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<著者> 小濱介護経営事務所 代表 小濱道博


目次
01:返済期限を迎え、ますます厳しい状況に
02:職員の安全を確保できてこそ、介護事業が継続できる
03:被害を最小限にとどめながら、事業継続する努力がリスク管理

返済期限を迎え、ますます厳しい状況に


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する問題は、全国に大きな影響をもたらしながら3年目を迎えています。

介護業界も例外ではなく、感染が拡大してまん延防止等重点措置が適用される期間は、予定されていた実地指導を延期または中止とし、感染者が減少した期間に集中的に1件2時間程度の実地指導を1日に複数事業所で行うことが恒例となっています。

オミクロン株は感染力が強く、第五波のピークであった2021年8月の10倍を超える介護関連施設でクラスターが発生しました。また、子どもの通っている保育園などが休園となって自宅に子どもがいるため、出勤できない職員が多発し、勤務シフトが取れない介護施設も急増しました。

国は継続して、多くの救済措置としての多様な特別融資を設けています。

しかし、2年前のコロナ施策で特別融資を借りた介護施設は、その返済時期を迎えつつあり、金融機関からの借入枠が一杯であるために追加融資を受けることができず、設備投資などの事業展開に支障が出始めています。

また、法人税などについても、延納の特例措置(※1)などを活用し、納税期日を先延ばしするなどの対応を行った介護施設は、その翌年に2年分の納税を強いられ、大きく資金繰りが悪化しました。

これは、社会保険料、固定資産税、自動車税など広範囲に活用していた介護施設ほど影響が大きいです。


当時は、ここまで収束に長期間を要するとは誰も考えてはおらず、短期間で収束すると見ていました。それが想定外に長期化し、未だに収束の目処が立たない状況で、多くの介護事業経営者が疲弊しています。


職員の安全を確保できてこそ、介護事業が継続できる


先にも書きましたが、熱がある職員を休ませるなどの対応により、勤務シフトが回らなくなって所定の人員基準を満たすことができない医療機関や施設が急増しています。

厚生労働省から人員基準の緩和措置などが出されており、コロナ禍が原因で人員基準を満たせない場合は、人員欠如減算を適用しない特例が継続されています。(※2)
しかし、減算が適用されないだけで、人員不足によるサービスの低下は避けられず、少ない人数でサービスの提供を強いられる介護職も過酷な労働環境で頑張っていることを理解しなくてはなりません。

そのようななか、2022年3月現在、介護施設において、3回目のワクチン接種が進められています。厚生労働省からは接種後の体調不良で職員の配置基準が満たせなくても、柔軟な対応、すなわち人員基準減算には問わない旨の通知も出されています。

また、ワクチン接種とは、感染しないことを意味するのではありません。感染しても重症化しないためのものです。他人を感染させるリスクは残るので、ワクチン接種後も感染対策の継続が必要となります。

施設等でクラスターが発生した場合、最大の経営リスクは、職員の多くが濃厚接触者に認定されることにあります。濃厚接触者に認定されると、PCR検査が陰性でも2週間は自宅待機を余儀なくされます。

さらに、厨房の調理職員や清掃婦は出勤しなくなるため、その役割も担当しないとなりません。また、職員は自宅に帰らなくなるという事例も報告されています。自らが感染している可能性があるため、自宅に帰った結果、家族に感染させるリスクを恐れてのことです。

あるディスカッションで、クラスター医療チームの医師は、一番大切なのが自分たち、次に現場、最後に生存者だと言ったことが心に残りました。

いくら徹底した感染対策をしても、クラスターが発生した場合、まずは自分たちを守ることを最重要と考えるべきだと強く言われました。職員が安全を確保できてこその介護であり対策であるわけです。

また、介護職のメンタルケアもとても重要性があります。

介護職は、自らが被災者であるとともに、救援者でもあります。二重の立場にいることで感じるストレスも計り知れません。セルフケアの研修を日頃から定期的に行うなどの教育的介入(予防)が重要とされています。


被害を最小限にとどめながら、事業継続する努力がリスク管理


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デイサービスなどでは、利用控えにより利用者が減少して、未だに稼働率が戻らない介護事業所も多いです。長引くコロナ禍のなかでの利用控えや自粛によって、介護サービスを使わないという選択があることを、利用者が認識したことも大きいです。

収入減のなかで、加算算定の相談が増えてきましたが、簡単なものではありません。
介護サービスを提供する職員の一人ひとりが、加算算定の意味と手続きを理解しないと、利用者も納得しないし、良い介護サービスにはならないからです。

良い介護サービスを提供できない事業所は、決して伸びてはいきません。ましてや、利用者に加算算定のために機能訓練を押しつけるようなことをやっていけません。


新型コロナウイルスによる高齢者の致死率は高いです。かといって、過剰な対応は必要ありませんが、事業者はリスク管理を徹底することが求められます。

リスク管理とは、施設や事業所で感染者を出さないことだけを意味するのではありません。なぜならば、営業を継続する限り、感染者の発生は起こりえることだからです。被害を最小限に留め、感染者を出さない時間をより長くする努力が、リスク管理といえます。

国や行政の指示に従う限り、責任は国が取ってくれます。事業者はしっかりとリスク管理を行ったうえで、地域のライフラインとして可能な限り、従来どおりのサービス提供を継続できる体制を維持することが重要です。

新型コロナウイルス問題は、さらに長期化の様相を呈しています。しっかりと情報をキャッチして、その時点でできうる対策を取り、可能な限り事業を継続する覚悟が求められています。

そのリスクマネジメントで重要なパーツに、2021年度介護報酬改正で義務化されたものに業務継続計画(BCP)があります。「オミクロン株」での感染が拡大し、保育所、学校を媒体とした家庭内感染が急増するなかで、改めて感染対策BCPの重要性が再認識されています。


※1 延納の特例措置

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/pdf/faq.pdf

※2 新型コロナウイルスにおける人員基準等の臨時的な取り扱い

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000045312/matome.html



監修:㈱日本医療企画
制作年月:2022年3月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

小濱 道博(こはま・みちひろ)

一般社団法人日本介護経営研究協会(NKK)専務理事、一般社団法人介護経営研究会(C-SR)専務理事、介護事業経営研究会(C-MAS)最高顧問。介護事業コンサルティングを幅広く手掛け、全国で年間200件以上の介護事業経営セミナーを行う。

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