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<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明

人材の確保は歯科医院にかぎらず、あらゆる業界に当てはまる経営課題となっていますが、確保した人材に定着してもらうことも重要です。その裏返しとして「離職防止策」があります。退職しやすいタイミングを見計らった対策も講じる必要があるようです。
また、スタッフの退職理由は「仕事や職場への不安」「組織からの評価」「将来のキャリア」など、職歴に応じて変化していきます。スタッフの属性に合わせたモチベーションアップ策が必要になるようです。

 スタッフがなかなか定着してくれないというお悩みを多くの院長から伺います。苦労して採用したスタッフが半年もしないで退職してしまったり、一人前になったスタッフが他のクリニックへ転職してしなったりして困っているというのです。

スタッフの退職は医院にとって痛手であるだけでなく、スタッフ自身にとっても早期退職や転職を繰り返すことは、キャリアを積むうえでマイナスになります。

目次
01:スタッフが退職しやすいタイミング
02:入職3カ月以内の新人の場合
03:入職2~3年目の中堅スタッフの場合
04:入職5年以上のベテランの場合
05:スタッフの成長段階によって対応が変わってくる
06:退職を防ぐモチベーションアップ策
07:入社3カ月以内のスタッフへの対応法
08:入社後2~3年目のスタッフへの対応法
09:入社5年以上経過したスタッフへの対応法
10:まとめ

スタッフが退職しやすいタイミング

一般的に、入職後3カ月以内、入職後3年のタイミングでの退職が多いと言われているほか、勤続が長いベテランスタッフが退職する場合もあります。それぞれの原因を整理してみます。

入職3カ月以内の新人の場合

入社したてのスタッフは不安と緊張でいっぱいです。職場にも仕事にも慣れていません。先輩が声を掛けてフォローしてくれる職場であればすぐに溶け込み、仕事も少しずつ慣れていきますが、放っておかれるような職場であれば、自分の居場所が見つけられず、すぐに退職してしまいます。また、採用時と入社後の条件が違った場合にも、早期退職します。

入職2~3年目の中堅スタッフの場合

仕事を一通りできるようになり、一人前との戦力として認めて欲しい時期です。この時期に、院長や先輩スタッフが出来ていない事を注意し、指導ばかりしていると、いつまでたっても認めてくれないと職場への不満がたまり、仕事への意欲も低下してしまいます。

入職5年以上のベテランの場合

歯科医院のなかで見本となり、後輩の指導を期待される時期です。一方で仕事への慣れとマンネリ感も出てくるため、常に「このままここで働き続けていいのか……」という悩みを抱えている可能は高いです。そのような時に、院長が「あなたなら出来て当たり前」という態度で接していると、スタッフは評価されているのか、何を期待されているのかわからず、モチベーションが下がっていきます。

スタッフの成長段階によって対応が変わってくる

このように、スタッフの不安や不満、意欲の低下は、マズローの欲求段階説で考えると理解しやすくなります。心理学者マズローは、人間の欲求には5段階あると提唱しました(*図1)。

①の入社3カ月以内のスタッフは安全欲求の段階にあります。職場が安心できる場所であれば安全欲求が満たされ、1つ上位の社会的欲求の段階に移ります。職場のメンバーから認められることで社会的欲求が満たされると、さらに上位の尊厳欲求の段階に入ります。



プレゼンテーション1.jpg*【図①】マズローの欲求段階説

退職を防ぐモチベーションアップ策

スタッフが退職を防ぐためには、成長の段階に対応を決めておくとよいでしょう。入社したばかりのタイミングで起こりやすい退職と、ある程度仕事を覚え一人前になったのちの退職、ベテランスタッフの退職は、それぞれ背景が違っている可能性が高いです。

入社3カ月以内のスタッフへの対応法

新人は「仕事を覚えられるか」「職場の人間関係に馴染めるか」という不安を抱いています。この2つの不安を解消するため、以下のような方法があります。

1.業務手順をマニュアル化する

新人はマニュアルがあると安心します。先輩社員にとっても、新人受入れの準備が楽になるうえ、歓迎しているという意思表示にもなります。

2.チェックリストを用意する

チェックリストによって、スキル習得の目標設定と進捗状況が分かります。きちんとした教育の仕組みがあると安心です。

3.3カ月以内に実技試験をする

入社後早い時期に実技試験に合格することで、新人に自信がつきます。先輩は、新人の練習に付き合うことで、新人と関わる機会ができます。

入社後2~3年目のスタッフへの対応法

入社2~3年目になると、自分の仕事は一通りこなせるようになります。新人扱いがなくなり一人前に扱われるようになる一方、できないことを注意、指摘されることが増えます。

スタッフが抱いている「自分はこの仕事に向いているのか」「自分は役に立っているのか」「このまま続けていいのだろうか」という不安を解消するためには以下のような方法があります。

1.年に1回、スタッフとの個別面談を実施する

スタッフの日頃考えていること(困っている事や要望)を聞き、その後に院長が期待している役割や目指してほしいことを伝えます。

2.業務改善の役割を任せる

日常業務以外に業務改善係を任せます。この取り組みを通じて、改善する方法を考え、実行し、改善し成果を上げるプロセスを体験することができ、仕事の幅が広がります。

3.外部研修への参加を支援する

このままでよいのか迷っているスタッフには、外部研修への参加させることも考えましょう。スキルアップの達成感を味わえ、学ぶ意欲を支援する制度を整えるのも一つの方法です。

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入社5年以上経過したスタッフへの対応法

入社5年目以上のスタッフは医院の戦力となっているはずです。医院全体のことを考えてくれる人か、自分のことだけを考える人かに分かれる時期でもあります。自分の経験を後輩に伝え、育成してくれれば、経営を支える存在となります。

1.リーダーに任命する

組織のリーダーとして公式に任命します。公式に任命することにより、リーダーとして活動しやすくします。

2.リーダーの役割を明確化する

リーダーに任命されたスタッフの不安を解消するためにも、リーダーの役割、期待をはっきりさせます。

3.手当をつけ評価する

リーダー手当をつけることによってモチベーションを上げるとともに、役割を評価していることを伝えます。後輩にとっては、目指すべきポジションとなります。

まとめ

このようにスタッフの成長の段階に応じ、適切な対応は変わってきます。「そこまで気にしなきゃいけないの」という意見もあるかもしれませんが、そこまで院長が気にしていただきたいのです。

歯科医院は、院長とスタッフで構成される組織です。組織のメンバー次第で、できることも大きく変わり、雰囲気も違ってきます。さまざまな取り組みをご紹介しましたが、成果はすぐに表れないかもしれません。しかし、組織は徐々に変わってくるのです。ぜひ長い目で見てください。

制作年月:2022年11月14日


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PROFILEプロフィール

PROFILE

株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント

岩田義明(いわた・よしあき)
●早稲田大学教育学部教育心理学科を卒業後、リクルートの関連会社で採用時の人の評価から、人事制度の設計など、人事全般を経験。その後経営全般に係る仕事を志向し、経営コンサルティング会社に転職。2011年より現職。現在は医療機関の経営計画作りから、目標を設定、達成のための具体的な行動計画への落し込みまで実施。PDCAサイクルを回すことで改善活動を継続させ、医院の体質から収益性の改善まで幅広く行っている。

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