<著者> ㈱日本医療企画
- 目次
- 01:自院の存在意義や理念は明確になっている?
- 02:院内の人間関係本当に風通しは良い?
- 03:「おカネ」でやって来た人は 「おカネ」で去っていく
- 04:「困った」スタッフまで抱え込む必要は本当にある?
- 05:穴埋め採用はその場しのぎになるだけ
- 06:やりがいや評価のない職場に人は定着しない
①自院の存在意義や理念は明確になっている?
「良い医療を地域の皆さんに届けよう!」この言葉、一見すると自院の方針を掲げているように思えるが、実のところ「良い医療とは何か」「地域の皆さんとはどういった層を指しているのか」「良い医療を提供して、何を実現するのか」など、具体的な内容がわからない。
良い医療を患者に提供するのは医療機関にとってはある意味当然のこと。つまり、他の診療所との差別化にはならず、既存スタッフや新たな応募者が見た際に「こんな医療を自分も提供したい」といった魅力やモチベーションにもつながらない。より各々の考えに合う、明確な診療所像を発信している診療所があれば、そちらに目がいってしまうだろう。
一方、「うちの診療所は、ちゃんと理念を考えている!」という院長も、もちろんいるだろう。しかし、理念はつくって終わりではなく、組織全体で共有し実現のために動いて初めて意味がある。スタッフは本当に同じ理念を見て仕事をしているのか。組織への浸透を怠って院長の独りよがりになっていないだろうか。今一度院長自身の胸に問いかけていただきたい。
②院内の人間関係本当に風通しは良い?
診療所でスタッフが辞める原因としてありがちなのが、「人間関係のトラブル」だ。院長対スタッフのケースもあれば、スタッフ対スタッフの場合までさまざまだが、一度悪化すると修復・改善はなかなか難しく、院長としても介入しにくいと思われる。
しかし、どんなトラブルにも、悪化する前の兆しはある。以前と比べて、スタッフのなかで孤立している人はいないか、勤務態度は変わっていないか、仕事に関する不平不満が出ていないか――など、日常業務のなかで違和感を覚えるタイミングはあるはずだ。
問題は、院長や事務長などのマネジメント側がそれらを察知し、「どうしたの?」「何かあった?」と踏み込む、または逆にスタッフから相談を受けるようなコミュニケーションを日頃からできているかだ。
③「おカネ」でやって来た人は 「おカネ」で去っていく
離職防止のため給与を上げる、インセンティブを設ける、福利厚生を充実させるといった対策を立てることは珍しくない。しかし、ここで注意しなければならないのは、条件だけで選んで応募してきた人材は、もっと良い条件があれば簡単に辞めてしまう可能性が高いことだ。
同じ条件でも、「職場や仕事に思い入れはないが、他に条件が良いところがないからここで働いている」という人よりも、「やりたい仕事や成長につながるし、頑張った分だけ自分にも返ってくるから」と感じている人のほうが、組織への帰属意識が高いのは当然だろう。
もちろん、スタッフにも生活があるので、雇用条件は悪いよりも良いほうがよいだろうし、昨今の働き方改革などの時勢からも、「24時間働けます」というわけにもいかない。ただ、人材不足に悩むあまり目先の条件先行の採用に陥っていないか、改めて見直してみてはどうだろうか。
④「困った」スタッフまで抱え込む必要は本当にある?
勤務しているスタッフのなかに、問題のある態度や行動が目につく人がいる。しかし、指摘して逆上されるのは面倒だし、急に辞められて人手が減るのも困るし、他のスタッフからの印象が悪くなったらどうしよう……など、そんな「困った」スタッフに頭を悩ませたことのある院長は少なくないのではないか。
採用時点では気づかなくても、入職後徐々に価値観や働き方の相違などの問題は少なからず見えてくる。面談などでその問題点を指摘し、改善・成長を促すことができるならいいが、診療所からの再三の働きかけにも応じず、自院の方針から外れた行動を繰り返し、職場のチームワークを乱したり、患者からの評判を下げてしまうような〝問題児〟もいる。
ただ、そこまで悪化した場合、むしろそのスタッフが自院に居続けることが院内の空気や体制に悪影響を与え、その環境が嫌になった他のスタッフが去って行ってしまう可能性は十分にある。そうなってしまえば、マンパワー不足を懸念し「困った」スタッフを抱えていたことが本末転倒になってしまう。
院長や事務長クラスの管理職は問題のあるスタッフに対し、自院の方針に則ってきちんと指摘すること、改善が困難な場合は、そのスタッフへ自らの進退を考えてもらうよう伝える決断も、診療所を守るために必要だと自覚し臨むべきだろう。
⑤穴埋め採用はその場しのぎになるだけ
急なスタッフの離職があった際、誰でもいいから、とにかく人手を補てんしたい、すぐにシフトに入れる人がほしいと、穴埋め的な人材採用をしてしまったことはないか。当然ながら、急場しのぎで採用した人材はなかなか定着しない。悪いときには、そうした穴埋め人材の抜けた穴を補てんするためにまた新たな穴埋め採用を繰り返すという悪循環に陥りかねない。また、そんなときほど自院の方針とかみ合わない人を採用してしまい、入職後苦労するものだ。
⑥やりがいや評価のない職場に人は定着しない
具体的な理念を掲げ、それに共感したスタッフが集まってくれた。しかし、そこで終わりではない。当初はやりがいを感じて働いていたスタッフも、理念で掲げる医療につながり、患者や地域、社会に貢献している実感がないまま働き続ければ、徐々にモチベーションの低下につながっていく。それを防止するためにも、自院の理念や行動指針に基づいて、スタッフの働きがいや成長への意欲を促し、結果をフィードバックする仕組みを取り入れたいところだ。
以上、診療所で人が〝辞める〟要因を整理してみた。今回挙げた要因もあくまで一部であるが、改善するとしないとでは大違いだ。表のチェックリストと自院の状況を照らし合わせたうえで、次頁からの有識者や先達たちの知見を学んでいただきたい。
(取材年月:2022年3月)
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