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医院を開業するために必要なポイントを、事前準備編、資金調達・広告編として2回にわたりお伝えしました。今回はクリニックの運営に欠かせない人材の募集から育成までを具体的に以下の項目ごとにお伝えいたします。

第1回:【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント ~事前準備編~ 
第2回: 【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント~資金調達・広告編~

目次
01:募集方法
02:面接
03:研修
04:スタッフの管理

01:募集方法

募集方法それぞれに特徴がありますので、採用したい職種や予算などに合った方法を選びましょう。

募集方法には以下の方法があります。

主な募集手段

掲載費用

契約形態

①       新聞の折り込み広告・求人情報誌

有料

 雇用契約

②       ネット求人

有料/無料

③       ハローワーク

無料

④       ホームページ/SNS

無料

⑤       友人・知人からの紹介

⑥       人材紹介会社

有料

⑦       人材派遣会社

有料

派遣契約


募集を開始する時期は、通常はクリニックの広告・宣伝を考えるのと同じ時期に取り掛かる場合が多いです。新聞の折り込み広告は、募集を出すことによって地域の人々にクリニックを知ってもらうという宣伝効果も兼ねます。どの媒体を使えばより応募があるかは、地域によって差異があります。

コストの有無も方法決定の材料のひとつです。折込広告、求人誌は掲載コストがそれなりにかかりますが、良い人材を雇用できるか分かりません。その点、ハローワークはコストがかかりませんので、有効に活用してみるのもよいでしょう。

 

有資格者の確保は地域によっては難しい場合もありますので、地域の看護学校等に広告・掲示を依頼し、紹介していただくのも良い方法です。紹介という点では、紹介会社からの人材紹介は条件にマッチした人材を採用することが出来ますが、雇用者の見込み年収の30%40%を紹介料として支払うなど多額の費用がかかります。

その点、人材派遣会社の活用は、人材紹介会社と同様にクリニックの条件とのマッチングという点で有効で、かつ、マッチングしなかった場合は基本的に費用はかかりません。

ただし、有効な手段ではありますが、条件にマッチした人材を探すためには、時間がかかる場合もあること、マッチング後の派遣会社に支払うコストは実際に雇用するよりも高くなることは忘れてはなりません。

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02:面接

スタッフの採用面接は最も重大なイベントと言えるでしょう。新しいクリニックを一緒に作り上げる仲間となるため、採用は慎重にならざるを得ません。あとになって人選を誤ったと気が付いても解雇は容易にできないからです。人選の見極めは非常に難しいですが、後悔しないように面接の準備をしましょう。

採用面接は多い日だと1日に十数人と行うこともあります。面接は基本的に先生ご自身が行わなければならないため、面接時のチェックポイントなどを事前に押さえておきましょう。

特に、面接時には聞いてはいけない内容もあります。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」より配慮すべき事項が記載されていますので、面接を行う前に必ず目を通すことをお勧めいたします。


また、開業コンサルタント等に同席してもらい助言をもらう方法もあります。多くの方を面接すると、合否の判断に迷うことも多々あるかと思いますので、活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

以下は大まかなチェックポイントと質問事項となります。是非ご参考にしてください。

チェックポイント

確認する内容

① 履歴書の事前確認

過去の職歴やその職務期間、転職理由

② 第一印象

清潔感、姿勢、挨拶

③ 事前アンケートの記入(任意)

履歴書と内容が一貫しているか

④ コミュニケーション能力

声量は小さくないか、目を見ているか

⑤ 適性や資質

募集職種に合う人物か

⑥ モチベーション

入職意欲、成長意欲、向上心の有無

⑦  面接時以外の態度

控室での待機時や面接後の気が緩んだ際の態度

 

 

面接時の質問事項

内容

① 志望理由

この業界や当クリニックを選択した理由

② 希望の雇用体系

正社員やパートなどの希望有無

③ ご家族の同意

独断で応募をしていないか

④ 前職の仕事内容

医療関係の経験有無

⑤ 前職の退職理由

過去に遡り、協調性、社交性や自身の適性などの掘り下げ

⑥ 健康面

服用中の薬、タバコを吸うかどうか

⑦ 休日の過ごし方

趣味などでストレスの解消ができているか

⑧  スキル面

電子カルテ、レセプト業務の経験

キーボード入力やExcelWordなどが使えるか

⑨  最後に質問がある確認

最終意思確認と意欲の確認

 

上記はあくまで参考となります。

採用は相互の信頼があって成り立つものであるため、大前提として上から目線で接することは避け、面接する先生ご自身の評価も気にするようにしましょう。



03:研修

スタッフの採用が確定すると、その後は開業までに研修を行います。接遇研修を取り入れ、開業後も継続して見直しをするようにしましょう。

 

特に受付窓口の仕事は、「診察券を受け取りカルテを出す」「会計の精算をする」「次回の予約を入れる」など多岐にわたりますが、これらの業務には「患者さんを温かくお迎えすること」「患者さんを温かくお見送りすること」という接遇も含みます。通常業務が忙しいという理由で接遇をおざなりにすると、クリニック経営においては大きなマイナスです。

医業=サービスという観点から、私たちは「見られている・聞かれている」という意識を持つことが大切です。

 

<研修方法例>

① 外部講師の研修を受講

スタッフの育成は、クリニック経営の基本です。先生ご自身が教育に手が行き届かない場合は、外部講師に任せるなどして定期的に行いましょう。

② 内部で検討会を開く

検討会や反省会等の場を作り業務の検証を行うことも重要です。その場で改善点を言い合うことで風通しの良い環境が醸成されます。

③ 先生ご自身が教材

先生は常にスタッフから観察されています。どんなにすぐれた研修に参加させたとしても、先生ご自身ができなければ、スタッフもできません。スタッフの行動は先生ご自身の鏡であることを忘れずにいてください。

 

受付業務で最も重要なのは窓口の現金管理です。窓口で患者さんからもらう現金の管理は、スタッフの不正を未然に防ぐと同時に、先生ご自身のプライベート費用との区別に役立ち、結果として健全な医院経営への一歩を踏み出すことができます。

また、税務調査における「売上計上漏れ」という面でも、窓口収入の取り扱いが焦点になりますので、現金の管理には細心の注意をはらうようにしてください。

以下に代表的な現金の流れを紹介いたします。

① 1日に必要な釣銭の一定額を決め、毎朝その額をレジに用意しておく。

②レジとは別に経費の支払い専用に小口現金を用意しておく。小口現金からの支払いは、領収書を保存し日々の残高を確認するようにする。

③ 1日が終了した時点で、最初の釣銭を除いて残りのレジ内の現金を封筒に入れる。

④ レジペーパー等の現金売上と封筒にある現金が一致しているかを確認する。仮に不一致の場合には、現金を追求し、それでも不一致の場合には「現金過不足」として窓口管理表に記入する。

⑤ 銀行にこの封筒の現金を預け入れる。毎日銀行に行くのが無理な時には、1週間単位など、一定間隔とし封筒ごとに日付順に預け入れる。

 

一方で近年では受付のDX化が進んでいます。カルテは電子化され、診療記録もレセプトシステムを導入しているクリニックが圧倒的に多いです。また、患者さんの予約システムとの連動、オンライン診療の導入、支払い時のクレジット決済などのキャッシュレス化が進んでいます。

令和5年4月からオンライン資格確認が義務化もされております。システムの研修や効率性の観点などの面でも、スタッフの研修と業務への熟知は継続性が求められます。

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04:スタッフの管理

クリニック開業後には、スタッフへの給与の計算や支払いが発生します。開業前にある程度の準備をしておく必要があります。

 

給与はクリニックのために働いてくれたスタッフへの報酬です。

給与額や賞与額の支払い額等の間違いは、お互いの信頼感を損なうおそれがあり、不信感を抱かれる一歩になりかねません。気持ちよく働いてもらうためにも、給与計算は、締め日を決めてから支給日まで余裕をもった間隔(10日以上)を取り、計算を行いましょう。

給与計算は単に月給、時給、交通費の金額の算定だけでなく、源泉所得税、住民税や医院の人数、勤務時間等によっては健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の徴収義務が給与支払事業者に生じます。支給額によって、徴収額も変わりますので、注意して計算しましょう。

雇用形態、勤務時間などに応じて、給与計算は複雑になるため、社会保険労務士などに依頼することも可能ですので、有効な手段の一つとして検討しましょう。

 

<スタッフの管理面における準備>

①勤怠給与管理システムまたはタイムカードの導入

②職員用鍵付きロッカー、制服の準備

③雇用保険、社会保険等の行政手続き

④給与規定等就業規則などの制定

⑤書類管理、物品購入ルールの作成

 

スタッフがその労働の対価として支払いを受ける金銭だけではなく、昼食代、借り上げ社宅家賃、社員旅行等も現物給与として課税対象となることがあります。また、クリニックを手伝ってくれる配偶者やご家族へ給与を支払うことも可能ですが、金額や届出など、必ず税理士と相談の上、決めるようにしましょう。


<著者> 辻・本郷税理士法人 ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治

制作年月:2023年5月2日


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PROFILEプロフィール

PROFILE

辻・本郷 税理士法人

ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治

1991年辻・本郷税理士法人仙台事務所に入所。2005年盛岡事務所所長。2009年新宿事務所ヘルスケア事業部異動。現在に至る。
開業支援コンサルティングを主軸に長年にわたり従事。毎年約20人のドクターの開院をサポートしております。開院前の相談はもちろん開業後のフォローも行っております。

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