介護高齢者の病院や老健から在宅への移動は時を待たず、ADLを低下させないためのリハビリニーズは常に存在します。 求められている生活リハビリとしての機能訓練の需要に、nagomiプラスはしっかりと応えたサービスを提供しているということです。 2020年11月にnagomiプラスの4店目「nagomiプラス大森」がオープンしました。 「東京など半日型nagomiのある所にnagomiプラスを出店するドミナント展開を加速したいと考えています。訪問入浴nagomiも並行し、地域のなかでステージの違う介護・リハビリニーズに応えるサービス提供ができる形をつくりたいですね。地方でもフランチャイズ店にノウハウを活かした支援ができる体制を整えていきます」と、鈴木さんは展望を語りました。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2021年2月 介護保険制度の方針変更にいち早く対応し、1日型リハビリデイサービスプラスを展開するイー・ライフ・グループ株式会社。 生活リハビリに特化したプラスが生活必需サービスとして中重度の利用者に受け入れられ始めています。

診療所・介護施設の防犯対策は必須課題 画像センサー×駆けつけで万全の備えを

診療所・介護施設の防犯対策は必須課題 画像センサー×駆けつけで万全の備えを

<取材先>綜合警備保障株式会社(ALSOK) 医療機関や介護施設が標的となった事件は、たびたびマスメディアでも報道されます。 昨今では、2021年12月および22年1月にそれぞれ開業医が犠牲となる痛ましい事件が発生したことは、記憶に新しいでしょう。こうした事件は対岸の火事ではなく、診療所や介護施設においても、自施設を守り、患者さん、利用者さん、スタッフが安心できる防犯・防災対策が求められると言えます。 そのうえで、診療所・介護施設のセキュリティの大きな力になってくれるのが、ALSOKが提供する「ALSOKガードシステム」(ALSOK-G7)です。 同システムは、出入口の開閉を検知する開閉センサーや対象空間への立ち入りを検知する空間センサー、カメラを搭載した画像センサーなど、複数のセンサーを駆使して夜間や休日など無人の時の不正な侵入を監視します。さらに、独自の特長なのが、それらのリアルタイム映像による監視精度の向上です。 不正な侵入があった際、警報とともに画像センサーが現場の映像を監視センターへ自動送信し、監視員は被害状況をリアルタイムで把握したうえで速やかに現場に急行します。また、映像は自動保存され、お客様にメールでお知らせすることもできます。長年、警備サービスを提供する同社の警備拠点は全国3000カ所あり、同システムとの組み合わせにより対応の質も一層強化されたと言えるでしょう。 診療所やデイサービス等の夜間無人となる施設はもちろんですが、介護老人保健施設や有料老人ホームなど利用者さんが居住する施設についても、個人情報等を保管する事務所といった重要な場所の防犯などに導入されています。 無人時だけではなく日中の緊急事態にも有効 一方、同システムは無人時の防犯だけではなく、有人時の緊急事態にも力を発揮します。たとえば、診療所や介護施設の受付スタッフは、時に悪質なクレームや問題行為などの脅威にさらされることがありますが、目の前で恫喝されるなかでは即座に通報できないことも少なくありません。 その際は、同システムの非常ボタンを押せば、無人時対応と同様に警報を受けた監視員が出動します。また、現場急行だけではなく、監視センターと現地で双方向通話も可能です。相手も第三者が介入することで落ち着きを取り戻すことがあるので、日中のスタッフの安全確保にもつながります。 同システムの導入の流れは、すでに開設している施設に関しては、同社による現地調査などの警備診断を行い、導入先ごとに最適な監視体制を提案します。また、センサーの数や監視場所の指定、オプションの追加など、導入施設のニーズに合わせた柔軟な設計が可能です。なお、費用についてはこうした使用機器やオプションの有無、建物のサイズ等をもとに算出。見積もりは無料となっています。 担当者の中村さんは、診療所や介護施設における導入の意義を、「実被害を防ぐとともに、BCP対策の一環としても捉えていただきたい」と強調します。 「たとえば、泥棒や不審者に施設内を荒らされれば、翌日以降の施設運営に多大な影響が出ます。ガードシステムを導入していただくことで、監視員による詳細な状況報告のもと早急な対策や修繕等に寄与できます。また、有料老人ホームなどの場合、外部侵入だけではなく、施設内におけるいじめや暴力事例の発見や、認知症の方の徘徊防止といったケースにも有効です」 なお、万が一施設で被害があった場合も、同システムには損害保険が標準付帯されています。最小限で被害を抑え、その最小の被害も補償する手厚いサポートと言えます。 もはや診療所や介護施設においても、防犯・防災対策は必須課題です。ぜひ一度、自施設の安全を見直してはいかがでしょうか。 制作年月:2022年4月

小児泌尿器科領域におけるファーストペンギンを自院の役割と定める

小児泌尿器科領域におけるファーストペンギンを自院の役割と定める

<取材先> 医療法人社団佐々木クリニック 泌尿器科・小児泌尿器科 来院経路や患者の声を分析集患戦略を定期的に見直す 医療法人社団佐々木クリニック泌尿器科・小児泌尿器科は、全国でも稀な小児泌尿器科を標榜する診療所です。 白柳慶之院長は以前、小児泌尿器科の専門医として小児科の専門病院で勤務。その際、小児泌尿器領域の患者で夜尿症や昼間尿失禁で困っている患者が多くいたこと、また、小児泌尿器科疾患を抱えて成人した、いわゆるキャリーオーバーの患者を受け入れられる医療機関が限られていたことなどから、そういった患者の受け皿となる診療所をつくりたいと思い、2014年、小平市に同院を開業しました。 しかし、これまで小児泌尿器科の外来診療に特化した診療所がまったくなかったため、患者数の見込みは未知数でした。それに加え、開業資金はもちろん、経営が軌道に乗るまでの経済的負担は大きい。それでも開業に踏み切れたのは、2つの理由があると白柳院長は振り返ります。 1つは、ゼロからの新規開業のリスクを避けたこと。もともと白柳院長夫人の実家は小平市で40年続く耳鼻科であり、約10年前に夫人が承継していた。そこで、その医療法人グループの傘下で開業し、スタッフも共有することで、新規開業にかかる経済的負担を軽減できたといいます。 もう1つが、近隣の中核病院である公立昭和病院との病診連携に注力したことです。開業前の半年間、白柳院長が同院に勤め、太いパイプをつなげてから開業したことで、現在でも入院が必要な患者に同院の手術室や開放病床を活用することができていました。 「泌尿器科は外科領域ですので何らかの処置や手術が必要なケースが少なくありません。しかし、診療所で設備を揃えるにはどうしても限界があります。そのため、信頼できる病院とのつながりはとても重要です。現在も休診日には非常勤医師として勤務していますので、病院の医師とは顔の見える関係性ができています。また、当院の患者さんの手術を私が執刀することで継続性のある治療につながり、患者さんの安心感にもつながっています。泌尿器科にとって、病診連携は医療の質を担保するうえでも非常に重要な取り組みです」 また、ニッチな領域だからこそ、集患戦略にも余念がありません。自院の来院経路や契機などの患者の詳細なデータを収集・分析し、マーケティングに反映させています。 たとえば、18年度の受診契機はインターネットが45%で看板広告が5%でした。そのため3つあった看板広告の数を1つに削減。WEBサイトの充実にも力を入れ、夜尿症・おねしょについて、症状やリスク、治療法に関する詳細な情報を掲載しているほか、同院で治療を受けた患者からのアンケートや生の声を発信し、常に情報をアップデートしています。 そういった取り組みが功を奏し、同院の患者数は1日約70人。一般泌尿器科では15歳以下の患者の比率が3~4%に対し、同院は40%といった数字を出しています。   自らがモデルケースとなり小児泌尿器科の普及を目指す 小児泌尿器科という特定領域への専門特化戦略によって一定の成果をあげている同院。しかし、一番重要な目的は、増患による黒字化ではなく、学会等での評価と認知度の向上。それを受けて、後進が出てくることが一番重要だと白柳院長は話します。 「小児科泌尿器科の認知度を高め、フィールドを広げていくことが私の役割です。私はそのファーストペンギンになりたいのです。そのため、今後は学会などに頻繁に顔を出し、メディアにも積極的に出演していきたいと考えています」 開業から5年半、白柳院長の活動も徐々に評価され、学会等での講演も依頼されています。 「これは、私の活動に興味を持ってくれている証でもあります。しかし、目指すところはまだまだ遠い。今は階段の2段目くらいです」 また、これまで積み上げてきた同院の患者のデータや、それに基づいて実践してきた集患方法などを、今後開業を志す泌尿器科や小児泌尿器科の若い専門医たちに伝えていき、経営をサポートしていきたいと白柳院長。 「小児泌尿器科専門の診療所を増やしていくことで、小児泌尿器科医療全体の質の底上げにつなげていきたいと考えています」   【医療法人社団佐々木クリニックの戦略ポイント】 ①新規開業のリスクを軽減 医療法人グループの傘下で開業したうえで、他診療所の事務マネジメントを白柳院長が担い、また、スタッフを共有することで開業にかかる経済的負担を軽減させた   ②病診連携を強化 連携病院と顔の見える関係性を築き、患者にスムーズで質の高い医療が提供できる体制を構築した   ③専門治療の認知度を高め、後進を育成 学会などで講演を行うほか、メディアにも積極的に出演して知名度を上げるよう努めている   監修:日本医療企画 取材年月:2020年4月

営業と宣伝に対するお金の出し方

営業と宣伝に対するお金の出し方

<著者>さすがや税理士法人所長 税理士 介護福祉経営士 藤尾 智之 根強い営業不要論 介護事業は福祉事業であり、営業も宣伝も必要ないという経営者はまだまだいらっしゃいます。社会福祉法人に限らず民間会社でも同様で、その数は決して少なくありません。私はまだそんなことを言っていて大丈夫なのかといつも心配しています。 営業や宣伝は誰のため? 営業や宣伝は金儲けのために行うものと言われますが、決してそうではありません。事業者と利用者との間の情報の非対称性を解消するために行うものなのです。人間はまず気持ちが先に動き、その気持ちに理由づけして行動を起こす生き物です。情報発信を通して利用者に「こんな事業所だったら利用してみたい」と思われないと、この先の事業継続は危ぶまれます。 高齢者のインターネット利用率 では、どのように情報発信をするべきでしょうか。総務省発表の『令和3年版情報通信白書』によると、2020年のインターネット利用状況は60歳代で約80%、70歳代で60%近くとなっています。高齢者を親にもつ子ども世代では利用率は限りなく100%に近づきます。この現実から、誰もが、いつでも、どこでもインターネットにより情報を得られるということがわかります。この普及率の高さを知れば、何を使って情報発信すればよいのか、答えは明白です。 ホームページにお金をかけよう 良いサービス、良い設備を持っていたとしても、誰も知らなければ宝の持ち腐れになってしまいます。積極的に宣伝=情報発信をするためにホームページを活用しましょう。すでに公開しているという事業者も多くいらっしゃるでしょうが、字面だけ、写真があっても建物だけというなんともつまらないものになっていませんか?また、更新はいつされましたか? 1カ月前でも十分古いですよ。 ホームページでよく見られるのは、スタッフ情報、サービス情報、活動情報です。介護をする人は誰(スタッフ写真+経歴)、私が受けるサービスは何(利用者写真+説明)がわかればホームページを見ながら疑似体験をしてもらえます。イベント等の活動情報は、5W1H+写真(または動画)で発信します。情報の少ない利用者の立場になって、利用してみたいと思ってもらえるような情報を発信してみませんか。 ホームページは利用者やその家族だけへの情報発信にとどまらず、求職者や他の介護事業者に対しても有効です。この事業所で働いてみたい、あの事業所を紹介してみたいとなればチャンス到来です。どんなホームページが良いのかわからなければ、ネットサーフィンで気になるホームページを見つけて真似をしてみましょう。スマホ対応も忘れずに! 著者プロフィール 藤尾智之 さすがや税理士法人所長 税理士 介護福祉経営士 ふじお・ともゆき●さすがや税理士法人所長。1996 年、法政大学経済学部卒業。特別養護老人ホームの事務長を経て2011年に税理士試験に合格。その後、藤尾真理子税理士事務所(現:さすがや税理士法人)に入所。社会福祉事業に特化した経営サポートを展開し、社会福祉法人の理事や監事、相談役を務める。著書に『税理士のための介護事業所の会計・税務・経営サポート』(第一法規)がある

5つの機能を柱に掲げ在宅患者を最期まで看取る

5つの機能を柱に掲げ在宅患者を最期まで看取る

<取材先>医療法人ゆうの森 たんぽぽクリニック 永井 康徳理事長 “残り1割”を看取るため有床診へ転換を決意 2000年に開業した医療法人ゆうの森たんぽぽクリニックは、16年に16床の有床診療所に転換し、「在宅療養支援病床&ホスピス・緩和ケア病床『たんぽぽのおうち』」を開設した。転換した狙いを永井康徳理事長は、次のように話す。 「これまでも、在宅療養支援診療所として患者さんの約85%を在宅で看取っていました。しかし、残りは介護力不足や不安から病院を希望されました。ただ、病院に行っても、新しい担当医や看護師と新たに関係を結ぶのは困難です。当院が病床を持っていれば、こうした患者さんを当院内で最期まで診ることができると思ったのです」 当初は、「トランジット※」「レスパイト」「看取り」の3機能を軸に開始したが、現在はさらに「食支援」「医療型短期入所」を加えた5つが、同院の柱だ。 たとえば、「食支援」については、医師、看護師、歯科医師、歯科衛生師、言語聴覚士、管理栄養士による評価・支援のほか、管理栄養士と調理師による食形態や調理の指導など、より専門性の高い食支援を提供している。 病床稼働率は約80%、在宅復帰率も約80%で、平均在院日数は13~14日だ。「もし在宅療養が難しくなっても最期まで診てもらえる」という患者や家族の安心感はもちろん、「最期まで診られる体制があるから患者を紹介できる」という病院側の安心感にもつながり、紹介件数や看取り件数も増加。より重度の患者や、がんの緩和ケア患者の紹介も増えている。 当初は赤字が続くも単価とニーズの合致で増収へ とはいえ、最初から順風満帆ではなかった。病床開設にあたり、病棟勤務経験のある看護師を新たに採用し、組織改編を進めた。しかし、新規に雇用した看護師の病床の管理と、同院が目指す「在宅の延長線上にある病床」というイメージに齟齬が出た結果、病床の看護師が全員辞め、3カ月間病床を一時閉鎖する事態となった。 「結局、再度看護師を募集したうえで、今度は在宅経験が長い看護師2人をリーダーとして配置した体制を整備していきました。その間も、在宅の看護師と病床の看護師の意識のすり合わせなどに苦労しましたが、最近ようやく安定してきたところです」 こうしたトラブルもあり、開設後しばらくは月当たり数百万円の赤字を出した。だが、徐々に体制が安定するにつれて、地域からの評判とともに本体である在宅部門の増益と病棟部門自体の赤字幅も縮小。現在は、「医療型短期入所」が収益の増加に大きく貢献しているという。 「もともと、周辺地域でも人工呼吸器をつけた小児患者さんなどの預かりは以前からニーズが高く、単価もほかの機能に比べて高いため、経営的にも重要な機能になりつつあります。私は理念先行で始めましたが、やはり有床診として在宅医療を提供し続けるには、経営をいかに成り立たせるかは重要です」(永井理事長) 今後もこの5つの機能をさらに充実させながら、特に伸びしろの大きい「医療型短期入所」を軌道に乗せていくことが、同院の有床診としての生き残り戦略になっていくという。 取材年月:2020年10月 監修:日本医療企画

麻酔科時代の専門性を発揮しつつ高齢者が利用しやすいクリニックに

麻酔科時代の専門性を発揮しつつ高齢者が利用しやすいクリニックに

<著者> 野崎浩司 救急科専門医・麻酔科認定医 本稿執筆時、海外の死亡者数増加はもちろん、国内では志村けんさんの訃報、東京の感染者数増加と、この長く暗いトンネルから抜け出す気配はまったく見えておりませんでした。 このままでは、5カ月後に開業予定の自分にも影響がおよびそうな悪い予感しかしませんが、今はできることを考えながら、コツコツやるしかない時期だと諦めておりました。 さて、私は自院のコンセプトを、「内科、外科問わず何でも広く初期対応し、必要なら専門医へ。」というプライマリ・ケアをメインに考えています。 専門が救急・総合診療、麻酔であり、開業を考えたきっかけが「高齢者の救急搬送を1人でも減らしたい、健康寿命を伸ばしたい」なので、患者層の中心は、なるべく1カ所のクリニックで複数科の診療を済ませたいと考える高齢者を想定しています。 では、開業する札幌市郊外の厚別区は、そんな高齢者をターゲットとするのに適している場所なのか、改めて考えてみたいと思います。 目次 01:クリニックを飛び出し高齢者が集まる場でPR 02:ペインクリニックも強みに地域貢献を果たしたい クリニックを飛び出し高齢者が集まる場でPR 厚別区は札幌市東部に位置する最も小さな区であり、人口は12万5716人(2020年3月時点)、ベッドタウンの江別市、北広島市とも接しています。JR(函館本線、新さっぽろ駅など)や地下鉄(東西線、ひばりが丘駅など)、札幌から旭川につながる国道12号などが走り、交通の便もよく住みやすい街として認識されています。 そんな同区には、新しい住宅やマンションが建ち並ぶ一方、建築から30年以上経った古い市営住宅も数多く残っており、札幌市内でも高齢化が著しい地区の一つにあげられています。 秋に入居するクリニックモール※1がある「ひばりが丘タウンプラザ」にはバス停があって市営住宅からのアクセスもよく、敷地内には地域住民からの認知度が高い繁盛しているスーパーがあり、共同利用できる無料の駐車場は394台と十分すぎる広さを有していました。そんな高齢者の通院にとって十分すぎる条件が整っていることはメリットでもあるし、ここへの入居を決めた最大の理由でもあります。 とはいえ、クリニックをネット検索する割合が低い高齢者なので、待っているだけでは来院しない。そこで、院内のリハビリ室(ひばりコミュニティスペース)での講演会や、市営住宅に住む高齢者達が毎日集う「ホクノー健康ステーション」※2にも出向き、出前講座や体操教室を積極的に行うつもりです。 また、高齢者に来ていただくうえで追い風になりそうなのは、20年度診療報酬改定で初診・再診料の上乗せが200床以上の病院にも拡大されたことです。今まで上乗せのなかった近隣の200〜400床の総合病院には医療費の出費に敏感な患者や高齢者は行きにくくなり、近所の「何でも診るかかりつけ医」に来る流れが加速するでしょう(願望でもあるが)※3。 ペインクリニックも強みに地域貢献を果たしたい そんな高齢者を中心としたプライマリ・ケア(外科処置含む)をメインとする一方で、「リハビリテーションを組み合わせたペインクリニック」に関しては、「得意なもの」として宣伝していこうと考えています。 今の施設では毎日最低2〜3例、年間600例近い超音波ガイド下神経ブロックを行っているので、さらにその技術を活かした運動器診断、ハイドロリリースも行っていく予定です。 3月にA病院の地域連携室に挨拶に行ったのだが、その際、「周辺地域にペインクリニック外来を行っている施設がなく、紹介先に苦労していたのでありがたい」と言っていただけました。 腰痛、頚肩部痛、坐骨神経痛、手足のしびれ、帯状疱疹後神経痛など、HPやパンフレット、健康講座などで患者さんはもちろん、医療機関にも積極的に啓蒙、宣伝していくつもりです。ちなみに、現在考えている広告・宣伝活動は、次のとおりです。 HP(ランディングページ作成済み) FacebookとInstagram((仮称)厚別ひばりクリニックとしてすでに運用中) 地域新聞(厚別区や江別市をカバーする「まんまる新聞」)への広告やコラム執筆(広告代理店を通じ根回し中) 立て看板 高齢者が集まる場所などへのパンフレットの配布(前述のホクノー健康ステーション責任者には挨拶済み) 「高齢者はネットをあまり見ない」とは言っても、5年、10年経てば、現在スマホを使いこなしている方が自動的に「高齢者」になるので、広告代理店の忠告に従いながら、ネット広告を中心とした宣伝活動をメインにしていくつもりです。 今月はここまで。したっけ※4。   ※1:閉店したTSUTAYAを改装し、現在5クリニックが入居予定。同じ敷地内にスーパー、ユニクロ、パン・お菓子屋がある ※2:高齢化の進む厚別区もみじ台団地の中心に位置するホクノースーパーが、店舗スペースの一部を利用し運営している高齢者の社交場。健康講座やヨガ教室などのイベント、各種サービスを提供し、ここに来ることが近隣の高齢者の生活の一部となっている。医療機関や企業、個人も協力して高齢者の健康づくりに寄与している(もちろん宣伝活動にもなっている) ※3:開業地近隣の総合病院としては、JCHO北辰病院、札幌徳洲会病院などがある。どちらも276床、301床と200床以上であり、診療報酬改定による初診・再診料の上乗せがかかる施設となっている ※4:北海道弁で、「では、またね」の意味 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2020年5月

立地の選定と在宅診療所の新設

立地の選定と在宅診療所の新設

<取材先>医療法人翔誠会ふくだ内科 福田篤史事務長 目次 01:ランチチェスター戦略とドミナント戦略 02:BtoBからBtoCの流れでエリアに浸透 03:院内の合意形成を図る会議と評価制度 04:在宅と外来で開設コストは10倍も違う ランチチェスター戦略とドミナント戦略 大手在宅診療所の基本戦略は、人口の多いターミナル駅(都市)を中心に、診療圏を広く取れるように分院展開していくことだと思います。 しかし、私どものような小さな診療所が大手と同じような戦略を取っても、なかなか勝ち目はありません。ですから、ニッチな市場からランチェスター戦略(企業間の営業・販売競争に勝ち残るための理論と実務の体系)に基づいて確実にシェアを伸ばし、そこからドミナント(集中出店)戦略を展開することを考えました。 すなわち、まず、人口の少なめの都市でシェアを上げ、在宅患者さんが100人を超えたら、医師会単位の診療圏を少しずつずらしながら、少し人口の多めの都市へ分院出店する戦略です。 私たちの本院は埼玉県戸田市という人口約14万人の都市に立地し、隣接する埼玉県側の主な都市は蕨市(約7万人)、さいたま市(132万人)、川口市(約60万人)となっています(地図参照)。 戸田市の南側を流れる荒川を渡ると東京都板橋区になりますが、競合となる医療機関も多く存在するうえに、診療圏が異なるため地の利もありません。実際に営業活動をしてみても、知名度もなくまったく響きません。結局、南下しての都内進出はあきらめることにしました。 そのうえで、厚生局のデータや診療圏調査から競合診療所を特定、戸田市周辺の地元を担当している医薬品卸や製薬会社などから得た情報を、複数の角度から精査しました。 実際に彼らと一緒にエリアを回り、ネット上に出てこない情報(医師会、診療所間の人間関係や力量、患者さんの動線)も意識しながら、コンサルタントには相談せず立地の選定を絞っていきました。 BtoBからBtoCの流れでエリアに浸透 分院展開の立地選定において、最終的に決め手となったのは以下の3点でした。 ①戸田市と隣接するさいたま市(南区)からの紹介患者が増えてきたこと ②さいたま市(南区)は競合診療所がまだ多くないこと(逆に川口市はレッドオーシャン状態にある) ③本院との距離感が人の移動がしやすい範囲(電車、自動車で約30分、直線で約5㎞)であること 以上の観点から、埼京線沿線の武蔵浦和駅から徒歩7分ほどのさいたま市南区内の立地でテナントを借り、開院を決めました。在宅メーンの診療所は患者さんの入居施設などに対するBtoB(業者間取り引き)がビジネスモデルとなるため、ここでの「B」に対しては営業活動をかけようと考えています。 対して、「C」(一般消費者)へのアクションは開業当初しかできないことなので、地域に入り込んでいる新聞配送業者や郵便局などと連携し、BtoBtoCという流れで案内していきたいと考えています。 院内の合意形成を図る会議と評価制度 分院展開における、院内の合意形成を図るうえで大切なことは、まず法人の方向性(戦略)を示すことだと思います。次に必要なことは、自院の「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を決めスタッフに浸透させることです。 当院は、「これが」と言えるものをまだ確立できていませんが、「志高く」「常にチャレンジングで」「ダイバーシティを尊重し」「楽しく一生懸命に」「社会貢献する」ことを目指していこうと思っています。 現時点では、皆が同じ方向を向いてはいませんので、今後、理念の確立と浸透を図っていこうと考えています。また、これまでは医師と経営幹部で組織としての意思決定をしてきましたが、一般のスタッフまではその思いや意図がどうしても伝わりきらず、反発を招くことも多々ありました。 「無駄なことはしたくない」という意識で、会議などは開いてきませんでしたが、急がば回れの意識で、最近では定期的に会議を開いています。会議を通して、「課題共有(問題意識)➡解決策(優先順位)➡意思決定(納得感)」の一連の流れをつくろうと思っています。 私は、分院展開においては、人間関係のトラブルの想定が一番難しいと認識しています。組織が大きくなれば、バックグラウンドが異なり、優秀ですがいろいろな考え方を持ったスタッフが入職してきますから、以前から診療所を支えてきてくれた方々との衝突と、その調整に苦慮します。 職位は年功序列ではなく可変であることを伝え、透明性の高い評価制度やOKR(Objectives and KeyResults=目標管理)制度の導入を検討。誰が何をしているかを明確にすることで、不満がたまりづらく、かつ仕事効率が向上し、法人に貢献してくるスタッフを評価する仕組みづくりを構築したいと考えています。 在宅と外来で開設コストは10倍も違う 分院展開において、在宅診療所と外来診療所の一番大きな違いは、開設コストです。 在宅診療所はテナント費用40万円ほどで、医療機器は特になくても開設可能なので、人件費を除けば総額500万円もかかりません。 一方、外来診療所の場合、開業費用(内科)は人件費を除いて5000万円以上はかかります。もちろん、地域や診療科によっても異なりますが、約10倍の開きですから、患者さん1人当たりの収入を考えても、在宅診療所に分があることは明白で、分院開業するなら在宅診療所のほうが費用対効果は高いでしょう。 もう一つ大きな違いは、「夜間オンコール体制をどう構築するか」になります。外来診療所と違って、在宅診療所では、夜間オンコールをいかに効率的かつ負担なく患者さんをカバーできるかが重要になります。すなわち、24時間・365日対応できる体制づくりが必要だということです。これには医療連携が重要です。 当院では、夜間オンコール体制をこれまで1人の医師で担当してきましたが、大学病院の力を借りて、大学の複数の医師にオンコール体制を受け持ってもらうことになりました。 コストは年間1000万円ほど多くなりますが、その代わり、夜間体制を充実させることができます。1人の医師に頼らないため、リスクヘッジにもなっています。 また、昼と夜を分業制にすることで、昼の診察を担当する医師の負担も軽減でき、医師の人件費コストも抑えられることから、中長期的にみるとプラスになると考えています。 私は分院をつくる過程で、組織化を意識するようになりました。マニュアルの作成に始まり、診療所としての統一見解、ルールづくりなどを進め、標準化を図っていくなかで、不必要な部分が浮き彫りになり、業務の見直しができます。その結果、少しずつですが、効率化が進んでいると認識しています。 今後は、個人の成長と企業の成長をシンクロさせて、病院全体が成長できる仕組みづくりを考えていきたいと思っています。 取材年月:2021年5月

承継によるシステムの変更に伴う運用ルールなどの見直しも必須

承継によるシステムの変更に伴う運用ルールなどの見直しも必須

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 承継の判断をされる前に行うべきことではありますが、申請や変更の際の届け出や図面を見ながら、設備基準が遵守されているかどうかを確認することが必要です。 承継前後に下記の表を参考にして、基準省令や解釈通知に則った設備基準の照合を行ってください。   【設備基準の確認】 ○:厚令37号、厚令35号、厚令38号、老企25号、老企22号で規定されている設備 □:上記基準省令、解釈通知で「必要な設備、備品」と規定されているものを具体化したもの ①:食事を提供する場合に必要となる設備、備品 ②:入浴を提供する場合に必要となる設備 介護事業においては介護給付のシステムを活用して請求業務などを行っていますが、承継後の法人が他のシステムで既に介護事業を行っている場合に、システム間の情報共有が難しいなどの問題が生じることがありますし、承継後の人事異動により職員へシステムの操作説明が必要になった場合には、システム会社へ支払う費用が発生します。 また、PCの外部への持ち出しやUSBの取り扱いが、ITガイドラインに沿って適切に行われているかを確認し、曖昧な場合には個人情報保護法遵守の下、運用規定の見直しと職員への研修を行う必要がありますし、メールについては個人アドレスとグループアドレスを確認し、必要に応じて個人用と代表用を使い分ける運用ルールを決める必要もあります。 Wi-Fiなどの通信環境についても、整備されていない、あるいは整備されていても古くて不安定であることや、以前から月末月初の給付や外部研修受講の際に業務上の支障が起きていたなどということが承継後に発覚することもありますので、確認が必要です。 2021年度介護報酬改定では、LIFEの導入も始まり、LIFE対応のシステムであることも加算取得の収益改善には重要です。 今やシステムは介護給付のためだけではなく、ICT化に伴う介護記録の入力に加えて、アセスメント、通所・訪問介護計画、モニタリングが一元管理できることが、コンプライアンス上望ましいと言われています。 承継後の適切な運営のために介護システムの運用を確認し、職員が末永く安心して働ける環境を作っていただきたいと思います。

経営課題とするか否か判断基準は経営理念である

経営課題とするか否か判断基準は経営理念である

<取材先> 一般社団法人医療福祉介護研究協会 澁谷辰吉 目次 01:経営課題抽出・解決には理念・ビジョン・計画が必要 02:経営課題の抽出は患者視点で行う 経営課題抽出・解決には理念・ビジョン・計画が必要 医療安全や患者サービスの充実、スタッフの労務管理や請求漏れの確認、地域連携の取り組み――など、診療所にはさまざまな経営課題があります。診療所の成長や発展を目指していくためには、日頃から経営課題と向き合い、解消するための改善努力が欠かせません。これらは将来リスクと言えるものであり、課題解決に向けた努力を怠れば衰退の道を辿ってしまうことになります。 しかしながら、「そもそも改善に取り組むべき具体的な自院の経営課題をつかめていない」「問題となりうるものをどのように見つけだせばいいかわからない」という院長も少なくないと思います。そこで、本稿では自院の問題点を抽出するための方法、さらにはチェックリストを使った経営課題を抽出するための基本的な考え方を解説します。 経営課題抽出とその解決を進めるにあたっては、まず「何を課題とするか」という経営上の価値判断の基準が必要になります。その基準とは、自院の存在意義とあらゆる場面での基本的な価値観を明文化した経営理念です。経営理念を具現化するために、自院の将来のあるべき姿を明文化したものが「ビジョン」であり、その達成に向けて1年単位で具体化したものが「経営計画書」です。 自院の現在の姿は、ビジョン達成に向けた経営努力に対して外部環境と内部環境の変化が影響を与えた結果ですが、ビジョンと現在の姿が一致しないことがほとんどです。理由は外部環境の変化をコントロールできないからです。 自院の経営課題を抽出し解決するには、今後の5年間の内部環境と外部環境の変化を見極めたうえでビジョンを見直す必要があります。たとえば、新興住宅街にある小児科診療所が当面の経営課題を「増患」としていたとしましょう。 しかし、その地域で今は子どもが増えていたとしても、近い将来そうならなくなる可能性も考えられます。将来の人口構成を考えると「提供する医療サービスの変更および追加」が経営課題になります。この課題解決には設備投資や専門職の採用も必要になるため、年度単位の経営計画が必要になります。 経営課題の抽出は患者視点で行う どれだけ自院の機能を強化しても患者さんが来院しなければ診療所の経営は成り立ちません。そのため経営課題を抽出する際には「患者さんが自院を受診する意思決定をどのようにしているのか」という患者視点で行う必要があります(図1)。次回以降、具体的なチェックリストを示しますが、少し例を挙げると次のようになります。 □医療人にしか理解できない用語を使って説明していないか □診察終了後の流れを患者にきちんと説明しているか □長時間待たせた患者に「お持たせしました」と言っているか □予約制の場合、患者を30分以上待たせていないか □患者の前で職員同士が業務上の疑義を話していないか □夏季の待合室椅子に直射日光が当たらないよう工夫しているか □駐車場内の事故に対する責任所在   こうした経営課題の抽出から解決までの一連の手順は図2のとおりになります。なお経営課題の抽出は次の7つに大別されます。 ①診療圏内の将来の年齢階層別人口の推計値を把握する方法 ②診療圏内の将来の自院の推計患者数を把握する方法 ③同規模同診療科の平均値と比較して課題を抽出する方法 ④過去からの推移をもとにその変化に着目して課題を抽出する方法 ⑤自院のビジョンや経営計画とのギャップに着目して課題を抽出する方法 ⑥診療所の法的規制の順守状況から課題を抽出する方法 ⑦一般的な診療所のあるべき姿との比較から課題を抽出する方法 取材年月:2020年1月

承継前のネガティブイメージを、ポジティブイメージに変えるPRを

承継前のネガティブイメージを、ポジティブイメージに変えるPRを

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 事業承継には、経営者の子どもや家族に引き継ぐ「親族内での承継」や、一緒に働いて大切に育ててきた信頼できる従業員を、次期後継者として採用する「従業員承継」があります。 このような場合にはそのまま事業を引き継ぐので、行政への変更届を適切に行うとともに、経営者が変わったことを理由も含めきちんと文書をもって利用者やご家族、紹介ケアマネジャーに伝えることで、今までと変わらないサービス提供ができる旨の同意を得やすいので、集客やPRにも混乱は生じないと思います。 しかしながら、第三者(他法人)へと事業を引き継ぐ「他社への事業承継」の場合には、引き継ぐ会社の信頼性や従業員の協力性および事業所の方針などを、利用者やご家族、ケアマネジャーに理解してもらうことが必要です。 事業承継においては「人材不足」を理由に、訪問および通所介護の計画書やモニタリングをケアマネジャーへ適切に提出することや、サービス提供責任者および相談員がサービス担当者会議への参加がされていないことも多く、承継した法人の管理者等が以前の担当者についての苦情を言われるケースもあります。 買い手側・売り手側の経営陣が、今後どのように進めていくかを話し合ったうえで基本合意書を締結しますが、その後に買い手側が財務・法務・労務状況を明確にするため、自身または代理人(公認会計士、監査法人、弁護士)による監査をするなかで、帳票整備等の介護保険法においての法令遵守が適正でなかったことを知るケースも多々あります。また職員が利用者やケアマネジャーに不安な気持ちを話している場合もあるため、集客やPRを通してこれらを払拭しなければなりません。 さらに、以前からその地域で介護事業を行っている法人が事業承継を受ける場合には、すでに地域の信用を得ているので比較的スムーズに利用者やご家族、ケアマネジャー等に受け入れてもらえますが、新規参入の法人が事業承継をされる場合には、利用者やご家族、ケアマネジャーに受け入れていただかなければなりませんので、これも職員の協力を得ながら実施していく必要があります。 私の経験から申し上げると、進んで真実の声を拝聴し、お詫びする必要があればお詫びし速やかに改善することが、後の信頼と新たなサービスの開発につながります。 集客やPRの際には、過去の経営者がもっていた「集客できなかった」「人材不足だった」などのネガティブなイメージを、新たな事業者に替わることで「サービスの質が向上し、集客や人材不足が解消できた」というポジティブなものに変えるよう、努めていただきたいです。 伊藤亜記 いとう・あき 株式会社ねこの手 代表取締役 短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。1998年、介護福祉士を取得。介護老人保健施設や大手介護事業者を経て、株式会社ねこの手を設立。国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中

事業承継に伴う介護サービスの申請手続きの確認に要注意

事業承継に伴う介護サービスの申請手続きの確認に要注意

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 介護事業者として介護保険の給付を受けるためには、行政からの認可を受ける必要があり、事業承継においては、買い手側で介護事業者の指定が受けられなければ、そもそも買収する意味がないということになってしまいます。 事業承継をする場合、承継対象となる介護事業が売り手の法人から買い手の法人へと法人間を移転することになるため、その際に許認可が引き継げるかどうかが問題となります。買い手企業が介護事業者の認可を受けるためには、承継対象事業について、売り手企業が『廃止届』を出すと同時に、買い手企業が『新規申請』を出すという手続きが必要になります。 新規申請に際しては、行政のホームページ等においてもわかりやすく申請手順が記載されていますので、事前に確認してください。なお、老人福祉法第14条により老人居宅生活支援事業の訪問介護は開始届、老人福祉施設(老人福祉法第5条の3)にあたる老人デイサービスセンター(単独で設置)の通所介護は設置届が、老人福祉法に基づき必要です。 ※東京都の場合には、希望者が「福祉保健財団 事業者指定室」に電話で予約することで行えます。この事前相談は必須ではないですが、事前相談を行った方がスムーズに手続きを進めることができます。 コロナ禍においては、事前確認は、メールで必要書類を送るように指導されていますので、電話をされる際には、送信先メールアドレス等の確認もしてください。 ◎申請方法 ①申請場所  指定を受けるためには、その事業所が立地している各自治体窓口に申請書類を提出します。 たとえば、東京都の場合は、施設サービスについては、「福祉保健局 高齢社会対策部」に、地域密着型サービスを除いたその他のサービスについては、「東京都福祉保健財団 事業者支援部事業者指定室」に、地域密着型サービスについては各市区町村に申請します。 ②指定スケジュール  指定までのスケジュールは各地方公共団体によって異なるので、詳細は各自治体窓口に問合せてください。 たとえば、東京都の場合は、以下のとおりです。 ③申請に係る事前相談  申請に係る質問受付や事業者の事業計画の確認等を行います。 ④指定申請(指定前研修)の申込み  申込期日は、指定(予定)日の3カ月前末日です。 ⑤指定前研修の受講  指定前研修は必須です。 ⑥新規申請(申請書の提出)  指定前研修を受講した後、申請書を作成のうえ、「福祉保健財団 事業者指定室」に申請日時の予約を行ったうえで新規申請を行います。 ⑦受理  申請受付期間内に受理される必要があります。記入漏れや書類の不備があった場合には受理されません。 ⑧審査  申請内容が人員、設備および運営基準を満たしているかの審査を行います。 ⑨指定  毎月1日付けで指定を行います。 ◎介護事業の申請においての留意事項 許認可の引き継ぎについては、買い手と売り手で事業承継の条件について合意した後に、両社で行政の担当者に時期や手続きについて相談をするところからスタートします。行政担当者に相談するタイミングですが、早いケースで基本合意の後にデューデリジェンスと並行して行い、遅い場合でも事業譲渡契約書を締結してすぐに行政への相談をスタートすることになります。 行政の担当者においては慣れていないケースもありますが、職員や利用者のその後の対応に不安が生じないことを第一に進めていく旨を話し、協力を得るようにしてください。

【解説】移転先は旧診療所の「目と鼻の先」が理想

【解説】移転先は旧診療所の「目と鼻の先」が理想

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 テナント物件でスタートし、順調に事業が伸びていけば、浮上するのが戸建て診療所への移転です。この時に留意したいのは土地代・建築費・設備費などの支出を踏まえたシミュレーション、そして何より「患者の利便性の堅持」です。 患者数が増えるなどして順調に医業収入が伸びていくと、開業当初のテナント物件が手狭になり、新たに土地・建物を購入して戸建て診療所に移転するケースは珍しくありません。 目次 01:戸建ての場合は3パターン 02:移転のタイミングはいろいろ 03:移転先は「目と鼻の先」が理想 戸建ての場合は3パターン 戸建てに移転する場合、最も多いのは土地・建物とも完全に所有するパターンです。次に多いのが、土地を借り、その上に自前で建物を設けるパターン。この場合は定期借地権方式という返還時期が定まっている方式が一般的です。もう一つのパターンが地主に建物も建ててもらって自分が入店するパターンです。その代わり、建築費に近い金額を保証金として用意することが多いようです。また、従来のテナント開業と比べて総費用が跳ね上がることも想定すべきでしょう。戸建て診療所へ移転すると、土地代・建築費・設備費などで相当なコストがかかりますが、一方で、テナントの賃借料が無くなりますので、そのシミュレーションが必要になります。 移転のタイミングはいろいろ  最も多いのは冒頭で述べたように経営が順調で、将来の見通しも明るいと判断した場合ですが、それ以外の要素もありますし、複数の動機づけによって移転に踏み切ることもあります。  たとえばご子息が歯学部に入学したとか、歯科医師免許を取得したことをきっかけに移転したケースもあります。テナントの場合、ビル自体の老朽化も当然、決め手になってきます。自分の代だけで完結するのであれば「あと10年だから、このまま続けよう」と判断できても、後継者のことも考えると「30年後」も見据えなければなりません。移転して承継に備えることも十分、考えられます。  開業した際に借家住まいであれば、新たに戸建てを建てる際に住居として併用することも考えられます。 移転先は「目と鼻の先」が理想 移転する際は「同一診療圏内」であることが鉄則と言えます。そもそも保険医療機関としての指定を継続して受けるには、原則として旧医療機関から2キロメートル圏内とされています。これは移転先が、これまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内に収まり、引き続き診療を受けられることを想定しているためです。  また、歯科医院の経営の安定化という観点からも、この原則は踏まえておきたいものです。患者にとって通い慣れない場所にわざわざ移転し、他院への流出を促すべきではありません。  理想を言えば、旧医院から「見える場所」、つまり「目と鼻の先」に移転することが望ましいと言えます。これは競争の激しい都市部であればなおさら重視すべきです。

日頃からのコミュニケーションで値下げ交渉なども可能

日頃からのコミュニケーションで値下げ交渉なども可能

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 通所介護でも訪問介護であっても、経営が安定してきた場合は、その地でしばらく経営を続けることになると思います。その賃貸物件でサービス提供を行っている場合は、賃貸住宅などと同様に賃貸契約書にもとづく更新が必要となりますので、その際の手続きを怠らないようにしてください。 そもそも、賃貸借契約を結んで賃貸物件で介護サービス事業を行う際、ほとんどの場合でその契約期間に限りがあります。契約期間を満了する前に、借主は現在の賃貸物件を借り続けるか退去するかを選択しなければなりません。借り続ける場合に必要になるのが契約の「更新」です。 契約更新は、契約期間の満了をもって発生します。つまり、契約期間が2年間であれば更新も2年に1度、3年間であれば3年に1度の頻度で行われます。普通借家契約の場合、契約期間は2年間であることが一般的です。これには、「1年未満の契約は法律上、期間の定めのない契約となってしまうこと」「3年以上は個人がライフプランを設計しにくいと考えられていること」などが加味されています。したがって、契約更新も2年に一度が一般的です。 具体的な更新の流れは以下のとおりです。 ・物件の管理会社or貸主から「更新のお知らせ」が届く(契約満了日の1~2カ月前) ・期日までに更新契約書、その他指定された書類に署名・捺印をして返送する ・期日までに更新料や手数料などの費用を振り込む もしも、契約満了日の1カ月前になっても更新のお知らせが届かない場合は、一度問い合わせをすると良いでしょう。 更新の通知や同封書類に契約内容の変更に関する記述がない場合は、契約内容は当初のものをそのまま引き継ぎます。ところが、貸主によっては更新のタイミングで契約内容を変更する場合もあるので、書類はよく確認するようにしましょう。 変更が生じるものの例として挙げられるのが賃料です。当初結ばれた契約書では多くの場合、「貸主および借主は一定の条件を満たす場合は協議の上、賃料を改定できる」旨の記載があります。ここでいう「一定の条件」とは、「近隣の似たような条件の物件と比べて賃料が不相当である場合」や「資産価値や税金の増減、その他経済的事情がある場合」が該当します。 つまり賃料の改定は、上記の事情を踏まえたうえで双方が合意することが前提です。一方的な値上げに納得できない場合は、管理会社や貸主に問い合わせて協議するようにしましょう。 逆にコロナ禍においては、更新時に管理会社からオーナーに交渉してもらい、コロナで利用者が減少したことを理由に、今後の介護事業の安定性と共に長期的に借りるメリットを説明し、家賃の値下げや通常契約期間が2年であった場合でも3年に延長してもらう等の交渉を行っているケースもあります。日頃から管理会社やオーナーと円滑なコミュニケーションを取り、必要に応じて、交渉が出来るようにしておくと良いでしょう。

事業拡大に欠かせない保険外サービス 関連する制度も覚えておこう

事業拡大に欠かせない保険外サービス 関連する制度も覚えておこう

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 事業拡大期は、新たなサービスの展開を考えると思います。その際に考えるのが、保険外サービスの開始でしょう。1~3割負担の介護保険内のサービスと、すべて自費の介護保険外のサービスを組み合わせて提供することを、混合介護と言います。 混合介護を行うメリットとしては、利用者の自立支援に向けて、利用者自身およびその家族が充実したサービスを受けられるという点が挙げられます。介護保険内のサービスを受けつつ、それだけではカバーできない、クオリティが高く広範囲の介護保険外のサービスも受けることで、生活の質を高めることができます。混合介護で介護サービスを充実させることで、介護者の肉体的、精神的な負担を軽減することもできますし、介護者が仕事と介護の両立をされている場合には、保険内・保険外の両サービスをうまく組み合わせることで在宅介護の負担を軽くし、介護離職を回避しやすい状況をつくり出せます。 また、介護事業者側にとっても混合介護は介護報酬とは別の形での収益を確保できる貴重な機会でもあります。収益が増えた分、昇給など職員の待遇を改善させることができるとともに、無資格の人材を確保しやすくなるというメリットがあります。 「混合介護」をめぐって、厚生労働省は訪問介護と通所介護のルールを整理し、2018年9月28日に介護保険最新情報Vol.678として発出しています。介護保険外サービスの目的や運営方針、料金などを別途定めることや、利用者の同意確認、担当のケアマネジャーへサービスの内容や提供時間を報告することなどについて定められています。 これらのルールの遵守を前提として、訪問介護では介護保険で認められなかった草むしりやペットの世話、趣味・娯楽への同行、家族のための掃除・買い物代行などが可能になっています。通所介護では健康診断や個別の同行支援、物販、買い物代行などができると記載されています。なお、介護保険外サービスに要した時間を介護保険内サービスの提供時間に含めることはできません。通所介護の物販については、高額な商品を販売しようとする場合には、あらかじめそのことを家族やケアマネジャーへ連絡すること、なども求められています。 混合介護は利用者の多様なニーズに応えつつ、事業者の収益源を広げるメリットがあります。ただし、守るべきルールがわかりにくく、自治体によって解釈が異なることも少なくありません。現場から「グレーの領域には積極的に踏み込めない」といった不満が出ていたことを踏まえ、上記の通知が出ています。  詳細は通知で確認していただきたく思いますが、共通事項としては、以下のような内容が挙げられています(訪問介護の場合を例示)。   ○ 利用者にその事業が指定訪問介護とは別事業であり、そのサービスが保険給付の対象とならないサービスであることを説明し、理解を得ること ○ その事業の目的、運営方針、利用料などが、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定められていること ○ 会計が指定訪問介護の事業の会計と区分されていること なお、保険外サービスを行ううえでは、そのサービスに関連する関連法規(たとえば、物販などを行う場合は食品衛生法など)を遵守することも、意識しておいてください。 加えて、訪問介護の場合は、サービス提供が密室で行われるため、外部から不正が行われているのを発見しにくいという点が指摘されています。そのため、「過度な介護サービスの提供(過介護)による自立支援の妨げ」も懸念事項として挙げられています。 実際、「混合介護における介護保険外のサービスを過剰に取り入れることによって、要介護者の自立支援が妨げられ、悪循環を生んでしまうのではないか?」という指摘も多くあります。要介護者本人の心身状態にとって「真に必要な介護サービスなのか?」を十分に検討しないまま、介護保険外のサービスを過度に利用すれば、要介護者本人の自立の機会を妨げ、「自分でやれることはやろう!」という意思や気力を要介護者から失わせる恐れがあり、そのことが要介護者の心身機能低下のリスクを高め、結果として「介護サービスに依存」する人を増やすことに繋がりかねません。 保険外サービスという制度を活用し事業を伸ばしていくことも大切なことではありますが、それにより利用者の自立を妨げては問題です。「手は出さず、見守る」ことも介護に携わる身としての大切な使命です。

事業承継後の経営改善資金など 承継後にかかる費用を意識する必要性

事業承継後の経営改善資金など 承継後にかかる費用を意識する必要性

<著者>株式会社ポラリス 代表取締役 森剛士 事業承継とは一般的に会社の経営権を後継者に引き継ぐことを指します。デイサービスの場合もほかの中小企業と同じく、主に子どもや妻、親戚などに引き継がせる親族内継承、スタッフに引き継がせる従業員継承、社外への継承(M&A)に分けられます。 必要な資金についてですが、デイサービスの場合は個人では立ち上げることができず、法人格が必要なため事業承継は株式の売買、贈与によって行われるか、事業譲渡といって事業だけを切り取って売却する方法に分けられます。株式譲渡の場合は会社全体を売却する場合と、会社全体を2つに分割し、一部を売却する吸収分割といわれる手法があります。株式を売却する場合、事業所番号を変えなくてもいいのでデイサービスの譲渡に際する手続きはほとんどなくなるというメリットがある一方、法的に問題がある場合、つまり、監査や指導で不備や不正が見つかるなどそのリスクも引き継いでしまうことになり、それを防ぐためには事前にしっかり調査が必要です。 一方、事業譲渡の場合は新たに事業所として番号を取得することになり慎重に計画しないと一定の期間、運営ができないなどの大きなリスクが生じる可能性がありますが、事業所が抱える法的なリスクは引き継がずに事業を継承できるというメリットがあります。 一般的にデイサービスの買取価格の決め方にはいくつかの方法があり、なかには専門的な知識が必要なものもありますが、よく使われるものに「年倍法」というものがあります。これは時価純資産に営業利益の3~5年分を加えたものです。ほかにもいくつかの計算式がありますが、最終的には売り側と譲受側の妥協点を見出すことになるので、計算式だけで売却価格そのものが決まるわけではありません。また事業承継時にかかる資金については先代経営者からの買取資金だけではなく、ほかにも費用はかかります。事業承継前に自社の磨き上げのためにかかる投資資金、相続に伴い分散した株式の買取資金、事業承継後に経営改善や経営革新を図るための投資資金などです。 さらには事業を引き継ぐ譲受側は、M&Aの工程において株主も含む譲渡側に対して支払う株式や事業用資産の買取資金、仲介者やファイナンシャルアドバイザー(FA)に払うマッチング等に関する手数料、士業等専門家に払うバリュエーション費用やデューデリ費用のほか、PMIの工程の各種費用や、その他経営判断に応じて各種の費用を必要とします。割と多額の手数料を取るところもあるので、事前に確認が必要です。 資金調達の手法としては金融機関からの借り入れ等が一般的ですが、取引金融機関とは十分な連携が必要です。場合によっては民間の金融機関では対応が困難な場合もあるため公認会計士、弁護士をはじめとする専門家や各種サポート機関に早めに相談されることをお勧めします。 森剛士 もり・たけし 株式会社ポラリス代表取締役 外科医、リハビリ医を経て高齢者、慢性期リハビリテーション専門のクリニックを兵庫県宝塚市に開設、ポラリスグループをスタート。地域密着型社会貢献事業として自立支援特化型デイサービスを全国58カ所に展開中。一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会理事。一般社団法人日本デイサービス協会副理事長。 株式会社ポラリス 兵庫県宝塚市旭町3-9-1 ポラリス本社ビル2F 0797-57-5753 (取材・掲載年:2022年3月)

レイアウトの変更等は届け出が必須

レイアウトの変更等は届け出が必須

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 介護事業の安定化期において設備面で改めて意識したいこととして、介護保険法の人員配置基準・運営基準・設備基準の遵守があります。併せて各都道府県等の条例の遵守も必要になります。   介護職員処遇改善加算においては、「介護職員の資質の向上の支援に関する計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。」が明記されています。内部監査においては「コロナを理由に研修が全く実施されていない」事例も確認されています。経営が安定している時期だからこそ、オンラインも活用した研修が実施できるような設備の整備などを行い、加算要件を遵守しましょう。   また、開業時から日数が経ち、事業所の状況に変更が生じた場合は、変更後10日以内に変更届を提出する必要があります。変更届には、 ①事業所に関する変更 、②法人に関する変更 があり、これらが適切に行われているかの確認と共に、コンプライアンスとリスクマネジメントが適切に行われているかが、次の事業拡大のステップを踏む際も重要になります。   安定化期によくある例としては、申請時に提出したレイアウトから変更した際に、設備基準を遵守しなければならないのに職員が理解をしておらず、変更届も出していないといったケースです。これにより、行政指導を受けるケースもありますので、日頃から職員に対して周知徹底を行うようにして下さい。   なお、2022年3月31日付で、厚生労働省は、「介護保険施設等の指導監督について(通知)」等を発出しました。   主な改正内容は以下のとおりです。   (介護保険施設等指導指針の主な見直しの内容) ○実地指導について指導形態を次の①、②および③とする。 ①介護サービスの実施状況指導(個別サービスの質(施設・設備や利用者等に対するサービスの提供状況を含む)に関する指導) ②最低基準等運営体制指導(運営基準等に規定する運営体制に関する指導) ③報酬請求指導(加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導)   上記のうち、施設・設備や利用者等の状況以外の、実地でなくても確認できる内容(上記②、③)については、介護保険施設等の負担増にならないよう十分配慮し、情報セキュリティの確保を前提として、オンライン会議システム等を活用することが可能である旨を明記する。 このことにより、実地指導の名称を「運営指導」に改める。   ○運営指導の実施頻度については、原則、指定等の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上とする。なお、施設サービス・居住系サービスについては、現行での実施状況等を踏まえ3年に1回以上の頻度で実施することが望ましいこととする。 ○運営指導の標準化・効率化を推進する観点から、以下について明記する。 ・標準的な確認すべき項目・文書による実施 ・標準化・効率化により所要時間の短縮 ・同一所在地や関連する法律に基づく指導・監査の同時実施 ・確認する書類等の対象期間の限定 ・電磁的記録により管理されている書類等のディスプレイ上での内容確認 ・事務受託法人の活用   本来、指導監査については、2022年3月「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」にも「利用者の自立支援及び尊厳の保持を図るためには、指導監督業務における集団指導や実地指導のより効果的かつ効率的な実施及び指定基準違反や介護報酬請求に不正が疑われる場合等に行う監査の適時適切な実施が求められます。」と明記されています。「集団指導」「運営指導」を受ける施設等においても「日頃の人員配置基準・運営基準・設備基準等の法令遵守体制を評価いただくよい機会」と捉え、法人全体で前向きに対応してください。

【インタビュー】相談事業や自費での運動療法…新たな地域の医療に挑戦 事業承継で地域医療のバトンつなぐ(下)

【インタビュー】相談事業や自費での運動療法…新たな地域の医療に挑戦 事業承継で地域医療のバトンつなぐ(下)

<取材先>医療法人社団あすなろの会「ぬきいこどもクリニック」院長の貫井清孝氏 2021年11月、「ぬきいこどもクリニック」からバトンを受け継ぎ開院したのは整形外科や内科が中心の「健幸クリニック調布国領」。新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない中で、「地域を大切にしたい」という新旧の思いが一致し、事業承継が実現し、それをきっかけに新たな地域医療の形づくりにも挑戦しています。貫井清孝氏と伊藤拓也氏に今後の展望などを聞きました。 目次 01:なぜ、貫井さんからバトンを受け取ろうと考えたのですか。 02:“地域を重視”波長が合い、事業譲り受けを決意 03:「健幸クリニック調布国領」は、整形外科や内科が中心ですが、承継に戸惑いは、ありませんでしたか。 04:新たな歴史を刻み始めた「健幸クリニック調布国領」様で、今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。 05:新たな取り組みで地域に貢献 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 なぜ、貫井さんからバトンを受け取ろうと考えたのですか。 ●伊藤 私は医療機器メーカーに20年勤務しており、後半の10年間は介護事業の立ち上げに加わるなど、鹿児島県を除く46都道府県にクライアントがいました。全国を歩いてみて分かったことは、医療機関は、地域それぞれに応じた取り組みが非常に大切ということです。生意気な言い方ですが、そういう医療機関を地域に残さなければいけないという思いから、医療・介護事業のコンサルティングなどを手掛けるアレックを立ち上げました。  <「地域に必要な医療機関は残さなければならない」と熱く語る伊藤氏> “地域を重視”波長が合い、事業譲り受けを決意 事業承継についてCBパートナーズさんから紹介され、貫井先生に、これまでの地域での小児科医としての取り組みや考え方について話をお聞きしながら、我々が目指す方向性と波長が合ったことから、事業を受け継ぐことに決めました。 また、調布市は、私がメーカー勤務時代に、デイサービスの立ち上げに関わり、初めて医療機器というハードではなく、ソフト面でお金をいただいた所で、とても感慨深い所でもありました。そこで地域のお役に立ちたいと考えたのも、ここで開院を決めた理由です。 「健幸クリニック調布国領」は、整形外科や内科が中心ですが、承継に戸惑いは、ありませんでしたか。 ●貫井氏 コロナ禍の中、小児科以外で、この地域、この建物、この内装を使ってくれる人へ譲ろうと考えていました。ただ常々、思ってきたことは、医療はもう少し患者への責任を持つべきです。 例えば診察し、「毎日30分から1時間ぐらい運動しましょう。1年後、また来てください」と言われる患者さんは少なくありません。しかし、いざ、運動をしようとしても、何をしたらいいのか分からないのが実情です。少し散歩して、スポーツクラブで筋トレして、体を壊してしまう。患者さんそれぞれに合った改善策を一緒に探る努力が必要だと感じています。 伊藤さんが提案されたのはクリニックの下に、自費で運動療法ができる施設を置き、未病の段階から健康に気を配り、もし不安なことがあれば、クリニックで整形外科医などが診る。新たな取り組みで地域の医療に責任を果たそうとしている姿に、共感を覚えました。 伊藤さんが、事業を受け継いでくれるということになり、本当にありがたかったです。 新たな歴史を刻み始めた「健幸クリニック調布国領」様で、今後どのようなことに取り組んでいきたいですか。 ●貫井氏 今は週1回ですが、「健幸クリニック調布国領」の小児科で子どもたちを診ています。その間に、ここで新たに子どもたちを見守ってくれる先生にバトンを渡していきたいと思っています。先ほど、以前から60歳ぐらいで一線を退こうと思っていたと話をしました。今でもその考えに変わりはないのですが、一般会社のように相談役のような役割で、地域に貢献したいと考えています。 新たな取り組みで地域に貢献 子どもたちの健康を守ることと同時に、親御さんを見守ることも大切なことです。子育てにはマニュアルはありませんが、一方で、子育てに関する情報があふれています。 こうした情報に納得するのではなく、それが正しいのか、子育て中のお母さん・お父さんには大いに悩んでほしい。その時に相談できる存在になれればと、2月から週に一度ですが、土曜日の午後に相談事業を始めました。相談料はいただいていません。新たな事業を通じて、地域に貢献していきたいです。 ●伊藤氏 クリニックの名前にある「健幸」には、ウェルビーイング(身体的、社会的、精神的に人々が良好な状態にある)の思いを込めています。「健幸」という考え方を広めていきながら、地域を支えていく医療を展開していきたいと考えています。 <医療での今後の地域貢献の形について話し合う貫井氏(左)と伊藤氏> 執筆提供:株式会社CBホールディングス (取材年月:2022年2月)

いかなる状況でも「人」が経営の資本

いかなる状況でも「人」が経営の資本

<著者>株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー 代表取締役 西村 栄一 事業承継における「経営」について、テクニック論の前に、心構えについてお話しします。まずは、自分の経営権を他者へ「譲渡する」ことは、事業をゼロから始める以上に慎重に進めなければなりません。もちろん、逆に、事業承継を「受ける側」も、必ずしも、プラスのアドバンテージから事業開始できるとは限りません。場合によっては「しまった!」というマイナスからの事業開始もありえます。ちなみに、私は、10年近い付き合いであり、友人関係ともいえる、ある経営者から「互いの信用がなによりの担保」という忖度で、事業を引き受けてしまったばかりに、大失敗したことがあります。そのエピソードなども踏まえて、以下のアドバイスをしたいと思います。 1つ目は「人を信用してはいけない」。端から人を疑って構えろというわけではありません。そこは、一定の大人の振る舞いが必要になるところです。振る舞いとは、たとえば「湖面を泳ぐ白鳥」のように見た目は優雅でいて、人当たりがよくニコニコと振る舞い、人から見えない心、つまり水面下では足をばたつかせているように最悪な事態を想定しつつ、「行動や洞察を継続すること」が大事なのです。 2つ目は「何度でも言う、伝える」です。同じことでも3回は言うこと。そして4~5回目には現物や事実を見せることで伝える。6回目はわかりやすく、並べて見せる。7回目はさらにわかりやすく不要なものを省いて、簡単にしてみせる。8回目はそうすることで「だれが得するのか、損するのか」を判断させることです。しつこいようですが、これも私の事業譲渡を受けた際の経営の反省からの賜物です。 私も友人から事業譲渡を受ける際に、「しつこい」と思われたくなく、仲良く、スマートに手続きを進めていました。たとえば、友人側から「そちらで士業を揃えるのもお金がかかるだろうから準備しておきました」と弁護士、会計士、行政書士等を手配いただき、当社側にも同じように士業がいるのに手を抜いてしまったり、概算としての決算書を概観しただけで、企業価値評価をその専門家に委託しなかったり、「友人だから」ということを理由として「しつこさ」がなかったばかりに、大きなロスを生んでしまったのです。お互いに10年積んできた信用でさえあっという間にゼロになってしまいました。私も悪かったと今でも反省しています。犠牲になるのは、相手と自分だけでなく、職員、利用者、その家族、取引先、無限にその弁済は広がってしまうのです。怖いです。 3つ目は「人を裏切る人ほど、信頼おける人の条件を満たしている」ということです。「あれ?それは違う」と反論する人もいるかもしれません。しかし、本当の悪人ほど「他人の話をよく聞く」「よく気がきく」「弱者の味方」「明るい」「ざっくばらん」「気前がいい」です。先に挙げた私のいくつかの失敗で共通することです。「信用おける人って!?」と悲しくなったものでした。 では、テクニックの話に移ると、事業承継後の経営については、職員や利用者、事業所周辺への配慮というのが大切になります。 まず、職員、利用者への配慮の1つは、前任の事業所で行われていた会議や研修、利用者家族との懇親の場等は、最初の3カ月はそのまま引き継ぐことが大切です。3カ月の間に「要るもの・要らないもの」のヒアリングを職員や利用者ごとに個別で行います。個別で行う理由は、全員にその場で聞いても本音は一部からしか収集できないからです。一部の声が全体を動かすことは「経営の方向性」を間違えてしまうきっかけとなってしまいます。「声なき声」に経営のヒントが必ずあることを見逃さないでください。それにより、本当に前任者にも見えなかった発見ができます。 事業所周辺への配慮についてですが、「事業所のある地域の自治会長を知らない」という事業所がかなり多い印象もあります。「ビジネス」と割り切って、それに伴わない関係者との付き合いはしないのも一案かもしれませんが、我々のビジネスは、どこを切り取っても「人」です。どんな商売よりも「人」無しでは成立しない事業です。向こう三軒両隣の名前と顔、地域のキーマンの数名は確保しておくことが重要です。 実は、そういうことも前任者の事業でお取り引きのあるケアマネジャー等からのヒアリングで情報を得ることができるかもしれません。偏った情報もあります。精度を高めるためにたくさんの専門職から情報を収集するようにしましょう。テクニカルな方法ではありますが、「なにもわからないので教えてください」という姿勢と、「こういう点ならなんでも任せてください」という意見のバランスをもって「人」付き合いを広げていきましょう。 (取材・掲載年:2022年3月)

介護保険法だけではない 介護事業者が守るべき法律

介護保険法だけではない 介護事業者が守るべき法律

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 サービス開始に欠かせない指定手続き  介護保険サービスを提供する上では、都道府県知事や市町村長からサービスの種類ごとに指定を受ける必要があります。「指定居宅介護支援事業者」「指定居宅サービス事業者」「介護保険施設」の3つの指定があり、指定を受けた事業者を指定事業者と言います。 ①申請場所 指定を受けるためには、その事業所が立地している各自治体窓口に申請書類を提出します。 たとえば東京都の場合、施設サービスについては、「福祉保健局 高齢社会対策部」に、地域密着型サービスを除いたそのほかのサービスについては、「東京都福祉保健財団 事業者支援部事業者指定室」に、地域密着型サービスについては各市区町村に申請します。 ②指定スケジュール  指定までのスケジュールは各地方公共団体によって異なるので、詳細は各自治体窓口にお問い合わせ下さい。 たとえば、東京都の場合は、以下のとおりです。 ③申請に係る事前相談  申請に係る質問受け付けや事業者の事業計画の確認等を行います。 ※希望者が「福祉保健財団 事業者指定室」に電話で予約することで行えます。この事前相談は必須ではないですが、事前相談を行った方がスムーズに手続きを進めることができます。 なお、コロナ禍においては、事前確認はメールで必要書類を送るように指導されていますので、電話される際には送信先メールアドレス等の確認もして下さい。 ④ 指定申請(指定前研修)の申し込み  申し込み期日は、指定(予定)日の3カ月前末日です。 ⑤指定前研修の受講  指定前研修は必須です。 ⑥新規申請(申請書の提出)  指定前研修を受講した後、申請書を作成の上、「福祉保健財団 事業者指定室」に申請日時の予約を行った上で新規申請を行います。 ⑦受理  申請受付期間内に受理される必要があります。記入漏れや書類の不備があった場合には受理されません。 ⑧審査  申請内容が人員、設備および運営基準を満たしているかの審査を行います。 ⑨指定  毎月1日付けで指定を行います。 介護事業所が守るべき介護保険法 介護保険法とは、1997年12月に公布された法律です。1号保険者の要介護認定の判定で、要支援・要介護の基準に該当した方(その状態になった原因を問わず)、2号保険者の要支援・要介護の状態になった原因が「主に老化が原因とされる病気(特定疾病)」である方の尊厳の保持と自立した生活を支援するために、国民が負担する介護保険料や税金を財源としています。日常生活の行為にかかるさまざまな介助やリハビリなどのサービスにかかる給付を、介護予防や重度化防止で行うことを目的にしています。 保険給付によるサービスを受けるには、原則として要支援・要介護の認定を受けることが必要です。制度自体は2000年4月からスタートしていますが、基本は3年に一度介護報酬改定が行われ、見直されています。 介護保険制度における法令遵守の考え方 介護保険制度は、40歳以上の国民から集めた保険料と公費(税金等)により運営する、公的な性格が非常に強い制度です。このため、サービス提供を担う事業者は基準を守った適正なサービス提供だけでなく、法令の自主的な遵守が求められます。 ・介護保険指定事業者に係る主な関係法令 国:法律 介護保険法(平成 9 年法律第 123 号)/ 政令 介護保険法施行令(平成 10 年政令第 412 号 東京都の場合:介護保険法施行条例(平成 24 年 10 月 11 日 条例第 116 号) ・介護事業と労働法 労働法とは労働基準法、労働安全衛生法等、労働に関連する法律を総称したものです。 2012年4月施行の改正介護保険法により、労働法の遵守ができなかった場合(具体的には労働法の規定で罰金刑に処せられたとき)、都道府県(地域密着サービスの場合は市町村)から指定を取り消される可能性もあります。 介護事業所を運営していく際には、人材定着や採用においても、日頃の働く人材の労務管理が要となりますので、労働法は、その上でもとても大切な法律となります。 通所介護事業で忘れてはならない消防法 介護保険事業の指定を受けるには、事前に消防法にかかる届出・確認も必要になります。 通所介護を提供する地域の管轄消防署に対して、2方向の避難経路の確保等の建築や用途変更にかかる工事の着工7日前までに「防火対象物の工事等計画書」等を提出し、消防署の指示に従います。介護サービス事業の種類によって異なりますが、自動火災報知設備(消防署へ通報する火災報知設備の連動も)、消火器、スプリンクラーなどの設置も必要になります。 これらの工事が完了したら、事業所指定の申請までに、消防の立ち入り検査を受けなければなりません。変更する場合も届出が必要になります。上記の消防法の規定に違反した場合、30万円以下の罰金または拘留などの罰則が科せられる場合があります。 通所介護などの立ち上げ時、介護保険法を遵守して建築・改築を実施したが、消防法に引っかかって指定を受けられなくなるケースもありますので、消防法も確認しておきましょう。 伊藤亜記 いとう・あき 株式会社ねこの手 代表取締役 短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。1998年、介護福祉士を取得。介護老人保健施設や大手介護事業者を経て、株式会社ねこの手を設立。国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。 (取材・掲載年:2022年4月8日)

評価から資金調達まで 専門家の手を借りることが重要

評価から資金調達まで 専門家の手を借りることが重要

<著者>株式会社ポラリス 代表取締役 森 剛士 デイサービスを譲渡、売却する場合、資産は現金や不動産以外にもデイサービスの送迎に使う車やリハビリ機器などがありますが、ここでは主に不動産について話します。 デイサービスを従業員や外部へ売却する場合については、吸収分割などの手法で株の売買により承継が行われます。事業だけを譲渡する場合もありますが、どちらにしても不動産の評価はしっかりと経験のある不動産鑑定士に行ってもらい、株価や事業所の価格を算定する根拠を揃える必要があります。 子ども等親族に継がせる親族内承継については、事業用資産や株式を贈与、相続により承継することになります。資産の状況によっては多額の贈与税、相続税が発生することがあります。後継者に資金力がない場合、税負担を回避するために事業継承後の経営の安定が危ぶまれる等の可能性があります。そのために税負担に配慮した承継方法を検討しなければいけません。さらには、たとえば、親族内承継においては、株式・事業用資産以外の個人資産の承継や、他の推定相続人との関係も視野に入れておく必要があり、また、どのパターンの承継かにかかわらず、現経営者個人の負債や保障関係の整理・承継を行う必要があるなどの注意点があります。 さらにはデイサービス事業を引き継ぐ譲受側は、M&Aの工程において株主も含む譲渡側に対して支払う株式や事業用資産の買取資金、仲介者やFAに払うマッチング等に関する手数料、士業等専門家に払うバリュエーション費用やデューデリ費用のほか、PMIの工程に各種費用やその他経営判断に応じて各種の費用を必要とする場合があります。 資金調達の手法としては金融機関からの借り入れ等が一般的ですが、取引金融機関とは十分な連携が必要であったり、場合によっては民間の金融機関では対応が困難な場合もあるため、公認会計士や弁護士をはじめとする専門家や各種サポート機関に早めに相談されることをお勧めします。 森剛士 もり・たけし 株式会社ポラリス代表取締役 外科医、リハビリ医を経て高齢者、慢性期リハビリテーション専門のクリニックを兵庫県宝塚市に開設、ポラリスグループをスタート。地域密着型社会貢献事業として自立支援特化型デイサービスを全国58カ所に展開中。一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会理事。一般社団法人日本デイサービス協会副理事長。 株式会社ポラリス 兵庫県宝塚市旭町3-9-1 ポラリス本社ビル2F 0797-57-5753 (取材・掲載年:2022年4月7日)

保険外サービス開始時も、設備基準等の確認は必須

保険外サービス開始時も、設備基準等の確認は必須

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 事業拡大期にあたって、保険外サービスを展開していくうえでは、設備面での注意も必要です。 そのひとつのサービス例が、お泊りデイサービスです。 日中デイサービスを利用している方が、夜もそのまま施設に宿泊できるサービスを一般に指します。 介護保険の枠組みを活用しながら事業所側と利用者とで個人契約を締結し、そのまま事業所に宿泊サービスを提供するものです。 お泊りデイサービス自体は介護保険外でのサービスのため、過去には行政の目も行き届かないことも多く、事業所側のモラル次第でサービスの質が決まってしまうと言われていました。 そこで、厚生労働省や行政側の省令により、2015年4月からお泊りデイサービスを行う場合に、「都道府県もしくは市町村への届け出制」および「事故があった場合に市町村や家族に連絡を義務づけ」「市区町村の監視体制」といった施策を打ち出しています。 また、都道府県は、届出の内容を介護サービス情報公表制度に基づいて公表することも定めています。 さらに、厚労省では「指定通所介護事業所等の設備を利用し夜間及び深夜に指定通所介護等以外のサービスを提供する場合の事業の人員、設備及び運営に関する指針について」を発出し、新たにお泊りデイサービスに関するガイドラインを策定しています。 ここでは、利用定員や一人当たりの床面積、緊急時対応などの指針が定められています。 【運営基準例】 ○利用定員:日中のデイサービスの定員の半分以下とし、最大でも9人まで ○個室:1名で利用が基本。希望すれば2名までの利用も可能 ○設備基準:相部屋は最大4名で、1室あたりの床面積は最低7.43㎡、4畳以上の確保が必要 その他、消防法に定められているスプリンクラーや火災報知器、消火器などの防火設備を設置し、災害時に対応できるようペットボトルの水や保存食、懐中電灯といった備品の備蓄も推奨されています。 自身が手掛けようとしている保険外サービスにおいて、必要な物品等は何があるのか、またそこに伴う設備基準等はないのかの確認はしっかりしておいてください。 「介護はプロに、ご家族は愛を!」の「プロとしての介護サービス提供のあり方」を間違われないようにするためには、介護事業者側が正しく設備基準等を理解しておく必要があります。 「日本中のご高齢者やご家族の希望ある未来をつくる!」べく、介護保険外事業の拡大をご検討をいただきたいと思います。

安定化時期だからこそ コンセプトを出して集客につなげる

安定化時期だからこそ コンセプトを出して集客につなげる

<著者>株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー 代表取締役 西村 栄一 介護事業が安定したら、次に今あるレベル1を10 に、そして100 にしていくことが、経営者としての使命です。ところで、自事業所はなぜ、今、取り引きしている「ケアマネジャー」にお付き合いいただけているのか、サービス提供する「利用者」はどうして自事業所のサービスに満足していただけているのか、思いをめぐらしたことはありますか? そのあたりを経営者はもちろん理解しておいていただきたいし、そのサービス提供の主体である職員はどうイメージしているのかまで把握しておくべきです。さらには、その利用者が、数年後もサービスを利用している姿まで具体的にイメージすることが大切です。安定化している今だからこそ、ケアマネジャーに今後について聞いてみる絶好の機会かもしれません。 これは先を見据えたバックキャスティング手法で、逆算の思考でもあるのです。たとえば、訪問介護であれば1対1であるからどのような介護を提供しているのかはイメージしやすいと思います。一方で、通所介護ですと複数の方々が異なる1日の過ごし方をされているので、その方々に合った過ごし方を考えてみてください。「全く考えてもみなかった」という方はいないと思います。ですから、「うちの事業所はどんな方でも受け入れています」「どんな人でもウェルカムです」なんて言っているうちは、自事業の姿が見えていないと思ってください。 安定化したら、進化、発展させていきたいのかなど含めて、次はどのような事業所にしたいのかを考えましょう。さらにイメージを言葉にする「コンセプトの確立」が最も重要な要素です。それを考えるきっかけとして、「自分の地域にはないオンリーワン」のサービスを考えることも一つの案です。ただし、そのオンリーワンが、地域住民やケアマネジャー、医療関係者、ひいては、利用者のためになるのかを考えましょう。進化、発展するのに必要な受け入れとなりえるのか、それとも誰も気づかなかった潜在的なニーズもあるのか、それは自事業所の職員にできることなのか(←これが一番大事)、などです。 安定化の次に、進化、発展させていく方向としての正解ではなくとも、ベターなコンセプトであるかどうかの見極めは経営者としてとても重要です。 コンセプトの選び方としては、対象者をどう考えるかが挙げられます。たとえば、利用者のADL状態を軸に置いた場合、より重度な方を受け入れるのか、それとも、軽度者をはじめとした身体介護を必要としない方へのリハビリなのかということです。また、高所得者層、中間層、低所得者層など、生活のレベルでサービス内容を変えることもできます。 また、サービス内容にこだわることで、差別化もできます。一般的にデイサービスでの昼食は安くても300円で、高いところでは700円以上というところが平均なのですが、「一律100円」というところがあります。メニューも一定のレベル以上のものを出しているところを見ると、昼食だけでは赤字になっているのではないかと予想できます。しかし、これにより「低価格で高レベルな食事の提供」といった具合に、コンセプトが明確になります。利用者一人当たりの単価は下がりますが、稼働率は間違いなく上がります。なお、そこには定員稼働率70%での黒字化ではなく、90%を達成してやっと黒字化する、といった具合のリスクが存在しますし、コンセプトを明確にすることでリスクが生じるというのはあり得ると思います。経営とはリスクは背中合わせであり、それこそ「覚悟」です。 (取材・掲載年:2022年3月)

手洗い設備や駐車スペース等 介護事業ならではの注意が必要

手洗い設備や駐車スペース等 介護事業ならではの注意が必要

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤 亜記 介護事業においては、サービスによって設置すべき設備や広さなどが決められています。以下では、大枠を説明します。 ◎訪問介護の設備基準 事務室 広さの規定はありませんが、訪問介護の事務が行える机が1つ以上確保されていなければなりません。また個人情報等を保管するための措置として、鍵のかかる書庫の設置も必要となります。 相談室 ・利用申し込みの受け付け、相談等に対応するのに適切なスペースが確保されている ・相談等に対応するために机やいすの配置がある ・利用者およびその家族のプライバシー確保のため、個室またはパーティション等(高さの目安は170㎝程度、カーテンは不可)で囲われて外部からの視線を遮断できる形状・しつらえであること 手洗い設備 衛生に関する設備として手洗いができる洗面所が必要です。やむなく共用する場合には、 ・感染症予防対策をとっているのか ・共用の状況を確認し、適切に使用できるか 上記2点をポイントに、感染予防に必要な手洗い、うがいができる設備と液体石鹸、消毒液、タオルやペーパータオル等も設置しなければなりません。 なお、同一建物内にトイレがあったとしても、同一建物内の飲食店の利用客も使うなど不特定多数の人が使用する場所は適切ではないため、再検討していただく場合があることも踏まえ、物件を選ぶようにします。 その他 固定電話と携帯電話、FAX、パソコンとプリンター、訪問に際して利用する事業所専用の自動車・自転車(電動であればなお良い)も準備する必要があり、それらを駐車する駐車場と駐輪場の確保も必要になります。 ◎通所介護の設備基準 全体 □ 食堂   □ 機能訓練室  □ 事務室  □ 静養室 □ 相談室 □ トイレ  □ 手洗い □ 厨房(食事を調理して提供する場合) □ 浴室(入浴サービスを提供する場合) 食堂・機能訓練室 それぞれ必要な広さを有し、内法により測定し1人あたり3㎡×利用定員以上の面積を確保してください。また、それぞれにおいて支障がなければ同一の場所とすることができます。 狭隘な部屋・スペースを合わせて面積を確保することはできません。 面積に算入できない部分 ・他設備(静養室や事務室、玄関部分、通路・廊下部分、厨房、事務スペース、出入口のスロープなど、利用者の円滑な移動のために傾斜が付けられている部分 等) ・他事業(当該単位と別単位の場合も含む)の利用者等が食堂および機能訓練室内を通る構造の場合の当該通路部分 ・利用者が機能訓練等に使用できない部分(冷蔵庫や棚等サービス提供のために利用者が直接使用しない什器等がある場合は、当該スペースは面積から除く) ・当該建物における通路・廊下部分については、原則として食堂および機能訓練室の面積に算入できません。利用者が機能訓練の一環として歩行訓練等に使用する場合も同様。 ・利用定員分の机やいす等を配置すること(机は、サービス提供内容によりなくても可) 静養室 ・静養室は、個室またはカーテン等で仕切られた形状であり、静養できる設備であること ・休養が必要になった利用者が適時休めるよう、同一フロアにあるなど利用しやすい場所に設置すること ※ベッドだけでなく利用者が静養できる設備として布団等の設置も必要です。 相談室 ・利用者およびその家族のプライバシー確保のため、個室またはパーティション等 (高さの目安は170㎝程度、カーテンは不可)で囲われて外部からの視線を遮断できる形状・しつらえであること ・相談を受け付けるための設備(机・いす等)の設置が必要 事務室 ・同一法人の他事業(介護保険外事業含む)と事務室が同一の場合、通所介護事業専用の事務机1以上確保されていること ※事業を運営するための事務室が必要です。 トイレ・手洗い 衛生に関する設備として手洗いができる洗面所が必要です。感染予防に必要な手洗い、うがいができる設備と液体石鹸、消毒液、タオルやペーパータオル等を設置しなければなりません。 ただし、認知症の方などのご利用の場合には、誤飲の可能性があるため、液体石鹸、消毒液は、利用される際に設置するように事故防止の配慮も必要です。 要介護者が安全かつ衛生的に使用できるものであることが求められます。 浴室 (入浴介助を行う場合)十分な脱衣スペースを設けるなど、要介護者が安全かつ適切に入浴し、介助できる設備であること キッチン ・昼食の提供等で厨房を使用する場合、厨房を設置すること ・厨房は衛生的に使用できるものであること ・厨房・キッチンとして従業者が使用するスペースは、食堂・機能訓練室の面積には算入できないこと。 駐車場・送迎スペース ・送迎車を保有する場合には、適切な駐車スペースを確保すること(事業所所在地外でも可) ・送迎スペースについては、道路交通法を遵守し、交通・往来の妨げにならないものであること。また、利用者が安全に乗降できるスペースであること 個人情報保管のための設備 ・個人情報等を適切に保管するための設備として、施錠できる書庫を設置すること その他 固定電話と携帯電話、FAX、パソコンとプリンター 伊藤亜記 いとう・あき 株式会社ねこの手 代表取締役 短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。1998年、介護福祉士を取得。介護老人保健施設や大手介護事業者を経て、株式会社ねこの手を設立。国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。 (取材・掲載年:2022年4月8日)

【インタビュー】「東京の子どもを守りたい」22年間走り続けた小児科医 事業承継で地域医療のバトンつなぐ(上)

【インタビュー】「東京の子どもを守りたい」22年間走り続けた小児科医 事業承継で地域医療のバトンつなぐ(上)

<取材先>医療法人社団あすなろの会「ぬきいこどもクリニック」院長の貫井清孝氏 22年間、東京都調布市で地域の子どもたちの成長を見守ってきた医療法人社団あすなろの会「ぬきいこどもクリニック」院長の貫井清孝氏(63)。 開院当初から60歳を超えたら後進に道を譲りたいと考えていた貫井氏が選んだのは事業承継によるバトンタッチだ。新型コロナウイルス禍という想定外の経営環境の中で、次の一歩を見据える貫井氏。 事業承継の経緯や思いなどについて、貫井氏と事業を受け継いだ医療・介護事業のコンサルティングなどを手掛けるアレック代表の伊藤拓也氏に聞きました。 目次 01:-「ぬきいこどもクリニック」を開院したきっかけ 02:「東京の子どもたちを守りたい」。開院時の思い忘れず 03:-地域住民に親しまれていた「ぬきいこどもクリニック」様で、どうして事業承継を考えたのですか。 04:60歳ぐらいで後進に道を 05:-国領という地で、22年間大切に育ててきた医療を、受け継いでくれる先として特にこだわった点はどこですか。 -「ぬきいこどもクリニック」を開院したきっかけを教えてください。 ●貫井氏 私は東京都杉並区で生まれ、育ちましたが、弘前大学医学部で小児科を専攻したことがきっかけで、青森県や岩手県など東北地方の子どもたちを多く診てきました。その後、東京に戻り、勤務医として子どもたちを診てきましたが、勤務医ですと、どうしても診療件数という評価が付きまといます。私は、話を十分聞いて、見て、触って、においをかぐ、ということが小児医療では大切と考えてきました。一人当たりの診察時間がたくさん取れない勤務医では、自分が考える小児医療を実現できないと開院を決断しました。開院は実家のある京王線「つつじヶ丘」駅の近くで考えており、たまたま調布駅に向かって2つ先の「国領」駅の近くに物件があったため、1999年に開院しました。 「東京の子どもたちを守りたい」。開院時の思い忘れず 開院して強く思ったことは「東京の子どもたちを守りたい」ということでした。長く、東北地方の子どもたちを診てきて、都会の子どもたちは、地方で暮らす子どもたちと比べて大切にされていないと感じました。 塾やたくさんの習い事をさせられている子どもたちの姿を見て、子どもたちが危ないと本当に思いました。子どもは親の背中を見て、育ちます。できるだけ多くの時間を親子で共有した方がいいわけですが、背中を見て育つ分、お母さん・お父さんの日頃からの振る舞いも大事になります。私は、自分の子育て経験を紹介しながら、お母さん・お父さんと一緒になって、子どもたちの成長を見守ってきました。   開院から東日本大震災のあった2011年3月までは診察時間を午前9時から午後9時までにし、できるだけ多くの子どもたちを診察できる体制にしていました。東日本大震災で、節電が呼び掛けられ午後7時に診療時間を短縮。 その後、近隣にある東京慈恵会医科大学附属第三病院が準夜間帯の診察を始めたため、午後7時までの診察としました。 「ぬきいこどもクリニック」の開院当時を振り返る貫井氏 診察券の発行枚数は、1万9,000枚を超えました。初診の子どもの中には、その子の親御さんが幼少時に、聴診器を当てた子もいます。「先生、私も昔、お世話になりました」という話をしてくれるお母さん・お父さんに会うと、この地で長年にわたって小児医療に携わることができて本当に良かったと思います。 -地域住民に親しまれていた「ぬきいこどもクリニック」様で、どうして事業承継を考えたのですか。 ●貫井氏 定年制を設ける一般企業であれば60歳ぐらいでしょうか。次の世代にバトンタッチをしながら、それまでの経験や培ってきたノウハウを使い、新たなことをする機会があります。 医師も同じです。毎年、医師国家試験に合格し、優秀な医師が数多く輩出されます。誰もリタイアしなければ、医師は、だぶついてしまう。年を取るにつれて正しい判断もできなくなるかもしれません。従前から、私は60歳ぐらいになったら、後進に道を譲ろうと考えていました。 60歳ぐらいで後進に道を 19年に60歳になりました。その時は具体的なイメージを持っていなかったのですが、20年の新型コロナウイルス感染拡大による患者減をきっかけに事業承継を具体的に考えました。 「この柱も22年以上、子どもたちの成長を見届けてきた」と話す貫井氏。「健幸クリニック調布国領」でも柱は時を刻んでいる 「東京の子どもたちを守りたい」という一心で、開業から22年間、地域の子どもたちを診てきました。それはコロナ禍でも変わらず、20年6月、クリニックを子ども専門の発熱外来とし、コロナ禍で子どもたちを守る体制を整えました。 ところが、当時のコロナ株は子どもたちにあまり感染しませんでした。さらに発熱外来にしたことで、風評被害による受診控えも加わり、わずか数カ月で内部留保は底を突きました。コロナの終息も見通せない中、金融機関から借り入れをして経営を続けるのは、いいやり方ではないと考え、CBパートナーズさんに事業譲渡について相談に乗ってもらいました。 国領という地で、22年間大切に育ててきた医療を、受け継いでくれる先として特にこだわった点はどこですか。 ●貫井氏 大きく2つありました。1つ目は、事業を受け継いでくれる相手側が自信家、野心家であること。いくら退くとはいっても、長年にわたり大切に育ててきたクリニックを譲り渡すわけですから、少しでも今後の経営に不安をのぞかせるような相手にはバトンを渡さないということは決めていました。もう1つが、地域のことをしっかり考える方に譲りたいと考えていました。 ただ、コロナ禍の中、そのまま小児科を開院したいと考える方には、お譲りするのはやめようと思っていました。せっかくバトンを受け継いでくれても、どれだけ子どもたちが戻ってくるのか分からない状況です。場合によっては、開院すらままならない状態になる恐れもないとは言えません。コロナ禍による苦汁を味わうのは、私だけにとどめたいという思いが強くありました。 続きは来週・・・ 「相談事業や自費での運動療法…新たな地域の医療に挑戦 事業承継で地域医療のバトンつなぐ(下)」 を配信予定です。 執筆提供:株式会社CBホールディングス (取材年月:2022年2月)

【解説】医業収入は当面目標として「3000万円」を目指そう

【解説】医業収入は当面目標として「3000万円」を目指そう

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 あるグループが統計をまとめたところ、歯科医院の年間医業収益は平均で、個人医院が約4600万円、医療法人医院が約1億2000万円といいます。事業規模が大きいほど自由診療が占める割合も高くなるようです。歯科医院経営の目安の一つとしていいのではないでしょうか。 私たち税理士が歯科医院の先生方と初めてお会いする場合、決算書を拝見することになります。この時、まずどこに着目し、どう判断するかといったことを大まかに述べてみたいと思います。当法人も参加しているある職業会計人グループが作成している、歯科医院の統計データ(以下、データ)をもとにお話を進めます。 目次 01:医業収入はどのくらいか 02:自由診療の総収入に占める割合 03:原価率 04:人件費率 05:医業利益 医業収入はどのくらいか データによると、平均の年間医業収入は個人経営の医院で4598万円、医療法人で1億2190万円となっています。歯科医の先生方の会合でこのデータをお話したところ、「平均収入額が大きすぎるのではないか」といったご指摘を受けました。このデータはいずれも、夜間開業や午前中のみの診察といった歯科医院はほとんど含まれておらず、会計事務所に業務委託するようなフルタイムで稼働している歯科医院ばかりです。「これから拡大させよう」という先生方にはやはり、一つの目安としていただきたいと思います。 自由診療の総収入に占める割合 医業収入における自由診療の割合は、個人医院で14%、医療法人院で25%となっています。矯正歯科を中心に扱う歯科医院でない場合でも、都市部では自由診療の割合が50%を超えるところも珍しくありません。 さらに、年間の医業収入が1億円を超える医院に限ってみると、自由診療費は27%となります。規模の大きい医院ほど診療内容のメニューが多く自由診療の収入比が高くなることがうかがえます。 原価率 歯科医院の変動費は「材料費」と「外注技工料」に分けることができます。個人・医療法人を問わず、全医院で材料費が対医業収入比8%、外注技工料が同7%、両費用を合計すると15%となります。言うまでもなく医院の提供する診療内容によって変動費率は変わります。補綴の割合が高くなれば当然、変動費率は高くなりますし、予防中心なら下がります。 いずれにせよ、収入に連動する費用ですから事業計画を策定する際も原価率を念頭に置く必要があります。例えば、原価率が対収入比20%である場合、月間で収入を100万円増やしても手残りは、80万円となります。 人件費率 歯科医院の最大の固定費は人件費です。データによると個人・医療法人全体で対医業収入比は平均21%となっています。この比率が30%を超えると経営は厳しくなります。 ただ、気をつけていただきたいのは、しっかり昇給し、休暇も取れる環境を用意し、厚生年金などの法定福利費も整備していかなければ、良いスタッフは集まらないという側面もあるということです。工夫することでなんとか25%程度に抑えていただきたいと思います。 医業利益 個人医院の場合は所得額と言い換えてもいいでしょう。年間平均利益は1280万円です。個人医院の場合は所得から、専従者給与(つまり、家族への給与)を控除します。 ただ、専従者給与は家族への支払いで、就業時間や職種などが反映されているわけではありませんから、通常は専従者給与を控除する前の数値を参照します。控除前で見ると1634万円です。医療法人も役員報酬について、役員報酬を差し引く前で見ますと利益は2883万円となります。 年間利益が3000万円を超える歯科医院は全体の2~3割程度と推定されます。せっかくリスクを背負って開業したのですから、ここを一つの目標とされてはいかがでしょうか。 制作年月:2022年3月 監修:㈱日本医療企画

退職リスクも踏まえたうえで 慎重に引継ぎを進める

退職リスクも踏まえたうえで 慎重に引継ぎを進める

<著者>株式会社ポラリス 代表取締役 森剛士 デイサービス等を事業承継する場合の人事労務問題は、事業承継に関するものとデイサービスという許認可事業を行う上で必要なものと、大きく2つに分けて考える必要があります。まずは前者について、デイサービス業界は多数乱立業界と言われ規模の大きくない事業者が多く、ほかの中小企業同様にノウハウや関係取引等が経営者個人に集中していることが多いため、親族や社員に承継する場合、十分な準備期間すなわち後継者候補をできるだけ早く選定し、経営に必要な能力を身につけさせ知的資産、すなわちデイサービスの運営、経営ノウハウを受け継がせていく必要があります。他の業種と同様、何よりも、「現経営者と後継者の対話」「理念、事業についての認識の共有」を重ねていくことが有用です。 従業員については人事担当者が一人ひとり面談を行い、精神的な不安を取り除き、給料面の引き継ぎであったり、退職金制度などの引き継ぎを行う必要があります。全職員の雇用継続を条件として加えてくることが多いですが、逆に雇止めを行いたい職員がいる場合は、吸収分割ではなく事業譲渡であれば可能です。 以上のような準備を怠ると事業承継を発表した後、ほとんどの職員が辞めてしまい、その対応に莫大な時間や費用が掛かってしまうことがあります。 次にデイサービス事業の許認可にまつわる人事労務については、人員基準をしっかり継承していく必要があります。吸収分割等による株の売買の場合は、引き継ぐ前の人員基準の違反も引き継ぐことになる場合があります。介護施設のM&Aなどの経験を積んだ弁護士や社労士等にしっかりと相談して進めましょう。繰り返しになりますが、事業承継時はスタッフの退職リスクが高まることが考えられますので、人事部門や人事担当者は時間をかけて慎重に準備を進めましょう。 森剛士 もり・たけし 株式会社ポラリス代表取締役 外科医、リハビリ医を経て高齢者、慢性期リハビリテーション専門のクリニックを兵庫県宝塚市に開設、ポラリスグループをスタート。地域密着型社会貢献事業として自立支援特化型デイサービスを全国58カ所に展開中。一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会理事。一般社団法人日本デイサービス協会副理事長。 株式会社ポラリス 兵庫県宝塚市旭町3-9-1 ポラリス本社ビル2F 0797-57-5753 (取材・掲載年:2022年4月7日)

独立開業フェーズにおける 資金繰りの考え方

独立開業フェーズにおける 資金繰りの考え方

<著者>株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー 代表取締役 西村 栄一 開業への準備として、資金はどのくらいあったらいいのでしょうか。もちろん、多ければ多いに越したことはありません。ただし、それが借入金であるならば、どの程度が目安なのか見当をつけておかなければ、返済の利子だけで苦しむことになります。 目安を考える上では、事業としての目標がどこにあるのかを定めた「逆算の思考」が必要です。しかも、ただ漫然とするのではなく、細かく細分化された思考法としてのバックキャスティング手法が大事です。具体的には、以下のように考えます。 1 事業規模に合わせて「稼働率」100%のために利用者獲得は何名必要かを確認 例:通所介護事業所30人定員の場合、月間延べ利用者平均数は45名(平均介護度3.0)にすると1日平均利用者21人(目標稼働率70%)でも、月間売上約500万円が見込まれる。この70%の地点を「損益分岐点」とします。大切なのは売上に対する費用の多くを占める「人件費」の対売上比率を50%以内にすることです。 訪問介護事業所の場合には「定員」という上限はないので、「目標稼働率」という考え方はありません。ただし、「損益分岐点」はどこにあるのかを考えることは、通所介護事業と同様です。たとえば、30名の利用者に対し、訪問介護サービスを1カ月に12回(12時間)、15名の職員で提供する程度を、当面の目標売上100万円(稼働率100%)と設定します。訪問介護事業の人件費割合については厚生労働省が示す報酬基準によって70%以下で設定されている点にご注意ください。 2 その稼働率で「売上」は目標どおりなのかどうかを確認します。利用者の要介護度、利用時間、加算は算定するのか等を確認し、稼働率と売上のそれぞれの達成可能性を事前評価します。 3 稼働率も売上もそれぞれの地域特性や報酬改定等に伴う制度変更、世情等によって、利用者獲得のスピードが変わります。できるだけ多くの関係者にヒアリングしてください。これにより、1(稼働率)と2(売上)の整合性と達成可能性の精度を調整することができます。 その後、目標稼働率と売上目標を、どう推移させていくのかを考えます。たとえば、稼働率を先に考え、推移状況を仮定する場合は、下のような具合です。 3カ月〜半年:目標稼働率の50%で、売上目標30% 半年〜9カ月:目標稼働率の60%で、売上目標50% 9カ月〜1年:目標稼働率の70%で、売上目標70% 上記の例では目標稼働率を70%達成した場合でも、売上目標が70%ではなく、100%に達成することもあります。仮定していた「売上単価」が予想よりも高い場合はそれができます。ただし、逆も然りです。目標稼働率を70%達成しても、単価が低いと売上目標は30〜50%となると悲劇となります。さらに、仮定していた人件費もオーバーしてしまうようなことがあれば、利益目標はさらにそれを下回ることもあり、1年を待たずに事業撤退もありえるのです。 だからこそ、資金準備のために重要なのが「逆算の思考」なのです。 また、上記2「売上」に目標があるということは、利用者別の平均予想単価も出せることになります。 「利用者は毎月いくらならお金を払えるのだろうか?」 「その利用者はなぜうちのためにお金を払ってくれるのだろうか?」 「利用者はそのお金を払い続けることに満足なのだろうか?」 「利用者の満足は家族の満足であり、お取り引きする医療機関や居宅介護支援事業所の満足にもつながる」 という点を考えましょう。上記に挙げた定員30人で、月延べ利用者数45人、要介護平均3のデイサービスの場合、平均単価は1日9,000円、月12回の利用で安定します。 利用者の出費に対する予算や満足度は、サービスの良し悪しによって変わりますので、「福祉だから、多少は甘く見てくれるだろう」という考えは排除しましょう。飲食店やメーカー、ホテル等と同じように、利用者はサービスを選ぶ立場だということを重視していきたいものです。 上記稼働率の推移は決して楽観視したスローな推移ではありません。「訪問系の事業は設備にお金がかからないから数百万〜1千万円あれば足りる」というのは間違いです。500万円程度なら開業準備をしている間に、残金が半分になっていることも少なくないのです。 また、各都道府県や市区町村の商工会議所が主催する補助金や、中小企業庁の支援する新規ビジネスへの補助金、金融機関が提供する新規参入者への優遇利子による貸付金等で当初はどうにかなると考えていても、稼働率がスローな状況で足踏みをしているうちに2カ月経った時点で追加資金が倍に、さらに3カ月後にも倍に……という形で予定していた資金の4倍もの費用がかかることもざらなのです。

人目に付きやすいなどのポジショニングだけでなく 防災への配慮や用途変更の確認を怠らない

人目に付きやすいなどのポジショニングだけでなく 防災への配慮や用途変更の確認を怠らない

<著者>株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 介護事業を運営するに際し、注意すべき点は、介護保険法の理解のもと、人員配置基準・運営基準・設備基準等を遵守しなければいけません。 また、どの介護サービスでも同様ですが、事業所を立ち上げるには介護保険法に基づく指定許可を受けなければいけません。 そのためには事業目的を介護サービスとした、社会福祉法人や株式会社など、「法人の設立」をしている必要があります。 不動産関連については、物件を探される際には、バス通りなどの人の目につきやすい場所で、ビルやマンションのテナントの際には1階を選ぶようにします。理由は、「スタッフ募集」や「利用者募集」のチラシ等を掲示する際も1階の方が目につきやすく、またスタッフや利用者、相談者が出入りする際に、エレベータ設備があったとしても1階の方が利便性があるからです。 また、通所介護においては、 ・建物の配置、構造および設備は、日照・採光・換気・適温調節等、利用者の保健衛生に関する事項および防災について十分配慮されたものであること。 ・緊急時、非常災害時の対象として、安全な避難手段、経路を確保すること。 ・段差の解消、スロープの設置など高齢者の安全や利便に配慮した構造とし、車いすの利用が可能なものとすること。 などが留意点として挙げられます。 通所介護サービス事業の立ち上げに際しては、介護保険法や老人福祉法上の手続きとともに、建築基準法にかかる確認済証および(新築・増改築の場合は)検査済証の交付を受けておかなければなりません。 たとえば、賃貸物件を通所介護として使用する場合には、増改築や用途変更等にかかる建築基準法上の手続きが必要なのかを事前に調べます。 そのうえで、改築・改修等の工事を行う前に、当該市区町村の建築確認担当課に用途変更や建築確認の申請を行い、担当部署の建築主事に確認してもらいます。 申請に際しては、専門的な知識をもった建築士等に相談しましょう。用途変更・建築確認の手続きによって確認済証が発行されたら、介護保険担当部署との事前協議を行ったうえで、必要に応じた工事にかかります(建築基準法に適合させるための改修工事等も含む)。 工事の手続きは、建築士事務所などに依頼しましょう。なお、新築工事の場合は、工事途中や完了後に建築主事のチェックを受けて検査済証の交付を受けます。この検査済証の交付を受けた後に、介護保険の指定申請という流れになります。 事業所の賃貸契約をする前には、通所介護サービスとして利用すること、改装が必要であることを、物件のオーナーにしっかり伝えておく必要があり、後にトラブルがないようにコミュニケーションを取るようにしましょう。 ※自治体によっては、処遇スペース(食堂・機能訓練室、静養室、相談室)については、 同一階に配置すること(エレベータ設置により利用者の移動に支障がないと認められる場合は除く)などが求められます。たとえば東京都の場合には「東京都福祉のまちづくり条例」等の確認も必要となりますので、各自治体ルールを基に不動産物件もお探し下さい。 伊藤亜記 いとう・あき 株式会社ねこの手 代表取締役 短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。1998年、介護福祉士を取得。介護老人保健施設や大手介護事業者を経て、株式会社ねこの手を設立。国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。 (取材・掲載年:2022年4月8日)

地域の独自ルールを確認し 適切な人員配置を行う

地域の独自ルールを確認し 適切な人員配置を行う

<著者>株式会社ポラリス 代表取締役 森 剛士 独立してデイサービス事業を立ち上げる際、必ず考えないといけないポイントがあります。その一つが人事労務系といわれるものです。ここではデイサービス開業時の人事労務のポイントについて話します。通所介護には人員の基準が定められています。国によって必要な資格や配置基準が決められていますが、地方自治体によっては独自のルールを定めていることがありますので、開業を決めたら開業地の地方自治体へ問い合わせるといいでしょう。人事基準の概略については後程述べますが、デイサービスを経営、運営するにあたって必ず手元に置いておくべき本があります。それが社会保険研究所が出している『介護報酬の解釈』 という本で「単位数表編」「指定基準編」「QA法令編」の3冊からなります。かなりボリュームがありますが、地方自治体が指導や監査に来る際も、この本を持参しこの本に書かれている内容に基づいてお話をされますし、この本が事業所の事務所に見当たらないと必ず購入するように勧められることが非常に多いので必ず手元に置かれることをお勧めします。 管理者:通所介護のマネジメントをする役割で常勤で1名必要です。資格は特に必要ありませんが地方自治体によって異なることがあります。 生活相談員:生活、相談、指導などの業務を行うソーシャルワーカーです。社会福祉士、社会福祉主事、精神保健福祉士のいずれかの資格が必要です。社会福祉主事は大学で必要な科目を習得していれば大学の証明をもって社会福祉主事として認められます。開業後の指導や監査などで社会福祉主事としては認められないと指摘され大変なことになる場合もあるので採用時にはしっかり確認されるといいでしょう。なかには事業所のほうで大学に問い合わせすることが必要な場合もあります。 機能訓練指導員:看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師、鍼灸師のいずれかの資格が必要です。 看護職員:利用定員が10名以上と10名以下で基準が異なります。10名以上の場合、通所介護の単位ごとに専従する必要は全くありません。利用定員が10名以下の場合、専従の看護職員または介護職員が1名以上必要です。生活相談員か看護職員、介護職員のうち1名は常勤でなければなりません。 上記基準はすべてを網羅しているわけではなく、また地方自治体によって、異なるルールが存在します。必ず内容については地方自治体の窓口にお問い合わせください。 森剛士 もり・たけし 株式会社ポラリス代表取締役 外科医、リハビリ医を経て高齢者、慢性期リハビリテーション専門のクリニックを兵庫県宝塚市に開設、ポラリスグループをスタート。地域密着型社会貢献事業として自立支援特化型デイサービスを全国58カ所に展開中。一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会理事。一般社団法人日本デイサービス協会副理事長。 株式会社ポラリス 兵庫県宝塚市旭町3-9-1 ポラリス本社ビル2F 0797-57-5753 (取材・掲載年:2022年4月7日)

【インタビュー】新米院長が本音を語る-開業STORY-子育て世代の職員が働きやすい環境をつくり その運営方法をロールモデルとして広めていきたい

【インタビュー】新米院長が本音を語る-開業STORY-子育て世代の職員が働きやすい環境をつくり その運営方法をロールモデルとして広めていきたい

<取材先>海老名こじろう耳鼻咽喉科 井戸光次朗 院長 目次 01:人を笑顔に――自分の根底にある想いを理念に掲げて開業 02:開業1週間で1日100人以上の患者獲得に成功 人を笑顔に――自分の根底にある想いを理念に掲げて開業 ──開業を考えたのはいつですか。 井戸●大学に入学したときです。私が医師を志したのは、幼少期に祖父が病気で倒れたことがきっかけでした。自分の無力さを痛感し、自分の手で守りたいと思ったのです。医師を志すにあたり、家族には金銭面で苦労をかけました。 少しでも家計の足しにしようと、高校生のときは、接客業を中心に毎日バイトに励み、その頃から人と接すること、人を笑顔にすることが好きだと気づいたのです。 それを医療に活かそうと考えたとき、より地域とかかわりが深い開業医の道が自分に向いていると思ったのです。 ──なぜ耳鼻咽喉科を選んだのか。 井戸●全国的に耳鼻咽喉科医が少なかったことと、外来診療で子どもからお年寄りまで、あらゆる年代層の患者を診ることができたからです。 耳鼻咽喉科は、内科・小児科・感覚系等、一般内科としての面も持ちつつ、頭頚部の外科手術も行う総合診療的な面もあります。また、外来処置で症状を快方に導くことができる科であることに魅力を感じました。 ──診療所のコンセプトを教えてください。 井戸●「みんなを笑顔でハッピーにする」です。これは、「人を笑顔にしたい」という自分の根底にある想いからでした。 患者はもちろんのこと、子育て世代のスタッフも応援する診療所にしていきたいと考えています。この理念はスタッフの求人の際にもお話し、共感してくれた方を選ぶようにしています。 ──現在地を選ばれた理由を教えてください。 井戸●関東近辺の耳鼻咽喉科診療所をリストアップし、人口対比を調べたところ、神奈川県海老名市は特に耳鼻科医が少なくニーズが高いことがわかりました。また、海老名市が子育て支援に力を入れていたことも、当院の理念と一致していましたので、開業地に決めました。 そんななか、コンサルタントから駅近にあるクリニックモールの案件を聞き、テナントの社長とお会いしたところ、社長が私を気に入ってくださり、運よくモールの一角で開業することができました。 モールには当院のほかに、整形外科、皮膚科、呼吸器内科が入居し、来年には泌尿器科が入る予定です。そのほか、法律事務所と保育園が入っています。 ──診療所の広さは? 井戸●77坪です。当院には5つの診察室を配置していますが、今後はそのうちの3つを耳鼻科にし、もう2つを小児科の診察室として対応していきたいと考えています。 モール内には皮膚科も入っていますので、ゆくゆくは、このモールに来れば小児医療を揃って受診できるという形にしていきたいと考えています。 JMPからの画像が入ります。 開業1週間で1日100人以上の患者獲得に成功 ──スタート時の集患はどのようにしましたか。 井戸●開業時、テナントの社長をはじめ、医師の仲間など、さまざまな人が当院の宣伝をしてくれたお陰で、多くの人に認知され、開業1週間で1日の患者数100人以上という成果を出すことができました。もちろん、HPやSNS、新聞広告、ポスティング、駅前でのチラシ配り、ラジオ出演など、集患につながるものは何でもやりました。 内覧会では、ただ院内を紹介するだけでなく、子どもを対象に“お医者さん体験会”など、お祭り的な要素を取り入れたところ、大好評で、2日間で計600人以上の方が来院されました。このとき、来院した方に診察券を作成したことも集患につながっています。 当院では、医師1人、看護師2~3人、受付3人、医療クラーク3人の通常8人体制を敷いています。現在は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、1日約60人の患者を診ています。 ──今後の目標を教えてください。 井戸●当院では、時短勤務など、子育て中のスタッフが働きやすい環境づくりに努めていますが、今後はその取り組みと、保育園も含めた、「小児科+耳鼻科+保育園」をセットにした運営の形を、ロールモデルとして、ドミナント戦略で広めていきたいと考えています。 そのノウハウを伝えるためのコミュニティをつくり、ゆくゆくはリモートワークも含めた新たな働き方も模索していきたいと考えています。 ──これから開業を考えている医師にアドバイスをお願いします。 井戸●開業に至った経緯や自分の根底にあるのは何か――。自分の奥底にある信念や理念に沿った経営を念頭に置いたうえで事業展開していかなければ事業は続きません。 そして、売り手よし、買い手よし、世間よしの“三方よし”の精神で事業展開してほしいですし、私も人に喜ばれることを模索しながら事業につなげていきたいと考えています。 <開業ロードマップ> 2005年 開業を決意。大学入学と同時に開業を決意、開業に向けた経営等を勉強 2018年 物件決定。機材選定交渉・融資交渉 2020年1月上旬 機材搬入・セットアップ 2月1日(土) 2日(日) 内覧会開催 2020年2月3日 開業

公費での事業展開だからこそ 法定研修の実施は欠かせない

公費での事業展開だからこそ 法定研修の実施は欠かせない

<著者>株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー 代表取締役 西村栄一 介護はこの先20年は間違いなく「伸びる市場」であり、あとは「他社との事業の特色の区別化」「職員数不足を解消」さえできれば、成功の可能性は高いといえます。ただし、伸び行く事業のブレーキ機能として「コンプライアンス」を充分に理解しておく必要もあります。その一つとして、法定研修というサービスごとに実施しなければならない研修があり、介護事業を展開していくうえでは必ず法定研修を行わなければなりません。 通所介護事業での法定研修の場合は、大きく以下の3つに分けることができます。研修には、対策委員会の設置、方針を定めること、定期的な研修開催、実例の検証を行うなどの要件が定められており、それに沿った研修の実行が求められます。 1つ目は、「個人情報保護」です。いわゆる、個人の尊厳の保護やプライバシーの確保等に関わる研修です。 2つ目が「人権に関わる研修」。つまり、認知症や身体拘束、虐待等への対応に関するもので、特に「人権」については法定研修のなかでも重視されており、年に複数回の開催が必須とされています。また、虐待防止に関する研修の場合、すでに一部の介護サービスでは義務となっていますが、2024年までに全サービスで虐待防止のための体制の整備を求めるほか、従業員に対し研修を実施することが求められています。 3つ目は「緊急時対応研修」です。事故発生または再発防止、感染症・食中毒の予防及び蔓延防止、非常災害時の対策に関する研修が含まれます。非常災害時に対応する研修は2024年度までに、全サービスで行うことが義務付けられています。  また法定研修に含まれてはいませんが、月例会議等の利用者ごとのケースカンファレンスにおいて、「介護予防及び要介護度進行予防に関する」話し合いが重要とされています。これは、介護保険法の第一条の二項「悪化防止と介護予防」における事業所の義務と関連しており、介護予防及び要介護度進行予防に関して、事業所としてどのようにケアを考えていくのか学ぶ必要があります。上記の法定研修の3つのほかに、この件についても研修を行うようにしてください。 「業界のことは何もわからないから、すべて専門の職員に任せている」という言葉が、私の知る介護事業所の「失敗」で一番多い事例です。経営者であれば、「任せること」「任せてはいけないこと」の区別もしっかり知っておく必要があります。経営者自らが介護のことをちゃんと勉強したうえで、挑むことを切にお願いします。 研修を実施するうえでは、「実地指導・監査」についても確認しておきましょう。これは、各事業者に対し記録帳票類の記載や、法定研修の実施状況、人員配置基準を満たした運営をしているのか等を行政が確認するための、3〜6年に一回以上行われる定期検査と言えるものです。 この「定期検査」を甘く見てはいけません。経営者曰く、「私たちは記録や帳票類のために介護をしているのではなく、人を見てサービス提供しているんです。優先順位の第1位は人です」という言葉は素晴らしい表現なのですが、実は、これはコンプライアンスから大きく道を外れていく言葉でもあります。記録帳票類を揃えなくてもいいということではありません。ましてや優先順位2位でもありません。絶対1位です。 なぜならば、他業界と介護事業が大きく違うのは売上の占める8〜9割は、ほぼ国や行政からの給付で占められているからです。給付であるということは、法律に沿わなければならないということです。定められた法律は「厳守」しなければならないのです。また。「我々は地域の発展のために、また生活困難者のためにどこにも負けないサービスをやっているんだ。多少のルール違反があったとしてもそれは許してもらえるはずだ」、という道を外れた言葉も残念ながら経営者から聞くこともあります。これも許されることではありません。実地指導や監査によって、巨額な返還や指定停止処分を伴う処分をたくさん見てきましたし、私自身も経験しました。世に言われる「正論」であればあるほど通用しない。それがこの業界なのです。 (取材・掲載年:2022年3月)

特例措置や融資などの情報入手で 事業継続を図る術を探る

特例措置や融資などの情報入手で 事業継続を図る術を探る

<著者>小濱介護経営事務所 代表 小濱 道博 返済期限を迎えますます厳しい状況に 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する問題は、全国に大きな影響をもたらしながら3年目を迎えています。介護業界も例外ではなく、感染が拡大してまん延防止等重点措置が適用される期間は、予定されていた実地指導を延期または中止とし、感染者が減少した期間に集中的に1件2時間程度の実地指導を1日に複数事業所で行うことが恒例となっています。オミクロン株は感染力が強く、第五波のピークであった2021年8月の10倍を超える介護関連施設でクラスターが発生しました。また、子どもの通っている保育園などが休園となって自宅に子どもがいるため、出勤できない職員が多発し、勤務シフトが取れない介護施設も急増しました。 国は継続して、多くの救済措置としての多様な特別融資を設けています。しかし、2年前のコロナ施策で特別融資を借りた介護施設は、その返済時期を迎えつつあり、金融機関からの借入枠が一杯であるために追加融資を受けることができず、設備投資などの事業展開に支障が出始めています。また、法人税などについても、延納の特例措置(※1)などを活用し、納税期日を先延ばしするなどの対応を行った介護施設は、その翌年に2年分の納税を強いられ、大きく資金繰りが悪化しました。これは、社会保険料、固定資産税、自動車税など広範囲に活用していた介護施設ほど影響が大きいです。 当時は、ここまで収束に長期間を要するとは誰も考えてはおらず、短期間で収束すると見ていました。それが想定外に長期化し、未だに収束の目処が立たない状況で、多くの介護事業経営者が疲弊しています。 職員の安全を確保できてこそ 介護事業が継続できる 先にも書きましたが、熱がある職員を休ませるなどの対応により、勤務シフトが回らなくなって所定の人員基準を満たすことができない医療機関や施設が急増しています。厚生労働省から人員基準の緩和措置などが出されており、コロナ禍が原因で人員基準を満たせない場合は、人員欠如減算を適用しない特例が継続されています(※2)。しかし、減算が適用されないだけで、人員不足によるサービスの低下は避けられず、少ない人数でサービスの提供を強いられる介護職も過酷な労働環境で頑張っていることを理解しなくてはなりません。 そのようななか、2022年3月現在、介護施設において、3回目のワクチン接種が進められています。厚生労働省からは接種後の体調不良で職員の配置基準が満たせなくても、柔軟な対応、すなわち人員基準減算には問わない旨の通知も出されています。 また、ワクチン接種とは、感染しないことを意味するのではありません。感染しても重症化しないためのものです。他人を感染させるリスクは残るので、ワクチン接種後も感染対策の継続が必要となります。 施設等でクラスターが発生した場合、最大の経営リスクは、職員の多くが濃厚接触者に認定されることにあります。濃厚接触者に認定されると、PCR検査が陰性でも2週間は自宅待機を余儀なくされます。さらに、厨房の調理職員や清掃婦は出勤しなくなるため、その役割も担当しないとなりません。また、職員は自宅に帰らなくなるという事例も報告されています。自らが感染している可能性があるため、自宅に帰った結果、家族に感染させるリスクを恐れてのことです。あるディスカッションで、クラスター医療チームの医師は、一番大切なのが自分たち、次に現場、最後に生存者だと言ったことが心に残りました。いくら徹底した感染対策をしても、クラスターが発生した場合、まずは自分たちを守ることを最重要と考えるべきだと強く言われました。職員が安全を確保できてこその介護であり対策であるわけです。 また、介護職のメンタルケアもとても重要性があります。介護職は、自らが被災者であるとともに、救援者でもあります。二重の立場にいることで感じるストレスも計り知れません。セルフケアの研修を日頃から定期的に行うなどの教育的介入(予防)が重要とされています。 被害を最小限にとどめながら 事業継続する努力がリスク管理 デイサービスなどでは、利用控えにより利用者が減少して、未だに稼働率が戻らない介護事業所も多いです。長引くコロナ禍のなかでの利用控えや自粛によって、介護サービスを使わないという選択があることを、利用者が認識したことも大きいです。収入減のなかで、加算算定の相談が増えてきましたが、簡単なものではありません。介護サービスを提供する職員の一人ひとりが、加算算定の意味と手続きを理解しないと、利用者も納得しないし、良い介護サービスにはならないからです。良い介護サービスを提供できない事業所は、決して伸びてはいきません。ましてや、利用者に加算算定のために機能訓練を押しつけるようなことをやっていけません。 新型コロナウイルスによる高齢者の致死率は高いです。かといって、過剰な対応は必要ありませんが、事業者はリスク管理を徹底することが求められます。リスク管理とは、施設や事業所で感染者を出さないことだけを意味するのではありません。なぜならば、営業を継続する限り、感染者の発生は起こりえることだからです。被害を最小限に留め、感染者を出さない時間をより長くする努力が、リスク管理といえます。 国や行政の指示に従う限り、責任は国が取ってくれます。事業者はしっかりとリスク管理を行ったうえで、地域のライフラインとして可能な限り、従来どおりのサービス提供を継続できる体制を維持することが重要です。新型コロナウイルス問題は、さらに長期化の様相を呈しています。しっかりと情報をキャッチして、その時点でできうる対策を取り、可能な限り事業を継続する覚悟が求められています。そのリスクマネジメントで重要なパーツに、2021年度介護報酬改正で義務化されたものに業務継続計画(BCP)があります。「オミクロン株」での感染が拡大し、保育所、学校を媒体とした家庭内感染が急増するなかで、改めて感染対策BCPの重要性が再認識されています。 ※ ※2 新型コロナウイルスにおける人員基準等の臨時的な取り扱い 小濱道博 こはま・みちひろ●一般社団法人日本介護経営研究協会(NKK)専務理事、一般社団法人介護経営研究会(C-SR)専務理事、介護事業経営研究会(C-MAS)最高顧問。介護事業コンサルティングを幅広く手掛け、全国で年間200件以上の介護事業経営セミナーを行う

【インタビュー】新米院長が本音を語る-開業STORY-皮膚科の保険診療をメーンに 地域住民から信頼される診療所を目指す

【インタビュー】新米院長が本音を語る-開業STORY-皮膚科の保険診療をメーンに 地域住民から信頼される診療所を目指す

<取材先>池上コスモス皮膚科 村田奈緒子院長 目次 01:見出し01 02:見出し02 03:見出し03 04:見出し04 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 ターゲットであるファミリー層の多い立地を選択 ――開業を考えるようになったきっかけは何ですか。 村田●実は私自身、開業は考えていませんでした。臨床自体は好きでしたが、人材マネジメントなどの経営面に関しては性格的に向いていないと思ったからです。ただ、勤務医として診療所に勤めるなかで、どうしても残業が増えてしまい、家に帰るのは夜9時すぎ。私には4歳の子どももいますので、このまま仕事を続けるかどうか悩んでいました。そんなとき、内科医の夫から、「自分が経営面を担うから開業してみては」と提案されたのです。それならば、ある程度、時間をコントロールできる働き方ができると思い開業を決意しました。 ―― 現在地を選ばれた理由を教えてください。 村田●夫がネットを使って、山手線界隈とその近辺で競合が少ない10カ所の土地をピックアップし、そのなかから実際に2人で訪れて、直感で決めました。決め手となったのは大きく2点です。1つは、駅から3分と好立地な場所で、新築の医療モールだったこと。もう1つは、保育園が多く、ターゲットとなるファミリー層が多かったからです。 実は、当院のある医療モールが建てられる2年前はこの土地に繁盛していた皮膚科がありました。通院していた患者さんはほかの地域に行かざるを得なくなり困っていたそうです。そこに運よく私たちが入れたので、そういった患者さんの受け皿になりたいと考えています。 随所にコロナ対策を盛り込み患者の安心感につなげる ――開業準備で苦労した点は。 村田●やはり新型コロナウイルスの影響で配送関連が滞ったことが痛手でした。土地を決めたのが2月で、ちょうどコロナが流行し始めた時期でしたので、早めに準備を進めていましたが、それでも6月に頼んだプリンターが9月に届く事態となり、苦労しました。 新型コロナ対策として、設計を変えたところもあります。1つは入口の洗面所です。当初は物置場所にしようと考えていたのですが、衛生面を考えて設置を決めました。もう1つは換気システムです。普通のものより機能が優れているものを選んでいます。そのほか、感染対策として、入口にサーモカメラを導入したり、非接触ということで、カード決済、QR決済に対応したキャッシュレスを導入したりしています。 ―― ハード面でのこだわりはありますか。 村田●予約システムは絶対に入れようと開業を決めたときから考えていました。当院ではコストと利便性を考えてリクルート社の「Airウエイト」を導入しています。これは、番号札をスマホで読み込むと外から順番待ちがわかるシステムで、待合室が混雑しているときは外出が可能です。新型コロナ対策としても期待できます。 ―― スタッフはどのようにして集めましたか。 村田●求人サイトで募集し、面接もオンラインで行いました。現在のスタッフ数は、受付2人、事務1人、看護師1人、の4人です。 ――スタート時の集患は。 村田●チラシを配るくらいで、特別なことはしていません。新型コロナもありましたから内覧会も行いませんでしたが、開業初日に63人の患者が来院したのです。これは嬉しい誤算でした。ただ、私もスタッフも業務に慣れておらず、患者さん全員が初診ですので、かなり時間がかかってしまいました。その後も患者さんはコンスタントに来ていただいています。 今後はHPを充実させていきたいと考えています。 ―― 今後の目標を教えてください。 村田●近隣に皮膚科がないことから、患者さんから「この地域に皮膚科ができてよかった」との声をいただいています。それが本当にうれしいです。「池上だったらコスモス皮膚科がいい」と言ってもらうのが今後の目標です。 村田院長に聞きました 開業Q&A Q1:業者の選定は? 融資などの交渉はコンサルタントに頼みました。機器や建築関連は私と夫で副院長の村田諭孝夫と行い、ネットワーク環境の整備は業者を通さず夫がすべて行いました。 Q2:最も高額な設備は? 炭酸ガスレーザーと、最新の紫外線治療機器です。2つ合わせておよそ500 万円です。 Q3:開業初日の患者数は? 63人です。特別な集患を行わなかったのに、これだけの人が集まったのは嬉しい想定外でした。それだけニーズが高かったのだと思います。 <開業ロードマップ> 2019年9月 開業を決意し、コンサルタント決定 2020年2月 土地決定 2020年9月1日 開業 (取材年月:2020年2月)

【ケーススタディ】40年来の老舗診療所を引き継ぎ 良いものは残したリノベーションを図る

【ケーススタディ】40年来の老舗診療所を引き継ぎ 良いものは残したリノベーションを図る

<取材先>福岡県那珂川市 医療法人水ノ江医院 目次 01:長年の強みは残しつつ新サービスで付加価値を示す 02:小児科のニーズを見込み人員と設備の体制を強化 03:血液内科や緩和ケアで患者と大病院のハブとなる 長年の強みは残しつつ新サービスで付加価値を示す 福岡市南部に隣接する那珂川市は、都心へのアクセスのよさから人口が増加し、2018年10月に旧那珂川町から単独で市に移行した地域です。 そんなエリアで1979年から40年近く、内科、小児科、皮膚科のかかりつけ医として親しまれてきたのが、医療法人水ノ江医院。2017年、水ノ江昭英前院長の病気をきっかけに一時休診したものの、遠縁の大德真也院長が継承し、19年4月より診療を再開しています。 大德院長は、「当院を受け継ぐにあたり、40年の歴史は大きな強みだと考えました。老舗診療所の安心感に、新しい治療やサービスを提供することで付加価値を創出しようと考えたのです」と話します。 その言葉どおり、再開にあたっては、院内の全面改装により新しく明るい雰囲気にリニューアルした一方、同院のシンボルだった赤レンガ造りの外観はそのまま残し、新しい診療所のロゴマークにも、この外観のイラストを起用しています。さらに、新設したホームページでは、トップ画面に同院の沿革を読み物風に掲載したうえで、再開後の新規コンセプトを提示するなど工夫を凝らされています。このように、レトロな雰囲気のなかに新しさを感じてもらえるように、大德院長自らフォントや色づかいなどのデザインにもこだわっているそうです。 診療体制に関しては、最新のガイドラインに準拠し、エビデンスに基づいた治療の提供を掲げ、ホームページなどでもしっかり周知。そして、患者の利便性を追求するため、WEB予約システムの導入や、待合スペースに設置したモニターによる待ち時間の見える化など、IoTによる患者サービスの整備も進めています。 小児科のニーズを見込み人員と設備の体制を強化 さらに、リニューアルにあたり特に強化を図った診療科目が、小児科です。この地域では以前から小児科が不足しており、20年2月時点でも市内の小児科は同院を含め3カ所と少ない。同院についても、前院長の時代に医師会からの要望を受けて小児科の標榜を開始したという経緯があります。 そこで大德院長は、「小児科の需要はかなりあると予想できました。だからこそ、小児科専門ではない私が片手間で診れるものではないと判断し、小児科の専門医を副院長として招へいして、小児科の診療体制を強化しました」と話します。 院内設備も、ベビーカーで来院しやすいスロープや子ども用トイレ、授乳室などを設置。さらに、通常の待合スペースとは別に、「小児科待合室」を設けています。基本的に院内は土足制ですが、「小児科待合室」は安心して遊べるように靴を脱いで入る形式で、遊具や絵本を揃え、プロジェクターでアニメーションを流すなど、随所に子どもが楽しめる工夫が凝らされています。 また、子育て世代をターゲットにLINEの公式アカウントを開設。診療時間の変更などの事務連絡のほか、県の情報をもとにした感染症の流行情報と注意喚起などを配信しています。また、個別のトーク機能で患者から医師へ直接相談も可能。利用者からは好評で、アカウント開設から約5カ月、登録者は270人以上に上るそうです。 これらの工夫が功を奏し、小児科患者の8割が診療再開以降の新患です。 血液内科や緩和ケアで患者と大病院のハブとなる リニューアルから半年、診療所全体の1日当たりの平均外来患者は70〜90人に上ります。小児科以外では、風邪、皮膚疾患などの急性疾患や生活習慣病の継続受診の患者が中心ですが、同院の理念である「子どもから大人、お年寄りまで、健康な方からがん患者さんまで、皆さまに確かな医療を提供します」を実現するため、今後は大德院長の専門である血液内科と緩和ケア内科も強化していく方針です。 大德院長は、「市外も含め周辺に血液内科を診られる医療機関は総合病院以外にないため、外来で対応できる病状の安定した患者さんを地域で診ることができれば、患者さんと大病院、双方の負担軽減につながります。そんな可能性を見据えて、院内で血液検査ができる体制も整備しました。同様に、勤務医時代に診ていたがんや緩和ケアについても、顔なじみの医師に呼びかけながら、徐々に対応できるケースを増やしていきたいです」と展望を語りました。 制作・監修:㈱日本医療企画 (取材・掲載年:2020年2月)

【解説】地域へのPRは投資額より、こまめな発信・かかわりが大事

【解説】地域へのPRは投資額より、こまめな発信・かかわりが大事

<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント 新規患者の獲得、継続患者のつなぎ止めは歯科医院に限らず重要ですが、とりわけ歯科診療の場合、競争も激しいだけに常に地域や患者のあいだでの「認知度」に気を配る必要があります。そこでのポイントは「投資額」より「工夫」が決め手のようです。 目次 01:野立て看板による情報発信 02:待合室の掲示板での情報発信 03:院内報の発行 04:メルマガやブログ、ツイッターなどによる情報発信 05:院内セミナーやイベントの開催 06:院外セミナーの開催 07:お祭りなどへの協賛や参加 貴医院では、地域に向けて何らかの情報発信を行っているでしょうか。近所に突然新しい歯科医院が開業したり、古い歯科医院がリニューアルしたり、競合条件は常に変化しています。 常に選ばれるだけの魅力がなければ、新患の獲得はおろか、継続患者の来院も期待できません。地域への情報発信によって認知度を上げ、選んでもらえる可能性を高くする必要があるのです。 効果的な情報発信ができれば、他の医院より認知度を高めることができ、来院患者数の増加が期待できます。弊社のクライアント歯科医院で実施している種類と実例をご紹介しましょう。 1)野立て看板による情報発信 コンビニの駐車場など目立つ場所に大型の野立て看板を設置し、外科的侵襲のあるインプラントをあえて行わないことを伝えている歯科医院があります。自医院の主張を発信することで、賛同する患者さんが来院する可能性が高くなります。 2)待合室の掲示板での情報発信  院内に、地域の皆さまに解放する掲示板を設置して、地域の方々が自由に音楽会や展示会、運動会などの地域イベントの案内を掲示できるスペースを作っている医院があります。 3)院内報の発行 院内報を毎月発行して、歯科に関する話題、歯科のマメ知識、院内ニュースなどを掲載し、地域の高齢者施設に持参している医院があります。 4)メルマガやブログ、ツイッターなどによる情報発信 メールマガジンやブログ、Instagramなどを通じて、新しい医師やスタッフの紹介、院内イベントの案内、などのニュースを伝えています。 5)院内セミナーやイベントの開催 多くの歯科医院で、インプラントセミナー、矯正セミナーを開催したり、歯と口の健康週間や、クリスマスなどに、子どもの絵の展示会などのイベントを定期的に開催したりしています。 6)院外セミナーの開催 公民館などで高齢者の口腔管理を講演したり、保育士と歯科衛生士が地域の保育園で歯みがき教室を開催したりしています。 7)お祭りなどへの協賛や参加 地域のお祭りやイベントに、スタッフと一緒にお手伝いしたり、踊りチームを結成して参加したりといった地域の催しものに積極的にかかわっています。 地域への情報発信は決して難しいものではありません。口腔内の健康管理や、むし歯・歯周病の予防、口腔疾患と全身疾患の関係など、歯科医師や歯科スタッフには当たり前の内容でも、地域の一般の人々には未知で、知りたいと思っている情報がたくさんあるのです。 認知度の向上対策にはあまりお金はかかりません。しかし、継続することで大きな効果が得られるのです。ぜひ工夫してみましょう。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【インタビュー】感染症対策へフォーカスしたクリニックづくり

【インタビュー】感染症対策へフォーカスしたクリニックづくり

<取材先>山城 大 アルプスこどもクリニック院長 2015年5月に山梨県南アルプス市で開業した、アルプスこどもクリニック。開業準備段階から、小児患者の院内での感染リスクを問題視していた山城大院長が凝らした、「ドライブスルー受付」をはじめとする入念な感染対策は、昨今のコロナ禍でも安心・安全の診療体制につながっています。 目次 01:ドライブスルー外来で他の患者との接触をゼロに 02:勤務医時代からの危機意識がコロナ禍で効果を発揮 ドライブスルー外来で他の患者との接触をゼロに ―― 貴院では2015年の開業時点から、感染対策を目的とした「ドライブスルー受付」や、院内の動線設計などの仕組みを導入されていました。こちらの具体的な流れについて教えてください。 山城 「ドライブスルー外来」は名前のとおり、患者さんがドライブスルーで受付し、順番呼び出しがあるまで車でお待ちいただくという仕組みです。開業当初は呼び出し用として患者さんにPHSをお渡ししていましたが、今は感染予防の観点から、患者さんの携帯電話やスマートフォンに直接連絡しています。 呼び出された患者さんは、診療所に2カ所ある出入口の一方から入り、5つの診察室のうち指示された診察室に入って診察を待ちます。あとは、私が順番に診察室を回って診察し、診察室内で会計や処方せんの受け渡しも済ませ、入った際と同じ出入口から帰ってもらう流れです。2つの出入口から交互に案内するので、診察前後で患者さん同士が院内ですれ違うことはありません。 ―― 他の病院や診療所にはあまりない体制ですが、開業当初、スタッフの反応やオペレーションへの適応などはいかがでしたか。 山城 立ち上げ時は、基本的に事務スタッフが院内受付とドライブスルー受付の両方に対応する形だったので慣れは必要でした。ただ、事前説明やシミュレーションを行ったうえで開業したので、実際の運用でスタッフが困惑するようなことはあまりなかったと記憶しています。あとは、ドライブスルーでも簡単に受付ができるように、診察券をバーコード読み取り式にするなどの下準備や工夫もしてありましたので、特に問題なく現在まで運用しています。 勤務医時代からの危機意識がコロナ禍で効果を発揮 ―― そもそも、どういった経緯でドライブスルーを導入されたのですか。 山城 勤務医時代から院内での感染リスクに強い問題意識があったからです。病院では感染症の小児患者さんもそうではない小児患者さんも同じ待合室で待っているのは珍しくなく、いつ感染してもおかしくありません。それではお子さんを連れてくるご両親も安心できないので、開業にあたっては感染症患者さんと一般患者さんをなるべく分けられる体制を整備したいと思っていたのです。 その際に思いついたのが、ドライブスルーでした。実は最初は、円形の建物の外壁沿いに複数の診察室を設け、ドライブスルーで受付後そのまま車で指定の診察室前に乗りつけ、診察もその後の会計処理もドライブスルーで――という構想がありました。しかし、混雑時の対応が難しいことや、敷地内の車線など設計上の課題も多く、ドライブスルーで受付し院内動線で分離する現在の設計で落ち着きました。 正直なところ、設備投資は多額でしたし、私の家族からも「本当に必要なのか」と言われましたが、やはり当院にとって感染予防は大きな柱でしたし、昨今のコロナ禍にも非常に功を奏しました。 ――新型コロナウイルス感染症の流行下で、どのように功を奏したのでしょうか。 山城 当院も初回の緊急事態宣言直後などは、例年の半分以下まで患者さんが減少するなどの影響がありました。また、流行初期に全国一斉休校が報じられた時点で、「これは普段どおりの診療ではダメだ。待合室に患者さんを待たせてはいけない」と強く思い、思い切って外来受付を「ドライブスルー受付」に一本化する判断を下しました。 コロナ禍前の使用率は3割ほどで、一本化してしばらくは“不要不急”の医療控えもあり患者さんが減少したままでしたが、徐々に「他の患者さんと接触しない」といったメリットが広がっていったのか少しずつ利用される方が増えていき、現在は当たり前に使っていただいています。 ――最後に、これからの貴院のビジョンについて教えてください。 山城 今は「ドライブスルー受付」に一本化していますが、院内の待合スペースについても、お子さんが楽しく安全に過ごせるようにいろいろと工夫しています。そのため、完全にコロナ禍が収束したら、徐々に院内での待ち時間対応も再開できればと考えています。 ただ、患者さん側の意識がコロナ禍前とはもう変わっているとも感じています。当院に限らず、以前のように診療所の中で診察まで待ちたいというニーズがどれだけあるのか。特に、現在の当院に来てくださっている患者さんは、「院内感染の心配がなく受診できる」ことに価値を見出してくださっている方が多いと思うので、感染状況と患者さんの動向を見ながら、どんな体制が患者さんにとって一番良いのか、考えていきたいです。 ――ありがとうございました。 制作:㈱日本医療企画 取材年月:2021年12月 (撮影:武部努龍)

【インタビュー】スタッフも患者も喜ぶ医療施設の空間演出ツール

【インタビュー】スタッフも患者も喜ぶ医療施設の空間演出ツール

<取材先>株式会社アクア・アート 従来、医療施設の設計では「華美に走らず清潔な空間」が求められ、そのコンセプトに沿って画一的にデザインされていました。しかし、現在は、物理的な診療機能だけでなく、患者様の緊張を和らげ、心が落ち着くような空間を提供することが求められています。それにより、医療施設のプランニングは、設備やサービスの充実と共に、施設利用者の「快適さ」の実現が重要です。『アクア・アート』はアクアリウム内の生き物たちが創り出す、美しい自然の景観で「快適で癒しのある空間」を提供します。 目次 01:「アクア・アート」は患者、従業員とのコミュニケーションを促進する 02:医療・介護施設での利用率が高い 03:「アクア・アート」の特徴 「アクア・アート」は患者、従業員とのコミュニケーションを促進する ーー医療施設における「アクア・アート」の設置効果はどのようなことがありますか? 医療施設における設置効果は、まずは「リラクセーション」が挙げられます。生きた水草をふんだんに使用したアクアリウムは、観葉植物と同様にグリーンアメニティとしての効果が高く、設置空間の緊張感をやわらげます。視界に植物が入る事を緑視効果といい、緑がない空間に比して、緑のある空間にくつろぎを感じます。これは患者への効果はもちろん、働く職員の為にも重要なポイントです。 また「アクア・アート」は観葉植物と違い、土壌が露出することがなく、衛生面の懸念がないのもメリットです。そのほか、患者様の待ち時間に鑑賞いただくツールとしても有効です。 「アクア・アート」は生き物たちが織り成す、ライブディスプレーであり常に変化し、見ていて飽きません。待つのが苦手な子供たちも時間を忘れて、親子で見入っています。 また「コミュニケーション」の効果も職員の方からは、高く評価されています。職員と患者様の会話の起点になる事はもちろん、職員間のコミュニケーション促進にも繋がっています。 些細な雑談や会話こそがコミュニケーションには重要で、働きやすい職場は、離職率を下げ、パフォーマンスを向上させます。労働人口が大幅に減少していくなかでも、優秀な職員を確保し続けるためには、職員が働きやすい環境は不可欠です。 医療・介護施設での利用率が高い ーー医療施設での「アクア・アート」の利用状況について教えてください。  当社でサービスを提供中のお客様のうち、約40%が医療・介護施設でのご利用です。医療施設でのご利用は、クリニックから大規模病院まで幅広くご利用をがあります。クリニックでは特に診療科目の偏りもありません。 小児科などに偏向するイメージがありますが、内科、皮膚科、整形外科、心療内科など多岐にわたります。設置ロケーションの多くは待合スペースです。来院された患者がいかに快適に待合スペースで時間をすごすことができるかは、クリニック、大規模病院にかかわらず、施設の印象を分ける重要なファクターであり、「アクア・アート」は効果的な空間演出ツールとしてご好評をいただいています。 「アクア・アート」の特徴 ーーオリジナル商品の「アクア・アート」の特徴について教えてください。           「アクア・アート」は、本物の水草や砂利、熱帯魚を使用した、当社オリジナルのインテリア水槽です。 特色は自然界の生態系を水槽で再現する「バランスド・アクアリウム」です。これは植物を含む生き物たちの食物連鎖を創り出すことで、水槽内環境の劣化を抑え、長く美しいまま景観を維持することができるシステムです。 また、水槽自体がひとつの「生態系」であり、同じ水槽はありません。水槽内の生き物たち、置かれている場所の温度、光量、水質などによって全てが違う個性を持ちます。 当社は「生き物と過ごす豊かな時間」をモットーに、手軽に楽しめるインテリアを提供するために創業しました。首都圏を中心に、サービス展開し、3,500台以上の納入実績があります。 制作:株式会社アクア・アート 取材年月:2022年3月

社会的価値と経済的価値 両方を生み出すことが経営には必要

社会的価値と経済的価値 両方を生み出すことが経営には必要

<取材先> 株式会社メディカル・エージェンシー・ジャパン(サニーウインググループ) 代表取締役 皆川 敬 経済的な価値だけではなく、社会的な価値を同時に生み出すことが、経営者には必須と語る、株式会社メディカル・エージェンシー・ジャパン(サニーウインググループ)の皆川敬代表取締役に話をうかがいました。 地域から必要とされなければ事業はうまくいかない ――介護事業における経営とはどういうものだとお考えですか。  介護事業は公的な財源が入る事業ですので、我々のサービスが地域の資源になり社会貢献を生み出すようなものでないといけないと思っています。そして、事業をしていくうえでは、事業活動を通じて社会的な課題を解決するという社会的価値と、利益を生み出す経済的価値を共に両立させる必要があります。  具体的に言うと、地域社会の高齢者のニーズに応えるサービスを提供して、サービス自体が社会の価値になり、社会的価値を生み出す対価として売り上げや利益といった経済的価値が我々に戻ってくるという仕組みをつくりあげていくことです。  当社のように地方都市で事業展開をしている場合、介護事業所が一つあると、そこで働く人が地域に住み、地域社会を構成していきます。会社の存在が、地域社会存続にもかかるという意識は、重要でしょう。 ――社会的価値と経済的価値の両立を意識したきっかけは何ですか。  そもそも、事業は何のためにやるのかと言ったら、誰かのためになりたいと思ってやるわけです。たとえば団子屋さんでも花屋さんでも同じです。そこを忘れて、自分たちの経済的価値だけを求めると、社会のニーズと乖離します。  これには、当社の苦い経験があります。6年ほど前、本社の近くにサービス付き高齢者向け住宅を建てようとしたところ、近隣住民の一部から強く反対されました。当社としては利用者の確保の見込みもあり、事業としての収益も出ると考えての計画でした。しかし、反対されたことで、地域社会からサ高住は求められていなかったのかもしれないと理解し、開設は断念しました。自社の利益だけを考えてはいけない、ということを痛感した出来事でした。  その後、地域のニーズを拾っていった結果、ご用聞きサービスや移動販売といった介護保険外の事業を始めることになりました。もともとこれらは、当社の住宅型有料老人ホームの中で提供していたサービスです。地域住民からも不用品の処理に悩んでいたり、スーパーが遠いといった相談が出たことから、地域での提供につながりました。地域からも広く受け入れていただいています。  この経験から、地域社会と密接な関係性を築き、持ちつ持たれつの存在になって信用されてこそ、我々のサービスが社会的価値をもつのだと理解しました。介護事業者だからといって介護サービスを提供するだけでなく、介護保険制度からこぼれてしまうニーズにもきめ細かく応えていき、私たちが地域の高齢者のセーフティネットになろうと思いました。 事業内容を広げ、職員のモチベーションにつなげる ――自社の事業展開をどのように描いていらっしゃいますか。  利用者がどんな状態になっても、住み慣れた街で生活し続けられるようなサービスをワンストップで提供する、ということです。一言で言うと、“高齢者のお困りごと解決ワンストップサービス”。我々が提供するサービスのひとつに有料老人ホームがあり、デイサービスがあり、訪問介護・看護がありますが、介護保険制度の内か外か関係なく、何か困りごとがあったら、サニーウイングに連絡すればすべて解決、というサービスをめざしています。  つまり、高齢者の困りごと解決ワンストップ市場という、新たな市場をつくり出したと考えているのです。中小の事業者は、ニッチな市場で事業展開しなければ、生き残りは難しい。ですから、自ら市場をつくりあげていくぐらいの気構えが必要でしょう。ただし、当社がカバーできる範囲は限られていますので、新潟市の中央区・西区を中心に限定して、集中的に事業展開しています。 ――介護保険外のサービスとはどんなものですか。  要介護認定者であっても、介護保険制度内のサービスでは解決しない困りごとがたくさんあります。たとえば、訪問介護サービスに入ろうとした家がゴミ屋敷だったら、社内のご用聞きサービス部門の「ひなた相談所」が対応をしてゴミの片づけをします。エアコンが壊れたから直してほしいと言われたら、直します。自転車のタイヤがパンクして困っていると聞けば、修理します。高齢者の生活の困りごとをなんでも解決できるようにするために、ヤマダ電機など家電量販店などとも提携して、サービス体制を整えているのです。高齢者の利便性を考えると、ワンストップで困りごとが解決したほうが皆様に喜ばれます。  さらに、ヘルパーやサービス提供責任者も、介護保険では対応できない困りごとに対して積極的に関与するようになってきています。それまでは、利用者に相談されても、「介護保険ではできないから……」と対応しないでいたことが、「ご用聞きサービスに確認しますね」と返すことができるようになる。利用者も悩みが解消されるので満足しますし、職員も利用者の悩み解決を支援でき、やりがいを感じられる。  新しい事業を行うことで、業務の幅も広がりますし、職員のモチベーション向上にもつなげることができるのです。 ――介護における経営、社会的価値と経済的価値の両立といったことを職員にどう伝えていますか。  なかなか職員全員に経営の重要性などを直接伝えることは難しいことですね。個別に、コーチングというかたちで一部の人には少しずつ対話し、効果も出てきています。私がコーチングした人たちが、次の人をコーチングするようなかたちにしていきたいです。  経営については全員に深いところまでの理解を求めるのは無理があります。ただ、どういう目的でやっているのか話をすると、目の前が開けたような反応をする人は多くいます。介護保険制度に縛られることなく、利用者のニーズに応えるための方法を考えて、つなげればいいんだとわかったとき、そしてそれを実践して解決したときに、一気に成長する職員の姿を見るのは楽しいものです。

顧客の設定を明確にしたサービスを追及 差別化戦略で生き残る

顧客の設定を明確にしたサービスを追及 差別化戦略で生き残る

<取材先> 株式会社維新ネット 代表取締役 川島 修 社員第一主義を会社の社是とし、そのための介護サービスを提供している株式会社維新ネットの川島修代表取締役。その戦略のもとにある、経営の考え方をうかがった。 共働きの女性が顧客 そこからサービスを考える ――介護事業における経営について、どのようにお考えですか。  介護だからといって特別に考えるわけでなく、どんな事業にも経営の視点は必要だと考えています。そして、経営とは事業継続の方法を考えることです。労働人口も減り、人材獲得が困難な状況下にあって、社員に適切な給与を出せなければ社員は去り、事業継続が難しくなります。それを防ぐには、適切な給与を出せるように利益を出し、待遇を上げ、社員が定着したくなる環境を築いていく。それを繰り返していくことで、事業が継続されていきます。 ――事業継続を図るうえで必要なことは、どのようなことでしょうか。  自社は誰・何のために存在しているのか、目的を明確にすることでしょうか。当社では働く女性を支援して介護離職から守ること、志を共有する従業員を最も大切にする会社であることをめざしています。介護離職が防げれば、国の課題である人材不足に歯止めをかけられます。そうすれば、消費増加、税収増加にも貢献できると思うのです。  そのうえで、私は「未来の自社はこうありたい」というビジョンを定めています。たとえば、2042年を見据えると、高齢者人口は増え、財源が限られるので介護給付費は増えず、一人当たり介護費平均は今よりも下がることが予想されます。実際、2014年以降、高齢者人口一人当たりの介護費平均は右肩下がりです。しかし、内訳を見ると介護費予算が上がっている分野もあり、国の方向性が見えます。当社ではその方向性を踏まえて利益を出し、従業員の年収を2025年までにいくらにするというビジョンを設定しています。そして、毎年平均3%の年収アップについては達成できています。 ――働く女性を顧客ターゲットにしているのはなぜですか。  働く女性、さらに言えば共働きの女性をターゲットとしています。ふつうは利用者を顧客と考えがちですが、それでは差別化になりません。極端な話ですが、「アットホームな雰囲気で家族同様にお世話します」では、みんなと同じ土俵での競争に巻き込まれることになります。そこで、利用者ではなくその先にいる家族に目を向けたのです。  共働きの女性はとにかく忙しく、時間がありません。子どもを保育園に預けるように、要介護者を預けないと仕事を続けられません。仕事を続けたい女性をサポートするために、介護サービスを提供する、という風に自社の事業を定義しました。  そうすると、デイサービスの後、延長保育のような感じでナイトサービスといった発想も生まれます。夜も送迎しますし、泊りもできます。だから残業があっても、安心して仕事をしてください、と言える。そうなると、「仕事をしながらも親の面倒を見やすいデイサービス」として、顧客に訴求できるわけです。 サービスの差別化とともに理念に共感する社員を獲得 ――利用者を顧客としない、というのは大胆な考えですね。  顧客を利用者本人と定義した場合、本人が「デイサービスに行きたくない」と言えば、顧客の意向に反することはできないので、それで終わってしまいます。事業とは顧客の要望を満たすことですから、それが正解になってしまうのです。  一方で、当社の顧客は共働き女性。彼女たちの仕事に支障が出ないように預かることが当社がやるべきことであり、利用者が行きたくないと言ったとしても、いかに通所してもらうかを考えることが仕事になります。そうすることが顧客である働く女性の要望を満たし、理念である介護離職から守ることにつながるからです。  そして、ここが重要な点ですが、結果として、「利用者本人が喜んで通いたいデイサービスをつくらないといけない、そうしないと理念が実現できない」と職員が考え始めることにつながっていくのです。 ――顧客の定義が変わると、戦略が変わり、ほかの介護事業者との差別化になるのですね。  困っている人がいて、ニーズはある。だけど、それに応えるサービスが見当たらない。ならばそれを開発して提供すれば、そこに価値が生まれ、お客さんに喜んでもらえる。その違いが差別化であり、その違いをかたちにしてつなげることが戦略であり、戦略を通じて理念を実現することが私の考える経営です。 ――このような思いを、社員に浸透させるために何を行っていますか。  一番は2018年に私の妻が奈良に就職し、それに伴い、奈良に移住したことかなと(笑)。当時子どもが0歳、2歳、4歳でした。この状況で一番身近な働く女性である妻を支援できないのであれば、事業理念が嘘になってしまう。事業理念と個人の理念が一致していないとそれは本物ではない、と。職員も社長の理念は本気だと応援してくれ、2018年からリモートワーク経営を実践しています。今ではこれを経営理念の一番の宣伝として使っています(笑)。  経営理念に共感し、理念を実現するための仕事をする組織でなければ、この思いは達成されません。そのために必要なことは、採用であると考えています。理念に共感する、してくれそうな人を選ぶことが重要。そこで、多くの媒体で理念を発信し、それに共感してくれた人だけが集まる仕組みにしています。  たとえば、当社ではパート職員の昇給賞与査定も年3回行っています。また、毎月社員の残業時間をチェックし、無理がないように毎月シフトを組み替えています。その結果、定着率が改善し、採用コストも下がりましたし、パート職員の社員への希望率も上がりました。先日もパート職員の娘さんが病気になり毎日の看病が必要になった。それでも会社が好きだから時短で働き続けたいと言ってくれました。社員自身が「会社に大事にされている」と実感できる環境を整えれば、必ず利用者のことも大事にしてくれます。結果として、顧客や利用者の満足度が上がり、稼働率が上がります。  だから、社員を大切にするというのは、経営理念としてとても合理的なんです。 PH1 日帰り旅行と夕食が売りの、デイサービス「みちなかの里 南大泉店」の様子 川島 修 株式会社維新ネット 代表取締役 1975年生まれ。25歳で弁護士を目指し 一次試験に合格するも論文試験前に髄膜炎を発症、高熱が2カ月続く。回復後、物事に対するこだわりを捨て上京し就職、29歳で維新ネットを設立。2010年34歳で介護事業に参入。2018年妻の転職に伴い、「働く女性支援」を家庭でも実践すべく家族で奈良へ移住。東京と奈良を行き来しながらの経営を実践中 株式会社維新ネット 東京都練馬区南大泉5-2-10 大泉クラフトハウス2F 03-5926-3465 i-shin.net/  顧客の設定を明確にしたサービスを追及 差別化戦略で生き残る

【ケーススタディ】スタッフの離職率の高さをコーチング指導を通じたチームづくりで解決

【ケーススタディ】スタッフの離職率の高さをコーチング指導を通じたチームづくりで解決

<取材先>医療法人社団三世会鳩ケ谷クリニック(埼玉県川口市) 高山健彦院長 実際に診療所では、どんなスタッフトラブルが起こり、どう対処しているのでしょうか。各地の診療所にこれまで体験したトラブルとその対応法や、未然に防ぐための予防策について聞きました。 目次 01:主任看護師とそりが合わず新たな看護師が定着しない 02:コーチングを導入しチームづくりを目指す 03:新たな人材にもコーチングスキルを浸透 主任看護師とそりが合わず新たな看護師が定着しない 埼玉県川口市で2008年に開業した医療法人社団三世会鳩ケ谷クリニックは、「患者様とご家族の意向に100%添う」を理念に掲げ、主に介護付き有料老人ホームなどを中心に訪問診療を行っている在宅診療所です。 開業当初、医師は高山健彦院長1人、看護師1人、医療事務1人、総務・営業担当1人の体制でスタートしました。その後、看護師を新たに1人増員して2人体制になり、「看護師の教育は同じ看護師に」という高山院長の方針で、新人看護師の教育は当初からいる主任看護師が基本的に担うこととなりました。 しかし、問題はここからでした。主任看護師と新人看護師の間で業務や申し送りのやり方などで齟齬が出る、主任看護師が仕事を抱え込んでしまうなど、関係構築がうまくいかず、新人看護師が早々に退職しました。その後も新たな看護師を採用するものの、そりが合わず、半年~1年たたずの離職が相次ぎ、2人目の看護師がなかなか定着しない状況が続きました。 「私が看護師の教育にタッチしていなかったのと、主任看護師のスキルが高かったため、むしろ新人がそれに合わせられないこと、新人の技量に問題があると思っていました」と、高山院長は振り返ります。 コーチングを導入しチームづくりを目指す しかし、スタッフが定着しないままでは採用コストもかさみ、主任看護師の業務負荷も増える一方でした。そこで、試行錯誤の末に高山院長が18年に導入したのが、コーチングを使った目標達成に向けて一丸となって行動できるチームづくりです。 「数々の医療機関の人材育成やチームビルディングに携わってこられた、知り合いの人事コンサルタントに講師をお願いしたのです」(高山院長) 具体的には、半年間にわたって月1回、診療終了後にコーチングの院内勉強会を開催しました。高山院長を含む全スタッフが参加し、働くうえで役立つ具体的なスキルや、人間関係を深めるための実践的な考え方などを学んでいったのです。 この勉強会を通じて、自分と他のスタッフそれぞれの院内での役割や立ち位置、同院で求められる医療のあり方などへの相互理解を深めました。それにより、お互いの考え方や経験の違い、得意・不得意などが洗い出され、明確な意思表示や話し合いの大切さを実感していきました。 業務でもその成果は徐々に現れました。たとえば、主任看護師と新人看護師の場合、従来は高山院長が指示した一つの処置に対してもそれぞれが良いと思うやり方が異なったため齟齬が生じ、業務効率の低下や看護師同士の不和につながっていました。 しかし、コーチングを通じて、お互いが具体的に意思表示をするようになり、やり方や方向性をすり合わせながら仕事を進められるようになりました。それでうまくいけば、うまくいった要素を看護師たち自ら振り返ることで、その後の行動も変わっていったといいます。 こうしてコーチングの指導を半年間受けた結果、院内の雰囲気は大きく変わりました。スタッフ同士がきちんと自分の考えを相手に伝えられるようになり、それらを踏まえたうえで、どうすればチームとしてより効率的に仕事ができるようになるのか皆で話し合うようになりました。これにより問題となっていた看護師同士の関係構築も好転し、離職率は大幅に減少したのです。 また、コーチング導入以前は看護師が定着しなかったこともあり、当時のスタッフに業務負荷が集中し残業時間が長く、有給取得率も低い状態でした。しかし、導入後はスタッフ全員で効率的な働き方を考えながら動き、1人で仕事を抱え込まずうまく分担できるようになったため、残業時間は減少し有給取得率も向上しました。労働環境の改善につながったといいます。 院内の業務効率が上がったことで、診療の質も向上し、地域からの評判も上がりました。コーチング導入時に、チームづくりのための具体目標として掲げていた「在宅患者500人」も無事達成し、さらに患者数を伸ばしつつあるといいます。また、こうして培ったコーチングスキルの成果を見せる場として、19年2月にはコーチング大会にも全スタッフで参加しました。自身の取り組みを発表し、自信を深めました。 新たな人材にもコーチングスキルを浸透 現在、同院は新たに常勤医も加わり、医師2人と看護師3人、医療事務2人、医療クラーク1人、総務・営業担当2人――と、大幅な人員拡充を果たしています。新たなスタッフの入職とともに再び奥山講師の指導のもとコーチングを学んでいるといいます。 今後の抱負を高山院長は、「今後はさらに、分院展開も視野に入れてさらに人員の拡充と教育に取り組んでいきたいと考えています。そのためにも、当院のチームづくりの核となりつつあるコーチングを通じて、引き続きスタッフの相互理解を深めていきたいと思います」と語りました。 医療法人社団三世会のスタッフトラブル対策のポイント! ①外部講師のもとコーチングのスキルを全スタッフに徹底指導 ②具体的な目標に向けて、スタッフの相互理解を深め、効率的な働き方を実践 ③新スタッフにもコーチング指導を継続し、院内のチームづくりの核とする 監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2021年2月)

【解説】情報発信から顧客管理まで! 「LINE」で実現できる集患戦略Q&A

【解説】情報発信から顧客管理まで! 「LINE」で実現できる集患戦略Q&A

<取材先>松浦法子 ArtsWeb株式会社 代表取締役 目次 01:FacebookやTwitterなど、ほかのSNSにはない、マーケティングにおける「LINE 」の強みは何ですか? 02:診療所のような小規模法人が、集患・リピーター戦略に「LINE」を活用するには、具体的にどのような運用が推奨されますか? 03:まだ「友だち」ではない、新患になり得るターゲット層へのマーケティングはどうすれば良いですか? Q1.FacebookやTwitterなど、ほかのSNSにはない、マーケティングにおける「LINE 」の強みは何ですか? A.確実にターゲットへ情報を届ける「伝達力」が強み Facebookなどは、システム側で交流の多いユーザーを自動的に選択して投稿を表示する機能があるため、たとえば、1000人のフォロワーがいても、実際に投稿が表示されているのは仲の良い1割程度の可能性が高いです。 それに対し、「LINE」は、「友だち」1000人に「LINE公式アカウント」からメッセージを送れば、全員へ確実に届きます。また、利用者の母数が多いことも強みで、「LINE」を使っていない人はいないと言えるでしょう。 「不特定多数のユーザーに対し情報を広く拡散する」という点では、FacebookやTwitterも同様に強力ですが、「確実に情報を伝達する」という点では、「LINE」に軍配が上がります。 Q2.診療所のような小規模法人が、集患・リピーター戦略に「LINE」を活用するには、具体的にどのような運用が推奨されますか? A.「LINE」で顧客管理する精度の高いマーケティング 「LINE」を始めてすぐの診療所の多くが、「LINE」=メッセージ送信と思い、休診日のお知らせや予防接種の告知などの活用をイメージしがちです。しかし、近年は「LINE公式アカウント」のさまざまな機能を活用し、集患や業務の効率化につなげている診療所も出てきています。 その一つが、「LINE」での顧客管理です。たとえば、予約や問診を「LINE」で行うと、どんな患者が何の目的で受診したかといった患者データが蓄積されていきます。それを分析することで、よりターゲットを絞ったマーケティングができます。 たとえば、内科診療所なら、患者データからにんにく注射など自由診療に関心のある患者だけに絞ってメッセージを送ったり、インフルエンザの予防接種を優先的に受けてほしい小児・高齢者の「友だち」へ先に予約の案内を送るといった使い方をしているところも増えています。 なお、性別や年齢層、エリアなどのセグメント配信は、基本のメッセージ機能でできますが、よりパーソナライズされた情報発信を行いたい場合は、「Messaging API」という機能の利用が必要です。「LINE」自体の基本機能に加え、「LINE」と連動した予約、順番表示などの顧客管理システムなどが可能になります。 このように、マーケティングに役立つ患者データを「LINE」でオールインワンに管理・分析することで、「LINE」からそのまま、直接患者層ごとに合ったアプローチを仕掛けられます。 Q3.まだ「友だち」ではない、新患になり得るターゲット層へのマーケティングはどうすれば良いですか? A.タイムライン上での「友だち」同士の共有を活用 「LINE広告」などへ出向するのも一案ですが、診療所の場合、広告規制ガイドラインなどもあるので、慎重に運用したい方も多いかと思います。そこで、活用していただきたいのが、「タイムライン」への投稿です。 投稿を評価してもらえると、評価した「友だち」の「友だち」へと情報が広がっていきますし、そうした場合、「あの人が『いいね』しているなら信頼できる」といった好意的な受け取りも、期待できます。 また、「友だち」同士は、子どもが同学年など同じような生活境遇であることが多く、共感する内容も同じになることから、反応が良い情報が拡散されやすくなります。今はまだ「タイムライン」に投稿したことがない診療所も、これを機にぜひファン獲得のために取り組んでみてもらいたいですね。 投稿する際は、文章だけではなく内容に関連する画像を添えるのももちろんですが、押さえておきたいポイントとしては、「住所」や「電話番号」など、必ず明記しておくことですね。あとから検索させるのは不親切ですし、スマートフォンで「電話」や「住所」表記をタップすれば、電話がかかったり、マップ表示されたり、患者さんが行動を起こしてくれます。 また、文章は堅苦しくならず、難しい言葉を使わない家族や友人に送るような親しみのある書き方を心がけたいですが、「来てください!」と露骨に書くと、押し売りに感じます。 投稿が多すぎても逆に敬遠されてブロックされるリスクもあるので、注意しましょう。 * これは、「LINE」に限らず、他のSNSマーケティングにも言えますが、SNSは導入してすぐに効果が出るものではありません。更新や変更・改善を繰り返して育てていくものです。 最初は、機能拡充や広告など、多少の投資が必要な場合もあるかもしれませんが、地道に適切な運用を続けられた診療所さんは、1~2年後にちゃんと狙っていた患者層を集めることに成功されています。 「LINE」の導入を悩まれている院長に多い声が、「管理が面倒くさそう、手間が増えそう」などですが、そうではなく、チャット相談なども1日に何十件も来ません。問い合わせも今まで電話でかかってきていたものが「LINE」にシフトすると思えば、電話応対の手間などは減ります。ただ、今まで取りこぼしていた、「電話はしない、『LINE』だったら連絡する」という患者は増えます。 とにかく、「LINE」であれば、患者の「受診したい」と思ったタイミングを逃さず自院に誘導できるという観点からも、「LINE」をうまく取り入れていただきたいです。 制作:㈱日本医療企画 (取材年月:2020年10月)

【解説】戸建てで新規開業する際に押さえておきたい8ポイント

【解説】戸建てで新規開業する際に押さえておきたい8ポイント

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 独立開業の際、一般的に見られるのが戸建開業ですが、文字通り「基盤」となる不動産について見落とせないポイントがあります。土地・建物の所有関係や法律要件、駐車スペース、さらには土地建物取引業者の説明を十分受けているか――。ここではその代表例を解説していただきます。 当事務所では、独立を予定されている歯科医の先生方向けに「不動産」に関するヒアリングシートを用意しています。開業にあたって見落としてはならない8ポイントを挙げ、ご確認いただいています。以下、それぞれのポイントについてご説明します。 目次 01:ビル開業ですか、戸建て開業ですか 02:土地建物の所有関係は、どのタイプになりますか 03:医院を建築するにあたり、さまざまな法律要件を満たしていますか 04:建築基準法の定める建蔽率、容積率で希望する建物が建ちますか 05:必要な駐車スペースは確保できますか 06:信頼できる土地建物取引業者に依頼して、重要事項について充分な説明を受けましたか 07:定期借地権の年数を確認しましたか 08:不動産の取得コストを見込んでいますか ビル開業ですか、戸建て開業ですか 都心部ではビル開業が一般的ですが、都心部を離れると戸建開業が多くなります。以下、戸建開業を前提にポイントを説明します。 土地建物の所有関係は、どのタイプになりますか 地主さんにオーダーメイドで建ててもらい、それを賃借する方式を「建て貸し方式」といいます。建物は先生が建築して、土地は地主さんから借りる方式を借地といいます。そして借地の場合、最近は定期借地権方式という返還時期が定まっている方式が主流となっています。 医院を建築するにあたり、さまざまな法律要件を満たしていますか 例えば、最近は第一種住居専用地域においても、診療所に住居部分を併設しなくとも、建築可能なようですが、地区によっては「建築協定」などで用途規則を厳しく制限している場合がありますので、該当地区の役所の窓口で相談をすることが必要です。 農地の場合、農業委員会の農地転用の手続きが必要で、転用の費用は通常、買主が負担します。 建築基準法の定める建蔽率、容積率で希望する建物が建ちますか 例えば300㎡の土地で、建蔽率50%容積率100%の場合、建物の1階部分の面積は150㎡、総延床面積は300㎡が上限となります。 必要な駐車スペースは確保できますか 郊外では駐車スペースは必須です。1台当たり約13㎡のスペースが必要ですから、例えば5台ですと、約70㎡の面積が必要となります。 信頼できる土地建物取引業者に依頼して、重要事項について充分な説明を受けましたか 土地の所有権や抵当権などの権利関係、都市計画法や建築基準等による制限、各市町村の開発予定等、専門家に調査をしてもらうことが必要です。土地所有者が知り合いだからと、直接交渉をすることもありますが、間に専門業者を入れるほうが安心です。 定期借地権の年数を確認しましたか 定期借地権の場合、契約満了日が来ると立ち退かなければなりません。その年数と銀行借入金の返済計画に矛盾が生じないかといった検討が必要です。 不動産の取得コストを見込んでいますか 取得時コストとして、仲介手数料、登記税、登記手数料などがかかります。取得後には不動産取得税、固定資産税等がかかります。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】正しく自院を把握しているか? 人が“辞める”要因・再分析

【解説】正しく自院を把握しているか? 人が“辞める”要因・再分析

<著者> ㈱日本医療企画 目次 01:自院の存在意義や理念は明確になっている? 02:院内の人間関係本当に風通しは良い? 03:「おカネ」でやって来た人は 「おカネ」で去っていく 04:「困った」スタッフまで抱え込む必要は本当にある? 05:穴埋め採用はその場しのぎになるだけ 06:やりがいや評価のない職場に人は定着しない ①自院の存在意義や理念は明確になっている? 「良い医療を地域の皆さんに届けよう!」この言葉、一見すると自院の方針を掲げているように思えるが、実のところ「良い医療とは何か」「地域の皆さんとはどういった層を指しているのか」「良い医療を提供して、何を実現するのか」など、具体的な内容がわからない。 良い医療を患者に提供するのは医療機関にとってはある意味当然のこと。つまり、他の診療所との差別化にはならず、既存スタッフや新たな応募者が見た際に「こんな医療を自分も提供したい」といった魅力やモチベーションにもつながらない。より各々の考えに合う、明確な診療所像を発信している診療所があれば、そちらに目がいってしまうだろう。 一方、「うちの診療所は、ちゃんと理念を考えている!」という院長も、もちろんいるだろう。しかし、理念はつくって終わりではなく、組織全体で共有し実現のために動いて初めて意味がある。スタッフは本当に同じ理念を見て仕事をしているのか。組織への浸透を怠って院長の独りよがりになっていないだろうか。今一度院長自身の胸に問いかけていただきたい。 ②院内の人間関係本当に風通しは良い? 診療所でスタッフが辞める原因としてありがちなのが、「人間関係のトラブル」だ。院長対スタッフのケースもあれば、スタッフ対スタッフの場合までさまざまだが、一度悪化すると修復・改善はなかなか難しく、院長としても介入しにくいと思われる。 しかし、どんなトラブルにも、悪化する前の兆しはある。以前と比べて、スタッフのなかで孤立している人はいないか、勤務態度は変わっていないか、仕事に関する不平不満が出ていないか――など、日常業務のなかで違和感を覚えるタイミングはあるはずだ。 問題は、院長や事務長などのマネジメント側がそれらを察知し、「どうしたの?」「何かあった?」と踏み込む、または逆にスタッフから相談を受けるようなコミュニケーションを、日頃からできているかだ。 ③「おカネ」でやって来た人は 「おカネ」で去っていく 離職防止のため、給与を上げる、インセンティブを設ける、福利厚生を充実させるといった対策を立てることは珍しくない。しかし、ここで注意しなければならないのは、条件だけで選んで応募してきた人材は、もっと良い条件があれば簡単に辞めてしまう可能性が高いことだ。 同じ条件でも、「職場や仕事に思い入れはないが、他に条件が良いところがないからここで働いている」という人よりも、「やりたい仕事や成長につながるし、頑張った分だけ自分にも返ってくるから」と感じている人のほうが、組織への帰属意識が高いのは当然だろう。 もちろん、スタッフにも生活があるので、雇用条件は悪いよりも良いほうがよいだろうし、昨今の働き方改革などの時勢からも、「24時間働けます」というわけにもいかない。ただ、人材不足に悩むあまり目先の条件先行の採用に陥っていないか、改めて見直してみてはどうだろうか。 ④「困った」スタッフまで抱え込む必要は本当にある? 勤務しているスタッフのなかに、問題のある態度や行動が目につく人がいる。しかし、指摘して逆上されるのは面倒だし、急に辞められて人手が減るのも困るし、他のスタッフからの印象が悪くなったらどうしよう……など、そんな「困った」スタッフに頭を悩ませたことのある院長は少なくないのではないか。 採用時点では気づかなくても、入職後徐々に価値観や働き方の相違などの問題は少なからず見えてくる。面談などでその問題点を指摘し、改善・成長を促すことができるならいいが、診療所からの再三の働きかけにも応じず、自院の方針から外れた行動を繰り返し、職場のチームワークを乱したり、患者からの評判を下げてしまうような〝問題児〟もいる。 ただ、そこまで悪化した場合、むしろそのスタッフが自院に居続けることが院内の空気や体制に悪影響を与え、その環境が嫌になった他のスタッフが去って行ってしまう可能性は十分にある。そうなってしまえば、マンパワー不足を懸念し「困った」スタッフを抱えていたことが本末転倒になってしまう。 院長や事務長クラスの管理職は問題のあるスタッフに対し、自院の方針に則ってきちんと指摘すること、改善が困難な場合は、そのスタッフへ自らの進退を考えてもらうよう伝える決断も、診療所を守るために必要だと自覚し臨むべきだろう。 ⑤穴埋め採用はその場しのぎになるだけ 急なスタッフの離職があった際、誰でもいいから、とにかく人手を補てんしたい、すぐにシフトに入れる人がほしいと、穴埋め的な人材採用をしてしまったことはないか。当然ながら、急場しのぎで採用した人材はなかなか定着しない。悪いときには、そうした穴埋め人材の抜けた穴を補てんするためにまた新たな穴埋め採用を繰り返すという悪循環に陥りかねない。また、そんなときほど自院の方針とかみ合わない人を採用してしまい、入職後苦労するものだ。 ⑥やりがいや評価のない職場に人は定着しない 具体的な理念を掲げ、それに共感したスタッフが集まってくれた。しかし、そこで終わりではない。当初はやりがいを感じて働いていたスタッフも、理念で掲げる医療につながり、患者や地域、社会に貢献している実感がないまま働き続ければ、徐々にモチベーションの低下につながっていく。それを防止するためにも、自院の理念や行動指針に基づいて、スタッフの働きがいや成長への意欲を促し、結果をフィードバックする仕組みを取り入れたいところだ。 以上、診療所で人が〝辞める〟要因を整理してみた。今回挙げた要因もあくまで一部であるが、改善するとしないとでは大違いだ。表のチェックリストと自院の状況を照らし合わせたうえで、次頁からの有識者や先達たちの知見を学んでいただきたい。 (取材年月:2022年3月)

【解説】リフォームは第2の開業!患者の信頼を得る環境を用意しよう

【解説】リフォームは第2の開業!患者の信頼を得る環境を用意しよう

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 開業から一定期間が経過し、患者やスタッフの動線といった実務的な事情をはじめ、雰囲気、果ては土足の可否まで、当初の想定通りに進まないことは十分想定できます。さらなる集患のためにも、「リフォーム」が経営課題に浮上します。注意点を解説していただきます。 目次 01:なぜリフォームが必要なのかを十分に考え、実績がある業者を選定する 02:あらかじめ土足可とするか不可とするか決めておく 03:集患率を上げる 04:カウンセリングスペースの設置 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 歯科医院を開業し一定期間が過ぎたころ、医院のリフォームを検討されることがあります。その場合のポイントを説明します。 なぜリフォームが必要なのかを十分に考え、実績がある業者を選定する なぜリフォームが必要なのかをあやふやにしたまま、「なんとなく現状を変えたい」ということでリフォームしてしまうと、無駄な費用だけがかかってしまうことになりかねません。リフォームすべき医院の問題点を十分に洗い出し、実績のある業者と打ち合わせを行いましょう。 特に入口や玄関周りは集患において大事な場所であり、患者さんから見た医院の第一印象が決まると言っても過言ではありません。利用される患者さんのことを思い浮かべながら入りやすい造りを考えてみてください。 あらかじめ土足可とするか不可とするか決めておく 土足可ですと靴を脱いだり履いたりする手間がかからないため、入口からすぐに受付へ行けます。一方、履き替えはどうしても入口に人が集中してしまいます。 衛生面から考えると、土足は泥などの汚れを院内に持ち込んでしまうため、待合室だけでなく治療室も汚れてしまうため、院内を清潔に保つ工夫が必要です。最近ではコロナの影響によりスリッパに履き替えるのが嫌な患者や、女性の場合のブーツなど履き替えにくいため土足可とされる医院が増えています。紫外線で殺菌するスリッパラックが販売されていますので、衛生面を重視するのであればそのようなものを利用することもひとつです。 土足と履き替えでそれぞれメリットとデメリットがありますので、ターゲットにしている患者さんのことを考え、どちらが利用しやすいかで選んでください。 集患率を上げる 患者数の維持・向上はクリニック経営上非常に大きな課題となってきます。この集患率を下げる要因として建物の観点から考えられるものは1.古い 2.暗い 3.狭いということが挙げられます。 長く診療されている間に、建物の経年劣化が進み、このような状況になりがちです。新規の患者さんだけでなく既存の患者さんの来院も含めて集患率を上げるには、リフォームを行う際に上記の要因を改善することを明確な目的とする必要があります。 カウンセリングスペースの設置 特に自費の治療など高額なサービスを提供する場合、他の患者さんの視線等を気にせずに相談できる環境であれば、患者さんにも納得のうえで自費治療を選択していただくことができます。 大きなスペースは必要なく、狭い空間であっても医師と患者さんが並んで座りディスプレイを見ながら説明することで、比較的短時間で信頼関係を築けます。できれば個室的な空間をつくり間仕切りは天井までとして声が外に漏れないように配慮したいものです。 医院のリフォームは「第2の開業」とも言えます。十分な検討を行い集患率アップにつなげましょう。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】経営を支えるのは「ヒト」!職員が定着する組織を目指そう

【解説】経営を支えるのは「ヒト」!職員が定着する組織を目指そう

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 医院の安定・拡大には職員の力が不可欠であることは言うまでもありません。ただ、歯科医院界はさまざまな業種のなかでも特に人の動きが激しいことで知られます。そこで力のある職員に長く働いてもらうには、組織の風通しをよくするなど、日頃からの経営サイドの配慮が求められるようです。 歯科医院の職員の採用は日に日に難しくなっており、さまざまな業種のなかでも人の動きが特に激しくなっている市場の一つです。ですから、採用後に即戦力として期待できる人材を確保することは、非常に困難なことになっています。せっかく採用ができても、職員が医院の一員として働くということに誇りや喜びを持っていなければ、場合によっては院長の意志に反する行動をとりかねません。長く、そしてより良く働いてもらうには、医院の職員としての基本姿勢や規範、モラルなどをあらかじめ示し、十分な理解をはかった上で就労してもらうことが大切です。 目次 01:経営体質の強化のために 02:労働環境の整備とスタッフ満足度 03:スタッフのモチベーションを高めるには 04:見出し04 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 経営体質の強化のために 経営体質の強化には、スタッフの協力が欠かせません。歯科医院を動かすのはスタッフであり、歯科医院が評価されるのもスタッフ次第なのです。また、立案した診療方針や歯科医院のコンセプトを実現するには、スタッフの確保・育成に注力すべきです。そのためには、次のような意識を持って職員育成にあたることが重要となります。 労働環境の整備とスタッフ満足度 スタッフ満足度を上げるためには医院の労働環境の整備が欠かせません。 ただ、いくら労働環境を整備しても、医院のコンセプトをスタッフが理解していなかったり、また理解していても納得して業務に取り組んでいなかったりすれば、想定される成果は得らません。スタッフの満足度を高めることは、これからの歯科医院経営にとっては必須です。より良い歯科医院経営を行うには、生き生きと働くスタッフが不可欠なのです。スタッフ満足は患者満足につながり、ひいては歯科医院に大きなメリットをもたらします。 スタッフのモチベーションを高めるには モチベーションを高める最も大きな要因は、スタッフの“仕事についての満足”“自分の仕事について認められている”という気持ちです。スタッフに気持ちよく働いてもらうためには、院長のリーダーシップのもと、法律を遵守した基本的な労務管理を実施するとともに、モチベーションを高めるための取り組みが求められます。 スタッフを動機づけるには効果的なインセンティブの設定が必要です。例として ・毎月患者数の目標値を提示し達成したときは大入り袋を出す ・半年ごとに患者数目標を設定し1割オーバーすると賞与を1割、増額する などです。 患者数を増やすための対策を実行するとスタッフに負荷がかかるため、院長とスタッフ間のコミュニケーションを良好に維持し、組織の風通しをよくしておく必要があります。朝礼やスタッフミーティングなどを通じて目標の達成度などを発信する、また目標を達成した時には食事会などのイベントを行うなどの非公式なコミュニケーションも有効となります。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】「所得は高いのにお金がない…」を防ぐ キャッシュに着目して計画的な経営を!

【解説】「所得は高いのにお金がない…」を防ぐ キャッシュに着目して計画的な経営を!

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 患者も増え、所得も安定しているにもかかわらず、思ったほどお金がない……そんな「勘定合って銭足らず」な事態はしばしば起こります。こうした事態を防ぐためにも、支払いや生活資金も踏まえた収支シミュレーションを描き、対策を講じる必要がありそうです。その進め方を解説していただきました。 医院経営を続けていくと、所得は高くなり多額の税金を納めているものの、思ったほどお金が残らないということがしばしば起こります。そこで重要になるのが「キャッシュ(現金)」の管理です。今回は利益だけではなくキャッシュに着目した経営について説明します。 目次 01:収入は多いが支出も多い 02:経営シミュレーションの作成 03:経営シミュレーション作成のSTEP 04:見出し04 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 収入は多いが支出も多い 歯科医師の先生は、平均と比べて収入は比較的多いですが、支出についても平均と比べて大きくなることが少なくありません。もちろん、所得が増えたことに伴って税金が増えるという要素もありますが、気持ちに余裕ができ、金遣いが荒くなることが大きな要因です。子どもの学費・医院の設備投資・引退後の生活資金……。考えなければいけない事項は多岐にわたります。 経営シミュレーションの作成 ・毎日頑張っているが、思ったほどお金が残らない ・思い通りの人生をおくるためには、どのくらいお金が必要なのか? ・どのくらいの売上高まで頑張れば、必要なお金が残せるのか? というようなことでお困りの先生は結構多くおられます。これを解決するために経営シミュレーションの作成が有効になります。 経営シミュレーション作成のSTEP 経営シミュレーションの作成については以下のようなSTEPになります。 STEP1 現状把握 「今の状態で残っているお金はいくら?」を算出します。 STEP2 ライフプランから必要資金を出す ライフプランから、老後資金・教育資金・設備資金・住宅資金などの様々な必要資金を検討し、「そのためには、今年1年でお金をどれだけ残さなければならないのか……?」を算出します。 STEP3 ギャップを見つけて対策を練る 「今年1年でお金を残すために、どれだけ売上高が必要なのか?」 「医院経費や生活費をどれくらい使えるのか?」 などをライフプランから逆算してシミュレーションし、経営計画を作成します。 STEP4 図解で直感的に理解する シミュレーション結果を図解表示し、会計の知識がなくても簡単に理解できるようにします。経営シミュレーションを作成することにより、院長自身のありたい未来を思い描くとともに、それに向けてどう進んでいくかをご検討いただきたいと思います。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【インタビュー】これからの首都圏での事業展開はビル診か、戸建てか!?

【インタビュー】これからの首都圏での事業展開はビル診か、戸建てか!?

<取材先> 髙橋邦光 株式会社ラカリテ 代表取締役 ×  宮本潤一 医療法人社団邦潤会 わかば宮本医院 理事長 目次 01:トレンドは都心回帰 独自性のある診療所が生き残る 02:如何様にもできる 戸建てのほうがメリット高 03:立地条件が揃う医療モールでの開業もひとつの手 トレンドは都心回帰 独自性のある診療所が生き残る ――今回は、「これからの首都圏での事業展開はビル診か戸建てか⁉」といったテーマです。まずは自己紹介をお願いします。   髙橋 年間約50件、医療に特化した建築設計監理・内装設計施工を行う株式会社ラカリテで代表取締役を務めています。これまで800~1000件、主に診療所の場所選定から建築・内装設計に携わっています。   宮本 医療法人社団邦潤会の理事長を務めています。診療所開業は2013年1月で、千葉市若葉区にわかば宮本医院として開設しました。建物自体は、父が45年前に建てたRC3階建ての住居併設有床診療所です。父が亡くなり7年ほど閉院していましたが、地域ニーズに沿った医療を提供したいと、リフォームして開業し、現在に至ります。 私は当初から分院展開を考えており16年には法人化。17年には1日の患者数100人が見えてきたのをきっかけに本格的に分院計画を推進。翌18年に場所を選定、20年5月に幕張のテナントで分院を開設しました。プライマリ・ケア医として総合内科を主体としながら、今日的な医療ニーズに応えるため、CTスキャナを導入し認知症診療に積極的に対応。心療内科、精神科も標榜しています。   ――なぜ分院場所を幕張にしたのですか?   宮本 本院と分院の相互に交通の便がよく、かつ診療圏がギリギリかぶらない場所、ということで選定しました。当法人では、事業の継続性を担保するため、医師を含めた職員を増やし、誰かが休んでもカバーできるなど、個人の負担を減らす取り組みをしています。本院と分院は、電車で約30分、車では15分程度となっており、必要時には職員の行き来も可能です。 また、幕張北口は区画整理事業が行われており、タイミング良く駅前のテナント計画があったのも決め手です。駅から徒歩2分という立地で患者さんの通院の便もよく、遠方からの来院もあります。 ――株式会社ラカリテでは開業場所の選定にも携わっていますが、選定の流れやトレンドがありましたらお教えください。   髙橋 当社は私を含めて営業5人が場所探しから院長のお手伝いをしています。相談に来る院長は場所を絞りきれていないケースが少なくありません。選定の流れは、まず担当者が診療圏を見直し、近隣の競合となる診療所を調べます。たとえば、競合相手の開業日や診察日、どういった機器を揃えているか、院長の年齢――などです。また、薬の卸を行う業者からも情報を得て、地域全体の物件情報・診療圏調査結果を院長に伝え、場所選定についてアドバイスします。 トレンドに関しては、一昔前までは都心部は競合が激しいため、郊外のほうが人気が高かったのですが、最近の傾向としては、郊外でも競合が多くなってきたため、都心回帰の動きが出てきました。都心は人も多く、ニーズが高いので、そこで勝負する院長が増えています。ただ、何か特徴を持つ診療所のほうが生き残っている印象があります。たとえば、整形外科でもスポーツを専門にしていたり、宮本先生のように内科に心療内科や精神科を組み合わせたりするなど、独自性を打ち出して勝負する先生が多いです。   ――家賃相場についてはいかがでしょうか。   髙橋 これまでは都心でも坪単価1万5000円が限界で、それ以下が相場だと言われてきましたが、現在では坪単価2万円でも坪数を減らしてミニマムに開業する院長が増えています。たとえば、50坪で坪単価2万円だと月100万円の家賃ですが、35坪に抑えて月70万円にして家賃を抑えるケースです。ただ、都心でビル診での懸念事項は、患者が増加した場合、拡張性がゼロだということです。 また、流行る診療所の要素として、駅近物件のほうが患者の認知度も高まるため、良いとされていますが、実際、駅から離れた住宅街でも流行っている診療所もありますので、一概には言えないといったこともあります。最近では、ショッピングセンターやスーパーマーケットの上階に構えた診療所が流行るケースが増えています。 如何様にもできる 戸建てのほうがメリット高 ――宮本理事長は本院が戸建てで、分院はビル診をされていますが、どちらがよりメリットが高いとお考えでしょうか。   宮本 まず、ビル診か戸建てかと考える前に、「賃貸か、持ち家か」という視点が必要かと思います。資金的な余裕がある場合、持ち家のほうがあらゆる面でメリットが多いです。理由はカスタマイズが可能だからです。診療所を運営していくなかで、ニーズの変化に施設を対応させたいということは多々あります。たとえば、患者増のため待合室を広くしたい、新しい検査室を設けたいなどといったことです。そういったなか、持ち家だとスペース的にも余裕があることが多いと思いますし、改築や増築が比較的自由にできます。 一方、賃貸だと、そもそも外側は変えられませんし、開業時に無駄なく必要最小限のレイアウトをすることが多いでしょうから、後から変更を加えることは大変だと思います。持ち家であるがゆえの自由度の高さは、そのまま医療ニーズの変化への対応柔軟性につながると考えます。 実際、戸建て持ち家である本院では、新型コロナの感染症対策として、敷地内の駐車スペースの転用を行いました。具体的には、窓つき倉庫2個を設置し、そこを感染症対策待合室としたのです。そういったことは、賃貸のビル診だと難しいでしょう。ただこれはある一面であり、持ち家戸建てがすべての面で絶対に良いかというと、状況によっては違ってきます。たとえば、メンタルクリニックの場合は、駅近のビル診がいいと思いますし、整形外科だと駐車場や院内スペースに余裕があるロードサイドの戸建てが適していると思います。「戸建てか、ビル診か」ということを先に考えるより、患者や診療のニーズによって、おのずと選択肢が決まってくると思います。   髙橋 ビル診と戸建てを単純に比較すると、圧倒的に戸建てのほうがメリットは高いです。それは先ほど宮本先生がおっしゃったように、自由に設計ができるからです。トイレを2つ設置したい、診察室を多くしたいなど、ある程度の要望には応えることができます。一方、一般のテナントでのビル診だと、排水位置が決まっていますので、トイレはその位置からおよそ半径数m以内や、流し台も勾配が取れる場所に設置しないといけないなど制約が多い。ですので圧倒的に戸建てのほうが好きなように設計ができます。 ただ、土地を購入するのは財政的にものすごく負担となりますので、戸建てが良いとなると必然的に郊外になります。その際、土地勘がある先生だと問題はないですが、土地勘がなくて落下傘開業となると院長にとって結構勇気がいることだと思います。 ――新型コロナ対策として駐車場に待合室をつくったほかに、リフォームした点はありますか。   宮本 本院はひとまず外来診療スペースのリフォームをして開業し、それから必要に応じて逐次追加リフォームしてきました。父の代のもともとの構造は、1階が外来、2階が病室、3階が住居でした。開業時のリフォームは資金的な問題もあり、1階部分のみを行ったのですが、その後、独立した事務室が必要になったり、スタッフの休憩室・更衣室の整備が必要となったりなどしたので、2階の元病室をリフォームしてその場所にあてました。 さらに、内視鏡検査に対応するため、追加リフォームをし、2階の廊下やトイレを綺麗にし、内視鏡の前処置室と検査室を設けました。内視鏡の前処置室はその後、メンタル専門外来の診察室としても流用しています。このようなことができたのも、戸建ての持ち家だったからだと思います。ニーズに合わせた診療体制を敷くことができるのも、戸建てのメリットと言えるでしょう。 立地条件が揃う医療モールでの開業もひとつの手 ――近年では医療モールや医療ビルが都心で増えてきました。そういったテナントについてのご見解をお聞かせください。   髙橋 10年程前は医療モールや医療ビルは診療所のメッカとして人気は高かったです。主導しているのが薬局ということで一時期、敬遠する傾向はありましたが、最近になってまた開発が進んでます。立地も駅近など競合はありますが、それでも有利な好条件の場所にあることが多いので、医療モールでの事業展開も良いと思います。 また、先ほどのテナントでの設計の部分でデメリットの話がありましたが、医療モールや医療ビルは診療を行うために造られているため、床が下がっており、どこでも流し台やトイレを設置できます。電気の容量もしっかり整備されているので、CTやMRIは別ですが、レントゲンなど一般的な医療機器であっても設置できるところがメリットです。ですので、開業に必要な内装コスト的には、雑居ビルよりは良いと思います。 宮本 医療モールでの開業は考え方次第だと思います。メンタルクリニックや在宅専門でしたら、物件の探しやすい雑居ビルの2階以上などでも可能でしょう。しかし、水回りの配慮が必要な診療科や、重装備の検査機器が必要な診療科でしたら、はじめから診療所向けに設計されている医療用テナントでないと難しい面もあると思います。 一方、地域特性があるとは思いますが注意点は駐車場です。医療モールはある程度の駐車場は確保されているとは思いますが、受診者の多い時間帯が重なって駐車場の取り合いになる可能性もあり、近隣のコインパーキングなども含めた確保状況の確認が必要です。駐車場を飲食店やスーパーなどと共有する場合は、混む時間が分散するのでそういう面では有利と思います。   ――ビル診よりも戸建てのほうがメリットがありそうですが、そのときに注意すべき点がありましたらお教えください。   宮本 開業をご検討の先生ご自身がどういった診療を今後していきたいかという考え方次第です。いわゆる町のお医者さんとしプライマリ・ケアをやっていきたいと思うのであれば、持家の住宅併設診療所をつくるのが良いと思います。ただしメンタルクリニックの場合は住居併設はやめたほうが無難でしょう。内科の一般診療を行う先生でしたら、その場所に住むことは“強み”になると思います。 最近ではそれを敬遠する先生も多いようですが、やはり“町のお医者さん”というのは、地域住民に知られているその土地の人、ということが重要だと肌で感じています。今の私は幕張の分院長をやっていますが、診療所の入っている建物のマンション部分に事務所兼用なのですが1室を借りています。そしてそこから週2回程度は近所の居酒屋などに飲みに行きます。本院を開業したときも同じことをしました。そうやって顔と名前を少しずつ知ってもらい、町のお医者さんになっていき、口コミで来て下さる患者さんが増えてきました。 どんな職業でも同じだと思いますが、最初はそういった地道な営業活動は重要なのです。また、ハードウェアの面で気をつけなければいけないのが、戸建てで一から診療所を創る場合、夢を詰め込みすぎてしまう危険性です。機能や仕様を欲張ってお城みたいなものを創らないよう、自制心を高めることが重要です。医師だと信用があるため、銀行からの融資はいくらでも借りられると思います。建物や設備などに借入で何億もかけてしまうと、事業が目論見どおりに展開できればいいですが、うまくいかなかったときに大変なことになります。本当に必要なものをまずは揃え、将来の発展については少し余裕を持たせて拡張性で対応するのが無難です。 それはスタッフも同様で、患者が増えてきたら、追加雇用していけばいいのです。何でも自由にできる持ち家戸建ての場合は、やり過ぎてしまうことが大きな落とし穴だと思います。   髙橋 私も宮本先生と同様、戸建てにするなら、住居併設のスタイルをおすすめします。ただ、私がよく耳にするのは、医師の奥様からNGが出るケースです。そこはよく家族で話し合う必要があると思います。自由度の高い戸建てだと、建てた後のある程度の拡張性が見込めますし、スタート時から少し拡張したぐらいのものがつくれるといった点からも戸建てのほうがいいと思います。 都心では、テナントビルで小規模での診療所が多いですが、少し流行ってしまうと、患者さんが入りきらないことで頭打ちになってしまい、患者の待ち時間が長くなる→結局口コミサイトに悪評が出てしまうといったケースも見受けます。都心だと競合も多いですから、口コミを見た患者が他の診療所に流れてしまう場合もありますので、あまり無理して都市部で出す必要はないと思います。 制作・監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2020年2月)

【解説】「診療方針」「雰囲気」はもちろん「経営・管理の仕組み」も承継する

【解説】「診療方針」「雰囲気」はもちろん「経営・管理の仕組み」も承継する

<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 事業承継で引き継ぐのは患者やスタッフ、設備など目に見えるものだけではありません。医院が育んできた雰囲気、そして経営を支えてきた経営・管理のシステムも承継の対象となります。患者、スタッフの安心感を得るためにも、こうした「目に見えないもの」にも配慮することが大切なようです。 目次 01:「診療方針・診療スタイル」の承継 02:「医院の雰囲気」の承継 03:「経営の仕組み」の承継 04:管理の仕組みの承継 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 01:「診療方針・診療スタイル」の承継 事業承継が行われた場合、今まで通っていた患者が全て来院するとは限りません。スムーズの承継するために、これまでの医院のやり方を一定程度、踏襲する必要があります。 そのため、診療方針や診療スタイル、治療技術レベルが合うかなどをお互いにすり合わせておくことが重要です。親族への承継の場合や、勤務医に承継する場合は「経営者が変わった」と認識されることが少なく、患者は比較的継続して来院します。 M&Aで、新たな歯科医院として「診療方針」を掲げる場合は、患者は新しい院長の診療を観察します。その上で、受け入れられるようであれば来院を継続し、そうでなければ離れていきます。 02:「医院の雰囲気」の承継 医院の雰囲気をつくっているのはスタッフです。患者から通い続ける医院は、治療への評価だけでなく、スタッフの言葉づかい、気づかいが素晴らしいことを高く評価されているのです。 経営者が変わったとしても、同じスタッフがこれまで通りの接遇を続けていれば、患者は継続して来院します。一方でスタッフが入れ替わってしまえば、それまで患者が気に入っていた雰囲気は失われ、患者が離れていく原因となります。 03:「経営の仕組み」の承継 院長が一人で頑張っている歯科医院か、スタッフも一緒に経営にかかわっている歯科医院かにより、その後のその医院の成長が変わってきます。 朝礼・夕礼やミーティングなどのコミュニケーションの仕組みがあれば、それを活かし、後継者の方針を浸透させることができます。業務マニュアルや教育マニュアルなどがあれば、その仕組みを活かすことで人材の育成ができます。 あらかじめ経営の仕組みができていれば、後継者はスムーズに経営面を引き継ぐことができます。 04:管理の仕組みの承継 後継者が承継する際に考えておきたいのが、経理や給与計算などの管理業務です。 M&Aで医療法人が買い取るのであれば関係ありませんが、後継者が初めて経営者になる場合は、必ず押さえておいて欲しいポイントです。 経営するためには、医療を提供する以外に、経費を把握し、支払いを行い、スタッフの労働時間を把握し、給与を支払わなければなりません。後継者自身が管理をするのか、配偶者に担ってもらうのか、誰か担当スタッフを雇うのかを決めておいたほうがよいでしょう。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】引き継いだあとのトラブルを防止するチェックリスト

【解説】引き継いだあとのトラブルを防止するチェックリスト

<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 一般的に、事業承継で設備を引き継げるメリットとして「引き継いだその日から診療ができる」点が挙げられます。親子承継ならば、当該設備についての細かなチェックもかなり省略できそうです。ただ、「診療内容」については親子の間で確認しておく必要があるようです。 歯科医院の価値は、「事業価値(事業としての生み出される利益)」と設備などの「資産価値」の2つから決まってきます。後者には、土地建物の他にも、医療機器や事務機器、家具など、さまざまなものがあります。ここでは、「設備」について取り上げます。 事業承継で設備を引き継ぐメリットは、引き継いだその日から診療ができるということです。 設備投資を継続的に行っている医院を承継する場合には、新規開業してすべて揃えるよりもはるかに安価で必要な設備を手に入れることができます。内装も定期的に更新されているのであれば変える必要もありません。 一方で、設備投資を行っていない医院を承継する場合は、必要な設備を追加で購入したり、内装を更新したりする必要があります。同時に、更新するために診療を休まなければなりません。 設備を引き継ぐ際の注意事項としては、引き継ぐ設備や医療機器・備品については、すべてリスト化し、それぞれの現在価値(もしくは資産台帳の簿価)を確認します。その上で、引き継ぐ予定の機械・器具・内装を確認し、不具合がないかをチェックします。 <資産となる項目> ●土地・建物もしくは内装工事(設備工事、外構工事などを含む) ●医療機器や事務機器 ●医療法人の場合:出資金 ●車両   ●借入・リース等の債務 ●材料・備品等の在庫 ●賃貸の場合:敷金、保証金 ●印刷物・広告・HP そのため、継承にあたっての医院見学の際に、そのチェックを承継する側と後継者が一緒に進めておくべきです。そうすることで、引き継いだ後のトラブルを防止することができます。 その他、医療材料の在庫も必ず確認しましょう。特に高価なインプラントなどは、後継者が利用する予定があれば問題ありませんが、利用しないのであれば対象から外すと取り決めておきましょう。 リース設備などの負債の引継ぎをどうするかに関しては、レセコンなどについて、当事者だけで話を済ませるのではなく、リース会社に契約状況と残債(未払い金)を確認しておきます。その上で残債を引き継ぐ場合は、残債部分は売買価格から差し引くことになります。 親子承継の場合は、設備についての細かなチェックは必要ありません。むしろ、今後の設備投資についての方針が問題となります。 「先進的な治療方法をやりたい後継者」と「無駄な設備投資はさせたくない前院長」という構図になってしまうと、トラブルのもととなりがちであることも付け加えておきます。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】患者を引き継ぐ際に確認したい「大先生」と「若先生」の“やり方”

【解説】患者を引き継ぐ際に確認したい「大先生」と「若先生」の“やり方”

<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 歯科医院にかぎらず、医療機関で親子承継がある場合、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合があります。この時に注意したいのが大先生と若先生の診療スタイルです。患者の多くは大先生のスタイルに馴染んでいると考えられます。スタイルや方針を変えるにしても、十分な移行期間を設ける必要がありそうです。 競争が激しい歯科医院の環境では、新規開業よりも、患者を引き継げる事業承継のメリットは大きいと言えます。経営が順調な医院を、承継者が適切に承継をできれば、一定の収益と認知度、ブランドを獲得することができます。 注意すべきは、開業から長年経過し、集患に力を入れていなかった医院では、患者が高齢化しており、新患が少ないことです。 それでも、患者を引き継げることは大きなメリットなのは、本来なら、開業から広告宣伝を行い、徐々に認知度を高め、ブランドイメージを確立していくところを、ショートカットすることができるからです。 しかし、「患者が高齢化している」「自分の診療方針に合わない患者が多い」といった場合は、患者の引き継ぎがかえってデメリットになることもあります。 そうならないためにも、承継する側と後継者の診療方針が合っているかを事前に確認しておきましょう。患者を引き継ぐ際には、前院長が後継となる医師を紹介したり、連名のあいさつ状を発送したり、来院者のカルテ内容を引き継いだりすれば、患者は安心します。 引き継ぎがうまくいかないと、新しい院長へのクレームにつながりかねません。たとえば、自由診療の保証期間など、継承に当たってはっきりさせておく必要のある問題は、新しい院長になってもそのまま引き継ぐかどうか、事前に取り決めて告知しておくことも大切です。 開業から長年経過している歯科医院は、患者数は多いものの、新患が少ない場合があり、将来的に患者が減っていくことが容易に想像できます。実際の新患数だけでなく、ホームページの内容が適切か、SEO・MEOの対策を打っているかどうかを必ず確認しましょう。打たれていない場合には、ホームページを作り直し、SEO・MEO対策に取り組みましょう。 親子承継の場合、患者は、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合もあると思います。大先生についている患者は、大先生と若先生のやり方を比較します。診療方針が一致している場合は問題ありませんが、異なる場合は患者から「大先生とは違う」と言われ、患者が離れるということが起こります。そのため、一定期間は引き継ぎ期間を設け、徐々に方針を変更するのが良いでしょう。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】スタッフも承継するなら「処遇は変わらない」を明示しよう

【解説】スタッフも承継するなら「処遇は変わらない」を明示しよう

<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 事業承継において「スタッフもそのまま引き継ぐ」ケースはしばしば見ることができますが、特に親子承継の場合、「先代の頃のやり方」が強く残ることが想定できそうです。患者の安心感を得やすい一方、後継者としてはやりづらい面もあるようです。注意点を解説していただきます。 歯科医院を承継する後継者にとって、あらかじめ患者の個性や性格が分かり、診療の流れを熟知しているスタッフを譲り受けられることは大きな魅力です。院長が変わっても同じスタッフが継続して勤めてくれれば、患者も安心して来院できます。 事業承継にあたり、スタッフを承継できるメリットは、①スタッフを採用する費用がかからない、②スタッフを教育訓練する費用がかからない、③採用教育の時間を削減できる、④患者との関係性ができているため、経営者交代による患者離れを防げる――という点が挙げられます。  デメリットは、①前院長のやり方を変えにくい、②スタッフの在職年数が長い場合、退職金の支払いが高額になる(隠れ債務の存在)――という点が挙げられます。 その中で、スタッフの処遇条件、退職金、有給の付与をどうするのかなど労務の問題をあらかじめ取り決めておくことはとても重要です。 明確な取り決めをせずに承継すると、新しい処遇にスタッフが不満を持ち、退職することが容易に考えられます。そうなると、スタッフ補充のために新たに採用・教育コストが発生するため、後継者は不満を持ちます。 したがって、事業を承継する側は、スタッフの退職リスクが少なくなるように手を打たなければなりません。 たとえば、「『処遇は少なくとも半年から1年は変わらない』という取り決めをする」「前院長が半年から1年程度残り、患者の引き継ぎやこれまでのやり方を伝える」という方法があります。 一定の引き継ぎ期間を設け、これまでのやり方やスタッフ、業績について後継者が理解をしたうえで、変更すべきものは変更するのであれば、理解も得られやすくなります。 合わせて、雇用契約書などの取り交わしができていないのであれば、この機会に取り交わし、安心して働ける環境を提供する経営者であることを示すのがよいでしょう。 親子承継の場合、処遇を変更しなければ、スタッフはそのまま勤めてくれることが多いものです。ただ、長年勤めているスタッフが後継者である新院長を子どものころから知っている場合、お互いにやりづらかったり、新しいやり方の導入にスタッフが消極的だったりすることが考えられます。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】定款変更の場合は数カ月の余裕を見よう

【解説】定款変更の場合は数カ月の余裕を見よう

<著者>渡辺貴之 ネットワーク渡辺税理士法人代表社員 公認会計士・税理士・行政書士・コンサルタント 親子承継の際には「法務局」「都道府県」「保健所」「厚生局」でそれぞれ、変更手続き・届け出が必要になります。法務局への理事長の登記変更は真っ先に実施する必要があるようです。それぞれの機関にも、遅れることなく対応を進めたいものです。 目次 01:「法務局」に対する登記の変更 02:都道府県」に対する理事・理事長変更の届出 03:「保健所」に対する管理者の変更 04:「厚生局」への届け出 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 医療法人を管轄する機関は基本的に「法務局」「都道府県」「保健所」「厚生局」の4つであり、「親子承継」の際にはそれぞれの機関への対応が必要となります。 1.「法務局」に対する登記の変更 親子承継にあたって理事長を変更していく際には、法務局に対して理事長名の登記変更が必要となります。これは理事長変更後、すみやかに実施してください。 2.「都道府県」に対する理事・理事長変更の届出 医療法人を規制する医療法は都道府県の管轄となります。理事長変更については、「医療法人役員変更届」の都道府県庁担当窓口への提出が必要となります。手続きは簡易的なもので、この変更届は「遅滞なく」提出となっており、変更ために事前に準備しておくものはあまりありません。 ただ、「事業承継の際に法人名を変更する」「決算月を変更する」など医療法人の定款に記載されている項目を変更したい場合は注意してください。医療法人の定款記載事項を変更する場合には、事前に都道府県の認可を得なければならず、変更には数カ月を要することが一般的です。 3.「保健所」に対する管理者の変更 医療法人で運営をされている場合、開設者は医療法人、管理者は先代となっている場合が多いでしょう。事業承継の時には管理者を先代から後継者に変更する手続きをします。 なお、保健所ごとに見解が若干分かれるところですが、私がこの記事の執筆にあたって保健所に確認したところ、「当該変更に伴う新規指導はない」との回答を得ております。 4.「厚生局」への届け出 保健所への管理者変更にともない厚生局への届け出も実施します。医療法人の親子承継において出資金の承継が大きな議論となりますが、出資金の移動に伴って外部機関へ届け出を行う必要はありません。 ただし、誰がいくら所有しているのかが不明になりやすいため、この際に改めて書面を作成し保存することが必須です。

【解説】承継と同時の引き渡しは不要だが早めのシミュレーションが大事

【解説】承継と同時の引き渡しは不要だが早めのシミュレーションが大事

<著者>渡辺貴之 ネットワーク渡辺税理士法人代表社員 公認会計士・税理士・行政書士・コンサルタント 親子の承継時に慎重に進めるべき案件の一つが土地・建物の引き渡しです。そもそも不動産は金額が大きくなるだけに、相続対策をはじめさまざまな観点から対策を練る必要があるようです。早めにシミュレーションし、スムーズな承継を目指しましょう。 「親子承継において、診療所の土地・建物を同時に後継者へ渡す必要があるか」との質問を受けることがあります。それに対してお答えするには、まず、「誰が診療所の土地建物を所持しているか」が、ポイントになります。先代や先代の配偶者が個人で所有しているか、医療法人が所有しているかを、近くの法務局で登記簿謄本を参照・確認してみる必要があります。 土地・建物の所有変更等はすべて法務局へ登記をしなければなりません。登記簿謄本での情報が、第三者に対して所有権を主張できる情報となります。 しかし、先代の認識と、登記簿謄本での所有者が違うことがあります。 医療法人設立時に土地・建物を医療法人に拠出したにもかかわらず、その際に所有者変更の届け出を法務局に出していないことが原因である場合が多いのです。このようなことがあれば、即座に取引のある司法書士等に確認をしてもらい、登記を変更してください。 次に、医療法人が診療所の土地・建物を所有している場合は、先代から後継者に当該土地・建物を承継する必要はありません。医療法人の出資金を先代から後継者に承継すれば、実質的に土地・建物も承継されるため、それで手続き完了となります。 一方、個人で所有している場合はどうでしょうか。 事業承継時において「診療所の土地・建物を後継者に渡さなければいけない」ということはありません。先代が個人として保有し続け、後継者は医療法人を通して先代に賃料を払い続けるケースも多くあります。 先代としても、退職し承継した後に収入がなくなるのが心もとないため、このように対応することで収まりがよくなります。 さらに、先代の相続時に当該土地・建物は、相続税法において小規模宅地の特例制度を利用することで相続税評価額を低くすることができます。 ただし、さまざまな条件もありますので、先代の相続対策のシミュレーションを描き、土地・建物を個人でどうするのかを決めるのが一般的です。 不動産は大きな金額になりやすく、また上記以外にもさまざまな論点が関係します。そのため判断を誤ると金額的な影響が大きくなります。早め早めに決めていくのがよいでしょう。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】理事長交代までは先代が責任をもって確認すべし

【解説】理事長交代までは先代が責任をもって確認すべし

<著者>渡辺貴之 ネットワーク渡辺税理士法人代表社員 公認会計士・税理士・行政書士・コンサルタント 歯科医院の事業承継は大きく、「親子承継」「院内承継(勤務医への承継)「M&A(医院売却)」が考えられますが、このうち最も多いのが、「親子承継」です。承継がスムーズであったり、方針・理念を継続しやすかったりとメリットが多い一方、資金面での手当てなど、課題もあります。   親子承継における問題の一つに、「医院のお金の管理をいつから、どの範囲まで後継者に任せてよいか」があります。経営の承継をしていく以上、後継者は自身の医院の状況を判断し、適切な投資をして、収益を上げ、さらにその収益から生まれるお金で再投資をしていく必要があります。 しかし、先代には「息子・娘は経営の苦労を知らない。だからお金を使いすぎてしまう」という不安を抱えている方が多いのも事実です。 本記事がこうした不安を持たれている方の助けになれば幸いですが、私の答えは、「理事長を交代するまでは、お金の主たる管理は先代が責任をもって最終確認し、後継者は交代をするまで先代の許可をもらい投資を行っていく」というものです。 医療法人の財産は、先代が今までの苦労のもとに築き上げた財産です。しかし、医療法人に後継者が理事として戻り経営に携わるようになると、医療法人の財産についても、自分に自由な意思決定権があると勘違いされる方が多いです。 これは私の経験則ですが、そのように勘違いされる後継者ほど、前述の「経営の苦労を知らない(想像しない)」方が多いようです。親子であっても、経営面ではしっかりとシビアに考えていかなければなりません。理事長交代ができるようになるまで後継者が育ってきてから、お金の決定権を与えるようにしましょう。 では、どのように後継者を育てればよいでしょうか? 先代が会計事務所と打ち合わせをする際には必ず同席をさせ、まず医院の経営数値の感覚を覚えさせることから始めてください。後継者が、打合せの中で、各主要数値の基準値を知り、結果として「いくらキャッシュが残るのか」を把握できるようになることが重要なのです。 その後、先代の許可をもらい、数百万円単位の投資判断をし、投資の結果がどうなったかをしっかりと把握・分析することが次のステップとなります。 親子承継においては、退職金といった大きな支出があったり、承継時点で内装等を大規模修繕するケースが多く見られます。特に持ち分あり医療法人の事業承継では、先代から後継者に出資金の贈与を行う必要がありますが、退職金で大きな金額を支給しないと、後継者への出資金の贈与額が多額になり、それが医療法人のキャッシュフローをきつくしてしまいます。 ぜひ、しっかりと法人の損益やキャッシュの予測を立て、後継者に説明し、後継者のお金に対する教育を行ってください。

【ケーススタディ】ペインクリニックのなかでも神経ブロック注射に特化

【ケーススタディ】ペインクリニックのなかでも神経ブロック注射に特化

<取材先>大宮ペインクリニック(さいたま市大宮区) 吉田史彦院長 目次 01:整形外科では解消できない痛みのニーズに着目 02:「ブロック注射」限定は治療の質と経営の担保のため 03:専門性と収益を両立する事業モデルの検討が不可欠 04:見出し04 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 整形外科では解消できない痛みのニーズに着目  JR在来線や新幹線など計14路線が乗り入れる巨大ターミナル駅である大宮駅から徒歩3分の好立地に、2019年、大宮ペインクリニックは開業しました。 同院は、麻酔科医として大学病院やペインクリニック、さらには整形外科診療所でも研さんを積んだ吉田史彦院長による、主に脊椎疾患などの痛みを対象とした「神経ブロック注射」専門のペインクリニックです。 「整形外科にも脊椎疾患等の痛みに悩む患者さんが大勢来ますが、一般的な整形外科の場合、物理療法や内服薬程度の治療しかできず、効果を実感していない人も少なくありません。私が以前勤務していた整形外科診療所は、ペインクリニックにも力を入れており、そうした痛みに悩む患者さんに対しブロック注射などで痛みを取ってあげると、非常に喜ばれたのです。巷の整形外科領域では解消できない痛みの治療へのニーズを感じました」 そんな同院では完全予約制を採用し、問診や患者に自身の疾患や「神経ブロック注射」に関する説明などにも30分以上時間を割き、患者自身が受ける治療を十分に理解したうえで実施することを重視しています。いくら専門性の高い治療でも、患者がその意義を理解していなければ、十分な効果が発揮されないからです。HPでもどういった疾患や痛みが同院の治療の対象となるのか詳細に記載し、主に整形外科領域の脊椎疾患の痛みが対象である旨を発信しています。 「ブロック注射は、麻酔科医の高い専門性のうえで成り立っている治療です。慢性的な痛みに悩む人がより身近にブロック注射を受けられるようにすることが当院の掲げるコンセプトですが、痛み止めの薬を出してもらうのと変わらない気軽な治療だと思われるのは望ましくありません。ブロック注射が必要ない症状の患者さんも来てしまうからです。本当に当院が診るべき患者さんのみに来てもらい、十分な時間をかけて治療方針への理解を深めるために、あえて受診に対するハードルを設けているとも言えます」と吉田院長。 また、本当に診るべき患者層に絞って診療し、結果を出すことは、院長自身のモチベーションの持続にも大きくかかわってくるといいます。 「ブロック注射」限定は治療の質と経営の担保のため このように、脊椎疾患を中心とした「ブロック注射」を専門としている同院ですが、当初は「ブロック注射」に限らない一般的なペインクリニックからスタートしました。 あえて「ブロック注射」専門に舵を切った狙いについて吉田院長は、「自分が特化したかったというよりも、実現したい診療方針と経営の持続性の両立を模索した結果、『ブロック注射』専門にならざるを得なかった」と振り返ります。 完全予約制で十分に時間を取り、患者への説明や治療への理解を深めていく診療方針にこだわると、必然的に時間内に診られる患者数は限られます。一方で、大宮の一等地に構え、ペインクリニックとして専門設備にも投資しており、診療所事業を継続させるには、保険診療内で一定の収益を確保できる経営戦略が必要でした。そこで、「痛みの悩みを何でも診る」薄利多売路線ではなく、「本当にブロック注射が必要な痛みだけを診る」現在の専門特化路線に転換しました。 「当院の診療方針で単価の安いものから高いものまですべて行っていては、およそ経営は成り立ちません。四十肩などの整形外科で対応できる疾患は整形外科に任せ、当院はペインクリニックでしかできない治療に特化したほうが、医療機関としての社会的な役割も果たせるし、経営的にも安定すると判断し、現在のスタイルに落ち着いたのです」 現在は、医師は吉田院長1人、スタッフは非常勤を含め看護師2人、受付2人体制で、1日約30人程度の痛みに悩む患者を診ています。 専門性と収益を両立する事業モデルの検討が不可欠 今後の専門診療所の可能性について吉田院長は、「WEB社会になり広域から集患できるようになったからこそ可能性が出てきた開業スタイル」と分析するも、専門性を担保するかつ収益を確保できる事業モデルを事前に考えておかなければ、継続は厳しいと話します。 その背景として、現行の保険診療制度では、時間をかけて質の高い専門医療を提供するよりも、より多くの患者を全般的に診ていくほうが収益を上げやすい仕組みになっていると指摘します。 「言ってしまえば、軽症の患者さんを数多く診ていくほうが楽に収益が上げられるということです。こうした薄利多売の診療所では、当院で診ているような専門性の高いニーズは抜け落ちてしまいます。ただ、社会保障費が削減される一方のなか、医療機関にかかる必要のない軽症に財源を消費するのではなく、より専門的な医療に限られた財源を投入するほうが、本来は望ましいはずです。そのためには、診療報酬体系の見直しも重要ですが患者側への医療のかかり方に対する教育も必要だと感じます」 そうした体制にシフトしていくなかで、専門診療所が社会的な役割をより担えるようになっていくのではないかと語りました。 制作:株式会社日本医療企画 (取材年月:2021年3月)

【ケーススタディ】院外からの連絡をすべて精査し院長に代わって迅速に対応

【ケーススタディ】院外からの連絡をすべて精査し院長に代わって迅速に対応

<著者>医療法人一尚会事務長 谷口竜介 新型コロナウイルス感染症の影響で、事務長の方々は院内感染対策やスタッフの危機管理、患者数減によるシフト調整、各種補助金・助成金の申請など、さまざまな対応に追われていることと思います。そうしたなかでも、「事務長がいてよかった」とほめてもらえると、事務長もうれしいです。 そう言っていただける主な理由の一つに、「対応が早い」があります。たとえば、事務長仲間や他院からの新規紹介患者の紹介連絡やMRからの面談依頼、支払基金・国保連合からの算定要件に関する連絡、医師会や保健所、労働基準監督署、人材派遣会社、医療機器メーカーなどからの営業電話、顧問の税理士や社労士からの連絡など、診療所にかかってくる電話は数多くあります。 これらに院長がそのつど対応していては時間がいくらあっても足りません。診療時間内でも院長に代わり対応できるのは、事務長の強みではないでしょうか。また、支払基金や国保連合からの問い合わせは、詳細を把握する人材が対応するほうがよい場合もあります。 「時は金なり」、スピード感ある対応で、早い成果を生み出します。このように、院外からの問い合わせには、まず院長との間に入り要件を精査する人材が必要ではないでしょうか。相談員や看護師、事務でもいいですが、組織方針や院長の意向に沿う働きを求めるならば、事務長が適任でしょう。 とはいえ、どんな仕事も初めから経験なくできるようにはなりません。事務長を育成するのなら、いろいろな仕事をさせ、裁量権、決定権を譲渡し、そのうえで責任を担わせていく──。そして、経営面における院内外の立ち位置も相応にしていただきたい。経営側に立たせることで、診療所経営がどう成り立っているのかがわかるようになっていきます。 また、管理職に就かせることで、経営に対し第三者目線(労働者)から当事者目線(経営者)へと変わっていきます。事務長が経営者としての目線を身につければ、院長も医療に専念できる時間が増やせるのではないでしょうか。 私自身も、さまざまな経験をさせていただきました。在宅医療の開始当初は、地図にマーキングし高齢者施設の営業に行ったり、大阪24区、府下の保健センターをめぐったり、時間外の往診調整も行っていました。 それ以外にも、法人化の際の各種手続き、分院展開やクレーム処理に加え、職員が40人を超えるまで社労士と契約していなかったため、給与計算、明細書発行、振込、所得税の支払い、入退職時の雇用保険・医療保険・年金保険などの加入手続きや資格喪失届、離職届の作成……。6月の年度更新、12月の年末調整、市区町村への源泉徴収票の送付なども担当していました。ほかにも書ききれない仕事が山ほどあります。 他院の院長から、「事務長に何をさせればいいかわからない」と聞かれますが、何でもさせて良いのです。役割が人を育てます! 全国の事務長に役立つ情報を模索し、当会でも有益な交流ができるように私も日々、事務長の職務を味わい尽くしたいと思っています。 制作:㈱日本医療企画 (取材年月:2020年2月)

【ケーススタディ】収支計画作成を経て銀行が決定&SNSが夢を実現していく!

【ケーススタディ】収支計画作成を経て銀行が決定&SNSが夢を実現していく!

<著者> 野崎浩司 救急科専門医・麻酔科認定医 はじめに、勤務医時代には考えもしなかったお金の話。開業にあたり銀行から融資を受けるには、事業収支計画表の作成が必要でした。住宅ローンなら、「総額◯◯万円で△年ローン」で借りられますが、開業ではそんなアバウトは許されません。「何がメインか?」「開業予定地周囲の医療機関の診療科は?」「人口統計は?」「立地は?」などの条件から、1日の外来患者数を想定し収支計画を作成します。 私は、「プライマリ・ケア(外科処置含む)+ペインクリニック+リハビリテーション+自費診療(多汗症とAGAを予定)」と、あまり見かけないスタンスで、正直自分では何の予想もつきませんでした。そこで、前述の条件などから表のようなものをコンサルタントにつくってもらいました。 1年目(2020年10月〜21年9月)の1日の外来患者数は、内科20人、ペイン5人、リハビリ5人が目標。そこから毎年徐々に増患してくれることを祈りつつ、日々努力することになります。ただ、税理士や銀行の医療担当者からは、外来患者数の上方修正や1人当たり診療単価など最終版まで何度かアドバイスを頂戴しました。これも、住宅ローンとは違うところ。 しかし、これはあくまで予想で、実際はゼロに近い日もあるはず。対して支出は人件費や家賃、医療機器の支払いなど、確実に減るのです。まさに、「取らぬ狸の皮算用」を50歳にして知ることに……開業って恐ろしい……。 そんな計画書を基に、2つの銀行と面談。昨年末A銀行に好条件をいただきこれで決まりかと思いきや、B銀行からさらに予想外の低金利を提示していただくことに。同条件なら前者で融資を受けたいと思っていましたが、かなり差があったためコンサルともよく話し合い、B銀行に決めました(私が住宅ローンを借りたメインバンクだったなどの効果もあったのだろうか?)。 Twitterで出会った2人の先輩 次に、SNSの話。炎上など悪い印象もありますが、活用すれば情報収集はもちろん、相談や宣伝などもでき、メリットはとても大きいと思っています(しかも無料!)。 たとえば、Twitterで知り合い、DMを送り施設見学させてもらったのが、帝都メディカルクリニック西新井駅前院の藤田将英先生です。34歳とお若いが、麻酔科出身で超音波診断を用いた整形やペイン、物療に頼らないリハビリで集患に成功しています。約束した日の診察終了後お邪魔し院内の説明を受け、その後食事をしながら多くのことを教えてもらいました。わざわざ東京まで押しかけた意味があったし、以降もDMで相談させていただく関係が続いています。 このようにSNSでは、自身が開業時に苦労した・していること、診療で行うとメリットがあることなどを後進に包み隠さず教えてくれる心の広い先達も多くいらっしゃいます。その代表格が、「MM」先生と「よいこはこいよ」先生。Twitter以外にも、開業前後の医師向けオンラインサロンをSlackアプリで提供しています。機器や経費、融資、人事など、気軽に相談できる場となっているため、とてもありがたい。開業前後の人はフォローしておくのをおすすめします。 とっておきのイラストでインスタ映えを狙う(!?) また、ペットの黒柴の日記に始めたInstagram(インスタ)では、癒し系イラストで盲導犬サポートショップの商品デザインも手がける「セツサチアキ」さんにDMを送り、リハビリ室の壁に使うイラストを依頼。年齢や性別、障害の有無にかかわらず楽しく暮らしていける社会のイメージで書いてもらうことに。 「小児科の待合や廊下では見かけるが、リハビリ室の壁にイラストが描かれているところはあまりないのでは?」と思ったのがきっかけでしたが、図1のラフスケッチを拝見し、リハビリする人に癒しと元気、明るさを与えてくれると確信しました。また、リハビリ室は別名「ひばりコミュニティスペース」として地域の皆さんのためにいろいろ利用したいので、「イラストのあるクリニック」として他院との差別化にもなれば良いのですが(「映えスポット」にもなれば良いなぁ)。 さらに、ドラマ「砂の器」の題字をはじめ、すばらしい文字を書かれる筆耕アーティスト道口久美子さんにも、名刺などに使う名前を2パターン書いてもらいました(図2)。いずれもそれまでのお二人の作品を見ていたので、イメージどおりのすばらしい作品をいただき、とても満足です。 全員に快くご助力いただけるわけではないですが、自分の夢=開業のためには多少、図々しいと思われても勇気を出し連絡してみるのをおすすめします。「あのとき聞けばよかったー!」と一度きりの人生で絶対に後悔したくないし。 監修:株式会社日本医療企画 (取材年月:2020年4月)

【解説】保証人、担保となる不動産の有無に加え、運転資金は半年分の経費・生活費を想定すべき

【解説】保証人、担保となる不動産の有無に加え、運転資金は半年分の経費・生活費を想定すべき

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 独立開業時は、一定程度の資金繰りのめどを立てておきたいものです。保険診療報酬は2カ月分遅れで入金され、不動産関連のコストをはじめ、さまざまな費用が発生します。また贈与資金とみなされると税務関係の懸念も出てきます。見落としがちな6ポイントを解説していただきます。 目次 01:自己資金はどのくらいありますか 02:連帯保証人の予定者はおりますか 03:親族等でお金を融通してくれる人はいますか 04:担保提供ができる不動産をお持ちですか。または、不動産を担保提供してくれる人はいますか 05:現在住宅ローン等の残高はありますか 06:事業計画作成時に盛り込みたいこと 当事務所で使用している、独立開業を予定されている先生向けの資金関係チェックのヒアリングシートに基づき、資金関係で注意すべき6ポイントをご説明します。 自己資金はどのくらいありますか 少額すぎて金融機関に開業の意欲が低いと思われてはいけませんし、逆に先生ご本人の勤務医時代の収入からみて、多額すぎると、実は親族からの贈与資金が含まれているのではないかと税務関係が気になることがあります。 連帯保証人の予定者はおりますか 最近の民法改正で、従来よりも連帯保証人をお願いすることが難しくなりました。改正された民法のもとでも、保証人となっていただける人物がいるかを確認します。 親族等でお金を融通してくれる人はいますか 親族から借入をして、開業資金に充てることはよくあります。金融機関よりは返済条件も緩やかですので、ありがたいのですが、借入をした時の契約書や返済の実績がないと、税務署から贈与ではないかとの認定をうけることがありますので注意が必要です。 担保提供ができる不動産をお持ちですか。または、不動産を担保提供してくれる人はいますか 不動産を所有していても、その不動産に抵当権がついている場合は、融資においては抵当権の分だけ評価が下がります。また、お持ちの不動産の名義も登記簿謄本で確認しておきましょう。ご兄弟と共有になっているような場合は、その方の同意が必要となります。 また、例えば、お父様の所有される不動産を担保提供していただく場合、他のご兄弟等にも一言、挨拶をしておいたほうが無難です。 現在住宅ローン等の残高はありますか 住宅ローンの返済がある場合、事業用と合わせて2つのローンをかかえることになります。慎重に返済計画を作ることが重要です。 事業計画作成時に盛り込みたいこと 運転資金として、だいたい半年分の経費支払いを見込みます。保険診療の未収金は、2カ月分遅れで入金されるからです。また、半年分位の生活費もみておいたほうがよいでしょう。 洩らしやすいのが、不動産関連の付随コストです。不動産仲介手数料や建物の消費税、借入費用、不動産取得税、不動産の登記税など合算すると、相当大きな金額となるので、注意が必要です。 著者:上田久之 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【ケーススタディ】迅速さを武器に病理診断を専門に業績拡大

【ケーススタディ】迅速さを武器に病理診断を専門に業績拡大

<取材先>医療法人アストロイノベーション 淀屋橋クアトロアールクリニック(大阪市中央区) 目次 01:遠隔診断も活用して スピーディーな診断を実施 02:病理診断の要件が見直しに 診療報酬改定が追い風に 遠隔診断も活用して スピーディーな診断を実施 大阪府の府庁所在地であり、大手企業本社や大阪証券取引所などが立ち並ぶ活気あるオフィス街エリアでもある大阪市中央区。そんな中心地に位置するビルの8階にあるのが、淀屋橋クアトロアールクリニックだ。同院には、いわゆる風邪といった一般患者が来院することはめったにない。なぜなら、同院が専門とするのは、病院や診療所、検査機関からの依頼を受けて行う、「病理診断」「臨床検査診断」「放射線診断」だからだ。 管理者の菅野渉平理事長は、病理専門医、細胞診専門医、臨床検査専門医、放射線診断専門医など12の専門資格を保有する、同院の最終責任診断医だ。現在掲げる3つの診断事業のうち、最も伸びているのは、病理診断だという。 「ほとんどの医療機関は、検査機関に病理検査をするための標本づくりを依頼し、その標本を元に病院の医師が診断を行っています。当院は、病理診断を行う医師が不在の医療機関から依頼を受けて診断を行っています」(菅野理事長) 具体的には、がんや腎生検の病理診断は、光学顕微鏡像をデジタル化し、ディスプレイ上で顕微鏡観察できるバーチャルスライドを使用。パソコンで遠隔診断ができるため、病理診断医がどこにいても迅速に診断ができる。大阪、東京、アメリカにいる病理診断医が連携し、常にダブルチェックを経てスピーディーに診断結果を返送する。 手術中に採取した組織やその周辺の組織が、がんであるかどうかを診断する術中迅速診断にも対応。限られた時間で、手術で摘出した範囲が適性かどうか、手術を完了させてよいかを判断するため、最新のバーチャルスライド機器を導入した。好立地も、バイク便などで標本を受け取りやすくする狙いだ。 病理診断の要件が見直しに 診療報酬改定が追い風に ちょうど開業した2016年の診療報酬改定で、病理診断の要件見直しが図られたことも、成長の追い風となっているという。従前は、病院・診療所は病理診断科を標榜する保険医療機関に病理診断を依頼する際、病理判断料として150点を算定する仕組みで、依頼側に利益が残らなかった。 しかし、16年度診療報酬改定によって、同院のような施設基準を満たす医療機関と提携している旨を届け出ることで、病理診断料450点と病理診断管理加算120点を算定可能になった。この報酬から、依頼元の医療機関が同院に診断料を支払っても利益が残る仕組みになったのだ(図)。 同院はこの提携先としての要件をすべてクリアしているのに加え、検査機関ではできない術中迅速診断への対応や、検査機関に依頼するよりも迅速な対応が評判を呼び、口コミで依頼件数は右肩上がりに増加。現在、1日当たりの依頼検査数は150~200件に上り、術中迅速診断以外は、通常、他の検査機関では2週間前後かかる診断書の発行も、その約半分の1週間程度行なっている。 「常勤医3人と非常勤医師数人、事務スタッフ2人で連携しスピーディーに対応するようにしています。バーチャルスライドの機器導入にはコストがかかりましたが、それ以外は、基本的に人件費や家賃以外のコストはかかりません。検査1件当たりの報酬はそれほど高くないものの利益率は高く、売上は毎年最高益を更新しています。今年は検査機関を新規開設したほか、さらに1機関を買収し、診断だけではなく、標本作成から一括受注できる体制を整える予定です」と、菅野理事長は語る。 さらに、病理診断事業に続く同院の柱として伸びている事業として、産業医活動がある。菅野理事長は、第1種作業環境測定士や労働衛生コンサルタントの資格も有し、院内にも労働衛生コンサルタント事務所を併設している。 「病理診断や放射線診断の医師は絶対数が不足しているため、大学や検査機関に努める医師は過酷な労働を強いられています。私自身もそんな体験をしたことから、産業医の勉強を始めたのですが、開業後、産業医へのニーズが多いことに驚いています。当初は数事業所に対応していましたが、今では65事業所の産業医を務めています」(菅野理事長) 「病理診断科」「放射線診断科」「臨床検査科」「労働衛生コンサルタント」――と、同院が掲げる事業は、どれも単価での開業で採算を取るのは難しい分野だ。病理専門医や放射線専門医は診断単価が安いため、検査機関や大学病院で勤務する道がほとんどである。 しかし、菅野理事長は、「単科ではなく、専門性の高い複数化を標榜すれば、各分野の利益を合算できるほか、どれか1事業が不振でも他事業で補えるというメリットがあります」と、強調する。 今後は、各専門分野の医師を追加雇用し、ワークシェアと事業規模拡大につなげるとともに、中長期的には、診療所や病院とのネットワーク強化やM&Aを進め、健診から診療、検査、手術など治療までをグループ内で実施できる体制をつくりたいと語る。 制作:㈱日本医療企画 (取材年月:2021年3月)

【解説】実地検査をスムーズに進めるために設計事務所や行政書士などの力も活用

【解説】実地検査をスムーズに進めるために設計事務所や行政書士などの力も活用

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 医療機関に限らず、開業時はさまざまな法的手続きが必要になりますが、特に医療機関は医療法や健康保険法も絡んでくるだけに、一層煩雑になりそうです。保健所への相談はもちろん、設計事務所や行政書士等の専門家の力も上手に活用する必要がありそうです。 目次 01:診療所の開設届など 02:保健所の実地調査 03:その他、各法に基づく手続き 04:見出し04 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 開業時の手続き・法律関係は、医療法、健康保険法、労働法、不動産関連法、税法等各方面の手続きが多数あります。 ①診療所の開設届など 医療機関特有の重要な手続きとして、医療法、健康保険に関する手続きが挙げられます。流れとしては、まず保健所へ事前相談に行き、指導を受けて、診療所開設届を診療所開設後10日以内に、保健所へ提出します。その後、保健所の実地調査終了後、各地方の厚生局へ保険医療機関指定申請書を、指定を受ける希望月の前月の定められた日までに提出します。 ②保健所の実地調査  診療所の開設は病院のような許可制ではなく、届出で済みますが、保険医療機関の指定を受けて、開業するためには、保健所の検査が必要です。いかにスムーズに検査をパスするかが、手続きのポイントになります。実地調査を無事にパスするために、ぶっつけ本番ではなく、事前に保健所に相談に行き指導を受けることになります。建築や内装工事をする前に、図面を持参してレイアウトに問題がないかについて指導を受けます。また、開設スケジュールや広告の仕方、診療所の名称などにいても相談をすることがあります。  その後、開設届を提出すると、実地調査の日程を、厚生局への指定申請の締切日を考慮しながら決定します。  実地調査時には、開設者等の立ち会いのもと、当初持参したレイアウトどおりに建築や内装ができあがっているか、水道関係、消化設備の確認等が行われます。  立入り検査の結果、何らかの指摘や指導があった場合は、改善を要求されることがあります。実際には、放射線の関係や、医薬品の管理、個人情報の取扱いなどに関する事項で、多くの指摘が行われています。検査を滞りなくパスするためには、診療所の設計に慣れている設計事務所や工務店の採用、行政手続きに詳しい行政書士等の専門家の活用をお薦めしています。 ③その他、各法に基づく手続き その他、生活保護法の医療を取り扱うためには、福祉事務所等へ生活保護法指定医療機関指定申請書を、労災医療機関の指定を受けるためには、労働基準監督署へ労働保険指定医療機関指定申請書を提出します。労働関係では、ハローワーク、労働基準監督署への届出が必要です。税務署関係では、青色申告書を選択しなければ、損失が出た場合の翌年繰越や青色専従者給与の支給ができないので、あわせて届出が必要です。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】「開業、即、大量離脱」を防ぐためにも押さえておきたい5つのポイント

【解説】「開業、即、大量離脱」を防ぐためにも押さえておきたい5つのポイント

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 もともと医療・歯科診療は労働集約型産業の典型例と言われ、スタッフの採用・定着はきわめて重要な経営課題と言えます。ただ、やみくもにスタッフをかき集めても定着は見込めません。採用計画から労働条件の設定などをあらかじめ準備しておくことが求められます。 目次 01:採用計画の策定 02:地域性や時期を踏まえて募集業者を選定 03:スタッフからよく出る不満と労働条件の整備 04:前の職場の人を連れてくる場合 05:院長夫人の関与  開業時の人事・労務としては、募集と採用が大きな課題となります。 ①採用計画の策定 開院にあわせて、まずはどの媒体に求人広告を出し、いつ頃面接をして、研修は開院の何日前に行うといったスケジュールを設定します。また、歯科衛生士、助手、受付など、職種ごとに何名採用するかを決めます。採用面接時には医院の労働条件について、求職者に説明をしなければなりませんから、事前に労働条件を決めておきます。 ②地域性や時期を踏まえて募集業者を選定 募集方法としては、ハローワーク、衛生士学校、知人の紹介、折り込みチラシ、グッピー、メドレーといった業界特化型の業者等の中から、地域の特性、時期などを勘案して、どの方法をとるか決定します。 ③スタッフからよく出る不満と労働条件の整備  スタッフから出る不満として、次のようなことをよくお聞きします。 ・前の職場と扱いが違う ・税金や社会保険の関係で給与を103万円または130万円以内に抑えたい ・入社前に聞いていた条件と違う ・一番忙しい時期に合わせて人を増やしてほしいと言われる ・パートタイマーでも有給休暇を付与してほしい ・労働法規が守られていない  上記のようなことがもとでトラブルになり、開院後すぐにスタッフがバタバタと辞めていくといったことがないようにしたいものです。  労働条件をあらかじめ定めておき、面接時には提示する必要があります。給与・保険関係・労働時間・残業手当・有休休暇・初回の賞与・賞与の月数・退職金・服務規律・交通費などは明確に示すべきでしょう。  ただし、これらの項目は労働法規の知識が必要ですから、可能であれば社会保険労務士にアドバイスをしてもらうことを、お薦めしております。 ④前の職場の人を連れてくる場合  この場合、前の職場の院長とのトラブルが発生しないように注意が必要です。また、前の職場では、お互いに従業員同士であったわけですが、今度は雇い主と従業員の立場になり以前のよい関係が崩れてしまうことがあるので注意が必要です。 ⑤院長夫人の関与  受付や歯科衛生士として全面的に関与するか、経理事務等でバックヤードで関与するかが望ましいでしょう。中途半端な関与は従業員とトラブルにつながることがあります。

【解説】ホームページ立ち上げは当然 国民に定着したLINE活用も検討しよう

【解説】ホームページ立ち上げは当然 国民に定着したLINE活用も検討しよう

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 LINEは今や国民の60%が使用するツール。10~20代ではメール以上に馴染みのあるコミュニケーションツールとなっています。こうしたSNSの活用はもちろんですが、内覧会や地域の有力者へのあいさつ回りなど、地域に根差した集患も怠らないようにしましょう。 <著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 目次 01:LINEの活用 02:内覧会の実施 03:その他の地道な集患活動 LINEの活用 いまやLINEは、国民のおよそ60%が利用する巨大なSNSツールとなっています(出典:総務省「平成30年版情報通信白書」)。 10代や20代ではLINEは、メールの利用者数を上回っております。飲食業やサービス業における集客活動において、LINE活用は一般的となっていますが、クリニックにおいても活用事例が増えております。 若い世代の患者数が多い場合、メールよりもLINEに慣れている人が多いのでLINEを活用し集患に繋げることが効果的です。LINEから友達登録をすれば「名前」、「診察券のID番号」を入力することで、予約・キャンセル、問合せが時間帯を問わずできるようになります。また、「休診日」、「診察時間の変更」、「新任のドクターの紹介」等、医院からの通知も簡単に一斉配信をすることができます。 また、インプラント、マウスピース矯正、ホワイトニングといった医院が注力している分野についてのプッシュ型通知も簡単に行うことができます。予約日直前の患者さんへの通知もキャンセル率低下に有効な手段となります。開業時のホームページの立ち上げは当然ですが、LINEの活用も検討してみてはいかがでしょうか。 内覧会の実施 専門業者に依頼して開業時に内覧会を実施されるところが増えています。開業日前後の日曜日を含めて、2~●(修正ポイント)日、専門スタッフがのぼりや風船を持って診療所の近隣の街頭に立ち、通行している人を医院へ案内します。院内を見学していただき、スタッフや院長が施設や診療方針を説明して、その場で検診や治療の予約も取ります。集客の効果を上げるため、診療所の前で子供が喜ぶようなイベントを行います。 内覧会を実施した場合、そうでない場合よりも、概ね開業初月の診療報酬や来院数について、一定の効果が出ています。ただ、専門業者への支払いの費用が開業コストの数パーセントに及ぶこともあり、費用対効果の検討が必要です。 その他の地道な集患活動 開業地が商店街であれば、商店会長などにご挨拶に行ったり、美容室等に医院のパンフレットを置かせてもらいます。住宅地であれば、自治会長、民生委員、婦人会長等の有力者に挨拶をします。オフィス街であれば、企業の健康保健室の担当者にアプローチするといったことが考えられます。 在宅医療に注力される場合は、有料老人ホームに利用者を紹介する会社や、ケアマネジャー、訪問診療を手掛けている内科クリニックなどとの連携を模索します。開業地の特性に応じて地道な集患努力も必要となります。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【解説】チェア3台とレントゲン等で2000万円…設備を揃えるにも収支の視点は不可欠

【解説】チェア3台とレントゲン等で2000万円…設備を揃えるにも収支の視点は不可欠

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 開業時には設備も揃えますが、採算見込みを度外視した「過剰投資」は避けたいものです。チェアの台数に応じた収入目標、返済目標等の事業計画を作成することがポイントになるようです。収支とのバランスという視点で設備を考えてみます。 目次 01:テナント開業の場合の開業コスト 02:テナント開業の場合の目標収入 03:テナント開業の場合の家賃と収入の比率 04:戸建開業の場合の開業コスト 05:チェア台数で決まる総コストと目標収入 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 <著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之   歯科医院の開業でどのような医療機器の設備を整備すべきかについて、設備と収支の観点から考察してみます。 ①テナント開業の場合の開業コスト  テナント開業の場合、設備関連で内装工事費2000万円、チェア3台とレントゲン等の機器で2000万円ほど必要になります。他にテナント入店保証金と歯科医師会入会金および開業費で1000万円、運転資金として1000万円を準備すると、総コストはおよそ6000万円となります。 ②テナント開業の場合の目標収入  開業した初月から、いきなりレセプトが300枚になることは期待できません。徐々に収入は増えていきます。開業2~3年で安定した状態になった場合に、1年間の目標となる診療収入は、総コストの8がけ程度を目標とするケースが一般的です。6000万円の総コストの場合、診療収入は4800万円となります。患者数は、1日の患者診療単価を仮に6000円と想定すると、月20日診療で割り出すと1日の目標来院患者数は33人となります。 ③テナント開業の場合の家賃と収入の比率  テナント開業の場合、収入に占める家賃の比率が大きいと、利益の圧迫要因となります。 通常、家賃の収入に対する比率は8%程度で、それでも診療報酬の1ケ月分に相当します。家賃の収入比率は10%までに抑えたいので、逆に、月50万円の家賃がかかるのであれば診療報酬は月500万円が目標となります。 ④戸建開業の場合の開業コスト  戸建開業の場合は、テナント開業で必要な内装費、テナント保証金は不要ですが、その代わりに土地代、建築費がかかります。建物の面積、住居併用かどうか、土地の面積により、一概にいえませんが大都市圏においては、1億円から1.5億円の開業コストとなることもあります。仮に開業コストが1.5億円かかる場合、テナント開業のように総コストの8がけで、年1.2億円の診療報酬が必要かというと必ずしもそうではありません。  戸建開業の場合は、テナント開業では月間収入の10%近くを占める家賃が不要で、かつ、不動産を取得するための借入金の返済期間は、20~25年と長期に設定されるため、返済負担が軽くなるからです。 ⑤チェア台数で決まる総コストと目標収入  歯科医院のメイン設備であるチェアの台数により、診療所の内装費、建築費、家賃、人件費と各種のコストは連動しますので、チェアの台数に応じた収入目標、返済目標等の事業計画を作成することがポイントです。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

利用控えを減らす 身近な人との関係性づくり

利用控えを減らす 身近な人との関係性づくり

<取材先> 株式会社ありがたい 取締役社長 井手 雄大 都内で1カ所、埼玉県内で2カ所のデイサービスを展開する株式会社ありがたい。新型コロナ禍においても、稼働率は90%を超えるデイサービスもあるなど、新型コロナに影響されない秘訣はどこにあるのでしょうか。 デイのほうが"安心"という環境を整える  地域密着型デイサービスありがたい池袋がある場所は、JR池袋駅から徒歩10分程度の住宅地です。「定員10名という限られた人数ではありますが、2020年3月から6月の稼働率を見てみると、一番低い4月でも92%を維持しています。5月以降は95%に伸びるなど、新型コロナによる影響をほとんど受けていません」と話すのは、同社取締役社長の井手雄大さんです。さいたま市内で展開している他の2カ所(大宮:2020年5月60%、2020年3月90%、浦和:2020年4月47%、2020年6月70%)と比べても、池袋が安定しているのがわかります。  実際、緊急事態宣言が出ている中であっても、同デイの利用を控えたのは1人です。それも、家族の要請で1カ月程度利用を控えた方であり、5月半ばからは利用を再開したといいます。  なぜ、高い稼働率を維持し続けられたのか――。その理由を、迅速な衛生管理体制の構築とその周知徹底を前提としたうえで、「職員が家族やケアマネときちんと信頼関係を築けているから、安心して送り出してもらえたからではないか」と、井手さんは分析します。  池袋の利用者は、独居ないしは夫婦で生活をしている人が多く、二世帯同居などは少ない傾向にあります。 「自宅に一人でいるよりは、ありがたいにいるほうがよっぽど安全であると、判断されたのではないかと思います。利用を控えていた方も、当デイ以外のデイにも通っていましたが、利用を再開したのは当デイだけということを考えると、安心感とともに通う意義があると感じてもらえているからではないでしょうか」と井手さん。  反対に、浦和や大宮は同居家族がいる利用者も多く、「心配だからこそ家にいてもらおう」という、利用者の家庭環境が利用に影響したと考えられるといいます。  通う意義という点で言うと、元々同社ではそれぞれのデイごとにコンセプトを明確にもち、デイに合ったターゲットを集客しています。池袋の場合は都心部にあるため、いろいろなデイサービスを見比べて決めた人も多く、集合レクを嫌がったり、食べ物にこだわりがあったり、早朝や延長などの柔軟な対応を求めるなど、一律なサービスではないものを求める利用者が少なくないです。つまり、「デイに通いたい」ではなく、「ありがたいに通いたい」という意識が高い利用者が多く、それが新型コロナ禍にあっても、「通うのが当り前」の場となり、稼働率の維持につながったのでしょう。 人を大切にできる職員だから信頼感が生まれる  また、ケアマネジャーとの関係性も稼働率には関係してきます。井手さんは、利用者の受け入れを打診されたら、ケアマネの話だけで受けるかどうかを決めるのではなく、利用者と会ったうえで判断するといいます。そのため、「コンセプトは掲げていますが、『ありがたいならどうにかしてくれるのでは?』という形で、ケアマネから相談を受けることもあります」と井手さん。  日頃の営業活動も功を奏し、リハデイありがたい浦和では、2020年4〜5月にかけて稼働率は落ちたものの、ケアマネからの新規の問い合わせは途切れないなど、ケアマネからも「必要」とされている様子が垣間見られます。  さらに、利用控えが少なかったことの根底にある要因として井手さんが考えるのは、「家族との信頼関係」です。信頼関係があるからこそ、「ありがたいは感染の不安がなく通えるデイである」という認識が利用者・家族にも生まれます。  そのような関係性を築くうえで同社が大切にしているのが、「自分の親を預けたくなるような安心安全で心寄り添う介護」という理念です。心寄り添う介護とはどのようなものかを、井手さんは次のように説明しました。 「ここに来ているご利用者は、誰かの大切な方です。その大切な方を大切にしてもらっていることがわかると、うれしく感じていただけます。そこから、私たちを頼りに感じていただけるようになり、信頼感を得てもらえる。そう思ってもらえるケアの必要性を、職員には常々伝えています」  この「誰かの大切な人へのケア」を徹底するうえでは、職員教育が必要だと指摘します。「もしも僕が職員の大切な人をないがしろにしたらどう感じる? と問いかけたうえで、別のお年寄りがないがしろに扱われたら客観的にどう見えるのか、どのように関わるとうれしいのか、自分なりの答えを出せるようにしていきます。自分で考え、答えを出すというインプットとアウトプットを繰り返すことで、人の気持ちを考えて行動できる人材に育てています」  こうした人材を育てることで、「ありがたいなら大丈夫」と周囲から信頼されるようになるわけです。  井手さんをはじめとして、ありがたいの職員たちが行っている新型コロナ禍でのサービスは、決して大がかりなことでも、目新しいことでもないです。しかし、日頃行っている身近な人との関係性づくりが、新型コロナ禍においても「ありがたいなら大丈夫」という安心感・信頼感につながり、利用率が維持されたのでしょう。

「働き方改革」を採用・定着につなげるために大切な2つの視点

「働き方改革」を採用・定着につなげるために大切な2つの視点

<著者> 株式会社Blanket(旧:株式会社Join for Kaigo) 取締役 野沢 悠介 2018年6月に成立した働き方改革関連法。2019年4月からは大企業から段階的に適用がスタートしています。時間外労働の上限規制の設置、有給休暇の取得義務づけ、同一労働における待遇差の是正など、企業・法人側に新たに対応が求められるものが多くあり、すでに働き方改革の取り組みに着手されている事業所も多いことと思います(図表1)。 制度変更や新たな取り組みの導入など、事業所にとっては負担や苦労も多い法改正対応。ですが、このような動きが生まれ、加速する背景には、働き方、ワークライフバランスへの関心の高まりが社会全体で広がっているということがあります。サービス形態によっては24時間365日、利用者の方々の生活のサポートをする必要があったり、制度上で必要な人員数が定められることもある介護事業所においては、他業種よりも働き方改革の推進に難しさを感じることもあるかもしれません。しかし、未曾有の人材不足の時代を迎えつつある介護業界において、「働きやすい職場づくり」はすでに「やった方がよいこと」から、「やらなければ生き残れないこと」へと変わりつつあります。 すでに働き方改革の実践のための手法やツールは多くありますが、法改正への対応に留まらずに、職員が「長く働き続けたい」、求職者が「ここで働きたい」と思ってもらえるような、本質的な〝働き方改革〟について考えてみたいと思います。 <小見出し> 手法検討の前に、課題分析を <本文> 結論から申し上げますが、本質的な働き方改革を進めるにあたって何より重要なことは、組織の現状と課題の正確な把握です。自組織の現状・課題に即さない形での「改革」をいくら進めたとしても、効果を上げることは困難です。働き方改革を前に進めるためには、まず組織内の「働きにくさ」が何から生じているかを明確にしていく必要があります。 進め方はいくつかありますが、特に重要となってくるのは、①従業員調査、②退職者分析の2点です。現在働いている職員や退職した(する)職員の生の声を拾い上げることで、課題を整理します。何らかのサーベイ(調査)ツールを用いたり、外部のヒアリング調査などを通じて、客観的に評価・分析を進めることも、組織内だけでは見えてこない課題を抽出できるきっかけになるかもしれません。 離職率が高いことに課題認識をもっていたある介護事業所では、当初は残業の削減や休暇取得率の改善等に着手しようとしていましたが、上記の形で課題分析を進めたところ、施設内のコミュニケーション不足や、組織の方針への納得感の低さが意欲低下につながっていたことが見えてきました。そこで、労働時間や休日への対応とともに、コミュニケーションツールの新設やマネジャー・リーダー層の積極的な発信を増やしたところ、職員の満足度が大きく向上し、それと連動する形で離職率が低下していきました。 「働きにくさ」を産む要因は複数あり、事業所によって何が大きな要因になっているのかは異なります。この部分を数値やデータから定量的に、職員の声から定性的に把握・分析していくことが、働き方改革の第一歩と言えるのではないかと思います(図表2)。 <小見出し> 〝足し算〟ではなく〝引き算〟の視点 <本文> もう一点、業務改善で重要なのは、新たなことを始めることを意識するよりも、「何を取り除くことが、従業員の負担を減らすか?」という視点の下での施策設定をすることではないかと思います。いたずらなツール導入や業務変更は、かえって現場の混乱や負担の増加を産む場合もあります。たとえば、入居施設で多様な働き方の導入を進めて日中に働く非常勤職員の人数・稼働が増えた結果、正規職員の夜勤数が大幅に増え、結果として正規職員が疲弊、離職率が上昇したというケースもあります。 一方で、働き方改革を上手く進める事業所に共通している点として、前述の課題分析を通して「働きにくさ」を産む要因の分析を進めるとともに、改革の実行のためにそれまで事業所の中で「慣例」「常識」となっていることを思い切って廃止したり、削減したりしていることが挙げられます。たとえばある施設では記録システムのIT化の際、プロジェクトを立ち上げ一つひとつの記録を精査、本当に必要なものを除き、削減や統合をしていく作業を根気強く行っていました。「今までやってきたことを、簡単に削減してよいのか」という声も多く、導入までの過程は大変な部分はあったものの、記録システムの運用を通してこれまで記録に割いていた時間を大きく短縮することに成功しています。 ツールや制度の導入では、闇雲にそれらを上積みするのではなく、自組織にマッチした形で導入・推進すべきであり、さらに、それらの導入・推進に力を割くために、「聖域」をつくらず思い切って取り除く、削減する意識が重要ではないかと思います。組織全体でその意識を持つためにも、従業員との丁寧なコミュニケーションも必要不可欠でしょう。 従業員にとって「働きやすい」と感じる、求職者が「ここで働きたい」と感じる職場をつくる働き方改革は、単に法令遵守をすれば、労働時間の適正化や有給取得の奨励をすれば、実現できるというものではありません。自組織の現状・課題を見つめ、本当に必要なアクションを実行する意思と、困難にぶつかってもやり抜く努力があって初めて、働き方改革は成し遂げられるのではないかと思います。

事業譲受はドミナント展開の一方法 事業拡大のスピードアップに積極活用

事業譲受はドミナント展開の一方法 事業拡大のスピードアップに積極活用

<取材先> 株式会社ライフケア・ビジョン 事業の開始がそもそも事業譲渡から始まったという、株式会社ライフケア・ビジョン。22施設ある住宅型施設のうち約1/3が事業譲渡によるものです。その狙いはどこにあるのかをうかがいました。 事業譲受も積極活用して住宅型施設をドミナント展開  株式会社ライフケア・ビジョン(大阪府大阪市)は2011年に設立されました。訪問介護・居宅介護支援事業からスタートし、現在では豊中市、高槻市など北摂地区を中心に住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、デイサービス、訪問看護ステーションなどを運営しています。現在22施設ある住宅型有料老人ホーム“はっぴーらいふ”のうち8施設が事業を譲り受けての運営となっています。介護事業を展開しようと設立した会社ですが、ハード面などを一からつくるのは当初は大変と判断し、一施設目の有料老人ホームは事業譲渡を受けて開設しました。その後、グループ企業で不動産を手掛けて施設を開設する一方、事業譲受による展開を積極的に行っている点が、大きな特徴です。施設運営を始めた当初は500室を目標にしており、現在は2000室を目標に拡大戦略をとっています。加えて、2018年には通所系のデイサービスを譲り受け、サービスの幅も広げています。  同社の展開を象徴するエピソードが、2016年に北摂地区で2つの住宅型有料老人ホームを一度に譲り受けているケースです。これは、共通の取引先を通じて事業を引き継いでもらえないかとの相談があり、最初に話を聞いてからひと月で決断しています。すぐに決断したのは、相手方が介護事業所の効力停止処分を受け、現場はかなり逼迫した状況だったからです。「地域的な融和性もあり、運営・経営のオペレーションを見直せば立て直せそうだというめどをつけながら判断しました。同じ地域で介護を展開している事業者として、入居者、職員の生活を守らなければならないという、使命感もありました」と同社取締役副社長の大前直樹さんは振り返ります。  事業譲受を決めてから2週間で利用者・家族への説明のほか、関連する取引先への連絡、行政とのやり取り、各種の届け出を行いました。結局2施設は1年程度で黒字転換できたといいます。 ドミナント展開することで職員の定着、育成にメリット 「『このエリアのこういう物件を探している』と、こちらからリクエストをして探すこともありますが、譲渡希望の事業者から直接的、間接的にお話をいただいて検討するケースがほとんどです」と大前さん。  とはいえ、譲渡希望の施設があったからといって、なんでも飛びつくわけではありません。同社がこれまで手掛けてきた経験から、「売りたいと言ってくるところは、人員不足、入居者が少ないなど何らかの問題点を抱えているケースが多い」からです。  そこで同社では、同社のドミナント戦略に合ったエリアの施設であるか、施設のサイズ・スペックは適当か、同社が入ってオペレーションすることで、経営の改善が見込めるかを検討して判断しています。「訪問介護サービスが入る住宅型の施設で、50室前後のサイズが、当社としては手掛けやすいですね」と大前さん。  M&Aで住宅型施設1カ所、デイサービス2カ所を引き受けた例もあります。「その会社は事業所が限られているため、管理職ポストも少なく、職員からはキャリアパスが見えにくいこともあり、人材流出が起こりやすいなどの問題を抱え、行き詰まりを感じていたようでした。当社としては、同一エリアに多数の事業所をもつことで、職員の異動を図り人材交流ができるほか、管理職のポストも増えるので、職員の定着にもつながるなど、さまざまな面でメリットが生じると考え、M&Aを行いました」  案件を検討する際には、従業員リストや給与台帳なども全部調べ、さまざまな雇用条件が維持できるか、調整可能かを確認します。利用者の料金体系も含めて運営の中身を見せてもらい、提供するサービスの質を維持でき、一定期間変わらない条件でできるかどうかも含めて検討します。譲渡先の職員も利用者・家族も不安な気持ちでいるだろうから、「不利益な変更はないことを丁寧に説明します」と大前さんは、譲受にあたっての注意点を語ります。  また、外部のケアマネジャーが関係している場合は、事業を譲り受けるときにケアマネへの説明も欠かせないといいます。「住宅型施設と訪問介護サービスをセットで譲り受けますから、ケアマネの理解を得る必要があります。ここは意外と盲点かもしれません」と大前さんは指摘します。 自分の目で見て調査し隠れたコストまで試算し検討  事業譲受には時間を買うという意味合いもあります。土地を買い、建物を建ててと考えると、事業開始までに1年半から2年かかります。一方、事業譲受は、短期間で黒字化できるめどが立つのであれば、新規に施設を建てるよりも事業拡大のスピードアップがはかれます。「案件ごとのメリット・デメリットを見極めながら、新築、譲受物件を検討しています」と大前さん。  売買をするときには、売買価格だけでなく、一定水準で施設を回していくためにかかるすべてのコストを計算する必要があります。自社のサービス水準を達成するために必要な設備投資、満室にするためにご利用者を集める経費、職員の採用コスト、教育コストなども含めて計算し、借り入れをするならその返済計画まで考えて検討しなければなりません。  譲り受けた事業所の職員は、自社の研修センターで集合研修を行い、自社なりの介護の考え方をはじめ、介護知識、技術についても習得してもらいます。「みなさん基礎はお持ちですから、適宜研修を行い、半年くらいの期間を目安に考えています」と大前さん。  待遇を含めた条件、サービス、費用は大きく変わることはないので、職員もご利用者・ご家族からも大きな不満が出ることはありません。ただ、「ユニフォームが変わるので、ほんの一時期ですがご利用者は戸惑うかもしれません」と大前さん。  今後、М&A、事業譲受を考えている会社に対する大前さんのアドバイスは、「М&A仲介会社の話をそのまま鵜呑みにするのは危険です。自分の目で見て、実地調査をして、自社の運営に当てはめてシミュレーションをする必要があります。自分で調べれば、さまざまな疑問点が出てきます。それらを解消して、うまく回せるという判断ができるかどうか検討すれば、大きな失敗をせずにすみます」ということです。 株式会社ライフケア・ビジョン 2011年設立。「癒・食・住」で高齢者の暮らしを笑顔にする、をモットーに北摂地区を中心に、有料老人ホームやデイサービスなどを展開。アクティブシニア向け賃貸マンションなど、革新的な取り組みを続けている 大阪府大阪市東淀川区東中島1-18-22 新大阪丸ビル別館7F 06-6160-7088 lifecare-happylife.com/

質の高い人材を育成するため新卒・正社員の採用に注力

質の高い人材を育成するため新卒・正社員の採用に注力

<取材先>株式会社国立メディカルケア(現:株式会社オリヴィエ) ヘルパーステーションひろ 東京都国立市にある株式会社国立メディカルケア(現:株式会社オリヴィエ)は、医療法人社団浩央会国立さくら病院の初代院長が「在宅が一番重要」と考え、2002年に設立しました。訪問看護ステーションと居宅介護支援事業所を立ち上げました。その後、2007年にヘルパーステーションがスタートしました。中途採用・非正規雇用が主流のなか、7年前からは新卒採用・正社員採用に乗り出しています。 主な取り組み ◎学部を問わず新卒を募集 福祉系に限定せず、学部を問わずに福祉に興味がある学生を採用しました。水野さんは文学部卒、吉良さんは経済学部卒です。「まったく知識がなく、きちんと基礎から介護を学びたい、学び続けていきたいと考えていたので、入社後の教育体制は糧になりました」(水野さん) ◎マニュアルづくりを通して学びを確かなものに 一期生の2人が介護業界に詳しいコンサルタント会社に協力してもらいながら、介護の技術や手順についてはもちろん、心構えや会社のルール、利用者にはどういう態度で接するかなどを事細かにまとめています。これが後に続く二期生、三期生を指導する土台となっています。 ◎成長の道筋を明らかにする仕掛け 症例発表会など自己研鑽と発表の場を設けていることや、社員に「サービス提供責任者」のポジションを担わせることで、学びを深め、ステップアップする仕組みを見える化しています。 問題多い介護職経験者の採用 基礎からの人材育成に着手 ヘルパーステーションを立ち上げた同社の看護・介護統括部長の清水智惠さんは、看護師として病院で勤務したのち、福祉の専門学校で教鞭をとっていました。「介護の知識と技術を学んだ学生のほとんどは、卒業後施設に入職するため、在宅で働く人は多くありませんでした。今も、その流れは大きく変わっていないと思います」と経験上、在宅現場での人材確保の難しさを感じていたと話します。 在宅現場を支えるうえで介護職の役割は重要です。この認識から、正社員として介護職を雇用し、在宅現場を十分に理解する介護職を育成し、その人材を活用したヘルパーステーションを開設するのが、清水さんをはじめ同社の経営幹部が当初描いていたビジョンでした。しかし、集まってきた介護職経験者は、基礎知識が足りないなど質に問題があったことに加え、必ずしも正社員としての雇用を望んでいなかったり、チームの一員としての動きができないなど、足並みが揃わなかったといいます。 「私の力不足なのでは、と悩みました。そこで、マネジメントの経験者を招いて運営を委ねてみましたが、あまりうまくいきませんでした」と、清水さんは振り返ります。 試行錯誤を経て、〝正社員でヘルパーステーションをつくる〟という、もともとのビジョンに立ち返った同社は、清水さんの教職経験を活かし、人材を基礎から育成するべく、新卒の採用へと舵を切りました。 基礎を習得した新卒一期生を後輩を指導できる人材に 福祉を学んだ学生に限らず、一般大卒でも介護に興味のある学生を採用するため、同社はリクナビを利用しての採用活動を2016年から実施しました。翌年4月の入社から約半年間は先輩のヘルパーに同行し基本的な仕事の流れを学ばせるとともに、ステーション内で技術や知識を基本から清水さんが教えました。 同時に行ったのがマニュアルづくりです。これは、新卒採用一期生の水野香さんと吉良泰幸さんが、日々の業務や教育に基づいてまとめていきました。 加えて、同社が新たに始めたのが、年に一度の症例発表会です。看護師をはじめ社員全員が、1年間に手がけた症例をまとめ、年度初めのミーティングで書類として配布するとともに、発表会で発表を行います。 「一期生の2人はよく頑張ってくれました。新卒でも3〜4年きちんと学べば、管理者になれるほどの実力がつく。これは育成のいい経験値となりました」と、清水さんは眼を細めます。 新卒社員の育成には手応えを感じている同社だが、「少ないパイのなかで採用し、育てる難しさはあります」と明かす。厳しくなる一方の新卒採用に危機感を覚え、中途採用の検討に入っています。 「一期生の2人は基礎ができているので、年上に対してもものが言えるはず。介護の経験者をきちんと指導し、マネジメントできるようになることが、次の成長へのステップになると思います」と、清水さんは期待を寄せます。 新卒を育成するメリットとは? 看護・介護統括部長 清水智惠さん 新卒社員を育成して一番感じたのは、社歴による先輩後輩はありますが、職種に対する上下の意識がまったくなかったことです。先入観がなく、白紙の状態から介護職としてのアイデンティティが育ったため、看護師やケアマネジャーとも臆することなく対等に話ができます。これこそ私たちが望んでいたことなので、すごく達成感がありました。 (取材・掲載年:2019年5月 現在は新卒採用は行っていません)

コロナ禍における融資制度と借入のポイント

コロナ禍における融資制度と借入のポイント

<著者>C-MAS 静岡中央支部 戸部 翼  代表的な融資制度の概要を確認する  新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、売上の減少に伴い資金繰りが悪化し、政府の資金繰り支援策の活用によって急場をしのいだ事業者様は数多くいらっしゃるのではないでしょうか? 今回は、融資制度のうち、新型コロナウイルス感染症特別貸付(日本政策金融公庫)と独立行政法人福祉医療機構の優遇融資の概要を確認していきたいと思います。 [ 新型コロナウイルス感染症特別貸付とは ]  返済期間は、運転資金が15年以内、設備資金が20年以内で、いずれも最長5年以内の据置期間があり、融資限度額は8,000万円です。また、融資限度額のうち4,000万円までは中小企業基盤整備機構から利子補給制度を受けることにより、当初3年間は実質無利子とすることができます。  融資の対象は、  ①売上高が前年同期比または前々年同期比と比較して5%以上減少している  ②業歴3カ月以上1年1カ月未満の場合は、最近1カ月の売上高が   A.直近1カ月を含む過去3カ月の平均売上高   B.令和元年12月の売上高   C.令和元年10月から12月の平均売上高のいずれかと比較して5%以上減少している  のいずれかに該当する事業者となります。 [ 福祉医療機構の優遇融資とは ]  新型コロナウイルス感染症により、減収・事業停止等の影響を受けた福祉関係施設に対し、優遇融資を実施しています。  返済期間は、15年以内で最長5年以内の据置期間があり、融資限度額はなしとされています。  金利については、当初5年間のみ  ①前年同期などと比較して減収若しくは利用者が減少または自治体からの休止要請に対応など、新型コロナウイルス感染症により経営に影響を受けた場合  ②施設利用者または従業員およびその家族に、新型コロナウイルスの感染者が出たことによる休業等により、減収となった入所施設(地域密着型を除く)  のいずれかで下記のようになります。  まず、①の場合ですが、6,000万円までが無利子、②の場合は1億円までが無利子となり、それぞれの限度額を超えた分については、金利が0.2%となります。  6年目以降については、金利は①、②の場合ともに0.2%となります。  なお、担保については、①の場合は6,000万円まで、②の場合は1億円までが無担保とされています。  また、上記とは別に既に福祉医療機構から融資を受けている場合の取り扱いについては、当面6カ月の元利金、事業者の状況に応じてさらに3年間(最長3年6カ月)の元利金の支払いについて、返済猶予の相談に対応しています。 借入をする際は将来の支出なども整理しよう 新型コロナ関連融資の特徴として据置期間が最長5年となる場合があり、すぐに返済が始まるわけではありませんが、その分、据置期間を含め、借入完済までの期間が長期化することになります。まずは、借入情報に基づき、将来の返済シミュレーションを行いましょう。元本返済のために売上や利益、固定費の削減がどの程度必要なのか、今のうちから明確にし、返済が可能かどうか確認することが重要です。 また、借入期間が長期化するということは、介護報酬の改定も数回行われることが想定されます。そのため、報酬改定の情報収集も行い、定期的に返済シミュレーションを見直すことも大切です。 借りた資金は必ず返済しなければなりません。借入時に利息が減免または優遇されるといって、過重に借入をすることにより、将来の返済負担が経営の重荷にならないように注意する必要があります。 (取材・掲載年:2020年12月)

これからの経営基盤をつくるのはデイサービス

これからの経営基盤をつくるのはデイサービス

<著者>日本社会福祉事業大学専門職大学院 特任教授 宮島 渡 近年、デイサービスの稼働率が下がってきたという声を、よくよく耳にします。デイサービスは、夜勤がなく日曜が休みでパート人材が集まりやすく、潰れたコンビニを改装してできるなど、簡単にオープンできることから乱立が相次ぎ、競争が激化したことが背景にあるのでしょう。 この対策として、入浴や食事提供をせずに午前と午後2単位のリハビリ特化型デイサービスにしたり、食事に特化したり、アミューズメント化などメニューの差別化を図り、他社との違いを強調してどうにか競争の中で生き延びようとしています。もはや、デイサービスは血で血を洗う「レッドオーシャン」のなかにいます。 しかし、その打開策のヒントは厚生労働省老人保健事業推進費等補助金によって2014年3月に出された「通所介護のあり方に関する調査研究事業」の報告書にありました。その中で目に止まったのが、地域包括ケア体制におけるデイサービスの位置付け、つまり、デイサービスの再定義です。「これからのデイサービスは単体で機能するのではなく、地域包括ケア体制の中で他の事業やサービスと組織間連携やサービス連携を相互に好影響をし合う、シナジー効果を上げること」と報告書では述べています。 社会福祉法人さつき会は北海道旭川市に隣接する鷹栖町にあり、レッドオーシャンから抜け出し、今はデイサービスが経営再興の切り札になっています。原稿執筆時点で人口およそ33万人の旭川市には、約4000床と日本でトップクラスの高齢者の住まいがあります。人口約6800人の鷹栖町の高齢者は、旭川市の病院への入院を契機に、そのまま市内の高齢者の住まいに移住します。その結果、さつき会のデイサービスと小規模多機能型居宅介護事業所の稼働率が減少するとともに、利用者の軽度化による経営上の問題を抱えていました。 法人の常務理事の波潟幸敏さんはこの状況を憂いて対策に乗り出しました。それが、デイサービス改革です。まず、旭川で入院してもまた鷹栖町に戻れるよう、高齢者の住まいを整備。続いて、総合事業の実施、リハビリに特化したデイサービスと小規模多機能の通いの機能分化と連携を図りました。「預かるデイサービス」から「元気を作るデイサービス」へとコンセプトを変え、総合事業からデイサービス、小規模多機能へとシームレスな支援体制を築いていったのです。その結果、総合事業はフィットネスクラブ「コレカラ」を開設し、フレイル対策を中心に行うことで、町内高齢者の30%が登録するという驚異的な数字となりました。さらに、総合事業を卒業した高齢者は研修を経て運営者側になることで、虚弱高齢者をアクティブシニアに変えています。 デイサービスの平均要介護度は1.7と軽度であり、利用者は「頭の元気」「体の元気」「心の元気」など予防的な取り組みを中心に行います。そして、中重度者は小規模多機能の通いを使う形です。 鷹栖町としては旭川市に移り住む人口を食い止め、フレイル予防や介護予防、自立支援により、要介護度の軽減と保険料の減額を見込んでいます。「地域住民によし・法人によし・鷹栖町によし」の三方よしをデイサービスの改善により実現させています

営業の仕組みを理解して効果的に自分たちの“良さ”を見える化しよう

営業の仕組みを理解して効果的に自分たちの“良さ”を見える化しよう

<著者>社会福祉法人にんじんの会 常務理事・事務局長 石川正紀 営業活動や情報発信は楽しんで取り組もう! 今回は、新規利用者様を獲得する営業活動と情報発信の手法についてお話ししていきます。今は、要介護認定者は増えていますが、その分事業者数も増えており、地域によっては、認定者増加率より事業所増加率の方が高い地域があるのではないでしょうか。地域福祉・社会福祉に関わる私たちも、利用者本位のサービスを継続的に行い、自己実現の場である「働く場所」を守るためにも、営業活動が欠かせないステージに入ってきていると思われます。 「デイサービス稼働率前年比110%」「登録人員前年比15名アップ」「売上前年比105%」……皆様のところでも、このような事業計画の目標を立てられていると思います。これらを達成するためには営業活動が不可欠であり、そのための「見える化」した情報発信が必要です。介護・福祉事業では、「営利活動や営業活動はなじまない」という考え方もあり、多くの介護事業者の方がネガティブな発想をもったり、苦手意識が働いたりしてしまうかもしれません。しかし、本来の営業活動や情報発信は楽しいものであり、ワクワクするものです。最初は慣れるまで大変かもしれませんが、自分たちの良いサービスをPRする舞台だと考えて、普段の活動の“良いところ”や“楽しさ”を伝える努力をしてみましょう。 戦略的に分析して ターゲットをリスト化しよう 営業活動を行う際に、気をつけなければならないのは、漫然と「地域の大きな居宅介護支援事業所に営業すれば、何か紹介してくれるかもしれない」と考え、訪問を繰り返すものの、良い返事をもらえない日々が続いて営業をあきらめてしまうことです。 過去の事例でいうと「大きな社会福祉法人へ営業に行ってきました」等の報告を受けることが多くありました。しかし、自分たちが提供しているサービスメニューをすでに持っているような法人に、何度行ってもあまり効果が出ないことは明白です。 まずは、戦略的に商圏内の居宅介護支援事業所をリストアップし、各居宅介護支援事業所のケアマネジャーの名前と紹介件数を整理して、各居宅介護支援事業所のABC分析※を行います(図表)。各ケアマネへの接触頻度(訪問日)を、一覧表にまとめ、ターゲットを整理します(ちなみに、「戦略」は、“たたかい”を“はぶく”と書きます)。 ケアマネに営業する場合は、その居宅介護支援事業所に併設しているサービスが自分のサービスとバッティングしていないかどうかを見極める必要があります。また、自施設にご紹介いただいたお客様がいたかどうかなど紹介実績の有無も大きなポイントの一つです。 また、居宅介護支援事業所に営業しにいくのではなく、個々のケアマネに営業することが重要になります。ケアマネは、紹介業ですので、自分で仕入れた情報以外、基本的に紹介しづらいものです。直接、各ケアマネに挨拶できる営業活動を心がけましょう。 ABC分析に基づいて効果的な営業活動を繰り返すと、次第に紹介件数は増えてきますが、これで満足してはいけません。やっていくと分かりますが、一人のケアマネからの紹介件数が2〜4件でストップしてしまうことが起きます。こうした際は、①各ケアマネの受け持ちプラン件数、②受け持ちプラン件数における該当サービス割合・件数等もリストに落とし、さらに分析を行うと、商圏内のシェアが分かります。シェアが判断できると、次の一手が見つかりやすいので、是非取り組んでいただきたいと思います。 自分たちの“良さ”を説明できる ツールをつくろう 営業リストが完成したら、アプローチブックやイベントチラシなどのツールを製作してみましょう。 なぜ、ツールが必要なのでしょうか? 営業を行う場合に見落としがちなのは、「エンドユーザーは、ケアマネではない」ということです。ケアマネはあくまで代理店であり、ケアマネにいくら良い説明を行っても、最終的に利用者にその良さが伝わらなければ、意味がありません。ツールを製作することで、ケアマネを通じて、介護事業者の“良さ”を利用者さんに伝えることが重要なのです。 アプローチブックとは、そのサービスや事業所の売りをまとめた小冊子のことです。介護事業者の皆さんが提供している商品(サービス)は、「楽しい時間と空間」や「リハビリ」、「認知症ケア」、「入浴」等です。俗人的な営業活動ではなく、第三者でも同じ説明を行えるよう、コンセプトや取り組んでいることを明確に示し、写真などを数多く取り込んで、“良さ”や“ウリ”がイメージしやすい小冊子を製作しましょう。 また、イベントに積極的に取り組み、チラシを作成することも大事なポイントの一つです。 イベントチラシを作成する際は、①できる限り面白い内容・タイトル・サブタイトルをつける、②特典やノベルティをつける、③日時、場所、費用を明確にする、④申込用紙(申込欄)をつける――などに留意しましょう。 イベントの内容・タイトル・特典などを、ミーティングなどでしっかりと打ち合わせすることも重要ですが、その際は、楽しくてワクワクするような雰囲気を作ると良いと思います。営業活動上の必要性はありますが、利用者・訪問者に、楽しい時間・空間を過ごして頂くことが、結果として良いPRになります。当法人でも、試行錯誤しながらも、利用者さんに情報が届くように、楽しく営業活動を行っております。 営業を含むマーケティング活動は、科学的な活動ですので、再現性が無ければなりません。再現性とは、誰が行っても、一定の成果を出せる仕組みにしなければならないということです。仕組みを構築できれば、意外と楽しく目標を達成することができますので、是非取り組んでみてください。 ※ABC分析=さまざまな要素から重要度を仕分けして、効率的な方法を考案する手法。本稿の図表では、法人の該当サービスの有無と、外部の事業所への紹介事業の有無から、居宅介護支援事業所の重要度をA~Cに仕分けし、営業先の優先順位を決める。 図表 ABC分析 石川正紀 社会福祉法人にんじんの会 常務理事・事務局長 株式会社JTBで法人向け営業などに従事した後、社会福祉法人にんじんの会で介護業務に従事し、事務局長として経営全般を支える。その後、船井総合研究所に入社し、介護事業者を中心に戦略立案から現場の支援まで幅広くコンサルティング業務に携わる。2012年より現職。 社会福祉法人にんじんの会 東京都国分寺市西恋ヶ窪 1-50-1 ninjin.or.jp/ 042-300-6035 (取材・掲載年:2020年1月)

【ケーススタディ】専門特化・移転を経て 感染症対策も万全な体制へ

【ケーススタディ】専門特化・移転を経て 感染症対策も万全な体制へ

<取材先>東京リウマチクリニック(東京都大田区) 目次 01:より多くのリウマチ患者を受け入れるべく専門特化 02:昨年に新築移転を決行より安心できる体制へ より多くのリウマチ患者を受け入れるべく専門特化 東京都大田区にある、東京リウマチクリニック。2006年に「自由が丘整形外科」という院名で開業した当初は、天本藤緒院長の専門であるリウマチ治療と膝関節治療の2本柱を掲げる整形外科診療所でした。そして、17年にリウマチ専門診療所へと転換し、現在の院名に改称。その狙いを天本院長は次のように振り返ります。 「リウマチ患者さんが増えるにつれて、リハビリや注射が中心だった膝関節疾患と薬物治療が中心のリウマチでは、どうしても治療のスタイルが異なり、待ち時間の短縮などが難しい状況でした。より多くの患者さんを受け入れ、無駄なく必要な医療を提供したいという思いがあり、専門特化したほうが良いと考えたのです」 開業から約15年、天本院長のほか非常勤のリウマチ・膠原病の専門医3人が在籍し、現在通院するリウマチ患者は2500人以上と、10年以上通院している人も多いといいます。また、最初は別の診療所に通院していたものの症状が改善せずに悩み、WEB検索などでリウマチ専門診療所を探して訪ねてくる患者も少なくなく、首都圏全域から来院しているそうです。 昨年に新築移転を決行より安心できる体制へ 同院では、常にリウマチ患者が安心・安全に治療を受けられる体制整備や工夫を続けています。たとえば、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行下では、特にリウマチ患者は感染症のリスクが高いことから、電話再診やビデオ受診、長期処方なども率先して取り入れ、通院継続環境を整備しました。 また、昨春は2度目になる新築移転を行い、ハード面の改良にも着手。たとえば、診療所入口には専用の手洗い場を設置し、全員が必ず石鹸で手を洗って院内に入るように徹底。患者が使う蛇口はすべて温水式で、これは冷水が患者の痛めている手指の関節に響かないようにという配慮になっています。 「新型コロナ前から計画していた移転ですが、結果的に現在、新型コロナ対策として有効に機能しています。また、人が密集する電車を避けて車で通院したい人のために駐車場も以前より拡張したのも好評です。これらと、患者さん自身の危機意識も上がっていることもあり、昨冬は例年に比べ肺炎などにかかった患者さんは少なかったです」と、天本院長は説明します。 最後に、リウマチ専門診療所の可能性と同院の展望について、天本院長はこのように語りました。 「私も含め、当初はリウマチ+αで開業する人は少なくないですが、リウマチ患者さんが増えるにつれて最終的にリウマチ専門へと一本化していく診療所は多いと思います。今後もリウマチ・膠原病の専門医で開業する人が増えていくなら、一般整形外科診療所との住み分けは進んでいくのではないでしょうか。そのなかで、当院も引き続き患者さんにとって理想的な診療所を目指し、専門性の担保はもちろん、たとえば、最新のデジタル技術やAIなど、患者さんがより楽に、便利に治療を受けてもらえる体制につながる仕組みの導入にも取り組んでいきたいです」 制作:日本医療企画 (取材年月:2020年2月)

【解説】義歯調整と口腔ケアから始める 「在宅歯科」成功の方程式

【解説】義歯調整と口腔ケアから始める 「在宅歯科」成功の方程式

<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント 歯科経営の成長分野として注目されるのが「在宅歯科診療」です。厚生労働省も後押ししており、診療報酬でも手厚い評価が見られます。休診日に訪ねるだけで済むほど簡単ではありませんが、費用をかけずにスタートすることは可能です。 目次 01:在宅歯科診療のメリット・デメリット 02:介護保険と医療保険の両方が適用される 03:訪問日が週1日では訪問先拡大は無理 04:過去3年間で中断している患者から抽出する 05:最初は電気エンジンと吸引機だけで開始する 在宅歯科診療のメリット・デメリット 今後の歯科経営の成長分野として在宅歯科診療を考えてみましょう。診療報酬も手厚く、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準にも「過去1年間に歯科訪問診療の回数が5回以上であること(または在歯診への依頼)」があります。開始にあたっての歯科医院経営におけるメリット・デメリットを整理すると、次の表-1のようになります。   表-1「在宅歯科診療のメリット・デメリット」 メリット デメリット 1.増収を図ることができる 新しい収益分野を獲得できるので、訪問先が増えると経営の安定化が見込める。 2.生涯を通じたケアが可能になる 生涯診てもらえる歯科医院として、インプラントなど外科処置においても患者の信頼を得やすい。 3.医科との診療連携が図れる 在宅歯科診療によって地域の医科診療所との連携関係が強化される。 1.ドクターとスタッフの負担が増大する 在宅歯科の準備や片づけ、往復や書類作成など、医師とスタッフの負担が増大する。 2.設備や用具の調達資金が必要になる 訪問診療車やポータブルユニットなど用具の調達に資本投下が必要になる。 3.人事労務管理が煩雑になる 在宅診療を担当する歯科医師や歯科衛生士の確保、外来診療部門との在宅部門との確執など問題が生じやすい。 在宅歯科診療を開始する前に知っておきたいポイントは次のとおりです。 1.介護保険と医療保険の両方が適用される 在宅歯科診療の場合、要介護認定を受けている「在宅患者」に対しては「介護優先の原則」があり介護保険が優先適用されます。 2.訪問日が週1日では訪問先拡大は無理 休診日に1日だけ訪問診療を開始しようと考えるケースが多いのですが、高齢者は多忙です。医科の診療、デイサービス、入浴日などがあり、特定の曜日に予約がとりにくいのです。たとえば、午後1時から4時までの3時間だけでも、週3日以上は在宅歯科診療にあてる覚悟が必要です。 3.過去3年間で中断している患者から抽出する 過去3年以内にデンチャー(義歯)を入れ、その後、治療が中断しているような患者さんには、歯科衛生士から電話をかけてみるのも一案です。何らかの事情で来院できないのであれば、訪問診療が可能であることも伝えてみましょう。歯科訪問診療移行加算100点(か強診は150点)を算定できます。2~3人を訪問診療に移行できれば、1年間5回以上は簡単に達成できます。 4.最初は電気エンジンと吸引機だけで開始する 在宅歯科で行う処置の70%は義歯調整と口腔ケアです。電気エンジンと吸引機があれは対応可能です。ポータブルユニットなどの高額の医療機器は必要な際に歯科医師会から借りるなどして対応することを考えましょう。 やがて介護施設での在宅歯科が決まり、訪問診療者やポータブルユニットやレントゲンが必要になったときは、借入とリースを上手に組み合わせて検討しましょう。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】スマホ対応サイトがなければ「始まらない」!

【解説】スマホ対応サイトがなければ「始まらない」!

<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント ただでさえ競争の激しい歯科医院。マーケティングツールとしてホームページは今や必須ですが、 作ればいいというものではなさそうです。インターネット閲覧者の7割近くがスマートフォンを使う現在、 スマホ対応のホームページでなければ、スタートラインにすら立てないようです。 数ある広告媒体のなかでも、歯科医院のマーケティングツールとしてホームページの重要性は増すばかりです。 もはや「ホームページを見てもらえなければ始まらない」とさえ、言えるでしょう。しかし、「何を使ってホームページを閲覧しているのか」という点も考え合わせなければ、せっかくホームページを立ち上げても閲覧してもらえず、認知度は高まりません。認知度を高める対策を立てるうえでも、このことに留意することが不可欠です。 図1は、総務省が発行した「令和3年度情報通信白書」のうち「インターネットの利用状況調査」の資料です。 これによると、インターネット利用端末の種類で最も多いのはスマートフォン(スマホ)で、68.3%、前年比5ポイント増となっています。これに対してパソコンの普及率は50.4%と横ばいです。 つまり、インターネットで最も多く使われているのはスマホであり、かつその割合は拡大中なのです。 さらに言うなら、スマホに対応したホームページを持っていないことが、他の歯科医院と差別化されてしまう リスクになりうるのです。スマートフォンで医院を検索する患者さんが半数以上いるということを前提に、 ホームページを作る必要があるわけです。 図1:当該端末を用いて過去一年間にインターネットを利用したことがある人の比率 (出典:総務省「通信利用動向調査」 また、2020年9月から、Googleはモバイルサイトを優先的に表示する「モバイルファースト・インデックス」 という機能を導入しています。このため、スマホページがない医院は、検索順位が下がっていく可能性があり、 スマホ用ホームページを作るか、レスポンシブウェブデザインに作り直すか、どちらかを考える必要があります。 このレスポンシブデザインとは、パソコンで閲覧する場合でも、スマホで閲覧する場合でも、画面に合わせて自動的 に構成要素を組み替えて表示させるWebサイトの作り方のことです。この作り方ですと、スマホで見た場合でも文字や 写真が見づらくなりません。図2のように表示されるブロックが置き換わって大きく表示されるため高齢者でも見やすい画面にできるのです。 スマホ用のサイトを追加するより、サイト全体をレスポンシブウェブサイトに作り変えるほうが有利になります。 それは、スマホでの検索回数とパソコンからの検索回数が合算されるためです。パソコン用ページやモバイル用ペー ジがあることをGoogleが知る必要がなく、ページ読み込みのスピードが上ることも有利になります。 この結果、レスポンシブデザインのホームページが検索順位で上位表示される可能性が高いのです。その結果、 「〇〇市〇〇町 歯医者」や、最寄り駅の「駅名 歯医者」など、狭いエリア内の検索で1ページ目に表示される 可能性が高くなります。さらに、スマートフォンで閲覧しても見やすいので、高齢者にも閲覧していただける可能性が高くなるのです。 選ばれるためには、他の医院のホームページと比較されることを前提に、選ばれるための情報を伝える必要があります。 ぜひ、レスポンシブウェブサイトへのホームページのリニューアルをお勧めします。 著者:木村 泰久 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】患者増にもつながりやすい予防歯科 カギを握る歯科衛生士が求める条件とは

【解説】患者増にもつながりやすい予防歯科 カギを握る歯科衛生士が求める条件とは

<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント 患者数を増やす有効な手立てとして注目したいのが「予防歯科」です。ただ、この担い手である歯科衛生士は現在、採用が難しくなっています。パートでの雇用や勤務時間の指定など、さまざまな要望が出てきます。柔軟な対応が必要になりそうです。 患者数を増やすには、初診患者を増やすだけでなく、患者を維持する必要があります。そのために予防歯科が有効です。予防歯科が入り口となり、継続診療につながり、医院の増収にも結び付くことも期待できます。初診患者の一定割合が定期的に来院してくれれば経営は安定していきますが、まさにこの図式が予防歯科には当てはまります。 回数を重ねるごとに歯科治療の知識も増え、自費治療を選ぶケースも増加します。医療保険でもSPT(歯周病安定期治療)やP重防(歯周病重症化予防治療)などは、60分で1万円程度の診療報酬が得られます。一人の歯科衛生士が1日5人に対応すると想定した場合、1カ月22日診療すると、売上は100万円(@1万円×5人/1日×22日=110万円)を超えます。技工料も材料代もかからず、採算性の高い診療です。 そこで問題になるのが歯科衛生士の確保です。予防歯科を進めるには歯科衛生士が欠かせませんが、採用が困難な状況が続いています。給料も高騰しており、首都圏では初任給が26万円前後になっています。さらに、表のような条件を満たす医院が選ばれています。ただ、このような条件を満たせる歯科医院はわずかでしょう。 ① 経営が安定し、永続性がある医療法人。 ② 社会保険が完備している。出産手当金や入院給付に手厚い協会けんぽで、厚生年金、雇用保険がある。 ③ 複数の歯科衛生士が勤務していて有給休暇が完全取得できる。 ④ 院外研修がなく、院内でスキルアップが図れる。 ⑤ 午後6時終業で土日休診。 ⑥ 駅から徒歩5分以内、または車通勤可。 ⑦ 基本給17万円以上(賞与や退職金の計算の基礎が基本給であるため)。 ⑧ 退職金制度あり。 ⑨ 住宅補助あり(東京、横浜では、地方出身者に3万円から6万円の家賃補助を支給する医院がある。この結果、首都圏での学卒歯科衛生士の実質賃金は29万円から30万円に達する)。 ⑩ 残業、休日出勤がないか、少ない。 パートタイマーの採用もあわせて検討する必要があります。中に配偶者控除の壁があり、多くが午後5時までの勤務を希望しますから、シフトも工夫する必要があります。 常勤やパートなどいろいろな歯科衛生士が集まると、人によって手順や所要時間が違うことが多く、患者から不満が出てきがちです。全員が同じ処置ができるように手順や使用材料などはマニュアル化し、教育研修をしておく必要があります。 さらに、できるだけ担当制にします。担当患者の治療経過を継続的に把握でき経験と自信につながるからです。担当制にしてチェアサイドで予約をとると、リコール率が高くなり無断キャンセルも減少します。 ただし、3カ月先から6カ月先までの予約をとり、ショートメールでリコール案内を送るためにはアポイントコンピューターの導入が不可欠です。手ごろな金額で導入できる機種も増えているので検討していただきたいと思います。 やがて予防患者が増えてくるとユニットの増設が必要になります。そのときは、借入とリースを上手に組み合わせて検討しましょう。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】分院の立地としてチェックすべき 「徒歩20分以内」「差別化が可能」

【解説】分院の立地としてチェックすべき 「徒歩20分以内」「差別化が可能」

<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント 事業拡大期において最も挙がりやすい選択肢が「分院展開」です。ドミナント効果とシナジー効果が見込めるなどメリットはありますが、「良い物件」を見つけなければ始まりません。そのポイントを解説していただきます。 目次 01:分院を作る目的を明確にしておく 02:「開設できる場所」と「成功できる立地」は異なる 03:地域の競合に勝てる規模で作る 04:理事長が20分で駆けつけられる場所で開業する 05:理事長が分院で週2日診療する 06:分院経営に適した組織とマネジメント体制を構築する 07:分院開設の資金調達は、借入とリースを上手に組み合わせて検討しましょう 分院展開のメリットは、開業地域のリスクを分散でき、共通の看板設置で認知度を高められ、材料などの購買量が増えて廉価購買ができるなど、ドミナント効果とシナジー効果が得られることです。逆にデメリットは、医師やスタッフの人事労務管理が煩雑になること、借入返済や維持コストがかかること、さらに、分院長や中核スタッフの確保に苦労することです。 また、分院の開設に向くケースとそうでない場合があります。分院開設に向くケースは、本院の拡張が困難で、信頼できる「分院長にできる歯科医師がいる」、そして「徒歩でも車でも20分以内」の場所によい物件がでてきた場合、そして、「近隣の歯科医院を差別化できる規模」の分院を開設できる資金が調達できる場合です。 逆に向かないケースは、本院の増床や在宅歯科など他の成長戦略を優先すべき場合です。さらに、信頼できる分院長の人材を確保できない場合や既存医院を差別化できる医院を作るだけの資金を確保できない場合もやらないほうが無難です。 分院経営を成功させるには、次のポイントに留意する必要があります。 1)分院を作る目的を明確にしておく 「何のために分院を開設するのか」を明確にしておく必要があります。本院を年中無休する、在宅歯科を拡大するなど、リスクが低い選択肢もあるからです。 2)「開設できる場所」と「成功できる立地」は異なる よくある失敗が、親の持つ余った土地に分院を作るケースです。患者が集まりません。成功するには「だれがやっても成功できる立地」を選ぶ必要があります。 3)地域の競合に勝てる規模で作る 分院を成功させるには、地域の競合に勝てる医院を作ることが必要です。6台以上のユニット台数、複数の歯科医師、歯科衛生士とスタッフを確保し、1億円程度の投資が必要です。 4)理事長が20分で駆けつけられる場所で開業する 理事長が20分以内に駆けつけられることで、勤務医やスタッフに緊張感と万一の際の安心感が生まれるからです。 5)理事長が分院で週2日診療する 理事長が週2日分院で診察を行うと、立ち上がりを肌で感じることができ、スタッフからの信頼を獲得できるからです。 6)分院経営に適した組織とマネジメント体制を構築する 指示伝達の手順を定め、分院との会議体をつくり、信頼できるスタッフを据えて連絡体制を作り、合同の忘年会やイベントなど、医院が一体となる場を構築する必要があります。 7)分院開設の資金調達は、借入とリースを上手に組み合わせて検討しましょう 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】患者はしっかり見ている 万全の感染対策で信頼度をアップしよう

【解説】患者はしっかり見ている 万全の感染対策で信頼度をアップしよう

<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント 商業施設や公共施設など、不特定多数が集まる場所は、「感染対策」は必須項目と言えますが、とりわけ医療機関は高い水準での方策が要求されます。来院する人たちはこちらが想像している以上に厳しく見ているもの。裏を返せば、その厳しい要求に応えられれば、さらなる信頼につながります。 目次 01:自動消毒液噴霧器兼体温計を設置する 02:待合室を密にしない 03:ユニットごとに空気清浄機を設置する 04:ゴーグルとフェイスシールドを着用させる 05:グローブのままあちこち触らせない 06:クレンリネスを励行する 07:滅菌消毒機器を強化する 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大が起きて2年以上が経過しました。感染力がひときわ強いとされるオミクロン株の感染拡大によって院内感染対策についての視線は厳しくなっており、患者さんが見て分かるような院内感染対策を工夫する必要があります。魅せる院内感染対策には次のようなポイントがあります。 1)自動消毒液噴霧器兼体温計を設置する  最近はコロナ慣れして、設置している自動体温計をすり抜けて入る患者さんがいて、「感染対策が甘い」というクレームにつながることがあります。アルコール消毒に関しては、医院側から特にお願いしなくても行う患者さんが多いので、手首で検温する自動噴霧器兼自動体温計を設置しておきましょう。 2)待合室を密にしない 待合室ではソーシャルディスタンスを保つよう、協力を求めるメッセージを表示しておきます。土曜日など家族連れが来院する場合は「密」になることがありますので、車で来院された方には呼び出しベルを渡して駐車場でお待ちいただくなどの対策が有効です。 3)ユニットごとに空気清浄機を設置する エアロクリーンなど本格的な空気清浄機には高額の費用がかかります。数万円の小型の空気清浄機をユニットごとに設置することで、患者さんは安心してくれます。 4)ゴーグルとフェイスシールドを着用させる スタッフは必ずゴーグルとフェイスシールドを着用しましょう。感染対策を実施していることが伝わり、術者自身を守ることになります。施術中に飛び散る水滴には患者の血液や膿、コロナウイルスも含まれています。口と鼻腔はマスクでガードされていますが、目を感染リスクから防護する必要があるのです。 5)グローブのままあちこち触らせない グローブをつけたままあちこち触り、そのまま口腔内を触ってクレームになるケースがあります。患者さんの目の前で新しいグローブを装着してみせることを心がけましょう。 6)クレンリネスを励行する クレンリネスは「清潔な状態を保つこと」を意味します。汚れる前にキレイにするのです。また、術者の視点と患者さんの視点では角度や高さが異なるため、患者さんが座る椅子やユニットに座ってチェックする必要があります。トイレも便座に腰かけると見えない汚れに気づきます。患者さんの視点に立って、毎日、毎週、毎月の清掃箇所と方法をルール化しましょう。 7)滅菌消毒機器を強化する クラスBオートクレーブやウォッシャーディスインフェクターなどの機器を装備することで、滅菌レベルを向上させ、スタッフの負担を軽減することが可能になります。機器はリースや借入を工夫して上手に調達しましょう。そして、ホームページや院内掲示で高度な機器で清潔管理を実施していることを伝えましょう。 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【解説】歯科医院所得は減少トレンドだが、やり方次第で数千万~1億円も

【解説】歯科医院所得は減少トレンドだが、やり方次第で数千万~1億円も

<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 子ども人口の減少を背景に、歯科医院の経営環境は決して楽観はできないようです。しかし、成功している歯科医院が存在していることも確かです。勤務医の時から経営者目線を持つこと、自分の「ブレーン」となるような専門家とのつながりを持つこと、何よりスタッフが定着・成長する職場環境づくりに留意したいものです。 目次 01:歯科医院の年収 02:勤務医時代のスタンス 03:相談相手を待つ 04:経営は人に尽つきる ①歯科医院の年収 歯科医院の新規開業は全国で年間2000軒前後ありますが、人口が減少し子どもの虫歯は減る一方なので、歯科医院の所得は年々減少しています。 ところが、ある税務の業界団体の統計によると、歯科医院の年間診療収入の平均値は4800万円であり、医療法人に限ると1億1300万円となっており、決して悪い数字ではありません。 また当事務所で顧問をさせていただいている約300軒の歯科医院のうち、3割の医院が年間診療報酬7000万円を超えています。また2割の医院が、年間の所得が3000万円を超えています。 環境は厳しいですが、やり方次第と言えます。成功されている医院の見学や勉強会へ参加し、成功のヒントをつかみましょう。 ②勤務医時代のスタンス 勤務医時代に歯学における診療技術を磨くことは当然ですが、将来、開業を目指すのなら、経営ノウハウも習得するように心がけることが大事です。医院やスタッフのちょっとした言葉遣いがきっかけで、患者さんとの間で起きるトラブル、古い内装、外観で患者さんが離れていくといったところを経営者の目線で観察していきましょう。 院長の感情の起伏が激しくてスタッフが定着しないといった問題を抱える医院も多く見受けます。 ③相談相手を待つ 開業すれば、歯科医師としての業務以外にさまざまな経営者業務が付加されます。 例えば保険請求の仕方に問題があれば、診療報酬の返還や、監査への波及もあります。治療のトラブルで患者さんに訴えられることもあります。従業員の解雇の仕方を間違うと不当解雇で労働基準監督署のお叱りを受けることもあります。必要性の乏しい医療機器を購入して、返済負担がきつくなり一挙に月額必要収入が跳ね上がることもあります。 このような経営に纏わる諸問題に遭遇した時に頼りになるのが、経営に明るい先輩や同僚、各分野の専門家であり、ブレーンを外部に持つことが、安定経営のポイントとなります。 ④経営は人に尽つきる 開業後、間もない時期にスタッフが、次々と退職するといった事能は避けたいものです。多少費用と時間がかかっても歯科業界に詳しい社会保険労務士に相談して、労働法規が遵守されていないといったクレームを起こさないようにしなければなりません。 労務コストは上がりますが、厚生年金加入も採用のポイントです。「歯科医師会未入会なので、従業員には国民健康保険に加入してもらう」といったことは論外です。スタッフ採用の面では、医療法人のほうが有利かもしれません。 その他定期的なミーティングの実施で、院長が一方的に喋るのではなくスタッフが活発に発言をして、また外部研修への参加を推進しているような体制があることが、繫盛医院に共通しています。 監修:㈱日本医療企画 取材年月:2022年3月

【インタビュー】皮膚科過疎地域のニーズに対し 組織拡大しながら受け皿を増やす

【インタビュー】皮膚科過疎地域のニーズに対し 組織拡大しながら受け皿を増やす

<取材先>菅原祐樹 菜の花皮膚科クリニック 院長 目次 01:地域ニーズに応えるもヒトのマネジメントが課題に 02:一定数のニーズに着目しオリジナル化粧品を開発 地域ニーズに応えるもヒトのマネジメントが課題に ――2007年に「すがわら皮膚科クリニック」として岩手県一関市に開業。17年に現診療所名に改称、18年には分院を開設されました。現在までの道のりについてお聞かせください。 菅原●本院は皮膚科、美容皮膚科を標榜し、前者は私が、後者は妻が主体で担っています。分院は、私の弟が循環器内科を担当し、皮膚科は本院の医師が週4日交代で外来を担当しています。 一関市は岩手県南部に位置し、全体的な医療資源も少なく、特に皮膚科は少ないです。そのため、当院の診療圏も県南地域を中心に隣接する宮城県気仙沼市方面など、半径20〜30㎞で、車で往復2時間かけて来院される患者さんもいました。 幸いにも、本院で診られる患者さんのキャパシティーに近づいたこと、遠方の患者さんの利便性を高めるため、本院から東へ約40㎞の気仙沼市との中間地点に分院を出しました。法人全体の患者数は6月単月で約1万2700人、本院と分院の内訳は7:3くらいです。また、7年前から地域の在宅患者さんの皮膚疾患の訪問診療を受けており、今は150人ほど診ています。 スタッフも、常勤医師5人、非常勤医師5人、看護師13人、看護助手6人、事務職17人――など、法人全体で46人になり、17年に改称したのも、このように大所帯になったので、私の個人名よりも、幅広くわかりやすい名称のほうが良いと思ったからです。「菜の花」は一関市の花で、地域の人にもなじみがあります。 ――人員が増えた分、スタッフマネジメントは大変かと存じます。 菅原●そこは非常に苦労しました。開業当初の少人数のときは、医療経営セミナーや勉強会で勉強したことを実践したりと、自分なりに努力してやっていけていたと思いますが、人数が増えるにつれて私一人ではまったく手が回らなくなりました。スタッフ間でトラブルが起きてもうまく対処できず、一時期はそれが原因で離職者も出してしまいました。 そこで今年から、開業当初からの付き合いの信頼できるコンサルタントに、正式に事務長として入ってもらいました。マネジメント業務全般、特にスタッフの採用、教育、管理を任せています。人員配置やシフトの適正化など、手が回っていなかった部分も任せられたことで、組織もスムーズに回るようになったと実感しています。 私の精神的負担もとても軽くなり、診療に集中できています。また、診療面でも、今でこそ勤務医の皆さんを信頼し、基本的にそれぞれにお任せしていますが、最初は他の医師へ任せることに不安があり、勤務医の増加にともない、診療の統一を図るつもりでお願いや指示をしていましたが、言い方がよくなかったのか離職されてしまったこともありました。 逆に、お任せするようになってからのほうが、患者満足度は高くなったのか、患者さんは増えました。自分はそんなに大層な人間ではないと気づかされ、今は診療スピードが多少遅くても、やさしく人柄の良い先生であればよいくらいの姿勢を心がけています。 一定数のニーズに着目しオリジナル化粧品を開発 ――そのほか、経営面で苦労した点、改善した点はありますか。 菅原●経営面については、開業してから勉強し始めたので、それこそ、お金に関しては本当に苦手で、何も知らないところからのスタートでした。銀行融資などにも無知で、正直いろいろな出入り業者さんも何も知らないまま割高な支払いをしていたりと、振り返れば開業当初は高い「勉強代」を払っていたと、反省しきりです。そのため、今は事務長の力を借りながら、さまざまな経費削減や経営改善の取り組みを進めています。たとえば、効果の検証なしに複数出してしまっていた看板広告などの整理や、カード決済手数料の引き下げ交渉、医療材料の仕入れ価格の見直しなどです。 ――一方、別会社でオリジナルの化粧品開発・販売にも取り組まれています。 菅原●皮膚科を受診される患者さんのなかには、一定の割合で化粧品かぶれが原因の人がいます。おそらく、一般的な化粧品に含まれる防腐剤や界面活性剤などの化学物質が原因と考えられます。そこで、10年に株式会社ナキュアを設立して妻が代表に就任。化学物質フリーのオリジナルブランド「本当の無添加化粧品ワイエスラボ」の開発・販売を開始しました。日・米・シンガポールの3カ国で特許を取得しています。 ニッチな市場ですが、「この化粧品なら肌に合う」というリピーターが徐々に増えて、WEB主体で何万人もの方に利用いただいており、市販の化粧品が合わなかった方たちのニーズに応えられていると思っています。 ――最後に、今後の展望・抱負をお聞かせください。 菅原●引き続き地域の皮膚科診療の受け皿を担いながら、今は盛岡市や仙台市などの中心部にしか実施医療機関がないような、最新の注射治療など、より専門性の高い皮膚科治療にも対応できるように、診療所としての医療の質の向上、領域の拡充を組織一丸で測っていきたいと考えています。 制作・監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2020年9月)

【解説】コロナによる財務危機を乗り越えるためには

【解説】コロナによる財務危機を乗り越えるためには

<著者>鈴木克己 鈴木克己税理士事務所 目次 01:資金繰り表を作成して今後の資金状況を検討する 02:税金や社会保険料を含めてあらゆる支払いを見直せ 資金繰り表を作成して今後の資金状況を検討する 新型コロナウイルス感染拡大以降、受診控えで収入が減っている診療所は多いと思います。加えて今後、職員の発症等、一定期間閉院せざるを得なくなるケースも考えられます。収入は減る一方で、家賃、人件費、リース料などの支払いが続くと、いずれ「収入<支出」となり、財務危機に晒されることになります。 想定される危機を乗り切るには、まず現在が「有事」であると認識し、有事にはどの程度の資金不足に備えるべきか、つまり“財務危機”の状況を明確にします。これには直近の実績を参考に収入減を考慮したシナリオを描き、資金繰り表を作成することがおすすめです。 資金繰り表の作成とは、今後の入金と出金を想定する作業です。入金は診療報酬の振込・自己負担金の日々の入金など、出金は医薬品等の支払い、人件費や家賃といった経費、税金、借入金返済に拠る支払いなど、これらを把握し資金繰り表に落とし込みます。 留意点は、必要以上に気合を入れ過ぎないこと。将来予測は正確なことに越したことはありませんが、有事であり速報性を重視して進めるべきです。過度に悲観的なシナリオを想定する必要はないものの、一定の減収を見込んで作成し、資金の流れを追いかけます。 資金繰り表の作成の結果、現預金の残高が必要以上に減る、支出を賄えず資金不足に陥る恐れがある場合、資金の調達や支出の先送りなどの対応策を急ぎ検討する必要があります。 税金や社会保険料を含めてあらゆる支払いを見直せ 財務危機を乗り切る方法は2つ。収入増か、支出減です。 ①収入を増やす 新型コロナの収束時期が見通せない今、収入増は非常に困難です。ただし、資金的に言えば、金融機関からの借入も立派な収入です。幸いなことに国は積極的な資金支援を行う姿勢を示しており、診療所向けの資金支援策も出されています。要件も杓子定規な運用ではないようで、積極的に相談すべきです。 支援策については、最新情報を随時入手し、活用を検討しましょう。なお「経済産業省 新型コロナウイルス感染症関連」で検索すると主な支援策に関する総合的なパンフレットが入手できます。 ②支出を減らす 無駄な経費を抑えることも大切ですが、有事だからこそ、普段とは違う対応も検討すべきです。 ■税金・社会保険料の納付猶予 税金の納付を猶予してもらうことも検討します。税務署に個別に相談することで原則1年間の納付の猶予が受けられる場合があります。本来一括で納付すべき税金の分割払いが認められれば、足元の資金繰りの安定につながります。 申告期限の延長など柔軟な対応が用意されているので、顧問税理士や税務署に相談しましょう。そのほか、厚生年金保険料などの社会保険料も同様に猶予される場合があります。 繰り返しになりますが、有事を乗り切るには、“今が有事であること”をしっかりと認識することが大切です。有事であるがゆえに、さまざまな資金支援策が講じられます。顧問税理士や金融機関などに相談して、必要な資金支援策を積極的に活用し、資金の残高を維持することに努め、嵐が過ぎ去るのをじっと待ちましょう。 制作:日本医療企画 (取材年月:2020年5月)

【ケーススタディ】地域の眼科医療を支えて 60余年懐の深い町医者目指し承継

【ケーススタディ】地域の眼科医療を支えて 60余年懐の深い町医者目指し承継

<取材先>医療法人社団吉田眼科 目次 01:外来診療から日帰り手術まで地域の眼科ニーズに対応 02:長く患者を支えるべく承継を地域にPR 外来診療から日帰り手術まで地域の眼科ニーズに対応 札幌市電・山鼻9条停留所から徒歩1分、札幌市営地下鉄中島公園駅からも徒歩7分とアクセス良好な場所に4階建ての自社ビルを構える吉田眼科医院。網野泰文院長は、叔母にあたる先代院長から2006年に同院を承継。先代から数えて60余年の長きにわたり、地域の眼科医療を支えています。同院がある中央区の西創成地区を、「ターゲットを絞りにくい場所」と網野院長は評します。 「商業地でも住宅地でもなく、あえて言えば賃貸マンションが多いですが、定住する人は少ない印象です。患者さんは子どもからお年寄りまで幅広く、新規も多い。特定層にこだわらず、幅広い眼疾患に対応できるようにしています」 実際に、小児では視力低下や弱視、中高年は生活習慣に起因するドライアイ、高齢者は緑内障や白内障など対応疾患は多岐にわたり、ビル内に手術設備も完備し、白内障の日帰り手術も行われています。また、眼科診療における大切なパートナーである視能訓練士による、視力検査や眼鏡・コンタクトレンズに関する指導にも余念がありません。地域で治療が完結できるように、万全の体制を整えているのです。 長く患者を支えるべく承継を地域にPR 36歳で同院の経営を引き継いだ網野院長。「意識したのは、私が当院を承継したことを地域に知ってもらうことと、先代のころから通い続けている患者さんが不満を感じないようにすることでした」と、振り返ります。 そこで、地域の雑誌や駅の看板に広告を出したのはもちろん、自院のHPも制作し、積極的なPR活動に勤しんだそうです。そのうえで、患者にもより丁寧な診療を心がけた結果、代替わり後も、先代から通う患者が離れることなく、2世代、3世代にわたって家族で通う患者も多いといいます。 なお、院名の「吉田」は先代の姓ですが、長く地域に親しまれてきた名称であることからも、先代との相談のうえ、院名は変更しないままでいるそうです。また、周辺で同じように承継開業した院長仲間が何人かいたことも、大きな助けになったといいます。 自身を「町医者」と称する網野院長。その役割について、「いつでも誰にでも、同じ態度で迎え入れる存在であること」だと話します。 「さまざまな患者さんが来院しますが、誰にでもフラットな姿勢であることをモットーとしています。困ったときにいつでも駆け込めるように平日は休診日も設けていません。地域で長く診療することが一番の貢献なので、私もスタッフも健康第一でありたいですね」 制作:㈱日本医療企画 (取材年月:2020年2月)

【解説】承継開業で押さえておきたい! 「手続き・法律」の基本ポイント

【解説】承継開業で押さえておきたい! 「手続き・法律」の基本ポイント

<著者>赤羽根信廣氏 株式会社川原経営総合センター 開発部部長 承継開業の場合、事業譲渡であるか、医療法人の承継であるかの違いで、行政上の手続きが大きく異なります。 目次 01:事業譲渡 02:医療法人の譲渡 03:債務の扱い ①事業譲渡 まず、事業譲渡の場合、売り手は診療所を閉院し、買い手が新規の診療所として開院するというスキームになります。これは、第三者承継でも、親子などの親族間の承継でも同様です。そのため、保健所等への届出や手続きとしては基本的に新規開業とほぼ変わりませんので、保健所へ事前に承継する旨を報告し、院内の監査を受けることがとなります(新規開業時と同じ)。 監査では、たとえばレントゲン装置の放射線漏れのチェックや、届け出されている平面図どおりの配置であるかなどを確認するほか、新規開業と同様に各種届出書類のチェックも行います。 時々あるのが、承継元の診療所が長年の運営のなかで、保健所への届出なしで院内を改装してしまっていたケースです。この場合、保健所に届け出られている診療所の平面図と現行の診療所のレイアウトや面積が違うため、平面図を引き直す必要があり、その分手間や費用がかかります。 ②医療法人の譲渡 医療法人を承継する場合、現行の社員(※)は基本的に全員退社という流れになります。そのため、現行社員の退社届と、交代で加わる新たな社員の入社届、社員総会の議事録、また、理事・監事も交代するため、その方々の辞任届と新任の理事・監事の就任承諾書――などの書類の準備や手続きを経て、晴れて医療法人の経営権は譲渡可能になります。 ※社員:医療法人の構成員であり、「職員」や「従業員」とは異なります。 ③債務の扱い また、承継元が抱えていた債務等の取り扱いも、事業承継と法人譲渡で変わります。 前者の場合、大体のケースでは債務の引継ぎはありませんが、あるとすれば、リース債務が挙げられます。その際はリース会社へ連絡し、前院長とのリース契約を打ち切り、同じ条件で新院長が新規契約を結び直し、リースを継続するという流れになるかと思います。 ただ、診療所によっては複数のリース会社を契約している場合、事前に前院長と一緒に契約内容の整理を行いましょう。 一方、法人譲渡に関しては、先述のリース契約などに関しても法人名義での契約のため、契約の結び直しなどは発生しません。ただ、少し複雑なのが、借入金を引き継ぐケースです。当然借入金も法人名義で借りているので、問題なく引継ぎできるだろうと考えがちですが、ネックになるのが、個人保証の部分です。代表者変更に伴う保証人の変更を申請しても銀行が応じてくれない場合が多く、結果として借り換えで対応せざるを得ないということになります。 最後に、承継では条件の決定から最終的な譲渡契約書の締結までに、売り手側のあらゆる資料開示は必須条項になります。総勘定元帳から外部との契約書全般、スタッフの雇用契約書――など、あらゆる資料を細部まで見て検討したうえで、譲渡価格が決定します。 こうした膨大な情報の精査を、当人同士のみで行うのは危険です。何をどう決めるべきか分からないままに譲渡の価額だけを約束してしまい、その後トラブルになり、結果的に譲渡の最終合意に至らなくなるというケースは非常に多いです。 必ず第三者として、事業承継に詳しい弁護士や、支援実績のあるコンサルティング企業、M&A企業などに間に入ってもらうことをおすすめします。ただし、新興でノウハウも実績もないような事業者も昨今多数でてきていますので、その選定は慎重に行う必要があります。 監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2022年3月)

【解説】承継開業で押さえておきたい! 「集患・PR」の基本ポイント

【解説】承継開業で押さえておきたい! 「集患・PR」の基本ポイント

<著者>赤羽根信廣氏 株式会社川原経営総合センター 開発部部長 承継開業のメリットの一つに、承継元の患者の大半を引き継いだ状態でスタートを切れる点があります。ただ、特に診療所の場合、「あの先生に診てもらいたい」など、院長に患者さんがついていることも少なくありません。こうした承継元の患者さんをうまく引き継いでいくうえでは、どのような点がポイントになるでしょうか。 目次 01:診療所名の変更 02:院長の交代時期 ①診療所名の変更 すでに周辺地域で認知されている診療所名を承継後もそのまま踏襲したいといったご相談をいただくことがあります。ただ、これに関しては保健所の認可が下りるかが問題となります。 たとえば、医療法人の承継は経営者の交代なので法人名はそのまま使用できますが、個人診療所の承継で、元の診療所名が「田中クリニック」など前院長の名前が入ったものだと、保健所から変更要請を受ける可能性が高いです。 そのため、診療所名の変更が必要なときは、承継の目途がある程度ついた段階で患者さんに対し、承継することや院長、診療所名の変更等のご案内をしましょう。もちろん、従来と同様に引き続き診療していくことをしっかり説明する必要があります。 ②院長の交代時期 また、院長の交代についても、ある日突然交代するのではなく、承継前後に移行期間を設けたほうがスムーズに進みやすいです。具体的には、新院長は承継前の一定期間、承継予定の診療所に実際に勤務して前院長から業務や患者の引継ぎを行います。そして、承継後は、今度は前院長が一定期間引き続き診療所に勤務し、徐々に勤務日数を減らしてフェードアウトするという流れになります。 これにより、前院長についていた患者の引継ぎもしやすくなるほか、承継前に新院長が承継する診療所での勤務実績を積むことで、カルテの引継ぎに関しても保健所の許可が下りやすいというメリットもあります。特殊な事情がない限りは、移行期間を設けることをおすすめしています。 しかし、移行期間が長すぎても、お互いの欠点や好きになれない点なども見えてきます。そうなると、契約前なら条件の見直しや承継自体が白紙に戻ることもあり得ますし、契約後はより面倒なトラブルになりかねません。承継前後の移行期間が長くなることは、必ずしもメリットばかりではないようです。 監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2022年3月)

【解説】承継開業で押さえておきたい! 「人事・労務」の基本ポイント

【解説】承継開業で押さえておきたい! 「人事・労務」の基本ポイント

<著者>赤羽根信廣氏 株式会社川原経営総合センター 開発部部長 人事・労務は、診療所院長が悩みがちな根深い問題です。承継開業においても例外ではなく、私がご相談を受ける内容の半数以上が、この問題なのです。そのため、人事・労務については、「これをすれば絶対にうまくいく」という正解は“ない”ことを、まずは肝に銘じていただければと思います。 目次 01:“雇われる側”から“雇う側”になったギャップ 02:必要な人材に続けてもらうには? 03:人事・労務のトラブルを予防するには ①“雇われる側”から“雇う側”になったギャップ まず、これは新規・承継どちらにも当てはまりますが、初めて開業した院長が最初にぶつかる壁が、この人事・労務といっても過言ではありません。なぜなら、院長の多くは今まで勤務医として“雇われる側”であり、人事・労務の経験がほぼないからです。「開業して3カ月でスタッフが全員辞めてしまった」といった話を耳にすることが少なくないのは、こうしたギャップがあるからです。 承継開業でスタッフも引き継ぐ場合は、売り手の院長から自院の人事・労務の現状やスタッフとの関係性などについて、しっかりヒアリングしておきましょう。 ②必要な人材に続けてもらうには? スタッフの引継ぎは、法人譲渡か事業譲渡かによってその後の対応が変わります。 前者の場合、医療法人名義で雇用されているため、スタッフごと引き継ぐのが大前提です。ただ、その際には有能なスタッフが理事長の交代を理由に辞めてしまうケースもあれば、逆に問題のあるスタッフに承継を理由に辞めてもらうこともできません。 さらに、秘密保持の観点から、承継の契約が締結するまではスタッフにその旨を説明するのは難しく、契約が締結した段階で初めて、各スタッフに働き続けるかの意思確認を行っていくことが多いです。 一方、後者の事業譲渡の場合、基本的には承継の段階でスタッフは一旦解雇し、引き継ぐ際は再雇用する仕組みになります。そのため法人譲渡とは異なり、働いてほしい人だけを再雇用するといった選択が可能です。しかし、これも結局は各スタッフとの意思確認が必要です。ドライに選別しすぎると、残す側にも残さない側にも遺恨が残り、その後のトラブルの原因になるので、前院長としっかり協議しながら戦略を考えていきましょう。 ③人事・労務のトラブルを予防するには 冒頭で申し上げたとおり、人事・労務の問題に絶対の正解はありません。そのため、承継時にそうしたリスクを軽減するには、やはり従前の雇用契約書などを事前にきちんと確認し、目に見える問題がないかを確認しておくことです。 診療所によっては、そもそも雇用契約書が残っていなかったり、給与計算等の規定が間違っていたりというケースも散見します。明らかに法律に抵触する問題は承継時に正さなければなりませんが、それによってスタッフ個人が不利益な変更を被ることがないように配慮する必要があります。 また、こうした雇用契約や社会保険等の確認などに際しては、売り手・買い手の院長のみで確認せず、社会保険労務士などの専門家にきちんと間に入ってもらい、一からきちんと見直してつくり直すことが、のちのトラブル回避のうえでもおすすめします。 監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2022年3月)

【解説】承継開業で押さえておきたい!「不動産」の基本ポイント

【解説】承継開業で押さえておきたい!「不動産」の基本ポイント

<取材先>赤羽根信廣氏 株式会社川原経営総合センター 開発部部長 <著者>赤羽根信廣氏 株式会社川原経営総合センター 開発部部長 目次 01:立地はデータと現地視察の両方から選定 02:物件の契約は大家との関係性にも注意 ①立地はデータと現地視察の両方から選定 立地に関しては新規・承継にかかわらず、診療圏調査で候補地を検討することは、多くの院長が実践されていると思います。そのなかで、特に承継開業の場合は、診療圏調査上の見込み患者数と承継元の実際の患者数を比較してみてください。後者が多いなら、データ上では見えない部分に増患の要因があるはずなので、承継元の院長にヒアリングするなどして確認しておきたいところです。 可能であれば、時間帯ごとに現地へ実際に足を運ぶこともおすすめします。「どの時間帯が最も人の行き来があるか」「駅周辺はどの方面が一番にぎわっているか」「若者と高齢者ではどちらが多いか」など、診療圏調査では見えてこない生きた情報が現地視察からは得られます。肌で感じることが重要です。 どの立地情報がより重要になるのかは、承継後の診療科によっても変わってくると思われますが、いずれにしても、データから得られる情報と、買い手の医師が自分の目で得た情報の両方から、承継案件を選定することが重要です。 ②物件の契約は大家との関係性にも注意 次に、建物面からの比較ですが、承継元が不動産も所有しているのか、あるいは賃貸物件なのかによっても確認したいポイントは変わります。今回は、一般的に承継案件としても取り扱いが多い賃貸物件を中心にお話しします。 一つ目のポイントが、内装です。承継とはいえ、承継前の内装や設備をそのまま使うよりも、ある程度承継後の使い勝手を踏まえて手を入れることになります。その際、どの程度の内装工事が必要になるか、事前に確認しておきましょう。 二つ目が、物件の契約更新です。これは承継手法が事業譲渡か法人譲渡かで対応が異なります。まず事業譲渡は、売り手が賃貸借契約を解約し、買い手が新たに契約を結ぶ形になります。ただ、注意したいのが、物件の大家さんとの契約状況や現状の関係性を、売り手側にきちんと確認しておくことです。場合によっては売り手の解約時点で、「もう次の診療所には貸さない」といった旨を大家さんに言われるケースもあり、承継の前提が崩れてしまいます。 一方、法人譲渡の場合、賃貸借契約の更新は基本的に必要ありません。ただ、契約によっては、「チェンジオブコントロール条項」という、経営者の交代などが生じた場合に契約内容の更新・破棄等が可能なものが盛り込まれている可能性もあります。よって、法人譲渡の場合も、一度契約内容は確認しておくことをおすすめします。 監修:㈱日本医療企画 (取材年月:2022年3月) 目次 01:立地はデータと現地視察の両方から選定 02:物件の契約は大家との関係性にも注意 ①立地はデータと現地視察の両方から選定 立地に関しては新規・承継にかかわらず、診療圏調査で候補地を検討することは、多くの院長が実践されていると思います。そのなかで、特に承継開業の場合は、診療圏調査上の見込み患者数と承継元の実際の患者数を比較してみてください。後者が多いなら、データ上では見えない部分に増患の要因があるはずなので、承継元の院長にヒアリングするなどして確認しておきたいところです。 可能であれば、時間帯ごとに現地へ実際に足を運ぶこともおすすめします。「どの時間帯が最も人の行き来があるか」「駅周辺はどの方面が一番にぎわっているか」「若者と高齢者ではどちらが多いか」など、診療圏調査では見えてこない生きた情報が現地視察からは得られます。肌で感じることが重要です。 どの立地情報がより重要になるのかは、承継後の診療科によっても変わってくると思われますが、いずれにしても、データから得られる情報と、買い手の医師が自分の目で得た情報の両方から、承継案件を選定することが重要です。 ②物件の契約は大家との関係性にも注意 次に、建物面からの比較ですが、承継元が不動産も所有しているのか、あるいは賃貸物件なのかによっても確認したいポイントは変わります。今回は、一般的に承継案件としても取り扱いが多い賃貸物件を中心にお話しします。 一つ目のポイントが、内装です。承継とはいえ、承継前の内装や設備をそのまま使うよりも、ある程度承継後の使い勝手を踏まえて手を入れることになります。その際、どの程度の内装工事が必要になるか、事前に確認しておきましょう。 二つ目が、物件の契約更新です。これは承継