<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之
もともと医療・歯科診療は労働集約型産業の典型例と言われ、スタッフの採用・定着はきわめて重要な経営課題と言えます。ただ、やみくもにスタッフをかき集めても定着は見込めません。採用計画から労働条件の設定などをあらかじめ準備しておくことが求められます。
開業時の人事・労務としては、募集と採用が大きな課題となります。
①採用計画の策定
開院にあわせて、まずはどの媒体に求人広告を出し、いつ頃面接をして、研修は開院の何日前に行うといったスケジュールを設定します。また、歯科衛生士、助手、受付など、職種ごとに何名採用するかを決めます。採用面接時には医院の労働条件について、求職者に説明をしなければなりませんから、事前に労働条件を決めておきます。
②地域性や時期を踏まえて募集業者を選定
募集方法としては、ハローワーク、衛生士学校、知人の紹介、折り込みチラシ、グッピー、メドレーといった業界特化型の業者等の中から、地域の特性、時期などを勘案して、どの方法をとるか決定します。
③スタッフからよく出る不満と労働条件の整備
スタッフから出る不満として、次のようなことをよくお聞きします。
・前の職場と扱いが違う
・税金や社会保険の関係で給与を103万円または130万円以内に抑えたい
・入社前に聞いていた条件と違う
・一番忙しい時期に合わせて人を増やしてほしいと言われる
・パートタイマーでも有給休暇を付与してほしい
・労働法規が守られていない
上記のようなことがもとでトラブルになり、開院後すぐにスタッフがバタバタと辞めていくといったことがないようにしたいものです。
労働条件をあらかじめ定めておき、面接時には提示する必要があります。給与・保険関係・労働時間・残業手当・有休休暇・初回の賞与・賞与の月数・退職金・服務規律・交通費などは明確に示すべきでしょう。
ただし、これらの項目は労働法規の知識が必要ですから、可能であれば社会保険労務士にアドバイスをしてもらうことを、お薦めしております。
④前の職場の人を連れてくる場合
この場合、前の職場の院長とのトラブルが発生しないように注意が必要です。また、前の職場では、お互いに従業員同士であったわけですが、今度は雇い主と従業員の立場になり以前のよい関係が崩れてしまうことがあるので注意が必要です。
⑤院長夫人の関与
受付や歯科衛生士として全面的に関与するか、経理事務等でバックヤードで関与するかが望ましいでしょう。中途半端な関与は従業員とトラブルにつながることがあります。
監修:㈱日本医療企画
制作年月:2022年3月
PROFILEプロフィール
日本クレアス税理士法人 大阪本部会長
上田久之(うえだ・ひさゆき)
○姫路西高校から神戸大学経営学部会計学科へ。在学中に公認会計士試験に合格。日本の四大監査法人の一角をしめる新日本監査法人を経て、1982年、大阪市中央区にて開業。MMPG全国会常務理事・元歯科部会長、日本歯科医療管理学会会員。
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