<著者> 株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 木村 泰久 認定登録医業経営コンサルタント
歯科経営の成長分野として注目されるのが「在宅歯科診療」です。厚生労働省も後押ししており、診療報酬でも手厚い評価が見られます。休診日に訪ねるだけで済むほど簡単ではありませんが、費用をかけずにスタートすることは可能です。
- 目次
- 01:在宅歯科診療のメリット・デメリット
- 02:介護保険と医療保険の両方が適用される
- 03:訪問日が週1日では訪問先拡大は無理
- 04:過去3年間で中断している患者から抽出する
- 05:最初は電気エンジンと吸引機だけで開始する
在宅歯科診療のメリット・デメリット
今後の歯科経営の成長分野として在宅歯科診療を考えてみましょう。診療報酬も手厚く、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準にも「過去1年間に歯科訪問診療の回数が5回以上であること(または在歯診への依頼)」があります。開始にあたっての歯科医院経営におけるメリット・デメリットを整理すると、次の表-1のようになります。
表-1「在宅歯科診療のメリット・デメリット」
メリット |
デメリット |
1.増収を図ることができる 新しい収益分野を獲得できるので、訪問先が増えると経営の安定化が見込める。 2.生涯を通じたケアが可能になる 生涯診てもらえる歯科医院として、インプラントなど外科処置においても患者の信頼を得やすい。 3.医科との診療連携が図れる 在宅歯科診療によって地域の医科診療所との連携関係が強化される。 |
1.ドクターとスタッフの負担が増大する 在宅歯科の準備や片づけ、往復や書類作成など、医師とスタッフの負担が増大する。 2.設備や用具の調達資金が必要になる 訪問診療車やポータブルユニットなど用具の調達に資本投下が必要になる。 3.人事労務管理が煩雑になる 在宅診療を担当する歯科医師や歯科衛生士の確保、外来診療部門との在宅部門との確執など問題が生じやすい。 |
在宅歯科診療を開始する前に知っておきたいポイントは次のとおりです。
1.介護保険と医療保険の両方が適用される
在宅歯科診療の場合、要介護認定を受けている「在宅患者」に対しては「介護優先の原則」があり介護保険が優先適用されます。
2.訪問日が週1日では訪問先拡大は無理
休診日に1日だけ訪問診療を開始しようと考えるケースが多いのですが、高齢者は多忙です。医科の診療、デイサービス、入浴日などがあり、特定の曜日に予約がとりにくいのです。たとえば、午後1時から4時までの3時間だけでも、週3日以上は在宅歯科診療にあてる覚悟が必要です。
3.過去3年間で中断している患者から抽出する
過去3年以内にデンチャー(義歯)を入れ、その後、治療が中断しているような患者さんには、歯科衛生士から電話をかけてみるのも一案です。何らかの事情で来院できないのであれば、訪問診療が可能であることも伝えてみましょう。歯科訪問診療移行加算100点(か強診は150点)を算定できます。2~3人を訪問診療に移行できれば、1年間5回以上は簡単に達成できます。
4.最初は電気エンジンと吸引機だけで開始する
在宅歯科で行う処置の70%は義歯調整と口腔ケアです。電気エンジンと吸引機があれば対応可能です。ポータブルユニットなどの高額の医療機器は必要な際に歯科医師会から借りるなどして対応することを考えましょう。
やがて介護施設での在宅歯科が決まり、訪問診療者やポータブルユニットやレントゲンが必要になったときは、借入とリースを上手に組み合わせて検討しましょう。
PROFILEプロフィール
株式会社M&D医業経営研究所 代表取締役 認定登録医業経営コンサルタント
木村 泰久(きむら・やすひさ)
1972年、関西大学商学部卒業。同年飛島建設に入社。2002年、 M&D医業経営研究所を設立。同年、文部科学省からLEC東京リーガルマインド大学教授号授与後、同大学教授就任。06年、M&D医業経営研究所を株式会社に改組。13年、公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会歯科専門分科会委員長に就任。
関連サービス
👉「集金代行」をお考えの方 シャープファイナンス(集金代行)
在宅歯科の患者様の増加とともに集金業務の負担も大きくなります。シャープファイナンスでは口座振替の取扱いを開始して45年、永年培ってきた全国金融機関とのネットワークがございます。是非シャープファイナンスの集金代行サービスをご検討ください。