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<取材先> 合同会社くらしラボ


一日の過ごし方が決まっていないデイサービスというと、スタッフによってサービス内容が異なり、ケアの質もバラつくのではないか、という懸念もあります。

合同会社くらしラボでは理念に基づいたケアを全スタッフが行うために試行錯誤しています。


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理念の意味を具体的な行動として説明する


青森県十和田市で2015年から、訪問介護やデイサービスなどの介護事業を幅広く展開している合同会社くらしラボ。

「あなたの“ふつう”を考える」をコンセプトに掲げている同社では、その理念をスタッフ全員に理解させ、具体的な実践につなげていくために試行錯誤を重ねてきました。

代表の橘友博さんは、「当社では、利用者の“ふつう”に合わせた個別ケアを目指しているため、今日一日どう過ごすかを、朝、スタッフが利用者さんと話し合って決めています。しかし、一日の流れが決まっている介護スタイルに慣れているスタッフは、どうしても効率優先の“業務”にしてしまいがちでした。当社の理念を頭では理解しているけれど、どう実践に移したらいいのか分からなかったのだと思います」と、開業当初を振り返ります。

つまり、橘さんが考える“ふつう”に合わせた介護とはどういうものなのかを、本質的にスタッフが理解できていないことに大きな問題があったわけです。

「なぜできないのか」と問うのではなく、地道に個別具体的な実践方法を伝えていくというやり方を、橘さんは選択しました。

「『その人のことをきちんと理解しましょう』と言うだけでは漠然としています。利用者のことを理解するためには、デイに来ている時間だけを見るのではなく、自宅での生活はどうなのか、好きなものはどういったことがあるのかなど、細かく聞くことが必要。利用者の“ふつう”がどういうものかを知る方法には何があるのかを考えるようにしましょうといった具合に、具体的にやり方を説明していきました」と橘さん。

資料を作成し、研修会を何度も開催していったと言います。


具体的にどう動いたらいいか分からなかったスタッフも、繰り返し学ぶことで次第に実践できるようになり、設立から5年を経た2020年頃から、ようやく「くらしラボ」流の個別ケアが定着しだしたと言います。


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農作業をやるのも“ふつう”の暮らし。スタッフはその“ふつう”を支えるための知恵をめぐらす。



定期的な自己評価と面接でスタッフの理解を深める


2020年からは3カ月ごとにスタッフが自己評価を行う制度も導入。
これにより、会社の理念がスタッフにきちんと浸透しているかどうかも把握できるようになったと言います。

「理念は浸透していても、スタッフがそれに沿った行動ができているか、また個々のスタッフのスキルの差はどれくらいあるのかなどを把握することを目的にしています。当社が求めている人材と合った働き方ができているのか、なども見えるようにしていきたいと考えています」と、導入の目的を語ります。

自己評価の方法は、コミュニケーションスキル、チームワークスキルなどの5つの領域について、スタッフ自身に評価してもらうもので、その結果をもとに、管理者との面談を行っています。

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評価結果を見れば、同社が求める介護職像に照らして、どの部分が足りないのかが分かる仕組みになっています。本人が苦手なことやできていないことについては、管理者が一緒にスモールステップをつくり、少しずつステップアップが図れるよう支援しています。

理念の浸透を図った上で、その理念に沿った行動をとることができているのかを確認する場を設けます。できていない場合は、解決策も考えていきます。これにより、理念を唱えるだけではなく、具体的な行動に落とし込むことにつながるのでしょう。

「当初、3カ月ごとの面談は頻繁すぎるかなとも思いましたが、面談の機会を通じて、こちらからスタッフ一人ひとりに声を掛け、抱えている悩みや不満を引き出すことができるので、離職防止につながっていると実感しています。今後は、職場の人間関係や福利厚生、待遇などに対する社内サーベイも開始し、スタッフ満足度の向上を図っていく予定です」と橘さんは語ります。


「健全な意見の対立」のために “ものが言える”社内文化を


現場では、会社の理念に則った利用者の“ふつう”を尊重する介護に徹しようとするスタッフと、一定の効率やルールが必要と考えるスタッフの間で軋轢が生じることもあります。


橘さんは「健全な意見の対立は大いに歓迎」と強調しつつも、「現状は意見のぶつかり合いにまでは至っておらず、お互いが言いたいことが言えずに、雰囲気だけが悪くなってしまっている感じ。おそらく“心理的安全性”が担保されていないために、スタッフが自分の意見を忌憚なく言えない空気があるのだと思う」と、分析します。

「健全な意見の対立」を促すために、“ものが言いやすい”雰囲気や新しいアイデアが受け入れられやすい社内文化をつくっていくことが現在の課題だと橘さんは感じています。

しかし、スタッフ同士の軋轢が生じたときに、橘さんは自分から直接介入はしないことにしています。その理由は、スタッフの主体性を大事にしたいからなのです。

「何かトラブルが生じたときには、私は大まかな方向性を示すだけで、『あとはみんなで考えてみて』とスタッフに投げるようにしています。各事業所の管理者にも、問題が起こったときには、時として管理者を加えずに、スタッフだけで話し合わせるよう指導しています」

このように現場に任せる体制になった背景には、橘さんの過去の経験があります。

開業当初、現場で問題が起こりそうになると、橘さん自ら入っていって“軌道修正”をしていたと言います。

しかし、それを続けているうちに、スタッフが自ら考えることをせず、指示待ち状態になったり、経営者や管理者の顔色をうかがいながら仕事をするようになったりしていることに気付いたのです。

「スタッフが主体的に考えて、自分で動くようにならなければダメだと思い、あるときから思い切って介入することをやめました」と言います。すると、現場で変化が起こりだしたのです。

たとえばそれまでは安全第一の行事を判で押したように繰り返していましたが、利用者が包丁を握って魚をさばいたり、火を扱って焼き芋大会をしたりといった、これまでにない企画がスタッフから提案されるようになったのです。

「『事故や怪我があったときは会社が責任を負うから自由に考えていいよ』と任せたことで、少々危険を伴うとしても、利用者さんの目線に立った、独創的なアイデアが生まれるようになりました」

経営者としての思いを伝えるだけでなく、時としては現場に任せる。そうすることで、新たなアイデアが生まれ、利用者の満足度向上につながるだけでなく、スタッフ自身のやりがいにもなっていくわけです。

「当社の理念である『あなたの“ふつう”を考える』の『あなた』は、利用者でもあり、スタッフでもあります。利用者の個性だけでなく、スタッフの個性も尊重しているということです。そして、多様な個性をもったスタッフ一人一人の“ふつう”を介護に活かしてもらいたいと思っているのです」


制作:日本医療企画㈱
取材年月:2020年12月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

合同会社くらしラボ

2015年に青森県十和田市で開業。利用者の“ふつう”の暮らしを支えることをモットーに、訪問介護、生活支援サービス、居宅介護支援事業のほか、デイサービス、小規模多機能型居宅介護事業などを展開している。

○合同会社くらしラボ
青森県十和田市西12番町7‐28
Tel:0176-58-6490

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