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<著者> 日本社会福祉事業大学専門職大学院 特任教授 宮島渡


近年、デイサービスの稼働率が下がってきたという声を、よくよく耳にします。

デイサービスは、夜勤がなく日曜が休みでパート人材が集まりやすく、潰れたコンビニを改装してできるなど、簡単にオープンできることから乱立が相次ぎ、競争が激化したことが背景にあるのでしょう。

この対策として、入浴や食事提供をせずに午前と午後2単位のリハビリ特化型デイサービスにしたり、食事に特化したり、アミューズメント化などメニューの差別化を図り、他社との違いを強調してどうにか競争の中で生き延びようとしています。

もはや、デイサービスは血で血を洗う「レッドオーシャン」のなかにいます。


しかし、その打開策のヒントは厚生労働省老人保健事業推進費等補助金によって2014年3月に出された「通所介護のあり方に関する調査研究事業」の報告書にありました。

その中で目に止まったのが、地域包括ケア体制におけるデイサービスの位置付け、つまり、デイサービスの再定義です。


「これからのデイサービスは単体で機能するのではなく、地域包括ケア体制の中で他の事業やサービスと組織間連携やサービス連携を相互に好影響をし合う、シナジー効果を上げること」と報告書では述べています。

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社会福祉法人さつき会は北海道旭川市に隣接する鷹栖町にあり、レッドオーシャンから抜け出し、今はデイサービスが経営再興の切り札になっています。

原稿執筆時点で人口およそ33万人の旭川市には、約4000床と日本でトップクラスの高齢者の住まいがあります。

人口約6800人の鷹栖町の高齢者は、旭川市の病院への入院を契機に、そのまま市内の高齢者の住まいに移住します。その結果、さつき会のデイサービスと小規模多機能型居宅介護事業所の稼働率が減少するとともに、利用者の軽度化による経営上の問題を抱えていました。

法人の常務理事の波潟幸敏さんはこの状況を憂いて対策に乗り出しました。それが、デイサービス改革です。

まず、旭川で入院してもまた鷹栖町に戻れるよう、高齢者の住まいを整備。続いて、総合事業の実施、リハビリに特化したデイサービスと小規模多機能の通いの機能分化と連携を図りました。

「預かるデイサービス」から「元気を作るデイサービス」へとコンセプトを変え、総合事業からデイサービス、小規模多機能へとシームレスな支援体制を築いていったのです。

その結果、総合事業はフィットネスクラブ「コレカラ」を開設し、フレイル対策を中心に行うことで、町内高齢者の30%が登録するという驚異的な数字となりました。さらに、総合事業を卒業した高齢者は研修を経て運営者側になることで、虚弱高齢者をアクティブシニアに変えています。

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デイサービスの平均要介護度は1.7と軽度であり、利用者は「頭の元気」「体の元気」「心の元気」など予防的な取り組みを中心に行います。そして、中重度者は小規模多機能の通いを使う形です。

鷹栖町としては旭川市に移り住む人口を食い止め、フレイル予防や介護予防、自立支援により、要介護度の軽減と保険料の減額を見込んでいます。

「地域住民によし・法人によし・鷹栖町によし」の三方よしをデイサービスの改善により実現させています。


監修:㈱日本医療企画
制作年月:2019年6月


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PROFILEプロフィール

宮島 渡(みやじま・わたる)

日本社会福祉事業大学専門職大学院特任教授

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