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<取材先> & Consulting Firm 代表 沖本崇

4月本格稼働へ 当面は〝負担増〟も予想


今年4月から本格稼働を開始する予定の「ケアプランデータ連携システム」。介護現場の負担軽減などを目的に、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で毎月やり取りされるケアプランの一部情報を、データで送受信する為の情報連携基盤で、2月よりパイロット運用が行われています。

慢性的な人材不足が深刻化の一途をたどる介護業界において、同システム活用によりどのような効果、影響が考えられるのでしょうか。システムの現状や想定される今後の動きなどについて紹介します。

目次
01:紙ベースでのやり取りをデータ化 現場の負担軽減へ
02:導入のメリット 年82万円のコスト減に
03:想定される課題 トラブルへの対応は
04:今後のスケジュール確認を 稼働後に想定される問題とは
05:料金は1事業所あたり年2万1000円 大手の負担は
06:普及に向け、好事例の共有に期待

紙ベースでのやり取りをデータ化 現場の負担軽減へ

介護現場の負担軽減や職場環境の改善に向け、厚生労働省は介護ロボットや見守りセンサー、介護記録ソフトなどのICT化を促しています。こうした取り組みの一環として「ケアプランデータ連携システム」の構築を目指し、2020年度より調整を進めてきました。

これに先駆けて18年度、厚労省は事業所間で異なるベンダーの介護ソフトを利用していてもデータ連携を可能とするため、フォーマットやデータ形式などを規定したケアプランの「標準仕様」を作成しました。

これにより、標準仕様に基づいて出力されたCSVファイルを、それぞれの事業所で使用している介護ソフトに取り込むことで、データが自動的に反映されます。このファイルを電子メールで送付することについては、セキュリティの観点で懸念されたことにより、安全にデータ連携ができる基盤として同システムを構築しました。

& Consulting Firm(静岡市)の沖本崇代表は「従来からあるCSV連携よりも、よりセキュリティ面が考慮された最近の主流であるAPI連携に切り替わっていく可能性もあるだろう」と語ります。

ケアマネジャーは従来、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で発生するケアプランのやり取りを、主にFAXや手渡しで行ってきました。これに関わる業務負担や時間、費用は大きい上、紙から介護ソフトへは手入力で情報を移さなければならず、転記ミスによるトラブルなども少なくありません。これらの負担の削減・軽減が、標準仕様およびケアプランデータ連携システム構築の目的です。



導入のメリット 年82万円のコスト減に

厚労省では、事業所がケアプランを送付するためにかかる費用削減の例として、▽人件費の削減▽印刷費の削減▽郵送費の削減▽交通費の削減▽通信費(FAX)の削減――を挙げています。具体的には、提供表の共有にかかる時間が3分の1程度になる、人件費を考慮した場合は年間約81万6000円(月約6万8000円)のコスト削減になる、転記ミスがなくなることによる心理的負担が軽減される、といった効果を見込みます。


【効果の推計】

ケアプラン図①(効果推計) - コピー.png

想定される課題 トラブルへの対応は

同システムの構築・運用は、厚労省より委託を受けた公益社団法人国民健康保険中央会が行うものです。

全体の概要としては、まず各介護事業所に設置される「ケアプランデータ連携クライアント」と運用センターに設置される「ケアプランデータ連携基盤」から構成されます。介護事業所の利用者は、「ケアプランデータ連携クライアント」からインターネット回線を経由し、「ケアプランデータ連携基盤」を通して事業所間のケアプランデータのやり取りを行います。


【全体の概要】

ケアプラン図②(全体の概要) - コピー.png
同システムで扱われるのは、ケアプランの中でも居宅サービス計画書にあたる第1表および2表、サービス提供票にあたる6表、7表、そして週間サービス計画表にあたる3表。また、入院時情報提供書および退院・退所情報記録書の2つも加えられています。

うち、介護報酬の請求に用いる第6・7表の扱いについて、沖本代表は「利用票・提供票のデータは事業所の収支に直結するため、ここでシステムトラブルが起こると影響は大きい」と懸念を示します。同システムは、提供しているクラウドサービスにデータを長期に保持する仕様ではないため、最終的なトラブル対応は介護ソフトメーカーが担うことになると考えられます。「この負担に鑑みた予算の確保や支援、システムの構造改善などを図ることも求められます」(沖本代表)。

また、汎用性についても課題があるといいます。「仕様について、LIFEとは異なる上、さらに今後取り組む訪問看護のデータベースとも異なるとすれば、それぞれ別で構築したものを後で繋げるのは難しいのではないか」(沖本代表)。「こうした介護ソフトメーカーの負担は、介護事業者への影響につながる」と今後の課題を想定します。


今後のスケジュール確認を 稼働後に想定される問題とは

同システムの利用に際し、インターネットが使用できるパソコン(Windows10以降)および厚生労働省のケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフトが必要となります。また、利用準備として、まずは専用WEBサイトより利用申請を行い、クライアントソフトをインストール後、電子証明書を確認。すでに介護報酬の電子請求受付システムを利用している場合は同じ電子証明書を利用可能で、利用していない場合は電子証明書の申請およびダウンロードが必要となります。

スケジュールとしては、4月1日より利用申請の受付を開始。4月14日以降、クライアントソフトのインストールが可能となります。その後、4月20日の稼働より、システム利用(送受信)ができる予定です。現在は、2月よりパイロット運用が行われている段階ですが、「実証実験やパイロット運用にかける時間が十分でないのでは」とする声もあります。


【スケジュール】


ケアプラン図③(スケジュール) - コピー.png
本格稼働後、最初は様子を見たい事業者も多いと想定され、すぐ対応する事業者とそうでない事業者に分かれるとみられます。そうした場合、同システムに対応していない介護サービス事業者が従来の方法でやり取りを求めると、システム対応した居宅介護支援事業所がシステムでやり取りできる事業者を優先するケースもあり得ます。

あるいは、紙ベースでのやり取りとデータでのやり取りの両方の手間が発生するといった課題も当面はあるでしょう。また、「システムに対応するかしないかは、居宅介護支援事業所側の対応に合わせることになるでしょう」(沖本代表)。


料金は1事業所あたり年2万1000円 大手の負担は

同システムの利用料金は、1事業所あたり(1事業所番号ごと)のライセンス料が年間2万1000円(税込)で、ライセンスの有効期間 は1年間。支払方法は、電子請求の証明書発行手数料と同様、国保中央会に請求する介護給付費からの差引となりますが、請求書送付による口座振り込みにも対応します。

なお、複数事業所を運営している場合であっても1事業所番号あたり2万1000円が必要となることから、大手事業者の負担は非常に大きいものです。沖本代表は「例えば在宅介護サービス事業所を数百ヵ所運営する事業者の負担は、何百万円にも上る。導入数が増えると価格が割引になるといったボリュームディスカウントなども検討すべき」と話します。

普及に向け、好事例の共有に期待

2025年が目前に迫り、24年の医療・介護制度改正を見据える現在の介護業界は、大改革が求められています。次期改正の論点では先送りになるものも多いですが、「ケアプランデータ連携システム」のような新たな取り組みは進んでいます。課題は多いものの、ケアマネジャーの負担軽減やケアプランの質の向上、介護現場の環境改善は急務です。

「データを集めることが目的ではない。テクノロジーの活用は必須だが、一方で介護はゴールの定義づけも難しい」と沖本代表は語ります。LIFEをはじめICT利活用の推進で生産性向上、業務改善を進める取り組みの一環で、現在も唯一アナログで残されている提供票・利用票のやり取りが、ついにデジタル化され4月からの本格稼働に向け準備が進んでいます。

先行して実証実験を行っている事業所もあり、これらの結果の公表が待たれます。ケアプランデータ連携システムの普及に向けて、まずは好事例の蓄積と横展開するノウハウの共有などに期待が高まることでしょう。



監修:㈱高齢者住宅新聞社
制作年月:2023年3月


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PROFILEプロフィール

沖本 崇(おきもと・たかし)

& Consulting Firm 代表
●​2014年~2022年4月まで介護システムベンダーで主に営業推進企画に従事。
2021年4月より各種業界団体オンラインセミナー講師活動、執筆活動行う。
業界紙への介護事業所事例提供、多数

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