<著者> 社会福祉法人にんじんの会 常務理事・事務局長 石川正紀
営業活動や情報発信は楽しんで取り組もう!
今回は、新規利用者様を獲得する営業活動と情報発信の手法についてお話ししていきます。
今は、要介護認定者は増えていますが、その分事業者数も増えており、地域によっては、認定者増加率より事業所増加率の方が高い地域があるのではないでしょうか。
地域福祉・社会福祉に関わる私たちも、利用者本位のサービスを継続的に行い、自己実現の場である「働く場所」を守るためにも、営業活動が欠かせないステージに入ってきていると思われます。
「デイサービス稼働率前年比110%」「登録人員前年比15名アップ」「売上前年比105%」……皆様のところでも、このような事業計画の目標を立てられていると思います。これらを達成するためには営業活動が不可欠であり、そのための「見える化」した情報発信が必要です。
介護・福祉事業では、「営利活動や営業活動はなじまない」という考え方もあり、多くの介護事業者の方がネガティブな発想をもったり、苦手意識が働いたりしてしまうかもしれません。
しかし、本来の営業活動や情報発信は楽しいものであり、ワクワクするものです。最初は慣れるまで大変かもしれませんが、自分たちの良いサービスをPRする舞台だと考えて、普段の活動の“良いところ”や“楽しさ”を伝える努力をしてみましょう。
戦略的に分析してターゲットをリスト化しよう
営業活動を行う際に、気をつけなければならないのは、漫然と「地域の大きな居宅介護支援事業所に営業すれば、何か紹介してくれるかもしれない」と考え、訪問を繰り返すものの、良い返事をもらえない日々が続いて営業をあきらめてしまうことです。
過去の事例でいうと「大きな社会福祉法人へ営業に行ってきました」等の報告を受けることが多くありました。しかし、自分たちが提供しているサービスメニューをすでに持っているような法人に、何度行ってもあまり効果が出ないことは明白です。
まずは、戦略的に商圏内の居宅介護支援事業所をリストアップし、各居宅介護支援事業所のケアマネジャーの名前と紹介件数を整理して、各居宅介護支援事業所のABC分析※を行います(図表)。
各ケアマネへの接触頻度(訪問日)を、一覧表にまとめ、ターゲットを整理します(ちなみに、「戦略」は、“たたかい”を“はぶく”と書きます)。
ケアマネに営業する場合は、その居宅介護支援事業所に併設しているサービスが自分のサービスとバッティングしていないかどうかを見極める必要があります。また、自施設にご紹介いただいたお客様がいたかどうかなど紹介実績の有無も大きなポイントの一つです。
また、居宅介護支援事業所に営業しにいくのではなく、個々のケアマネに営業することが重要になります。ケアマネは、紹介業ですので、自分で仕入れた情報以外、基本的に紹介しづらいものです。直接、各ケアマネに挨拶できる営業活動を心がけましょう。
ABC分析に基づいて効果的な営業活動を繰り返すと、次第に紹介件数は増えてきますが、これで満足してはいけません。やっていくと分かりますが、一人のケアマネからの紹介件数が2〜4件でストップしてしまうことが起きます。
こうした際は、①各ケアマネの受け持ちプラン件数、②受け持ちプラン件数における該当サービス割合・件数等もリストに落とし、さらに分析を行うと、商圏内のシェアが分かります。
シェアが判断できると、次の一手が見つかりやすいので、是非取り組んでいただきたいと思います。
自分たちの“良さ”を説明できるツールをつくろう
営業リストが完成したら、アプローチブックやイベントチラシなどのツールを製作してみましょう。
では、なぜツールが必要なのでしょうか?営業を行う場合に見落としがちなのは、「エンドユーザーは、ケアマネではない」ということです。
ケアマネはあくまで代理店であり、ケアマネにいくら良い説明を行っても、最終的に利用者にその良さが伝わらなければ、意味がありません。ツールを製作することで、ケアマネを通じて、介護事業者の“良さ”を利用者さんに伝えることが重要なのです。
アプローチブックとは、そのサービスや事業所の売りをまとめた小冊子のことです。介護事業者の皆さんが提供している商品(サービス)は、「楽しい時間と空間」や「リハビリ」、「認知症ケア」、「入浴」等です。
俗人的な営業活動ではなく、第三者でも同じ説明を行えるよう、コンセプトや取り組んでいることを明確に示し、写真などを数多く取り込んで、“良さ”や“ウリ”がイメージしやすい小冊子を製作しましょう。また、イベントに積極的に取り組み、チラシを作成することも大事なポイントの一つです。
イベントチラシを作成する際は、①できる限り面白い内容・タイトル・サブタイトルをつける、②特典やノベルティをつける、③日時、場所、費用を明確にする、④申込用紙(申込欄)をつける――などに留意しましょう。
イベントの内容・タイトル・特典などを、ミーティングなどでしっかりと打ち合わせすることも重要ですが、その際は、楽しくてワクワクするような雰囲気を作ると良いと思います。
営業活動上の必要性はありますが、利用者・訪問者に、楽しい時間・空間を過ごして頂くことが、結果として良いPRになります。
当法人でも、試行錯誤しながらも、利用者さんに情報が届くように、楽しく営業活動を行っております。営業を含むマーケティング活動は、科学的な活動ですので、再現性が無ければなりません。
再現性とは、誰が行っても、一定の成果を出せる仕組みにしなければならないということです。仕組みを構築できれば、意外と楽しく目標を達成することができますので、是非取り組んでみてください。
※ABC分析=さまざまな要素から重要度を仕分けして、効率的な方法を考案する手法。本稿の図表では、法人の該当サービスの有無と、外部の事業所への紹介事業の有無から、居宅介護支援事業所の重要度をA~Cに仕分けし、営業先の優先順位を決める。
監修:㈱日本医療企画
制作年月:2020年1月
PROFILEプロフィール
石川 正紀(いしかわ・まさのり)
株式会社JTBで法人向け営業などに従事した後、社会福祉法人にんじんの会で介護業務に従事し、事務局長として経営全般を支える。その後、船井総合研究所に入社し、介護事業者を中心に戦略立案から現場の支援まで幅広くコンサルティング業務に携わる。2012年より現職。
〇社会福祉法人にんじんの会
東京都国分寺市西恋ヶ窪 1-50-1
TEL:042-300-6035
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