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<取材先>社会福祉法人小田原福祉会


経営の数字の見える化というと、難しく感じたり、現場の職員に示しても意味がないと思われがちです。社会福祉法人小田原福祉会では、パート職員にいたるまで収入・支出の数字を見える化しています。

目次
担当エリアを細分化し リーダーの責任エリアを限定
数字を見せることで 収入・支出への意識が高まる
数字が見えることで 経営が理解できる

担当エリアを細分化し リーダーの責任エリアを限定

開設から45年を迎える社会福祉法人小田原福祉会。2018年の理事長の交代を機に、経営のあり方を大きく刷新しました。
その目的を、同法人理事長で介護福祉経営士2級の時田佳代子さんは次のように語ります。

「これからの経営を考えたときに、極力職員全員が経営に参加する仕組みが必要と感じていました。特に当法人の事業は在宅サービスが7割を占め、事業所も2つの自治体にまたがり、40カ所ほどが地域内に分散し展開しています。その結果、法人本部からは日々の状況を直接把握することに困難を感じていました」

その当時、同法人はエリアを3つに分けてサービスを提供していました。
エリアがカバーする地域が広い分、リーダー自身も十分にマネジメントを機能させることができませんでした。

そこで、7つへとエリアを再編成。サービス種別ごとに組織化して効率化を図るというアイデアもありましたが、今後の地域包括ケアシステムの構築を視野に入れ、 担当エリアを小さくすることで、より地域のことを知ることができるようにしたのです。

この再編には、地域をよりよく知る以外に、もう一つ目的がありました。それが、リーダーの育成です。

「3つのエリアごとにリーダーを置いていましたが、彼らは皆60代以上であり、次世代のリーダー育成が急務となっていました。7つのエリアに細分化することで、1つのエリアのリーダーが担う役割・業務を少なくし、若手がリーダーに登用された際も大きな負担感を感じないようにしました」と、時田さんは振り返ります。

法人経営を担う次世代リーダーの育成は、法人の未来を確かなものにし、同時に全員経営をスタートさせる鍵でもあったわけです。

数字を見せることで 収入・支出への意識が高まる

一人ひとりが組織の一員として経営に参加するためには、日々の業務が経営の数字に反映されることを理解しなければなりません。そのために毎月の収支を現場で管理する仕組みを整えました。

さらに2018年からはアメーバ経営※の手法を採用し、事業所ごとに毎月「部門別採算表」を作成し、収支の背景を把握できるようにしました 。

介護97_小田原福祉会図表2.jpg
採算表や月次報告書のフォーマットを作成した同法人事務局長の神矢孝之さんは「毎月数字をタイムリーに見せ、自分たちが行っていることの効果を確認できるようにしました。
数字を見て、対策を考える習慣がつくようになり、ひと月ごと、科目ごとといった具合に収入と支出がどうなっているのか、職員全員が意識するようになりました」と、その効果を語ります。

事業所ごとに稼働率や延べ利用者数などから収入を、人件費や水道光熱費などから支出を把握し、前月との数字の違いなどを根拠をもって説明できるようにしていくことで、現場スタッフも注意するようになり、経費削減などの意識も高まっていったと言います。

「今月は収入が少ないから、修繕は来月に回して経費を削減するようにしたり、水道光熱費でソーラー電源を活用している事業所は、夏場はソーラーのお湯を使うようにするなど、身近な改善策が徹底されるようになってきました」と、神矢さんは職員の動きが変わったと話します。

一番費用が掛かるのは人件費だとわかると、利用者が少ない日はパート職員自ら早上がりなどを申し出るなどして、支出を下げる工夫も行われていると言います。

「開始当初は赤字部門の職員も、誰かがどうにかしてくれるものと思っていた雰囲気もありました。しかし、数字が見えるようになることで、自部門が赤字のままでは問題であると思うようになり、どうすればいいのかを考え、対策をとるようになる。その結果が出ると、達成感を感じられるようになり、数字への意識が定着していったのです」と、時田さんも職員の動きの変化を語ります。

さらに、自部門の収支が理解できるようになると、その次に法人内での自部門の位置づけや、ほかの部門の取り組みも注視するようにもなってきていると言います。
自部門だけでなく、一歩高い目線で法人全体を見ることにも繋がっているそうです。

2020年春から続く新型コロナ禍において、同法人では経営を考えた上での事業活動の継続、という選択を多くの職員が支持したのも、見える化をした一つの成果なのかもしれません。

「もちろん感染対策を徹底した上で行いました。私たちの仕事はどんなことがあってもご利用者様を引き受けなければならない責任とともに、ここでサービスを止めたら法人の経営がどうなるのか、という危機意識を職員全体がもっていたからこそ、自粛やサービスの停止といった話にはなりにくかったのだと思います」と、時田さんは話します。

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数字が見えることで 経営が理解できる

こうした数字を見せることに対し、介護や福祉の分野になじまないという声もたびたび聞かれます。

しかし、「福祉だから、介護だからといって、経営を疎かにしてはならない」と、2人は口をそろえます。
リーダーには経営に対する責任と権限が付与されますが、同時に報酬も伴うからこそ、未来に対する希望が生まれます。

「法人経営の安定を考えれば、介護報酬だけに依存する経営は見直さないといけません。職員が人生をかけて働くぐらいの気概をもてるような法人にしていく上では、働いた分職員の暮らしや人生にも見返りがあるようにしていかなければなりません」と時田さんは指摘し、職員の業務への向き合い方が、法人全体の経営にも大きな影響を与えることに気づかせていきたいと話します。

ここ数年で急速に見える化を進めた同法人ですが、最初からすべて職員にオープンにしたのではないと言います。
支出に含まれる人件費の割合が高いため、支出を減らすことを考える際に、人件費にばかり目が向かないように、当初は人件費以外の部分のみを一般の職員には見せていたと言います。

経費削減はある程度できて、これ以上削減するとサービス提供の質に影響する、という時点で人件費の削減を考える、という流れで進めました」と神矢さん。
一つの数字に一喜一憂するのではなく、全体の流れを見ることを職員に再三指摘してきたと言います。

「数字を見える化することで、職員を、リーダーを育てていくのです。過去の数字を重視するのではなく、数字を見て次の目標をどのように立てるか、どのようなアクションをとるべきかを考える力を育てていくことが大切。今後は、数字を見て、予測し、達成するプロセスを組み立てていけるように、職員を育てていくことをめざします」と、時田さんは今後の展望を語ります。


制作:日本医療企画㈱
取材年月:2021年2月



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PROFILEプロフィール

PROFILE

社会福祉法人小田原福祉会

1977年開設。「市民を介護で困らせない」を合言葉に、介護保険制度開始前からデイサービスやショートステイといった事業を開始。現在は神奈川県小田原市を中心に特別養護老人ホームや訪問介護、デイサービスなどを展開している。

〇社会福祉法人小田原福祉会
Tel:0465-34-6001

写真:時田佳代子さん(右)と神矢孝之(左)さん

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