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<取材先>大宮ペインクリニック(さいたま市大宮区) 吉田史彦院長

目次
01:整形外科では解消できない痛みのニーズに着目
02:「ブロック注射」限定は治療の質と経営の担保のため
03:専門性と収益を両立する事業モデルの検討が不可欠

整形外科では解消できない痛みのニーズに着目

JR在来線や新幹線など計14路線が乗り入れる巨大ターミナル駅である大宮駅から徒歩3分の好立地に、2019年、大宮ペインクリニックは開業しました。

同院は、麻酔科医として大学病院やペインクリニック、さらには整形外科診療所でも研さんを積んだ吉田史彦院長による、主に脊椎疾患などの痛みを対象とした「神経ブロック注射」専門のペインクリニックです。

「整形外科にも脊椎疾患等の痛みに悩む患者さんが大勢来ますが、一般的な整形外科の場合、物理療法や内服薬程度の治療しかできず、効果を実感していない人も少なくありません。私が以前勤務していた整形外科診療所は、ペインクリニックにも力を入れており、そうした痛みに悩む患者さんに対しブロック注射などで痛みを取ってあげると、非常に喜ばれたのです。巷の整形外科領域では解消できない痛みの治療へのニーズを感じました」

そんな同院では完全予約制を採用し、問診や患者に自身の疾患や「神経ブロック注射」に関する説明などにも30分以上時間を割き、患者自身が受ける治療を十分に理解したうえで実施することを重視しています。いくら専門性の高い治療でも、患者がその意義を理解していなければ、十分な効果が発揮されないからです。HPでもどういった疾患や痛みが同院の治療の対象となるのか詳細に記載し、主に整形外科領域の脊椎疾患の痛みが対象である旨を発信しています。

「ブロック注射は、麻酔科医の高い専門性のうえで成り立っている治療です。慢性的な痛みに悩む人がより身近にブロック注射を受けられるようにすることが当院の掲げるコンセプトですが、痛み止めの薬を出してもらうのと変わらない気軽な治療だと思われるのは望ましくありません。ブロック注射が必要ない症状の患者さんも来てしまうからです。本当に当院が診るべき患者さんのみに来てもらい、十分な時間をかけて治療方針への理解を深めるために、あえて受診に対するハードルを設けているとも言えます」と吉田院長。

また、本当に診るべき患者層に絞って診療し、結果を出すことは、院長自身のモチベーションの持続にも大きくかかわってくるといいます。

「ブロック注射」限定は治療の質と経営の担保のため

このように、脊椎疾患を中心とした「ブロック注射」を専門としている同院ですが、当初は「ブロック注射」に限らない一般的なペインクリニックからスタートしました。

あえて「ブロック注射」専門に舵を切った狙いについて吉田院長は、「自分が特化したかったというよりも、実現したい診療方針と経営の持続性の両立を模索した結果、『ブロック注射』専門にならざるを得なかった」と振り返ります。

完全予約制で十分に時間を取り、患者への説明や治療への理解を深めていく診療方針にこだわると、必然的に時間内に診られる患者数は限られます。一方で、大宮の一等地に構え、ペインクリニックとして専門設備にも投資しており、診療所事業を継続させるには、保険診療内で一定の収益を確保できる経営戦略が必要でした。そこで、「痛みの悩みを何でも診る」薄利多売路線ではなく、「本当にブロック注射が必要な痛みだけを診る」現在の専門特化路線に転換しました。

「当院の診療方針で単価の安いものから高いものまですべて行っていては、およそ経営は成り立ちません。四十肩などの整形外科で対応できる疾患は整形外科に任せ、当院はペインクリニックでしかできない治療に特化したほうが、医療機関としての社会的な役割も果たせるし、経営的にも安定すると判断し、現在のスタイルに落ち着いたのです」

現在は、医師は吉田院長1人、スタッフは非常勤を含め看護師2人、受付2人体制で、1日約30人程度の痛みに悩む患者を診ています。


<整形外科との違い、対象となる疾患など、HPでも詳細に説明>
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専門性と収益を両立する事業モデルの検討が不可欠

今後の専門診療所の可能性について吉田院長は、「WEB社会になり広域から集患できるようになったからこそ可能性が出てきた開業スタイル」と分析するも、専門性を担保するかつ収益を確保できる事業モデルを事前に考えておかなければ、継続は厳しいと話します。

その背景として、現行の保険診療制度では、時間をかけて質の高い専門医療を提供するよりも、より多くの患者を全般的に診ていくほうが収益を上げやすい仕組みになっていると指摘します。

「言ってしまえば、軽症の患者さんを数多く診ていくほうが楽に収益が上げられるということです。こうした薄利多売の診療所では、当院で診ているような専門性の高いニーズは抜け落ちてしまいます。ただ、社会保障費が削減される一方のなか、医療機関にかかる必要のない軽症に財源を消費するのではなく、より専門的な医療に限られた財源を投入するほうが、本来は望ましいはずです。そのためには、診療報酬体系の見直しも重要ですが患者側への医療のかかり方に対する教育も必要だと感じます」

そうした体制にシフトしていくなかで、専門診療所が社会的な役割をより担えるようになっていくのではないかと語りました。


制作:㈱日本医療企画

(取材年月:20213月)


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PROFILEプロフィール

PROFILE

大宮ペインクリニック

吉田史彦院長

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