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<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘

201710月に、認定医療法人制度が大幅に改正されました。特に認定要件において大幅な緩和があり、出資持分の対策が可能となった医療法人が多数出てきています。この制度は20239月までの期限となっておりましたが、延長され202612月までとなりました。今回は認定医療法人制度の改正前と改正後の違い・メリットデメリットや移行スケジュールについて解説いたします。

目次
01:改正前と改正後との要件の違い
02:メリット・デメリット
03:認定要件
04:移行スケジュール(相続やみなし贈与が発生していないケース)
05:認定医療法人移行後の監査の必要性

01:改正前と改正後との要件の違い

改正前

改正後

・役員数(理事6人以上、監事2人以上)

・病院、診療所の名称が医療連携体制を担うものとして医療計画に
記載されていること

・役員等のうち親族・特殊の関係がある者は1/3であること

・事業運営及び役員等の選任等が定款に基づき行われている
こと

・社会保険診療報酬(介護保険・助産を含む)に係る収入金額が全収入額の80%を超えること

・社会保険診療報酬(介護保険・助産・予防接種含む)に係る収入金額が全収入額の80%を超えること

・自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算

・自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算

・医業収入が医業費用の150%以内であること

・医業収入が医業費用の150%以内であること

・役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること

・役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること

・法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと

・法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと

・法令違反がないこと

・法令違反がないこと

・株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと・遊休資産を過剰に保有しないこと

判定者

税務署が個別に判断

判定者

厚生労働大臣が要件を満たしていることを確認して認定


改正前と改正後の要件の違いは上記の通りです。一番の大きな違いは“親族経営が出来ること”です。当初は認定医療法人に移行するには社員・理事の親族割合を1/3以下にする必要がありました。1/3以下にすれば親族内の議決権も1/3以下となり様々な決議について親族間のみで決定できない等運営上のリスクがあったため移行を断念する医療法人が多くありました。しかし改正後はこの要件は廃止されているため親族経営でも認定医療法人へ移行する事が可能となっております。


02:メリット・デメリット

メリット

1.出資者に相続が発生しても出資持分に対する相続税はかかりません。

2.出資者の1人が持分を放棄しても他の出資者に贈与税はかかりません。

3.出資者が全員持分を放棄しても医療法人に贈与税はかかりません。

4.出資持分の払戻しに関し、福祉機構からの借入制度があります。

5.持分なし医療法人移行6年後に法人格の分割が可能となります。

6.地方税の均等割額が最低額となります。



デメリット

1.出資者は、医療法人に対する財産権が無くなります。

2.交際費の損金不算入額が増加する可能性があります。

3.認定医療法人の要件を持分なし医療法人移行後6年間満たし続けなければなりません。

メリットは何と言っても出資持分に対する相続税・贈与税を回避することが出来ることです。特に病院ですと出資持分の評価が数十億円になっているケースもあり、個人で相続税を負担することが極めて困難です。認定医療法人に移行する事でこのリスクを回避することが出来ます。

反対にデメリットは出資持分の払戻が出来なくなることです。元々出資持分を保有していればその割合に応じて医療法人の資産の払戻請求が可能ですが、認定医療法人に移行する際にその出資持分については放棄することとなりますので財産権を失うこととなります。また後述の認定医療法人の要件を6年間満たし続ける必要があります。

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03:認定要件

1 .役員・役員関係者・従業員・関係会社などに特別の利益を与えることはできません。

2給与年収は原則3600万円までです。
(医師については医師としての業務を行っていればその分については3,600万円以上支給することが可能な場合があります。)

3いわゆるMS法人と取引をすることができません。(医療法人の役員が、役職員を兼務しなければ可能です。)

4.自費診療割合を20%以下にする必要があるため、美容整形やメディカルツーリズムなどで外国人患者が多く、自費診療割合が高い医療機関は対策を考える必要があります。

5. 自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算しなければなりません。

6 .使用していない不動産や、現預金などを多額に保有することはできません。(原則年間の医業費用まで。)

7 .医業収益を医業費用の150%以内にする必要があります。

8 .診療報酬不正請求をはじめとした法令違反を行ってはいけません。



認定要件については上記8つとなっています。その中でも1の特別の利益供与の要件はかなり厳しいものになっています。
よくご相談頂くケースとしては役員車両・役員社宅・不動産賃貸・非常勤役員の報酬・貸付金・MS法人との取引ですが、場合によっては取引の中止や個人への資産の売却を行う必要があります。



04:移行スケジュール(相続やみなし贈与が発生していないケース)

認定医療法人の移行スケジュールについては以下の通りとなります。

01

現状把握・移行の必要性の検討

まずは現在の出資持分の所有者・評価額・社員構成・払い戻しを行う出資者の有無・移行要件のうち問題となりそうな部分などの把握を行い、移行の必要性を検討します。また、移行する場合、認定医療法人以外にも社会医療法人・特定医療法人・一般の持分の定めのない医療法人(課税型・非課税型)への移行の可能性も合わせて検討します。

02

認定医療法人の要件の事前監査

制度が大幅に緩和されたとはいえ、認定要件が大きく分けると8要件(役員兼務禁止要件を入れると9要件)あるので、これら一つ一つについて事前監査を行い、問題があった場合には是正を行い、移行を中止するほどの問題があった場合には移行を中止することもあります。この事前監査自体は法的に要求されているものではありませんが、この監査を行わず申請時に問題が発覚した場合は、スケジュールに大幅な乱れが生じ、最悪の場合移行できない可能性があるため、必ず事前監査を行う必要があります。

03

問題の是正・認定医療法人申請書の作成・添付書類の準備

上記(2)で発覚した問題の是正を行います。場合によっては是正期間が長期にわたるものもあります。また、この段階で認定医療法人申請書の作成を開始し、必要な添付資料の準備を行います。

04

認定医療法人事前申請

本申請を行う前に、厚生労働省へ事前申請を行います。基本的には全ての是正が終了し、申請書・添付書類が全て揃った段階で行いますが、スケジュールがタイトな場合は部分的に事前申請を行うケースもあります。

05

認定医療法人本申請・認定

認定医療法人の本申請を行います。この制度の期限である20209月末までに認定を受ける必要があります。通常、本申請から認定まで3ヶ月が標準期間とされていますが、事前申請を行うことで大幅に期間を短縮することができます。(弊社の事例では1ヶ月を切ったケースがあります。)

06

出資持分の放棄、持分なし医療法人への移行

出資者全員による出資持分放棄をし、持分なし医療法人への定款変更・厚生労働省への報告をします。これについては、認定医療法人移行後3年以内にする必要があります。また、出資持分の放棄に同意して貰えなかった出資者への払戻額などの交渉についてはこの段階ですることが多いです。

07

贈与税の申告

持分なし医療法人へ移行した年の翌年315日までに贈与税の申告をする必要があります。ただし、この申告はあくまで認定医療法人へ移行したため贈与税が非課税となる申告をするものであるため、贈与税を支払う必要はありません。

08

認定医療法人の認定要件の維持・1年ごとの報告

持分なし医療法人への移行の定款変更認可から6年間は認定要件を維持し続ける必要があります。この要件を満たせなくなった場合には07で非課税として申告した税額が医療法人に課税されてしまうため、必ず満たし続ける必要があります。またその状況についての報告を毎年、移行後x年間3ヶ月ごとにする必要があります。


認定医療法人の特徴としては認定医療法人へ移行し持分なし医療法人となってから6年間要件を満たし続ければその後は要件を満たす必要がなくなり7年目以降は自由に運営ができる点で、社会医療法人や特定医療法人とは異なります。

05:認定医療法人移行後の監査の必要性

認定医療法人の要件を満たせなくなった場合には医療法人へ莫大な贈与税が課税されてしまい、医療法人の存続に多大な影響を及ぼす可能性があります。

また認定を受けた後も医療法人は様々な取引・活動をするため、その度にその取引などが認定医療法人の要件を逸脱していないかの疑義が発生します。さらに不定期に厚生労働省の調査が行われると言われており、調査対策などを万全に行っておく必要もあります。

そこで米本合同税理士法人では、認定医療法人移行後より、認定要件を満たし続けているかの監査を定期的に行い、不測の事態に備えることで、医療法人への贈与税課税を完全に防止するよう努めています。

 

認定医療法人制度は出資持分に悩んでいる医療法人にとっては救世主となりうる制度ですが、要件等も複雑で認定後の運営についても細心の注意を払う必要があります。米本合同税理士法人では認定医療法人について多数のノウハウを有しておりますので認定医療法人への移行をご検討の方は一度ご相談下さい。

 

→(医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら)

 

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制作年月:2023年5月24日


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PROFILEプロフィール

PROFILE

米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 

税理士 大川 智弘

【経歴】
1988年 大阪府松原市出身
2007年 大原簿記専門学校入学
2009年 税理士試験合格(同年最年少合格)
同年   米本合同税理士法人入社
2011年 税理士登録
2012年 医療法人移行の全実務(清文社様)執筆メンバー
2014年 株式の相続税評価額についての記事を執筆(納税通信様)
2015年 認定医療法人制度についての連載記事を執筆(納税通信様)
2021年~ 三井住友カード法人カード向けDM「三井住友カード Biz」にてコラム連載中
2022年 沖縄県南部地区医師会報にて認定医療法人制度についての記事を執筆
自社ホームページでもコラムを毎月連載中
各所にて認定医療法人・医療法改正・医療法人成りセミナーを実施
大原簿記法律専門学校にて税理士試験合格セミナーの講師担当経験あり
現在は認定医療法人移行コンサルを中心に医療法人の税務・法務面からのトータルサポートに従事。
担当経験のある顧問先の所在地は東京都・愛知県・大阪府・兵庫県・和歌山県・岡山県・島根県・福岡県・大分県・沖縄県

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