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<取材先> 株式会社ライフケア・ビジョン


事業の開始がそもそも事業譲渡から始まったという、株式会社ライフケア・ビジョン。22施設ある住宅型施設のうち約1/3が事業譲渡によるものです。その狙いはどこにあるのかをうかがいました。

目次
01:事業譲受も積極活用して住宅型施設をドミナント展開
02:ドミナント展開することで職員の定着、育成にメリット
03:自分の目で見て調査し隠れたコストまで試算し検討

事業譲受も積極活用して住宅型施設をドミナント展開


株式会社ライフケア・ビジョン(大阪府大阪市)は2011年に設立されました。訪問介護・居宅介護支援事業からスタートし、現在では豊中市、高槻市など北摂地区を中心に住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、デイサービス、訪問看護ステーションなどを運営しています。

現在22施設ある住宅型有料老人ホーム“はっぴーらいふ”のうち8施設が事業を譲り受けての運営となっています。介護事業を展開しようと設立した会社ですが、ハード面などを一からつくるのは当初は大変と判断し、一施設目の有料老人ホームは事業譲渡を受けて開設しました。

その後、グループ企業で不動産を手掛けて施設を開設する一方、事業譲受による展開を積極的に行っている点が、大きな特徴です。

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施設運営を始めた当初は500室を目標にしており、現在は2000室を目標に拡大戦略をとっています。加えて、2018年には通所系のデイサービスを譲り受け、サービスの幅も広げています。


同社の展開を象徴するエピソードが、2016年に北摂地区で2つの住宅型有料老人ホームを一度に譲り受けているケースです。これは、共通の取引先を通じて事業を引き継いでもらえないかとの相談があり、最初に話を聞いてからひと月で決断しています。

すぐに決断したのは、相手方が介護事業所の効力停止処分を受け、現場はかなり逼迫した状況だったからです。

「地域的な融和性もあり、運営・経営のオペレーションを見直せば立て直せそうだというめどをつけながら判断しました。同じ地域で介護を展開している事業者として、入居者、職員の生活を守らなければならないという、使命感もありました」と同社取締役副社長の大前直樹さんは振り返ります。

事業譲受を決めてから2週間で利用者・家族への説明のほか、関連する取引先への連絡、行政とのやり取り、各種の届け出を行いました。結局2施設は1年程度で黒字転換できたといいます。


ドミナント展開することで職員の定着、育成にメリット


「『このエリアのこういう物件を探している』と、こちらからリクエストをして探すこともありますが、譲渡希望の事業者から直接的、間接的にお話をいただいて検討するケースがほとんどです」と大前さん。


とはいえ、譲渡希望の施設があったからといって、なんでも飛びつくわけではありません。同社がこれまで手掛けてきた経験から、「売りたいと言ってくるところは、人員不足、入居者が少ないなど何らかの問題点を抱えているケースが多い」からです。

そこで同社では、同社のドミナント戦略に合ったエリアの施設であるか、施設のサイズ・スペックは適当か、同社が入ってオペレーションすることで、経営の改善が見込めるかを検討して判断しています。

「訪問介護サービスが入る住宅型の施設で、50室前後のサイズが、当社としては手掛けやすいですね」と大前さん。

M&Aで住宅型施設1カ所、デイサービス2カ所を引き受けた例もあります。


「その会社は事業所が限られているため、管理職ポストも少なく、職員からはキャリアパスが見えにくいこともあり、人材流出が起こりやすいなどの問題を抱え、行き詰まりを感じていたようでした。当社としては、同一エリアに多数の事業所をもつことで、職員の異動を図り人材交流ができるほか、管理職のポストも増えるので、職員の定着にもつながるなど、さまざまな面でメリットが生じると考え、M&Aを行いました」

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案件を検討する際には、従業員リストや給与台帳なども全部調べ、さまざまな雇用条件が維持できるか、調整可能かを確認します。利用者の料金体系も含めて運営の中身を見せてもらい、提供するサービスの質を維持でき、一定期間変わらない条件でできるかどうかも含めて検討します。

譲渡先の職員も利用者・家族も不安な気持ちでいるだろうから、「不利益な変更はないことを丁寧に説明します」と大前さんは、譲受にあたっての注意点を語ります。

また、外部のケアマネジャーが関係している場合は、事業を譲り受けるときにケアマネへの説明も欠かせないといいます。「住宅型施設と訪問介護サービスをセットで譲り受けますから、ケアマネの理解を得る必要があります。ここは意外と盲点かもしれません」と大前さんは指摘します。


自分の目で見て調査し隠れたコストまで試算し検討


事業譲受には時間を買うという意味合いもあります。土地を買い、建物を建ててと考えると、事業開始までに1年半から2年かかります。
一方、事業譲受は、短期間で黒字化できるめどが立つのであれば、新規に施設を建てるよりも事業拡大のスピードアップがはかれます。

「案件ごとのメリット・デメリットを見極めながら、新築、譲受物件を検討しています」と大前さん。

売買をするときには、売買価格だけでなく、一定水準で施設を回していくためにかかるすべてのコストを計算する必要があります。

自社のサービス水準を達成するために必要な設備投資、満室にするためにご利用者を集める経費、職員の採用コスト、教育コストなども含めて計算し、借り入れをするならその返済計画まで考えて検討しなければなりません。

譲り受けた事業所の職員は、自社の研修センターで集合研修を行い、自社なりの介護の考え方をはじめ、介護知識、技術についても習得してもらいます。「みなさん基礎はお持ちですから、適宜研修を行い、半年くらいの期間を目安に考えています」と大前さん。

待遇を含めた条件、サービス、費用は大きく変わることはないので、職員もご利用者・ご家族からも大きな不満が出ることはありません。ただ、「ユニフォームが変わるので、ほんの一時期ですがご利用者は戸惑うかもしれません」と大前さん。

今後、M&A、事業譲受を考えている会社に対する大前さんのアドバイスは、「M&A仲介会社の話をそのまま鵜呑みにするのは危険です。自分の目で見て、実地調査をして、自社の運営に当てはめてシミュレーションをする必要があります。自分で調べれば、さまざまな疑問点が出てきます。それらを解消して、うまく回せるという判断ができるかどうか検討すれば、大きな失敗をせずにすみます」ということです。


制作:㈱日本医療企画

取材年月:2021年6月


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PROFILEプロフィール

株式会社ライフケア・ビジョン

2011年設立。「癒・食・住」で高齢者の暮らしを笑顔にする、をモットーに北摂地区を中心に、有料老人ホームやデイサービスなどを展開。アクティブシニア向け賃貸マンションなど、革新的な取り組みを続けている。

●会社概要
大阪府大阪市東淀川区東中島1-18-22
新大阪丸ビル別館9F
TEL:06-6160-7088

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