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<取材先>医療法人翔誠会ふくだ内科 福田篤史事務長

目次
01:スタッフからの心配と反対 近隣診療所を承継した理由
02:診療所における承継の種類
03:診療所を承継するメリットとは?
04:診療所を承継するゆえのデメリットは何か?
05:分院展開の今後と総括

スタッフからの心配と反対 近隣診療所を承継した理由

年齢的な理由や新型コロナウイルス感染症の影響から、団塊の世代の開業医の方々が引退を考え始めていることもあり、当法人の分院展開も、今後は承継を中心にしていく予定です。具体的には、診療圏を少しずつずらし、都心に近くても医療過疎地域で必要とされる診療科での診療所開設を予定しています。

すなわち、同一科目での展開ではなく、法人内でいろいろな診療科目の診療所の展開を目指してみたいと思っています。

また、医療度のステージごとにも対応できる法人にしていく予定です。たとえば、▽未病の段階から啓発活動をする産業医、▽健康チェックのための健康診断・二次健診、▽定期的な診療で治療――という3つの流れです。

現在は、2番目の健康診断の領域が弱いので、健保組合との契約ができるように、内視鏡などの設備を整えていく予定です。健康診断・二次健診機能を持つことで法人として、予防から治療までシームレスな医療体制ができると考えています。

ただ、こうしたビジョンはありつつも、今回承継開業する外来中心の分院は、当初描いていた外来戦略とは必ずしも合致するものではありませんでした。というのも、本院との距離がわずか500mと近すぎたのです。スケールメリットよりも、診療所間での患者さんのカーニバリゼーションの発生や、力の分散など、むしろ管理コストが高まる可能性も考えられます。そのため、スタッフはとても心配してくれました。

私自身も外来診療中心の診療所では、徒歩での通院が難しくなる1.5㎞程度は離して分院展開していくことが望ましいと考えていました。しかし、コロナ禍に鑑みて、経営のリスク分散ができること、診療圏が魅力的であったこと、前院長の奥様から購入を希望されたことから、最終的にはその診療所を引き継ぐという意思決定をしました。

そして、引き継がせていただくからには、「よかった」と思ってもらえるように、最善の努力をして、最大限のシナジーを生む方法を考えました。

その一つとして、診療科目で本院(循環器内科中心)と分院1階(呼吸器内科中心)を分けて、診療時間(午前8時30分~12時、午後1時30分~午後6時※木曜日のみ午後8時まで診療)を少しカバーし合えるような体制を考えています。

さらに、今後分院1階が軌道に乗ったら、分院2階では消化器内科、または皮膚科、小児科といったまた別の診療科目の診療所を立ち上げ、法人内でスタッフの行き来や患者さんの紹介を頻繁に行える環境を整えていき、500mという近距離立地を逆に活かしていこうと思っています。

診療所における承継の種類

承継には主に「親族内承継」と「親族外承継(第三者承継)」があり、後者の場合は一般的に、承継アドバイザーと言われる承継の仲介会社が入りマッチングをして、承継手続きを行います。

今回の私の場合、親族ではないため第三者承継になりますが、個人診療所を開設していた前院長が体調不良により閉院されてから、土地と建物を購入するという形で引き継ぐことになりました。そのため、閉院せず患者さんやスタッフもそのまま継続して引き継ぐことができなかったため、本質的には、一般的な第三者承継とも異なっていました。

前院長が閉院されたのが2020年9月で、承継した当法人が改めて開業するのが、21年7月を予定しています。その間に当然、以前通院されていた患者さんは地域のさまざまな診療所へ分散してしまっています。そのため、「果たして、患者さんに戻ってきてもらえるのだろうか」と、とても心配ではありますが、やるべきことをやり、患者さんから評価してもらえる診療所になりたいと思っています。

診療所を承継するメリットとは?

承継開業する最大のメリットは、「ヒト・モノ・カネ」そして「情報」が半分以上はすでに整っていることです。何もないところからゼロベースでの新規開業の場合、▽場所の選定、▽設計・改装、▽集患――という3つの大きな山を越える必要があります。さらには、医療機器の購入にともなう負担や、「本当に来院してくれるのか」という不安とも戦うことになります。

まず、「開業準備の7割は場所で決まる」とも言われていますが、開業場所の選定には相当な時間を要します。また、設計や改装には千万円単位でのコストがかかります。さらに、一番重要な集患については、このご時世ではスタートダッシュにかかわる内覧会も開催しにくい状況で、これもまた大変です。

今回、承継した診療所については、長く地域で開業されていたので、地盤があるのはとてもありがたいと言います。加えて、前診療所時代の経営データももらえました。きちんとやれば十分に採算はとれると、安心材料になりました。医療機器の追加購入についても400万円ほどで、一から購入するのと比べると費用ははるかに抑えられました。

もちろん、新規開業にしかないメリットや楽しさもたくさんあると思います。しかし、冒頭で説明したとおり、これから多くの開業医の引退が進んでいくことを踏まえると、今あるものを利活用するほうが、合理的で望ましいと考えています。

診療所を承継するゆえのデメリットは何か?

一方で、承継開業にもデメリットはあります。その一つとして、院長と経営者が変わることで、前院長の意思を引き継いでいきたいと思いながら、当法人との組織文化の統合を図っていく必要があり、これならではの難しさがあると思っています。異なる考え方のベースを統合していくには相応のコミュニケーションコストをかける必要があると感じています。

法人内に新旧多くのスタッフが入ることによって、思いもよらぬ軋轢や衝突が起きることもあります。そして、これまで何となくやってきた仕事の仕方を見直す必要性も出てきました。「どうすればよりよい組織になるのか」と、自身の不甲斐なさを痛感しながらもがいている最中であり、そうした状況も楽しめないと、なかなかしんどいような気がします。

また、細かいところだと、前診療所での構造的な瑕疵(漏水、アリの侵入等)などもあり、建物の保証が切れていたら、思わぬ出費となる可能性がありました。そして、リースアウトしている医療機器や物品もあり、見た目で使えるかどうかではないこともわかりました。

分院展開の今後と総括

今回、当法人では2分院同時に開設することになりましたが、この経験を経て、診療所の開設にはいくつかのステージがあることがよくわかりました。私の場合、片方は在宅診療所の新規開業、もう一つは承継に近い形での開業と、2診療所ともに一からつくっているわけではありません。だからこそ、2カ所同時に分院を開設する準備ができました。

そんななか、一番の収穫だと感じたのは、分院展開を準備していく過程で、人材の採用幅が広がり、優秀なスタッフが入職してくれていること、そして、組織化する過程で必要なことを見直して無駄なことを減らし、生産性を高める仕組みを取り入れられたことです。

今後も当法人の展開を楽しみながら、一緒に働ける新しい仲間を募集しています。ご興味のある方はぜひ、ご連絡をいただけたらと思います。

連載【第1回】はこちら ☞ 一気に2つの分院をつくることになった(第一回)

連載【第2回】はこちら ☞ 立地の選定と在宅診療所の新設(第二回)

監修:日本医療企画

取材年月:2021年6月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

医療法人翔誠会 ふくだ内科

福田篤史 事務長

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