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<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント

患者数を増やす有効な手立てとして注目したいのが「予防歯科」です。ただ、この担い手である歯科衛生士は現在、採用が難しくなっています。パートでの雇用や勤務時間の指定など、さまざまな要望が出てきます。柔軟な対応が必要になりそうです。

患者数を増やすには、初診患者を増やすだけでなく、患者を維持する必要があります。そのために予防歯科が有効です。予防歯科が入り口となり、継続診療につながり、医院の増収にも結び付くことも期待できます。初診患者の一定割合が定期的に来院してくれれば経営は安定していきますが、まさにこの図式が予防歯科には当てはまります。

回数を重ねるごとに歯科治療の知識も増え、自費治療を選ぶケースも増加します。医療保険でもSPT(歯周病安定期治療)やP重防(歯周病重症化予防治療)などは、60分で1万円程度の診療報酬が得られます。一人の歯科衛生士が15人に対応すると想定した場合、1カ月22日診療すると、売上は100万円(@1万円×5/1日×22日=110万円)を超えます。技工料も材料代もかからず、採算性の高い診療です。

pixta_35825185_L - コピー.jpgそこで問題になるのが歯科衛生士の確保です。予防歯科を進めるには歯科衛生士が欠かせませんが、採用が困難な状況が続いています。給料も高騰しており、首都圏では初任給が26万円前後になっています。さらに、表のような条件を満たす医院が選ばれています。ただ、このような条件を満たせる歯科医院はわずかでしょう。

① 経営が安定し、永続性がある医療法人。
② 社会保険が完備している。出産手当金や入院給付に手厚い協会けんぽで、厚生年金、雇用保険がある。
③ 複数の歯科衛生士が勤務していて有給休暇が完全取得できる。
④ 院外研修がなく、院内でスキルアップが図れる。
⑤ 午後6時終業で土日休診。
⑥ 駅から徒歩5分以内、または車通勤可。
⑦ 基本給17万円以上(賞与や退職金の計算の基礎が基本給であるため)。
⑧ 退職金制度あり。
⑨ 住宅補助あり(東京、横浜では、地方出身者に3万円から6万円の家賃補助を支給する医院がある。この結果、首都圏での学卒歯科衛生士の実質賃金は29万円から30万円に達する)。
⑩ 残業、休日出勤がないか、少ない。


パートタイマーの採用もあわせて検討する必要があります。中に配偶者控除の壁があり、多くが午後5時までの勤務を希望しますから、シフトも工夫する必要があります。

常勤やパートなどいろいろな歯科衛生士が集まると、人によって手順や所要時間が違うことが多く、患者から不満が出てきがちです。全員が同じ処置ができるように手順や使用材料などはマニュアル化し、教育研修をしておく必要があります。

さらに、できるだけ担当制にします。担当患者の治療経過を継続的に把握でき経験と自信につながるからです。担当制にしてチェアサイドで予約をとると、リコール率が高くなり無断キャンセルも減少します。

ただし、3カ月先から6カ月先までの予約をとり、ショートメールでリコール案内を送るためにはアポイントコンピューターの導入が不可欠です。手ごろな金額で導入できる機種も増えているので検討していただきたいと思います。

やがて予防患者が増えてくるとユニットの増設が必要になります。そのときは、借入とリースを上手に組み合わせて検討しましょう。




監修:㈱日本医療企画
制作年月:2022年3月


ランキング.jpg収入・費用.jpg2202208 サムネ - .jpg開業.jpg202208 サムネ - コピー.jpg

PROFILEプロフィール

株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 認定登録医業経営コンサルタント

木村 泰久(きむら・やすひさ)

1972年、関西大学商学部卒業。同年飛島建設に入社。2002年、 M&D医業経営研究所を設立。同年、文部科学省からLEC東京リーガルマインド大学教授号授与後、同大学教授就任。06年、M&D医業経営研究所を株式会社に改組。13年、公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会歯科専門分科会委員長に就任。

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