連載【第1回】はこちら ☞ 新米院長日記―開業への道― ネット検索で見つけた!誠実なコンサルタントとの出会い
<著者> 野崎浩司 救急科専門医・麻酔科認定医
はじめに、勤務医時代には考えもしなかったお金の話。開業にあたり銀行から融資を受けるには、事業収支計画表の作成が必要でした。住宅ローンなら、「総額◯◯万円で△年ローン」で借りられますが、開業ではそんなアバウトは許されません。「何がメインか?」「開業予定地周囲の医療機関の診療科は?」「人口統計は?」「立地は?」などの条件から、1日の外来患者数を想定し収支計画を作成します。
私は、「プライマリ・ケア(外科処置含む)+ペインクリニック+リハビリテーション+自費診療(多汗症とAGAを予定)」と、あまり見かけないスタンスで、正直自分では何の予想もつきませんでした。そこで、前述の条件などから表のようなものをコンサルタントにつくってもらいました。
1年目(2020年10月〜21年9月)の1日の外来患者数は、内科20人、ペイン5人、リハビリ5人が目標。そこから毎年徐々に増患してくれることを祈りつつ、日々努力することになります。ただ、税理士や銀行の医療担当者からは、外来患者数の上方修正や1人当たり診療単価など最終版まで何度かアドバイスを頂戴しました。これも、住宅ローンとは違うところ。
しかし、これはあくまで予想で、実際はゼロに近い日もあるはず。対して支出は人件費や家賃、医療機器の支払いなど、確実に出ていくのです。まさに、「取らぬ狸の皮算用」を50歳にして知ることに……開業って恐ろしい……。
そんな計画書を基に、2つの銀行と面談。昨年末A銀行に好条件をいただきこれで決まりかと思いきや、B銀行からさらに予想外の低金利を提示していただくことに。同条件なら前者で融資を受けたいと思っていましたが、かなり差があったためコンサルともよく話し合い、B銀行に決めました(私が住宅ローンを借りたメインバンクだったなどの効果もあったのだろうか?)。
Twitterで出会った2人の先輩
次に、SNSの話。炎上など悪い印象もありますが、活用すれば情報収集はもちろん、相談や宣伝などもでき、メリットはとても大きいと思っています(しかも無料!)。
たとえば、Twitterで知り合い、DMを送り施設見学させてもらったのが、帝都メディカルクリニック西新井駅前院の藤田将英先生です。34歳とお若いが、麻酔科出身で超音波診断を用いた整形やペイン、物療に頼らないリハビリで集患に成功しています。約束した日の診察終了後お邪魔し院内の説明を受け、その後食事をしながら多くのことを教えてもらいました。わざわざ東京まで押しかけた意味があったし、以降もDMで相談させていただく関係が続いています。
このようにSNSでは、自身が開業時に苦労した・していること、診療で行うとメリットがあることなどを後進に包み隠さず教えてくれる心の広い先達も多くいらっしゃいます。その代表格が、「MM」先生と「よいこはこいよ」先生。Twitter以外にも、開業前後の医師向けオンラインサロンをSlackアプリで提供しています。機器や経費、融資、人事など、気軽に相談できる場となっているため、とてもありがたい。開業前後の人はフォローしておくのをおすすめします。
とっておきのイラストでインスタ映えを狙う(!?)
また、ペットの黒柴の日記に始めたInstagram(インスタ)では、癒し系イラストで盲導犬サポートショップの商品デザインも手がける「セツサチアキ」さんにDMを送り、リハビリ室の壁に使うイラストを依頼。年齢や性別、障害の有無にかかわらず楽しく暮らしていける社会のイメージで書いてもらうことに。
「小児科の待合や廊下では見かけるが、リハビリ室の壁にイラストが描かれているところはあまりないのでは?」と思ったのがきっかけでしたが、図1のラフスケッチを拝見し、リハビリする人に癒しと元気、明るさを与えてくれると確信しました。
また、リハビリ室は別名「ひばりコミュニティスペース」として地域の皆さんのためにいろいろ利用したいので、「イラストのあるクリニック」として他院との差別化にもなれば良いのですが(「映えスポット」にもなれば良いなぁ)。
さらに、ドラマ「砂の器」の題字をはじめ、すばらしい文字を書かれる筆耕アーティスト道口久美子さんにも、名刺などに使う名前を2パターン書いてもらいました(図2)。
いずれもそれまでのお二人の作品を見ていたので、イメージどおりのすばらしい作品をいただき、とても満足です。
全員に快くご助力いただけるわけではないですが、自分の夢=開業のためには多少、図々しいと思われても勇気を出し連絡してみるのをおすすめします。「あのとき聞けばよかったー!」と一度きりの人生で絶対に後悔したくないし。
監修:㈱日本医療企画
(取材年月:2020年4月)
連載【第3回】はこちら ☞ 麻酔科時代の専門性を発揮しつつ高齢者が利用しやすいクリニックに
PROFILEプロフィール
厚別ひばりクリニック
野崎浩司(のざき・こうじ)
●1995年、旭川医科大学医学部卒業後、同大学で麻酔科蘇生科研修医、同年10月砂川市立病院麻酔科に勤務。旭川医科大学、市立札幌病院等を経て、2007年、沖縄へ。琉球大学附属病院、浦添総合病院救急総合診療部等を経て、2016年より札幌市の環状通東整形外科副院長
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