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<取材先> 株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長 松田吉時



「介護のプロ」を標榜する株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ。2008年の創業から急成長していますが、そこには「利益を生み出す仕組みづくり」といった言葉では説明できない、シンプルかつ明快な経営戦略がありました。

目次
マネジメントができる人材が活躍できるポストを作る
新卒社員を2年目から管理者に登用
「量」が不足する介護業界に一石を投じる

マネジメントができる人材が活躍できるポストを作る


「『業績が急激に伸びていますが、どんな魔法を使っているんですか』と聞かれますが、そういうものは特にないんです。重要なのは、当たり前のことをコツコツと、論理立てて積み重ねること。これは会社が事業を展開する上でも、社員が事業所の管理者として成功する上でも同様だと考えています」と話すのは株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ取締役副社長の松田吉時さん。


「介護」×「IT」をコンセプトに、〝業界の当たり前を変えていく〟を命題としている同社は、訪問介護、居宅介護支援、通所介護などの在宅系サービスを中心に展開しています。

2008年の創業以来、毎年約1.4倍のペースで成長を続けています。2022年8月現在、同社が運営する介護事業所は、訪問介護事業所を中心に200ヵ所。社員数は約2,200名で売上高は140億円(2021年度)に達しています。

同社が"経営の原則"として重視しているのは、まず従業員への対応だと言います。
具体的には、業務の効率を上げて利益を生み出したら、その分平均給与を上げて、利益を社員に還元することが一つ。もう一つは、事業の規模を拡大することで、ポストの数を増やし、キャリアパスを示すことです。

同社の事業は、IT化などにより業務効率を上げると共に、地域への認知度と地域のシェアを高めるドミナント戦略に則って進められています。

「訪問介護でいえば、1事業所あたりの売り上げが月1,000万円、利用者120〜130人程度の規模を一つの目安と考えています。その規模を超えると、非常に運営が難しくなります」と、松田さんは話します。

この規模の事業所では約20人の正社員ヘルパーが必要となりますが、利用者120人×ヘルパー20人の組み合わせを常にイメージしながらシフトを組まざるを得ず、シフト作成などの業務負担も多大になります。

そこで、ひとつの事業所で売り上げが1,000万円を超えたところは、営業範囲を分割し、近隣に事業所を新規開設するという戦略を立てています。

このように、売り上げ規模に応じて事業所数を増やしていくと、必然的に新しい事業所をマネジメントする人材が常に必要となります。

つまり、「事業所を増やす」という経営戦略と「各事業所をマネジメントできる人材を育成する」という人材育成を両立していく必要があります。

同社が目指す方向性について、松田さんはこう話します。

「介護は、電気や水道、道路などと同様の社会インフラだと考えています。なので、介護サービスを世の中に広く均等に供給することが私たちの責務と言えるでしょう。一方でお客様からの要望にできるだけ応えることも、介護事業者としては成すべきこと。従業員と会社とお客様の3つの思いを一つにして、妥協点を見つけるわけです。こういったことまで考えながらシフトを組んでいくことが、訪問介護事業の肝になります」

例えば同社の場合、深夜帯での訪問介護のサービスは従業員の負担を考えて行っていません。

しかし、それを希望する利用者がいた場合、同社では「①なぜ深夜にサービスが必要なのか」「②それは深夜でないと叶えることはできないのか」「③深夜でなくても大丈夫であれば、シフトをどのように組めばいいのか」「④深夜でしか対応できないのであれば、ほかの事業者に対応を依頼することはできないのか」と深掘りして考えます。

結果として④の結論に至った場合、もちろん同社の売り上げにはならなりません。しかし、「⑤イレギュラーだが深夜に職員を働かせる」といった対応は取りません。

「お客様の要望すべてに応えることが、当社が目指す介護ではないからです。できること、できないことを見極め、当社でできない場合にはどうすればお客様の要望に対応できるか知恵を出し、提案する、ということが重要だと思っています」と、松田さんは強調します。

これは、社員への負担を増やすのではなく、今ある資源で適正に事業所が回るようにすることが、持続可能な介護サービスの提供には重要である、と同社では認識しているからです。

それぞれの事業所がきちんと回っていくことが、同社の業績に直結します。事業所がマネジメントとサービス提供に専念できるよう、本社はサポート体制の拡充に余念がありません。

「請求業務を始め、労務や法務、介護保険等については、本社の専門部署がバックアップします。また、ITのツールを開発し、情報共有と情報の見える化を徹底するなど、現場業務負荷の削減は常に考えています」


新卒社員を2年目から管理者に登用


事業を拡大し、事業所の数が増えていくと、その分それを管理する人材が必要になります。同社でも最初は中途採用の人材にそうしたポストを任せていましたが、うまくいかないことも多かったと言います。


そこで、思いきって新卒出身の社員に任せてみたところ、おおむね1年程度の現場経験があり、体系立った研修をしっかり受けた社員であれば、十分事業所のマネジメントを任せられることが分かってきました。

そこで同社では、マネジメント・経営の経験を積みたい新卒社員に向けた「マネジメントコース」と、介護現場での専門性を高めたい新卒社員に向けた「プロフェッショナルコース(プロコース)」という二種類の採用枠を設け、それぞれに合わせたキャリアパスを構築しています(下図)。

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マネジメントコースは常勤ヘルパーを経験した後、1〜2年で管理者となるのが目標です。

一方、プロコースは3年後にサービス提供責任者を目指すというものです。明確に目指すもの、自身のキャリアパスが分かるため、社員にとっても働いた先が見えやすいと言います。

なお、管理者になると、担当している事業所の売り上げが伸びると、その分が給与に反映される仕組みとなっています。単に責任だけが重くなるのではなく、自身の働き方が待遇に直結するという点は、マネジメントを目指す人には魅力でしょう。

それぞれのコースを選ぶ比率は、マネジメントコース1に対してプロコース2の割合になっていると言います。

「介護業界で長く働いてきた人に、急に『マネジメントの視点を持て』と言っても、それまでの業界の常識などが邪魔をしてしまい、抵抗感を持つ人が多いのです。むしろ社会経験はないが優秀な新卒社員のほうが、フラットな価値観のところから経営的な視点を教育していくことができるので、合理的な判断ができるようになります。私たちが新卒に『マネジメントコース』を用意している意味はそこにあります」と同社取締役の太原有理さんは説明します。


「量」が不足する介護業界に一石を投じる


同社の大きな特徴として、訪問介護をメインにしていながらも、正社員の比率が高いことが挙げられます。中途採用に加え、創業3年目から新卒採用も開始し、今や全従業員のうち84%を正社員が占めるまでになりました。

これにより、教育が行き届き、サービスの均質化が実現できると共に、シフト管理がしやすくなっていると太原さんは言います。

「正社員は朝9時から夜6時まで、1日8時間×5日で週に40時間という、稼働できる枠が先に決まっています。一方、登録ヘルパーが主体だと、シフトはヘルパーさんの都合次第となり、スケジュールのコントロールが難しくなります」

また、「正社員に夜勤は付きもの」というイメージが強い介護業界にあって、夜勤がないことは採用の大きなアピールポイントになっています。

一方で、正社員の雇用を拡大することは、事業規模の拡大とセットになっているため、リスクも高くなります。

「私たちは、そもそも介護には『量』が足りていないと思っています。人手不足で十分なサービスが受けられない人が増えてきている現状においては、一定レベルのケアをしっかり世の中に広げていくことがまず重要だと思っています。そのためには、リスクを覚悟の上で規模を大きくしていかなくてはいけません。『理想の介護』を少数精鋭で追求したい、という事業者も多いですが、我々の目指すベクトルは違います」と太原さんは強調します。

「事業所を増やすなかで『管理者が足りない』『でも、中途だとうまくいかない』と他業界のように新卒採用を始め、うまく回るようになりました。あくまで試行錯誤の連続ですが、他の業界では普通のことを、いかに介護業界にも取り入れていくか、これからも日々挑戦です」(松田さん)


制作:日本医療企画㈱
取材年月:2021年5月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長 松田 吉時

○株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ
2008年の創業以来、IT技術を活用し介護業界No.1をめざす同社は、毎年約1.4倍のペースで成長を続ける。
訪問介護を中心に200の事業所と施設を運営し、社員2,200名以上を雇用(2022年8月時点)。
今後は首都圏と名古屋に加え、仙台、京都、大坂、兵庫など、全国主要都市へ事業を展開し、業界No.1を経営目標とし売り上げ1,000憶円をめざす。

東京都新宿区新宿4-1-6 JR新宿ミライナタワー15F
Tel:03-6273-1925

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