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<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之

テナント物件でスタートし、順調に事業が伸びていけば、浮上するのが戸建て診療所への移転です。この時に留意したいのは土地代・建築費・設備費などの支出を踏まえたシミュレーション、そして何より「患者の利便性の堅持」です。

患者数が増えるなどして順調に医業収入が伸びていくと、開業当初のテナント物件が手狭になり、新たに土地・建物を購入して戸建て診療所に移転するケースは珍しくありません。

目次
01:戸建ての場合は3パターン
02:移転のタイミングはいろいろ
03:移転先は「目と鼻の先」が理想

戸建ての場合は3パターン

戸建てに移転する場合、最も多いのは土地・建物とも完全に所有するパターンです。次に多いのが、土地を借り、その上に自前で建物を設けるパターン。この場合は定期借地権方式という返還時期が定まっている方式が一般的です。もう一つのパターンが地主に建物も建ててもらって自分が入店するパターンです。その代わり、建築費に近い金額を保証金として用意することが多いようです。

また、従来のテナント開業と比べて総費用が跳ね上がることも想定すべきでしょう。戸建て診療所へ移転すると、土地代・建築費・設備費などで相当なコストがかかりますが、一方で、テナントの賃借料が無くなりますので、そのシミュレーションが必要になります。

移転のタイミングはいろいろ

最も多いのは冒頭で述べたように経営が順調で、将来の見通しも明るいと判断した場合ですが、それ以外の要素もありますし、複数の動機づけによって移転に踏み切ることもあります。

たとえばご子息が歯学部に入学したとか、歯科医師免許を取得したことをきっかけに移転したケースもあります。テナントの場合、ビル自体の老朽化も当然、決め手になってきます。自分の代だけで完結するのであれば「あと10年だから、このまま続けよう」と判断できても、後継者のことも考えると「30年後」も見据えなければなりません。移転して承継に備えることも十分、考えられます。

開業した際に借家住まいであれば、新たに戸建てを建てる際に住居として併用することも考えられます。

移転先は「目と鼻の先」が理想

移転する際は「同一診療圏内」であることが鉄則と言えます。そもそも保険医療機関としての指定を継続して受けるには、原則として旧医療機関から2キロメートル圏内とされています。これは移転先が、これまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内に収まり、引き続き診療を受けられることを想定しているためです。

また、歯科医院の経営の安定化という観点からも、この原則は踏まえておきたいものです。患者にとって通い慣れない場所にわざわざ移転し、他院への流出を促すべきではありません。

理想を言えば、旧医院から「見える場所」、つまり「目と鼻の先」に移転することが望ましいと言えます。これは競争の激しい都市部であればなおさら重視すべきです。



取材年月:2022年3月
監修:㈱日本医療企画


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PROFILEプロフィール

PROFILE

日本クレアス税理士法人 大阪本部会長

上田久之(うえだ・ひさゆき)
○姫路西高校から神戸大学経営学部会計学科へ。在学中に公認会計士試験に合格。日本の四大監査法人の一角をしめる新日本監査法人を経て、1982年、大阪市中央区にて開業。MMPG全国会常務理事・元歯科部会長、日本歯科医療管理学会会員。

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