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<編集>株式会社日本経営

目次
01:モデル事業で重複投薬等の検知8千件、メリット享受へ急がれる本格運用
02:リアルタイムでの情報連携が可能に 対応施設の拡大へ補助率を引き上げ
03:2025年3月末までにオン資対応の全医療機関・薬局への導入目指す
04:HPKIカードを早期発行できるファストトラックの仕組みを構築
05:オン資対応に一定の目処がつく今年9月以降に普及スピードを加速へ

01:モデル事業で重複投薬等の検知8千件、メリット享受へ急がれる本格運用

 遡ること半年ほど前の202210月、全国4地域で始まった「電子処方箋」のモデル事業では、重複投薬等のチェックが活発に行われ、その有用性が確認されている。126日には全国で運用開始となったが、対応施設は一部にとどまっており、本格運用に向けて速やかな拡大が求められていた。

 

「電子処方箋」のモデル事業は、「電子処方箋管理サービス」の運用開始に向け、医療機関・薬局などにおける運用プロセスやトラブル・問い合わせ対応などを確立することを目的に202210月から1年間の予定で始まった。山形県酒田地域、福島県須賀川地域、千葉県旭地域、広島県安佐地域の4地域で実施されており、16日時点で医療機関7施設、薬局31施設が参加。その後、各地域で準備が整った施設が順次加わり、最終的には計100施設程度が参加する見通しとなった(資料1)。

 

(資料1)電子処方箋のモデル事業について 及び 電子処方箋の運用開始について
資料1 - コピー.jpg

(出典:厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料より一部抜粋編集)

厚生労働省は、規模を問わず医療機関・薬局が参加し、実際に患者を巻き込んで、重複投薬や併用禁忌のチェック、処方箋の発行や受付などを実施できており、システム面において概ね問題なく運用されているとしている。この事業による検証を通じて、先進的な取り組みや課題、優良事例を収集し、最終的には「電子処方箋」のさらなる活用方策が取りまとめられる。

 

20221031日~1231日の電子処方箋管理サービスの利用状況を見ると、データ登録が9241件で、内訳は医療機関による処方箋の登録が65,184件、薬局による調剤結果の登録が25,057件だった。重複投薬等のチェック実施件数は155,812件に達し、内訳は医療機関が104,105件で検知件数が3,812件、薬局は51,707件で検知件数が4,337件だった。ただ、この報告を受けた厚生科学審議会の部会では、検知件数が8,000件を超えることについて件数の多さが指摘され、実際にどのようなことが行われているのか検証を求める意見があった(資料2)。

(資料2)モデル事業の実施概況
資料2 - コピー.jpg

(出典:厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料より一部抜粋編集)



02:リアルタイムでの情報連携が可能に 対応施設の拡大へ補助率を引き上げ

電子処方箋は文字通り、従来の紙の処方箋を電子化して運用する仕組みである。オンライン資格確認等システムを基盤とした電子処方箋管理サービスを用い、医療機関が電子処方箋を登録し、薬局が取得する。医療保険適用の医薬品の院外処方箋が対象となる。

 

オンライン資格確認等システムでは、全国の医療機関等で共有できるレセプト情報が20229月から「薬剤」に加え、「診断」や「検査」などにも拡大されているが、いずれもレセプトをもとにした月遅れの情報しか参照することができない。

しかし、電子処方箋では、処方箋をもとにした薬剤情報をリアルタイムで参照することが可能で、患者が処方・調剤された薬について、複数の医療機関・薬局をまたぎ、直近のデータを含む過去3年分のデータを参照できる。それらの情報を活用することで、医師や薬剤師は「患者の記憶などに頼ることなく、より正確な情報をもとに診察、処方・調剤が行える」ことが一番のメリットだ。重複投薬等のチェックもより効果的に行えるようになり、安全性の向上も期待される。

 

また、電子処方箋の導入は、単なる電子化ということだけではなく、医師・歯科医師から薬局への調剤に必要な情報の提供(検査値、アレルギー等の処方内容の照会への対応)と、薬局から医師等への調剤結果の提供(処方内容の照会を踏まえた薬剤の変更や後発品への変更等)により、現在、取り組まれている地域医療情報連携(専門職間の連携)やPHRPersonal Health Record)などの促進にもつながる。

 

こうしたメリットを持つ電子処方箋の運用だが、対応している施設はまだごく一部に限られる。129日時点ではモデル事業参加施設も含め、病院6カ所、医科診療所13カ所、薬局187カ所という状況だ。導入の事前申請を行っているのは3万施設のため、低調なスタートとなっている。

今後は、できるだけ早く多くの国民がメリットを享受できるよう、電子処方箋の円滑な運用を速やかに進めていくことが求められており、厚生労働省は医療機関等に対する支援の一環として、2023年度の導入補助金について補助率を見直した。当初は2022年度よりも低く設定していたが、それと同率まで引き上げた。たとえば、診療所であれば、「事業額38.7万円を上限にその1/3」だったものを「1/2」とした(資料3)。 

 

(資料3)医療情報化支援基金の補助率の見直し
資料3 - コピー.jpg

(出典:厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料より一部抜粋編集)



03:2025年3月末までにオン資対応の全医療機関・薬局への導入目指す

そして227日、厚生労働省の電子処方箋推進協議会は初会合を開いた。この中で同省は、今年9月以降、電子処方箋を全国に普及する取組を加速し、20253月末までにオンライン資格確認に対応している全ての医療機関・薬局への導入を目指す方針を示した。協議会には電子処方箋の利用施設である医療機関、薬局やシステムベンダの関係者などが参画。電子処方箋の普及状況や課題などを共有するとともに、導入促進のための方策を検討する。

 

 厚労省の報告によると、219日時点の運用開始施設は全国で648施設。内訳は、病院6施設、医科診療所38施設、歯科診療所8施設、薬局632施設となっており、これまでのところシステムや運用面でのトラブルは発生していないという。

 

また、システム改修の事前申請をした施設は4412施設、電子署名に必要なHPKIカードの発行枚数は約4.4万枚(1月末時点)に及ぶ。しかしながら、▽オンライン資格確認導入への対応でシステムベンダの逼迫が続いており、システム改修が進まない▽申込をしたのにHPKIカードが届かない▽地域によっては、医療機関と薬局のいずれか一方の運用が開始されていないために現時点では利用に結びつかない-などの課題も浮き彫りになっている(資料4)。

 

(資料4)電子処方箋の導入状況について
資料4 - コピー.jpg

(出典:厚生労働省 第1回電子処方箋推進協議会 資料より一部抜粋編集)

04:HPKIカードを早期発行できるファストトラックの仕組みを構築

このため厚労省は当面の対応として、(1)電子処方箋に対応しているシステムベンダ名の公表やリモートによるシステム導入の活用、(2HPKIカード発行体制の強化、(3HPKIファストトラック窓口(申請サイト)を社会保険診療報酬支払基金に設置―などを行う考えを部会に示した。

3)では、一定の要件を満たす施設に対してHPKIカードを早期発行する仕組みを構築する。対象は、▽システム改修が完了している▽カードが到着次第、運用体制上も遅滞なく電子処方箋の運用を開始できる▽申請から1カ月以上経過している施設であって、申請不備、費用支払等の連絡があった場合に遅滞なく対応している-の全てを満たす施設。該当施設が申請した場合は、必要最低限(診療所は医師1枚、病院は上限3枚、薬局は管理薬剤師1枚)を早期発行する。3月から申請受付を開始する(資料5)。

(資料5)HPKIファストトラック窓口(申請サイト)の設置

資料5 - コピー.jpg

(出典:厚生労働省 第1回電子処方箋推進協議会 資料より一部抜粋編集)

このほか、電子処方箋の導入意欲が高い医療機関と薬局が同一市区町村内に一定数存在する地域を洗い出し、国が優先的に早期導入を働きかける取組も実施。患者が電子処方箋を利用できる地域数の拡大につなげる。

05:オン資対応に一定の目処がつく今年9月以降に普及スピードを加速へ

電子処方箋の普及について政府は、226月に閣議決定された「新しい資本主義実行計画」のフォローアップで、「25 3月を目指してオンライン資格確認を導入した概ね全ての医療機関及び薬局での電子処方箋システムの導入を支援する」との方針を打ち出している。この目標達成に向け、厚労省は3つのフェーズに区切って段階的に普及を推進。特に今年9月から始まる第2フェーズでは、オンライン資格確認導入義務化の経過措置が概ね終了し、システムベンダの改修余力が出てくるタイミングで普及のスピードを一気に加速したい考えだ(資料6)。

 

(資料6)普及拡大に向けた具体的な進め方(案)
資料6 - コピー.jpg

(出典:厚生労働省 第1回電子処方箋推進協議会 資料より一部抜粋編集)

2023324日時点の情報に基づき作成)

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