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<取材先> ㈱RARECREW 代表取締役 日下部竜太

報酬改定に柔軟に対応 今後は産学連携へ


入浴特化型の3時間型デイサービス「いきいきらいふSPA」や訪問介護、居宅介護支援など、東京を中心に全国22事業所で在宅介護サービスを展開するRARECREW(東京都台東区)。今年で創業20年を迎えた同社の日下部竜太社長に、事業モデルや資金調達・財務管理手法、新規事業などについて話を聞いた。


全国初、入浴特化型短時間デイを開発


――2009年、全国初の入浴特化型短時間デイサービスのモデルを打ち出しました。


日下部●訪問介護で事業を開始して2年目の04年、訪問介護、居宅介護支援、福祉用具が事業が順調に軌道に乗り黒字化した折に、デイ事業を開始しました。当時は99.9%が1日滞在型のデイであり、当社も1日型デイを開設。しかし、「目的は入浴。入浴が済んだら帰りたい」とのクレームが相次ぎました。

当時のデイ利用者の男女比は2:8で、クレームはすべて男性からのものということに着目し調査を行うと、デイ利用の目的は8割が「入浴」との本音が判明。
差別化の図りにくい介護保険事業において、全国初の入浴特化型短時間デイという新業態モデルを開発するにあたり、テーマは「男性高齢者が行きたくなるデイサービス」としました。

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介護施設と意識させない工夫として「入浴」×「短時間」×「リラクゼーション」をコンセプトに、外装には、「通所介護」「デイサービス」を表記しないなどの手法を取り、大浴場中心の当時のデイに対してプライバシー保護の観点で個室浴を完備した入浴特化型短時間デイ「いきいきらいふSPA」1号店を開設しました。

ある程度の稼働に達した時に検証してみると、男女比は5:5となっていました。このニーズにしっかり応えていかなければいけないと感じ、ここから「いきいきらいふSPA」の拡大戦略がスタート。11年より展開速度を高め、よりニーズに応えるべくフランチャイズ(FC)方式を採用しました。

全国で44事業所まで拡大しましたが、度重なる介護保険改正の影響により小規模モデルのFC展開から方針転換し、現在は都内を中心に全19事業所。FC店は1ヵ所を残しほかはすべてライセンス運営に切り替えています。



15年報酬改定を経て、中重度者対応へ


――さらに、中重度者対応の入浴特化型短時間デイ「リズム・リゾート」、機能訓練も組み合わせた「サニーガーデン」も展開。


日下部●当社(旧社名:いきいきらいふ)は友人と共同で立ち上げたもので、当初私は経営幹部として参画しました。社長に就任した翌年の15年は、介護業界の大転換期となる介護保険法改正の年。通所介護は△9%と過去最大の下げ幅となり、私たちのモデルでは最大△13%程度と大打撃を受けました。

中長期的に取り組むべきデイサービスモデルの開発にあたり、制度改正に対応してバージョンアップしていくため、機能訓練強化や入浴の自立支援を目的として、入浴機能維持向上評価システム「バスアセスメント」を開発、導入。デイの社会的役割の見直しとお客様の利用目的に照らし合わせた個別対応の重要性を再認識することでサービス内容を強化しました。

バスアセスメントの概要は以下の通りです。

図①バスアセスメント概要.png

入浴特化型「いきいきらいふSPA」は軽中度者向けで、出来るだけ在宅に近い環境を目指し、自宅での入浴環境を再現すべく個室浴を採用。入浴の基本動作訓練と実際の浴室での安全な実践的トレーニングを経て、最終的には自宅で入浴できるようになることを目標として運営していました。そうした中で、新たなニーズの存在に気が付きます。

それは、中重度の介護が必要な方・医療依存度の高い方・体力面で長時間利用が不向きな方の入浴ニーズです。これを受け、16年に中重度対応型入浴特化3時間デイサービス「リズム・リゾート」をトライアル店として開設。

コンセプトは「生活リズム改善」です。これまでの個室浴に加え、個浴と機械浴(ミスト浴)を完備しており、車椅子の方、心臓疾患のある方でも安心して入浴できる環境を用意し、さらに看護師を常駐とすることで健康管理体制と機能訓練体制を実現しました。


現場から挙げられた事例では、寝たきりの状態から利用が始まった91歳の男性が、3ヵ月で杖歩行が出来る状態になったという例もあります。

アルコール中毒や昼夜逆転、筋力低下がありましたが、看護師の介入により座位にて軽負荷筋力トレーニングを実施、徐々に立ち上がりなどの練習を加え、杖歩行まで回復しました。身体的機能の向上とともに、入浴への意欲も向上し生活リズムも正常化、昼夜逆転などの問題も改善。一般個浴槽での入浴も可能になりました。


こうした「リズム・リゾート」でのノウハウと検証結果より、さらなる機能訓練強化型モデルとして「サニーガーデン」も20年に開設。サニーガーデンは、中重度者向けの短時間型・入浴+機能訓練の組み合わせです。看護師のほか、リハビリ専門職も配置しました。

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広々とした屋内環境にて状態改善に向けた機能訓練に本格的に取り組むことができるように設計し、段階的に自宅環境を整備した個浴での自立入浴に進んでもらうようにしています。都内では適正賃料の中で物件として機能訓練ができる広さを得ることが出来なかったため、名古屋や大阪にエリアチェンジ。

広い物件を確保し、入浴時の自立の基礎動作でもある立ち上がり、立位保持、歩行を中心に行いました。現在、「リズム・リゾート」は1事業所、「サニーガーデン」は3事業所を展開。年間約2事業所のペースで新規開設しています。

21年介護保険法改正にて科学的介護推進加算としてLIFEが始まりましたが、私たちは実際の要介護高齢者に日々向き合う中で、ビックデータ解析では細かいニーズ対応は難しく、この加算取得に取り組むだけでは不十分だと考えます。一方で、介護現場において定性面の定量化は取り組まなければならない大事な課題です。

そこでリハビリ専門職・大学連携チームによる機能訓練プログラムの検証と開発を行うことにしました。新たに理学療法士の管理者を加え、関西医療大学の藤井啓介先生を含めたプロジェクトチームを結成し、アカデミックな知見から多角的検証作業に取り組んでいます。

今後、検証された入浴時の自立支援トレーニングをブラッシュアップして運営していく方針です。



>>【中編】はこちら

編集:㈱高齢者住宅新聞社
制作年月:2022年12月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

日下部竜太(くさかべ・りゅうた)

RARECREW(旧社名 いきいきらいふ) 代表取締役
一般社団法人日本デイサービス協会 理事
一般社団法人全国介護事業者連盟東京支部 幹事
●2002年、部品メーカーの研究開発職から転身し、介護の世界に足を踏み入れる。訪問介護、居宅介護支援、福祉用具貸与、通所介護の立ち上げから安定運営ノウハウの構築を担う。
入浴特化型短時間デイサービスモデルを全国に展開。業態開発から標準化マニュアル策定を得意とする。新卒採用にも力を入れ、「若手を鍛える」研修講師、ビジネスコーチとしての顔も持つ。

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