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<取材先>山城 大 アルプスこどもクリニック院長

2015年5月に山梨県南アルプス市で開業した、アルプスこどもクリニック。開業準備段階から、小児患者の院内での感染リスクを問題視していた山城大院長が凝らした、「ドライブスルー受付」をはじめとする入念な感染対策は、昨今のコロナ禍でも安心・安全の診療体制につながっています。

目次
01:ドライブスルー外来で他の患者との接触をゼロに
02:勤務医時代からの危機意識がコロナ禍で効果を発揮

ドライブスルー外来で他の患者との接触をゼロに

―― 貴院では2015年の開業時点から、感染対策を目的とした「ドライブスルー受付」や、院内の動線設計などの仕組みを導入されていました。こちらの具体的な流れについて教えてください。

山城 「ドライブスルー外来」は名前のとおり、患者さんがドライブスルーで受付し、順番呼び出しがあるまで車でお待ちいただくという仕組みです。開業当初は呼び出し用として患者さんにPHSをお渡ししていましたが、今は感染予防の観点から、患者さんの携帯電話やスマートフォンに直接連絡しています。

呼び出された患者さんは、診療所に2カ所ある出入口の一方から入り、5つの診察室のうち指示された診察室に入って診察を待ちます。あとは、私が順番に診察室を回って診察し、診察室内で会計や処方せんの受け渡しも済ませ、入った際と同じ出入口から帰ってもらう流れです。2つの出入口から交互に案内するので、診察前後で患者さん同士が院内ですれ違うことはありません。

―― 他の病院や診療所にはあまりない体制ですが、開業当初、スタッフの反応やオペレーションへの適応などはいかがでしたか。

山城 立ち上げ時は、基本的に事務スタッフが院内受付とドライブスルー受付の両方に対応する形だったので慣れは必要でした。ただ、事前説明やシミュレーションを行ったうえで開業したので、実際の運用でスタッフが困惑するようなことはあまりなかったと記憶しています。あとは、ドライブスルーでも簡単に受付ができるように、診察券をバーコード読み取り式にするなどの下準備や工夫もしてありましたので、特に問題なく現在まで運用しています。


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勤務医時代からの危機意識がコロナ禍で効果を発揮

―― そもそも、どういった経緯でドライブスルーを導入されたのですか。

山城 勤務医時代から院内での感染リスクに強い問題意識があったからです。病院では感染症の小児患者さんもそうではない小児患者さんも同じ待合室で待っているのは珍しくなく、いつ感染してもおかしくありません。それではお子さんを連れてくるご両親も安心できないので、開業にあたっては感染症患者さんと一般患者さんをなるべく分けられる体制を整備したいと思っていたのです。


その際に思いついたのが、ドライブスルーでした。実は最初は、円形の建物の外壁沿いに複数の診察室を設け、ドライブスルーで受付後そのまま車で指定の診察室前に乗りつけ、診察もその後の会計処理もドライブスルーで――という構想がありました。しかし、混雑時の対応が難しいことや、敷地内の車線など設計上の課題も多く、ドライブスルーで受付し院内動線で分離する現在の設計で落ち着きました。


正直なところ、設備投資は多額でしたし、私の家族からも「本当に必要なのか」と言われましたが、やはり当院にとって感染予防は大きな柱でしたし、昨今のコロナ禍にも非常に功を奏しました。


――新型コロナウイルス感染症の流行下で、どのように功を奏したのでしょうか。

山城 当院も初回の緊急事態宣言直後などは、例年の半分以下まで患者さんが減少するなどの影響がありました。また、流行初期に全国一斉休校が報じられた時点で、「これは普段どおりの診療ではダメだ。待合室に患者さんを待たせてはいけない」と強く思い、思い切って外来受付を「ドライブスルー受付」に一本化する判断を下しました。

コロナ禍前の使用率は3割ほどで、一本化してしばらくは“不要不急”の医療控えもあり患者さんが減少したままでしたが、徐々に「他の患者さんと接触しない」といったメリットが広がっていったのか少しずつ利用される方が増えていき、現在は当たり前に使っていただいています。

――最後に、これからの貴院のビジョンについて教えてください。

山城 今は「ドライブスルー受付」に一本化していますが、院内の待合スペースについても、お子さんが楽しく安全に過ごせるようにいろいろと工夫しています。そのため、完全にコロナ禍が収束したら、徐々に院内での待ち時間対応も再開できればと考えています。


ただ、患者さん側の意識がコロナ禍前とはもう変わっているとも感じています。当院に限らず、以前のように診療所の中で診察まで待ちたいというニーズがどれだけあるのか。特に、現在の当院に来てくださっている患者さんは、「院内感染の心配がなく受診できる」ことに価値を見出してくださっている方が多いと思うので、感染状況と患者さんの動向を見ながら、どんな体制が患者さんにとって一番良いのか、考えていきたいです。


――ありがとうございました。


制作:㈱日本医療企画
取材年月:2021年12月

(撮影:武部努龍)


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PROFILEプロフィール

PROFILE

アルプスこどもクリニック 山城 大(やましろ・だい)院長

1997年3月、山梨医科大学医学部医学科卒業後、98年5月、山梨大学医学部附属病院小児科。複数病院の小児科での勤務を経て、2009年4月に山梨県立中央病院総合周産期母子医療センター新生児科。14年10月、都留市立病院小児科。15年3月にアルプスこどもクリニックを開院し院長に就任。現在に至る

<診療所概要>
アルプスこどもクリニック
〒400-0304
山梨県南アルプス市吉田864-1
TEL:055-283-5005
診療科目:小児科

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