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使命が自分のものになると仕事にワクワクできる

組織には明確な使命が必要です。使命が希薄では、職員に対して組織や仕事が魅力的なものとはなり得ません。使命なき組織は、そこで働く人々に価値ある仕事を提供することは不可能です。ある会社では入社説明会でいつも使命についての話をしていましたが、1年間、使命を語ることなく新入社員を採用したところ、その世代の社員は仕事に対する意識が低くなったそうです。

そのため、一流の経営者や幹部は使命と成果について考えているものです。しかし、売り上げや規模を目標としている企業が多く、使命を持って事業を行っている組織は少数派です。また、使命を優秀な人材を獲得するため、あるいは売り上げを伸ばすための飾り物(ツール)と考えているところも多く、そういった組織ではトップ以下、使命を覚えていなかったり忘れていたりして対外的に語ることができないのが実情です。


私が学んだドラッカー塾では、使命の講義の際にサンタクロースが事例としてよく出てきます。サンタクロースの使命は、子どもたちに夢を与えることです。しかし、この仕事を単に時間給で考えたらどうでしょうか。

寒い冬に子どものいる家庭を一軒一軒訪れて煙突に登り、物音を立てないように息を潜めてプレゼントを置いていく。正直、割に合わない仕事と言えます。しかし、誰もがその仕事を崇高でかけがえのない仕事だと思っています。これが使命なのです。

使命は私たちに「仕事の価値」と「エネルギー」を与えてくれるとともに、自分がとるべき行動と決定の明確な指針となってくれます。また、価値ある使命が優秀な人材を獲得し、成長させ、到達すべき理想や目標を示し、具体的に何をすべきかを教えてくれるのです。使命が自分のものになっている人は、仕事に対してワクワクできるのです。

また、逆境にあっても諦めずに続ける力を持っています。反対に、使命がない人の多くは数年後に仕事が変わっています。それは、目的が地位やお金だからです。やってもやってもうまくいかないとき、使命がない人は諦めてしまいます。

離職者が多く悩んでいる診療所は、組織に使命がないか、あったとしても希薄、もしくはお金が目的で使命に共感していない人を雇用し続けているからかもしれません。自らの組織の使命と働く人々の価値観をもう一度チェックしたほうがいいでしょう。

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スタッフに支持され大切にされる使命をつくる

では、使命をどうつくったらいいのでしょうか。使命とは、世の中を変えたり、自らが基準の設定者になり得るものでなければならないと言われています。どういうことかをジョンソン・エンド・ジョンソンの例から解説します。

同社は1982年のタイレノール事件(シアン化合物混入事件)のとき、「タイレノールにシアン化合物混入の疑いがある」と判明した時点で、多額の損失が出ることを覚悟したうえで、速やかに消費者に対して、新聞の一面広告、専用フリーダイヤルの設置、10万回以上に及ぶテレビ放映などの手段で回収と注意を呼びかけました。これは当時としては異例でしたが、同社には「消費者の命を守る」ことを謳った使命があり、それが社内に徹底されていたため、このような対応を躊躇なく行いました。この対応法は、その後の企業の商品回収のモデルとなっています。

同社のような真の使命が最初からある診療所は少ないと言えます。私自身がそうでした。使命も理念もなく、ただ毎日働くだけで明確なビジョンもゴールも持ち合わせていませんでした。開業してから何年も経って、ほかの企業家から指摘を受けてようやく理念づくりに着手し、ドラッカー塾で学び始めてから使命をつくり上げました。今では診療所経営においての使命の重要さを痛感しています。

使命をつくる際の注意点としては、院長だけで作成すると、スタッフに共感を得られない場合、ただの飾り物になってしまうということです。トップダウンではなく、ボトムアップのほうが有効です。そこで働く人々が日常の仕事と使命がつながっていると感じられなければ、それは誤りなのです。また、使命はTシャツに一言で書けるような簡潔、明瞭なものでなければなりません。立派な意図を盛り込みすぎた長いものは覚えることができず、ぼやけてしまい、行動に移すことができないからです。

私の場合は、全スタッフに聞いてまとめ上げ、会議で賛同を得て、はじめて使命が完成しました。そのため、当法人の使命は今でもすべてのスタッフに支持され、大事にされています。使命があることでスタッフは上からの指示を待つことなく、使命に沿っているか否かで、自ら考えて行動に移すことができるようになりました。

最後に、使命は見直しが必要となる場合もあるため、組織や社会の変化、また時代に応じて変えていくことも必要です。使命達成と仕事の改善を考える場が必要であり、使命実現に向けた仕事を成し遂げた人を賞賛できるような組織にすることがリーダーである院長の重要な仕事となります。リーダーがなすべきことは、組織の使命と定めたことを、さらに個別に具体化していくことです。

使命や理念がなくとも遅くはありません。今から、あなた自身と診療所の価値観に合った使命や理念をつくり上げ、すぐに明確な行動に移せるようにしましょう。

 

<著者>内藤孝司 医療法人る・ぷてぃ・らぱん 理事長兼CEO

(取材・掲載年:20176月)


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理事長 内藤 孝司

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