<著者> 株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記
「利用者を増やし、稼働率をあげるにはどうしたら良いか?」という相談が介護事業者からは寄せられます。
介護保険が施行され22年経ちましたが、介護現場で活躍する方のなかには、「営業」という言葉に馴染めない人も多いと思います。
今回は、「営業の基本」について紹介します。
- 目次
- 1.営業の3原則
- ●営業は「間接営業」
- ●営業は「数」と「質」
- ●「印象」→「内容」→「信頼」→「紹介」
- 2.営業の基本 ~日々の心がけで顧客のニーズ掘り起こし~
- ●第一印象は、「0.6秒」で決まる!
- ●PUSH型(サービス売込型)の営業は止めましょう!
- ●「エピソードトーク」(成功事例)は5つ以上用意する!
- ●スケールメリットや数の論理を前面に出さない!
- ●「ありがとうございます」を意識!
- ●会話のキャッチボールを心がける!
- 3.営業の基本 ~コミュニケーションの一工夫で信頼関係構築~
- ●相手にとことん集中!
- ●「なるほどね」「そうそう」などの種類の反応はチャンス!
- ●「~ですか?」よりも「~ですよね」形式!
- ●「YES・NO」形式で返答できる簡単な質問から!
- ●「両面呈示」の説得力!
- ●一度会えたからといって窓口を増やすのはご法度!
1.営業の3原則
①営業は「間接営業」
私達にとってお客様は2種類に分けられます。
一方は直接サービスを使う「お客様」、もう一方は、そのお客様を紹介して下さる取引先としての「お客様」です。
特に、取引先の信認や評判に関わるリスクを回避するよう努めることが営業の第一歩です。
②営業は「数」と「質」
重要なポイントを逃して「数」ばかりに目を向けた営業を繰り返しても顧客紹介には至りません。
また、「内容」ばかりに目を向けて件数が少なければ、顧客紹介の確率も一向に上がりません。
常に、数と質の両方を追求する姿勢を持ってください。
③「印象」→「内容」→「信頼」→「紹介」
顧客紹介に繋げるためには、まず、私たちが担当者に「良い第一印象」を持ってもらえるように対応して信頼を得ることが不可欠です。
その後のサービス提供をきちんと実施することはもちろんのこと、「継続フォロー」としての「報告・連絡・相談」があってこそ、磐石な関係が構築されるのです。
2.営業の基本 ~日々の心がけで顧客のニーズ掘り起こし~
①第一印象は、「0.6秒」で決まる!
会って最初の一瞬で印象は決まってしまいます。
髪形・服装・身だしなみ・振舞い・声のトーンなど、最初の一瞬を大事にしましょう。
②PUSH型(サービス売込型)の営業は止めましょう!
自分の担当しているサービスの売込に注力しすぎると、取引先担当者が発している顧客ニーズを見逃してしまいがちです。過度な売込は止めましょう。
③「エピソードトーク」(成功事例)は5つ以上用意する!
私たちと取引先担当者が最も共感を得られるのは、お客様やサービスに関する話題です。
「どのサービスを、どのように利用して、どのようにお客様の自立支援に結びついたのか」など、最低でも5つ以上の成功事例を用意し、訪問先の状況(担当者のタイプや地域性)に合わせた事例を伝えます。
当然、お客様のプライバシー保護と、嘲笑・侮蔑に感じられることのないよう配慮することは絶対条件です。
具体的なイメージを元にした話を進めることが、担当者との心理的な距離を縮めるきっかけとなります。
④スケールメリットや数の論理を前面に出さない!
謙虚に進めていく為にも、スケールメリットを前面に出した話は厳禁です。
あくまで「地域において、皆様に支えられながら事業展開させて頂いている」という認識で話しましょう。
⑤「ありがとうございます」を意識!
「ありがとうございます(お礼)」と「すみません/申し訳ありません(謝罪)」は、違う言葉として使い分けてください。
「今日は、お忙しいところお時間を頂いて○○○○○」。皆さんは○に当てはまる言葉はどちらを使っていますか?ほとんどの方は何気なく「すみません/申し訳ありません」を使いがちです。
全ての場面において、「ありがとうございます!」を心がけて使うようにして下さい。
相手の反応が変わり、自分の心理状況も大きく変化します。
⑥会話のキャッチボールを心がける!
一方的に話をするよりは、様々な話題で会話が弾むことが重要です。
話題として最も良いのは、お客様自身のことや介護保険などであることを忘れないでください。難しいサービスのことではなく、今、目の当たりにしているお客様の状況を仮定し、ニーズの掘り起こしを進めましょう。
その中で、「担当者が気づいていなかった」「担当者が最も重視していた」内容に合致することで、担当者との連帯感は格段に上がります。
3.営業の基本 ~コミュニケーションの一工夫で信頼関係構築~
①相手にとことん集中!
話を進める上で、最も重要なのが「相手が何に興味を持っているか」を見極めることです。
相手の「目の動き」「手の動き」「メモの取り方」「質問の進め方」などにその兆候が顕著に現れます。
それらを見逃さないためには、例えば資料やタブレット端末を使って説明する際にも、相手に目を配りながら話を進めることが必要です。
その準備として、説明の内容は完全に把握しておく必要があります。時間を忘れるくらい、とことん相手に集中しましょう。
②「なるほどね」「そうそう」などの種類の反応はチャンス!
「驚き・発見・共感」などの意思表示が見られた場合、その日の訪問営業は概ね成功です。
逆に、このような反応を引き出すためには地域で起こった事や介護保険関連のニュースなど、様々な話題の引出しを持って面談に臨む必要があります。
③「~ですか?」よりも「~ですよね」形式!
相手に対して判断を仰ぐ質問は、答えをネガティブにさせる傾向があります。
反対に、相手に同意を求める形式の内容は、よほど大きく否定される内容ではない限り、「そうねぇ」から「そうそう」まで肯定的な返答を導き出しやすいものです。
また、最初の質問であればあるほど、ある程度抽象的な質問の方が、ポイントを小さく絞った質問より、簡単に返答いただけることが多いです。
例えば、「グループホームに興味を持たれているお客様はいらっしゃいますか?」と言う質問よりも、「認知症をお持ちのお客様、いらっしゃいますよね」のほうが、肯定的で、次に続く返答を導きやすいものです。
④「YES・NO」形式で返答できる簡単な質問から!
一種の「フット・イン・ザ・ドア」テクニックの応用として、「簡単な承諾=小さな答えの導き出し」を繰り返すことで、大きな情報の引出しやサービスに依頼に繋げることができます。
最初に「YES」と答えた相手は、次の依頼に対して否定する確率が数段下がってくることは、科学的に証明されています。
例えば、お客様に関する情報を引き出す際、「担当CM名」や「要介護度」などの個人情報の核心に迫る質問よりは、「男性の方ですか?」といった限りなく一般的な質問のほうが、応えて頂き易いものです。
⑤「両面呈示」の説得力!
聞かれて都合の悪い点(デメリットなど)は、こちらから話をすることで説得力が増すことがあります。
物事には、全てメリットとデメリットがあります。しかし、サービスを利用して頂きたいと思うあまり、そのメリットの面しか話さない場合があります。これを片面(一面)呈示と呼びます。
しかし、説得力のある話をする場合には、デメリットも敢えて呈示することの方が効果的です。
例えば、洋服を買いに行った時、全ての商品が「お似合いですよ!」と言う販売員よりも、「こちらの柄は、あまりお顔映りが良くないですね」と、ある程度のネガティブな情報を呈示する販売員の方が信用したくなるのではないでしょうか。
但し、信頼を損なうと判断される可能性のある情報を、むやみに呈示することは却ってマイナスになる場合があるので、必ずカウンターパートとなるポジティブ情報を吟味して活用して下さい。
⑥一度会えたからといって窓口を増やすのはご法度!
営業していると、話を聞いてくれる取引先とそうではない取引先に分かれます。話を聞いてくれる取引先は「好印象で関係が出来ている」と思いがちで、次々と違う担当者を連れて同行営業を重ねる人がいます。
これは、タイミングを間違うと、折角出来つつある関係を崩す危険性がありますので注意してください。
日々の営業活動で、まずはできることから始めてみましょう!
監修:㈱高齢者住宅新聞社
制作年月:2022年10月
PROFILEプロフィール

伊藤 亜記 (いとう・あき)
株式会社ねこの手
代表取締役
短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。1998年、介護福祉士を取得。介護老人保健施設や大手介護事業者を経て、株式会社ねこの手を設立。国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。
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