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目次
01. ■ 現行案は医師・患者双方の「手上げ方式」とは言えないとの意見も
02. 書面交付で「かかりつけ医機能として提供する医療の内容を説明」、当初案を修正 
03. 慢性疾患患者に限定せず希望者全てに書面交付を 健保連・河本専務理事
04. ■ かかりつけ医機能の制度整備に関する2022年11月までの議論
05. かかりつけ医機能報告制度を創設へ
06. 医師からの書面交付と説明で「かかりつけの関係」にあることを確認
07. かかりつけ医機能報告と協議結果の医療計画への反映は26年度以降の見通し

現行案は医師・患者双方の「手上げ方式」とは言えないとの意見も

社会保障審議会・医療部会は125日、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」について議論を深めた(資料1)。特に医師からの書面交付などを通じて「かかりつけの関係」を確認する仕組みについては、保険者の委員から、慢性疾患患者に対象を限定した厚生労働省案では政府の全世代型社会保障構築会議が求める医師・患者双方の「手上げ方式」とは言えないと、見直しを求める意見もあった。

 

かかりつけ医機能の制度整備について厚労省は-

1)医療機関が自院のかかりつけ医機能を都道府県に報告する「かかりつけ医機能報告制度」を創設する。

2)報告結果を踏まえ、都道府県はかかりつけ医機能を担う医療機関を確認・公表するとともに、地域に不足する機能がある場合は対応策を地域の協議の場で検討する。

3)医療機能情報提供制度の情報提供項目をわかりやすい表現に見直し、国民・患者がかかりつけ医を探しやすい環境を整える。

4)医師と患者が「かかりつけの関係」を確認できる仕組みを導入する。

-などの具体案を前回の部会に提示している。

書面交付で「かかりつけ医機能として提供する医療の内容を説明」、当初案を修正 

このうち(4)はインフォームド・コンセント(IC)の一環として実施することを想定したもの。当初案は、継続的な医学管理が必要な患者であって、かつ患者が希望する場合には、医師が書面交付と説明を行って「かかりつけの関係」にあることを確認するとしていた。だが、前回の部会で「医師と患者間で全く新しい契約関係が生じるのか」といった意見が出たため、厚労省はICの一環という趣旨がより伝わるよう、「医療機関が書面交付などにより、かかりつけ医機能として提供する医療の内容を説明する」と修正(資料2)。

 

さらに交付する書面のイメージ例として、「生活習慣病指導管理料」の算定時に作成する「療養計画書」や、「地域包括診療料」・「認知症地域包括診療料」の算定時に使用する患者向け説明書(提供する医療の内容などを記載)と同意書を部会に提示した。

 

書面の内容について山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「地域包括診療料の説明書のように、何ができるのかを患者に伝える項目が必要だ」と指摘。神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、「入退院時の支援や入院機能がない場合はどこと連携するのかなど、より具体的にイメージできるような書面がいいのではないか」と述べた。

慢性疾患患者に限定せず希望者全てに書面交付を 健保連・河本専務理事

一方、河本滋史委員(健康保険組合連合会専務理事)は、「持病のない患者がこの枠組みに入ってこないのはあまりにバランスを欠く」と慢性疾患患者に対象が限られることを問題視。「医師が判断した患者しか手を上げられないのであれば、全世代型社会保障構築会議が求めている医師・患者それぞれの手上げ方式とは言えない。国民・患者が希望した場合は書面交付を受けられるようにするべきだ」と見直しを求めた。

 

また、現在の案は医師と患者の関係が11であることを想定したものではなく、複数の診療科に通う患者が複数の医療機関と書面を交わすことも可能。こうした点について島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)は、「個々の診療所が臓器別の診療を行い、全人的なものがないと今と何が違うのかとなってしまう」と疑問を呈し、より詳細な制度設計を検討する際には、日常的によくある疾患の診療や疾患別ではない全人的な対応などについても議論する必要があるとの認識を示した。

 

(資料1)かかりつけ医機能が発揮される制度整備(骨格案)
資料1 - コピー.JPG

(出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集)

(資料2)患者に対するかかりつけの関係の説明について

資料2 - コピー.JPG

(出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集)



■ かかりつけ医機能の制度整備に関する2022年11月までの議論

「かかりつけ医機能の制度整備」をめぐっては、遡ること20226月、政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2022」において、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」との方針が明記された。それを受け、厚生労働省は「第8次医療計画等に関する検討会」で7月から議論を開始している。医療法では、医療計画(外来医療計画)への「かかりつけ医」に関する記載は求めていないが、今後の外来医療提供体制の整備に附随する事項として、かかりつけ医機能の強化が位置付けられた。

しかし、政府が202112月に閣議決定した「新経済・財政再生計画改革工程表2021」では、「かかりつけ医機能を有効に発揮するための具体策を23年度にかけて検討する」と記載されていた一方、2024年度からの第8次医療計画は都道府県が2023年度中に策定しなければならず、それと併せた議論は2022年いっぱいとの制約がある。そのため、20229月からは社会保障審議会・医療部会でも議論が始まっており、そちらに検討の場を移して議論が進んでいる。

かかりつけ医機能報告制度を創設へ

2022年11月には、厚生労働省は社会保障審議会・医療部会に、かかりつけ医機能が発揮される制度整備についての具体案を提示した。医療機関が自院のかかりつけ医機能を都道府県に報告する「かかりつけ医機能報告制度」を創設。かかりつけ医機能の定義を法定化した上で、国民がかかりつけ医を探す助けとなるよう、医療機能情報提供制度の情報提供項目をわかりやすい内容に見直す。医療部会が年内に制度整備の基本的考え方をとりまとめる。

 

政府の全世代型社会保障構築会議が202211月にまとめた論点整理は、医療機関と患者それぞれの「手上げ方式」を軸にかかりつけ医機能の制度整備を検討する方針を打ち出しており、202211月の厚労省案はこれを踏まえた内容となっている。

制度整備は-

1)国民の多様な医療ニーズへの対応

2)全ての国民への情報提供

-が大きな柱となる。

 

1)では、「かかりつけ医機能報告制度」を創設。医療機関に▽外来医療(幅広いプライマリケア等)の提供▽休日・夜間の対応▽入退院時の支援▽在宅医療の提供▽介護サービス等との連携-の5つの機能を担う意向の有無や、意向がある場合は単独か他院と連携して提供するのかを都道府県に報告することを求める(資料3)。都道府県は報告結果から地域における機能の充足状況や、これらの機能をあわせ持つ医療機関を確認・公表。不足する機能がある場合は、地域の協議の場で、▽病院勤務医が地域で開業し、地域医療を担うための研修や支援の企画実施▽地域で不足する機能を担うことを既存・新設の医療機関に要請▽地域医療連携推進法人の設立活用-といった対応策を検討し、結果を公表する。


医師からの書面交付と説明で「かかりつけの関係」にあることを確認

医師が継続的な医学管理が必要と判断される患者に書面の交付と説明を行い、医療機関と患者双方が「かかりつけの関係」にあることを確認する仕組みも導入する。

 

2)では、かかりつけ医機能を「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」と定義し、法律にも明記。医療機能情報提供制度は現在も、かかりつけ医機能に関する情報として、「地域包括診療加算」や「機能強化加算」の届出状況などを公表しているが、国民から見てわかりにくいとの指摘が多いことから、情報提供項目を見直す。詳細は今後、有識者や専門家を交えて検討を進めるが、例えば▽対象者の別(高齢者、子どもなど)▽日常的によくある疾患への幅広い対応▽入退院時の支援など医療機関との連携の具体的内容▽休日・夜間の対応を含めた在宅医療や介護との連携の具体的な内容-など、国民・患者目線でわかりやすいものとする考え。


かかりつけ医機能報告と協議結果の医療計画への反映は26年度以降の見通し

(1)、(2)とも2023年度に制度設計の詳細を検討。かかりつけ医機能報告制度は24年度から25年度にかけて個別医療機関からの報告と地域の協議の場での議論を行い、その結果を26年度以降適宜、医療計画に反映させていく。医療機能情報提供制度の情報提供項目見直しは、24年度以降に予定されている全国統一システムの導入に合わせて実施する(資料4)。

(資料3)地域におけるかかりつけ医機能の充実強化に向けた協議のイメージ

資料3 - コピー.JPG

(出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集)

(資料4)かかりつけ医機能が発揮される制度整備の進め方のイメージ

資料4 - コピー.JPG

(出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集)

(編集:株式会社日本経営)


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