<著者> 株式会社ポラリス 代表取締役 森剛士
退職リスクも踏まえたうえで慎重に引継ぎを進める
デイサービス等を事業承継する場合の人事労務問題は、事業承継に関するものとデイサービスという許認可事業を行う上で必要なものと、大きく2つに分けて考える必要があります。
事業承継
まずは前者について、デイサービス業界は多数乱立業界と言われ規模の大きくない事業者が多く、ほかの中小企業同様にノウハウや関係取引等が経営者個人に集中していることが多いです。
そのため、親族や社員に承継する場合は十分な準備期間、すなわち後継者候補をできるだけ早く選定し経営に必要な能力を身につけさせ、知的資産、すなわちデイサービスの運営、経営ノウハウを受け継がせていく必要があります。
他の業種と同様、何よりも、「現経営者と後継者の対話」「理念、事業についての認識の共有」を重ねていくことが有用です。
従業員については人事担当者が一人ひとり面談を行い、精神的な不安を取り除き、給料面の引き継ぎであったり、退職金制度などの引き継ぎを行う必要があります。
全職員の雇用継続を条件として加えてくることが多いですが、逆に雇止めを行いたい職員がいる場合は、吸収分割ではなく事業譲渡であれば可能です。
以上のような準備を怠ると事業承継を発表した後、ほとんどの職員が辞めてしまい、その対応に莫大な時間や費用が掛かってしまうことがあります。
許認可事業
次にデイサービス事業の許認可にまつわる人事労務については、人員基準をしっかり継承していく必要があります。
吸収分割等による株の売買の場合は、引き継ぐ前の人員基準の違反も引き継ぐことになる場合があります。介護施設のM&Aなどの経験を積んだ弁護士や社労士等にしっかりと相談して進めましょう。
繰り返しになりますが、事業承継時はスタッフの退職リスクが高まることが考えられますので、人事部門や人事担当者は時間をかけて慎重に準備を進めましょう。
監修:㈱日本医療企画
制作年月:2022年4月
PROFILEプロフィール
森 剛士(もり・たけし)
株式会社ポラリス 代表取締役
外科医、リハビリ医を経て高齢者、慢性期リハビリテーション専門のクリニックを兵庫県宝塚市に開設、ポラリスグループをスタート。地域密着型社会貢献事業として自立支援特化型デイサービスを全国58カ所に展開中。一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会理事。一般社団法人日本デイサービス協会副理事長。
〇株式会社ポラリス
兵庫県宝塚市旭町3-9-1
ポラリス本社ビル2F
Tel:0797-57-5753
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