これからマンションなどの住宅の購入を考えている医療法人経営者の方は、個人で所有するのではなく、医療法人で購入してそれを社宅として経営者ご自身にお貸しすることを考えてみてください。医療法人で所有することにより、法人税を節税することができる場合があります。
- 目次
- 1:医療法人で社宅を所有するメリット
- 2:注意事項
- 2-1:医療法人に対して社宅家賃を支払う
- 2-2:住宅ローン控除の適用不可
- 3:医療法人から個人へ売却する際の税金
- 4:都道府県や保健所によっては認められないケースがある
1:医療法人で社宅を所有するメリット
医療法人名義で住宅を購入、その物件を役員社宅として経営者に貸します。医療法人で住宅を購入した場合、借入金の利息、不動産取得税、登記料、印紙、固定資産税、修繕費などの費用を医療法人の経費として税務上損金にすることができます。時の経過とともに住宅の価値が下がりますが、その減価分を減価償却で医療法人の損金にすることもできます。
医療法人ではなく個人で住宅を購入した場合、これらの住宅にかかる経費は税務上の損金にならないのはもちろん、個人における所得税の必要経費にもなりません。
2:注意事項
上記の通り医療法人で社宅を所有することはメリットが多いですが以下のような注意事項もあります。
2-1:医療法人に対して社宅家賃を支払う
経営者は医療法人から住宅を借りている形となりますので当然賃貸借取引が発生し家賃を支払う必要があります。家賃の額については税務上住宅の規模別下記の通りに定められており、計算した金額以上を収受しなければ計算した金額との差額が給与課税されることになります。
ア 小規模な住宅である場合
次の(ア)から(ウ)の合計額が賃貸料相当額になります。
(ア) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(イ) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
(ウ) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
イ 小規模な住宅でない場合
(ア) 医療法人所有の社宅の場合
次のAとBの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
A (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。
B (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
(イ) 他から借り受けた住宅等を貸与する場合
医療法人が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(ア)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
ウ 豪華社宅に該当する場合
通常支払うべき使用料(いわゆる相場)に相当する額が賃貸料相当額になります。
(※1)小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。
(※2)豪華社宅に該当する場合とは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。
2-2:住宅ローン控除の適用不可
住宅ローンを利用して個人で住宅を購入した場合は、住宅ローンの利息相当額について所得税・住民税から控除する住宅ローン控除が適用できますが。医療法人で購入すると、住宅ローン控除は受けられません。
3:医療法人から個人へ売却する際の税金
医療法人経営者が医療法人を退職する場合等においては、医療法人の所有する社宅を個人へ移していきたいケースがあります。その場合は、不動産移転に伴う不動産取得税の課税や社宅の時価相当額と減価償却後の帳簿上の価値との差額について売却益がある場合の法人税の課税についても考慮する必要があります。特に社宅売却益に関しては、個人で所有すれば売却益に対して3,000万円の特別控除が受けられたものも適用されないため注意が必要です。
4:都道府県や保健所によっては認められないケースがある
役員社宅スキーム、特に社宅を医療法人で所有するケースは都道府県・保健所によってはオンコールや患者対応のための必要性などの説明が求められるケースがありますので注意が必要です。不安であれば事前に都道府県・保健所に確認しておく必要があります。
上記のように注意点が多いので、売却まで総合的に視野にいれて検討する必要があります。
米本合同税理士法人では医療法人での社宅保有について都道府県へのヒアリングも含めたご提案を致します。役員社宅をご検討の方はご相談頂ければと存じます。
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PROFILEプロフィール
米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長
税理士 大川 智弘
【経歴】
1988年 大阪府松原市出身
2007年 大原簿記専門学校入学
2009年 税理士試験合格(同年最年少合格)
同年 米本合同税理士法人入社
2011年 税理士登録
2012年 医療法人移行の全実務(清文社様)執筆メンバー
2014年 株式の相続税評価額についての記事を執筆(納税通信様)
2015年 認定医療法人制度についての連載記事を執筆(納税通信様)
2021年~ 三井住友カード法人カード向けDM「三井住友カード Biz」にてコラム連載中
2022年 沖縄県南部地区医師会報にて認定医療法人制度についての記事を執筆
自社ホームページでもコラムを毎月連載中
各所にて認定医療法人・医療法改正・医療法人成りセミナーを実施
大原簿記法律専門学校にて税理士試験合格セミナーの講師担当経験あり
現在は認定医療法人移行コンサルを中心に医療法人の税務・法務面からのトータルサポートに従事。
担当経験のある顧問先の所在地は東京都・愛知県・大阪府・兵庫県・和歌山県・岡山県・島根県・福岡県・大分県・沖縄県
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