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承継医院の決め方と気をつけるべきポイント【買い手】(2023.11.21)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 「承継医院の決め方と気をつけるべきポイント【買い手】」 開業をお考えになる先生にとって開業資金は大きな問題です。診療科目などにもよりますがおおよそ5,000万円から1億円ほどの費用がかかります。また開業場所の選定やスタッフの採用と教育、集患対策など先生の時間、労力は多大なものです。 一方、現在、医療機関の経営者の半数が60歳以上となり高齢化が進んでいますが、ほとんどの医療機関では後継者が不在で診療所の継続が危ぶまれています。 開業したい先生と診療所の継続を願う先生のニーズを解決する方法として『第三者承継』があります。第三者承継は、新規開業をすることにより開業資金や様々な労力を削減できることもあり、第三者承継での新規開業が増えてきています。今回は承継医院をどうやって見つければよいのか、承継医院を決めるポイントについてお話します。 1. 第三者承継するためには 第三者承継をするならどこでも良いわけではありません。たくさんの候補から選びますので、先生が第一にやらなければならないのは『開業する目的を明確にする』ことです。 『どうして開業したいのか』『どのような診療を行いたいのか』など診療方針が明確になると他の条件も自然と明確になってきます。診療したい場所や診療所の広さ、スタッフの条件などです。先生の開業したい医院の条件が明確になると承継したい診療所の条件が絞れてくるのです。 2. 第三者承継案件を選ぶポイント 先生の希望条件に合った診療所が見つかれば、次は内容を確認する必要があります。 ① 診療所のキャッシュフローが良好であるか ② 将来の診療圏内の人口の推移(患者数を将来維持できるのか、減少するのか) ③ 診療所の借入金の有無 ④ 地域での診療所の評判 ⑤ 診療圏内の競合医院の有無 複数の候補がある場合には、内容を確認してより条件の良い診療所を選ぶ必要があります。 3. 第三者承継のメリット 最も大きなメリットは開業費用を抑えられることです。冒頭で開業費用はおおよそ5,000万円から1億円ほどと書きましたが、第三者承継では新規開業と比べてほとんどの場合、開業費を抑えられます。次に診療所のスタッフを引継げば人材採用や人材教育の労力を軽減できます。診療所の既存患者も引継げるので開業時から収入が見込めます。開業時の借入金を少なくし、最初からある程度の収入が発生するため安定した経営が見込めるということです。 4. 第三者承継の流れ 先生が第三者承継の診療所を探しはじめてもすぐに見つかるわけではありません。 M&A専門の仲介業者や税理士事務所、銀行などに相談して下さい。幅広く情報収集して、先生が承継したいと思う診療所を見つけて下さい。最近ではM&A支援サイトもありますので活用してみてはいかがでしょうか。 開業までの期間は開業の目的を明確にしてからおおよそ1年ほどかかります。 5. おわりに 最後に第三者承継のデメリットについてお伝えします。 開業資金を抑えられ、既存の患者やスタッフ、医療機器も引継いで開業できたとします。 しかし、既存の患者の2割から3割は離れていく可能性がありますし、スタッフも新しい院長と合わないからと退職されるかもしれません。医療機器も買い替える必要が出てきます。 既存の患者やスタッフを失わないためにも、売り手側の診療所の院長と診療所の経営方針・理念についてよく話し合って下さい。新規開業を成功させるためには患者に対する対応や一緒に働くスタッフとの信頼など第三者承継でモノとヒトをしっかり引継ぐ必要があります。 第三者承継の手続きは先生おひとりでは大変ですので、ぜひ医業の事業承継に強い専門家にご相談下さい。

【知っておきたい】クリニックの承継開業 第三者承継(M&A)の各種手続きとは(2023.11.21)
目次 01:はじめに 02:個人経営のクリニックを承継する場合 2-1:事業譲渡の概要 2-2:手続関係の概要 2-3:税務 03:医療法人のクリニックを法人格ごと承継する場合 3-1:概要 3-2:手続関係 3-3:税務のポイント 04:終わりに 01:はじめに クリニックの承継開業 第三者承継(M&A)の第2回目は、個人経営のクリニックを承継する場合と医療法人のクリニックを承継する場合の行政手続きや税務について解説します。 ☞【知っておきたい】第1回 クリニックの承継開業のメリット・デメリット、第三者承継(M&A)について(2023.08.29) これから開業される先生が、既存のクリニックを承継して事業を開始する際に、事業を譲り受けるか、法人ごと譲り受けるかで取扱いが大きく変わります。 02:個人経営のクリニックを承継する場合 個人経営のクリニックでは、医師個人が開設者となり運営され、クリニックに係る財産や契約はすべてその医師個人に帰属しています。 2-1:事業譲渡の概要 これから開業される先生が、個人経営のクリニックから事業を承継する場合には、そのクリニックに係る医療機器、薬剤、不動産賃貸借契約、スタッフの雇用契約のなどの多くの財産・契約を個別に承継することになります。 これを「事業譲渡」といいます。 開設者・管理者としての地位は直接的に受け継ぐことはできず、売手の先生の廃止手続きと買手の先生の開設手続きを同時に行います。 また、カルテも患者の個人情報ですので患者本人の同意なく直接的に受け継ぐことができないのですが、事業承継の場合は例外的に受け継ぐことが可能とされています。 2-2:手続関係の概要 (1)診療所の開設 新しく開設する医師は、保健所に「診療所開設届」の届け出と、厚生局に「保険医療機関指定申請書」の届け出が必要になります。 提出期限は保健所が原則、開設日から10日以内、厚生局は、所轄厚生局の定める締切日(10日、15日が多い)までとなります。 厚生局での保険医療機関の指定は、開設月の翌月1日から受けることが原則となり、通常は開設月においては保険診療が行えません。 ただし、以下の通り一定の条件を満たす場合に限り、遡って開設月の初日から保険医療機関として指定を受けることができます。 一定の要件とは以下の通りです。これらの条件を満たすことにより、開設日から保険診療を行うことができます。 ・事業譲渡前に非常勤として一定期間勤務を行っていること ・前クリニックの廃止日と新たなクリニックの開設日が連続していること 例)廃止日 3/31 開設日 4/1 ・診療科目が同一であること (2)労働社会保険手続 事業譲渡の場合は、基本的に各保険につき新規成立手続き(雇用保険除く。)を要します。 職員は、一定の条件を満たす場合に「労災保険」「雇用保険」「健康保険・厚生年金」に加入義務が発生しますので、保険の種類により手続きの確認を漏れなく行う必要があります。 手続名 提出先 提出期限 労災保険 労働保険 保険関係成立届 労働基準監督署 事業開始後10日以内 雇用保険 雇用保険事業主事業所各種変更届 ※事業主(院長)が変更された旨の手続き ハローワーク 変更のあった日の翌日から10日以内 健康保険・厚生年金 健康保険・厚生年金保険新規適用届 年金事務所 開設日から5日以内 *参考:職員の各保険加入要件 ・労災保険 労災保険はすべての職員が加入する必要があります。 ・雇用保険 雇用保険は従業員の1週間の勤務時間が20時間を超えると加入する必要があります。 ・健康保険・厚生年金 健康保険・厚生年金は常勤職員のほか、非常勤職員も常勤職員の勤務時間と比較して四分の三以上勤務されていると加入する必要があります。 加入対象となる職員がいる場合には、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」や扶養の有無に応じて「健康保険被扶養者異動届」の提出も必要です。こちらの書類は雇用開始から5日以内の届け出となります。 また、個人事業の場合、常勤職員が5名未満であれば原則、健康保険、厚生年金の加入義務がないため、クリニックとして社会保険の任意適用申請手続きが必要となります。 (3)税務手続 新しく開設する先生は、事業の開始を官公署に届出る必要があります。一般的に以下の書類の提出が必要です。 ・税務署 ① 個人事業の開業等届出書 ② 所得税の青色申告承認申請書 ③ 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 上記の書類は、事業を開始する際に届け出をします。 特に②所得税の青色申告承認申請書は、開業日が1月1日から1月16日になる場合は、その年の3月15日までに、1月16日以後の場合は、事業開始の日から2ヶ月以内に届け出をしなければなりません。 そのほか、状況に応じて以下の書類の届け出も必要になります。 ・青色専従者給与の関する届出書 配偶者などの親族の給与を必要経費に算入する場合は提出が必要です。 ・所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する申請書 申告書の納税地を住所地に代えて事業所等の所在地を納税地として、申告を行いたい場合は届け出が必要です。 ・都道府県税事務所 ④ 事業開始等申告書 上記書類は事業開始の日から15日以内に届け出をする必要があります。 2-3:税務 事業を承継し、個人経営のクリニックとして開業する場合には、先生は「個人事業主」になりますのでそのクリニックの運営により生じた利益は先生個人に帰属することになります。 その年の1月1日から12月31日までの生じた所得について、翌年3月15日までに所得税の確定申告と納税が必要となります。 また、不動産、内装、医療機器などの保有により固定資産税といった税金も先生個人に毎年かかりますのでご注意下さい。 03:医療法人のクリニックを法人格ごと承継する場合 医療法人とは、病院、医師もしくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設することを目的として医療法の規定に基づき設立される法人です。 これからはじめて開業される先生が、第三者承継で開業する場合で「医療法人」を引き継ぐ場合は「医療法」の規定および「医療法人」を知っておかなければなりません。(厚生労働省 医療法人の基礎知識) <(参考)医療法人のガバナンス> ※厚生労働省資料より当社作成 3-1:概要 個人経営のクリニックの承継は、そのクリニックにかかる財産や契約を個々に承継するのに対し、医療法人のクリニックの承継は、そのクリニックを法人格ごと包括的に承継することになります。 医療法人は株式会社とは異なり、社員一人につき一議決権となりますので医療法人の経営権は、社員の過半数を入れ替えることで移行します。 その医療法人に出資持分がある場合には、その出資持分の買取りが前提です。 社員の過半数が入れ替わったあとに、意思決定機関である社員総会にて理事を選任し、その中の互選により理事長を選定します。 個人経営のクリニックの承継と比べ手続きがとても少なく、「居抜き」のイメージですぐに事業を開始できることがメリットですが、損害賠償リスクや簿外債務も包括的に承継するので承継の契約条項に留意する必要があります。 3-2:手続関係 (1)行政手続 医療法人のクリニックの承継においては、役員や管理者の変更に際し、各行政機関で下記の手続きが必要となります。 また、法人やクリニック名称を変更するのは買い手側の自由となりますが、変更時には管轄の都道府県において定款変更の認可を受ける必要があります。 <手続一覧> 手続名 提出期限 都道府県 役員変更届 登記事項の届出 変更後、遅滞なく 登記後、遅滞なく 保健所 診療所開設許可(届出)事項一部変更届 変更後10日以内 地方厚生局 保険医療機関届出事項変更届 変更が生じた場合には、速やかに ※法人、クリニック名称の変更は定款変更の認可が必要となり、都道府県において定款変更の認可を受けた日をもって変更となります。 ・都道府県 ①役員変更届 社員総会の決議により理事や監事といった役員の変更がされたら、これを都道府県に届け出をしなければなりません。 また、法人の代表者(理事長)は登記事項となるため、変更後直ちに法務局で登記申請をする必要があります。 ※法人、クリニック名称も登記事項となります。 ②登記事項の届出 法人名称、クリニック名称、理事長などの登記事項の変更をしたときは登記事項証明書(履歴事項全部証明書)の原本を添付して届け出をしなければなりません。 ・保健所 ③診療所開設許可(届出)事項一部変更届 開設者である法人に変更はないものの、開設許可を受けている法人の代表者、そのクリニックの管理者が変更になっている旨を 所轄保健所に届け出が必要となります。 ※X線があるクリニックは、「X線装置備付届」の届け出も必要となります。 ・厚生局 ④保険医療機関届出事項変更届 ③と同様に変更になっている旨を、所轄厚生局に届け出が必要となります。 (2)労働社会保険手続 個人クリニックの承継とは違い、各保険の新規成立手続きは要しません。 ただし、代表者の変更、法人名称・クリニック名称の変更の際に、各変更にかかる届け出を要しますのでご注意ください。 手続名 提出先 提出期限 代表者変更 法人、クリニック名称変更 労災保険 労働保険名称、所在地等変更届 労働基準監督署 変更から10日以内 雇用保険 なし 雇用保険事業主事業所各種変更届 ハローワーク 健康保険・厚生年金 健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届 年金事務所 変更後、速やかに (3)税務手続 こちらも個人クリニックの承継とは違い新規の届け出は不要となります。 代わりに代表者の変更や法人名称・クリニック名称の変更に際し、速やかに下記の届け出が必要となります。 ・税務署 異動届出書 ・都道府県税事務所、市町村役場 異動届 3-3:税務のポイント 医療法人のクリニックを法人格ごと承継し、医療法人の経営者として開業する場合には、先生は「医療法人の役員」になりますので、そのクリニックの運営により生じた利益は医療法人に帰属することになります。 その医療法人の会計年度に生じた所得について、期末から2ヵ月以内に法人税等の確定申告と納税が必要となります。 先生個人はその医療法人から役員報酬を受け取ることになりますが、給与収入が年間2,000万円超などの事由に該当しなければ、先生自身に確定申告の必要はありません。 また、医療法人においては、旧役員(前理事長など)への退職金の支給によりその年度の法人の利益がマイナスとなる場合は、そのマイナス分(繰越欠損金)をその後医療法人で生ずる利益と相殺することができ、法人の決算にかかる税金については一定期間、地方税の均等割りのみの納付となるケースがあります。 04:おわりに 今回は、これから開業される先生が既存のクリニックを承継して開業する際に個人経営のクリニックを譲り受ける場合と医療法人のクリニックを譲り受ける場合の取扱いについてご紹介しました。 各手続きに漏れが生じると、最悪のケースでは予定していた日に開業できないなどの事態や、ペナルティが課される場合もあります。 せっかく来院された患者さんに診療を行うことができなくならないようにしっかり準備・確認を行う必要があります。 先生おひとりでかかえず、開業コンサルタント等に相談されることをおすすめします。 <各手続き一覧> 個人クリニック承継後、 新規成立手続一覧 医療法人クリニック承継後、 一部変更手続一覧 行政機関 都道府県 なし 役員変更届 登記事項の届出 保健所 診療所開設届 (X線装置備付届) 診療所開設許可(届出)事項一部変更届 厚生局 保険医療機関指定申請書 保険医療機関届出事項変更届 労働社会保険 労災保険 労働保険 保険関係成立届 労働保険名称、所在地等変更届 雇用保険 雇用保険事業主事業所各種変更届 雇用保険事業主事業所各種変更届 社会保険 健康保険・厚生年金保険新規適用届 (健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届) (健康保険被扶養者異動届) 健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届 税務 税務署 個人事業の開業等届出書 所得税の青色申告承認申請書 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 異動届出書 都道府県税事務所・市町村役場 事業開始等申告書 異動届 <著者> 辻・本郷税理士法人 ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治 制作年月:2023年11月21日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【クリニック 開業医 必見 】2023年のWindows8.1とOffice2013のサポート終了リスクを解説。PCの買い替えに少額減価償却資産の特例を活用(2023.11.14)
WindowsやOfficeなどのソフトウェアにサポート期間があることをご存じでしょうか。 マイクロソフト社が提供するソフトウェアにはサポート期間が定められています。 サポート期間が終了した製品を引き続き使用することはできますが、プログラムの不具合やセキュリティ上の問題点といった「脆弱性」を修正する更新プログラムが提供されなくなるため、悪意のあるソフトウェアから PC を保護できなくなり、セキュリティやコンプライアンス上の問題を引き起こすリスクが高まり危険な状態になります。 ■サポート期間が終了した製品を使い続けるリスクとは サポート期間が終了した製品を使い続けることにより高まるリスクは次の通りです。 ・マルウェア(悪意のあるソフトウェア)への感染 ・フィッシング詐欺やなりすましの被害 ・個人情報や機密情報の漏えい 最近はマルウェアに感染したPCを勝手に暗号化して使用できなくした後に、データを「人質」にとって元に戻すことと引き換えに身代金を要求するマルウェアの一種「ランサムウェア」による被害が拡大しています。 ランサムウェアの被害は医療機関でも相次いでおり、サイバー攻撃を受けて長期間診療を停止するといった事態も発生しています。 サイバー攻撃への対策で重要なことは、利用しているソフトウェアの脆弱性に対処し続けることです。脆弱性が放置されていると攻撃者に悪用されてしまう可能性があるため、必ず対処しておくべきです。 ■お使いの製品のサポート終了日を確認する まずはお使いの製品のサポート終了日を確認して、該当する製品をご利用中であればリスク回避のため早期の買い替え検討をおすすめします。 直近ではOSの「Windows 8.1」が 2023年1月10日に、オフィスソフトの「Office 2013」が2023年4月11日にサポート期間が終了しています。 代表的な製品のサポート終了日一覧 製品名 サポート終了日 Windows 7 2020年1月14日 Windows 8.1 2023年1月10日 Windows 10 Home and Pro 2025年10月14日 Office 2013 2023年4月11日 Office 2016 2025年10月14日 Office 2019 2025年10月14日 Office 2021(現在の最新版) 2026年10月13日 ■PCの買い替えに少額減価償却資産の特例を活用する 購入した金額が30万円未満のPCについては、一定の要件を満たす中小企業者等であれば少額減価償却資産の特例により全額を費用に計上できます。 一定の要件を満たす中小企業者等とは、青色申告書を提出し、常時使用する従業員が500人以下で、資本金が1億円以下の法人です。 一会計期間でこの特例を利用できる限度額は合計で300万円ですが、超えた部分でも単価が20万円未満のものについては一括償却資産として金額に制限なく3年で均等に償却が可能です。 税制上の処理方法 購入時の金額 処理方法 償却期間 条件 10万円未満 消耗品費 一括 10万円以上20万円未満 一括償却資産 3年 10万円以上30万円未満 少額減価償却資産の特例 一括 ・一定の要件を満たす中小企業者等 ・一会計期間の限度額は合計300万円 ■オフィスソフトの買い替えはサブスクリプション版も検討 お使いのPCによってはOSのサポート期間は残っているが、オフィスソフトのみサポート期間が先に終了するケースが考えられます。 例えばOSがWindows10でオフィスソフトがOffice2013の組み合わせなどです。 この場合はPCを含めて買い替える、またはオフィスソフトのみを買い替えてPCは継続利用する方法を選択できます。 先ほどのサポート終了日一覧をご覧いただくとお気づきになられると思いますが、現在の最新版のOffice2021はサポート終了日が2026年10月13日となっており、現時点で残りのサポート期間が4年以下と、利用できる期間が短くなっています。 Officeのサポート期間は年々短くなっており、現在は発売から5年ほどでサポート期間が終了します。 上記のような理由もあり、最近ではOfficeの購入は買い切り版ではなく、利用期間に応じて料金を支払うサブスクリプション版を検討するケースが増えています。サブスクリプション版は月額または年額利用料を支払うことで、常に最新版のOfficeを利用できるため、サポート終了日を気にせず利用できます。 また、PC購入時に付属する買い切り版のOfficeと比較して、テレワークに活用できる機能が充実していることや、タブレットやスマートフォンでもOfficeを利用できる強みもあります。 PCを含めて買い替える場合は、Officeの付属しない10万円以下のPCを選択してコストを抑え、Officeのみサブスクリプション版を契約して利用することで、PCを消耗品費として計上することも可能です。 サブスクリプション版のデメリットは、従来の買い切り版のOfficeに比べて長期間使うと割高になることですが、サポート期限に合わせた定期的な買い替えの手間が省けますし、サブスクリプション版のみ使用できる便利な機能も多くありますので、買い替えの際は検討されてみてはいかがでしょうか。 【参考】Officeの購入方法(契約方法)の種類 ・プリインストール版のOffice プリインストール版はPCに付属し最初からインストールされている方式の製品です。買い切りで継続利用料金は発生しません。プリインストール版は付属するPCでのみ利用でき、別のPCにインストールはできません。 価格は永続ライセンス版と比較して1万円ほど安くなっています。 製品にはサポート終了日があります。 ・永続ライセンス版のOffice 永続ライセンス版はPCとは別売りの製品です。買い切りで継続利用料金は発生しません。特定の1名(同一人物)が利用する2台のPCにインストールして利用できます。 特定の1名の方が院内用のデスクトップPCと院外用のノートPCの2台を使うケースなどではプリインストール版より価格面で有利になります。 製品にはサポート終了日があります。 ・サブスクリプション版 サブスクリプション版は月額または年額利用料を支払うことで利用できる方式の製品です。プリインストール版や永続ライセンス版と違い、常に最新のOfficeを特定の1名(同一人物)が利用する概ね5台までの複数のPC、タブレット、スマートフォンで利用できます。 常に最新のOfficeを利用できるため原則としてサポート終了日はありません。 長期間使うとプリインストール版や永続ライセンス版に比べて割高になります。 ■最後に 製品のサポート終了日はマイクロソフト社のWindowsやOfficeだけでなく、様々なメーカーのソフトウェアや機器にも設定されています。 セキュリティ対策で大事なことは、ソフトウェアや機器の不具合や問題点を放置せずに、適切に維持管理していくことです。 まずは第一歩として院内にサポート期間が終了したソフトウェアや機器がないか確認してみてはいかがでしょうか。 弊社では顧問先の医院様に向けて少額減価償却資産の特例のご説明や、具体的事例に合わせた対応方法をご提案させていただいております。またITの専門家も在籍しておりますので、セキュリティ対策にご興味のある方は、一度お問い合わせをお願いいたします。 (弊社のコラムについてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/column/index.html <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620

医療現場の人材不足、未経験者に特化した教育ツールで解決しませんか?(2023.11.1)
医療現場の人材不足、未経験者に特化した教育ツールで解決しませんか?|ソラスト 01:医療事務現場における人材不足とは 感染症、現代病、高齢化社会・・・。 医療は常に健全な社会形成のための最重要課題でありながら そこに従事する人は年々不足し、疲弊しつづけています。 アフターコロナで景気が回復しつつあるといわれながら 医療福祉業界の人材不足は、他の業界とは真逆に、年々深刻度を増しています。 医療業界の人材不足を補うためにIT化が進められてはいますが、今はまだ導入は一般的ではありません。医療現場の土台を作るのはやはり「人」であり、まず、現場での人材不足を真に解消できるようにならなければ、これから到来するITツールを活用することすらままなりません。では、どのようにすれば人材を定着させ、育成することができるでしょうか。あなたは、いったいどこから着手すればよいと考えていらっしゃいますか? 02:人材不足を引き起こす負のスパイラル 私たちソラストは人材不足を解決するために、まず、この医療業界の現場で、どのような問題が起きているのかを知ることから始めました。そして、各現場からの声を集めてみたところ、多くの現場が抱える共通の問題がだんだんと浮き彫りになってきたのです。 <現場で起きている問題> 「採用活動に時間がかかる」 「経験者が採用できない」 「採用しても定着しない」 これらの問題解決のハードルとなっているのが、今や市場として未経験者を採用する以外、人材不足を補う選択肢が見つかりづらいことです。 そして、未経験者の採用において陥りやすい負のスパイラルもみえてきました。 時間をかけて採用しても、人材育成に時間がかかり、挙句、教えきる前に辞めてしまい、また新たに採用活動に奔走する・・・を繰り返す悪循環。 特に新人教育は、既存社員のリソースを犠牲にして成り立つものですから深刻な問題です。 既存社員にとっての「当たり前」が未経験者には意味が通じないことがあったり、正しい知識で説明されていなかったり、質問しても理解できないまま日々の会話が繰り返されていくと、新人社員は置き去り状態となってしまいます。その「わからない」が蓄積し、入社当時のモチベーションが保てなくなっていたり、活躍の場すら逃してしまうこともあるのではないでしょうか。 ここで着目したいのが、新人社員の「知らない」を「知りたい」に変えるきっかけをつくる、「教育の導入」です。 03:新人社員の「知りたい」を育成しよう 日本の医療業界全体をとりまく正しい知識や情報というのは、SNSや各雑誌などで断片的且つ無数に取り上げられて無料で拡散されています。果たしてそれは、本当に正しい情報でしょうか?発信者によっては内容に偏りがあり、医療業界全体を網羅した、教材として適切なものはなかなか見当たりません。 新人社員、医療業界未経験者には、難しい医学書を分かるようになるまで学んでもらうよりも、まずは未経験者でも分かる低いレベルからスタートできる教材で学びを確実にしていくことが、人材定着の一歩につながるのではないでしょうか。 ■新人社員向けの第一歩教材 今回の記事では、人材不足の解決のためには「学習者のレベルに応じた教育のしくみ」を整えることが大切である、とお伝えしてきました。 そこで、ソラスト教育サービスでは、日本の医療がどのように社会の役に立ち必要とされているのか、また、保険や社会保障制度などの基礎的な仕組みを知ることで、自分自身を助けることにもつながる情報を掲載した教材を、今年7月に発売しました。 ちょっと人に話したくなるような豆知識レベルのセンテンスで、分かりやすく紹介しています。 👉Point ✔テキストは女性の手にもなじみやすく、持ち歩きやすいB5サイズ(1冊の厚さ5㎜) ✔「見やすさ・分かりやすさ」にこだわった、ユニバーサルデザインのテキスト ✔医療事務現場のエッセンスを抽出、全体を効率よく学べる構成 ✔最終WEBテスト終了後、「認定証」も付与され自信にもつながる おかげさまで、病院新聞に記事掲載されるなどご好評をいただいております。 この教材をきっかけに「もっと学んで、医療業界に貢献したい」というマインドセットにもなることを願っています。 ▼個人でのお申込みはこちらから (BtoCリンクを貼る現場から生まれた医療業界「はじめの一歩」 | 医療事務・介護の資格取得・通信教育講座ならソラスト教育サービス (solasto-learning.com)) ▼ 医療機関など団体お申込み(3人以上)の場合は、無料ウェビナー開催など、各種ご要望に応じます。お気軽に法人さまお問合せフォームからご相談ください。 プロフィール 株式会社ソラスト 教育事業部 日本初の医療事務専門教育機関として、1965年に創業、現在は医療事業での契約医療機関数約1400件、介護事業の運営事業所数約600件以上展開しております。その知見を活かした教育をもモットーとし、2023年10月に58周年を迎えます。地域に密着したサービスを実現し、お客様の元気と笑顔を支え続けることを企業理念としています。 ソラスト教育サービスホームページ:https://solasto-learning.com/ ↓※文末:「関連サービス」欄に掲載↓ 医療事務の始祖、医療機関を支え続けて創業58年を迎える株式会社ソラストの教育サービスが、最短2週間で医療業界が学べる教育ツール「現場で生まれた 医療業界 はじめの一歩」の通信講座販売を2023年7月から開始しました。医療業界の人手不足を解決するために誕生したこの講座は、人材育成のきっかけづくりにも活用していただけます。医療事務の最前線を担う方々を、しっかりとサポートいたします。 ▼URL一覧 ソラスト法人さまお問合せフォーム:https://form.run/@solasto-bizinquiry?_gl=1*1c2se45*_ga*MTcxNjI5OTY4OC4xNjkzNTMxODc5*_ga_Y2JQK79V7H*MTY5NTA5MTA3Ni4zNS4xLjE2OTUwOTE3MjEuNTguMC4w&_ga=2.104912195.1735658188.1695091077-1716299688.1693531879 医療業界はじめの一歩:https://solasto-learning.com/courses/c_iryou/c_0145/ 株式会社ソラストホームページ:https://www.solasto.co.jp/

最低賃金の引き上げに伴って起こりうる企業への影響や今後とるべき対策とは?(2023.10.24)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 今年度の最低賃金について全国平均が初めて1,000円を超えました。物価上昇が続く中での賃上げは嬉しい半面、医院が受ける影響も問題視されます。 今回は最低賃金の引き上げによって起こりうる影響に触れつつ、今後とるべき対策についてもご紹介します。 目次 1.最低賃金の確認方法 2.最低賃金引き上げが与える企業への影響 3.最低賃金引き上げへの対策 4.最後に 1.最低賃金の確認方法 最低賃金の対象となるのは、労働者に対して毎月支払われる基本的な賃金です。 基本的な賃金とは、毎月支払われる基本給の他に職務手当、役職手当、住宅手当が含まれます。 具体的には、次の賃金が最低賃金の対象から除かれます。 (1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など) (2) 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など) (3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金、深夜割増賃金など) (4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など) (5) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当 時給制の場合は、地域別最低賃金の金額が時間給を上回っていれば問題ありません。 日給制と月給制の場合は、賃金額を時間当たりの金額に換算し、時間額と比較します。 また、最低賃金は出来高払いや試用期間中であっても適用されます。 2.最低賃金引き上げが与える企業への影響 医院が最低限抑えておくべき、最低賃金引き上げが与える影響を紹介します。 ・人件費が増える 最低賃金の引き上げは医院が負担する人件費が増大します。 例えば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日が105日の会社の場合、月平均の所定労働時間は173時間となります。 計算根拠 8時間 × (365日-105日) ÷ 12ヶ月 = 173時間 最低賃金の引き上げ額が全国平均で43円のため、 仮に時給が40円引き上げられると、会社の負担が月換算で6,500円以上も引き上げられることになります。 現時点で従業員の時給を最低賃金ギリギリで設定している企業は、従業員数や雇用時間の見直しが必要となる可能性があります。 そして場合によっては求人内容を変更する必要もあります。 ・新たな人材の獲得が厳しくなる 人件費の負担が大きくなれば採用コストを割くことが難しくなります。 アルバイトやパートを多く抱える企業にとってはかなりの影響が及ぶことが考えられます。 また、時給の設定を高くしても、他社も同様に賃上げを行っているため時給による差別化が難しくなり 採用活動は苦戦を強いられることでしょう。 ・正規社員のモチベーション低下 最低賃金の引き上げによって、非正規社員と正規社員の賃金があまり変わらない状況になれば、 正規社員のモチベーション低下が懸念されます。 結果として賃金の高い医院に流れるなど離職につながる恐れも出てきます。 社員間の不平等感を生み出さないよう既存社員への気配りも必要となってきます。 3.最低賃金引き上げへの対策 人件費の負担が大きくなるとその分医院の利益が減少することが考えられます。 業績が上向かない状態で賃上げを迫られるのは医院にとって苦しいと思います。 今後、賃上げに対応できる環境を整えることがこれまで以上に重要な課題となるかもしれません。 ・従業員のスキルアップを図る 賃上げが行われると、従業員のモチベーションが上がるため医院への貢献度も向上するはずです。 これを機に、従業員のスキルアップを図り、増加した人件費分の業績を向上させることができるかもしれません。 スキルアップとして具体的には社内研修の開催、外部セミナーの受講、資格獲得への支援などが考えられます。 ・賃金を適正に分配する 有資格者や成績上位者への優遇措置やスキルマップの作成により、従業員の能力を評価することも重要です。 そうすれば、会社が求める人材を視覚化でき、賃金を適正に分配することができます。 スキルマップを活用すれば、従業員のやる気を引き出すとともに、 医院や個人が不足する能力を理解・共有することができ能力の向上に役立ちます。 また、最低賃金は今後も上がっていくことが予想されるため、費用対効果の低い手当の廃止や整理を検討する必要があります。 ・賃金以外の待遇改善 最低賃金引き上げに際して賃上げを行うことも重要ですが、その分人件費も増大してしまいます。 優秀な人材の離職対策や他院との差別化を図り採用競争を有利にするためにも医院のブランド力を高めることは重要です。 福利厚生の充実や職場環境の改善、ワークライフバランスの実現などの取り組みが考えられます。 ・賃上げ促進税制の適用 賃上げ促進税制は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、 従業員の給与支給額を前年度より増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。 最低賃金の引き上げにより人件費が前年度より増加することは充分に考えられるため、 決算申告時に適用することを忘れないようにしましょう。 4.最後に 今年度の最低賃金の引き上げ額は、物価上昇を踏まえてこれまでで最も大きくなっています。 発行後は多くの医院が時給を引き上げ採用競争が激しくなることが予想されるため早めの求人、 採用活動が必要となってくるかもしれません。 最低賃金引き上げに伴って医院が取るべき対策について、少しでも本記事を参考にしていただければ幸いです。 最低賃金は雇用形態に関わらず全ての労働者に適用されるため下回っていないか今一度確認しておきましょう。 ☞ 医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年10月24日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

故郷を応援できる ふるさと納税(2023.10.17)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 1.ふるさと納税とは ふるさと納税は、自分が応援したい都道府県や市区町村といった「自治体」に寄附ができる制度のことです。 寄附をした自治体からは、そのお礼として地域の特産物等の「返礼品」がもらえます。ふるさと納税した金額を申告することにより、 本来納める税金から寄附した金額の一部を控除することができるため、人気が高い制度となっています。 2.対象となる方 ふるさと納税は誰でも利用ができる制度です。 しかし、所得税や住民税の納税額が発生していない場合は、控除される税額がないので、メリットはありません。 年間の給与所得が103万円以下の方や、住民税が非課税になる方は納税額が発生していないケースが多いので注意が必要です。 3.メリット 本来はお金で負担すべき所得税や住民税を寄附に回すことで、 返礼品が貰えて尚且つ寄附金額のうち2,000円を超える部分については一定額の税額控除ができることです。 また、居住地の自治体に税金を払う代わりに、故郷等の思い入れのある自治体へのふるさと納税を行うことで、 自分にゆかりのある場所を応援するということもできます。自治体によっては福祉や教育、産業振興など用途を指定しての寄附も可能です。 応援したい分野がある場合には、その分野で寄附金が使われるように選ぶこともできます。 4.注意すべき点 (1)寄附金額の上限をシュミレーションする必要があること 控除を受けられる金額には上限(控除上限額)があります。 上限を超えた寄附金額については、税額控除が適用されないため自己負担となってしまうので注意が必要です。 控除上限額は、納めている税金の金額によって異なり、年収や家族構成、その他の所得控除(障がい者控除、生命保険料控除等々)、住宅ローン控除の有無によって決まります。 各ふるさと納税のポータルサイトにおいて用意されている「シミュレーションツール」を使って、控除上限額を調べてから寄附を行いましょう。 (2)申告の必要があること 所得税及び住民税の税額控除を受けるためには申告が必要となります。 年収2,000万円以下の給与所得者など確定申告が不要な方で、寄附先が5自治体以内である場合 (1つの自治体に複数回寄附をしている場合は、その回数ごとにカウントされます)については、ワンストップ特例制度を利用することができます。 ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくても寄附金控除が受けられる便利な仕組みであり、 「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入して、寄付した自治体に提出します。 上記に当てはまらない方は、確定申告を行うことになります。 従来確定申告にて行う場合は、各自治体からの寄附金受領証明書を確定申告書に添付する必要がありました。 しかし現在は、ふるさと納税のポータルサイトよりダウンロードできる「寄附金控除に関する証明書(データ)」を 確定申告書に添付することにより、寄附金控除を受けることが可能となりました。 「寄附金控除に関する証明書」とは、ふるさと納税の特定事業者が発行する証明書であり、年間のふるさと納税の履歴が記載されています。 この証明書を確定申告書に添付することが認められたため、従来のように数多くの寄附金受領証明書を管理する必要もなくなりました。 証明書を発行することができる特定事業者については下記の国税庁のHPをご覧ください。 国税庁長官が指定した特定事業者(令和4年10月13日現在)|国税庁 (nta.go.jp) (3)節税にはならないこと ふるさと納税は寄附金額が所得控除とはなるのですが、寄附を行った自治体に払っているので寄附金額が控除されるという制度であり、 トータルで支出しているお金は変わらず、節税にはなりません。しかし、返礼品をもらえるといったメリットがあります。 5.おわりに ふるさと納税は所得控除もできて、返礼品ももらえるお得な制度です。注意すべき点を押さえつつ、有効に活用しましょう。

その節税対策は本当に大丈夫!?節税の種類をマスターして適切にキャッシュを残そう(2023.09.26)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 昨今はコロナ関連の補助金等の影響もあり、利益が大幅に増加している病院・診療所については節税対策を検討しているところも多くあると思います。ただし、節税対策を安易に行うとキャッシュを損なうこともあるため注意が必要です。そこで今回は節税対策について節税の種類と落とし穴について解説いたします。 目次 1. 節税対策とは? 2. 節税の種類 3. 巷で言われている節税はどの種類に該当するのか? 4. 節税対策の分類 5. (1) 支出があり、税額を減らす節税や (3) 支出があり、納税を遅らせる節税でも有効なケース 6. 病院・診療所にとっては 節税 < キャッシュ 1. 節税対策とは? 節税対策とは、利益が大幅に出ており、納税額が多額になると見込まれる場合、納税額を抑えるために行われる対策のことを言います。決算の直前に行う「決算対策」もこれに含まれます。 2. 節税の種類 節税には次の4つの種類があります。 (1) 支出があり、税額を減らす節税 (2) 支出がなく、税額を減らす節税 (3) 支出があり、納税を遅らせる節税 (4) 支出がなく、納税を遅らせる節税 節税対策としてはどれも有効ではありますが、特に(1) 支出があり、税額を減らす節税や(3) 支出があり、納税を遅らせる節税はキャッシュアウトを伴いますので実行する場合は慎重に検討する必要があります。 3. 巷で言われている節税はどの種類に該当するのか? 昨今はインターネットやSNSなど様々な媒体から節税の情報を得ることが出来ます。その中でも決算直前であっても実行可能な対策については人気があり、そのニーズを満たす節税商品も存在しています。 ただし、決算直前でも実行可能な対策の多くは上記の(1) 支出があり、税額を減らす節税や(3) 支出があり、納税を遅らせる節税に該当するものが多く、納税額を減らす(遅らせる)ことは出来てもそれ以上にキャッシュアウトしていることが多いです。 例えば有名な節税方法の一つとして短期前払費用というものがあります。短期前払費用とは、家賃や保険料など毎月同等のサービスを受けている場合に、支払いを月払いから年払いに変更することで支払額を経費計上する方法です。仮に毎月の家賃が100万円で決算直前に年払いに変更して1200万円を支払うことでその期については経費を多く計上することが可能です。しかし、節税額が支出額を超えることはないため、結果としてキャッシュが減少してしまいます。本来はキャッシュを多く残すことが節税の目的にも関わらず、「お金が減ったのでその分節税になりましたね・・・」という本末転倒な結果になるケースも多いです。なので節税対策を検討する場合はその対策が上記(1) ~(4) のどの種類に該当するのかを見極める必要があります。 4. 節税対策の分類 では、各節税対策について上記(1) 〜(4) に分類した上で簡単に解説いたします。 (1) 支出があり、税額を減らす節税 ・決算賞与 夏・冬とは別に決算期に賞与を支給する方法です。決算日後に支給する場合は一定の要件もあります。 決算賞与の特徴としては節税対策の手軽さで、支給さえ行えば節税が可能です。その他メリットとしては業績を従業員に還元する訳ですからモチベーションUPに繋がる点です。 決算賞与は基本的には(1) 支出があり、税額を減らす節税 に該当します。 ・非常勤役員への役員報酬の支給 親族などを非常勤役員として登用し役員報酬を支給する方法です。役員報酬額については限度額があるため要注意ですが、普段出勤していない役員であっても、役員は医療法人の運営についての責任がある関係上月額5〜15万円程度であれば支給することが可能です。これも(1) 支出があり、税額を減らす節税 に該当しますが、支出先が親族なので(2) 支出がなく、税額を減らす節税 と考えることもできます。 (2) 支出がなく、税額を減らす節税 ・賃上げ促進税制 前年と比較して給与総額が1.5%増加した場合に給与増加額の15%を税額控除出来る制度です。2.5%増加でさらに15%控除、教育訓練費が前年比10%増であればさらに10%税額控除となり、最大で40%の税額控除を受けることが可能な制度ですので、人件費が自然増している場合は税額控除額がかなり大きくなることもあります。 また基本的には(2) 支出がなく、税額を減らす節税 に該当しますが、例えば自然増が1.4%で適用を受けるために賞与などを0.1%分増額させる場合は(1) 支出があり、税額を減らす節税の要素もあるかも知れません。 ・貸倒損失(形式基準) 貸倒損失は通常取引先の倒産、会社更生法の適用などにより売掛金等の残高を経費化するものですが、売掛債権に限りその取引先と1年以上取引・入金が無い場合等一定の場合に形式的に貸倒損失が計上出来るもので、病院・診療所の場合は患者さんに対する長期窓口未収金がこれに該当します。資金の流出を伴う節税ではないため(2) 支出がなく、税額を減らす節税に該当します。 (3) 支出があり、納税を遅らせる節税 ・短期前払費用 上記で解説した通り、家賃などの費用を年払いにして経費計上する方法です。基本的には(3) 支出があり、納税を遅らせる節税 に該当しますが、半永久的に賃借・契約するものであれば(1) 支出があり、税額を減らす節税 に該当する、という考え方も出来るかもしれません。 ・経営力向上計画による特別償却 一定の要件を満たした設備投資について即時償却(投資額が全額経費に入る)が行える制度です。基本的に設備投資前に経営力向上計画の認定を受ける必要があります。即時償却は設備投資年度に多額の経費算入が可能ですがあくまで来期以降の減価償却費の先取りですので基本的には(3) 支出があり、納税を遅らせる節税 に該当します。ただ元々設備投資を計画していた場合は(4) 支出がなく、納税を遅らせる節税 と考えることもできます。また特別控除(設備投資額の10%を税金から控除)の場合は(1) 支出があり、税額を減らす節税 又は(2) 支出がなく、税額を減らす節税 になります。 なお、病院・診療所の場合投資として認められる範囲がかなり狭くなっており、医療機器以外の備品やソフトウェア等が対象となっております。 ・養老保険(福利厚生プラン) 死亡保険を従業員(原則全従業員)に掛け、保険料の半分を経費に計上する方法です。満期保険金の受取人を法人とすることで満期時(通常は定年などを満期に設定)に満期保険金の受取が可能です。保険料支払い時に経費計上出来ますが、満期時には収益計上が必要となるため(3) 支出があり、納税を遅らせる節税に該当します。 (4) 支出がなく、納税を遅らせる節税 ・固定資産税の未払計上 固定資産税は年4回(例:6月・9月・12月・2月(自治体により異なる))支払いますが、納付義務自体は納税通知書が送られてくる4・5月頃に確定するため未払計上が可能です。支出を伴わず経理処理のみで実行可能なため(4) 支出がなく、納税を遅らせる節税に該当します。 ・経費の帳端計上 経費については通常各月初から月末の1ヶ月分をまとめた請求書が届き買掛未払計上を行いますが例えば20日締めの仕入先がある場合21〜30日についても買掛未払計上が可能です。これも経理処理のみですので(4) 支出がなく、納税を遅らせる節税に該当します。 如何でしょうか?将来のキャッシュも考えると一番良いのは(2) 支出がなく、税額を減らす節税です。多少キャッシュアウトをするケースもありますが最終的に返ってくればキャッシュは増えます。 反対に注意が必要なのが(1) 支出があり、税額を減らす節税と (3) 支出があり、納税を遅らせる節税、特に(3)です。(3) については納税を将来に繰り延べているだけですのでそのツケが将来回ってきます。そしてそのツケを払うためにまた新たな(3) の節税を行う・・・と無限ループのようになってしまっている病院・診療所もあります。 また節税策1つ取っても状況や目的によって(1) ~(4) の数字が変動することがあります。特に元々設備投資や給与の増額を予定していた場合は(新たな)支出を伴わない節税として(2) 支出がなく、税額を減らす節税 (4) 支出がなく、納税を遅らせる節税 に該当すると考えます。なので病院・診療所の状況に応じて(1) ~(4) のいずれに該当するのかを判断する必要があります。 5. (1) 支出があり、税額を減らす節税や (3) 支出があり、納税を遅らせる節税でも有効なケース 上記では(1) (3) の節税策を実行する場合には注意が必要と述べましたが(1) (3) の節税策でも有効なケースもありますので代表的なものを紹介いたします。 ・赤字の関係会社への短期前払費用の支払い 短期前払費用について関係会社への家賃を年払いとして1200万円支払う場合、支払った会社は支払額が経費になりますが受け取った側は当然に課税されます。ただし受け取った会社にそれ以上の欠損がある場合にはとりあえずは税金が発生しませんのでグループ全体のキャッシュは増えることとなります。欠損金が期限切れ直前の場合は得に有効な方法となります。 ・出資持分対策 法人税だけ見ればキャッシュアウトしている節税策でも出資持分の相続税評価を下げて出資持分を次世代に贈与する場合などは有効な節税手法になり得ます。なお実行する場合には相続税・贈与税も踏まえた詳細なシミュレーションを行う必要がありますので難易度は上がります。 ・そもそも投資として成り立つ (3) 支出があり、納税を遅らせる節税で紹介した養老保険、特に外貨建てのものは投資商品としての側面も持ち合わせています。こういった商品は繰り延べた税金が最終的に課税されますが、そもそも投資としてキャッシュが増えることを見越すのであれば(節税はある意味おまけ程度に考える)最終的に課税されたとしてもキャッシュはプラスですので手法としては有効と考えられます。 また福利厚生を主目的として活用するのであれば同じく手法としては有効です。 6. 病院・診療所にとっては 節税 < キャッシュ セカンドオピニオンはむやみに利用するものではありませんが、いざという時に企業をリスクから守れることや、支出を抑えることでキャッシュを残すことができる可能性があります。また少なくとも新たな知識・経験を得ることができますので、必要な時に利用することをお勧めいたします。 ☞ 医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年9月26日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

承継に係る費用・相場【売り手】【買い手】(2023.09.19)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 医院の承継に係る費用(承継価格)は譲渡側にとっては引退後の豊かな生活資金のため、譲受側にとってはできる限り開業資金を抑えるためにより低くと、双方にとって非常に重要な関心事項です。今回は医院の事業承継でかかる大きな費用とその相場を見ていきます。 目次 1.譲渡価格 2.手数料 3. 買収監査(デューデリジェンス、DD) 4. おわりに 1.譲渡価格 医院の承継における譲渡価格は、営利企業のM&Aと同様に一定の手法で評価した医院の価値を元に、売り手・買い手間で交渉することにより決まります。この一定の手法というのは様々な考え方がありますが、医院の価値評価においてよく用いられる手法として、時価純資産で評価した金額に営業権を含めた金額で算定する方法があります。 「時価純資産」とは、資産の時価総額から負債の時価総額を控除した金額ですが、個人のクリニック・病院の場合には、時価資産のみで負債は譲渡されない場合もあります。 「営業権」は患者数であり、スタッフであり、クリニックの価格です。この「営業権」は医業における利益を元に数か月~数年分を乗じて計算します。 例えば、時価純資産が5,000万円、営業利益が3,000万円の医院で営業権を2年分とすると、5,000万円+3,000万円×2年=1億1,000万円が医院の評価額です。 上記で述べた純資産に着目して評価する方法の他にも、将来期待されるキャッシュフローから評価する方法(DCF法)など様々な手法があります。前者には客観性があり、後者は医院固有の性質を反映できるなど、それぞれの手法に長短があります。これらの方法で算定した金額は目安に過ぎず、最終的には売り手・買い手の合意によって双方が納得できる金額を交渉することで決定します。 2.手数料 医院の承継時に発生する大きな費用として、仲介会社やアドバイザリー会社といった専門家に支払う手数料があります。ここでの手数料には着手金・月額報酬・中間報酬・成功報酬があります。 どの費用が含まれているかは会社によって異なるため、事前の確認が必要です。一番大きな割合を占める成功報酬は、M&Aが成立した場合に、仲介会社などに支払う費用です。一般的な計算方法として、譲渡対価に応じた報酬料率を乗じるレーマン方式(図を参照)があります。手数料率が定められていても、最低報酬額が設定されている場合もありますので注意が必要です。 ※数値は目安です 3. 買収監査(デューデリジェンス、DD) 買収監査は財務・法務などの各種リスクを事前に洗い出すために買い手の費用負担で任意に行うものです。 買収監査を行うことで、譲渡対象医院の価値とリスクを把握し、譲渡価格に反映することができます。買収監査には高い専門性が求められるため、費用が少なくとも数十万円から、複雑なものになると数百万円となる場合もあります。 そのため比較的規模が小さい医院においは、簡易的な買収監査を行うことや、買収監査自体を行わないこともあります。 4.おわりに 今回は事業承継にかかる費用について紹介いたしました。 医院の事業承継は売り手にとっては引退後の生活資金、買い手にとっては開業費が低く抑えられることなどメリットがあります。 しかし、譲渡価格や費用の他に手続き面でも複雑な点が多くあります。適切なサポートを受けられるよう、医業の事業承継に強い専門家に相談されることをお勧めいたします。 制作年月:2023年9月19日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

介護保険事業のICT化とは?導入できることから始めて業務の効率化を図ろう(2023.9.11)
介護現場でICT化が進まない3つの理由とは?まずはできることから始めてみよう! 令和3年度の介護報酬改定でICT化に大きく舵がきられたことをきっかけに、ICT化は日常的に目にするようになりました。IT機器を導入することで、生産性の向上のみならず介護の質の向上や利用者の満足度向上につながる可能性があり、導入事業所数は年々増えています。ICT導入に際し、介護現場でのメリット・デメリットを踏まえ、導入を検討しやすい業務をご紹介します。 【ICT化とは何か】 まずICT化とは何かを整理しておきます。似たような用語として、IT化やDX化などがあります。これらとICT化の違いについてご説明します。 まずIT化とは、単なるデジタル機器の導入です。コンピューターやネットワーク機器を使って、生活や仕事を便利にすることをいいます。次にICT化とは、IT化をより進めて、業務の効率化とサービスの向上を図るレベルにまで引き上げることです。またDX化とは、ICT化をさらに推進して、仕事のやり方やビジネスモデルまで組織を根本から変えることです。 このようにそれぞれ実施する目的は異なります。ICT化においては機器の導入を行い、業務効率化やサービスの向上を実現させるといった全体像をあらかじめ理解しておきましょう。 【介護保険事業にとってのICT化とは】 介護保険事業にとって、ICT化の最大のメリットは情報共有です。IT機器を導入し、ネットワーク機能を活用して情報を共有し業務と効率化とサービスの向上を目指します。具体的には以下のようなIT機器を導入し、その結果サービスの向上や開発につなげていくことが挙げられます。 ・介護ソフトの導入 ・タブレットの導入 ・スマホの導入 ・インカムの導入 その結果として、次のような効果が期待されています。 ・間接業務に要する時間の短縮 (記録の省力化:音声入力、バイタルの自動転送) ・ミスの減少 ・ケアの質の向上 ・情報共有がスムーズに ・コミュニケーションの向上 さらに、介護現場をICT化することでいわゆるビッグデータの蓄積が可能となります。国が強力に推進しようとしている科学的介護、エビデンスに基づく介護サービスの提供も可能となるでしょう。見守り機器やインカム等を導入した場合には一定の条件のもとで夜間配置基準を緩和することができ、間接業務においても電磁的な説明・契約及び記録が認められました。 国はこれらの施策を進めるため厚生労働省老健局内に介護業務効率化・生産性向上推進室を設置して専門的な研究と情報発信をしています。 【介護現場でICT化が進まない3つの理由】 このようにITC化は介護現場で働く職員やサービスを受ける利用者にとっても大きなメリットがありますが、実際の介護現場ではなかなか進んでいないのが現状です。では、ICT化が進まない理由はどこにあるのでしょうか。一般にICT化を進めるにあたり、デメリットまたは阻害要因とされているものは以下の3点だと言われています。 ① 職員の賛同が得られない 目の前の業務に日々追われる職員にとって、業務フローが変わることは多くの場合ストレスとなります。今まで構築してきたやり方を変えることに難色を示す職員は少なからずいるでしょう。特に勤務年数の長い職員のほうがこの傾向が強いと思われます。 しかし、ICT化の目的は業務の効率化です。「今までのやり方で問題ないから業務フローは変えたくない」という意見では業務の効率化を進めることができませんので、いかに効率化が必要かを説明し納得してもらわなければなりません。なぜ今ICT化を進めなければならないのか、職員全員の意識を統一することが成功の鍵となるでしょう。 ② セキュリティ対策を強固にする必要がある ICT化はさまざまなIT機器を使用してインターネットをフル活用します。PCをはじめ、多くのIT機器をインターネットで接続するため、インターネット上での攻撃、いわゆるサイバー攻撃を受けやすい状態となります。そのため強固なセキュリティ対策を講じる必要があります。機密情報を多く取り扱う介護現場では情報管理が必須です。情報は水と同じで、低いところから漏れていきます。職員教育を徹底して情報管理意識を高め、セキュリティの穴を塞ぎ続けなければなりません。場合によってはセキュリティ担当職員を配置することも検討しなければなりません。 ③ 導入と教育に時間とコストがかかる ICT化を進めるときには、IT機器の導入だけでなく、機能を有効に活用できるように教育が必要です。ICT化は業務の効率化を目的としているので、仕事の進め方そのものが変化することも多くあります。そのため研修などを通して継続した教育を行うことはもちろん、場合によっては取引先などにも周知が必要になることもあります。 【世界から見た日本のデジタル競争力】 電車に乗ると、ほとんどの人がスマートフォンを触っています。IT機器の普及はかなり進んでいることが実感できます。 しかし、IT機器は十分に活用されているのでしょうか?これらをみる指標として、世界デジタル競争力ランキングというものがあります。これはスイスのIMD(国際経営開発研究所)が毎年発表しているもので、これによると日本は毎年順位を下げており、2022年度は世界第29位でした。アジア諸国でもシンガポール、香港、台湾、韓国、中国などに大きく後れをとっています。 日常生活ではIT機器の普及はかなり進んでいることが実感できますが、これらを活用して業務を効率化したり、サービスを向上させたりといったことにはまだ十分に活かされていないということでしょう。まず介護現場で何ができそうか、限られた時間とコストの中で優先してすべきことを社内でしっかり議論することが必要です。 【ICT化の目的を決め、導入できるところから始める】 そのためにはICT化の目的をはっきりさせなくてはなりません。何のためにやるのかについて職員全員で共通認識を持たなければ進みません。 介護現場で共通認識を持ちやすく、実感できることはまず記録の効率化でしょう。介護記録は職員にとって大きな負担となっています。ICT化を考える際にはまず手始めに、記録の効率化を目指してみてはどうでしょうか。食事や排せつ、バイタルの記録なども転記することなく記録できるものもあります。これらを使用して職員に業務の効率化を実感してもらい、検証と評価を繰り返して職場にマッチしたものにしていきましょう。 また、見守りセンサーやインカム導入も前向きに検討できます。センサーは特に夜間など配置が少ない時間帯は有効であることがわかっています。インカムを使用すれば介護現場を離れることなく情報交換と情報共有が可能となります。 介護人材の確保難は今後も続きます。ICT化の推進は介護現場の喫緊の課題です。今までと同じやり方では通用しなくなる日が近づいていることを職員全員で認識して、業務の効率化を推進し、サービスの向上につなげていくことが期待されています。

【知っておきたい】クリニックの承継開業のメリット・デメリット、第三者承継(M&A)について(2023.08.29)
<著者> 辻・本郷税理士法人 ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治 近年、一般診療所における第三者承継(M&A)の話をよく耳にするようになりました。医療法人や個人事業の診療所において、よくあるのは親族内での事業承継ですが、親族の中に承継者がいない場合は、親族以外の第三者に承継するケースが増えてきています。 第1回:【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント ~事前準備編~ 第2回: 【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント~資金調達・広告編~ 目次 01:はじめに 02:新規開業、承継開業メリット・デメリット 03:承継方法 04:第三者承継(M&A)時の手続き 4-1:診療コンセプトと基本条件の整理 4-2:M&Aコンサルティング会社などの仲介業者や専門家へ依頼 4-3:秘密保持契約(NDA)の締結、コンサルティング契約の締結 4-4:売り手のクリニックと面談 4-5:意向表明書の提出 4-6:基本合意書の締結 4-7:デューデリジェンス(買収監査)の実施 4-8:最終契約書の締結 4-9:契約内容の履行 01:はじめに 近年、一般診療所における第三者承継(M&A)の話をよく耳にするようになりました。医療法人や個人事業の診療所において、よくあるのは親族内での事業承継ですが、親族の中に承継者がいない場合は、親族以外の第三者に承継するケースが増えてきています。 帝国データバンク医療機関の休廃業・解散動向調査(2021 年)によると、医療機関の休廃業・解散時における代表者年齢は、診療所で70歳代以上が42.0%、60歳代が40.5%、50歳代が14.6%となっており、高年齢での廃業・解散が加速することが伺えます。また日医総研ワーキングペーパー(2020年)では、医療機関経営者の8割以上が引退時期を正式に決めておらず、有床・無床診療所での後継者不在率が全国で86.1%と非常に高くなっており、このようなデータからも、今後も高齢化継承が多くなると推定されます。 医療法人・個人が第三者に事業を譲る場合は、事業そのものを譲渡するパターン、医療法人の持分を譲渡するパターン、あるいは医療法人内の分院のみを譲渡するパターンなど、様々なパターンが考えられます。また検討事項が多く、様々なプロセスを踏む必要があるため、売却をご希望の先生にとって事前の準備は早ければ早い方が良いと言われています。買い手候補となる法人・個人も十分な検討と時間が必要です。 第三者承継を活用して早期の開業を目指す場合は、通常の新規開業だけでなくM&Aにも強い専門家に相談してスムーズに進めていきましょう。 02:新規開業、承継開業メリット・デメリット 「承継開業」と「新規開業」の違いは何でしょうか。メリット、デメリットを確認してみましょう。 新規開業 承継開業 メリット ・クリニックの方針を含め、すべて自由に決められる ・新しい医療機器やその他設備を導入することができる ・カルテを引き継ぐことができるため、既存の患者がいる状態で経営を開始することができる ・既存のスタッフを引き継ぐことができる ・内装工事などが基本的に不要なため短期間で開業できる ・収支の予測が立てやすい デメリット ・一から集患を行う必要があるため、安定した収入を得るまでに時間がかかる ・スタッフの採用を行う必要がある ・開業後の収支予測が困難である ・その他検討事項が多く時間がかかる ・老朽化した建物や旧式の機器を引き継ぐ可能性がある ・既存の従業員と新たな経営陣との関係が必ずしも良好にいくとは限らない 一概にどちらが望ましいというわけではなく、ご自身の開業方針に沿ってより適切な方法を取ることが肝心です。新規開業、承継開業どちらに際しても、はじめの一歩は「基本構想の決定」が非常に重要になります。「基本構想の決定」は、【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント(2022.12.26) ~事前準備編~に掲載していますので、ご一読いただくことをお薦めいたします。 03:承継方法 次に、主な承継方法と売り手側からみたメリット・デメリットについてみてみましょう。医療法人・個人が第三者に譲る場合は様々なパターンがあると先述しました。承継開業で診療所を譲り受けたいと考える方にとって、予め事業承継方法を知っておくと自身が承継する際にも有効です。 親族内承継 院内承継 第三者承継 メリット ・利害関係者から理解を得られやすい ・徐々に引継ぎを行うことができ、経営者として教育ができる ・持分ありの場合、相続や生前贈与により、費用を抑えることができる ・社内から経営者として適切な候補者を選定することができる ・社員であれば、経営方針を把握しており、現状の経営を継続することができる ・社内に後継者がいなくても、法人を継続することができる ・法人が維持されるため、利害関係者や従業員との関係を維持することができる ・経営者は第三者に法人を売却するため、売却益を得ることができる デメリット ・適任者がいない可能性がある ・医院に携わってない親族が承継した場合、従業員、利害関係者の理解を得ることができない ・相続、生前贈与の場合、後継者の持分が多くなるため、相続人が複数の場合、引継ぎが困難になる ・持分ありの場合、持分を後継者に譲渡しなければならない ・経営者が法人の債務保証をしている場合には、後継者に引き継ぐのが困難である ・買い手候補とマッチングすることが難しい ・承継を行うにあたり、長い時間を要する ・経営者が変わるため、今までの取引先や従業員が離れてしまう恐れがある 第三者承継(M&A)において特に留意すべきは、経営方針の相違や方針変更で、それまで勤務していた従業員や患者がその医院に対し、不信感を募らせてしまわないようにすることです。後継者と従業員との間でのトラブルは、従業員の離職や患者離れを引き起こす可能性があり、この点がM&Aで多いトラブルと言えます。ご自身が決めた「医院の基本構想」と引き継ぐ診療所の「経営方針や理念」についてしっかり時間をかけて、吟味し確認していきましょう。 04:第三者承継(M&A)時の手続き 実際にクリニックを第三者から承継して開業するには、どのような手続きが必要なのか、その概要を説明いたします。大まかな流れとしては次の通りです。 【手続き一覧】 1.診療コンセプトと基本条件の整理 2.M&Aコンサルティング会社などの仲介業者や専門家へ依頼 3.秘密保持契約(NDA)の締結 4.売り手のクリニックと面談 5.意向表明書の提出 6.基本合意書の締結 7.デューデリジェンスの実施 8.最終契約の締結 9.契約内容の履行 4-1:診療コンセプトと基本条件の整理 新規開業とは異なり、既に稼働しているクリニックの物件や設備を引き継ぐため、先生ご自身がやりたい診療が場合によっては制限される可能性があります。 承継開業の診療コンセプト(診療方針、基本計画)や希望する開業地、金額感など検討し、承継元となるクリニックを探しましょう。 4-2:M&Aコンサルティング会社などの仲介業者や専門家へ依頼 診療コンセプトを決めたら、医業承継を得意とするM&Aコンサルティング会社などの仲介業者や専門家へ相談をしましょう。 ご自身のコンセプトにマッチしたクリニックを複数紹介してもらえるので、その中でより希望に近いクリニックを選定していきます。基本的にこの段階では売り手候補の名称や実際の場所などの細かい情報は確認できません。 4-3:秘密保持契約(NDA)の締結、コンサルティング契約の締結 検討したいクリニックが見つかりましたら、相手先の個人情報や交渉で得た機密情報を外部に漏らさないように、コンサルティング会社と秘密保持契約(NDA)の締結をします。NDAの締結後に、クリニックのより詳細な概要書を確認できる形となります。 また、この段階で同時にコンサルティング契約を締結することが多いです。 4-4:売り手のクリニックと面談 売り手となるクリニックに訪問し、現院長と面談をします。概要書で事前に情報を確認しますが、外見、クリニック周辺の環境など確認し、設備なども実際に目でチェックしましょう。現院長との面談では、診療方針や現在の経営状況などをしっかり把握し、コンサルタントと相談をしながら、改めて本当に希望にマッチするクリニックであるかを確認しましょう。 4-5:意向表明書の提出 面談をして希望にマッチすれば、買収への意思表明を示す意向表明書を売り手へ提出します。記載する内容としては、譲渡額や譲渡形式、その他条件(既存スタッフの処遇や法人の場合は役員構成など)提示することになります。この意向表明書は法的拘束力を有するものではないですが、売り手視点で買い手先の候補が多い場合は、この意向表明書を参考に選考をします。 この意向表明書は必ずしも作成をするものではなく、時間が限られている場合などは省略するケースもあります。 4-6:基本合意書の締結 承継に関する条件のすり合わせを行ったら、売り手と買い手の認識を共通化するために、承継時期や譲渡対価、スタッフの引継ぎ(医療法人は役員含む)等の詳細を整理した基本合意書の締結を行います。 なお、基本合意書は法的拘束力を有するものではありませんが、後々トラブルが起きないよう、作成を推奨します。 4-7:デューデリジェンス(買収監査)の実施 基本合意書の締結後は、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとはクリニックの承継にあたり、そのクリニックの価値評価、抱えるリスクの把握が主な実務内容です。最終的な意思決定に資する手続きとなります。 承継するクリニックの規模が小さい場合や金額面など考慮して省略するケースもあります。 4-8:最終契約書の締結 デューデリジェンスが完了し、売り手側と買い手側の条件が合致したら、最終的な契約書を作成します。 また、基本合意書とは違い法的拘束力を有するものとなります。 4-9:契約内容の履行 最終契約の締結後は、売り手が法人か個人かにより、踏む手続きが異なります。最終契約に基づき経営権を移転する手続きを行い、M&Aの手続きは完了となります。医療法人の出資持分譲渡の場合では、出資持分の譲渡によって経営権の移転が行われ、買い手から対価の支払いなどが行われます。同時に、前経営者が社員・理事を退任し、経営者の交代が行われます。 医療施設M&Aに独特のプロセスとして、施設の廃止と開始、経営者の交代などに関して、行政に対する調整が必要な場合があります。M&A仲介会社のアドバイザーなどがサポートしてくれます。 次回はM&Aの実務として個人として承継開業をする場合と医療法人を承継して開業する場合のその実務面の比較をしていきます。 <著者> 辻・本郷税理士法人 ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治 制作年月:2023年8月29日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

利用しないとソン?税理士事務所のセカンドオピニオンを利用するメリット・デメリットとは?(2023.08.22)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 セカンドオピニオンは医療の分野でよく使われる言葉ですが、税理士業界にも顧問税理士が判断した処理に対して、別の税理士に意見や助言を求めるサービスがあります。 今回は税理士のセカンドオピニオンについて説明いたします。 目次 ■税理士業界のセカンドオピニオン 【1】 セカンドオピニオンのメリット(節税・経費削減の余地や税務リスクを発見するものの場合) 【2】 セカンドオピニオンのデメリット 【3】「組織再編などの特殊業務の相談に応じるもの」の特徴と相違点 【4】「申告書の提出後により適正な申告を行うことで税金の還付を目指すもの」の特徴と相違点 ■セカンドオピニオンは企業を守るための有効な手段 ■セカンドオピニオンサービス「税務ドック」は期間限定でキャンペーン中 ■税理士業界のセカンドオピニオン 税理士業界には 【1】 節税・経費削減の余地や税務リスクを発見するもの 【2】 組織再編などの特殊業務の相談に応じるもの 【3】 申告書の提出後により適正な申告を行うことで税金の還付を目指すもの(相続税申告に多い)など、様々なセカンドオピニオンサービスがあり、活用することで税務リスクの軽減や資金繰りの改善に繋がる可能性があります。 【1】 セカンドオピニオンのメリット(節税・経費削減の余地や税務リスクを発見するものの場合) (1) 新たな節税・経費削減の実行により支出を抑えることができる可能性がある このタイプのセカンドオピニオンのそもそもの目的ではありますが、現在の会計事務所が気付くことができなかった節税・経費削減策の提案・実行により、支出を抑えることができる可能性があります。 (2) 複数の税理士によるダブルチェックが可能 セカンドオピニオン全般に言えることですが、現在の税理士とセカンドオピニオンを依頼した税理士によるダブルチェックが可能です。節税・経費削減で言えば元々の税理士に実行ができないと言われていた節税に関して本当に実行ができないのかを確認すれば、より密度の高いダブルチェックが可能です。 (3) 良い税理士に出会える可能性がある 普段の業務の中で顧問税理士以外の税理士と話す機会はあまり多くないと思いますし、サービスを実際に受けることは稀だと思います。そんな中、セカンドオピニオンサービスを利用することで新たな税理士と出会うことができますので、必然的に良い税理士に出会える確率が上がります。 (4) 税理士の質がある程度判断できるようになる(ベンチマーク) 上記の(3)でも述べているところでもありますが、税理士とは基本的に出会うことは少ないので、どうしても現在の税理士が基準となります。そこでセカンドオピニオンを利用することでご自身の中で税理士の質の基準(ベンチマーク)を持つことができます。 【2】 セカンドオピニオンのデメリット (1) 既存の顧問税理士との関係が悪化する可能性がある 既存の顧問税理士にセカンドオピニオンサービスを受けると伝えると、良く思われない方もいらっしゃるため、関係性が悪くなる可能性があります。特に「節税・経費削減の余地や税務リスクを発見するもの」であれば、サービスを受ける目的を明確に説明しにくいため、その可能性は比較的高くなります。 なお弊社でも税務ドックという同様のセカンドオピニオンを行なっておりますが、現在の顧問税理士の先生にお伝えすることなくサービスを進めることも可能となっております。 (2) セカンドオピニオンの意見も100%ではない 仮に現在の顧問税理士に不満があってセカンドオピニオンを受けた場合であっても、セカンドオピニオンの税理士の意見が100%正しいとは限りません。さらにセカンドオピニオンは限られた時間の中で作業を行う反面、現在の税理士は長年の付き合いから現状を深く理解している関係上、現在の税理士の方の意見が正しい可能性もあります。 (3) コストがかかる セカンドオピニオンについては原則としてコストが追加でかかります。そのため何となく受けてみるというよりは、現在の顧問税理士から「節税・経費削減の提案を全く受けていないし、何か漏れている可能性がある」などの理由でない限りは、サービスを受けない方が良いかもしれません。 【3】「組織再編などの特殊業務の相談に応じるもの」の特徴と相違点 「組織再編などの特殊業務の相談に応じるもの」については取引の金額が大きく、その分税務リスクも大きいことから行われることが多く、ダブルチェックの意味合いが大きいです。 このタイプの場合はデメリットの「(1) 既存の顧問税理士との関係が悪化する可能性がある」については、セカンドオピニオンを行う目的が明確でリスクもお互いに大きいことが理解できるため、問題とならないことが多いです。 【4】「申告書の提出後により適正な申告を行うことで税金の還付を目指すもの」の特徴と相違点 「申告書の提出後により適正な申告を行うことで税金の還付を目指すもの」について、税制においては更正の請求という方法で過去の申告を修正し還付を申請することができる制度があります。(原則5年前まで) この制度を利用して過去の申告の誤りを発見してもらい還付額の◯◯%の成功報酬を支払う、というセカンドオピニオンサービスです。このタイプの場合はデメリットの「(3) コストがかかる」について完全成功報酬型が多く、成功しない限りは費用が掛からないためデメリットが比較的軽減されています。 ■セカンドオピニオンは企業を守るための有効な手段 セカンドオピニオンはむやみに利用するものではありませんが、いざという時に企業をリスクから守れることや、支出を抑えることでキャッシュを残すことができる可能性があります。また少なくとも新たな知識・経験を得ることができますので、必要な時に利用することをお勧めいたします。 ■セカンドオピニオンサービス「税務ドック」は期間限定でキャンペーン中 弊社では「税務ドック」という節税・経費削減余地を発見するセカンドオピニオンサービスを行っております。 通常料金は55万円(税込)ですが「税務ドック」の提供開始3周年を記念し、またセカンドオピニオンサービスのリスクを限りなく0にし、より多くの方に「税務ドック」を試していただきやすくするため、現在無料キャンペーンを行っています。(2023年10月15日までのお申込に限ります。) セカンドオピニオンサービスにご興味のある方は、この機会に「税務ドック」を利用されてはいかがでしょうか。 「税務ドック」についての詳細は以下のページをご参照ください。サービスの具体的な流れや過去の事例、Q&Aなどを掲載しています。 (税務ドックについてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年8月22日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

求人倍率15倍の訪問介護 ニーズ対応いかに(2023.8.18)
効率化と正社員化・大規模化で好循環へ 訪問介護事業者がとるべき戦略を徹底解説! 求人倍率15倍の訪問介護 ニーズ対応いかに 【サブ見出し】 効率化と正社員化・大規模化で好循環へ 【リード】 24年度介護報酬改定が目前に迫る中、介護業界、特に訪問介護業界では人材不足が顕著となり、経営に大きな影響を与えている。人材採用にかかるコストの増大、訪問介護員の高齢化、人材確保がままならず事業所閉鎖となるケースまである一方で、2040年に向けて在宅介護ニーズは増加の一途をたどっている。次期改定を踏まえ、今後の訪問介護事業者がとるべき戦略にはどのようなものがあるのだろうか。スターコンサルティンググループ(東京都千代田区)の糠谷和弘社長に話を聞いた。 【本文】 ■「訪問+通い」の新サービス類型創設 新類型創設の背景にあるのは、訪問介護人材の不足です。有効求人倍率は15倍に上ると言われる中、訪問介護サービスを受けたくても受けられない「訪問介護難民」も激増しているのが現状です。そこで、デイサービス事業所で訪問介護までカバーできる仕組みとすることで、この訪問介護のニーズに既存資源で対応していくことが目指されています。 〈図〉複合型サービスの予測と懸念点 この新類型は地域密着型サービスの枠組みに位置づけられる予定ですが、これは地域ごとにマネジメントさせること、乱立を防ぐことが目的と考えられます。また、いまのところは要介護度別の包括報酬になる予測ですが、一定の参入を要するためには魅力的な水準で、かつ利用定員も多く設定しないと参入が進みませんし、ケアマネジャーの配置についても、在宅ケアマネが継続して対応できないと利用が進みません。また、デイの職員が訪問介護までこなせるようにするのであれば、訪問担当者に必須の「介護職員初任者研修」の修了を不要にすべきと考えます。 ただし、これらが期待通りとなり参入が促進されたとしても、デイ事業者にとってはオペレーション上非効率になったり、利益が見合わなかったりといった障壁が想定されます。大きなビジネスチャンスとなるような要件にならない限り、訪問介護事業者が影響を受けるほどの普及にはならないのではないでしょうか。 ■〝訪問介護難民〟のニーズに対応 よって、新類型の創設を以てしても〝訪問介護難民〟は解消されないと考えられることから、やはり訪問介護事業者に対応が求められます。外国人介護人材の活躍の場を訪問系サービスにも広げようとする国の議論も進んでいますが、現状ではまだ対応できないため、国内のリソースでなんとかせざるを得ません。限られた人材で多くの利用者に対応していくためには、業務の効率化が不可欠です。 訪問介護事業者は①正社員化②ICT化③直行直帰・フレックス制度の導入――を前提に仕組みを構築しましょう。まず①については、現在多くの訪問介護事業者がとっている登録ヘルパーのモデルでは、利用者とヘルパーとをマッチングする手間が発生します。ヘルパーを正社員化することで、人材の安定化、質の向上を図ることができます。 ただ、正社員として募集しても、採用が難しいことには変わりはありません。他社よりも好条件にすることは不可欠です。そのためには、1人のヘルパーの稼働時間、訪問人数を最大化できるように、集客することも重要でしょう。 また、②ICT化が前提とはなりますが、介護記録システムとタブレットなどを活用することで、③直行直帰・フレックス制度の導入が可能となります。利用者宅と事務所とを往復する移動の無駄がなくなり、自宅やカフェなどで記録業務ができるため、より多くの利用者に対応できるようになるでしょう。 そして何より重要となるのは「交渉術」です。午前中や夕方など、利用者がサービスを利用したい時間帯は被ってしまうものです。しかし、多くの利用者に対応するためには、希望時間とは異なる時間であっても納得してもらえるよう交渉し、スケジュールを組むことが重要です。 ■〝大規模化〟で人材定着 訪問介護事業所1ヵ所のみを運営する事業者も多いと思います。しかし、1事業所に3人などの勤務では、長期休暇はおろか休憩時間も確保しにくいのではないでしょうか。 そこで、7~10人の職員を雇用し、複数人で介護にあたることを提案します。複数人で介入することでサービスの質も向上しますし、よくある「担当ヘルパーが他法人に転職したところ、利用者が一緒に離れてしまった」などのケースを防ぐことにもつながるでしょう。 業務効率化で仕事の量と質を高め、正社員化と大規模化で人材が定着する。この好循環を目指した業務改革が目指されます。

「承継の流れ・必要な手続き【売り手】【買い手】」(2023.08.15)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 目次 1.条件の整理 2.M&Aの流れ ①条件の整理 ②専門家を探す ③トップ面談 ④基本合意契約 ⑤デューデリジェンス ⑥最終交渉・最終契約 ⑦クロージング おわりに 1.条件の整理 医院の承継とは現在開業しているクリニックを譲り渡し医院経営を続けることをいいます。承継方法は大きく分けて3通りあり、親族内承継、従業員承継、第三者承継(M&A)があります。 今回は近年増加傾向であるM&Aについてご説明いたします。 2.M&Aの流れ M&Aをする場合の売り手と買い手の流れを大まかに示すと次の通りです。 ①条件の整理 売り手は承継時期や希望金額を整理しましょう。その際に医院の資産・負債も明確にしておきましょう。 買い手は承継時期・金額の他に希望する場所や診療コンセプトを明確にしておくと良いでしょう。 ②専門家を探す 承継の手続きを進める前に、まずは専門家に相談しましょう。ここでの専門家は、M&Aを取り扱う税理士を含む士業や民間のM&A事業者、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センター等が挙げられます。主な契約は仲介契約とアドバイザリー契約の2つの形態があります。 医業における承継は株式会社の承継と異なる特徴が複数あるため、医業に強い専門家を探されることをお勧めします。 承継においては手続きの過程で組織や財務などの医院の重要な情報を第三者へ開示します。契約に至らなかった場合にこれらの情報が漏れてしまう事態を避けるため、初期段階で秘密保持契約を締結することが重要です。 ③トップ面談 相互にM&A相手として適切かどうかを判断するために人柄や経営への想いを伝え、売り手・買い手相互の理解を深めることを目的としています。 売り手側にとって、買い手の診療方針や将来ビジョンは重要視される項目です。書面では知りえない双方の想いを知る重要な場となります。 この段階ではまだ条件交渉等はおこないません。 ④基本合意契約 トップ面談が終わり、買い手が売り手に対して意向表明書を提出することで意思表示を行い、売り手は受諾の是非を検討します。受諾した後、大まかな契約内容を固めた基本合意契約を締結します。 この契約は、一般的に法的拘束力は持ちませんが、独占交渉権など一部条項は法的拘束力を持ちます。 ⑤デューデリジェンス デューデリジェンスとは、買い手が最終契約の前に売り手の事業の実態を把握し、価値やリスクを評価するために売り手の内部資料の分析や経営層へのインタビューを行うことをいいます。税務・会計・法務・労務など様々な領域の調査を任意で必要に応じて行います。 ここで不都合な事実が判明した場合、譲渡価格の減額や交渉の中止につながる恐れがあるため、売り手は不都合な事実を隠そうとする動機が生じます。しかし事実の隠蔽は損害賠償の請求や交渉の中止につながることもあるため、そのような事実こそ売り手の方から開示する姿勢が望まれるでしょう。 ⑥最終交渉・最終契約 デューデリジェンスを実施したら、最終交渉に入ります。デューデリジェンスの結果を踏まえて契約内容や価格の変更をしたうえで、双方納得する内容になったら最終契約を締結します。 最終契約書は基本合意契約をもとに作成されます。最終契約は基本合意契約とは異なり法的拘束力を持つ契約です。原則、締結後に破棄はできないためしっかりと内容を確認しましょう。 最終契約を締結したら医院の引継ぎを実施します。従業員や患者への説明には時間を要するため、引継ぎ期間も確保しておきましょう。 ⑦クロージング 売り手に買い手が譲渡対価を支払い、経営権を移転させることでクロージングが完了します。 おわりに 医院の事業承継は売り手・買い手にとって時間も労力もかかるものです。ご高齢の先生の中には急な体調変化などにより、急いで承継を行い交渉力が弱くなることや、時間がかかることにより精神的に負担が大きくなる場合もあります。 将来承継をお考えの場合には、一度身近な税理士などの専門家にご相談することをおすすめいたします。 制作年月:2023年8月15日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

デイ事業者が取るべき短期・中期戦略とは(2023.7.26)
2024年度介護報酬改定まで残り1年 介護事業者に求められる対応とは何か デイ事業者が取るべき短期・中期戦略とは 【サブ見出し】 24年改定を乗り越える〝集団介護〟サービスと大規模化 【リード】 2024年度介護報酬改定まで1年を切った。高齢者人口がピークを迎えるとともに生産年齢人口の急減に直面する2040年に向けて、介護事業者にはどのような対応が求められるのだろうか。中でも在宅高齢者の生活を支えるデイサービス事業者が講じるべき対策について、スターコンサルティンググループ(東京都千代田区)の糠谷和弘社長に話を聞いた。 【本文】 ■デイサービス事業者が取るべき短期戦略 〈図①〉デイ事業者の短期・中期戦略 まずは「①稼働率アップ・加算算定強化による利益確保」が挙げられます。2月に公表された「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によると、2021年度決算における通所介護の収支差率(利益率)は、前年度比2.8%減の1.0%でした。しかし、ここで算出した「利益」は、コロナ融資などの返済や法人税も含んだものであり、実際の利益は、もっと小さいものと思われます。しかも、この数値は物価高、燃料高となる前の令和3年度の数値です。いま調査すれば、さらに厳しい結果となるでしょう。 デイサービスは、介護保険制度によって定員(客数上限)も報酬(単価)も固定されています。となると、高稼働率の維持と加算算定の強化は不可欠。その上で、コストをコントロールして最終利益をプラスにする目標を設定することが、経営の本来の姿です。 また、コストの大半は人件費ですから、適正人員で運営するための工夫も必要でしょう。そのために「②現場プログラムの見直し」や「③生産性向上(業務効率化・ICT化・サービス仕分け)」にもより力を入れてかなくてはなりません。②は、できるだけ「0対多(職員がかかわらずに多数の利用者に対応)」「1対多(職員1人で多数の利用者に対応)」のプログラムを増やすことです。それらと組み合わせて「1対1」となる個別ケアを充実化させれば、職員数を増やさずに質の高いサービスを提供できます。「0対多」の例として、私が経営指導する際には、足湯やマッサージ機などのリラクゼーションコーナーや、安全性の高い油圧式のリハビリ機器などを設置したセルフトレーニングコーナーを充実させるように助言しています。また「1対多」では、集団体操や「授業スタイル」で行われる「おとなの学校」などがポピュラーです。 ③「生産性向上」については、これまで当たり前のようにしていた業務をやめることも検討しましょう。例えば、デイ到着時の靴の履き替えをなくし、「下足のまま利用」はできないでしょうか。自宅玄関で靴を履き、送迎車でデイまで移動しているので、雨の日であってもさほど汚れはしません。玄関の混雑や職員の負担を考えると、この工程をなくすことで効率化を図ることができます。ほかにも、「配茶をなくし、給湯器などで代用する」「連絡帳をなくす」といった効率化を行うだけで、大きな変化があると思います。 また、ICT化は効率化だけでなく利益向上にも寄与します。安価なシステムを入れることで口腔機能向上加算を比較的容易に算定できるものや、AIによって送迎ルートを自動作成するシステムもおすすめです。当社クライアントでは、ルート作成にかける1日当たりの時間が100分から15分に短縮したといった例もあります。 「④採用戦略の見直し」「⑤教育システムのアップグレード」も必要不可欠です。介護職の有効求人倍率はここ数年高止まりしており、「経験者が採れない」という声はよく聞きます。その対策として、中途よりは(費用はかかりますが)採用しやすい新卒採用に力を入れる、または業務を細分化して未経験者、シニア、外国人などの多様な人材に活躍してもらうなどの策が考えられます。このとき重要なのは「⑤教育システムのアップグレード」の視点です。”未経験”の人材を、早期育成できるシステムを構築すべきです。外国人技能実習制度が廃止に向かうことに伴い、特定技能への移行や海外人材確保のための新制度創設も進められます。こうした海外人材も視野に入れた“未経験”の人材を着実に「人財」へと変えるため、教育の仕組みの改善は急務です。 そして、「⑥介護保険制度改正対策プロジェクトチームの立ち上げ」も重要です。遅くとも改正前年には、次期改定のおおよその方向性、内容が示されており、社会保障審議会、介護給付費分科会の回を追うごとに、具体的な報酬の配分も見えてきます。リアルタイムで情報をキャッチしていくことで、報酬改定を乗り越えて運営できる組織づくりができます。未着手の事業者は24年改定に向けて直ちにチームを立ち上げ、▽事業所幹部などが少人数で審議会の資料を読み合わせる▽セミナーやメールマガジンなどで情報を集める▽自施設での対策に落とし込む――といった取り組みを行いましょう。 ■中期で目指す「大規模化・多店舗化」 中期戦略として目指すべきなのは「経営の大規模化・多店舗化」。昨年4月に行われた財政制度等審議会・財政制度分科会では「管理部門の共通化、効率的な人員配置といった費用構造の改善、更にはその実現に資する経営の大規模化・協働化を慫慂していくべき」と言及されています。小規模事業者であっても、職員の給与を上げるため、事業の持続可能性のためには、大規模化・多店舗化に取り組むべきといえます。 〈図②〉財制審で行われた「大規模化」への言及 大規模化・多店舗化において重要となるのは施設長の養成です。しかし、店舗数の増加に合わせて施設長としてのスキルを備えた人材を増やすのは難しく、これが大規模化・多店舗化のブレーキになっている法人も少なくありません。 ある法人では、特養に併設した大型施設(65名定員)を本部として、車で30分圏内に一般型デイ3ヵ所(40名定員)、地域密着型デイ9ヵ所(18名定員)の計13拠点まで拡大しました。このケースでのポイントは、施設長を3つの層に分けたことです。まず本部となる事業所には、全体を統括する課長クラスの施設長を配置しました。本部では、営業ツールの作成や広報誌の作成、採用・教育、給与計算、ICT化といった業務を、一括して行っています。次に、一般型デイには係長クラスの人材を施設長として配置しています。係長は、自施設とは別に3つの施設を管理し、合同会議やエリア営業、欠員時のヘルプなどを主導しています。小規模拠点である地域密着型デイでは、主任クラスの施設長を配置。管理スキルは低いですが、本部、課長、係長のサポートがあれば、しっかりと運営ができます。また、 多店舗化を契機に、施設ごとに重度者向け、軽度者向けなどのレイヤーを設ければ、幅広く利用者を受け入れつつ満足度向上も実現できます。 経営が大規模になればなるほど高収益となる、というデータ(2023年1月WAM調査)も示されています。本部を構築し機能を強化することで、質を保ちつつ効率的な多店舗展開ができることに加え、できるだけ多様なサービスを展開し「総合化」することにより、報酬改定に左右されない収益確保も可能になります。利用者のライフタイムバリューを高めることにもつながるこれらの取り組みは、今後の介護事業経営においてますます重要となるでしょう。 デイサービスは、在宅高齢者にとって「入浴」「食事」「リハビリ」「楽しみ」「社会性」を得られる唯一無二の場であると考えます。地域包括ケアシステムにおける〝在宅サービスの中心的機能〟を担うデイサービス事業者の更なる進化に注目しています。

【介護施設のBCP(業務継続計画)】義務化されるBCPを「使える」ものにするためには(2023.7.21)
【介護事業者必見!】介護施設のBCP(業務継続計画)策定で最も重要なこと 介護保険事業者は2021年4月よりBCPの策定が義務付けられました。3年間の経過措置が設けられており、完全義務化は2024年4月からになります。介護施設や障害施設の中には、BCPをすでに策定されている施設も多いのではないでしょうか。保育施設は2023年4月から防災計画書の策定が義務化され、BCP策定は努力義務となりました。近い将来、すべての福祉施設でBCPの策定が義務化されることが予想されますので、「使えるBCP」を策定するために気を付けるポイントに着目しながら策定方法についてご紹介します。 〔この記事でわかること〕 1.BCP(事業継続計画)の意味 ・BCPとは? ・介護保険事業にとってのBCPとは? 2.意味がない?BCPがなぜ必要なのか 3.BCPで何を決めておく必要があるのか 4.BCP策定で最も重要なこと 1.BCP(事業継続計画)の意味 【BCPとは?】 BCPという言葉を知っていますか?日本語では事業継続計画と呼ばれています。 日本でも2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけによく耳にするようになりました。BCPとはBusiness Continuity Plan の略で、災害(自然災害に限らない)発生時に、重要な事業(業務)を継続させるためにあらかじめ準備しておく計画のことをいいます。よく似た概念に防災計画がありますが、防災計画が主に人的・物理的ダメージを軽減することを目的として策定するものであるのに対し、BCPはむしろ事業(業務)そのものへのダメージの軽減を目的とする点が異なります。事業へのダメージを最小限に抑えるために策定するので、自身の業務だけでなく、委託先、調達先、供給先等も対象となります。 【介護保険事業にとってのBCPとは?】 では介護保険事業にとってのBCPとはどのようなものなのでしょう? 介護保険サービスの提供を受けている人の中には、サービス提供の中断が生命の危機に直結する方々もいます。電気や水道、ガスがすべて止まっても、例えば特別養護老人ホームでは介護を中断することはできません。またサービス提供するのはヒトですから、モノだけあっても仕方ありません。どんなに非常食をたくさん備蓄していても、食事介助をするヒトがいなければサービスを提供できません。ポータブルトイレがあっても、排泄介助をするヒトがいなければサービスの提供はできないのです。ですから、介護保険事業に求められることは重要なサービスの提供を中断しないこと、またやむを得ず中断してしまった場合にはできる限り早期に復旧させることです。そのためのBCP策定が必要不可欠となります。 2.意味がない?BCPがなぜ必要なのか 介護施設には中断できない重要業務が数多く存在します。その業務に従事できるのはだれなのかを事前に考えておく必要があります。 緊急時、すべての職員が職場に集まれるとは限りません。大規模な自然災害の場合は公共の交通機関がダウンし、主な幹線道路は、緊急車両以外は通行止めとなるでしょう。徒歩と自転車しか通勤手段がなくなると考えてください。 介護保険施設を訪問すると、緊急時の出社基準を定めた参集基準というものをよく目にします。災害のレベルに応じた職員体制を確保するための基準なのですが、徒歩によった場合の出社に要する時間はもちろん、近くに河川がある場合には橋が崩落しても出社できる職員はだれか、または施設に連泊できる職員はだれか、などさまざまな条件をもとに綿密に作成されています。 もう一つ、緊急時に参集を義務付けるか否かを判断する重要な要件として、職員の家庭環境があります。これは職員の個人情報と深く関わるため慎重な取扱いが必要です。例えば同居する家族に要介護者、未就学児などの要保護者がいる場合などは、緊急時に参集を義務づけることは難しいでしょう。 このように、緊急事態に備え、あらゆる方向からBCPの策定に必要なことを盛り込むことで、実際の場面でも重要な業務から優先して取り組めるのではないでしょうか。 3.BCPで何を決めておく必要があるのか では具体的に、BCPでは何を決めておけばよいのでしょう? まず行うことは、業務の優先順位を決めることです。普段おこなっている業務はみな必要なものばかりですが、それでも「これは絶対にしなくてはならない」業務を優先度の高い順に並べます。従事できるヒトの数が減れば優先度の高い業務だけを実施すると決めておきます。「何をやるか」を決めることは、「何をやらないか」を決めることでもあります。この考え方は毎日の業務の中にも取り入れることができます。例えば急に欠勤者が出た、午後から2人減ることになった、などの状況変化が生じれば、この変化に対応して業務分担を急いで検討することになりますが、業務の優先順位をあらかじめ決定しておき職員に周知しておけば決定と実行がスムーズに行えるでしょう。日々の状況変化に柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。 4.BCP策定で最も重要なこと このようにさまざまな条件を考慮しながらBCPを作り上げていきますが、作って終わりではありません。日々の避難訓練などの際にBCPの一部を適用してみましょう。きっと、うまくいかない箇所が出てきます。うまくいかなかった箇所は、うまくいくようにBCPを変更すればよいのです。そうやってブラッシュアップを繰り返して、「使えるBCP」にしていきましょう。その際に、文書としてどんどん分厚いものになっていかないように注意してください。ブラッシュアップしていくほど文書としてはスリムになっていくのが理想です。文書もマニュアルも、コンパクトであればあるほど使えます。いざ災害が発生した時に文書やマニュアルを読んでいる時間はありません。緊急時にまず行動すべきことはA4サイズ1枚にまとめ、小さくたたんで名札入れに入れておきましょう。 BCPは職員全員が同じ認識を持っていないとうまく機能しません。日ごろから全員で意識して、日常業務に組み込んで繰り返し実践し、「使えるBCP」の完成を目指しましょう。

人生100年時代を生き残るには必須!? 今さら人に聞けないiDeCoの効果(2023.07.19)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 人生100年時代が到来し、定年以降の生活が20年以上続くようになりました。 そこで考えなくてはいけないのが老後資金です。退職金や企業年金の他にも自分で加入して、運用できる年金制度をご存じですか? 今回はその個人型確定拠出年金、通称iDeCoをご紹介します。 目次 01:iDeCoとはどんな制度なのか? 02:基本的なポイント 03:メリット 04:留意点 05:加入するには? 01:iDeCoとはどんな制度なのか? iDeCoとは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度で、毎月の掛金を自分自身で運用しながら積立てていき資産を形成していきます。基本的に20歳以上65歳未満の公的年金の被保険者の方が加入でき、積み立てた資産は60歳以降に一括または分割で受け取ります。 雇用形態に関する条件はなく、自営業・会社員・アルバイト・公務員・学生・専業主婦(夫)など、20歳以上65歳未満であればほとんどの方が加入できます。 しかし、自営業の方(第1号被保険者)で農業者年金に加入されている・国民年金保険料を払っていない・国民年金の保険料納付を免除されている方はiDeCoに加入できませんので注意してください。 ちなみに「iDeCo(イデコ)」の愛称は、個人型確定拠出年金の英語表記(individual-type Defined Contribution pension plan)の一部から構成されています。 02:基本的なポイント 〇掛金は少額から始められる 掛金は月々5,000円から始められ、1,000円単位で自由に設定できます。加入区分に応じて拠出限度額があるため、ご自身がどの加入区分に属しているかを把握する必要があります。掛金額は1年に1回変更することができ、いつでも掛金の拠出を止めることができるためご自身のライフスタイルに合わせて無理のない範囲で運用できます。 iDeCoの拠出限度額 加入資格 限度額 自営業者等(第1号被保険者) 月額 6.8万円 会社員・公務員等 (第2号被保険者) 会社に企業年金がない 月額 2.3万円 企業型DCに加入している ※1 月額 2.0万円 DBと企業型DCに加入している ※2 月額 1.2万円 DBのみに加入している 公務員 専業主婦(夫)(第3号被保険者) 月額 2.3万円 ※1 企業型DC…企業型確定拠出年金のこと ※2 DB…確定給付企業年金のこと 〇選択可能な受け取り方法 iDeCoの年金資金は、原則60歳から受け取ることができ、受給を開始する時期は75歳になるまでの間で選ぶことができます。 受け取る方法は、一時金として一括で受け取る、年金として受け取る、一時金と年金を組み合わせて受け取ると3パターンあります。自分に合った受取方法を選びましょう。 しかし、60歳から年金資金を受け取るには、iDeCoに加入していた期間が10年以上必要です。10年に満たない場合は、受給できる年齢が繰り下げられます。 03:メリット iDeCoには3つの税制優遇があります。 (1) 掛金全額が所得控除の対象に! iDeCoで積み立てた掛金全額が所得控除されるため、確定申告や年末調整で申告すれば所得税や住民税の金額を減らすことができます。 (2) 運用中に得た利益はすべて非課税に! 定期預金の利息や投資信託の運用益は通常、課税対象となりますが、iDeCoで運用した場合、運用中に得た利益はすべて非課税となります。 (3) 給付時にも控除が受けられる! 積み立てた資産を受け取る時にも税制優遇があります。一時金として一括で受け取る際は退職所得控除、年金として分割で受け取る際は公的年金等控除が適用され、所得税が軽減されます。 また、転職・退職しても持ち運びが可能というメリットもあります。 例えば、会社を退職して専業主婦(夫)や自営業に変わる場合や、キャリアアップのため転職する場合でも、引き続きiDeCoの加入者として掛金拠出、資産運用ができます。 04:留意点 〇60歳になるまで引き出すことができない iDeCoで積み立てた掛金は、老後の資産形成を目的とした年金制度であるため、60歳にならないと原則として年金資産(拠出した掛金とその運用益)を引き出すことができません。 〇運用成果に応じて将来受け取る金額が変動する 確定拠出年金は、給付額があらかじめ確定しているわけではありません。 運用商品の中には、元本が確保されていないものもありますので、商品の特徴をよく理解したうえで運用商品を選ぶようにしましょう。 05:加入するには? (1) 運営管理機関の窓口などで加入申出書などの書類を取り寄せる (2) 運用商品やサポートサービス、手数料の金額などを参考にして運営管理機関を選ぶ (3) 運用商品を決定し、加入申出書を提出する (4) 加入資格の審査が通れば口座が開設される 現在65歳の方の平均寿命は、男性が85.05歳、女性が89.91歳となっており、定年後の生活が20年以上続く方がたくさんいます。より豊かな老後生活を送るため老後資金を貯蓄するのに早いことはありません。自分で入り、自分で選ぶ。もうひとつの年金制度を活用してみませんか。 iDeCo(個人型確定拠出年金)についてご不明点等ございましたら米本合同税理士法人までご連絡下さい。 →(医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年7月20日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【後編】施設利用者がホテル業務 庭の手入れ・フロントなど 介護スタッフ採用も順調(2023.7.7)
<取材先> 株式会社ゆず 社長 川原奨二 施設利用者がホテル業務 庭の手入れ・フロントなど 介護スタッフ採用も順調 ゆず 川原奨二社長 ▲冷蔵庫なども備えられたダイニングキッチン ▲施設利用者も手入れを手伝う庭 前号(2月15日号)に引き続き、昨年開業した「小規模多機能型居宅介護事業所とホテルの併設施設」の特徴や今後の展望などについて、運営者である介護事業者ゆず(広島県尾道市)の川原奨二社長へのインタビューを紹介する。 接遇マナー等が向上する効果も ――介護事業所とホテルを併設することで、どのようなメリットが生じましたか 川原 ホテルには専属スタッフがいません。チェックイン・チェックアウト業務をはじめ、宿泊客の対応は全て小多機のスタッフが行っています。「仕事の様子を第三者に見られている」という意識が生まれます。その結果として、スタッフの接遇力・マナーなどの向上が見られました。 加えて、スタッフの採用活動も順調に進みました。「ほかの介護事業所とは違う何か面白いことをやっている」という印象を求職者に持ってもらえたことが大きいのではないかと思います。 ――小多機の利用者については、どのような影響・メリットがありましたか 川原 利用者が希望すれば、庭の手入れやパジャマのタグ付けなどのホテル業務を手伝うこともできます。場合によってはフロント業務を手伝うこともあります。こうした仕事を通じてADLや認知機能の維持・改善が期待できます。実際に、当社が運営する近くの看護小規模多機能型居宅介護事業所の利用者の中には、ホテルの庭の手入れを続けた結果、要介護認定が外れた人もいます。今では、有償ボランティアとして、1日3時間ほど働いてもらっています。 ただし、ホテル業務の手伝いは、介護事業所の正式なレクリエーションやリハビリテーションのメニューとして位置付けてはいません。あくまでも利用者の「やりたい」という自由意思を尊重します。 ――ホテル事業について今後のビジョンは 川原 ホテル事業については門外漢ですので、まだまだ改善すべき点はありますし、発展の余地もあります。新型コロナウイルス感染症が落ち着いた後に再び増えていくであろうと予想される外国人観光客への対応力強化や、外部の飲食店などと提携しての食事サービスの提供などを考えています。 ――ほかに、今後手がける事業があれば教えてください 川原 4月に広島県東広島市で看多機と2ユニットのグループホーム、8部屋のシェアハウスの複合施設の開設を予定しています。 シェアハウスの入居者には、看多機やグループホームの仕事を週に3~4日手伝えば、家賃がゼロ(管理費のみ月1万円負担)になるだけでなく、食事を提供するなどの特典を設けていきます。入居者は学生を想定しています。 ――なぜ、こうした施設を開業しようと思ったのですか 川原 東広島市は大学が多く、約11万人の人口のうち1割近くが学生です。昨今社会問題になっている「学生の貧困」を解決することが、地域経済にとっても大きなメリットになると考えました。 また、学生に介護助手などの簡単な仕事を手伝ってもらえれば、現場の人手不足が解消できるだけでなく、学生に介護や福祉に興味を持ってもらう機会がつくれます。加えて「学生と高齢者が同じ建物内で生活をすることで、どのようなコミュニティーが形成され、社会にどのような変化が生じるのかを見てみたい」という気持ちもあります。 今後は、介護単体で事業を成り立たせることは難しいと考えています。「介護プラス○○」といった、様々なビジネスとの融合・複合が必須になるでしょう。プレイヤーは当社でなくても構いませんので、こうしたモデルの介護事業所が全国に広がっていくことを期待しています。

クリニックがインボイス制度導入時に気をつけること(2023.07.07)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 目次 はじめに 1.消費税のしくみ 2.インボイス制度の導入の変更点 3.クリニックでの検討事項 4-(1).課税事業者の場合 4-(2). 免税事業者の場合(免税事業者のまま) 4-(3). 免税事業者の場合(課税事業者のまま) おわりに はじめに 令和5年10月1日よりインボイス制度が導入されます。 インボイス制度は、正式には「適格請求書等保存方式」といい、請求書や納品書の記載事項・交付・保存に関するルールを指します。 今回は、このインボイス制度についてご紹介いたします。 1.消費税のしくみ まず、消費税とは商品やサービスを消費する者が負担する税金ですが、実際に税務署へ納付をするのは、その消費税を預かっている売手である事業者です。事業者は、お客様から預かった消費税額から、仕入先に支払った消費税額を差し引いた金額を納付することができます。この制度を「仕入税額控除」といいます。この制度を利用するためには、取引を記録した帳簿と請求書等の保存が必要となります。 2.インボイス制度の導入の変更点 令和5年10月1日のインボイス制度導入後は、仕入税額控除のための要件である「帳簿及び請求書等の保存」のうち、「請求書等」の記載事項について変更が加わり、【図1】の「適格請求書(インボイス)」の保存が要件となりました。このインボイスを発行できるのは、【図2】の消費税の課税事業者のうち、事前に税務署長に申請して登録を受けた「適格請求書発行事業者」のみとなります。まとめますと、「適格請求書発行事業者」が発行した「インボイスと帳簿を保存しない場合には、仕入税額控除を利用することができなくなります※。 ※買手側・売手側ともに段階的な経過措置あり 3.クリニックでの検討事項 では、次にインボイス制度導入にあたってのクリニックでの検討事項をご紹介します。 検討しなければならないのは、売手の立場として「適格請求書発行事業者」の登録をするか否かになります。 消費税の対象となる自費収入の相手先は、基本的には一般消費者である患者様です。一般消費者は消費税の納税義務者ではありませんので、仕入税額控除を利用しません。したがって、売手としてインボイスを発行してもしなくて何の影響もないため、一般消費者のみを対象として診療を行っているクリニックであれば「適格請求書発行事業者」の登録をする必要はありません。 一方で、自費収入(企業健診・産業医・読影料等)の相手先が企業・医師会等である場合や、個人事業者である院長先生が所有している不動産を企業に貸付(駐車場やテナントとしての貸付等)を行っている場合には検討が必要となります。このケースでは、相手先である企業側・医師会等から、仕入税額控除を受けるためのインボイスの交付を要求されることとなるため、「適格請求書発行事業者」の登録を行うか否かの検討が必要です。 4-(1).課税事業者の場合 すでに消費税を支払っている課税事業者である場合は、増税にはなりませんので、売手として「適格請求書発行事業者」の登録を行い、相手先へインボイスを交付する選択がよいかと思います。 買手の立場では、仕入税額控除を利用するために、相手先へインボイスの交付を求める必要があります。ただし、簡易課税事業者を選択する場合には、仕入税額控除の要件として「帳簿及び請求書等の保存」は不要となりますので、インボイスの取得は不要です。 4-(2). 免税事業者の場合(免税事業者のまま) この場合には、引き続き消費税を納める必要がないというメリットがある反面、売手の立場としてみると、インボイスを交付できないことから、企業健診や駐車場・テナント契約の取引喪失リスクがあります。 なお、買手の立場では、消費税を納める義務がないため、インボイスの取得は不要です。 4-(3). 免税事業者の場合(課税事業者のまま) 課税事業者を選択し適格請求書発行事業者の登録を受けるこの場合には、売手の立場としては、インボイスを交付することができるため取引喪失リスクが少ない、というメリットがあります。デメリットとしては、課税事業者となるため消費税の納税義務が生じ、税負担が増えることが挙げられます。 買手の場合では、インボイスを相手先から取得しないと仕入税額控除ができないことにも注意が必要です。ただし、前述の通り、簡易課税事業を選択した場合には、インボイスの取得は不要です。 おわりに 令和5年10月1日の制度導入に合わせて「適格請求書(インボイス)」を発行するためには、令和5年9月30日が登録申請の期限です。 ・インボイス発行に対する取引先の意向 ・インボイス発行のための手間、コスト ・インボイスを発行せずに取引先を失った場合の損失 ・インボイス取得のために課税事業者になったことによる消費税の負担増 これらを総合的に検討いただき、「適格請求書発行事業者」になるか否かを慎重に判断する必要があります。 今回はインボイス制度の概要をご紹介いたしました。経過措置等もあるため、判断にお困りの場合は税理士などの専門家にご相談することをお勧めいたします。 制作年月:2023年7月11日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

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【前編】小多機とホテル併設 介護関係者が集う「場」に(2023.6.29)
<取材先> 株式会社ゆず 社長 川原奨二 小多機とホテル併設 介護関係者が集う「場」に フロントは事業所内に ゆず 川原奨二社長 ▲右の建物が小多機・左と奥がホテル ▲ホテルの客室のひとつ 昨年6月に開業した、介護事業所と同じ敷地に建つ小さなホテルが業界で話題になっている。なぜホテルを介護事業所と同じ敷地に開設したのか、介護事業とホテルのシナジー効果などについて、運営者ゆず(広島県尾道市)の川原奨二社長に話を聞いた。 キッチンを完備 一棟貸しも可能 ――まず、会社について教えてください。 川原 私自身の介護業界歴は20年以上になります。2013年に起業しました。現在、グループホーム3ヵ所、小規模多機能を2ヵ所、看護小規模多機能を2ヵ所のほか、訪問看護・デイサービス・居宅介護支援事業所を運営しています。また企業主導型保育所やシェアハウスなども手がけています。 ――運営するホテルについて教えてください。 川原 もともと、グループホームと看多機を運営していたエリアで土地を購入しました。昨年4月に小多機を開設し、6月にホテル「尾道のおばあちゃんとわたくしホテル」を開業しました。 ホテルは3つの客室を有した平屋で、1棟貸しにも対応できます。建物内にはダイニングキッチンがあり、冷蔵庫、調理器具、食器、調味料なども完備していますので、自炊も可能です。食事の提供は行っていません。別荘などのように「そこに滞在すること」自体を楽しんでもらうタイプのホテルです。 宿泊客の2割が介護業界関係者 ――なぜ、同じ敷地内でホテルを運営しようと思ったのですか。 川原 例えば隣の福山市には介護事業者が運営するシェアハウスがあり、全国から介護関係者が集まる場になっています。「そうした『場』を作りたい」という気持ちがありました。私自身、ユニークな取り組みを行っている全国の介護関係者たちと交流・意見交換などをする機会が多くありますが、飲食店などでは時間の制約があります。ホテルであれば時間を気にせずに交流できます。 実際に、視察や見学を兼ねて多くの介護関係者が利用してくれています。そうした人たちとじっくり話ができるのは非常に貴重な機会です。場合によっては当社のスタッフもそこに参加させますし、宿泊者にスタッフ向けの臨時の講習会・勉強会をしてもらうこともあります。 ――利用者は介護関係者が多いのですか。 川原 約80パーセントは介護とは関係ない一般客です。大半は、介護事業者が運営していることを知らないでしょう。しかし、ホテルのフロントは小多機内に設けてあり、チェックイン業務も小多機のスタッフが行います。チェックインの場からは利用者の様子が見えますし、送迎の様子を目にすることも多いので、自然に介護の現場に接することになります。 宿泊を通じて、少しでも介護について知ってもらえればと思ったのもホテル開設理由のひとつです。

コロナ関連融資の返済準備は抜かりなく(2023.06.23)
<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 コロナ禍のなかで、事業者、とりわけ医療機関に対しては緊急対応のかたちで無利子・無担保融資などが行われ、それによって「一息ついた」ところが多かったようです。ただ、これらは返済しなければならず、そのための原資を確保する必要があります。その元手となる収益を確保する道筋をしっかり描く必要がありそうです。 目次 01:歯科医院の収支構造 02:院長の自信が経営危機につながる場合も 03:コロナの影響が残っている歯科医院も 04:最後に 新型コロナウイルス感染の発生・まん延から、まもなく丸3年が経とうとしています。新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に陥った企業向けの実質無利子・無担保融資の返済が本格化してきています。しかし、業績が改善せず、返済はおろか破綻に追い込まれる中小企業が急増しています。医療機関も例外ではありません。コロナ融資の返済準備は進んでいるでしょうか。 01:歯科医院の収支構造 歯科医院の収支構造は一般的に、売上に対する原価率が20%未満と粗利益率が高い一方で、人件費や家賃などの固定費も高く、損益分岐点売上を超えると、それを超えた売上の80%以上が利益として残る構造になっています。(「損益分岐点売上高」とは、利益が±0〈トントン〉のときの売上高をいいます) 損益分岐点売上高に加え、自費売上が200万円上乗せになると160万円利益が残ります。一方で、例えば保険患者さんが減り、50万円、売上が減ると40万円の赤字になります。 歯科医院は損益分岐点を超えると大きく利益が残りますが、損益分岐点を下回ると赤字になり、現預金は減っていきます。このことを忘れないでいただきたいのです。 02:院長の自信が経営危機につながる場合も 自費売上を前提に経営する院長の多くは、「自分がちょっと頑張れば自費をもっと増やせる」との自信をお持ちです。コロナの影響で高齢者や予防患者が減っても、「頑張って減った分を自費でカバーすればいい」考える傾向があります。しかし、1、2回カバーできたからと言って、いつもカバーできるわけではないのです。 自費売上はどうしても波があり、一方で保険売上は安定しています。保険売上が下がってきている場合、患者さんが離れていることが考えられ、元に戻すのも時間がかかります。自費でいつでもカバーできると言っているうちに時間が経過し、資金繰りが厳しくなる例は珍しくありません。だからこそ保険の患者さんが減っていないか気にしていただきたいのです。もし変化が見られた場合、すぐに手を打つことをお勧めします。 03:コロナの影響が残っている歯科医院も コロナの感染拡大により、一時期ほとんどの医院で患者さんが減りました。その後徐々に回復している医院もあれば、まだ完全に戻り切っていない歯科医院もあります。コロナ関連融資で資金を積み増していれば、元本の返済がなく、利子補給があれば、当面は心配ないかもしれません。ただ、患者さんが戻りきっていない歯科医院では、元本返済が始まると返済に苦労するのが目に見えています。 04:最後に 今はコロナ融資で手元資金に余裕がある医院も多いかもしれません。しばらくの間は多少の赤字でも、資金が底をつくことはないでしょう。まだ手元に資金があるうちに、新しい診療メニューの導入、増患対策、従業員のレベルアップ教育などの次の手を打ちましょう。 制作年月:2023年6月16日 【同じ著者 執筆記事】 院長以外の対応と売上の関係を可視化 スタッフが退職しやすいタイミングと退職を防ぐモチベーションアップ策 【解説】歯科診療所の開業費用の内訳と相場を知ろう。開業資金、テナントなら8500万円。 【歯科診療所の承継開業時のポイント、注意点】コンサルタントによる解説 ミスを責めない風土がミスを減らす第一歩 制作年月:2023年6月23日

手っ取り早く利益を増やしたい!簡単に収益改善できる3つの方法(2023.6.23)
少額の投資で最大の効果を狙う 簡単に収益改善できる3つの方法をご紹介します。 最近は「とにかく一刻も早く利益につながる方法はないか」という切羽詰まったご相談が相次いでいます。今回は弊社で最近サポートした事例をご紹介します。ポイントは〝少額の投資で最大の効果を狙う〞ことです。参考にしてください。 ■成功事例1 月間売上 21万円UP(デイ) ある施設(定員30名)では、口腔機能向上加算を算定することで、実施後3ヶ月目には月間21万円の売上増を達成しました。しかも、かかったコストはたったの1万3800円/月です。つまり売上のほとんどが利益ということです。弊社が代理店をしている加算算定のためのシステムを導入していただきました。 この加算は、要介護1〜5で150単位/回を月2回まで算定できます。要支援、事業対象者でも月に1度算定できます。つまり要介護の方ならば、月間3000円(1単位=10円の場合)の単価増になるということです。要介護の契約者が100人いれば、最大で30万円の売上増。〝算定しなければ損〞といっても過言ではない加算と言えます。 このような話をすると「うちは歯科衛生士がいないから」「加算の対象者が少ないのでは」と心配する方もいますが、人員配置は看護師でも良いことになっています。口腔にリスクのないお年寄りなど〝皆無〞と言って良いと思います。私は「全員算定すべきだ」とすら考えています。 実際この施設では、弊社の提供する説明資料の効果もありましたが、全利用者のうち97%が算定しました。残りの3%は「どうしても算定させたくない」とケアマネが主張する方と、限度額をオーバーしている方で、ご自身のニーズとは関係ない理由でした。 また、担当はパート看護師となりましたが、システムを利用すれば口腔ケアの知識がなくても評価、計画書の作成ができるため、問題なく算定ができました。文字通り〝手っ取り早い〞方法です。 ■成功事例2 月間売上63万円UP(デイ) 定員45名のある施設は、107人の契約者で1日の利用者は平均31人(稼働率70%)と低迷していました。コロナの影響でケアマネへの訪問営業もできず、新規利用者も充分な人数を確保できていませんでした。 そこで発想を変えて、利用者の月の利用回数を伸ばすことに専念したところ、開始4ヵ月で平均利用回数を7.6回から8回に伸ばすことに成功しました。行ったこととしては、「歩行力解析システム(月間1万円)」の導入と、その評価結果をもとにしたリハ職によるモニタリング時の利用者面談の実施です。利用者面談では、3ヵ月前と比較してどこが改善(悪化)しているかを説明し、それを維持・向上するためには〝あと1回増やしましょう〞と提案することにしました(※利用者のニーズに合わせて提案しています)。その結果が、月間63万円、年間にすると756万円の売上増につながったのです。 ここまでの事例だけでも(1と2の手法を組み合わせれば)月間80万円、年間約1000万円以上の売上増は可能であるということになります。投資は少額ですから、ほぼ利益と考えて良いでしょう。劇的な経営改善事例と言えます。 ■成功事例3 月間コスト24万削減(特養) 最後は入所施設の事例です。ある10ユニット100名(入所90名/ショ ート10名)では、厨房業者の切り替え時に、業者から食材費UP、および管理費UPを要望されたことをきっかけに、食事を3食(朝昼夕)ともにチルド食材に変更しました。チルド食材は、真空パックの状態で配送されてきます。あたためて盛り付けるだけで、入所者に提供することができます。献立があるため、調理師も必要ありません。少ない人数での運営が可能です。 またこの施設では、運営の自法人化、食材のチルド化とともに「リヒートウォーマーキャビネット」という調理機器を導入しました。冷蔵機能が付いていて、トレイに食材を盛り付けてタイマーをセットすると、設定した時間までに温めて(再加熱して)くれるすぐれものです。これら3点はまだ始めたばかりですが、人件費だけで24万円のマイナスとなっています。今後は、オペレーションを見直していくことで、よりコスト削減効果があると見込まれます。 他にも、まだまだ〝手っ取り早い〞方法はあります。まずは以上3点、すぐに検討してみましょう。

無料のサービスを利用して給与明細の電子化・ペーパーレスを始めませんか(2023.06.20)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 業務効率化のため給与明細の電子化・ペーパーレス化に取り組みたいとお考えの方は多いと思います。 何から始めたらいいかわからないなどの不安のある方は、利用中の給与計算ソフトは変えずに、無料プランを提供しているクラウドサービスの「Web給与明細システム」を利用して、まずは給与明細の配布だけを電子化・ペーパーレス化して効果を試してみてはいかがでしょうか。 目次 01:給与明細の電子化・ペーパーレス化とは 02:給与明細の電子化・ペーパーレス化のメリット 03:給与明細の電子化・ペーパーレス化のデメリット 04:無料プランを提供しているWeb給与明細システム 05:無料で利用できるWeb給与明細システムを選ぶポイント 06:有料プランや給与計算一体型システムへの移行 01:給与明細の電子化・ペーパーレス化とは 従業員の給与明細を書面ではなく電子化してインターネットなどを通じて交付し、ペーパーレス化することです。 給与明細書の電子化は2006年の税制改正によって認められ、2007年1月1日以後に交付する給与明細や源泉徴収票などについて、一定の要件の下で書面ではなく電子化して交付できるようになりました。 現在法律で認められている電子交付の方法は次の3つです。 1.電子メールを利用する方法 2.社内LAN・WANやインターネットなどを利用して閲覧する方法 3.CDなどの媒体に記録して交付する方法 一般的には、メールで給与明細書のファイルを添付送信してペーパーレスで交付する方法や、クラウドサービスを活用して従業員がWeb上で給与明細書を閲覧できるようにする方法が多く採用されています。 今回のコラムでは無料プランを提供している「Web給与明細システム」を中心にご紹介いたします。 参考:国税庁Q&A(源泉徴収票等の電子交付とはどのような制度か) 02:給与明細の電子化・ペーパーレス化のメリット 【コストと業務時間の両方を削減できる】 紙の明細書を発行して手渡しする場合に比べて、明細書の印刷代や郵送代などのコストが不要になります。 また印刷・仕分け・封入・配布にかかる業務時間を削減できます。 【人的ミスの防止につながる】 紙の明細書の場合は、印刷時に「印刷ミスやプリンタからの取り忘れなどにより他の従業員の目に触れてしまう」、封入や配布時に「別の人の明細書を封入・配布してしまう」といった人的ミスが発生する恐れがあります。 また、紙の明細書を取り扱うときは、他の従業員の目に触れないように、作業場所や作業時間にも気を配る必要があります。 電子化することにより人的ミスの防止や業務負担の軽減につながります。 【従業員にもメリット】 従業員はスマートフォンやPCなどからいつでもどこでも明細書を確認でき、過去の明細書も検索して確認できます。 また、紙の明細書に比べて紛失するリスクもありません。 03:給与明細の電子化・ペーパーレス化のデメリット 【セキュリティ対策が必要】 電子化することによる新たな情報漏えいリスクや脅威への備えが必要です。 たとえば、クラウドサービスを利用する場合は、管理者のIDやパスワードが流出すると一度に大量の個人情報が流出する恐れがあります。適切なID管理ルールの取り決めや、給与担当者が利用するPCへセキュリティ対策を実施します。 【電子化にあたり業務手順を変える必要がある】 利用する「Web給与明細システム」が指定する形式にあわせて、明細書データを用意する必要があります。大手メーカーの給与計算ソフトをお使いであれば、給与計算ソフトから出力したデータを加工不要でそのまま取り込めるケースもあり手間がかかりません。形式が一致しない場合はエクセルなどを利用して手作業でデータを加工するといった負担が発生する場合があります。 【導入には従業員の承諾が必要】 給与明細等の電子交付は「従業員の承諾を得ること」が条件となっています。承諾を得られなかった従業員については、従来通り別途紙で配布する必要がありますので、承諾を得られなかった従業員がいた場合の手間やコストも考える必要があります。 承諾を得るにあたり法令上決まった書式はありませんが、次のような事項を通知して承諾を得ることになっています。 1.電子交付する書類の名称(例:給与明細書) 2.電子交付する方法(例:A社のWeb給与明細システムにて交付) 3.記録方法(例:スマートフォンまたはPCで表示、表示後にPDF形式での保存が可能) 4.交付予定日(例:給与支給日に交付) 5.交付開始日(例:2023年〇月×日) なお、令和5年度税制改正において、「給与所得の源泉徴収票」及び「給与等の支払明細書」については、支払者が受給者から電子交付の承諾を得ようとする際に、「支払者が定める期限までに承諾に係る回答がない時は承諾したものとみなす」旨の通知をあらかじめ受給者に行い、上記期限までに受給者からの回答がなかった場合には、電子交付の承諾があったものとみなされることとなりました。 承諾の取得方法については利用する「Web給与明細システム」によっては、従業員の意思確認ができる機能を用意しているものもあります。従業員が初めてシステムを利用するときに「電子交付に関する承諾書」が表示され、従業員に[承諾する]を選択してもらい意思確認する方法も可能ですので、少しでも手間を省きたい方はシステムを選ぶ条件の一つとして検討してください。 04:無料プランを提供しているWeb給与明細システム 無料で利用できるWeb給与明細システムを3つご紹介いたします。 ※本コラムに掲載の情報は2023年5月末に確認したものです。正確な情報は各社の公式サイトをご確認ください。 各社により異なりますが、無料プランには主に次のような制限があります。 1.利用できる従業員数の上限が決まっている 2.過去1年分など明細を確認できる期間に制限がある 3.サポートがない 4.広告が表示される サービス名 スマ給 概要 スマ給は株式会社アグリードが提供するWeb給与明細システムです。 利用する人数、給与明細の保存期間が設けられておらず完全無料で利用できます。 利用できる従業員数 制限なし 給与明細の保存期間 制限なし 広告表示 なし サポート なし(有償でのメールサポート、初期設定サポートあり) 公式サイト https://aglead.co.jp/sma9/ サービス名 HRMOS勤怠 概要 HRMOS(ハーモス)勤怠はIEYASU株式会社が提供するクラウド勤怠管理ソフトで、機能の1つとしてWeb給与明細機能が提供されています。 給与明細機能のみの利用であれば人数制限なく無料で利用できます。 利用できる従業員数 制限なし 給与明細の保存期間 1年 広告表示 あり サポート なし 公式サイト https://payslip.ieyasu.co/ サービス名 SmartHR 概要 SmartHRは株式会社SmartHRが提供するクラウド人事労務ソフトで、機能の1つとしてWeb給与明細機能が提供されています。 利用人数が30人までなら無料で利用できます。 利用できる従業員数 30人まで 給与明細の保存期間 制限なし 広告表示 なし サポート なし 公式サイト https://smarthr.jp/function/salary/ 05:無料で利用できるWeb給与明細システムを選ぶポイント ・自院に必要な機能が揃っているかを確認します。 →明細書の閲覧に対応する機器(PC、スマートフォン、専用のアプリ) →支給日にメール等で従業員に明細書の公開を通知する機能の有無と要否 →給与明細書以外(源泉徴収票など)の電子交付機能の有無と要否 ・利用中の給与計算ソフトと連携ができるか →Web給与明細システムの明細書データ取り込み設定を行うだけで簡単に取り込むことができるか ・無料プランで利用できる従業員数や保存期間の制限に問題がないか 06:有料プランや給与計算一体型システムへの移行 無料プランを利用して効果が実感できたのであれば、必要に応じて有料プランへの移行をご検討ください。 近いうちに給与計算ソフトの変更をお考えであれば、給与計算ソフトの機能としてWeb給与明細を利用できるクラウド給与計算ソフトへの変更がおすすめです。 Web給与明細システムへデータを取り込む手間が省け、利用するサービスを一つにまとめることが可能です。 米本合同税理士法人ではWeb給与明細システムやクラウド給与計算ソフトの導入サポートを行っております。ご興味のある方は、一度お問い合わせをお願いいたします。 →(医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年6月20日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

データ提示と考え方共有でスタッフを後押し(2023.06.16)
<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 医院全体の売上を伸ばすには、院長一人の頑張りだけでは限界があり、勤務医や受付スタッフを含めた全員の意識づけや取り組みが欠かせないようです。では、どのような働きかけが有効なのでしょうか。実際の取り組みを紹介していただきます。 目次 01:勤務医の対応の改善 02:ミーティングでアポイントの基本的な考え方を共有 03:アポイントを無駄にしない考え方 04:実際の取り組みと成果 01:勤務医の対応の改善 勤務医に、現状を理解してもらうために、客観的なデータを見せました。医院全体は売上の維持はできているが、レセプト数と実来院数が減少していること、保険点数が歯科の平均に比べ低いこと伝えました。 勤務医は、今まで保険点数のことを意識していなかったのですが、データを意識した様子でした。また勤務医の担当する患者さんに対して、治療が継続されていない場合はそのことをしっかり伝え、より良い口腔内を実現するための治療計画を立て、患者さんにしっかり説明することを求めました。治療計画を患者さんに説明し、今やっている治療を患者さんが理解することで、中断せず継続して来院してもらうための取り組みです。 02:ミーティングでアポイントの基本的な考え方を共有 スタッフには、ミーティングを行い、現状と具体的な改善策を一緒に考えました。 クリニックの売上は患者数×治療の単価で計算できます。保険点数は一定のため、患者数によって保険収入は決まります。そのため、アポイント数が重要であり、キャンセルが出た場合、それを急患でカバー出来なければ、機会損失が生まれることになります。アポイントがいかに重要かを伝えました。 また、初診の患者さんは、受付・スタッフの対応次第で次もアポイントを取るかが変わります。初めの対応の重要性を伝えました。 03:アポイントを無駄にしない考え方 ①今日のポイントは、明日のアポイントでカバーできない ホテルの空室と同様に、埋まらなかった時間は無駄になってしまいます。 ②アポイントは1週間前から先行管理する アポイント枠はその時間が近づけば近づくほど入りづらくなるため、早目に埋めていく必要がある。 ③医院側からアポイントを提案する 患者さんの都合を聞く前に、医院の都合に合わせたアポイントを提案します。 ④1日のアポイント目標を設定する 受付スタッフは、どの程度のアポイントを取ればよいのか知りません。そのためアポイントの目標を設定します。 04:実際の取り組みと成果 受付が電話の受け方を変えた結果、初診の取りこぼしが減りました。またアポイントの空きをスタッフが意識するようになり、そこにもアポイントが入るようになりました。その結果今までよりもレセプト、実日数来院数も増えるようになりました。 アポイントの目標数を設定し、実績を終礼で報告することで、スタッフもアポイント数を意識するようになりました。 制作年月:2023年6月16日 【同じ著者 執筆記事】 院長以外の対応と売上の関係を可視化 スタッフが退職しやすいタイミングと退職を防ぐモチベーションアップ策 【解説】歯科診療所の開業費用の内訳と相場を知ろう。開業資金、テナントなら8500万円。 【歯科診療所の承継開業時のポイント、注意点】コンサルタントによる解説 ミスを責めない風土がミスを減らす第一歩 制作年月:2023年3月14日

経営計画の立て方 ~会議の設計~(2023.6.16)
一体化したチーム作りも大切!部下とのコミュニケーションを仕組み化してみよう コミュニケーションは質と量維持を 前回に引き続いて「経営計画の立て方」についてお伝えします。前回は数値計画の作り方がテーマでした。しかし、施設長の仕事は、稼働率を上げることだけではありません。情報共有を正確に行い、一体化して動くチームをつくることも役割の一つです。そのためには日常的な指示命令、声掛けも大事ですが、部下とのコミュニケーションを〝仕組み〞にすることが不可欠です。なぜなら声掛けなどは、時間の余裕やお互いのシフト、そのときの気持ちに左右されますが、仕組みがあれば確実に行われるからです。実際、施設長と部署、施設長とスタッフ間のコミュニケーションのルールが定まっている施設は、離職率が低く、サービスの質も高いというのが私の認識です。 ■コミュニケーションを仕組み化する 仕組み化を検討してほしいのは、特養や老健、有料老人ホームなどの施設系サービスだとすると、以下のような会議、面談です。 □幹部会議(事務長、介護主任、看護主任などとのミーティング) □役職者会議(リーダークラスも含むミーティング) □ユニット会議(オブザーバー参加) □リーダークラスとの面談 このようにアドバイスすると、大抵の施設長は「すでにやっています」と言います。しかし、私が言っていることは「時間」「メンバー」を決める程度のことではありません。これらの会議、面談で情報共有だけでなく、新人指導やサービス向上、人間関係の構築までやってしまおうというのが〝仕組み化〞のゴールです。 ■成功事例紹介 ある特養では、ユニットリーダーのリーダースキル、経験によって、ユニット運営に大きくばらつきがありました。そこで令和4年度は、月の前半のユニット会議の内容を、ユニットごとに話し合う内容に差異がないようルール化し、施設長がオブザーバー参加することにしました。口を出すことは控え、末席で見守り、会議の最後にできるだけ良い部分を褒めることに徹しました。 それを補完するために、月の後半にリーダークラスとの面談を行うことにしました。面談では、以下のような点を報告してもらい、それに助言をする形式で進めました。手順は、以下のようになります。 【リーダー面談の内容】 ①ユニット会議の振り返りうまくいったことと、そうでないことをお互いに振り返る ②新人指導の状況スキル、知識面は指導チェックリストをもとに確認。加えて、メンタル面で気になること(モチベーションが落ちていないか)をチェック。 ③所属スタッフの状況 ・成長が見られた職員(事例とともに) ・課題のある職員(現状の指導状況とともに) ④リーダーとしての成果 ・今月、がんばったこと ⑤リーダーとしての課題 ・今月、課題に感じたこと 継続することが大事ですから、最初から無理をせずに、1回20分以内としました。また、それまでの経緯を確認できるように、ユニットリーダーが事前にA41枚の面談フォームを作成することをルールとしました。 このように、幹部会議、役職会議なども「議論の順序」「内容」「事前準備資料」などをルール化しところ、ユニットリーダーのスキルに差がなくなり、施設全体の一体化も進み、稼働率アップ、離職率ダウン、残業時間カットなど、様々な成果がありました。 ■失敗しないためのポイント ここで気をつけたいのは、事前に準備するフォーム作成に、手間をかけないことです。重要なのは、コミュニケーションの質と量を十分に維持すること。コミュニケーションすることが負担になってはいけません。 また、会議や面談以外のコミュニケーションも含めて計画することが大切なポイントです。最近は、新型コロナの影響でコミュニケーションがIT化されています。チャットなどは、それはそれでとても有用なツールですが、顔を合わせてのコミュニケーションが不足すると、予期せぬ問題が起きることもあります。令和5年度の経営計画では、こうしたシステムと、リアルな場をバランス良く行う仕組みを、あらかじめ組み込んでいただきたいと思います。

【後編】営業活動の指導ポイント(2023.6.8)
介護現場における営業のキホン! 営業活動の指導ポイント「営業の目的・効果・考え方を伝える」 <著者> 株式会社ねこの手 代表 伊藤亜記 第159回 営業活動の指導ポイント―後編 法人本部担当者も同行で効果的な営業を 「営業活動を行う管理者への指導ポイント」の前半では、具体的なスキルに加えて、営業の目的・効果・考え方を担当者にしっかり伝えていくことが重要であることをお伝えしました。後編では、新規の同行営業のポイントについて触れます。 〈新規〉同行営業 /「誰が」「どこへ」「何で」同行するのか、状況に応じて最も効果的な同行を実施します。 ⑴自治体への挨拶(事業所開設、新規事業開始など) 新規事業所の出店の際、担当者の紹介と兼ねて、管理者などの上長同行で、新事業のコンセプトや地域でより多様なニーズに応えていこうとしている旨を報告しに行きましょう。また、そのエリアにはまだないサービスで、必要とされているものは何なのかもヒヤリングしてください。 ⑵強大な医療法人 地域で強大なネットワークを持つ医療法人とは必ず良い関係を作っておく必要があります。総合病院はもちろん、付随する介護老人保健施設、訪問看護ステーションなど、取引先の宝庫といえます。開設時の挨拶では、法人上層部、管理者、ケアマネジャーなどに挨拶をしておきます。 ⑶撤退情報のある事業所 経営困難となり閉鎖・撤退を考えている事業所がある場合は、必ず情報をキャッチしてください。まるごと任せていただけるよう、体制が整っていること、いつでも受入可能ということを法人上層部が担当者に伝えてください。撤退に踏み切る事業者は、抱えているお客様や従業員の今後をとても心配しているはずです。相手の気持ちを汲み取り、誠実に確実に対応できることを伝え、安心して任せてもらえるようにしましょう。 ⑷負の遺産があり、受注がないエリア 過去に大きなクレームがあったなど、地域の担当者の信頼回復が困難なエリアは、法人上層部によるトップ営業が効果的です。但し、1回限りのチャンスと捉え、確実に信頼されるトーク、風貌を心がけてください。 ⑸事業所などの評判をヒヤリング 特に、過去に大きなクレームを出したという訳ではないのに、なかなか紹介の事業所数が増えない場合、自治体や地域のケアマネジャーからの評判が悪い可能性があります。 事業所などの課題をヒヤリングしてみてください。法人上層部や品質向上責任者が同行し、自治体と地域のケアマネ連絡会(協議会)の役員には確実に訪問してください。ヒヤリングの最中は、必死でメモをとりながら、謙虚な姿勢で相手の話に耳を傾けます。意見を頂ければ、その課題に対する具体的な対策や実際にその対策に取り組んだ結果報告など、次回の訪問へとつなげます。また、実際に改善することで、確実に信頼を獲得することができます。 何度か訪問しても、なかなか意見を頂けない場合は、自社ケアマネジャーにもヒアリングしてみてください。 ⑹過去の取引先(クレームなどにより取引停止となった) これも、⑸と同じように、「どのように改善していくのか」という対策を、具体的に話すことができるよう準備しておいてください。 ⑺ケアマネ連絡会(協議会) 原則、ケアマネ連絡会(協議会)の参加対象者はケアマネですが、連絡会のリーダーとの関係が築けているのであれば、「勉強のため、ぜひ参加させてください」とお願いしてみてください。 地域で多くのケアマネが一同に会する場は、事業所や名前を覚えていただくチャンスです。初回の参加では、とにかく熱心に話を聴く姿勢を示し、数回参加したところで、場の雰囲気や状況がつかめてきたら、開始前や終了のタイミングを見計らって挨拶をしてください。エリア内に複数のサービスがある場合には、法人上層部が同行することにより、広い範囲での紹介が可能なため、効果的といえます。ここで、名刺交換だけでも出きれば、次回、そのケアマネジャーの事業所訪問の際、話がしやすくなります。

開業に係る費用と準備資金について(2023.06.08)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 医師や歯科医師が開業しようとしたら一体どれぐらいのお金が必要でしょうか。今回は開業に関するお金についてお話します。 目次 ① テナント代 ② 医療機器購入費用 ③ その他の費用 ④ ローコスト開業のメリット ① テナント代 開業するには、まず診療する場所が必要です。 テナントか土地建物を購入しての開業かどちらかになりますが、 今回は一般的なテナント開業した場合で考えてみましょう。 家主と賃貸借契約を結ぶと発生するのが家賃・保証金・仲介手数料です。 保証金の目安は家賃の6ヶ月分から12ヶ月分程度になります。 仲介手数料の目安は家賃の1ヶ月分程度です。 賃貸借契約が完了すれば次は内装工事をしなければなりません。 昨今、物価高騰の影響を受け、内装工事の単価も上がっております。 目安としては1坪当たり80万円前後ぐらいです。 診療科 坪数 内装代 内科 45坪 3,600万円 整形外科 60坪 4,800万円 耳鼻科 50坪 4,000万円 皮膚科 40坪 3,200万円 歯科 35坪 2,800万円 戸建て開業となると土地建物購入代も入れて1億円を超える費用が掛かります。 ② 医療機器購入費用 開業にあたって不可欠なのが医療機器です。決して安い買い物ではありません。 患者様にできるだけ理想とする医療を提供したいというお考えで、なかなか妥協できないものです。 下記の表は医療機器購入の目安です。 診療科 医療機器代 内科 2,000万円 X線装置・CR装置・エコー・血液検査装置・電子カルテ・心電計 整形外科 2,700万円 X線装置・DR装置・骨密度装置・リハビリ機器・電子カルテ 耳鼻科 1,500万円 ユニット・耳鼻咽喉スコープ・ネブライザー装置・オージメータと聴力検査室 皮膚科 1,300万円 顕微鏡・レーザー装置・電子カルテ 歯科 2,200万円 ユニット・パノラマX線装置・デジタル線装置・オートクレープ・口腔外バキューム 整形外科の場合MRI装置も購入となると8,000万円から1億円ぐらいになります。 歯科の場合はユニット3台で計算しており、これにCT装置も購入となると4,000万円ぐらいになります。 ③ その他の費用 その他の費用として、最近よく実施されるのが内覧会です。 開業前に医院内のお披露目をされる医院が増えております。内覧会実施には100万円前後の費用がかかります。HPの作成も目安としては50万円前後をお考え下さい。 ただしHPについては予算を抑えて作成することも可能です。 ペライチやgoogle sitesなどを使えば無料でHPを作成できますし、日本歯科医師会で は会員に無料でHPを作成できるサービスを行っています。 その他の大きな費用としては医師会・歯科医師会の入会金があります。 ④ ローコスト開業のメリット 開業資金は内科で6,000万円、整形外科で8,500万円、耳鼻科で5,500万円、皮膚科で5,000万円、歯科で7,000万円ほどかかります。 金融機関からお金を借りて開業すればその後、長い期間借入金の返済をしなければ なりません。 そこで少し視点を変えて安く開業出来ないか? 2,000万円~3,000万円ぐらいで 開業する方法はないか? 第三者承継によるローコスト開業であれば可能です! 現在医療機関の高齢化が進んでおり、しかも後継者問題を抱えております。 第三者承継とは後継者のいない医院を、新規開業をお考えの先生が引き継いで開業 するという方法です。 少し古いかもしれませんが医療機器はそろっており、すでにスタッフがいるので 人材採用の手間と人材教育の時間が省けます。 何よりも大きなメリットは開業時から患者数を確保できることです。内装と医療機器をそのまま使用すると開業に係る費用は医師会及び歯科医師会の入会金とHPの作成料、その他備品などで半分以下の予算で開業できるのです。 借入返済の負担やスタッフ採用および教育の悩みから解放されるので、ローコスト開業 も新規開業のご検討の1つに加えてはいかがでしょうか。 今回ご紹介しました開業までに係る費用と準備金については、先生のご状況により異なります。 専門的な調査・分析・交渉や調整などが必要となることもありますので、税理士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【前編】営業活動の指導ポイント(2023.5.31)
介護現場における営業のキホン! 営業活動の指導ポイント「営業の目的・効果・考え方を伝える」 <著者> 株式会社ねこの手 代表 伊藤亜記 営業の目的・効果・考え方を伝える 「介護現場における『営業の基本』」は、非常に多くの方が興味を持つテーマの一つです。今回は、前編と後編に亘って営業活動を行う「管理者への指導ポイント」について、紹介していきます。 ケアマネジャーから顧客を紹介してもらえない場合、考えられる理由として、大きくは次の事柄があげられます。 ≪そもそも、営業に行っていない / 訪問したが担当者不在で、それ以来行っていない≫ ≪営業したが、顧客を紹介してもらえない(営業の質が低い、訪問回数が少ない、地域の信頼がない)≫ それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。 目次 01:「営業に行っていない」ケース 02:「営業したが、紹介してもらえない」ケース 「営業に行っていない」場合 営業に行ってない管理者などは、「営業の必要性を理解してない」、もしくは「営業はとても難しく、苦手だ」と思い込んでいる可能性があります。 まずは、営業の必要性や効果、そして「営業の考え方」をしっかり納得できるよう、理解が必要です。 (1)事業所等の現状分析 まずはPLをもとに、現状分析してください。客観的に数字を分析することで、「顧客数」「顧客単価」がどれくらい利益率に影響しているのかなど、管理者自らが理解できるような指導が重要です。 (2)営業の「目的と効果」を具体的に考える 事業所をどのように活性化させたいのか。そのために必要な「売上・利益の目標」、その目標数値を達成するために必要な顧客数を考えさせます。「とにかく沢山」とか、「できるだけ多く」という抽象的な目標よりも、効果的です。 (3)「営業の考え方」を説明 具体的な目標を設定した上で、「営業とは何か」ということを分かりやすく伝えます。他事業所に対して管理者などが行うべき営業とは、下記3点です。 ①自分の顔と名前、事業所名、所在地を覚えてもらう ②どのように役に立てるかを具体的に、一生懸命伝える ③「ぜひ、お任せてください!」と言い切る 高度な営業スキルや難しいトークではなく、明るく・元気であることが大切です。 営業したが「紹介してもらえない」場合 営業訪問したにもかかわらず、顧客を紹介してもらえない場合、ほとんどは営業の質が低いことが考えられます。 一方的なPUSH型の営業となっている可能性があります。同行することにより、管理者などが苦手としている部分を確認し、具体的な指導をしてください。 (1)営業の質が低い ①サービスを理解する 自事業所などで提供可能なサービスはもちろん、エリア内で法人が提供している他のサービスも案内できるよう、「サービス知識」とその「売り」は最低限把握しておいてください。 ②成功事例を準備する ADL向上・要介護度改善、認知症の周辺症状改善などの成功事例を最低5つ用意してください。 ③トークスキルを磨く 表情:とにかく「笑顔」は基本です。但し、こわばった笑顔は相手にも緊張感や警戒心を持たせることになります。自然な笑顔で接するコツとして、まずは担当者と「会えたこと」を素直に喜びましょう。 話すスピード:「あまり時間がとれない」と言われても、こちらが急いで話をすればするほど、相手も気持ちが焦ってきて落ち着きがなくなるでしょう。 相手に席を立たれてしまっても、「お時間をいただいて、本日は本当にありがとうございました。次回、またお役に立つ情報がありましたら伺います」と笑顔でお伝えし、次回の訪問につないでください。 (2)訪問回数が少ない よくある訪問回数が少ない理由です。 ①担当者の対応が冷たかったことで、行き辛くなっている ②「何かあれば連絡します」と言われ、待っていれば良いと思い込んでいる ③負の遺産がある(過去のトラブル・クレーム) 状況をよく説明した上で、前向きに営業を継続していけば、必ず信頼回復に結びつく旨を伝えてください。 監修:株式会社高齢者住宅新聞社 (2023年4月28日時点での情報に基づき作成)

認定医療法人制度が延長! 最も人気のある医療法人の相続対策を解説!(2023.05.29)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 2017年10月に、認定医療法人制度が大幅に改正されました。特に認定要件において大幅な緩和があり、出資持分の対策が可能となった医療法人が多数出てきています。この制度は2023年9月までの期限となっておりましたが、延長され2026年12月までとなりました。今回は認定医療法人制度の改正前と改正後の違い・メリットデメリットや移行スケジュールについて解説いたします。 目次 01:改正前と改正後との要件の違い 02:メリット・デメリット 03:認定要件 04:移行スケジュール(相続やみなし贈与が発生していないケース) 05:認定医療法人移行後の監査の必要性 01:改正前と改正後との要件の違い 改正前 改正後 ・役員数(理事6人以上、監事2人以上) ー ・病院、診療所の名称が医療連携体制を担うものとして医療計画に 記載されていること ー ・役員等のうち親族・特殊の関係がある者は1/3であること ー ・事業運営及び役員等の選任等が定款に基づき行われている こと ー ・社会保険診療報酬(介護保険・助産を含む)に係る収入金額が全収入額の80%を超えること ・社会保険診療報酬(介護保険・助産・予防接種含む)に係る収入金額が全収入額の80%を超えること ・自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算 ・自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算 ・医業収入が医業費用の150%以内であること ・医業収入が医業費用の150%以内であること ・役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること ・役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること ・法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと ・法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと ・法令違反がないこと ・法令違反がないこと ー ・株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと・遊休資産を過剰に保有しないこと 判定者 税務署が個別に判断 判定者 厚生労働大臣が要件を満たしていることを確認して認定 改正前と改正後の要件の違いは上記の通りです。一番の大きな違いは“親族経営が出来ること”です。当初は認定医療法人に移行するには社員・理事の親族割合を1/3以下にする必要がありました。1/3以下にすれば親族内の議決権も1/3以下となり様々な決議について親族間のみで決定できない等運営上のリスクがあったため移行を断念する医療法人が多くありました。しかし改正後はこの要件は廃止されているため親族経営でも認定医療法人へ移行する事が可能となっております。 02:メリット・デメリット メリット 1 出資者に相続が発生しても出資持分に対する相続税はかかりません。 2 出資者の1人が持分を放棄しても他の出資者に贈与税はかかりません。 3 出資者が全員持分を放棄しても医療法人に贈与税はかかりません。 4 出資持分の払戻しに関し、福祉機構からの借入制度があります。 5 持分なし医療法人移行6年後に法人格の分割が可能となります。 6 地方税の均等割額が最低額となります。 デメリット 1 出資者は、医療法人に対する財産権が無くなります。 2 交際費の損金不算入額が増加する可能性があります。 3 認定医療法人の要件を持分なし医療法人移行後6年間満たし続けなければなりません。 メリットは何と言っても出資持分に対する相続税・贈与税を回避することが出来ることです。特に病院ですと出資持分の評価が数十億円になっているケースもあり、個人で相続税を負担することが極めて困難です。認定医療法人に移行する事でこのリスクを回避することが出来ます。 反対にデメリットは出資持分の払戻が出来なくなることです。元々出資持分を保有していればその割合に応じて医療法人の資産の払戻請求が可能ですが、認定医療法人に移行する際にその出資持分については放棄することとなりますので財産権を失うこととなります。また後述の認定医療法人の要件を6年間満たし続ける必要があります。 03:認定要件 1 .役員・役員関係者・従業員・関係会社などに特別の利益を与えることはできません。 2.給与年収は原則3600万円までです。 (医師については医師としての業務を行っていればその分については3,600万円以上支給することが可能な場合があります。) 3.いわゆるMS法人と取引をすることができません。(医療法人の役員が、役職員を兼務しなければ可能です。) 4.自費診療割合を20%以下にする必要があるため、美容整形やメディカルツーリズムなどで外国人患者が多く、自費診療割合が高い医療機関は対策を考える必要があります。 5. 自費患者に対する請求方法が社会保険診療報酬と同一の基準で計算しなければなりません。 6 .使用していない不動産や、現預金などを多額に保有することはできません。(原則年間の医業費用まで。) 7 .医業収益を医業費用の150%以内にする必要があります。 8 .診療報酬不正請求をはじめとした法令違反を行ってはいけません。 認定要件については上記8つとなっています。その中でも1の特別の利益供与の要件はかなり厳しいものになっています。よくご相談頂くケースとしては役員車両・役員社宅・不動産賃貸・非常勤役員の報酬・貸付金・MS法人との取引ですが、場合によっては取引の中止や個人への資産の売却を行う必要があります。 04:移行スケジュール(相続やみなし贈与が発生していないケース) 認定医療法人の移行スケジュールについては以下の通りとなります。 01 現状把握・移行の必要性の検討 まずは現在の出資持分の所有者・評価額・社員構成・払い戻しを行う出資者の有無・移行要件のうち問題となりそうな部分などの把握を行い、移行の必要性を検討します。また、移行する場合、認定医療法人以外にも社会医療法人・特定医療法人・一般の持分の定めのない医療法人(課税型・非課税型)への移行の可能性も合わせて検討します。 02 認定医療法人の要件の事前監査 制度が大幅に緩和されたとはいえ、認定要件が大きく分けると8要件(役員兼務禁止要件を入れると9要件)あるので、これら一つ一つについて事前監査を行い、問題があった場合には是正を行い、移行を中止するほどの問題があった場合には移行を中止することもあります。この事前監査自体は法的に要求されているものではありませんが、この監査を行わず申請時に問題が発覚した場合は、スケジュールに大幅な乱れが生じ、最悪の場合移行できない可能性があるため、必ず事前監査を行う必要があります。 03 問題の是正・認定医療法人申請書の作成・添付書類の準備 上記(2)で発覚した問題の是正を行います。場合によっては是正期間が長期にわたるものもあります。また、この段階で認定医療法人申請書の作成を開始し、必要な添付資料の準備を行います。 04 認定医療法人事前申請 本申請を行う前に、厚生労働省へ事前申請を行います。基本的には全ての是正が終了し、申請書・添付書類が全て揃った段階で行いますが、スケジュールがタイトな場合は部分的に事前申請を行うケースもあります。 05 認定医療法人本申請・認定 認定医療法人の本申請を行います。この制度の期限である2020年9月末までに認定を受ける必要があります。通常、本申請から認定まで3ヶ月が標準期間とされていますが、事前申請を行うことで大幅に期間を短縮することができます。(弊社の事例では1ヶ月を切ったケースがあります。) 06 出資持分の放棄、持分なし医療法人への移行 出資者全員による出資持分放棄をし、持分なし医療法人への定款変更・厚生労働省への報告をします。これについては、認定医療法人移行後3年以内にする必要があります。また、出資持分の放棄に同意して貰えなかった出資者への払戻額などの交渉についてはこの段階ですることが多いです。 07 贈与税の申告 持分なし医療法人へ移行した年の翌年3月15日までに贈与税の申告をする必要があります。ただし、この申告はあくまで認定医療法人へ移行したため贈与税が非課税となる申告をするものであるため、贈与税を支払う必要はありません。 08 認定医療法人の認定要件の維持・1年ごとの報告 持分なし医療法人への移行の定款変更認可から6年間は認定要件を維持し続ける必要があります。この要件を満たせなくなった場合には07で非課税として申告した税額が医療法人に課税されてしまうため、必ず満たし続ける必要があります。またその状況についての報告を毎年、移行後x年間3ヶ月ごとにする必要があります。 認定医療法人の特徴としては認定医療法人へ移行し持分なし医療法人となってから6年間要件を満たし続ければその後は要件を満たす必要がなくなり7年目以降は自由に運営ができる点で、社会医療法人や特定医療法人とは異なります。 05:認定医療法人移行後の監査の必要性 認定医療法人の要件を満たせなくなった場合には医療法人へ莫大な贈与税が課税されてしまい、医療法人の存続に多大な影響を及ぼす可能性があります。 また認定を受けた後も医療法人は様々な取引・活動をするため、その度にその取引などが認定医療法人の要件を逸脱していないかの疑義が発生します。さらに不定期に厚生労働省の調査が行われると言われており、調査対策などを万全に行っておく必要もあります。 そこで米本合同税理士法人では、認定医療法人移行後より、認定要件を満たし続けているかの監査を定期的に行い、不測の事態に備えることで、医療法人への贈与税課税を完全に防止するよう努めています。 認定医療法人制度は出資持分に悩んでいる医療法人にとっては救世主となりうる制度ですが、要件等も複雑で認定後の運営についても細心の注意を払う必要があります。米本合同税理士法人では認定医療法人について多数のノウハウを有しておりますので認定医療法人への移行をご検討の方は一度ご相談下さい。 →(医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> Twitterでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年5月24日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

新型コロナ対応の特例見直しについて(2023.05.23)
<編集>株式会社日本経営 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5月8日に2類から5類に変更されたことに伴い、診療報酬特例や病床確保料などの医療機関への支援も見直しが行われる。当面は縮小しながら継続し、今夏に感染状況や医療体制の状況を見極める。 目次 1.疑い患者は限定しない診療体制へ 入院調整を新たに+950点で評価 2.外来は最大6.4万施設体制へ進捗管理 罹患・疑いのみの理由での拒否は不可 3.外来の高額薬剤は公費支援を継続 高額療養費限度額は一定の減額に 4.新型コロナ対応の特例見直しで疑義解釈 5.「感染対策向上加算」などの施設基準の考え方も整理 1.疑い患者は限定しない診療体制へ 入院調整を新たに+950点で評価 政府の新型コロナウイルス感染症対策本部がまとめた、新型コロナの5類変更に伴う医療提供体制や公費支援の見直し策によると、診療報酬特例については、暫定的な措置を行いつつ、今夏までに感染の拡大や医療機関の逼迫度合いなどを見極め、検証を行いながら必要な見直しを行う。その上で、2024年度診療報酬改定において、新型コロナ対応を組み込んだ新たな報酬体系に切り替える方針だ(資料2)。 (資料2)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う 医療提供体制及び公費支援の見直し等について(ポイント) *出典:新型コロナウイルス感染症対策本部(第103回 3/10)《首相官邸》 5月8日以降の診療報酬特例の主な変更点を「外来」の観点で見ていくと、「必要な感染対策を講じた上での疑い患者の診療」(院内トリアージ実施料300点)は、空間分離・時間分離に必要な人員、PPE(個人防護具)等の感染対策を引き続き評価した上で、かかりつけの患者以外にも対応するなど、受け入れ患者を限定しない体制を8月末までに整備することを要件に現在の点数を維持する。幅広い受け入れ体制を整備しない場合は147点に引き下げる。「感染疑いの初診患者を発熱外来で診療した際の上乗せ250点」(発熱外来の標榜・公表が要件。3月は147点)は予定通り3月末で終了とした。 「コロナ患者への対応」(救急医療管理加算950点、ロナプリーブ投与時の3倍特例あり)は、重症化率の低下により業務が一定程度効率化していることなどを踏まえる一方、類型変更に伴い、療養指導やフォローアップ、これまで行政が担ってきた入院調整においては医療機関の果たす役割が大きくなることから、それらの業務を評価する。3倍特例は終了し、コロナ患者に療養指導(家庭内感染の防止や重症化した場合の対応などの指導)を行った場合は147点、入院調整を行った場合は950点/回に組み替える(資料2)。 (資料2)診療報酬の取扱い(新型コロナの診療報酬上の特例の見直し①) *出典:新型コロナウイルス感染症対策本部(第103回 3/10)《首相官邸》 このほか、感染症法に基づく自宅・宿泊療養の要請、外出制限などを踏まえた「電話・オンライン診療の特例」(初診214点等)は経過措置を設け、7月31日で終了する。 2.外来は最大6.4万施設体制へ進捗管理 罹患・疑いのみの理由での拒否は不可 医療提供体制の確保については、5類変更に伴う「幅広い医療機関」による対応に向け、次のような策を講じる。 「外来」の観点で見ていくと、約4.2万の医療機関で対応しているが、コロナ前に季節性インフルエンザを診療していた医療機関を中心に、最大6.4万の医療機関での対応を目指す。診療の手引きなどを含め、分かりやすい啓発資材を作成し、医療機関に周知するとともに、定期的に対応医療機関数を把握・進捗管理しながら維持・拡大を図る。 一方、これまで新型コロナは、正当な事由がない限り医師が診療を拒めない医師法上の「応召義務」の適用外とされてきたが、5類変更後は、新型コロナの罹患やその疑いのみを理由とした診療拒否は「正当な事由」に該当しないことが明確化される(資料3)。 (資料3)位置づけ変更に伴う医療提供体制の見直し(外来・入院・入院調整) *出典:新型コロナウイルス感染症対策本部(第103回 3/10)《首相官邸》 3.外来の高額薬剤は公費支援を継続 高額療養費限度額は一定の減額に 患者に対する公費支援の見直しも行われる。5類変更によって医療費公費負担の根拠がなくなるため、原則、患者の自己負担となる。ただし、急激な負担増を避けるため、外来医療費では高額なコロナ治療薬の公費支援を継続する。入院医療費では、高額療養費の自己負担限度額から2万円を減額する(2万円未満の場合はその額)。いずれも当面、9月末までの措置とする。有症状者などの検査費用に対する公費支援は終了する。 なお、2023年度のワクチン接種については、▽秋冬に5歳以上のすべての者を対象に接種を行う▽高齢者等重症化リスクが高い者等には、秋冬を待たず春夏にも追加で接種を行う▽引き続き自己負担なく受けられるようにする-との方針が示されている。 4.新型コロナ対応の特例見直しで疑義解釈 そして4月17日、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症の5類感染症に移行後の診療報酬上の特例の取扱いについて疑義解釈資料を作成し、地方厚生局などに事務連絡した。前途のように、感染疑い患者の外来診療における「院内トリアージ実施料」の算定で、類型変更後もこれまで通り300点を算定するには、患者を限定しない受入体制に2023年8月末までに移行する必要がある。疑義解釈は、当該要件を満たす施設であることを明示するための方法として、算定医療機関に患者を限定しない受入体制への移行開始時期を記載した文書の院内掲示を求めた。 高齢者施設等に入所する高齢患者をリハビリテーションや介護サービスとの連携が充実した病棟に受け入れた場合に14日間を限度に「救急医療管理加算1」(950点)を算定できる特例についても詳しく解説した。 算定対象病棟の要件では、感染管理や新型コロナ患者発生時の対応において地域の介護保険施設等と連携することが求められるが、この連携先となる介護保険施設等には、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設、認知症対応型共同生活介護事業所、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、短期入所生活介護事業所、短期入所療養介護事業所が該当することを明記。 連携の具体的内容については、▽介護保険施設等からの電話等による相談への対応ができる▽介護保険施設等の入所者が新型コロナに感染した場合に、当該患者やその看護にあたっている者からの求めに応じ、緊急往診ができる▽緊急往診が難しい場合はオンライン診療ができる▽緊急往診やオンライン診療を実施した際に入院の要否の判断や入院調整が行える-などを想定していることを明らかにした。 5.「感染対策向上加算」などの施設基準の考え方も整理 「感染対策向上加算1、2」と「外来感染対策向上加算」の施設基準における患者の受入体制に関する規定について、5類感染症移行後の考え方も整理。いずれの加算も、新興感染症発生時に都道府県等の要請に応じて感染患者や疑い患者などを受け入れる体制を備えていることが求められるが、類型変更後の取扱いに関しては、▽「感染対策向上加算1、2」は現時点では、過去6カ月以内に新型コロナ感染患者に対する入院医療の提供の実績がある▽「外来感染対策向上加算」は、受入患者を限定しない、または受入患者を限定しない形に23年8月末までに移行することとしている-場合が該当するなどと説明した。 また、類型変更前から入院している患者における5月8日以降の特例の扱いについては、▽5月31日までの間は変更前の特例に基づいて算定する▽6月1日以降は当該患者の入院日にかかわらず、変更後の特例に基づいて算定する-とした。 (2023年4月28日時点の情報に基づき作成) 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

高齢者施設における医療提供などを議論 意見交換会(2023.5.23)
【意見交換会】高齢者施設における医療提供などを議論 2024年度の同時報酬改定に向けての背景と目的 協力医療機関が特定機能病院の施設を問題視 中央社会保険医療協議会・総会と社会保障審議会・介護給付費分科会は4月19日、2024年度の診療報酬と介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定に向けた2回目の意見交換会を開いた。今回のテーマは「高齢者施設・障害者施設における医療」と「認知症」。議論では、協力医療機関に特定機能病院を選定している高齢者施設等が一定数あることが明らかになり、問題視された。 高齢者施設では入所者の高齢化や平均要介護度の上昇を背景に、医療ニーズが年々高まっている。このため、入所者が可能な限り住み慣れた施設での生活を継続できるようにする観点から、施設の医師などによる医療提供体制の充実、協力医療機関等による相談体制の充実、バックベッド機能の整備-などを通じた医療ニーズへの対応力の向上が強く求められている。 だが、高齢者施設における医療提供の現状をみると、▽介護医療院と老人保健施設は施設によって対応可能な医療ニーズに差がある▽特別養護老人ホームは配置医師の不在時に急変時や看取りの対応が困難な場合がある▽医師の配置義務がない特定施設や認知症対応型グループホームは、外部の医療機関などとの連携体制構築が急務となっている-など、施設類型に応じた様々な課題が生じている(参考資料1)。 (参考資料1)介護保険施設の比較 出典:令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第2回 4/19)《厚生労働省》 また、医療機関との連携では、高度な医療を担う特定機能病院などを協力医療機関としている施設が一定数存在し、こうしたケースでは医療機関の医療機能と、緊急時の相談対応や往診といった施設や入所者が求める医療の内容が必ずしも一致していない可能性がある。 特養の急変時や看取り時の対応で特定行為研修修了看護師の活用求める提案も 特養における急変時や看取りの対応について、池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、特養の医療ニーズが高まっているなか、24時間365日の対応を配置医師だけに頼ることには限界があると指摘。外部の医師などとのよりスムーズな連携が可能になるような制度の見直しを要望した。田中志子委員(日慢協常任理事)は、医師の包括的な指示に基づく医療の提供が可能な特定行為研修修了看護師の活用を提言し、「特養への配置を進めるインセンティブを検討してはどうか」と述べた。 一方、松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、一部高齢者施設が特定機能病院などを協力医療機関に選定している現状に、「機能分化の観点から疑問を感じざるを得ない」と強い問題意識を表明。長島公之委員(日本医師会常任理事)も、「特定機能病院との名ばかりの連携ではなく、地域包括ケア病棟や在宅療養支援病院、有床診療所などと日頃から連携体制を構築することが重要だ」と苦言を呈した もう1つのテーマである認知症では、▽単身世帯の高齢者の認知症の早期発見と適時適切に医療・介護、服薬支援・生活支援等を提供するための方策▽医療機関・介護保険施設等に認知症の人に関する理解を広め、認知症への対応力をさらに向上させるための方策▽多職種で連携しながらBPSD(行動・心理症状)への対応やBPSDを未然に防ぐケアを推進するための方策-などが検討課題であることが確認された(参考資料2)。 (参考資料2)認知症施策の総合的な推進について 出典:令和6年度の同時報酬改定に向けた意見交換会(第2回 4/19)《厚生労働省》 2024年度の同時報酬改定に向けた意見交換会について 開催する背景や目的 2024年度は、6年に一度の診療報酬、介護報酬及び障害福祉サービス等報酬の同時改定になるとともに、医療介護総合確保方針、医療計画、介護保険事業(支援)計画、医療保険制度改革などの医療と介護に関わる関連制度の一体改革にとって大きな節目であることから、今後の医療及び介護サービスの提供体制の確保に向け様々な視点からの検討が重要となる。 また、医療と介護を取り巻く現状としては、いわゆる団塊の世代が全て75歳以上となる令和7年(2025年)にかけて、65歳以上人口、とりわけ75歳以上人口が急速に増加した後、令和22年(2040年)に向けてその増加は緩やかになる一方で、既に減少に転じている生産年齢人口は、令和7年以降さらに減少が加速すると見込まれている。 ポスト2025年を見据え、医療・介護ニーズが増大する一方で、その支え手は減少が見込まれている中、あるべき医療・介護の提供体制を実現していくことが強く求められている。また、限りある人材等で増大する医療・介護ニーズを支えていくため、医療・介護提供体制の最適化・効率化を図っていくという視点も重要である。 このような背景を踏まえ、中央社会保険医療協議会総会及び社会保障審議会介護給付費分科会において、診療報酬と介護報酬等との連携・調整をより一層進める観点から、両会議の委員のうち、検討項目に主に関係する委員で意見交換を行う場を設けることとし、中央社会保険医療協議会総会及び社会保障審議会介護給付費分科会がそれぞれ具体的な検討に入る前に、以下のテーマ・課題(案)に主に関わる委員にて意見交換を行う。 テーマ 1.地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携 2.リハビリテーション・口腔・栄養 3.要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療 4.高齢者施設・障害者施設等における医療 5.認知症 6.人生の最終段階における医療・介護 7.訪問看護 8.薬剤管理 9.その他 開催時期と頻度 第1回 2023年3月15日 上記テーマ1、2、3 第2回 2023年4月19日 上記テーマ4,5 第3回 2023年5月18日 上記テーマ6,7 ※テーマ8については各テーマ内で議論を予定 (2023年4月28日時点の情報に基づき作成)

経営計画の立て方~令和5年度~(2023.5.19)
法人内に「制度改正対策PT」を結成しよう!令和5年度の経営計画の立て方を解説 施設長の中には、次年度の経営計画に頭を悩ませている人もいらっしゃると思います。特に社会福祉法人では、この時期に計画を立てて理事会で承認してもらうという手続きをとっているところも多いのではないでしょうか。そこで今回は、令和5年度の経営計画立案のポイントをお伝えします。 ■迷ったら「客数」×「客単価」 2月1日に発表された「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要」によると、令和3年度の全サービスにおける収支差率は3.0%でした。令和2年度は3.9%でしたから、0.9%下落しています。この調査は、ロシアによるウクライナ侵攻前に行われたものですから、新型コロナウイルスによる収入減はあったと思いますが、物価高の影響は受けていません。物価高、燃料高、資材高のトリプル高にみまわれた令和4年度は、さらに収支差率(利益率)が下がっているものと予測されます。実際、冬の光熱費が倍になったという声もちらほら聞こえます。 さらに最近、大手電力会社7社が電気代の値上げを申請しました。施設でも光熱費の負担増は免れないでしょう。となると、そのコストを吸収するために、次年度は収入の最大化は不可欠です。収入UPをどうやって実現するかをとことん突き詰めましょう。 しかし目標を「稼働率」という言葉にすると、それを達成するためのアクションプランが漠然となってしまいがちです。より具体的な目標にするためには、目標売上を「客数」と「客単価」に置き換えて、それぞれを構成する要素のうち、弱い部分をどう改善するかを考えるのが得策です。例えば、以下のようになります。 「客数(のべ利用者数)」構成要素 □新規利用者数□利用回数(日数)□空所期間□キャンセル数 「客単価(利用単価/回)」構成要素 □要介護度□加算□室料□管理費・共益費□食費 ■経営計画の事例 ある定員30名のデイサービスセンターでは、令和4年11月の収入が490万円でした。しかし、次年度のコスト増を考えると月商を630万円以上にする必要があります。細かく分析すると、客単価は1万円で問題はなさそうです。となると、差額の140万円をクリアするには、客数を140人(1万円×140人)増やす必要があります。そこで、以下のような目標を立てました。 収入800万円達成 客単価 1万円を維持 客数140人アップ 平均利用回数7回↓8回新規利用者18人増 このように平均利用回数を1回増やし、利用者数を18人増やせば140万円以上の収入を得ることができます。そのために、既存利用者のモニタリング等の機会に声掛けして回数増を促し、新規利用者を増やすための営業を強化することが次年度の計画ということになります。構成要素を分析して目標を具体化すると、誰が何をすべきかが明確になります。 ■法改正対策チーム 令和5年度の計画が例年と比べて違うのは、翌年に介護保険制度改正・報酬改定があることです。これからは報酬単価や要件を決める介護給付費分科会が定期開催されます。本紙面でも分科会の議論をもとにした様々な情報が発信されるはずです。次期改正は、医療介護同時改正でもあることから、大きな見直しがあると予測されます。しっかりと準備したいところです。 そこで令和5年度の計画には、「制度改正対策プロジェクトチーム」の結成を入れてほしいと思います。チームの役割は、こうした情報をもとに、何を準備すべきかを考えることです。これを1年間続けるだけで、制度改正の中身が決まったときに、慌てずに済みます。ある法人では2021年改正の前年に、以下のように実施しました。 メンバー:施設長、相談員、ケアマネジャー、介護主任、看護主任 実施日:介護給付費分科会の翌週 時間:30分 実施内容:□資料の読み合わせ□ディスカッション 情報発信:ディスカッションの内容を各部署の会議で3分程度にまとめて発信 皆さんもぜひ実施してみましょう。

開業により知っておきたい税務知識(2023.05.16)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 開業後、事業の収支が安定してきたら節税について考え始める方も多いでしょう。日本の所得税は累進課税をとっているため、収入が増えるほど税率が高くなり、税金の額が大きくなります。そこで、開業医の節税方法についてご紹介いたします。 目次 1. 現金の流出を伴わない節税 2. 現金の流出を伴う節税(自己リターン型) 3. 現金の流出を伴う節税(増収のための投資型) 4. 現金の流出を伴う節税(従業員還元型) 5. おわりに 1. 現金の流出を伴わない節税 貸倒引当金 売掛金・未収入金などの金銭債権がある場合、貸倒引当金を経費として計上することができます。計上できる金額は個人の場合、売掛金・未収入金額の55/1000です。 次年度以降も継続して貸倒引当金を計上する必要がありますが、節税効果があるのは初年度のみです。 減価償却方法の変更 減価償却の方法は定額法と定率法の2種類があります。定額法は毎年一定の金額を、定率法は毎年の資産の帳簿価額に一定率を乗じた金額を費用計上できます。そのため、定率法を用いると早期に多くの費用を計上できます。 ただし、費用計上される総額はどちらを選択しても同じです。 開業準備費の償却 開業時にかかった費用を開業費といいます。税法上、開業費は任意償却が可能なため、開業費の範囲内であれば全額償却もできます。 そのため、所得税率が高い年度で償却するほど高い節税効果を得られます。 租税特別措置法(措置法)26条の適用 措置法26条を適用した場合、特例計算により概算経費を用いて所得を計算することができます。 例えば、社会保険料収入が4,500万円、経費が2,500万円の場合、所得は4,500ー2,500=2,000万円です。措置法を適用すると、概算経費は3,055万円と算出されるため、所得は4,500-3,055=1,445万円となり適用しない場合と比較して555万円所得が減少します。 ただし、適用要件は社会保険診療報酬が5,000万円以下かつ収入金額が7,000万円以下であるため、注意が必要です。 2. 現金の流出を伴う節税(自己リターン型) 小規模企業共済への加入 開業医には退職金がありません。そこで、公的な退職金制度として小規模企業共済があります。毎月の掛け金の全額が所得控除の対象となり、節税効果があります。 また、退職金を受け取る際には退職所得として税制の優遇が受けられるため、受取時のメリットも大きいです。要件を満たせば専従者も加入できます。ただし、掛け金が1年以内の場合、掛け捨てになるため注意が必要です。 倒産防止共済に加入 取引先が倒産した場合に巻き込まれて連鎖倒産することを防ぐ制度です。掛け金の全額を経費として計上することができるため、節税効果があります。解約した場合には、掛け金納付月数に応じた割合で返金を受けますが、40か月以上納付している場合には全額が返金されます。 3. 現金の流出を伴う節税(増収のための投資型) 少額減価償却資産の購入 本来、固定資産を購入した場合には耐用年数に応じて毎年費用計上する必要があります。しかし、中小企業者等については、30万円未満の減価償却資産を購入した場合、全額その年の経費に計上することができます。ただし、計上できる少額減価償却資産の合計金額は上限300万円で、開業時には月数按分した金額が上限となります。 中古資産の購入 乗用車や医療療機器等を中古で購入した場合、新品の資産と比較して耐用年数が短くなるため、減価償却費として経費計上する金額が大きくなります。 4. 現金の流出を伴う節税(従業員還元型) 中小企業退職金共済(中退共)に加入 独立行政法人が運営する従業員のための退職金制度です。原則従業員全員を加入させる必要があります。掛け金の全額を経費として計上することができるため、節税効果があるうえに、掛け金の補助など国の助成制度もあります。 ただし、いかなる理由で辞職した従業員にも退職金が支払われます。 厚生年金 個人開業医の場合、常勤5名以上の場合強制加入となります。5名未満でも任意に加入ができるため、未加入の場合には福利厚生として従業員に喜ばれるでしょう。しかし、従業員負担分を給与から差し引くため、従業員に説明が必要です。 臨時決算賞与 臨時的に所得が大きくなった場合、臨時の賞与を検討することも考えられます。昇給も検討できますが、経費が固定化するため、賞与であれば臨機応変に対応できます。 ただし、期末に未払の場合には経費に算入できない可能性があるため、年内に支払いましょう。 給与支給総額が増加することにより、賃上げ促進税制の適用も検討できるため、併せて検討することをお勧めします。 ⑤ おわりに 開業後の節税対策についてお伝えしました。 これらの節税対策を行うかどうかで税金の額が大きく変わることもあります。 節税につながるかは、ケースにより異なりますので、税理士などの専門家にご相談の上、計画的に節税対策を実施しましょう。 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

通所介護・訪問介護事業の収益分析と改善(2023.5.11)
【通所・訪問介護】黒字経営を継続するためには?収益分析、収支改善策を解説します 1.通所介護と訪問介護の収益構造 通所介護事業所も訪問介護事業所も、その収益は介護保険を財源としています。そのため「介護報酬単価×サービス提供量」で収益が決定します。 一方で費用については、いずれの事業も人が直接的にサービスを提供しますので、人件費が主なコストとなります。これ以外にも事業所を構えるためのコストがあげられます。特に通所介護事業所の場合には事業所を維持するためのコスト(家賃や固定資産税など)や送迎用車両を維持するためのコストが固定費として発生します。訪問介護事業所の場合にも通所介護事業所ほど大規模ではないものの事業所の家賃等が発生し、さらに訪問介護員の移動手段として、同じく車両の維持コスト(サービス提供中の駐車料金等も含む)が主な固定費となります。 人件費については、通所介護事業所においては利用者が多い日も少ない日も一定の職員を配置する必要があることから、ほぼ固定費といえるでしょう。訪問介護事業所におけるヘルパーの人件費は、サービス提供に係る時間で算出しますので変動費といえる部分が大きいでしょう。 費用 収益 ・人件費 ・事業所の維持コスト(家賃や固定資産税など) ・車両の維持コスト 介護報酬単価×サービス提供料 2.黒字事業所と赤字事業所の特徴・違い 通常、サービス提供量に比例して収益は増加しますので、固定費+変動費を回収できるサービス提供量が損益の分岐点となります。近年、通所介護事業所も訪問介護事業所も赤字事業所の割合が増えています。令和5年1月及び3月付けの独立行政法人福祉医療機構(WAM)の経営状況レポートによると、通所介護事業所(一般型)の46.5%、訪問介護事業所の40.1%が赤字経営です。 では黒字経営の事業所と赤字経営の事業所とでは、何が違うのでしょう? 通所介護事業所における一番の違いは、利用率です。同経営レポートによると黒字事業所の平均利用率が74.2%であるのに対し赤字事業所は64.9%であり、大きな差があります。定員数に大きな差はみられませんが、登録者数に大きな差がみられました。利用率を高く維持するためには登録者数を増やすことが重要であることがわかります。 訪問介護事業所における黒字事業所と赤字事業所の一番の違いはサービス提供回数、つまりヘルパーの数です。1事業所のひと月あたりのサービス提供回数は黒字施設平均が1,011.9回であるのに対し、赤字事業所では557.2回であり、2倍近い差が生じています(同経営レポートより。以下出典同じ。)。事業所の規模がある程度大きくヘルパーの数が一定以上稼働していないと、サービス提供回数を増やすことは難しく、赤字体質を変えることは簡単ではないことがわかります。 また赤字事業所(訪問介護)のもう一つの特徴は、単価の高い身体介護サービスの提供割合が小さいことが挙げられます。訪問介護事業においては生活介護サービスと身体介護サービスがありますが、黒字事業所では身体介護の提供割合は全サービス提供数の7割に上るのに対し、赤字事業所では6割程度にとどまっており、収益単価が低いことが想像できます。 3.赤字経営となる理由 さて、赤字事業所の特徴を見てきましたが、赤字経営となる理由としては、通所介護事業所であれば登録者数が少ないこと、訪問介護事業所であればヘルパーの数が少ないことと身体介護の提供割合が小さいことです。 収益が「サービス提供人数×サービス提供量(日数・時間など)」であることを考えると、「収益が小さい」理由は、「サービス提供(人)数」が少ないか、「サービス提供量」が少ないか、またはその両方です。通所介護においても訪問介護においても、両者を増加させる工夫を検討しなければ赤字経営から脱却できません。 通所介護事業所では一日の利用定員が決まっているうえに、それぞれの利用者が通所する曜日はほぼ決まっています。週1回の利用者もいれば週2回の利用者もおり、一日の定員数を守りつつ、毎日最大限のサービス提供を続けることは実は簡単なことではありません。訪問介護においても人手不足は慢性化しており、ヘルパーを集めることは容易ではありません。加えて、赤字事業所の特徴である身体介護サービス提供割合の低さを克服しようとすると、より高度な技術を身に着けているヘルパーを揃えなくてはならず、こちらも難しいことです。 赤字経営となるもう一つの理由として、介護報酬の加算の取得状況が低いことが挙げられます。通所介護も訪問介護も各種の準備された加算項目をうまく取得して報酬単価を上げる必要がありますが、赤字事業所は黒字事業所と比較して、取得している加算項目が少ない傾向があります。 4.収支改善に向けた対策 収益を増加させるには、通所介護事業所の場合は登録者を増やし、一日の定員枠のなかで最大限のサービス提供ができるようケアマネジャーと調整することが重要になります。週1回の通所を希望する利用者より週2回の通所を希望する利用者のほうがありがたいわけです。訪問介護事業所の場合には身体介護のサービス提供を増やし、単価を上げていく工夫が必要です。さらに両事業所とも取得できる加算項目を検討して、収益改善を図ることも必要です。 収支状況の改善のために、増収以外の方法はないのでしょうか? やはりコストの削減です。通所介護事業所では送迎に、訪問介護事業所の場合には利用者への訪問に車両を使用します。最近ガソリン代が高騰していることもあり、車両に係るコストは無視できない額になっています。通所介護事業所の場合には送迎ルートを見直して、より効率よく送迎できるよう検討することも重要です。訪問介護事業所の場合には、次のサービス提供先までの時間を短縮するため、サービス提供エリアを広げすぎないことが重要となるでしょう。移動時間や距離が少なければ少ないほどコスト削減につながります。 また、業務の効率化を図るためのICT化も重要です。通所介護事業所ではインカムを使って職員同士の情報共有をリアルタイムで行って効率化を図っているところが増えています。また訪問介護事業所では訪問介護員にタブレット端末を携行させ、サービス管理記録の作成などは事業所に戻らなくてもできるようにしているところも珍しくありません。収益の改善と併せて、コスト削減にも力を入れていきたいものです。 5.黒字経営を継続させるために必要なこと 黒字経営の事業所は、どんなことに注意を払っているのでしょう? 利用者を継続して確保し、適切な加算を取得しつつ収益の水準を一定以上に維持するとともに、コストの削減にも注力しています。経営の状況を把握する指標のひとつに人件費率がありますが、黒字経営の事業所の平均人件費率は通所介護事業所で61.3%、訪問介護事業所では66.7%であるのに対し、赤字経営の事業所の平均人件費率は通所介護事業所で77.9%、訪問介護事業所では実に96.3%にも上ります。 黒字経営が継続できているということは人件費率を一定の水準以下に抑えることができているということでしょう。まずは自事業所の人件費率を算出し、70%を超えているようであれば見直しの必要があるということになります。昇給等を勘案すると、人件費は毎年少しずつ上昇していきます。収益を同様に増やしていかないと、人件費率は年々上昇していくことになります。黒字経営の継続のためには、「増収のための努力」と、「人件費率の上昇抑制のための努力」の両方が必要なのです。 制作:2023年1月 【著者】 辻・本郷 税理士法人 菊池典明(きくち・のりあき) 2014年税理士登録。2012年辻・本郷 税理士法人大阪支部に入社。株式会社のほか医療法人、社会福祉法人、公益法人等の税務・会計に関する業務を中心に、法人の事業承継や個人の相続コンサルティングを担当。 2017年に社会福祉法人部を創部、2020年より医療法人、社会福祉法人、公益法人及び地方公共団体へのサービス推進に従事。

円滑な診診連携に向けた課題は「理念の統一」や「実力の相互理解」(2023.05.09)
患者の信頼感につながる一方「患者の取り込み」を不安視 目次 Q1. 診療所との連携の有無 Q2. 診診連携の目的(複数回答) Q3. 連携する診療所を選定する基準(複数回答) Q4. 診療所以外の連携先について(複数回答) 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 Q1. 診療所との連携の有無 診診連携を行っていると回答した診療所が88。約8割の診療所が何かしらの形で診診連携を行っているという結果が出た。一方、連携を行っていない理由としては、「医療理念の相違によって患者・家族に不安を与える」「報酬の規約を統一できない」「連携したいけれども申し込みがない」などが挙げられ、連携を進めるうえでの課題が見て取れる。 診診連携を行っていない理由 ○医療理念の相違によって患者・家族に不安を与えるため ○診療所の実力が不明なため ○報酬の規約を統一できない ○地域内で在宅患者数に差があり、不公平感が出るため ○連携したいけれど申し込みがない、機会がない ○ギブ&テイクだが、迷惑をかけるかもしれないから Q2. 診診連携の目的(複数回答) 診診連携に取り組む目的としては、「診療科の補完・充実」の答えが最も多く、かかりつけ医として、必要に応じて患者を専門医に紹介する診療所の実情が見て取れる。一方で、検査依頼で他院に紹介するケースでは、「患者を取り込まれるという心配がある」という意見も合った。「訪問診療の補完・充実」、「夜間対応の補完・充実」では、「在宅患者の急変時の対応依頼」や「学会や旅行時の在宅患者のサポート」などの際に、また、「人材育成・交流」では、「連携先に看護師などのスタッフを1日体験させ、スタッフの意欲がアップした」などの声が見られた。 Q3. 連携する診療所を選定する基準(複数回答) 最も多かった回答は「知り合いの医師・スタッフがいる」。このことからも、連携先に“顔が見える関係性”を求めていることがわかる。次に「専門医が在籍している」が続き、Q2で最も多かった回答「自院にない診療科の補完・充実」の実現のため、連携先に専門性を求めている傾向がわかる。また、その他の回答では、「医療理念の合致」や「営利目的がないこと」などが挙げられた。 Q4. 診療所以外の連携先について(複数回答) 診療所以外との連携については、93の診療所が「病院」と回答。約84%の診療所が病診連携に取り組んでいることがわかった。そして、「居宅介護支援事業所」、「介護老人保健施設」などが続く。その他の回答では、訪問看護ステーション、地域包括ケアセンター、助産院、保育所、市町村などと連携を行っているという回答が見られた。 (調査・掲載年:2017年2月) 監修:日本医療企画 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント~人材編~(2023.05.02)
<著者> 辻・本郷税理士法人 ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治 医院を開業するために必要なポイントを、事前準備編、資金調達・広告編として2回にわたりお伝えしました。今回はクリニックの運営に欠かせない人材の募集から育成までを具体的に以下の項目ごとにお伝えいたします。 目次 01:募集方法 02:面接 03:研修 04:スタッフの管理 01:募集方法 募集方法それぞれに特徴がありますので、採用したい職種や予算などに合った方法を選びましょう。 募集方法には以下の方法があります。 主な募集手段 掲載費用 契約形態 ① 新聞の折り込み広告・求人情報誌 有料 雇用契約 ② ネット求人 有料/無料 ③ ハローワーク 無料 ④ ホームページ/SNS 無料 ⑤ 友人・知人からの紹介 ― ⑥ 人材紹介会社 有料 ⑦ 人材派遣会社 有料 派遣契約 募集を開始する時期は、通常はクリニックの広告・宣伝を考えるのと同じ時期に取り掛かる場合が多いです。新聞の折り込み広告は、募集を出すことによって地域の人々にクリニックを知ってもらうという宣伝効果も兼ねます。どの媒体を使えばより応募があるかは、地域によって差異があります。コストの有無も方法決定の材料のひとつです。折込広告、求人誌は掲載コストがそれなりにかかりますが、良い人材を雇用できるか分かりません。その点、ハローワークはコストがかかりませんので、有効に活用してみるのもよいでしょう。 有資格者の確保は地域によっては難しい場合もありますので、地域の看護学校等に広告・掲示を依頼し、紹介していただくのも良い方法です。紹介という点では、紹介会社からの人材紹介は条件にマッチした人材を採用することが出来ますが、雇用者の見込み年収の30%~40%を紹介料として支払うなど多額の費用がかかります。 その点、人材派遣会社の活用は、人材紹介会社と同様にクリニックの条件とのマッチングという点で有効で、かつ、マッチングしなかった場合は基本的に費用はかかりません。ただし、有効な手段ではありますが、条件にマッチした人材を探すためには、時間がかかる場合もあること、マッチング後の派遣会社に支払うコストは実際に雇用するよりも高くなることは忘れてはなりません。 02:面接 スタッフの採用面接は最も重大なイベントと言えるでしょう。新しいクリニックを一緒に作り上げる仲間となるため、採用は慎重にならざるを得ません。あとになって人選を誤ったと気が付いても解雇は容易にできないからです。人選の見極めは非常に難しいですが、後悔しないように面接の準備をしましょう。 採用面接は多い日だと1日に十数人と行うこともあります。面接は基本的に先生ご自身が行わなければならないため、面接時のチェックポイントなどを事前に押さえておきましょう。 特に、面接時には聞いてはいけない内容もあります。厚生労働省の「公正な採用選考の基本」より配慮すべき事項が記載されていますので、面接を行う前に必ず目を通すことをお勧めいたします。 また、開業コンサルタント等に同席してもらい助言をもらう方法もあります。多くの方を面接すると、合否の判断に迷うことも多々あるかと思いますので、活用を検討してみてはいかがでしょうか。 以下は大まかなチェックポイントと質問事項となります。是非ご参考にしてください。 チェックポイント 確認する内容 ① 履歴書の事前確認 過去の職歴やその職務期間、転職理由 ② 第一印象 清潔感、姿勢、挨拶 ③ 事前アンケートの記入(任意) 履歴書と内容が一貫しているか ④ コミュニケーション能力 声量は小さくないか、目を見ているか ⑤ 適性や資質 募集職種に合う人物か ⑥ モチベーション 入職意欲、成長意欲、向上心の有無 ⑦ 面接時以外の態度 控室での待機時や面接後の気が緩んだ際の態度 面接時の質問事項 内容 ① 志望理由 この業界や当クリニックを選択した理由 ② 希望の雇用体系 正社員やパートなどの希望有無 ③ ご家族の同意 独断で応募をしていないか ④ 前職の仕事内容 医療関係の経験有無 ⑤ 前職の退職理由 過去に遡り、協調性、社交性や自身の適性などの掘り下げ ⑥ 健康面 服用中の薬、タバコを吸うかどうか ⑦ 休日の過ごし方 趣味などでストレスの解消ができているか ⑧ スキル面 電子カルテ、レセプト業務の経験 キーボード入力やExcel・Wordなどが使えるか ⑨ 最後に質問がある確認 最終意思確認と意欲の確認 上記はあくまで参考となります。 採用は相互の信頼があって成り立つものであるため、大前提として上から目線で接することは避け、面接する先生ご自身の評価も気にするようにしましょう 03:研修 スタッフの採用が確定すると、その後は開業までに研修を行います。接遇研修を取り入れ、開業後も継続して見直しをするようにしましょう。 特に受付窓口の仕事は、「診察券を受け取りカルテを出す」「会計の精算をする」「次回の予約を入れる」など多岐にわたりますが、これらの業務には「患者さんを温かくお迎えすること」「患者さんを温かくお見送りすること」という接遇も含みます。通常業務が忙しいという理由で接遇をおざなりにすると、クリニック経営においては大きなマイナスです。 医業=サービスという観点から、私たちは「見られている・聞かれている」という意識を持つことが大切です。 研修方法例 ① 外部講師の研修を受講 ② 内部で検討会を開く ③ 先生ご自身が教材 先生は常にスタッフから観察されています。どんなにすぐれた研修に参加させたとしても、先生ご自身ができなければ、スタッフもできません。スタッフの行動は先生ご自身の鏡であることを忘れずにいてください。 受付業務で最も重要なのは窓口の現金管理です。窓口で患者さんからもらう現金の管理は、スタッフの不正を未然に防ぐと同時に、先生ご自身のプライベート費用との区別に役立ち、結果として健全な医院経営への一歩を踏み出すことができます。また、税務調査における「売上計上漏れ」という面でも、窓口収入の取り扱いが焦点になりますので、現金の管理には細心の注意をはらうようにしてください。以下に代表的な現金の流れを紹介いたします。 ① 1日に必要な釣銭の一定額を決め、毎朝その額をレジに用意しておく。 ② レジとは別に経費の支払い専用に小口現金を用意しておく。小口現金からの支払いは、領収書を保存し日々の残高を確認するようにする。 ③ 1日が終了した時点で、最初の釣銭を除いて残りのレジ内の現金を封筒に入れる。 ④ レジペーパー等の現金売上と封筒にある現金が一致しているかを確認する。仮に不一致の場合には、現金を追求し、それでも不一致の場合には「現金過不足」として窓口管理表に記入する。 ⑤ 銀行にこの封筒の現金を預け入れる。毎日銀行に行くのが無理な時には、1週間単位など、一定間隔とし封筒ごとに日付順に預け入れる。 一方で近年では受付のDX化が進んでいます。カルテは電子化され、診療記録もレセプトシステムを導入しているクリニックが圧倒的に多いです。また、患者さんの予約システムとの連動、オンライン診療の導入、支払い時のクレジット決済などのキャッシュレス化が進んでいます。令和5年4月からオンライン資格確認が義務化もされております。システムの研修や効率性の観点などの面でも、スタッフの研修と業務への熟知は継続性が求められます。 04:スタッフの管理 クリニック開業後には、スタッフへの給与の計算や支払いが発生します。開業前にある程度の準備をしておく必要があります。 給与はクリニックのために働いてくれたスタッフへの報酬です。 給与額や賞与額の支払い額等の間違いは、お互いの信頼感を損なうおそれがあり、不信感を抱かれる一歩になりかねません。気持ちよく働いてもらうためにも、給与計算は、締め日を決めてから支給日まで余裕をもった間隔(10日以上)を取り、計算を行いましょう。 給与計算は単に月給、時給、交通費の金額の算定だけでなく、源泉所得税、住民税や医院の人数、勤務時間等によっては健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の徴収義務が給与支払事業者に生じます。支給額によって、徴収額も変わりますので、注意して計算しましょう。 雇用形態、勤務時間などに応じて、給与計算は複雑になるため、社会保険労務士などに依頼することも可能ですので、有効な手段の一つとして検討しましょう。 スタッフの管理面における準備 ① 勤怠給与管理システムまたはタイムカードの導入 ② 職員用鍵付きロッカー、制服の準備 ③ 雇用保険、社会保険等の行政手続き ④ 給与規定等就業規則などの制定 ⑤ 書類管理、物品購入ルールの作成 スタッフがその労働の対価として支払いを受ける金銭だけではなく、昼食代、借り上げ社宅家賃、社員旅行等も現物給与として課税対象となることがあります。また、クリニックを手伝ってくれる配偶者やご家族へ給与を支払うことも可能ですが、金額や届出など、必ず税理士と相談の上、決めるようにしましょう。

M&Aで施設運営も デイFC堅調、DX強化(2023.5.1)
<取材先> インターネットインフィニティー 代表取締役社長 別宮圭一 一般企業の福利厚生で ケアマネ紹介・相談も 東証グロース市場のインターネットインフィニティー(東京都品川区)は、リハビリ型デイサービス「レコードブック」を全国219ヵ所に展開(20223年2月1日時点)。半日型・機能訓練特化型デイの店舗数では業界トップクラスだ。コロナ禍以降も新規出店数を伸ばすだけでなく、提供サービスのブラッシュアップや、住宅改修・施設運営などへの領域拡大も図っている。「既存事業拡大と新規事業開拓」の両輪で取り組みを前進させる別宮圭一社長に話を聞く。 ――レコードブックの店舗数は堅調に推移 別宮 FC中心に店舗数を着実に伸ばしており、今後2~3年で400店舗への拡大が目標だ。出店エリア戦略は、独自開発したシステムを活用。人口や居宅介護支援事業所数、競合などの分析により、マーケットポテンシャルの高い地域の抽出・選定をしている。 デイは「介護を感じさせない」をコンセプトに、赤色を基調としたフィットネスジムに近い空間デザインと、若手スタッフの快活な運動指導が特色。この確立したブランドに沿った内外装工事やオペレーション・育成を徹底し、利用者を獲得してきた。 ――サービス内容を進化させている 別宮「明るく、楽しく」を打ち出してきた一方、それだけで良いのだろうか、本当に科学的に介護ができているだろうか、と考えるようになった。 そこで、1年程前からインド製のソフトウェアを使った歩行解析アプリをLiveSmart(東京都港区)と共同開発。TUG(Time Up& Go Test)測定時の歩行を動画撮影することで歩測・歩幅などを自動評価し、歩行スコアを点数化、推奨運動メニューを自動提示する。当社はこれまで「転倒予防」を重視した運動を提供し、レコードブック(記録帳)という名の通り利用者延べ1万7000人のデータを記録・蓄積してきた。アプリはそれらのデータに基づき開発したAIを使っている。「転倒リスク」も予測した上で運動指導ができるため、利用者や家族、ケアマネジャーの安心にもつながる。 また、運動メニューのブラッシュアップも随時実施。これまで筑波大学の田中喜代次教授と共同開発したプログラムを提供してきたが、今後さらに、整形外科の知見が深いPTを顧問に立て、内容を進化させる。運動指導においても利用者とのインフォームド・コンセントを大事にしながら提供していきたい。 ――デイ以外の在宅サービス、施設系サービスにも乗り出した 別宮 以前から展開していた訪問介護や居宅介護支援事業所などの在宅サービス事業は、昨年に分社化。レコードブック事業とは切り分け、より専門性を持って注力している。 また、M&Aによる新規事業に着手しており、21年には福祉用具・住宅改修事業を展開するフルケア(広島市)、22年には住宅リフォーム業を営む正光技建(広島県廿日市市)を子会社化した。デイで転倒予防を重点化するだけでなく、利用者が自宅で転倒してしまう課題を解決すべく、自宅の住環境整備もカバーしていく。 さらに昨年、合の家(千葉県市原市)の住宅型有料老人ホーム2棟を子会社化し、当社初となる施設運営も始動した。これまで軽度者向けにサービスを提供してきた特色を活かしつつ、看取りも行うなど中重度者向けサービスにも注力していく方針だ。 ――ケアマネジャー向けのポータルサイトも手掛ける 別宮 05年から開始した「ケアマネジメントオンライン」は登録者数10万人超。各種帳票類のダウンロード提供など業務支援やニュース発信、ケアマネ同士の情報交換などコミュニティ形成に寄与する無料会員サイトだ。ここ数年で強化しているのは介護と医療の連携に関する情報提供。コメディカルとのつながり方など、ケアマネと医療機関との連携のさらなる促進に活用してもらいたい。 そのケアマネ会員コミュニティを活用した、一般企業向けの福利厚生サービスも好調。契約企業の従業員向けに「仕事と介護の両立支援」をしている。例えば、介護が必要になった際のオンライン相談・介護保険申請代行などをケアマネ会員が担う。一般の人は急に介護が必要になった際、どの居宅やケアマネが良いかはわからない。そこで女性・男性どちらが良いか、看護師の資格を持つ人が良いかなどのヒアリングを行い、ケアマネを紹介するサービスも行う。導入企業は210社、会員数は210万人超。昨今、従業員の介護負担を気にかける一般企業は増加傾向にある。当社がもつ介護事業・WEB事業の両者のネットワークを活かし、介護課題を持つ人々を幅広くフォローアップしてきたい。

創業時から連続増収 「機動力」武器に成長加速(2023.4.28)
<取材先> ライフケア・グループ 代表取締役 祝嶺良太 現場に権限委譲へ 挑戦する風土醸成 「祝ちゃんデー」と称し、職員とコミュニケーションの機会を設ける 大阪府を中心に、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅「はっぴーらいふ」などを展開するライフケア・グループ(大阪市)。介護事業の売上高は約億円(2022年12月期)で、2010年の創業時から連続増収を維持している。 介護保険事業にとらわれず、新プロジェクトへ挑戦する手を緩めない。 「中小企業だからこそできることがある」と語る祝嶺良太社長に話を聞いた ――主軸の「はっぴーらいふ」は順調に運営数を伸ばしている 祝嶺 グループ内のライフケア・ビジョン(同)が主に介護事業を担い、事業開始5年でM&Aも含め拠点、その後も年2、3棟ペースで新設を続けている。現在は拠点1102室を運営。デイや訪問看護など在宅サービスと合わせて、主に大阪府でドミナント展開している。現在は高齢者住宅が1施設しかないエリアの開拓を狙っているところだ。 既存施設の入居率は95%以上を維持。「入居営業部」を設置して居宅などへの営業を強化し、最近は紹介会社経由の入居を半分程に減らすことができた。今後さらに直接の問い合わせを増やすべく、HPのリニューアルにも注力していく。 加えて、入院率を減らすため、昨年12月から「誤嚥性肺炎での入院ゼロ」に取り組んでいる。入居者が入院する理由のうち、約2割は誤嚥性肺炎だ。口腔体操のマニュアル・動画制作や、訪看による総合的な健康管理、訪問歯科の評価など多方面から誤嚥性肺炎を予防していく。 ――安定した収益基盤を築きつつ、介護保険外事業にも積極的 祝嶺 設立当初、不動産・介護・食事の3事業の推進が既定路線だったが、介護事業の実績を積み上げる中で見えてきたニーズを見逃さず、それに応じた新規事業を展開してきた。アクティブシニアの住まいが十分に供給されていない状況にニーズを感じ、年には見守りシステムを完備した賃貸マンション「シニアアップデートマンション」を開発・運営。さらには、そこの入居者と地域住民が交流できる場を提供すべく、NPO法人を立ち上げてコミュニティ形成事業も手掛ける。1階で子ども食堂の開催やヤングケアラー支援をするなど活動の幅を広げている。ほか、施設向けの調剤薬局事業も年に開始。加えて、有老・デイ・調剤薬局・クリニックを一体化した複合型施設を1月に開設するなど、新しい取り組みに意欲的に取り組んでいる。 ――新規事業に慎重な中小企業も多い。なぜ新しいチャレンジが可能なのか 祝嶺 良いアイデアは形にしてアップデートする企業風土が根源にある。それを実現していくためにも、職員750名規模となった今も職員の声を吸い上げることは重要視している。現場職員含め、私と社員とが直接セッションする機会を月1回は設け、ちょっとした提案も「やってみればいい」と背中を押す。できない場合は理由を伝えることも重要だ。 現場への権限委譲を推進しており、昨年4月には組織改編も行った。施設運営を「事業統括本部」に集約。また「新規開発本部」を新設し、その中に新規出店を促進する「開発部」と、新規領域への展開を担う「NVC 研究所」を設置した。各部署が専門分野に注力することで、スピーディかつ効果的にプロジェクトを進めることが可能。経営の中核メンバーに現場上がりの職員も数名加え、新しい着眼点を得ている。 ――ICTの活用は 祝嶺 この1月より、全訪問介護事業所においてLINEアプリを活用した記録システムを導入。紙の全撤廃を目指している。毎日10~4分を記録業務に要していたが、3分の1で済むようになり、ケアに注力する体制を再構築できている。 また、ジーコム(東京都大田区)のナースコールと見守り機能を一体化したシステムの開発にも協力。シニアアップデートマンションではベッドセンサーや浴槽排水での見守りは行ってきたが、それ以外のリビングなどの見守りは課題だった。居室全体を見守るべく、ミリ波レーダーを使ってデータを取得し、精度を上げている。 ――今後の展開は 祝嶺 業績は堅調に推移しているが、売上のみを追っているわけではない。介護保険事業一辺倒ではなく、リソースを活かしてほかの事業にも着手していく構想。例えば、ICTのデータを活用した大学との共同研究や、認知症予防に関するベンチャー企業とのタイアップなど、さらなる領域に向け動いている。 介護業界は大規模化・協働化が求められ、大手志向が進む中でも、地域の中小企業だからこそできることがある。機動力を持って挑戦していくことに、我々のような中小企業の存在意義があるのではないか。

知られざる個人医院と医療法人の税務調査の違い!(2023.04.25)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 目次 01:皆様は税務調査が入る確率についてご存知でしょうか。 02:個人医院では必要経費の参入は、「業務の遂行上必要であること」が求められる 03:医療法人の必要経費算入の考え方 04:具体例による説明 05:まとめ 皆様は税務調査が入る確率についてご存知でしょうか。 税務調査が入る確率は、法人は3.1%、個人は1.1%と、比率だけをみると、医療法人を設立した方が、税務調査に入る可能性は高いように見受けられます。(参考 実調率の推移より 国税庁) 税務申告は、所得税や法人税などの税金は共通して納税者自らが申告を行う「申告納税方式」が採用されており、申告した金額に根拠を備えているという前提で所得の申告を行います。簡単に所得と言えば、“収入-費用”で計算されますが、税務調査ではまさにこの“収入-費用”に計上されている金額が根拠を備えた適正なものかどうかを見る手続きになります。 税務調査の上で重要なことは、そもそも申告納税方式は根拠を備えている所得を前提に納税者が申告されているわけですから、税務調査でそれを備えていないと立証すべきは税務署側ということになります。(国税通則法24条) 要するに、納税者が適正であると言って申告した内容についてケチをつけるのであれば、間違っているという事実を証明するのは原則として税務署側だということです。 個人医院では必要経費の参入は、「業務の遂行上必要であること」が求められる しかしながら、個人医院の場合は少し状況が異なります。それは、個人医院の税金である所得税において必要経費に参入するためには、「業務の遂行上必要であること」が求められているからです。 過去の裁判例では、 ①業務に関連しているか否かは家事費との判断に極めて微妙な事実認定が必要であり、かつ、業務関連性に関する証拠資料は納税者が自ら保有していること ②必要経費は納税者に有利な事実であること 上記、2点を理由に個人医院自らが立証すべきとしたケースがあり、現在の税務調査実務の中でも当たり前のように主張されます。 医療法人の必要経費算入の考え方 一方、医療法人はその点、業務関連性は問題になりにくいです。 なぜなら医療法人は、そもそも設立動機が業務を行うことであり、この医療法人が行う行為は全て業務に関係あると推定されるからです。 両者を比較すると、根拠を立証するのはあくまで税務署側ですが、個人医院の場合は業務関連性について納税者側に立証責任の転嫁が行われることから、医療法人の場合より、納税者が立証しなければならないことが多いということになります。 具体例による説明 実務的にどのような場面で影響がでるかという点について例を挙げて説明します。 交際費について税務調査で指摘をされた場合を考えてみます。 例えば、飲食に使用した金額については交際費として費用処理をすることになるのが通常です。その際、支払いの事実については領収書などの保管で確認可能ですが、個人医院の場合、業務関連性に関して税務調査官から求められ、飲食を共にした相手が本当に業務上必要な相手だったかを客観的妥当性をもって立証が出来なかった場合、必要経費として認められず経費から除外されてしまうことになります。 対して、医療法人の場合、業務関連性は問題になりにくいので、領収書の保管がされてあれば否認されることはあまりないと考えられます。それは、医療法人が事業活動をするために設立された組織であり、その医療法人が費用処理さえすれば税務署が立証責任を負っているので、金額の大きさにもよりますがあまり深追いされないというのが現実だからです。税務調査は事前通知の段階でおおよその期間が決定され、調査官も期間内におおよその内容を検討しないといけないため、ポイントを絞って調査内容をピックアップするという調査方法もこの点に関わっていると思います。 まとめ 以上のように、税務調査の割合だけをとれば、医療法人は個人より高いですが、いざ税務調査が始まると、立証責任が納税者側に転嫁されるケースが少なく、納税者の負担としては医療法人の方が軽いケースが多いです。現在個人で事業を行われている方の中にも過去の税務調査で業務関連性が問題になった方も多いと思います。税務調査の負担を少なくしたいとお考えの経営者の皆様は一度弊社までご相談ください。 (医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> TwitterやFacebookでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年4月25日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

生活機能向上連携加算 外部連携の重要性と課題(2023.4.19)
<著者>DSセルリア株式会社 代表取締役社長/理学療法士 北村直也 生活機能向上連携加算 外部連携の重要性と課題 【本文】 口腔・運動・栄養の各種加算算定では、専門職の確保が課題のひとつでした。その解決策として、生活機能向上連携加算があります。デイサービスの職員と外部医療機関所属のリハビリ専門職が連携してアセスメントを行い、計画書を作成することで算定できる加算です。 デイサービスにリハビリ専門職が配置されていなくてもアセスメントや機能訓練計画への助言を得ることができます。問題は外部のリハビリ専門職と連携を開始するのは簡単ではないということです。第一に、共通の目的を設定して良好な関係を構築する必要があります。さらに限られた加算報酬のなかで、地域の医療機関等のリハビリ専門職にメリット(報酬等)をどう示していくかが、大きな課題です。 弊社はマネジメントにリハビリ専門職を配置する体制をつくっていますが、今後の法改正に備えて同一地域の医療機関との連携を開始すべく、知人の理学療法士(病院所属)に依頼をしました。 双方の負担軽減と効率性を重視して、加算算定はせずに月2回のオンラインでの打ち合わせおよび動画共有のみのトライアルでしたが、非常に的確な助言をもらうことができました。連携した病院のリハビリ専門職からも「地域資源の把握ができる」「病院退院後の在宅生活がイメージできた」という感想を得られ、非常に良い経験になったようです。 実際に算定となると手間とコストの課題がクリアできず、今回はトライアルで終了していますが、病院のリハビリ専門職にとってこの経験の蓄積は、在院日数の短縮や在宅復帰につながり、ひいては医療機関のメリットになる可能性もあるのではないでしょうか。 2024年の医療介護同時改定では、医療と介護の連携がさらに促進されて、介護では自立支援を中心とした科学的介護の実現が求められていくはずです。 業種や事業者間の垣根にとらわれず、ましてや制度にとらわれることなく、専門職が連携して地域の高齢者へ適切なサービスを届けることを第一に考えていきたいと思います。 北村 直也(きたむら なおや) DSセルリア株式会社 代表取締役社長/理学療法士 一般社団法人日本デイサービス協会 理事 ’18 年にDSセルリア(株)取締役に就任。口腔と身体のリハビリに特化したデイサービス「トータルリハセンター」を首都圏に展開。’21 年代表取締役社長に就任。理学療法士としての経験を活かし、多くの方にリハビリや口腔の知識や技術を届けたいと、多職種による組織マネジメントに注力している。

【トレンド】電子処方箋の普及を9月以降加速化 推進協議会で厚労省(2023.04.18)
<編集>株式会社日本経営 目次 01:モデル事業で重複投薬等の検知8千件、メリット享受へ急がれる本格運用 02:リアルタイムでの情報連携が可能に 対応施設の拡大へ補助率を引き上げ 03:2025年3月末までにオン資対応の全医療機関・薬局への導入目指す 04:HPKIカードを早期発行できるファストトラックの仕組みを構築 05:オン資対応に一定の目処がつく今年9月以降に普及スピードを加速へ 01:モデル事業で重複投薬等の検知8千件、メリット享受へ急がれる本格運用 遡ること半年ほど前の2022年10月、全国4地域で始まった「電子処方箋」のモデル事業では、重複投薬等のチェックが活発に行われ、その有用性が確認されている。1月26日には全国で運用開始となったが、対応施設は一部にとどまっており、本格運用に向けて速やかな拡大が求められていた。 「電子処方箋」のモデル事業は、「電子処方箋管理サービス」の運用開始に向け、医療機関・薬局などにおける運用プロセスやトラブル・問い合わせ対応などを確立することを目的に2022年10月から1年間の予定で始まった。山形県酒田地域、福島県須賀川地域、千葉県旭地域、広島県安佐地域の4地域で実施されており、1月6日時点で医療機関7施設、薬局31施設が参加。その後、各地域で準備が整った施設が順次加わり、最終的には計100施設程度が参加する見通しとなった(資料1)。 (資料1)電子処方箋のモデル事業について 及び 電子処方箋の運用開始について (出典:厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料より一部抜粋編集) 厚生労働省は、規模を問わず医療機関・薬局が参加し、実際に患者を巻き込んで、重複投薬や併用禁忌のチェック、処方箋の発行や受付などを実施できており、システム面において概ね問題なく運用されているとしている。この事業による検証を通じて、先進的な取り組みや課題、優良事例を収集し、最終的には「電子処方箋」のさらなる活用方策が取りまとめられる。 2022年10月31日~12月31日の電子処方箋管理サービスの利用状況を見ると、データ登録が9万241件で、内訳は医療機関による処方箋の登録が6万5,184件、薬局による調剤結果の登録が2万5,057件だった。重複投薬等のチェック実施件数は15万5,812件に達し、内訳は医療機関が10万4,105件で検知件数が3,812件、薬局は5万1,707件で検知件数が4,337件だった。ただ、この報告を受けた厚生科学審議会の部会では、検知件数が8,000件を超えることについて件数の多さが指摘され、実際にどのようなことが行われているのか検証を求める意見があった(資料2)。 (資料2)モデル事業の実施概況 (出典:厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料より一部抜粋編集) 02:リアルタイムでの情報連携が可能に 対応施設の拡大へ補助率を引き上げ 電子処方箋は文字通り、従来の紙の処方箋を電子化して運用する仕組みである。オンライン資格確認等システムを基盤とした電子処方箋管理サービスを用い、医療機関が電子処方箋を登録し、薬局が取得する。医療保険適用の医薬品の院外処方箋が対象となる。 オンライン資格確認等システムでは、全国の医療機関等で共有できるレセプト情報が2022年9月から「薬剤」に加え、「診断」や「検査」などにも拡大されているが、いずれもレセプトをもとにした月遅れの情報しか参照することができない。 しかし、電子処方箋では、処方箋をもとにした薬剤情報をリアルタイムで参照することが可能で、患者が処方・調剤された薬について、複数の医療機関・薬局をまたぎ、直近のデータを含む過去3年分のデータを参照できる。それらの情報を活用することで、医師や薬剤師は「患者の記憶などに頼ることなく、より正確な情報をもとに診察、処方・調剤が行える」ことが一番のメリットだ。重複投薬等のチェックもより効果的に行えるようになり、安全性の向上も期待される。 また、電子処方箋の導入は、単なる電子化ということだけではなく、医師・歯科医師から薬局への調剤に必要な情報の提供(検査値、アレルギー等の処方内容の照会への対応)と、薬局から医師等への調剤結果の提供(処方内容の照会を踏まえた薬剤の変更や後発品への変更等)により、現在、取り組まれている地域医療情報連携(専門職間の連携)やPHR(Personal Health Record)などの促進にもつながる。 こうしたメリットを持つ電子処方箋の運用だが、対応している施設はまだごく一部に限られる。1月29日時点ではモデル事業参加施設も含め、病院6カ所、医科診療所13カ所、薬局187カ所という状況だ。導入の事前申請を行っているのは3万施設のため、低調なスタートとなっている。 今後は、できるだけ早く多くの国民がメリットを享受できるよう、電子処方箋の円滑な運用を速やかに進めていくことが求められており、厚生労働省は医療機関等に対する支援の一環として、2023年度の導入補助金について補助率を見直した。当初は2022年度よりも低く設定していたが、それと同率まで引き上げた。たとえば、診療所であれば、「事業額38.7万円を上限にその1/3」だったものを「1/2」とした(資料3)。 (資料3)医療情報化支援基金の補助率の見直し (出典:厚生労働省 厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会 資料より一部抜粋編集) 03:2025年3月末までにオン資対応の全医療機関・薬局への導入目指す そして2月27日、厚生労働省の電子処方箋推進協議会は初会合を開いた。この中で同省は、今年9月以降、電子処方箋を全国に普及する取組を加速し、2025年3月末までにオンライン資格確認に対応している全ての医療機関・薬局への導入を目指す方針を示した。協議会には電子処方箋の利用施設である医療機関、薬局やシステムベンダの関係者などが参画。電子処方箋の普及状況や課題などを共有するとともに、導入促進のための方策を検討する。 厚労省の報告によると、2月19日時点の運用開始施設は全国で648施設。内訳は、病院6施設、医科診療所38施設、歯科診療所8施設、薬局632施設となっており、これまでのところシステムや運用面でのトラブルは発生していないという。 また、システム改修の事前申請をした施設は4万412施設、電子署名に必要なHPKIカードの発行枚数は約4.4万枚(1月末時点)に及ぶ。しかしながら、▽オンライン資格確認導入への対応でシステムベンダの逼迫が続いており、システム改修が進まない▽申込をしたのにHPKIカードが届かない▽地域によっては、医療機関と薬局のいずれか一方の運用が開始されていないために現時点では利用に結びつかない-などの課題も浮き彫りになっている(資料4)。 (資料4)電子処方箋の導入状況について (出典:厚生労働省 第1回電子処方箋推進協議会 資料より一部抜粋編集) 04:HPKIカードを早期発行できるファストトラックの仕組みを構築 このため厚労省は当面の対応として、(1)電子処方箋に対応しているシステムベンダ名の公表やリモートによるシステム導入の活用、(2)HPKIカード発行体制の強化、(3)HPKIファストトラック窓口(申請サイト)を社会保険診療報酬支払基金に設置―などを行う考えを部会に示した。 (3)では、一定の要件を満たす施設に対してHPKIカードを早期発行する仕組みを構築する。対象は、▽システム改修が完了している▽カードが到着次第、運用体制上も遅滞なく電子処方箋の運用を開始できる▽申請から1カ月以上経過している施設であって、申請不備、費用支払等の連絡があった場合に遅滞なく対応している-の全てを満たす施設。該当施設が申請した場合は、必要最低限(診療所は医師1枚、病院は上限3枚、薬局は管理薬剤師1枚)を早期発行する。3月から申請受付を開始する(資料5)。 (資料5)HPKIファストトラック窓口(申請サイト)の設置 (出典:厚生労働省 第1回電子処方箋推進協議会 資料より一部抜粋編集) このほか、電子処方箋の導入意欲が高い医療機関と薬局が同一市区町村内に一定数存在する地域を洗い出し、国が優先的に早期導入を働きかける取組も実施。患者が電子処方箋を利用できる地域数の拡大につなげる。 05:オン資対応に一定の目処がつく今年9月以降に普及スピードを加速へ 電子処方箋の普及について政府は、22年6月に閣議決定された「新しい資本主義実行計画」のフォローアップで、「25 年3月を目指してオンライン資格確認を導入した概ね全ての医療機関及び薬局での電子処方箋システムの導入を支援する」との方針を打ち出している。この目標達成に向け、厚労省は3つのフェーズに区切って段階的に普及を推進。特に今年9月から始まる第2フェーズでは、オンライン資格確認導入義務化の経過措置が概ね終了し、システムベンダの改修余力が出てくるタイミングで普及のスピードを一気に加速したい考えだ(資料6)。 (資料6)普及拡大に向けた具体的な進め方(案) (出典:厚生労働省 第1回電子処方箋推進協議会 資料より一部抜粋編集) (2023年3月24日時点の情報に基づき作成) 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

「LIFE」の活用がケアの質向上に貢献 2021年度改定検証調査 利用者ごとの評価やデータ入力の負担軽減求める声も(2023.4.14)
LIFEの活用によるケアの質向上への期待 2021年度介護報酬改定検証調査 課題の存在も浮き彫りに 利用者ごとの評価やデータ入力の負担軽減求める声も 2021年度介護報酬改定時に導入された「科学的介護情報システム(LIFE)」について、モデル事業参加事業所の半数以上がケアの質向上への寄与が期待できると感じていることが、3月16日の社会保障審議会・介護給付費分科会に報告された調査結果で明らかになった。その一方で、データ入力の負担軽減を求める意見が目立つなど、利用促進の妨げになりかねない課題の存在も浮き彫りになった。 2021年度改定の効果検証目的で2022年度に実施されたのは、 (1)介護保険施設のリスクマネジメントに関する調査研究事業、 (2)介護保険施設における医療及び介護サービスの提供実態等に関する調査研究事業、 (3)LIFEを活用した取組状況の把握および訪問系サービス・居宅介護支援事業所におけるLIFEの活用可能性の検証に関する調査研究事業-など、5つの調査である。 LIFEは、介護保険施設・事業所が、利用者の状態や提供するケアの計画・内容などに関するデータを厚生労働省に提出し(実際にはLIFEに入力)、提出データの分析結果のフィードバックを受ける仕組み。施設・事業所はフィードバック結果を踏まえてPDCAサイクルを回し、ケアの質向上につなげる。 上記の調査(3)では、LIFEへのデータ入力とフィードバック結果の活用に関するモデル事業の参加事業所(訪問介護、訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、居宅介護支援)にアンケートとヒアリングを実施した。それによると、LIFE項目を利用者ごとに評価する際の課題について、「特に問題なく評価できた」と回答した割合は全体の半数程度。フィードバック票を活用して、訪問介護計画・訪問看護計画・ケアプランの妥当性を何らかの形で検討した事業所は全体の57.7%で、このうち86.7%が「妥当であることが確認できた」としている(資料1・2) (資料1) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) (資料2) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) モデル事業参加事業所の過半数が「ケアの質の向上への寄与」を実感 LIFEの活用が役立つ点として最も多く挙げられたのは、「これまで把握していなかった利用者の状況についての評価をするようになった」(53.2%)、次いで「LIFEを利用した取組を通じて、利用者の状態の評価方法が統一された」(51.4%)。また、「LIFEがケアの質の向上に寄与すると思うか」との問いに、過半数の事業所が「そう思う」または「やや思う」と回答した(資料3)。 (資料3) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) ヒアリング調査でも、LIFEの効果について「統一指標による定期的な評価によるケアの質の担保」を挙げる声があったが、利用者ごとの評価や入力に伴う負担の軽減を求める意見も多く、厚労省は、「データ連携や入力可能な端末(例えばタブレット端末など)の拡大といった対応が必要であることが見て取れた」と分析している。 なお、上記の調査(2)は介護保険施設(介護老人保健施設、介護医療院、介護老人福祉施設、介護療養型医療施設)と医療療養病床を対象に実施。これら施設の入所者に占める「医療区分1」(医療ニーズが最も低い)の割合は、老健・42.5%、特養42.6%、介護医療院・38.3%と、いずれも4割程度。ADL区分は介護医療院の入所者が最も重く、全体の30.2%がADL区分3に該当した。 1日数回の健康観察・処置が必要な利用者、介護医療院は26.8% 医療的な状態が「安定している」利用者の割合は、老健が74.8%、特養が75.2%といずれも7割を超えるのに対して、介護医療院は50.0%にとどまる。医師・看護師による健康観察・処置等の頻度が「1日数回」の利用者は老健が5.2%、特養が2.9%、介護医療院が26.8%となり、いずれの結果からも3施設の中では介護医療院の入所者の医療ニーズが最も高いことがうかがえる(資料4)。 (資料4) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) 2021年度改定では、介護保険施設におけるリハビリテーション・個別機能訓練、口腔、栄養の一体的な取り組みを推進する目的で、これらの実施計画を一体的に記入できる新たな様式が導入された。当該様式を実際に利用している施設の割合は、老健52.0%、特養40.7%、介護医療院は58.2%。利用していない施設のうち、利用意向がある施設の割合は、老健42.4%、特養43.8%、介護医療院48.5%だった(資料5)。 (資料5) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) 「栄養マネジメント加算」の廃止、「変化はなかった」が7割超 また、栄養ケア・マネジメントについては、▽「栄養マネジメント加算」を廃止し、栄養ケア・マネジメントが未実施の場合の減算措置を導入(3年間の経過措置あり)▽「栄養マネジメント強化加算」の新設-などが実施された。調査対象の老健、特養、介護医療院に「栄養マネジメント加算」廃止の影響を聞いたところ、73.1%が「変化はなかった」と回答。「変化があった」(23.1%)を大きく上回った。変化があった場合の具体的な内容では(複数回答)、「他職種との連携が強化された」(56.1%)、「入所者への栄養ケアの質が向上した」(47.0%)との回答が多かった(資料6)。 (資料6) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) 「栄養マネジメント強化加算」の算定施設が算定してよかったと感じていることでは、「ミールラウンド(食事の観察)の頻度が増加した」(51.1%)、「他職種との連携が推進された」(48.9%)が上位となった。逆に困難を感じることでは、算定要件となっているLIFEへの情報提出に伴う管理栄養士の事務作業の増加を挙げる施設が70.0%で、最多となった(いずれも複数回答)(資料7)。 (資料7) (出典:厚生労働省 第215回社会保障審議会 介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) 介護療養の転換先未定は17.6%も、検討すらしていないはごく少数 2024年3月末で廃止される介護療養型医療施設には、他施設への転換意向も聞いた。病床の移行予定で最も多かったのは「I型介護医療院」の34.4%、次いで「医療療養病床(病院)」(24.9%)、「II型介護医療院」(14.8%)など。「未定」との回答も17.6%あったが、そのうち「移行(または廃止)に関して院内で検討しておらず、まったくの未定」はわずか6.7%だった。 今回ご紹介した2024年度介護報酬改定へ向けた重要な基礎資料から、さらに分析・議論を重ね審議が進められる。今後の追加調査結果にも注視していきたい。 (2023年3月24日時点の情報に基づき作成)

【2023年最新】青色申告時の留意点(2023.04.11)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士所得税の確定申告をする際に事業所得・不動産所得・山林所得がある方は、それぞれの所得について、青色申告を行うか白色申告を行うか選択することができます。今回は青色申告制度についてご紹介いたします。 目次 ① 青色申告制度の概要 ② 青色申告の要件 ③ 青色申告のメリット ④ 青色申告のデメリット ⑤ おわりに 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 ① 青色申告制度の概要 青色申告とは、事業所得・不動産所得・山林所得のある人が納税地の所轄税務署長に承認を受けることで選択することができる制度であり、様々な特典があります。対して、白色申告とは青色申告の承認を受けなかった場合に選択される制度となります。 ② 青色申告の要件 自営業やフリーランス等の個人事業主で、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれか1つ以上がある場合に承認の申請をすることができ、承認を受けるためには、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。新規に業務を開始した場合は、開業日から2か月以内に提出しなければなりません。ただし、その年の1月1日から1月15日の間に開業をした場合は、その年の3月15日までに提出する必要があります。 ③ 青色申告のメリット メリット1 1つ目は、青色申告特別控除が適用でき、最大65万円の控除が受けられることです。65万円控除を受けるためには、法定申告期限内申告や複式簿記による記帳、電子申告等の要件を満たす必要があります。また、不動産所得の場合は、事業規模(不動産貸付が5棟10室以上であることが目安とされています)に満たない場合は控除額が最大10万円となります。 メリット2 2つ目は、赤字が発生した場合に、その赤字を翌年以後3年間繰り越すことができることです。例えば、開業1年目は赤字となり還付額が貰えたものの、2年目で黒字に転じ、一気に税額が大きくなる場合があります。そのような場合に、2年目以降の確定申告において、1年目の赤字のうち繰り越した分を差し引くことができるので、2年目以降に税額がいきなり大きくなるということを避けることができます。 メリット3 3つ目は、少額減価償却資産の経費算入ができることです。本来であれば、10万円以上の資産は、減価償却資産として資産に応じた年数で何年間かにわたり毎年少しずつ経費計上がされます。しかし、青色申告を選択すると、30万円未満の資産については年間300万円を上限に、その取得した年度において一括で経費に計上することが可能となります。 メリット4 4つ目は、専従者給与として、親族に対する給与を経費とすることができることです。白色申告であれば、経費にできる上限が配偶者であれば年間86万円、配偶者以外であれば50万円と定められています。一方で、青色申告の場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した金額の範囲内であれば全額経費とすることができます。この届出書を、青色事業専従者給与を支払う年の3月15日までに税務署長に提出する必要があります。 ④ 青色申告のデメリット 青色申告特別控除を受けるためには、「③青色申告のメリット」でも触れたように、簿記の知識を基にした複式簿記による帳簿の作成や、貸借対照表、損益計算書などの資料の作成が必要となります。専門的な知識が必要となるため、ご自身で作成することが難しい場合には、税理士などに作成をお願いすることも可能ですが、その場合には、税理士への報酬などが追加でかかってしまうので、そのコストがデメリットとも言えます。 ⑤ おわりに 青色申告は享受できるメリットがとても大きいため、届出を出すことをお勧めします。提出期限には十分注意して手続きを進めましょう。 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【基礎編】訪問介護事業の開業で押さえておきたいポイント(2023.4.6)
訪問介護の開業を考えている方必見!まず最初に知っておくべきポイントを確認しよう! 訪問介護事業の開業でおさえておきたいポイント 1.開業にあたり、まず知っておきたいこと 新たに訪問介護事業をはじめようとしたときに、まず大前提として、法人格を有していることが条件となります。社会福祉法人に限らず、株式会社やNPOでもよいです。そのうえで知っておきたいポイントが大きく2つあります。それは ①利用者をどのように見つけるのか? ②職員となる人材に求められるものはなに? です。 ①利用者をどのように見つけるのか? 訪問介護の利用者は、在宅で訪問介護員の訪問サービスを受けながら生活します。主に生活支援と身体介護があります。比較的独居の方が多いですが、家族と同居している場合でも一定の条件下で訪問介護サービスを利用することができます。 では利用者は、どこにいるのでしょうか。 通所介護の場合は利用者が通うため送迎車が迎えにきますので、どの住宅に利用者がお住まいなのかすぐわかります。しかし訪問介護は利用者の自宅でサービスを提供しますので、どの住宅に介護が必要な方がいるのかわかりません。いくら住宅地を巡回しても、介護を必要としているのに現在訪問介護サービスを受けられていない方を探し出すことはできません。 ではそもそも介護が必要になったら、どうすれば訪問介護サービスを受けられるようになるのでしょうか。 まず市区町村に要介護認定の申請を行います。これは原則として本人が行いますが、家族が代理人として行うこともできます。その後、介護認定通知が本人に届きます。介護認定通知が届いたら、地域の居宅介護支援事業所でケアマネジャーの選任をします。選任されたケアマネジャーが自宅を訪問し、利用希望者にヒアリングをしながらケアプラン(計画)を策定します。ケアマネジャーが本人の希望に合った訪問介護事業所を紹介し、事業所と利用希望者との直接契約により訪問介護サービスを受けられるようになります。訪問介護事業者が利用希望者を探すには、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに紹介してもらうことが近道といえそうです。 ②職員となる人材に求められるものはなに? 訪問介護員に何が求められるのでしょう。まず資格としては介護職員初任者研修修了者以上であることが求められます。もちろんこの上級資格である介護職員実務者研修修了者、介護福祉士の資格があればなおよいでしょう。 しかし、一番に求められるものは、高い倫理観です。 訪問介護の一番の特徴は、利用者の自宅でサービスを提供することです。そこは通常密室となり、サービスを受ける側と提供する側の1対1の時間が長く続きます。そこは見てはいけないもの、触れてはいけないものばかりです。食べかけの食事、脱ぎっぱなしの服はもちろんのこと、通帳や印鑑も机の上に出しっぱなしかもしれません。訪問介護員はそうした環境の中でサービスを提供し続けるのです。しかも訪問介護員には、やってはいけないことが数多く定められています。やっていいのは「本人を対象とした、日常生活を送るために必要な援助」とされていますので、逆に言うとこれ以外のことはやってはいけないということです。たとえは生活支援の場面で、「日常生活に必要な食料品などの近隣への買い物」はOKですが、タバコなどの嗜好品を買いに行くことや、遠方への買い物はできないことになっています。また利用者がいる居室の掃除や利用者本人の服の洗濯はOKですが、居室以外の掃除や、同居する家族の服の洗濯はやってはいけないことになっています。このように細かな決まりの中でサービスを提供するのが訪問介護員です。高度な守秘義務意識をはじめとする高い倫理観を有する人材が求められています。 2.開業までの検討事項 上記をふまえた上で、検討事項を時系列で表示すると以下のようになるでしょう。 ①指定申請の準備・・・・人員基準、運営基準、設備基準のそれぞれに基準を満たす必要があります。 ②指定前の事前研修・・・地域によっては新規指定申請者を対象に研修を行うところもあります。 ③物件契約・・・車や自転車を置くことができることが物件の条件のひとつとなるでしょう。 ④内装工事・・・相談室と事務室は分ける必要がありますので内装工事が必要になる場合があります。 ⑤備品の購入またはリース契約 ⑥指定申請 3.開業時に必要な条件、資格、認可、設置基準のチェック 介護保険事業者としての指定をとることが一番です。職員が所定の人員配置基準を満たしているか、出来上がった事業所は設備についての基準を満たしているか、などをチェックします。配置すべき人員には資格要件がありますので、人員が必要な資格を保有しているかのチェックも必要です。 4.開業前後の必要資金の目安と資金計画 訪問介護事業所は、サービスを提供した翌々月に国保連から対価を受け取ります。つまり、4月に提供したサービスの対価が国保連から入金されるのは6月になってからです。その間も人件費をはじめ各種経費の支出は待ってくれないので、開業時の運転資金として介護報酬の3ヶ月分が最低限必要だということになります。 人件費、家賃、車両の維持費(駐車場や駐輪場を別途借りる場合にはその料金も)は、利用者が少ない時でも必ず発生しますので、ゆとりのある資金計画が必要です。 5.事業所の課題 実際に訪問介護事業所の利用者を対象にアンケート調査を実施した事例から、訪問介護事業者に対する不安や不満を尋ねてみると、上位は以下のようになりました(出典:とうきょう福祉ナビゲーション)。 1位 プライバシーへの配慮 2位 要望への対応 3位 情報提供や相談・助言の少なさ 4位 訪問介護員の交代への不安 5位 病気や怪我への対応 言葉遣いやサービスの提供そのものへの不安や不満は意外にも少なく、やはりプライバシーへの配慮が一番の課題といえそうです。高度な倫理観が醸成できるよう、職員のトレーニングが必要です。 6. 他の訪問介護事業所との差別化 既に多くの訪問介護事業所がサービスを提供しています。そこに新規で参入し、一定のシェアを獲得するためには既存事業所との差別化を図る必要があります。 まず、利用希望者とつながるための方法を考えましょう。居宅介護支援事業所のケアマネジャーはもちろんですが、直接利用希望者が問い合わせできる窓口を用意してはどうでしょうか。事業所のホームページを作り、直接事業所に問い合わせできるフォームを作る、SNSなどを活用して自事業所を紹介するなど工夫します。強みが発信できればさらに良いでしょう。 また事業所内でも工夫が必要です。現在はICT化が進んでおり、紙面による記録は少なくなってきています。利用者の情報の管理、アセスメント記録、ケアプラン、提供したサービス内容、さらに介護報酬の請求までがひとつのパッケージになった介護ソフトが多くあります。ソフトを使えば記録の転記も不要ですし、記録に要する時間も短縮できます。また何といっても他の訪問介護員との情報共有が瞬時に可能となります。これらをタブレットに入れて訪問介護員に所持させれば業務の劇的な効率化が図れるでしょう。もちろん厳重なセキュリティを構築し、管理レベルを最大まで高めておく必要があります。ソフトの使用頻度の低い事業所では、記録用紙の紛失や、申し送り時の情報漏洩などのリスクが避けられず、信用問題となった事業所もあります。 待っていても利用者は獲得できません。情報発信を積極的におこない、高度なセキュリティと訓練のもとでICT化を推進して差別化を図りましょう。 制作:2023年1月 【著者】 辻・本郷 税理士法人 菊池典明(きくち・のりあき) 2014年税理士登録。2012年辻・本郷 税理士法人大阪支部に入社。株式会社のほか医療法人、社会福祉法人、公益法人等の税務・会計に関する業務を中心に、法人の事業承継や個人の相続コンサルティングを担当。 2017年に社会福祉法人部を創部、2020年より医療法人、社会福祉法人、公益法人及び地方公共団体へのサービス推進に従事。

複数の会議を開催組織への帰属意識につなげる(2023.04.04)
<取材先>医療法人コムニカ ホームケアクリニック横浜港南 延べ700人以上の在宅患者を抱える医療法人コムニカホームケアクリニック横浜港南(横浜市港南区)では、目的や階層別に会議を行っており、全スタッフがいずれかに参加しているのが特徴です。 その目的について中川誠二事務長は、「診療所の運営にスタッフ全員がかかわる仕組みとして、このようにしています。スタッフにとって発言の場であり、運営に参加している意識づけの場として機能することで、組織への帰属意識を高め、チームづくりにつながることを期待しています」と説明します。 経営幹部層による運営会議や、職種会議など一般的な会議のほか、同院の独自の会議として、担当者会議があります(図)。これは、自宅に住む在宅患者に関する「地域担当者」、施設の在宅患者に関する「施設患者担当者」、院内の物品の発注、管理に関する「物品担当者」のどれかに、全スタッフが割り当てられ、それぞれで業務改善や課題解決を検討するものです。 (図) ルールづくりや議案募集で会議への意識を高める 単に会議を開くだけでは組織も人材も活性化しません。そこで同院では、会議を盛り上げる工夫として、会議に関するルールをつくり、全員に徹底させています(表)。 中川事務長は、「会議では、目的とゴールを明らかにすることが大切。そのうえでのルールづくりということになります。方向性もわからずただ長時間続く会議では、何について発言すればいいかわかりませんし、そもそも参加したくないでしょう」と話します。 また、参加者に問題意識をもたせるため、会議開催予定日の約1週間前には、参加者から会議で検討する議案やその資料を事前に提示させています。これにより、開催前から会議への意識を高めているのです。 ただ一方で、多忙な時期などは会議への参加が負担になるケースもある。そのため2017年5月からは、グループウェア(サイボウズLIVE)を使用した会議時間を短縮するための試みも開始しています。 「たとえば、会議中に方針が決まったら、細かいアイデアなどはサイボウズの掲示板上でやり取りするなど、現在試験運用中です。開催頻度を減らす分、必要な会議に一層集中して取り組める環境につながればと思います」と、中川事務長は語りました。 <会議進行のルール例> ・できる限り会議メンバー全員が出席できる日程で予定する ・会議の時間は長くなり過ぎないように1時間を限度とする ・進行役と書記を1人ずつ設ける ・進行役は報告に時間を使わず、協議に時間を費やす ・進行役は発言の少ないメンバーがいれば、指名して発言を求める ・協議事項と結論をあやふやにしない ・複数の議案を協議する際、今回で協議終了か、次回以降に持ち越すか、一つひとつ確認する など 監修:日本医療企画 (取材・掲載年:2017年9月) 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

ケアプラン連携 利用票・提供票がデジタルに(2023.3.29)
中小介護事業者のIT補助金活用事例を紹介!効率化や採用競争力強化の一助に 4月本格稼働のケアプラン連携 システム活用による効果と影響を解説します ケアプラン連携 利用票・提供票がデジタルに 4月本格稼働へ 当面は〝負担増〟も予想 今年4月から本格稼働を開始する予定の「ケアプランデータ連携システム」。介護現場の負担軽減などを目的に、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で毎月やり取りされるケアプランの一部情報を、データで送受信する為の情報連携基盤だ。2月よりパイロット運用が行われている。慢性的な人材不足が深刻化の一途をたどる介護業界において、同システム活用によりどのような効果、影響が考えられるのか。システムの現状や想定される今後の動きなどについて紹介する。 【本文】 ■紙ベースでのやり取りをデータ化 現場の負担軽減へ 介護現場の負担軽減や職場環境の改善に向け、厚生労働省は介護ロボットや見守りセンサー、介護記録ソフトなどのICT化を促している。こうした取り組みの一環として「ケアプランデータ連携システム」の構築を目指し、2020年度より調整を進めてきた。 これに先駆けて18年度、厚労省は事業所間で異なるベンダーの介護ソフトを利用していてもデータ連携を可能とするため、フォーマットやデータ形式などを規定したケアプランの「標準仕様」を作成した。これにより、標準仕様に基づいて出力されたCSVファイルを、それぞれの事業所で使用している介護ソフトに取り込むことで、データが自動的に反映される。このファイルを電子メールで送付することについては、セキュリティの観点で懸念されたことにより、安全にデータ連携ができる基盤として同システムを構築した。 & Consulting Firm(静岡市)の沖本崇代表は「従来からあるCSV連携よりも、よりセキュリティ面が考慮された最近の主流であるAPI連携に切り替わっていく可能性もあるだろう」と語る。 ケアマネジャーは従来、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所との間で発生するケアプランのやり取りを、主にFAXや手渡しで行ってきた。これにかかわる業務負担や時間、費用は大きい上、紙から介護ソフトへは手入力で情報を移さなければならず、転記ミスによるトラブルなども少なくない。これらの負担の削減・軽減が、標準仕様およびケアプランデータ連携システム構築の目的だ。 ■導入のメリット 年82万円のコスト減に 厚労省では、事業所がケアプランを送付するためにかかる費用削減の例として、▽人件費の削減▽印刷費の削減▽郵送費の削減▽交通費の削減▽通信費(FAX)の削減――を挙げている。具体的には、提供表の共有にかかる時間が3分の1程度になる、人件費を考慮した場合は年間約81万6000円(月約6万8000円)のコスト削減になる、転記ミスがなくなることによる心理的負担が軽減される、といった効果を見込む。 【図①効果の推計】 ■想定される課題 トラブルへの対応は 同システムの構築・運用は、厚労省より委託を受けた公益社団法人国民健康保険中央会が行うもの。全体の概要としては、まず各介護事業所に設置される「ケアプランデータ連携クライアント」と運用センターに設置される「ケアプランデータ連携基盤」から構成される。介護事業所の利用者は、「ケアプランデータ連携クライアント」からインターネット回線を経由し、「ケアプランデータ連携基盤」を通して事業所間のケアプランデータのやり取りを行う。 【図②全体の概要】 同システムで扱われるのは、ケアプランの中でも居宅サービス計画書にあたる第1表および2表、サービス提供票にあたる6表、7表、そして週間サービス計画表にあたる3表。また、入院時情報提供書および退院・退所情報記録書の2つも加えられている。うち、介護報酬の請求に用いる第6・7表の扱いについて、沖本代表は「利用票・提供票のデータは事業所の収支に直結するため、ここでシステムトラブルが起こると影響は大きい」と懸念を示す。同システムは、提供しているクラウドサービスにデータを長期に保持する仕様ではないため、最終的なトラブル対応は介護ソフトメーカーが担うことになると考えられる。「この負担に鑑みた予算の確保や支援、システムの構造改善などを図ることも求められる」(沖本代表)。 また、汎用性についても課題があるという。「仕様について、LIFEとは異なる上、さらに今後取り組む訪問看護のデータベースとも異なるとすれば、それぞれ別で構築したものを後で繋げるのは難しいのではないか」(沖本代表)。「こうした介護ソフトメーカーの負担は、介護事業者への影響につながる」と今後の課題を想定する。 ■今後のスケジュール確認を 稼働後に想定される問題とは 同システムの利用に際し、インターネットが使用できるパソコン(Windows10以降)および厚生労働省のケアプラン標準仕様に準拠した介護ソフトが必要となる。また、利用準備として、まずは専用WEBサイトより利用申請を行い、クライアントソフトをインストール後、電子証明書を確認。すでに介護報酬の電子請求受付システムを利用している場合は同じ電子証明書を利用可能で、利用していない場合は電子証明書の申請およびダウンロードが必要となる。 スケジュールとしては、4月1日より利用申請の受付を開始。4月14日以降、クライアントソフトのインストールが可能となる。その後、4月20日の稼働より、システム利用(送受信)ができる予定だ。現在は、2月よりパイロット運用が行われている段階だが、「実証実験やパイロット運用にかける時間が十分でないのでは」とする声もある。 【図③スケジュール】 本格稼働後、最初は様子を見たい事業者も多いと想定され、すぐ対応する事業者とそうでない事業者に分かれるとみられる。そうした場合、同システムに対応していない介護サービス事業者が従来の方法でやり取りを求めると、システム対応した居宅介護支援事業所がシステムでやり取りできる事業者を優先するケースもあり得る。あるいは、紙ベースでのやり取りとデータでのやり取りの両方の手間が発生するといった課題も当面はあるだろう。また、「システムに対応するかしないかは、居宅介護支援事業所側の対応に合わせることになる」(沖本代表)。 ■料金は1事業所あたり年2万1000円 大手の負担は 同システムの利用料金は1事業所あたり(1事業所番号ごと)のライセンス料は年間2万1000円(税込)で、ライセンスの有効期間 は1年間。支払方法は、電子請求の証明書発行手数料と同様、国保中央会に請求する介護給付費からの差引となるが、請求書送付による口座振り込みにも対応する。 なお、複数事業所を運営している場合であっても1事業所番号あたり2万1000円が必要となることから、大手事業者の負担は非常に大きい。沖本代表は「例えば在宅介護サービス事業所を数百ヵ所運営する事業者の負担は、何百万円にも上る。導入数が増えると価格が割引になるといったボリュームディスカウントなども検討すべき」と話す。 ■普及に向け、好事例の共有に期待 2025年が目前に迫り、24年の医療・介護制度改正を見据える現在の介護業界は、大改革が求められている。次期改正の論点では先送りになるものも多いが、「ケアプランデータ連携システム」のような新たな取り組みは進んでいる。課題は多いものの、ケアマネジャーの負担軽減やケアプランの質の向上、介護現場の環境改善は急務だ。 「データを集めることが目的ではない。テクノロジーの活用は必須だが、一方で介護はゴールの定義づけも難しい」と沖本代表は語る。LIFEをはじめICT利活用の推進で生産性向上、業務改善を進める取り組みの一環で、現在も唯一アナログで残されている提供票・利用票のやり取りが、ついにデジタル化され4月からの本格稼働に向け準備が進んでいる。先行して実証実験を行っている事業所もあり、これらの結果の公表が待たれる。ケアプランデータ連携システムの普及に向けて、まずは好事例の蓄積と横展開するノウハウの共有などに期待が高まる。

医療・介護の「総合確保方針」、改定へ 厚労省・医療介護総合確保促進会議が議論を開始(2023.03.28)
<編集>株式会社日本経営 2022年7月29日、厚生労働省の「医療介護総合確保促進会議」は、「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(総合確保方針)の次期改定に向けた議論を開始した。総合確保方針は、「医療計画」と「介護保険事業(支援)計画」の整合性を確保するための方策などを定めるもので、両計画の上位指針に位置付けられる。2024年度から新しい「医療計画」と「介護保険事業(支援)計画」が始まることや、人口構造が大きく変化する2040年を見据えた見直しが求められていた。 総合確保方針の直近の改定は2016年12月。その後、医療・介護分野では、地域医療構想の策定、外来機能報告制度の創設、介護医療院の創設、認知症施策推進大綱の策定、医療従事者の働き方改革の推進、オンライン資格確認の本格運用開始-などの各種制度改正に加え、新型コロナウイルス感染症のまん延で顕在化した課題もあり、次期改定に際しては、こうした点も考慮する必要性がある。 厚労省はこの日の会議に改定の当たって盛り込むべき視点として、 (1)人口構造の変化への対応 (2)「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築 (3)サービス提供人材の確保と働き方改革 (4)デジタル化・データヘルスの推進 (5)地域共生社会づくり -の5項目を提案した。 (1)では人口構造の変化や医療・介護の需要動向には地域差があることから、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の確保を図る観点での議論を要請。(2)では2025年の地域医療構想実現後も、2040年に向けてさらに入院医療の機能分化と連携を推進することや、外来機能報告制度を踏まえた紹介受診重点医療機関の明確化とかかりつけ医機能が発揮される制度整備、地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進-などを検討課題に挙げた。(4)では、医療・介護連携を一層推進するため、患者・利用者自身の医療・介護情報をデジタル基盤を活用して医療機関・介護事業所等間で共有・活用することなどについて、検討を求めた。 都道府県や市町村では2023年度に「第8次医療計画」と「第9期介護保険事業(支援)計画」の策定が進められる。これに間に合うよう本会議では、2022年中に総合確保方針の改定に関する意見を取りまとめる予定とした(資料1)。 (資料1)(参考)今後のスケジュール (出典:厚生労働省 第19回医療介護総合確保促進会議 資料より一部抜粋編集) 総合確保方針の見直し案を大筋了承 医療介護総合確保促進会議 2040年頃を見据えた医療・介護提供体制の方向性を提示 さらに年が明け2月16日、厚生労働省の「医療介護総合確保促進会議」は「地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針」(総合確保方針)の見直し案を大筋でまとめた。同方針は、「医療計画」と「介護保険事業(支援)計画」の上位概念に位置付けられる。今回の見直しは2024年度からの新しい「医療計画」と「介護保険事業(支援)計画」の開始に合わせたもので、高齢者人口がピークを迎え、生産年齢人口が激減する2040年頃を見据えた医療・介護提供体制構築にあたっての考え方を示した。とりまとめを受け、厚労省は年度内に方針の改定を告示する(資料2)。 (資料2)総合確保方針の意義・基本的方向性の見直し(案) (出典:厚生労働省 第19回医療介護総合確保促進会議 資料より一部抜粋編集) 高齢者人口の増加は、団塊の世代全員が75歳以上に到達する2025年以降も続き、なかでも医療と介護の複合的ニーズがある85歳以上の人口は2035年頃まで一貫して増加。入院患者数と在宅患者数は2040年以降に最多になると見込まれている。 地域の実情に応じた「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築が課題 ただ、こうした人口構成の変化や医療・介護需要の動向は地域ごとで大きく異なることから、見直し案は、2025年の次の区切りである2040年に向け、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の確保を図っていくことが重要だと強調。その具現化のため、昨年7月の会議で提案した5項目を基軸として、改めて下記の5項目を重要施策と捉え、今後の基本的方向性をそれぞれ記載した。 (1)「地域完結型」の医療・介護提供体制の構築 (2)サービス提供人材の確保と働き方改革 (3)限りある資源の効率的かつ効果的な活用 (4)デジタル化・データヘルスの推進 (5)地域共生社会の実現 (1)では、地域医療構想や紹介受診重点医療機関の明確化、かかりつけ医機能が発揮される制度整備-などを医療従事者の確保や働き方改革と一体的に推進。介護では、地域包括システムの更なる深化・推進を目標に、介護サービスの提供体制の整備、住まいと生活の一体的な支援、医療と介護の連携強化、認知症施策の推進、総合事業、介護予防などに取り組む(資料3)。 (資料3)地域完結型の医療・介護提供体制の構築 (出典:厚生労働省 第19回医療介護総合確保促進会議 資料より一部抜粋編集) (2)では、医療従事者の働き方改革を進めるとともに、各職種がそれぞれの高い専門性を十分に発揮するための職場環境の整備や、タスク・シフト/シェア、チーム医療の推進、復職支援などの施策も展開。介護従事者については、これまでの処遇改善の取組に加え、ICTや介護ロボット等の活用、手続のデジタル化などを通じて介護現場の生産性向上を目指す。 医療・介護分野のDXを通じて医療・介護連携を一層推進、EBPMの取組も (4)では、医療・介護連携を推進する観点から、患者・利用者自身の医療・介護情報の標準化を進め、デジタル基盤を活用して医療機関・薬局・介護事業所等の間で必要な時に必要な情報を共有・活用できる環境を整備。医療・介護施策の立案を、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や公的データベース、あるいはこれらの連結解析などの客観的なデータに基づいて行う、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)の取組も進める。 このほか、別添として「ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿」も作成。国民の期待に応える医療・介護提供体制を構築するためには、▽必要な時に「治し、支える」医療や個別ニーズに寄り添った柔軟かつ多様な介護が地域で完結して受けられる▽地域に健康・医療・介護等に関して必要なときに相談できる専門職やその連携が確保されている▽国民が自らの情報を基に、適切な医療・介護を効果的・効率的に受けられるーの3本柱の同時実現が不可欠とした。 (2023年2月28日時点の情報に基づき作成) (編集:株式会社日本経営) 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【介護給付費分科会】介護分野の事務負担軽減で加算の届出様式を統一へ オンラインでの届出も原則化 2024年4月1日から(2023.3.24)
介護分野の事務負担軽減で加算の届出様式統一 オンラインでの届出も原則化 2024年4月1日から 2020年以降、介護分野の文書負担軽減が本格的に進められてきたが、取り組みの視点の一つである「ICT等の活用」については、指定申請等の「ウェブ入力・電子申請」の運用が第1期の自治体で2022年度下期頃から開始と予定されていた。しかし2022年夏頃、その意向を持つ自治体はまだ2%程度であることが判明。厚生労働省は早期利用の促進に向け、利用を開始する自治体への伴走支援などを行いながら、2022年度中に「手引き」をとりまとめる考えを示していた。 介護サービス情報公表システムは、改修拡張機能を備えセキュリティも向上 少子高齢化が進展し、介護分野の労働力制約が強まる中、専門人材が利用者のケアに集中し、ケアの質を確保するために、介護現場の業務効率化は急務であり、その一つとして、申請や請求などで行政に提出する文書の負担軽減が求められている。このような状況を踏まえ、社会保障審議会・介護保険部会に「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」が設置され、2019年8月から議論を開始している。 同委員会の2019年12月の中間とりまとめでは、▽個々の申請様式・添付書類や手続きに関する「簡素化」、▽自治体ごとのローカルルールの解消による「標準化」、▽共通してさらなる効率化につながる可能性のある「ICT等の活用」の観点から、分野横断的に負担軽減策の検討や取り組みを進めていくことの必要性を指摘。各分野で短期的に取り組むべき項目と、その進捗を踏まえつつ取り組むべき項目とに分けて方向性を示していた(資料1)。 (資料1)介護分野の文書に係る主な負担軽減策 (出典:厚生労働省 第6回介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会 資料より一部抜粋編集) このうち、「ICT等の活用」では2020年度以降、(1)ウェブ入力・電子申請(指定申請・報酬請求)、(2)データの共有化・文書保管の電子化(指定申請・報酬請求・指導監査)に3年以内に取り組むべきとし、2020年度中に見直しの方向性を検討、結論を得た上で速やかに必要な対応を行うとの方針を提示。(1)では具体的に、「既存の『介護サービス情報公表システム』を活用した指定申請・報酬請求に関する届出等の入力項目の標準化とウェブ入力の実現可能性、技術的課題や費用対効果などを検討し方針を得る」と記載されていた。 それを受け、2021年度には「オンライン申請を見据えた介護サービス情報公表システムの改修事業」が実施された。この改修では、ISMAP登録クラウドサービスの利用、障害等に備えたシステムの冗長化などにより、システムのセキュリティ・信頼性が向上。拡張機能として、▽GビズIDによるログイン▽申請・添付ファイルの提出▽提出通知▽事業所台帳管理システムへの入力連携▽受付完了・差戻し通知▽情報公表用の報告内容登録時におけるデータプリセットが整った(資料2)。 (資料2)オンライン申請を見据えた介護サービス情報公表システムの改修事業 (出典:厚生労働省 第10回介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会 資料より一部抜粋編集) 2022年度下半期開始は「市」が最多で16 24年度までの利用開始が全体の36% 政府が2022年6月に閣議決定した規制改革実施計画にも、この「電子申請・届出システム」の運用は明記されており、運用開始に必要な措置を2022年度上半期までに講じることを求めていた。その上で、2025年度までには全国でシステムを利用した申請・届出の手続きが完結できるよう法改正などを行うことも求めている。ただし、特段の事情があり、システムの利用が困難な自治体がある場合は、それを公表するとしている。 このシステムは2022年度下半期から試行を行い、介護事業者や自治体の意見も踏まえつつ、段階的に拡大されていくことになるが、厚労省の2022年7月1日時点の集計によると、全国1,794自治体のうち、下半期に利用開始の意向を示しているのは33自治体(2%)だった。その内訳を見ると、都道府県が2(4%)、指定都市が4(20%)、特別区が1(4%)、中核市が2(3%)、市が16(2%)、町村が8(1%)となっている。 加えて、2024年度までに利用を開始する意向の自治体が36%で、「その他」が14%、「無回答」が半数となっている。2025年度までの完結を目指す上では、その他と無回答の約6割の自治体への働きかけがポイントになる(資料3)。 (資料3)自治体の利用開始時期の意向 (出典:厚生労働省 第10回介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会 資料より一部抜粋編集) 自治体の運用見直しや初期設定を支援 必要な準備内容や方法等を「手引き」に 厚労省は、2022年度下半期からの運用開始に参画する第1期自治体およびその自治体の事業所等、また第2期以降に参画する自治体に対するヒアリング調査(伴走支援)を実施する。これは、主に電子申請・届出システム利用のために必要な自治体の運用見直しのための調整や、電子申請利用のための初期設定などに対して支援を行うもの。 ヒアリング調査で把握されたシステム利用のために必要な準備内容や方法に関する情報は、後続の自治体向けに「介護サービス情報公表システムを活用したオンラインによる指定申請の手引き」として2022年度末までにとりまとめ、公表する予定だ。特に上記の6割の自治体における早期利用開始への後押しとなることが期待される。システムの運用開始前には事業所・施設向けの操作手順書も別途、公開されることになっている。 また、厚労省は事業者向けに「介護分野の行政手続に関する簡素化・利便性向上に係る要望受付フォーム」も設置し、一連の取り組みを促進する考えも示している。 オンラインでの届出も原則化 24年4月1日から そして、2023年2月20日 社会保障審議会・介護給付費分科会は、介護サービス事業者が介護報酬上の加算算定に際して行う届出について、国が定める様式の使用や、厚生労働省が運用する「電子申請・届出システム」からの届出を原則化する省令・告示の改正案を了承した。改正内容を3月下旬に告示し、2024年4月1日から適用する。 介護サービス事業者が介護報酬上の各種加算を算定する場合には、事前に体制整備などの算定要件を満たしていることを都道府県知事や市町村長に届け出る必要がある。その際に用いる様式について現在、法令上の規定はなく、国が通知で標準様式例を示すのみにとどまっている。このため自治体が独自様式を定めているケースもあり(いわゆるローカルルール)、広域に事業展開している事業者では、自治体ごとに異なる様式での届出を求められるなど、事務負担が大きくなることが問題視されていた。 こうした課題の改善と介護分野におけるICT化を推進する狙いから、今回の改正では、(1)いわゆるローカルルールを廃止し、改正後は厚労省老健局が定める様式(現行の標準様式例を基に別途定める予定)で届出を行う、(2)事業所の職員がICTに不慣れであるなどのやむを得ない事情がある場合を除き、届出は「電子申請・届出システム」から行うーなどの見直しを実施する(資料4)。 (資料4)改正内容(案)の具体的なイメージ (出典:厚生労働省 第214回介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) 改定の対象になるのは、現行の加算の様式例の「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」に記載されている各サービスの加算など。例えば、▽緊急時訪問看護加算▽日常生活継続支援加算▽移行支援加算▽ターミナルケア加算▽ADL維持等加算▽看取り介護加算▽特定事業所加算▽栄養マネジメント強化加算▽在宅復帰・在宅療養支援機能加算-などが含まれる(資料5)。 (資料5)被改正対象となる加算等 (出典:厚生労働省 第214回介護給付費分科会 資料より一部抜粋編集) (2023年2月28日時点の情報に基づき作成)

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医療法人でも可能?役員社宅を活用した節税(2023.03.20)
これからマンションなどの住宅の購入を考えている医療法人経営者の方は、個人で所有するのではなく、医療法人で購入してそれを社宅として経営者ご自身にお貸しすることを考えてみてください。医療法人で所有することにより、法人税を節税することができる場合があります。 目次 1:医療法人で社宅を所有するメリット 2:注意事項 2-1:医療法人に対して社宅家賃を支払う 2-2:住宅ローン控除の適用不可 3:医療法人から個人へ売却する際の税金 4:都道府県や保健所によっては認められないケースがある 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 1:医療法人で社宅を所有するメリット 医療法人名義で住宅を購入、その物件を役員社宅として経営者に貸します。医療法人で住宅を購入した場合、借入金の利息、不動産取得税、登記料、印紙、固定資産税、修繕費などの費用を医療法人の経費として税務上損金にすることができます。時の経過とともに住宅の価値が下がりますが、その減価分を減価償却で医療法人の損金にすることもできます。 医療法人ではなく個人で住宅を購入した場合、これらの住宅にかかる経費は税務上の損金にならないのはもちろん、個人における所得税の必要経費にもなりません。 2:注意事項 上記の通り医療法人で社宅を所有することはメリットが多いですが以下のような注意事項もあります。 2-1:医療法人に対して社宅家賃を支払う 経営者は医療法人から住宅を借りている形となりますので当然賃貸借取引が発生し家賃を支払う必要があります。家賃の額については税務上住宅の規模別下記の通りに定められており、計算した金額以上を収受しなければ計算した金額との差額が給与課税されることになります。 ア 小規模な住宅である場合 次の(ア)から(ウ)の合計額が賃貸料相当額になります。 (ア) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2% (イ) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル)) (ウ) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22% イ 小規模な住宅でない場合 (ア) 医療法人所有の社宅の場合 次のAとBの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。 A (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12% ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。 B (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6% (イ) 他から借り受けた住宅等を貸与する場合 医療法人が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(ア)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。 ウ 豪華社宅に該当する場合 通常支払うべき使用料(いわゆる相場)に相当する額が賃貸料相当額になります。 (※1)小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。 (※2)豪華社宅に該当する場合とは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。 2-2:住宅ローン控除の適用不可 住宅ローンを利用して個人で住宅を購入した場合は、住宅ローンの利息相当額について所得税・住民税から控除する住宅ローン控除が適用できますが。医療法人で購入すると、住宅ローン控除は受けられません。 3:医療法人から個人へ売却する際の税金 医療法人経営者が医療法人を退職する場合等においては、医療法人の所有する社宅を個人へ移していきたいケースがあります。その場合は、不動産移転に伴う不動産取得税の課税や社宅の時価相当額と減価償却後の帳簿上の価値との差額について売却益がある場合の法人税の課税についても考慮する必要があります。特に社宅売却益に関しては、個人で所有すれば売却益に対して3,000万円の特別控除が受けられたものも適用されないため注意が必要です。 4:都道府県や保健所によっては認められないケースがある 役員社宅スキーム、特に社宅を医療法人で所有するケースは都道府県・保健所によってはオンコールや患者対応のための必要性などの説明が求められるケースがありますので注意が必要です。不安であれば事前に都道府県・保健所に確認しておく必要があります。 上記のように注意点が多いので、売却まで総合的に視野にいれて検討する必要があります。 米本合同税理士法人では医療法人での社宅保有について都道府県へのヒアリングも含めたご提案を致します。役員社宅をご検討の方はご相談頂ければと存じます。 (→ 医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> TwitterやFacebookでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 (Facebook) https://m.facebook.com/100088041642414/ 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

介護事業経営に役立つ「IT導入補助金」(2023.3.15)
中小介護事業者のIT補助金活用事例を紹介!効率化や採用競争力強化の一助に 筒井 祐智(つつい・よしとも) 合同会社knot 代表 【大見出し】 介護事業経営に役立つ「IT導入補助金」 【サブ見出し】 中小事業者の活用事例紹介 効率化や採用競争力強化の一助に 【リード】 介護業界におけるDX化が加速しています。一方、導入にかけるコストなどに課題感を持つ中小事業者も多いでしょう。そこで、中小企業庁および独立行政法人中小企業基盤整備機構の監督の下実施されている「IT導入補助金」の概要や活用事例などについて、介護事業者向けのコンサルティング事業などを手掛けるknot(東京都港区)の筒井祐智代表社員に話を聞きました。 【本文】 ■IT導入補助金とは 〈図①IT導入補助金概要図〉 この補助金は、介護会社に限らず幅広く中小企業を対象に、ITツール導入を推進するためのものです。実際に導入にかかった経費の一部を補助してもらうことが可能で、ツールの活用による業務効率化や売上アップの実現をサポートする補助金といえます。 これまでの通常枠(A・B類型)に加え、2019年度補正予算にてサイバーセキュリティを対象とした「セキュリティ対策推進枠」、21年度補正予算にてインボイス制度対応を見据えた「デジタル化基盤導入枠」(デジタル化基盤導入型・複数社連携IT導入類型)も追加されました。それぞれの補助率については以下の通りです。 〈図② 通常枠〉 〈図③ セキュリティ対策推進枠〉 〈図④―1 デジタル化基盤導入類型〉 〈図⑤ 複数社連携IT導入類型〉 (IT導入補助金2022ホームページより引用) ■活用にあたり必要なポイント 昨今、介護現場でのIT・ICT化、DXといったことが非常に多く聞かれるようになりました。経営者はこれに対する課題感を持っており、進めていかなければならないと考えていることと思います。今一度、IT活用を進めていくうえで必要なポイントとしてお伝えしたいのは、次の2点です。 ・自社の強み・弱みをしっかり認識して分析すること ・分析したうえで、自社における課題にあったITツールを選び、導入すること まだまだ現場ではアナログ文化が強く根付いています。手書きの書類やFAXのやり取りも、他業界と比してやはり多いように感じます。介護業界の人材不足が深刻化の一途をたどる中、さらに採用の難易度が上がり、定着のハードルも高くなっていくことが推測されます。効率化できる業務は効率化することで、職員の働きやすさや求職者にとっての魅力向上につなげたいといった思いは皆さんあると思います。 とはいえ、なかなか進まないのが実状でしょう。私も前職では介護事業会社の社長を務めており、全国120拠点ほどデイサービス事業所を展開していました。様々な角度からIT化を試みましたが、なかなか進まなかった経験を持っています。 導入が難しい理由として、スタッフの年齢層においてベテランが多く、そうした方々が苦手感を持つ傾向にあることが挙げられます。また、システムトラブルがあったときなどに、現場スタッフでは対応できないことへの懸念も見られました。そもそも、ITツールに対する心理的抵抗感により排除してしまうといった根本の原因もあります。 そして経営側の大きな理由としては、介護報酬が縮小されていく流れの中で、中小事業者では「極力コストをかけたくない」という思いがあるでしょう。しかし、一歩踏み込んで業務効率化を推進することで、実現した暁には残業の削減、セキュリティ強化、コミュニケーションの増加といった効果が期待できると思います。こうした効率化によって職員の負担を軽減し、離職防止に努めることこそが、介護事業領域共通の課題であるといえます。 ■実際の導入事例を紹介 介護事業領域でIT化できる業務にはどういったものがあるのでしょうか。一般社団法人サービスデザイン推進協議会がHP上で公開している事例を参考にみてみましょう。 ・悩み① 「介護施設の各利用者の情報や介護サービス記録を電子化して、介護士同士でも情報を共有しやすい環境を作りたい」 →クラウド上で介護計画の作成や介護サービス実施記録の入力や集計、サービスの評価などを管理できるツール、ソフトウェアの導入を提案 ・悩み② 「利用者の方々の介護レベルやその時々の体調によって食事量・回数などを変更する必要がある。そのためにどうしても出てしまう食品ロスを、少しでも減らしたい」 →献立の作成や食材発注管理、在庫管理を効率的に行える給食管理システムの導入を提案 ・悩み③ 「自宅から訪問介護利用者宅までの距離が近いため直接現場に向かいたいが、事務所に行かなければタイムカードが押せず、出退勤の登録ができない」 →スマートフォンやタブレットのアプリケーションを使って、介護士が出退勤時刻を登録できるシステムの導入を提案 以上のようなケースは非常に参考になると思います。その他の事例や解説は、「IT導入補助金2022」のWEBサイトに掲載されています。ぜひご参考にしてみてください。 ■具体的な導入事例と費用負担例 次に、具体的なサービス内容や導入にかかった費用、補助額などに関する事例も見てみましょう。グッドツリー社が開発・販売している「ケア樹」は、LIFE対応も整備した介護記録、請求業務などが可能なクラウド型介護ソフトです。在宅、施設サービスに幅広く対応でき、導入実績は全国約3000事業所。導入、ランニングコストが低いことも特徴です。この「ケア樹」の導入事例を2つご紹介します。 1つ目の事例では、従業員規模8名の居宅介護支援事業所が、すでに活用していたシステムのリプレイスに補助金を活用。「ケア樹」を複数年契約し、iPad8台を導入しました。これにより、ケアマネがリモート対応可能になった、ソフトの利便性が上がって業務効率化を図ることができた、といった効果が得られました。このケースにおける実績としては、申請額80万円に対し60万円支給。実質20万円でICTツールを導入できた事例となります。 2つ目の事例では、従業員規模90名の医療法人(介護老人保健施設、ショートステイ、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなどを運営)が、コロナ禍の下オンライン面会を居室で行うためのWi-Fi環境整備、そしてLIFE対応のソフトへの切り替えも図りたいといった目的で補助金を活用。iPad最大15台、Wi-Fi環境整備、ケア樹1年契約といった導入を行った結果、オンライン面会時のリハビリ動画共有、Wi-Fi環境を活用した見守りセンサーの導入、報告書類のデータ化などが可能になりました。このケースでは、申請額470万円に対し235万円が補助金により支給され、総投資額の半額で導入できた事例となっています。 ■利益を生み出すITツール また、Moff社が開発・販売している「モフトレ」は、個別機能訓練計画書の作成から訓練の実施、自動記録、出力、計測、評価まで可能なサービスです。自社開発のウェアラブル端末とモーション認識、データ解析を組み合わせて提供するもので、個別機能訓練加算の算定に特化しています。全国400施設以上のデイサービスで活用されていますが、注目したいのは、この導入によって売上が上がるという点になります。 通常のサービス利用料年間65万円のうち、IT導入補助金により年間32・5万円ほどの負担が必要にはなりますが、加算収益で見た場合、定員30名、週6日稼働のデイで個別機能訓練加算Ⅰ(イ)を算定した場合には、月間30万円強、年間400万円強の売上アップにつなげることが可能となります。投資額を差し引いても、年間370万円ほどの利益を生み出すことができるツールであることがわかります。 また、コニカミノルタ社では、「連絡、面会、イベント、安否確認」などの介護施設で起こる様々なシチュエーションに対応可能な介護特化のコミュニケーション用総合アプリ「HitomeQコネクト」を開発、販売。このサービスはLINEアプリとも連携している点が特徴で、利便性の高いツールといえます。様々なサービスが開発されているので、自社のサービス、業務の中でどの部分をIT化できるのかを考え、複数試してみることが重要です。 ■導入時のサポート機能 IT導入補助金の仕組みの中には、「IT導入支援事業者」というサポーターのような機能があり、この支援事業者に相談しながら相談、検討、運用まで行うことができます。 コスト面に課題を持つ中小事業者も、補助金を活用することで、自施設での導入を実現できます。効率化や負担軽減に役立てることで、その先にあるサービスの質の向上、採用競争力の強化などにつなげていくことができるでしょう。 ※本記事は、㈱高齢者住宅新聞社が22年12月14日に開催した介護事業者向けセミナー「2024年度介護保険制度改正の理解とインボイス制度対応におけるデジタル化の必要性について」の内容を編集し作成したものです。

院長以外の対応と売上の関係を可視化(2023.03.14)
<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 経営トップ自身が現場に立つ“プレイングマネージャー”の場合、「忙しいわりに売上が思うように伸びていない」というケースが少なくありません。自分の実感と実際の売上がずれているとも言えますが、そのギャップを掘り下げたうえで対策を講じる必要があるようです。 先日「毎日忙しいし自費診療もしているのに、思ったほど売上が伸びていない」という相談を受けました。院長に思い当たることはないかと尋ねると、「自分のアポイントは減っていないし、自由診療も減っていない」とのことでした。そこで院長の忙しいという実感と実際の売上がずれる原因を調べ、対策を立てるため、患者数などの具体的なデータを調べることにしました。 〈歯科医院の概要〉 ユニット数:5台、月々の収入:約800万円(保険60万点、自費200万円) スタッフ数:歯科医3名(非常勤含む)、DH2名、DA・受付5名(パート含む) 〇過去2年分のデータを集計 レセコンから、レセプト数、診療実日数、初診数、保険点数のデータを、アポイント帳のデータから、アポイント数など過去2年分を集計しました。 結果は、前年同月レセプト数は平均500枚/月から平均470枚/月と30枚減少、のべ来院数は平均950日/月から平均900日/月と50日減少していました。 〇歯科医別の傾向を確認する 院長のレセプト数には大きな変化がなかったものの、勤務医のレセプト数が減っていました。院長のアポイント2週間以上先でないと入れられないのに対して、勤務医のアポイントは急患を入れてやっと埋まるという状況でした。院長と勤務医のアポイントの差が、忙しいのに売上が伸びない原因の一つであることが分かりました。空いている勤務医にアポイントを入れられれば、バラつきは抑えられるはずです。 〇受付にヒアリングをして分かったこと 受付スタッフにヒアリングすると以下のようなことが分かりました。 ①患者さんはほとんどの場合、院長を希望される方 ②院長を希望された場合、「2週間以上先の予約になりますがよろしいですか?」と対応している。そのため「それでは他を探してみます」と患者さんを取りこぼしてしまうことが少なくない。 ③院長のアポイントは埋まっているため、初診は勤務医にお願いしている。 ④勤務医は初診を応急処置で終わらせることがある。また「様子をみましょう」ということで、次のアポイントを決めずに帰す場合もある。 ⑤2回目のアポイントをキャンセルする初診患者が増えている。 以上の受付のヒアリングの結果から、①勤務医の対応と②アポイントの入れ方に問題があることが分かりました。 このように課題を明確化したうえで、対応策を講じる必要があります。 制作年月:2023年3月14日

いざというときに備えるAED プランやサポートも比較して導入を(2023.03.14)
<取材先>綜合警備保障株式会社(ALSOK) 屋内外での救命に活躍するAED(自動体外式除細動器)は、駅や公共施設などはもちろんのこと、安全配慮義務の観点から一般企業でも設置するところは増えています。人の健康に携わる診療所や、高齢者が通所・入居する介護施設、老人ホーム等においても、多くのところが導入していることでしょう。 AEDと一口に言っても、国内外のメーカーで製品が展開されており、日本でも現在複数のメーカー製品が流通しています。また、購入だけではなくレンタルなどの方法もあり、メーカーや販売代理店などによってアフターフォローやオプションもさまざまです。導入にあたっては、自施設に合った契約で設置したいところでしょう。 国内有数の警備会社である綜合警備保障株式会社でも、AEDの販売・レンタルを取り扱っています。ここでは同社で提供するAEDの概要や契約のメリットなどをご紹介します。 契約形態はニーズに合わせて幅広く使い方の講習やアフターサポートも万全 同社では現在、オムロンヘルスケア株式会社、旭化成ゾールメディカル株式会社、株式会社フィリップス・ジャパン──の3社から、計5種類のAEDを取り扱っています。いずれも国内外で人気のメーカー・製品であり、それぞれサイズや携行性、機能、使いやすさなどで選べる幅広いラインナップです。 また、契約形態に関しても、購入、レンタル、リースなどがあり、特にパッケージレンタルプランでは、本体以外にも必要な備品(バッテリー、パッド、取扱説明書など)もすべて基本セットを、月額数千円(製品によって変動)で利用可能です。契約期間は基本的に5年間。その間、使用した際の消耗分の無償補てんはもちろんのこと、定期消耗品の交換時期でのお届け、破損時の交換などにも対応しているので、自施設での管理も簡単なのがメリットです。 一方、いざというときにAEDを使えるためには、日ごろから使い方を理解、練習しておくことが不可欠。診療所や介護施設の経営者としては、自施設のスタッフにはしっかりと講習しておくべきでしょう。 同社では、こうした導入先の講習についても「救急トレーニングサービス(BLS)」としてカバーしているのが特徴です。実技時間に重点をおいたトレーニングプログラムを提供しているほか、トレーニング用のマネキンや胸骨圧迫訓練評価システムの販売も行っています。 なお、同社では24時間365日体制で、契約施設からの問い合わせなどを専門員が受け付ける、「ALSOK AEDコールセンター」も設置しています。 AEDの導入または更新を検討している施設については、導入から運用まで手厚いサポート体制を敷く同社へ、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。 制作年月:2023年3月8日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

eスポーツでフレイル予防 誰でも楽しめる介護レクリエーションとして注目(2023.3.9)
今大注目のeスポーツ 認知機能向上やフレイル予防の効果も期待されるその内容とは eスポーツでフレイル予防 誰でも楽しめる介護レクリエーションとして注目 【本文】 <取材先> SOMPOケア ハッピーデイズ入間 近年、「eスポーツ*」を活用して高齢者の健康増進に取り組む活動が、各地で広がりつつあります。 ゲームで指先や頭を使うことにより認知機能も向上し、フレイル予防にも効果があるとされ注目を集めているのです。 このような流れの中で、介護レクリエーションとしてeスポーツを取り入れる動きもでてきています。 今回は、同施設にて行われたeスポーツ体験会の様子をご紹介していきます。 *eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉えた言葉のこと デイサービスでeスポーツ体験 2023年1月25日、SOMPOケア(東京都)が運営するデイサービス「SOMPOケア ハッピーデイズ入間」にて、NTTe-Sports(東京都)による企画・運営のもと、『太鼓の達人Nintendo Switch ば~じょん! (C)BANDAI NAMUCO Entertainment Inc.』を使用したゲーミングレクリエーションの体験会が実施されました。今回使用するゲームは、音楽に合わせて太鼓を模したコントローラーをバチで叩くというリズムゲームです。 午後のレクリエーションの時間となり、計16名の参加者による体験会がスタートしました。 まずは、準備体操として上肢を中心に体を動かします。 歌を歌いながら手を広げたり、歌詞に合わせてじゃんけんを続けるなどして体をほぐしていきます。 (合唱しながら体操を行う様子) 続いて、講師の方によるレクの遊び方の説明と事前練習です。 参加者の方々にはまず練習用のバチが配られ、ルール説明を聞きながら実際に太鼓を叩く動きを練習します。 最初は「eスポーツ」という聞き慣れない単語に戸惑う様子も見られましたが、実戦練習を通して、リズムゲームを使ったレクリエーションというイメージを掴むことができたようです。 (講師によるルール説明を聞きながら、ゲームの練習を行う参加者たち) 高齢者も夢中でゲームを楽しむ 実際にゲームに挑戦してみると、音楽に合わせて夢中で太鼓を叩く参加者の方々の姿が。 観戦している方々もリズムに合わせてバチを振っており、プレイヤーと一体となって全員で楽しむ様子が印象的でした。 (真剣な表情でゲームをプレイする参加者たち) (周りの観戦者も一緒に楽しむ様子) プレイ終了後には各自得点が表示されるため、「もっといい点数を取りたかった」と悔しがる様子も。 「ゲームは初めてで、できるか不安」「緊張する」と言っていた方も、プレイ終了後には「楽しかった!」と笑顔に。今回のリズムゲームは複雑な操作が必要なく、「太鼓を叩く」という動作も親しみやすかったのではないでしょうか。 30分程度レクリエーションを楽しんだ後は、ストレッチを行い再び体をほぐします。 (ゲーム終了後には全員でストレッチ) eスポーツは世代を問わず取り組める こうして盛況のうちに終わったレクリエーション。ゲーム終了後の参加者へのインタビューでは、eスポーツに対してのポジティブな感想が目立ちました。 ・簡単そうに見えて、意外と頭を使うと思った ・全員参加で楽しくできたように思う ・昔太鼓をやっていたので楽しくプレイできた ・プレイしていくうちに、どんどん楽しくなった ・初めての経験だったが ・頭と体を両方使えて楽しかった など 「また参加したい」という声も多くあり、レクリエーションとしてeスポーツを楽しむことができたようです。 eスポーツは、年齢や性別、運動能力などに関係なく、等しく競い合えるスポーツです。 実際に今回の体験会では、最年長で90歳の方がいたり、車椅子の方も参加されていましたが、他の参加者と同じようにゲームを楽しまれていました。 また、「頭や体を使う」という声もあったように、画面に表示される動きに合わせて自らの体を動かすため、認知機能を鍛える効果が期待できます。 友人を誘って参加してみる・孫と一緒にプレイしてみるなどの発展性もあり、参加者同士で交流しながら楽しむことで、コミュニケーションツールとしても活用できるのです。 今後、eスポーツを活用したレクリエーションが広く浸透していくことで、レクリエーション内容のマンネリ化や新ネタの考案といった悩みを抱える介護施設においても、有効的なツールとなるのではないでしょうか。 制作:芙蓉総合リース株式会社 取材年月:2023年1月

医業所得の計算方法(2023.03.06)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 医業に係る所得金額の計算は、医科・歯科の事業所得の収入金額を、「社会保険診療報酬」、「自由診療報酬等」、「雑収入(その他の収入)」の3つに分けて計算します。所得計算は、収入金額から必要経費を差し引いて計算を行いますが、社会保険診療報酬の必要経費については、実際にかかった経費ではなく、租税特別措置法26条の適用により“概算経費”で計上することが認められています。 この制度の正式名称を「社会保険診療報酬の所得計算の特例(措置法26条)」といいます。 今回はこの「社会保険診療報酬の所得計算の特例」の特例計算についてご紹介いたします。 目次 01:社会保険診療報酬の所得計算の特例 02:自由診療報酬等(社会保険診療報酬以外の収入)の所得計算 03:個人開業医の場合の比較事例 04:おわりに 05:見出し05 06:見出し06 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 01:社会保険診療報酬の所得計算の特例 この制度は、年間の社会保険診療報酬の収入金額が5,000万円以下の医師または歯科医師が社会保険診療報酬に係る必要経費を“概算経費”で計算して確定申告することができるものです。「実際にかかった必要経費(実額経費)」が概算経費より多い場合は、実額経費を必要経費として確定申告を行うことも可能です。確定申告を行うときは、実務上は概算経費と実額経費のいずれか有利な方を選択します。 概算経費の計算は「1年間の社会保険診療報酬の額×概算経費率」で行います。概算経費率は国が定めていて、下記の4段階に分かれています。 特例計算の概算経費率表 社会保険診療報酬の額(A) 必要経費の額 2,500万円以下 (A)× 72% 2,500万円超、3,000万円以下 (A)× 70% + 50万円 3,000万円超、4,000万円以下 (A)× 62% + 290万円 4,000万円超、5,000万円以下 (A)× 57% + 490万円 この制度の適用が可能かどうかは1年ごとに判定を行い、次の場合は、対象外となります。 ・社会保険診療報酬の額が5,000万円を超える場合 ・医業等の収入の合計額(保険診療+自由診療)が7,000万円を超える場合 02:自由診療報酬等(社会保険診療報酬以外の収入)の所得計算 自由診療報酬等の所得計算には、概算経費の特例計算を使うことはできません。 所得計算は、収入金額から必要経費を差し引いて計算を行う「実額」となります。 自由診療報酬等に該当するものには、労災保険診療、自賠責保険診療、母子保健診療、健康診断料、メタルボンド、金属床義歯、一般的な歯科矯正、診断書作成料、貸与寝具料、テレビ等の使用料、自動販売機収入、医薬品等の仕入割戻などがあります。 03:個人開業医の場合の比較事例 特例計算の場合と実額で計算した場合の所得税額を比較してみましょう。 【事例】 社会保険診療報酬:3,500万円 実際経費:1,500万円 特例計算を行う場合は、①の表から次のように社会保険診療報酬に係る概算経費を計算します。 a. 2,500万円×72%=1,800万円 b. (3,000万円-2,500万円)×70%+50万円=400万円 c. 概算経費の額(a+b)=2,200万円 特例計算での所得金額は1,300万円(3,500万円-2,200万円)となります。 これに対して実額での所得金額は2,000万円(3,500万円-1,500万円)になります。 税額を概算してみると、特例計算の場合は所得税率33%で税額は約275万円、実額の場合は所得税率40%で税額は約520万円となり、特例計算を選択すると約245万円の節税につながります。 04:おわりに 社会保険診療報酬が5,000万円以下かつ保険診療+自由診療の合計額が7,000万円以下の場合、社会保険診療報酬に係る経費を実際の経費でなく概算経費で計上できます。高い節税効果が期待できる優遇税制ですが、実額・特例計算のどちらの適用を受ける方がより節税につながるかは、ケースにより異なりますので、税理士などの専門家にご相談のうえ、選択を行うことをお勧めいたします。 制作年月:2023年2月27日 当サイトではクリニックの「開業に役立つ情報」や「クリニック限定 トレンドニュース」「経営(人事・集患 等)に役立つ情報」を毎週配信! ブックマークまたは、以下のバナーよりメルマガの登録をお願いします!(メアド登録のみ) \おすすめコンテンツ/

【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント~資金調達・広告編~(2023.03.01)
<著者> 辻・本郷税理士法人 ヘルスケア事業部 シニアコンサルタント 大武信治 医院を開業するためには、事前の準備が最も重要であり、その後いくつかのステップと、それぞれにおいてポイントを押さえておかなければならないことを前回のコラムでお伝えしました。今回はクリニック開業に向けて、さらに具体的に準備しなければならない以下の重要な要素をお伝えいたします。 目次 1. 資金調達の方法 01:金融機関等からの融資 メリット 02:金融機関等からの融資 デメリット 03:親からの資金援助 04:リース 2. 効果的な開院広告 1. 資金調達の方法 開業までのハードルのひとつが資金調達です。開業資金の調達方法としては、[金融機関等からの融資、親からの資金援助、自己の預貯金]などがあります。 どの方法が良いかは、自己資金の状況などにより異なりますが、いくつか留意点を押さえておきたいと思います。 金融機関からの融資 02:金融機関等からの融資 メリット 低金利でかつ、多額の資金を借入することが可能です。 借入金の返済を毎月しっかり行うことにより、銀行に対する信用力の強化につながります。 03:金融機関等からの融資 デメリット 1.返済義務 融資はいわゆる借金のことです。当然返済する義務が生じ、元本の他に利息が発生します。 2.審査が必要 融資にはさまざまな種類がありますが、いずれも受けるにあたって審査が設けられています。審査には時間がかかりますので、急ぎで必要な人にはデメリットといえるでしょう。参考までに、銀行>信用金庫>日本政策金融公庫の順に審査が厳しいといわれています。一番借入しやすいのが日本政策金融公庫です。 3.返済滞納によるリスク 返済には期限があり、延滞した場合にはペナルティが設けられています。その一つに格付けという評価のランクがあり、返済が滞ればこのランクが下がります。これは信用に関わるものであり、低ければ次回の融資が受けづらくなります。 主な融資制度としては以下のものがあります。 いずれも融資条件を満たせば、一定期間の元金据置制度を利用できる可能性がございます。 ①福祉医療機構 融資の利用できる地域か否かが診療所の過不足統計によって決められます。申込先は民間金融機関が代理店です。 ②日本政策金融公庫 開業を支援する開業融資制度があります。一般的には民間金融機関より金利が低く固定金利がメリットです。 ③自治体制度融資 自治体により制度の有無があるので事前確認が必要です。利子補助や設備費用補助などがあります。 ④医師会提携融資 医師会の提携金融機関から比較的協力的な支援が得られ、都道府県医師会事務局が窓口となっています。 ⑤民間金融機関融資 担保物件が揃っていることが融資の条件でしたが、最近では無担保での融資金額枠を持つ金融機関も多くなってきました。金利は一般的に公的融資制度に比べて高い場合が多いです。 04:親からの資金援助 親や親類等から借り入れをする場合には、第三者から借り入れる場合と違い税務上注意しなければならないことがあります。それは身内であるために、借りたのではなく貰ったのではないかということで贈与として税金を課される恐れがあるためです。贈与と認定されないためには次のような注意が必要です。 1.契約書の取り交わし まず第三者から借り入れる場合と同じようにすることが重要です。例えば自分が誰か他人にお金を貸すことを考えてみてください。後日「貸したよ」「いや貰ったのだ」等もめないように、いくら貸したのかわかるようにしておく必要があります。 契約書には借りた金額・返済期限・支払方法等を記載し、それぞれが署名と押印をします。個人間の借り入れであるため利息は支払わなくても構いません。また返済期間等も決まりはありません。 2.返済計画を立てる 大事なのは契約書通りに返済しているという事実です。そのため借り入れたお金や返済したお金は、入出金の事実が確認できるよう銀行を通じて行うようにして、現金でのやり取りはしないようにしてください。そして契約書は、ご自身の資金繰りを考慮して余裕を持った返済計画に基づいて作成されるのがよいと思います。 また、開業資金に用意した資金が自己資金でも、親のものでも、資金の出所については税務調査の対象になる可能性もありますので、ご注意ください。 契約書に記載する内容 ・借入日 ・借入金額 ・返済開始日及び返済回数 いずれの方法で資金調達するにしても、返済期間は極力長めに設定し月々の支出を抑えた方が安心です。 05:リース 医院の設備は診療科によっても違いが大きいですが、設備等を購入すべきか、リースにすべきかは、リースのメリット・デメリットを十分に理解の上、その時の状況により検討する必要があります。 リースのメリット リースのデメリット 1 リース期間で毎月の支払い額が必要経費になる 中途解約することができない。 2 フレキシブルな費用化が可能 (状況に応じたリース期間の設定が可能) 金利がのるので購入するよりは総支払額は高くなる 3 購入時の多額の資金が不要 物件の所有権がリース会社にあるため、リース契約終了後も物件を使用する場合には、再リースか買取りをしなければならない 設備を購入する場合には、一度に多額の資金を用意する必要がありますが、リースにすることでリース期間内で分割して支払うことができます。 常に新しい機器が欲しい場合はリース期間を短期に設定したり、あるいは長期的な使用を見込む場合はリース期間を長期化して月々の支払額を低くしたりなど、期間設定を柔軟に行うことも可能です。 また、上記でも触れておりますが、リース料には金利がのるので、購入に比べ総支払額は高くなります。 自己資金に全く問題がないのであれば購入が良く、自己資金に余裕がない場合や借り入れの枠を残しておきたいという場合にはリースを選択するのが良いでしょう。 2. 効果的な開院広告 いざ開業が決まれば、地域の住民に広く自院を知っていただかなければなりません。その手段として開業初期から行うのが開院広告です。 広告の時期は、開院日までに日がありすぎても記憶がうすれてしまうこともあるので、開院日1,2週間と開院日直前のチラシ等による広告、また開院前の週末1,2日間の内覧会実施による広告等が効果的です。 広告手段は様々ですが各広告媒体の特徴をつかみ、新規患者数を観測し効果検証を行いながら、複数の広告媒体を効果的に使うのがよいと思います。 <主な広告媒体の特徴> 駅広告 ・駅利用者が対象 ・年間契約で費用が高い(契約期間によって増減します。) ・設置場所により効果の差が大きい 電柱広告 ・公道上に提出できる唯一の媒体 ・道案内への効果が大きい ・他の媒体に比べて比較的料金が安い 折込広告 ・広告する地域を絞り込むことが可能 ・即効性がある ・直接手元に残る情報伝達が大切 ポスティング ・地域を選んでの配布が可能 ・即効性がある ・折込広告と比べ手にとって見てもらえる確率が高い ホームページ SNS/予約アプリ ・詳しいクリニックの情報が出せる ・予約制を考える場合は効果的 ・検索したら常にトップに表示されるような工夫が必要 ・スマホ対応のホームページにする方がよい ・ SNSは広告では出せないクリニックや院長のイメージを無料で打ち出せる 広告内容については医療法で広告してよいと認められている項目に制限があるので注意が必要です。(※厚生労働省 医療法における病院等の広告規制について) 内覧会も、自由に院内の設備や院長、職員の人柄に触れていただける場を持つことができます。いずれにしても広告にかかる費用は安いものではありません。初診患者への問診票等に欄を設けて、どの広告媒体により医院を知ったのかをアンケートするなどして、しばらくしたら広告媒体ごとの費用対効果を検証の上、それぞれの診療所にあった効果的な広告をすることが必要となります。 制作年月:2023年2月27日 \おすすめコンテンツ/

【後編】自立支援介護ノウハウや財務管理を学ぶ(2023.3.1)
要介護高齢者を対象に「結果」を出すため必要な視点とは(取材先:ポラリス森社長) ポラリスの自立支援介護のノウハウは 森 当社が行う自立支援介護の基本的ケアとは、「介護職が中心となって、虚弱・要介護高齢者の方々が元気になるためのお手伝いの仕組み」を指します。基本的ケアは次の6項目からなります。 ①意欲 ②水分(1日1500ccの水分摂取) ③食事(1日1500kcalの栄養量確保) ④排泄(自然排便) ⑤運動(廃用を取り除く→運動学習理論) ⑥減薬(不要な薬・主に下剤眠剤の減薬) 当社では、センサー等の活用により24時間体制で、上記6項目ケアによる自立支援介護を徹底して実践します。これらの根拠としては、「運動学習理論」に基づいています。「高齢者が歩けなくなったのは歩かなくなったからであり、再び歩けるようになるためには歩かないといけない」というものです。 この6つの基本的なケアは、歩かなくなる要因を排除するものです。まず①「意欲」については、「短期滞在型サ高住」というコンセプトそのものが「ここに入れば歩けるようになるかも」といったモチベーション、動機・意欲付けでもあります。そして②「水分」③「食事」に関しては、まずほとんどの要介護高齢者が脱水・低栄養状態であるため、これを補います。④「排泄」も重要です。下剤を服用している人は、いつ便意をもよおしてしまうかわからない不安から閉じこもりの原因になります。⑤「運動」は不可欠ですが、いきなり歩行訓練をするのではなく、まずは機器などを活用したパワーリハビリやセラピストによる施術などを行います。また、パナソニック社との資本業務提携を通し活用しているセンサー、ウェアラブル端末等により排便・睡眠状況などを把握することで、⑥「減薬」にも取り組みます。 ここで、重要となるポイントが2つあります。1つは、この①~⑥はほぼ同時に実施すること、そしてもう1つは徹底的にやることです。徹底的にやらないと「なんちゃって自立支援」になります。当社がしっかりと結果を出せているのは、徹底的に実施しているからにほかなりません。「徹底的に実施する」ことの達成には、本人にとっても職員にとっても「合宿タイプ」がベストだろうという考えから、「短期滞在型」のサービス開発に至っています。在宅サービスにおける「デイ、訪問のサービス提供時間外の様子把握が困難である」という課題の解決です。 ■要介護高齢者を対象に「結果」を出すため必要な視点とは 森 要介護高齢者の二重構造として、「病気」とそれを覆っている「廃用」とがあります。病気に対する廃用の大きさを見ることで、予後予測をすることができます。例えば、病気自体は小さく廃用が大きいのであれば予後予測が立てやすいと言えます。 当社が揃えるパワリハのマシンは全部で6機種あり、最初は無理せずゆっくりとした運動で動作性を改善するよう介入します。その後、歩行器で安全な歩行訓練を実施。多様な機器の導入により、生産性を担保しながら自立支援を行うことが可能です。 また現在、パナソニック社とともに「自立支援介護プラットフォーム」の創出にも取り組んでいます。世界特許取得、AIモデル化に向けデータを集めているところで、内容は「我々の経験に基づいた、これまで話したようなことをAIで実施可能にする」ものです。今後、「ポラリスリハプラン作成モデル」を構築し、高クオリティかつ各利用者の状態に合わせた個別のリハプランを、一般スタッフでも作成することができることを目指します。歩行能力評価の指標である「TUG」を活用し、初期数値、目標数値から各種リハプログラムにおける適正負荷を算出することなどを可能とするAIモデルを構築中です。 ■ポラリスの財務管理における指標について 森 自立支援介護力と生産性は表裏一体であり、いくら取り組みがよくても赤字では続きません。当社では、以下の2つを重視しています。 ①最低限の利益を確保すること ②商品力(自立支援介護力) ③リスク管理 これらを40数項目のKPIで管理しており、一部紹介すると、自社開発の「ポラリスコックピット」というものを活用しています。これは、必要KPIを画面管理してデータを自動抽出し、自立支援介護・生産性・リスクのアウトカム評価を行うためのツールです。この活用により、コロナ禍の21年の労働生産性もしっかり向上しています。 一定の生産性が数字で示せるよう、当社では「人時労働生産性」を指標として用いています。これは、「売上÷総労働時間」で算出できる数値で、「1時間に職員1人がいくら稼いでいるか」を示すものです。当社は3800円を目指しており、現在は3300~3500円の間で推移しています。15%から18%の事業所では3800円超えている一方、3000円を下回る事業所もあるので、これをいかに平準化し全体を底上げしていくかを課題と捉えています。 これに向けた取り組みとして、第一はオペレーションの改善。コロナ禍で、デイなどでは欠席率が跳ね上がり、新規の受け入れも止まりますが、その後落ち着けばラッシュがきます。雇用は守りながら欠席に対応するリスク、その後のニーズに対応する体制などをシビアに管理できていないと、新規事業や自費サービスは難しいでしょう。 リーガロイヤルホテルでのサービス提供や世界一周の船の企画などは、富裕層向けの自費サービスです。一般向けのサ高住の事業についてもすべてが介護保険費ではないため、家賃設定が肝になってきます。当社はサービス費、食費など込みで月12万円程度の家賃設定としましたが待機者が多く、15~16万円にすべきだったと感じています。 介護サービス事業は制度ビジネスのため、自費サービスを開始する際の価格設定が上手でないケースが多く見られます。サービスのバリューに対して価格をどう決めるのか、これについては議論が必要かと思います。 ※本記事は、㈱高齢者住宅新聞社が22年12月14日に開催した介護事業者向けセミナー「令和の介護ビジネスイノベーション~介護事業のマーケティング・営業・人事戦略~」の内容を編集し作成したものです。

【厚労省】21年介護施設・事業所調査 | 22年介護事業経営概況調査(2023.2.24)
介護医療院数が前年比で15.1%増加 21年介護施設・事業所調査 看多機伸長 地域密着型サービスでは看多機などが大きく伸長 厚生労働省は2022年12月27日、2021年の「介護サービス施設・事業所調査の概況」を公表した。それによると、介護医療院の施設数は前年比で15.1%増加。これに対して24年3月末で廃止予定の介護療養型医療施設(介護療養病床)は24.3%減り、病床の転換が進んでいることが窺えた。 調査は、21年10月1日現在で活動中の施設・事業所の状況を集計した。介護保険施設の施設数をみると、▽介護老人福祉施設・8,414施設(前年比1.3%増)▽介護老人保健施設・4,279施設(0.6%減)▽介護医療院・617施設(15.1%増)▽介護療養型医療施設・421施設(24.3%減)。居宅サービス事業所数は、▽訪問介護・3万5,612事業所(1.5%増)▽訪問看護ステーション・1万3,554事業所(9.4%増)▽通所介護・2万4,428事業所(1.4%増)▽通所リハビリテーション・8,308事業所(0.5%減)-などとなった。 地域密着型サービスでは、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と「複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)」の施設数が大きく増加。それぞれ1,178事業所(7.2%増)、817事業所(14.9%増)となった。 <介護医療院とは> 要介護高齢者の長期療養・生活のための施設 介護医療院は、要介護者であって主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする。 (参考:厚生労働省ホームページ) <介護医療院の役割・理念> 介護医療院は、療養病床等からの移行が見込まれるが、単なる療養病床等からの移行先ではなく、「住まいと生活を医療が支える新たなモデル」として創設された。介護医療院においては、「利用者の尊厳の保持」と「自立支援」を理念に掲げ、「地域に貢献し地域に開かれた交流施設」としての役割を担うことが期待されている。 具体的には、医療提供施設の側面も持ちながら生活施設としての役割を果たすために、ハード面として、パーティションなどの視線を遮るものの設置のみならず、ソフト面にも配慮したプライバシーの尊重などが求められている。 一方で利用者を支える観点から医療提供施設としては、要介護高齢者の長期療養・生活施設として、介護療養病床(療養機能強化型)相当のサービス(Ⅰ型)と老人保健施設相当以上のサービス(Ⅱ型)の2つのサービスを提供することができ、利用者の「看取り・ターミナル」を支えることも重要な役割のひとつと想定されている。 また介護医療院は、介護老人保健施設や特別養護老人ホームと同様に地域交流を基本方針として位置づけている。このため、介護医療院に参入しようとする事業者には地域の中でどういう役割を果たし、地域といかに交流をしていくのか等について、地域の住民に対し懇切丁寧に説明を行うことが求められる。閉鎖的な存在となることなく、地域交流やボランティアの受け入れなどに積極的に取り組むことで、介護医療院が地域に開かれた施設となると期待されている。 今後、急速に増えていくと予測される医療ニーズのある要介護高齢者の生活を医療と介護で支える施設として、各地域の中で成熟し、さらなるサービスの質の向上につながることが期待されている。 (参考:厚生労働省ホームページ) 特養と介護医療院は利用率が9割を超過 介護保険施設の1施設当たり定員数と利用率は、▽介護老人福祉施設・69.6人、95.5%▽介護老人保健施設・87.0人、88.3%▽介護医療院・62.5人、92.9%▽介護療養型医療施設・32.5人、83.2%-で、介護老人福祉施設と介護医療院では利用率が9割を超える。 居宅サービスについて、21年9月中の利用者1人当たり利用回数をみると、▽訪問介護・21.1回▽訪問看護・7.7回(医療保険等の利用を含む)▽通所介護・9.4回▽通所リハビリテーション・8.2回-などとなった。 職種別の従事者数のうち介護職員(訪問介護員)の状況をみると、介護保険施設は、▽介護老人福祉施設・29万5,957人▽介護老人保健施設・12万7,611人▽介護医療院・1万1,529人▽介護療養型医療施設・4,820人。居宅サービスは、▽訪問介護・51万2,890人▽通所介護・22万3,488人-などだった。 21年度の収支差率は全サービス平均で3.0% 費用の増加で20年度から0.9ポイント低下 介護事業経営概況調査 さらに厚生労働省は、2月1日の社会保障審議会・介護給付費分科会・介護事業経営調査委員会に、2022年度の「介護事業経営概況調査」の結果を報告した。介護報酬改定年の21年度の収支差率は全サービス平均で3.0%となり、改定前の20年度から0.9ポイント低下したことがわかった。収入は20年度に比べて増えたものの、給与費を含む費用の伸びが上回ったことが影響した。 介護事業経営概況調査は、介護保険制度改正や介護報酬改定の基礎資料を得る目的で、改定後2年目に実施されるもの。全介護サービスから層化無作為抽出法によって抽出した施設・事業所を対象に、20年度(改定前)と21年度(改定後)の決算状況を調べた。有効回答率は48.3%。 主なサービスの21年度の収支差率は、▽介護老人福祉施設・1.3%(前年度比0.3ポイント減)▽介護老人保健施設・1.9%(0.9ポイント減)▽介護医療院・5.8%(1.2ポイント減)▽訪問介護・6.1%(0.8ポイント減)▽訪問看護・7.6%(1.9%ポイント減)▽通所介護・1.0%(2.8ポイント減)▽通所リハビリテーション・0.5%(1.1ポイント減)▽居宅介護支援・4.0%(1.5ポイント増)-など(資料1)。 収入に対する給与費の割合は、▽介護老人福祉施設・64.2%(0.3ポイント増)▽介護老人保健施設・62.0%(0.6ポイント増)▽介護医療院・59.4%(1.0ポイント増)▽訪問介護・73.1%(0.7ポイント増)▽訪問看護・73.6%(1.7ポイント増)▽通所介護・64.7%(1.7ポイント増)▽通所リハビリテーション・65.6%(1.0ポイント増)▽居宅介護支援・78.1%(1.5ポイント減)-などとなった。一部のサービスでは前年度から給与費割合が低下したが、金額ベースで見ると全サービスで給与費が増加している(資料2)。 新型コロナウイルス感染症の影響を把握するために、陽性者等の発生状況別や、サービスの休止・縮小等の有無別での収支差率の比較も行ったが、一定の傾向を見出すことはできなかった。 (2023年1月20日時点の情報に基づき作成) (資料1)各介護サービスにおける収支差率 (厚生労働省 第36回介護給付金-介護事業経営調査委員会 資料より一部抜粋編集) (資料2)各介護サービスの収支差率及び給与費割合(過去の調査結果との比較) (厚生労働省 第36回介護給付金-介護事業経営調査委員会 資料より一部抜粋編集)

オン資導入原則義務化の経過措置設定を告示 ~ベンダー都合で間に合わない場合は23年9月まで義務化を猶予(2023.02.24)
中央社会保険医療協議会は2022年12月23日、2023年4月からのオンライン資格確認導入の原則義務化に経過措置を設ける、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(療養担当規則)等の改正を答申した。ベンターとの契約は済んでいるがシステム整備が間に合わないなど、やむを得ない事情がある医療機関・薬局について、23年3月末までに地方厚生(支)局への届出を行うことを条件に、義務化を一定期間猶予する。 対象になるのは義務化に間に合わない事情が、(1)23年2月までにベンダーと契約締結したが導入に必要なシステム整備が未完了の医療機関等(薬局含む、以下同じ)、(2)オンライン資格確認(オン資)に接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない医療機関等、(3)訪問診療のみを提供する医療機関、(4)改築工事中、臨時施設の医療機関等、(5)廃止・休止に関する計画を定めている医療機関等、(6)そのほか特に困難な事情がある医療機関等-のいずれかに該当する施設。(資料1) (資料1)原則義務化の経過措置 目次 01:ICT化基金による補助拡充措置の適用も事業完了時まで延長 02:医師が高齢でレセ取扱が月平均50件以下は「特に困難な事情」に該当 03:支払基金のオン資医療機関等ポータルサイトから「猶予届出書」を提出 04:オン資関連加算の特例措置~再診時の加算算定は薬剤情報等の確認が必須 05:施設基準緩和の4月からの適用、原則3月末までにオンライン請求開始の届出を 06:再診時のオン資加算、オンライン診療などの場合は算定不可 疑義解釈 01:ICT化基金による補助拡充措置の適用も事業完了時まで延長 (1)に該当する施設の経過措置期限は、ベンダーによるシステム整備が完了するまで(遅くとも23年9月末まで)とし、医療情報化支援基金(I CT化基金)によるシステム改修費等の補助の拡充措置を受けられる期限も23年9月末の事業完了時まで延長する(通常は23年3月までの事業完了が必須)。これら施設には、地方厚生局等への事前届出の際にシステム整備が完了する予定月の報告も併せて求める。 (2)は、離島・山間地域や施設がある建物に光回線のネットワーク環境が敷設されていないケースを想定。経過措置期限は、オン資に接続可能な光回線が整備されてから6カ月後までとし、ICT化基金による補助の拡充措置は24年3月末の事業完了まで継続する。 (3)の訪問診療専門医療機関は、患者の居宅でオン資を行う訪問診療や訪問看護向けのシステム(居宅同意取得型)の運用が始まる24年4月までの間、義務化を猶予する。 (4)の施設の経過措置期限は改築工事が完了、または臨時施設が終了するまでに設定。 (5)は現行の保険証が廃止される24年秋までの廃止・休止を決めている施設について、廃止・休止計画の提出を条件に、廃止・休止の間までの経過措置を設ける。 02:医師が高齢でレセ取扱が月平均50件以下は「特に困難な事情」に該当 (6)の「特に困難な事情」は例えば、▽自然災害等で継続的に導入が困難となる場合▽高齢の医師等でレセプト取扱件数が少ない場合(23年4月時点で常勤医が全て70歳以上であって、月平均レセプト件数50件以下が目安)▽義務化の例外措置や(1)~(5)の類型と同一視できる特に困難な事情がある場合-などを想定しており、個別に判断するバスケットクローズの経過措置を設定する。(資料2) (資料2)(参考)高齢の医師等でレセプト取扱件数が少ない場合 また、患者からオン資による被保険者資格の確認を求められた場合は、これに応じなければならないとする療養担当規則等の規定にも経過措置を設定。訪問診療やオンライン診療などの場合は、居宅同意取得型の運用開始の24年4月まで当該規定の適用を猶予する。 03:支払基金のオン資医療機関等ポータルサイトから「猶予届出書」を提出 年が明け1月27日、厚生労働省は4月からの医療機関・薬局におけるオンライン資格確認の導入義務化について、経過措置の適用を受ける場合の留意事項通知を地方厚生局などに発出した。適用を希望する施設は、「猶予届出書」を2023年3月末までに社会保険診療報酬支払基金経由で地方厚生局に提出する必要がある。オンラインによる届出が原則で、厚労省のホームページ等からダウンロードした様式に、上記の経過措置適用事情(1)~(6)の関連書類を添付し、支払基金が運営する「オンライン資格確認医療機関等向けポータルサイト」のフォームから届出を行う。 その際、(1)に該当する場合は、猶予届出書にシステム事業者との契約日とシステム整備の完了予定日を記入し、契約書や注文書の写しなど、システム事業者との契約締結が確認できる書類を添付する。(6)で医師の年齢とレセプト件数の少なさを理由とする場合は、▽常勤医師等のうち最も若い者の23年4月時点の年齢▽特に困難な事情(前出の最年少者の年齢が70歳以上である場合は不要)-を猶予届出書に記載する。届出期限は23年3月31日。オンラインによる届出が困難な場合は、紙媒体による届出を認める(提出先は支払基金)。 04:オン資関連加算の特例措置~再診時の加算算定は薬剤情報等の確認が必須 さらに1月31日には、厚生労働省は2023年4月からの診療報酬上の特例措置や、オンライン資格確認(オン資)導入義務化の経過措置について告示するとともに、関連通知や事務連絡を発出。オン資導入医療機関の再診時の評価として新設する「医療情報・システム基盤整備体制充実加算3」では、他院で処方されたものを含む薬剤情報や、健診情報などの確認が算定要件であることを通知で明示した。 特例措置では、オン資の導入促進と長引く医薬品の供給不安への対応を目的に、23年4月から12月までの9カ月間、関連する診療報酬に一定の上乗せを行う。 オン資の関係では、患者が通常の保険証で受診した場合の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の算定について、▽初診時の評価(加算1)を6点(現行4点)に引き上げる▽再診時の評価(加算3/2点)を新設する-特例措置を実施。再診時の「加算3」の算定では、「他院からの処方を含めた薬剤情報や必要に応じて健診情報等を問診等により確認する」ことを求める。 これに対してマイナ保険証での受診でオン資から診療情報を取得した場合、または他院から診療情報の提供を受けた場合、初診時は「加算2」(点数は据え置きで2点)を算定するが、再診時の「加算3」は算定できない。(資料3) (資料3)オンライン資格確認の導入・普及に関する加算の特例措置 (出典:厚生労働省 第535回中央社会保険医療協議会 資料より一部抜粋編集) 05:施設基準緩和の4月からの適用、原則3月末までにオンライン請求開始の届出を 算定施設をオンライン請求対応施設に限定している施設基準も特例的に緩和。光ディスクや紙レセプト請求施設については、オンライン請求を開始する旨を地方厚生局などに届け出た場合に限り、これら加算の算定を容認。23年4月10日までに届け出れば、4月1日に遡って加算を算定できるが、4月1日以降は届出の集中による担当窓口の混雑が予想されることから、厚労省は事務連絡で、原則3月末までに届出を済ませるよう指示している。尚、要件緩和の期限は加算の特例と同じ23年12月末まで。23年4月届出分を除き、届出の翌月からの算定となることから、届出の最終期限は23年12月1日となるため、留意が必要だ。 医薬品の供給不安への対応では、「一般名処方加算1、2」と「外来後発医薬品使用体制加算1~3」に2点を、「後発医薬品使用体制加算1~3」に20点を上乗せする。これらの上乗せ点数は、追加の施設基準を満たせた場合にのみ算定できる。例えば、「一般名処方加算」では、「医薬品の供給の供給状況を踏まえつつ、一般名処方の趣旨を患者に十分説明していること」についての院内掲示を求める。追加の施設基準を満たしていることについて、地方厚生局などに届出を行う必要はない。 06:再診時のオン資加算、オンライン診療などの場合は算定不可 疑義解釈 また、厚労省は同日、これらの特例措置に関する疑義解釈資料も事務連絡した。「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」では、マイナ保険証利用の再診で▽患者が診療情報の取得に同意しなかった場合▽破損等でマイナ保険証が利用できない場合▽利用者証明用電子証明書が失効している場合-については、他院からの処方を含む薬剤情報や健診情報等を問診などで確認することを条件に、「加算3」を算定できることを明記。問診等の結果、前回から薬剤情報等に変更がなかった場合も「加算3」を算定してよいが、オンライン診療や往診、訪問診療で再診を行う場合は算定できないと説明した。 2023年4月のオン資の義務化が決定して以来、医療機関・薬局では導入準備を間に合わせようと、業者に対して駆け込みでの工事の依頼が集中している。2022年末時点でも「とても4月には間に合わない」と業者から断られるケースも出てきており、そのような状況を収めるために、今回の「経過措置」が用意されたと解釈できる。また、世界的な半導体の不足は継続中であり、インターネットの工事にも遅れが見られるため、急いでもなかなか進まない状況が続くことが予想される。早期に情報を集め、適切に対応していくことが必要となる。 (2023年1月20日時点の情報に基づき作成) 参考資料)オンライン資格確認の導入状況・運用開始状況 (出典:厚生労働省 第535回中央社会保険医療協議会 資料より一部抜粋編集) 制作年月:2023年2月24日 (編集:株式会社日本経営) \おすすめコンテンツ/

【新着情報】介護事業者向け|厚生労働省 新着情報(2023.4.12)
《介護事業者向け》 厚生労働省の新着ニュース|まとめ掲示板|~毎週水曜更新中~ ●介護保険 最新情報等 ■介護保険最新情報vol.1112(11月16日) ←New!! (令和3年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和4年度調査)への協力依頼(3回目)について) ■介護保険最新情報vol.1111(11月9日) (感染対策における業務継続計画(BCP)の策定のための「集団研修(オンライン研修)」に係る募集について) ■介護保険最新情報vol.1110(11月7日) (令和4年度における感染対策のための実地研修に係る二次募集について) 過去のリリース情報はこちらから(厚労省サイト)→ ●社会保障審議会【介護保険部会】 ■第102回/2022年11月24日開催(予定) ▸開催案内はこちら ←New!! 【議題】 1.地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について 2.介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会のとりまとめについて(報告) ■第101回/2022年11月14日開催 ▸資料はこちら ←New!! 【議題】 1.地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について ■第100回/2022年10月31日開催 ▸資料はこちら 【議題】 1.給付と負担について 過去の開催概要はこちらから(厚労省サイト)→ ●介護・高齢者福祉分野【トピックスニュース】 ■介護保険事業状況報告(暫定)(11月11日掲載) ←New!! (令和4年8月分|結果の概要・統計表[全国集計表/都道府県別/保険者別]) ■介護給付費等実態統計月報(10月26日掲載) (令和4年7月審査分) ■令和4年度地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金の内示(第1次)について(10月19日掲載) (令和4年度地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金の内示(第1次))

【厚労省情報】医科クリニック (2023.2.24)
厚生労働省、WAM(独立行政法人 福祉医療機構)からの配信された情報のなかから、医科クリニックに関係する情報に絞り、配信いたします。(毎週(水)更新) 目次 ▶ 2022年11月 New!! ・4週目(11/20-11/26)New!! ・3週目(11/13-11/19) ▶ 2022年11月 ☞4週目(11/20-11/26) 【報道発表】 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月26日版) インフルエンザの発生状況(令和4年11月25日) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月25日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月24日版) 新型コロナウイルス治療薬の緊急承認について(令和4年11月23日) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月23日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月22日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月21日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月20日版) 【審議会等】 疾病・障害認定審査会 (感染症・予防接種審査分科会新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査部会) 審議結果(令和4年11月24日) 第102回社会保障審議会介護保険部会 <議事> ・地域包括ケアシステムの更なる深化・推進について ・「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」の取りまとめについて(報告) 【重要情報】 病床確保計画(令和4年11月18日更新) 宿泊療養施設確保計画(令和4年11月18日更新) 臨時医療施設等確保計画(令和4年11月18日更新) 【その他】 自費検査を提供する検査機関一覧を更新しました。(令和4年11月21日(月)) 第107回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料(令和4年11月22日)を掲載しました 「新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」を更新しました。(令和4年11月25日) 令和4年11月11日 第88回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第18回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)議事録(令和4年11月25日更新) ☞3週目(11/13-11/18) 【報道発表】 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月17日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月16日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月15日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月14日版) 新型コロナウイルス感染症の現在の状況について(令和4年11月13日版) 新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS):Health Center Real-time information-sharing System on COVID-19(令和4年11月16日) 【審議会等】 第2回腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会 資料(令和4年11月17日) 第156回社会保障審議会医療保険部会 議事録(令和4年11月15日更新) <議題> 1.医療保険制度改革について 2.国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について 3.オンライン資格確認等システムについて 厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)(令和4年11月14日更新) 1.新型コロナワクチンに関する副反応への対応について 【政策分野】 モデルナ社のオミクロン株対応2価ワクチンに関する情報を更新しました(令和4年11月18日) 「令和4年度健康保険被保険者実態調査 調査票等作成支援システム 及び 被保険者証記号・番号変換ツール」について (令和4年11月16日) 新型コロナワクチン 令和4年秋開始接種の情報が更新されました。(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの接種を行う医療機関へのお知らせ(令和4年11月14日) オミクロン株対応2価ワクチンの追加接種後の健康状況調査(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンQ&Aを更新しました。(令和4年11月14日) 新型コロナワクチン接種後健康状況調査(オンライン)の中間報告を更新しました。(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの追加接種(3回目接種)後の健康状況調査(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの初回接種後の健康状況調査(令和4年11月14日) 新型コロナワクチンの副反応疑い報告について(令和4年11月14日) 【その他】 新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォースページを更新しました(令和4年11月18日) 新型コロナウイルス感染症対策に係る各医療機関内の病床の確保状況・使用率等の報告を掲載しました。(令和4年11月18日更新) 新型コロナウイルスに関する受診・相談センター/診療・検査医療機関等の情報を更新しました(令和4年11月18日更新) 新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」を更新しました。(令和4年11月18日更新) 都道府県の医療提供体制等の状況(医療提供体制等の負荷・感染の状況)についてを更新しました。(令和4年11月18日更新) 「療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査について」を更新しました(令和4年11月16日更新) 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA) COVID-19 Contact-Confirming Applicationについて更新しました。(令和4年11月17日)(アプリ機能停止のお知らせ) 自費検査を提供する検査機関一覧を更新しました。(令和4年11月14日更新) 都道府県の医療提供体制等の状況(医療提供体制等の負荷・感染の状況)についてを更新しました。(令和4年11月14日更新) (出典:厚生労働省ホームページより引用) 更新日:2022年11月30日

【前編】新規事業「ポラリスステイ」3ヵ月集中リハビリで在宅復帰へ(2023.2.15)
満室で待機者多数 自費サービスの新規事業が好調なわけとは?<ポラリスステイ> 自立支援介護」に強みを持つポラリス(兵庫県宝塚市)は、全国でデイサービスを70事業所展開しています。同社が2021年より手掛ける「短期滞在型サ高住」と「デイサービス」を組み合わせた新規事業や提供される自立支援介護のノウハウ、経営上の指標などについて、森剛士社長に聞きました。 【本文】 ■ポラリスが手掛ける自立支援介護とは 森 当社は全国で自立支援特化型デイサービスを展開しており、現在は直営54事業所、FC16事業所(22年12月末時点)を運営しています。 当社では「介護保険の卒業」を提唱してから、これまでに204名の「介護保険卒業」を後押ししてきました(22年10月時点)。要介護度が改善することは、社会保障費を引き下げることにつながります。この204名の介護保険卒業は、社会保障費にして12.9億円の削減に該当します。 また、要介護認定における二次判定時の改善率において、どの要介護度でも国平均と比較すると当社では2倍から3倍の改善が見られています。中でも要介護3~5の利用者の改善率が高く、これが当社の土台となる商品力です。 さらに、「毎日自立支援を提供したほうが改善するのでは」という仮説の下で自立支援・リハビリを実施した例では、81歳で要介護5、胃がん・食道がん術後で寝たきりの利用者にデイの2階部分に居住してもらい、週6日デイでリハビリを実施しました。 すると、3ヵ月後には450メートル歩行器で歩行するまでに回復し、要介護3に改善。4ヵ月後には近所のスーパーで買い物をするという目標を達成し、両腕にあった重度の浮腫の消失や栄養状態の改善も見られました。ポリファーマシーにも取り組み、眠剤・下剤・降圧剤をなくして減薬。医療費削減にも寄与しました。 ■新規事業「ポラリスステイ」について 森 こうしたケースから、歩行機能改善に特化した3ヵ月合宿タイプの「ポラリスステイ」を新規事業としてスタートしたのが21年。宿泊施設と連携し、日本全国の重介護度高齢者を対象とした自費の自立支援サービスとして同年10月に世界初「介護ツーリズム事業」を自費サービスとして開始しました。 最初は大阪のリーガロイヤルホテルと提携。超富裕層を対象に自立支援サービスを組み合わせて提供しており、これまでほぼ100%の改善結果を残しています。「車椅子に乗っている姿を見られたくない」と参加した利用者は1ヵ月で車椅子を卒業し、在宅復帰したという例もあります。 その後HIS、ハウステンボスとも業務提携。長崎市内にドミナント展開し事業拡大を図っており、こちらはテーマパークと自立支援サービスを組み合わせたものです。さらに、世界一周の船の中でリハビリを行い、到着時には要介護度が改善しているという企画もあり、こちらはコロナ禍でストップしていましたが、今年4月より開始予定です。 これらは富裕層が対象なので、一般向けにも行うべく「短期滞在型サービス付き高齢者向け住宅」事業も開始しました。コンセプトは以下の通りです。 ・サ高住12床と自立支援型デイを同一建物で運営 ・滞在期間を原則3ヵ月に限定。毎日デイに通い、徹底した自立支援介護を提供、短期間で改善し在宅復帰することが目的 ・自立支援介護を昼夜問わず集中的に実施することで、いかに短期間で中重度の入居者を改善させるかに取り組むため開設した新規事業 料金はサービス料、食費等込みで月12万円ほど。現在満床で待機者も多い状況です。 ■「ポラリスステイ」の現在の実績は 森 既存施設の実績では、延べ入居者数17名(11名は利用中)、在宅復帰者数6名(在宅復帰率35%)、改善者数16名(改善率94%)となっています。なお、利用中の11名についても、23年3月までに全員在宅復帰予定。ポラリスステイは、今後も増やしていく方針です。 私は現在、内閣官房健康医療戦略室のワーキンググループに入っていますが、「自立支援介護が高齢者のモチベーションを向上させること、活動量を増やすことや、低栄養・脱水の補正が必要であることなどに加え、回復期を経て在宅復帰することが当たりまえになるよう」提唱しているところです。「サ高住+自立支援型のデイ」という形については、すでに小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護という類型があり、今後デイと訪問を組み合わせた新類型が創設される予定ですが、すべてにおいてデイに行けないときの自立支援をどのように行うかという課題につながっていると考えます。 ※本記事は、㈱高齢者住宅新聞社が22年12月14日に開催した介護事業者向けセミナー「令和の介護ビジネスイノベーション~介護事業のマーケティング・営業・人事戦略~」の内容を編集し作成したものです。

マイナンバーカードを使って手軽にスマートフォンで確定申告(2023.02.16)
<著者> 米本合同税理士法人 大阪事務所 第二事業部部長 税理士 大川 智弘 マイナンバーカードはもうお持ちでしょうか?マイナンバーカードを使うと電子申告を簡単に開始でき、収入が給与所得、雑所得及び一時所得の方であれば、スマートフォンで国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスして手軽に確定申告ができます。令和3年分確定申告(令和4年1月上旬~)から、マイナンバーカードやスマートフォンを利用した申告がさらに便利になっております。今回はメリットと注意点をご紹介します。 目次 01:簡単に利用を開始できる 02:マイナンバーカード読取対応のスマートフォン 03:スマートフォンで電子申告ができる対象者 04:パソコンで申告書を作成される方はICカードリーダライタが不要 05:スマートフォンのカメラで「給与所得の源泉徴収票」を自動入力できる 06:マイナポータル連携による申告書の自動入力対象が拡大 07:マイナポータル連携は難しい? 08:マイナンバーカードに含まれる電子証明書の有効期限に注意 09:パスワードのロックに注意 1.簡単に利用を開始できる マイナンバーカードとマイナンバーカード読取対応のスマートフォンがあれば、面倒な手続きが不要でe-Tax(電子申告)を簡単に開始できます。 なお、マイナンバーカードを使わない場合は、運転免許証などの本人確認書類を持参の上、お近くの税務署でIDとパスワードの取得が必要です。 2.マイナンバーカード読取対応のスマートフォン 対応のスマートフォンに「マイナポータルAP」アプリをインストールして利用します。 マイナンバーカード読取対応のスマートフォン一覧はこちらのマイナポータルでご確認いただけます。 3.スマートフォンで電子申告ができる対象者 現在は給与所得、年金や副業等の雑所得及び一時所得がある方が対象です。事業所得や不動産所得など上記以外の所得がある方は対象とならないためパソコンが必要です。 4.パソコンで申告書を作成される方はICカードリーダライタが不要 令和3年分確定申告(令和4年1月上旬~)から、パソコンで「確定申告書等作成コーナー」を利用される方も、マイナンバーカード読取対応のスマートフォンで、パソコンに表示されたQRコードを読み取れば、ICカードリーダライタを使用せずマイナンバーカードを読み取ることができます。この方法では、今までパソコンでの操作に不慣れな方には難しかった、事前設定(事前準備セットアップ)が不要になるのもポイントです。 5.スマートフォンのカメラで「給与所得の源泉徴収票」を自動入力できる 令和3年分確定申告(令和4年1月上旬~)から、スマートフォンのカメラで給与所得の源泉徴収票を撮影することで、その記載内容を直接入力しなくても「確定申告書等作成コーナー」の該当項目に自動入力することができます。 6.マイナポータル連携による申告書の自動入力対象が拡大 政府が運営するオンラインサービスのマイナポータルで、対応する保険会社や金融機関を連携登録しておくと、確定申告に必要な生命保険料などの控除証明書の情報が自動で申告書に入力されるため、さらに手続きが楽になります。 令和2年分確定申告で取得できるのは、生命保険料控除証明書、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書、借入金等特別控除証明書、特定口座年間取引報告書のみで、そもそも証明書を発行する保険会社などがマイナポータル連携に対応していないケースも多くありましたが、令和3年分確定申告(令和4年1月上旬~)から対象が拡大し、ふるさと納税、地震保険料及び医療費※もマイナポータル連携の対象になります。 ※マイナポータル連携についての詳細は国税庁HPの特設ページをご覧ください。 ※マイナポータル連携に対応する保険会社等の一覧は国税庁HPのこちらでご確認ください。 7.マイナポータル連携は難しい? 弊社で、実際にマイナポータル連携を試してみましたが、Webサービスの利用に不慣れな方には設定は難しいようです。 連携までの主な手続きの流れは次のようになっています。 (1)マイナポータルの開設 マイナポータルサイトにアクセスして利用者登録をします。 (2)民間送達サービスの開設(e-私書箱など) 民間が運営する、公的機関・金融機関・勤務先等から交付される証明書類を一元的に管理するサービスを開設します。 (3)保険会社等の「マイナ手続きポータル」に接続 証明書等の発行元である保険会社等と民間送達サービスをつなぐ(連携)設定をします。 手続きの際に証券番号等の契約者情報を手元に用意して登録します。 以上の設定を行うと控除証明書等データが民間送達サービスに届き、マイナポータル経由で取得できるようになります。 なお、連携の手続きにおいて、契約者情報の確認などが行われるため、手続き完了には数日がかかるようです。 連携したいサービスが多い場合は早めの手続きをお勧めします。 8.マイナンバーカードに含まれる電子証明書の有効期限に注意 マイナンバーカードに記録されている電子証明書の有効期限が切れると、マイナポータルへのログインや電子申告ができなくなります。電子証明書の有効期間は、電子証明書発行の日から5回目の誕生日までです。有効期限の更新は、住民票がある市区町村の窓口に出向いて手続きが必要です。申告期限間際になって慌てないようにご注意ください。 9.パスワードのロックに注意 マイナポータルにログインする際に使用する「利用者証明用電子証明書」については3回連続でパスワードを間違って入力した場合、ロックがかかってしまい当該電子証明書は利用できなくなってしまいます。 電子申告などで利用する「署名用電子証明書」については5回連続でパスワードを間違って入力した場合、ロックがかかります。 ロックしてしまった場合、住民票がある市区町村の窓口に出向いて手続きが必要になりますので、申告期限間際になって慌てないようにご注意ください。 以上のようにスマートフォンとマイナンバーカードを利用して「確定申告書等作成コーナー」で、簡単に電子申告ができるようになりました。電子申告にご興味のある方は一度挑戦してみてはいかがでしょうか。 確定申告を自分で行わず税理士に依頼するメリットとしては、時間の節約、正確な申告、アドバイスによる節税効果の期待があると思います。 また、皆様がかかえる様々なお悩み、気になる事項についてご相談いただくよい機会にもなると思いますので、お困りの際はお気軽に米本合同税理士法人にご相談ください。 (医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) <毎朝配信> TwitterやFacebookでも税務会計や経営に関する情報を発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 (Facebook) https://m.facebook.com/100088041642414/ 制作年月:2023年2月15日 \おすすめコンテンツ/

人材確保のための新規事業 事業多角化で課題解決(2023.2.8)
新事業の拡大により、職員の離職問題や人材不足の課題を解決!成功の理由に迫ります ワイツーエム(埼玉県上尾市)は設立以降8年間でお泊りデイサービス、訪問マッサージ、児童発達支援、放課後等デイ、住宅型有料老人ホームと事業を多角化してきた。増田康彦社長は当初、介護の知識・経験がなく事業を始め、立ちはだかる壁も多かったという。 「既存事業でぶつかる課題を解決する手段として、新事業を拡大していった」と語る増田社長に、事業多角化のポイントについて聞いた。 【小見出し】 お泊りデイサービスから拡大 ――比較的短期間で事業を広げていますね。 2014年にお泊りデイサービスで創業し、現在3事業所運営しています。その後、2年目以降に訪問マッサージ1事業所、3年目以降に児童デイサービス4事業所、7年目以降に住宅型有料老人ホーム3事業所、と領域を広げていきました。8年目の現在では職員110名以上を有する法人となっています。 >11月開設予定の住宅型有料老人ホーム外観 ――お泊りデイサービスから、どのような経緯で次の事業に着手したのでしょうか。 私自身、以前は証券会社の営業マンだったため、はじめは投資の感覚でお泊りデイサービスのFCに加盟しました。そこで介護業界の市場性を見込み、自社での運営にシフトチェンジしました。 まず立ちはだかった課題が職員の離職。機能訓練指導員としてリハビリ専門職など、週に1回、2〜3時間だけ働いてもらっていたのですが、短時間では彼らのたいした収入にはならないため、〝採用しては辞める〞という悪循環が続いていました。 そこで「彼らの仕事を生み出せばいい」と考え、訪問マッサージに着手。柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師などを雇用し、訪問をしてもらいながら空いた時間にデイサービスの機能訓練も行ってもらうことで、離職の課題を解決しました。訪問マッサージの登録者のうち、デイサービスの利用者は8割と、稼働率の相乗効果も図れています。 増田康彦社長とお泊りデイサービス「いこいハウスあげお東」 ――では、次の児童デイサービスはどのような経緯で始めたのでしょうか それでもなお、事業の売上が伸び悩み、人材確保の課題は続いていたため、他社の事例を勉強してみると、「児童デイサービスも運営することで、採用状況が改善された」という事例を発見。実際に児童デイサービスを開設し求人を出すと、当時は1回の広告掲載で70名程の応募がありました。 そこで確保した職員に、介護事業所でも働いてもらうなどして、人材確保の課題解決を図りました。このように「新しい事業こそが、既存事業を効率化する」と実感しています。 ――有料老人ホームはなぜ着手したのでしょうか 同じように既存事業の問題解決のためです。お泊りデイサービスの宿泊定員は日中の定員の半分以下と決まっているため、すぐ満員になり、ケアマネジャーに宿泊ニーズのある利用者の紹介をもらっても受け入れられない状況にありました。 そこで、低価格帯で入居できる住宅型有老の開始に至ります。約200平米の元コンビニ物件を月約20万円で借りられるという好条件で契約。約1200万円で改修し、12部屋つくりました。生活保護の家賃補助額に鑑みて、家賃を月4万3000円、食費・管理費を4万8000円と低価格で設定。デイサービスの利用者の多くが入居を決め、開設して1ヵ月で満員となりました。 当社では老人ホームの紹介事業もしているので、低所得者の入居相談を多く受けます。富裕層がターゲットの入居施設はレッドオーシャンですが、生活保護者や低所得者向けの施設はブルーオーシャンと見ています。 ――今後の展開は 病院を改修した物件で、4棟目となる住宅型有料老人ホームを今月新規開設予定です。また、食の視点を加え、就労支援事業など農福連携を始めるべく2300平米の農地を借り、土壌作りをしている段階です。食を見直しながら、新たな課題解決に向け動いていきたいです。

オープンスタッフの採用手順と面談時のポイント、内覧会の手順・ポイント、広告種類・戦略の立て方(2023.02.07)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 「オープニングスタッフの採用」と「集患」にいかに力を入れるかどうかがクリニック開業を成功させる重要なポイントとなります。そこで今回は「オープニングスタッフの採用手順」「集患方法」についてご紹介いたします。 目次 1.採用の手順と面談時のポイント 2.内覧会の手順・ポイント 3.クリニックの広告の種類・戦略の立て方 1.採用の手順と面談時のポイント 採用手順は、①採用計画の作成②労働条件の決定③募集④面談となります。 採用計画の作成 応募媒体で求人広告を出し、いつ面接をするか、いつ研修をするか、スケジュールを組みます。 同時に、職種ごとの採用人数や正社員とパートの人数、どのような資質の人を採用するか計画しましょう。 労働条件の決定 給与・賃金、勤務時間、社会保険の加入の有無、服務規律、残業手当など、採用の際には労働条件の明示が求められます。面接時において求職者に説明ができるよう準備が必要となります。 募集 3~4ヶ月前から募集を開始するのが一般的です。開業1カ月前から研修を行うことが多いため、遅くとも研修開始までには採用を完了させましょう。 面談のポイント ・志望動機を聞く クリニックの採用に限ったことではありませんが、志望動機は重要な判断ポイントです。志望動機は、面接で聞かれやすいことと容易に想定できる項目であるため、その項目に対してきちんと準備をしているかどうか、やる気やコミュニケーション能力の判断材料となります。 ・退職理由を明確に 前職の退職理由は必ず聞きましょう。ある程度仕方のない理由であるのか、そうでない理由であるのか、今後も同じ理由で退職することを避けるためにも確認しておくことが大切です。 ・配慮すべき質問に注意する 採用差別の観点から、本人の適性や能力に関係のない質問については配慮する必要があります。面接者本人から話す場合には問題ありませんが、家族の職業・思想・労働組合への加入状況などの情報について聞くことは避けた方が良いでしょう。 2.内覧会の手順・ポイント クリニックの見学会である内覧会は、近隣住民へのアピールの場であり、そこから口コミへ繋げるマーケティングの活動として意義があります。 ● 手順 ・日程決め 多くの人に来院してもらえる時間を設定するとよいでしょう。開院の直前の土日が望ましいです。 ・告知 地域の方に内覧会の告知をしましょう。近隣住民へのチラシ配布やポスティングが効果的です。 ・お礼の品の準備 内覧会では記念品としてノベルティを準備することが多いです。具体例としては、荷物にならず、実用的なボールペンやタオルなどがあります。 ・スタッフの研修 内覧会当日、スタッフがスムーズに対応できるように対応方法や案内の導線について研修をしましょう。 ● ポイント 内覧会の目的を明確にしましょう。「院長・スタッフの人柄を伝えたい」「開業前の予約獲得」など具体的な目的を設定し、スタッフと共有することが重要です。目的に沿った想定質問を準備し、スタッフと共有するのも良いでしょう。 3.クリニックの広告の種類・戦略の立て方 クリニックが認知されていないと、開業後に患者が集まりません。そのため、計画的に広告・宣伝をおこなうことが重要です。 ● 看板 駅広告などの看板は人の目に触れる機会が多いため、広告宣伝としての効果は大きいでしょう。 ● ホームページ 患者さんはクリニックで診療を受ける前にWEBで検索することが一般的となってきており、今やクリニックの必須ツールとなっています。予約方法や先生の紹介など伝えたい情報を伝えることができるため、医院の認知につながります。 ● 検索サイト クリニックを探す際、場所や診療科目等様々な条件で比較することができるため、クリニック探しでよく使われるツールの一つです。口コミ機能があるサイトもあるため、実際の評判を確認してクリニックを選択する人も多いです。 ● その他 上記以外にもパンフレットや電車の広告・フリーペーパーのオフラインによる広告、LINEやGoogleを活用したオンラインの広告など、様々な種類があるため、認知を高めたい・深く知ってほしい等、クリニックの戦略にあった広告を選択しましょう。 ただし、上記の各広告については、「比較優良広告」、「患者の主観に基づく体験談の広告」、「誤認の恐れがある治療等の前・後の写真の広告」などは医療法で規制されているため、掲載内容について十分な注意が必要です。 制作年月:2023年2月7日

第2回 院長のためのドラッカー講座 われわれの顧客は誰か(2023.02.02)
<著者>内藤孝司 医療法人る・ぷてぃ・らぱん 理事長兼CEO 活動対象としての顧客を明確化する 「『われわれの顧客は誰か』との問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。やさしい問いではない。まして答えのわかりきった問いではない」 ——P・F・ドラッカー『エッセンシャル版マネジメント』(ダイヤモンド社) 前回からの続きです。使命が決まったら、顧客を明確にすべきです。これを間違えると成果をあげられません。 しかし、医療関係者に「顧客は誰か」と問うた場合、多くの方は「患者」と答えるでしょう。これでは、フードサービス業の方が「お腹が空いた人」と答えることと同様で、対象が漠然としすぎていて顧客とは言えません。組織活動において成果をあげるには、活動対象としての顧客を絞らなければなりません。 では、小児科医にとっての「子ども」、皮膚科医師にとって「皮膚疾患を抱える方」が絞った顧客となるのでしょうか。間違いではありませんが、正しいとも言えません。 たとえば、小児科でも開業医ならば、一緒に来院した小児の家族も診察することがあるでしょうし、皮膚科でもシミ、シワ除去目的で来院された方は病気というよりは美容でしょう。こう考えていくと、「自院の本当の顧客は誰か」と考える必要性が出てくると思います。 「使命=顧客の創造」です。使命と顧客が一致していなければ、本当に役立ちたいと思える相手が顧客でなければ、使命を果たしたいという思いが薄れてしまいます。「お年寄りからお子様までどんな方でもお気軽にご相談ください」——。以前から診療所のホームページやチラシ広告でよく見るフレーズです。集患対策としては正しいキャッチコピーなのかもしれませんが、対象が広すぎて、本当の顧客が誰なのか不鮮明です。 事業を決定するのは顧客です。しかし、顧客は一括りではありません。「お金を落としてくれるのなら誰でもいい」では、自院の顧客とは言えませんし、そんな理由で顧客を設定してしまうと、長期的に成果を上げることは難しいでしょう。 実際に、1970年代から80年代にかけて数多くの薬品会社が利益目的で化粧品会社を買収しましたが、結果的に失敗しています。なぜなら、企業の使命と顧客が一致していなかったからです。 誰を満足させたときに成果をあげたと言えるか 「そうは言っても、具体的な顧客が誰かがわからない……」という方もいるかもしれませんが、この相談に対しては、「あなたの組織は誰を満足させたときに成果をあげたと言えるか」。この質問に答えることができれば、実はそのまま顧客が誰かを教えてくれます。 当院ではドラッカー理論を学ぶまで、顧客が不鮮明でした。来院される方すべてを顧客だと思っていました。しかし、よくよく調べてみると、ほかの耳鼻咽喉科に比して明らかに小児の数が多いことに気づきました。 そこから、私たちの顧客は「小児とその家族」と定義し、高齢者向けの補聴器相談を廃止したり、予約システムを見直すなどして人材と財力に余裕ができ、小児科の併設へとつながっていきました。なぜなら我々の組織は、顧客から小児を診る専門家を必要とされていたからです。 このように、顧客の興味があること、顧客に喜ばれるものを決めることが事業の定義となります。どれだけ利益をあげたかよりも、どれだけ大事な顧客をつかんだかのほうが重要です。 最後に、顧客には2種類あることを伝えましょう。一方は先に挙げた来院する患者さんたちであり、もう一方は従業員や卸問屋、外部委託先など組織の活動によって満足を得る人々(パートナー)です。パートナーは気に入らないことがあれば、さっさと組織を離れてしまいます。 先日、宅配大手のヤマト運輸が主要取引先であるアマゾン・ジャパンの「当日配達サービス」から撤退すると報じられました。インターネット通販拡大に伴う配達量増加に対し、ドライバーへの負担を減らすためです。これはヤマト運輸が、自分たちの顧客はアマゾンではなく、配送先にいる個人客やパートナーである従業員と判断したからでしょう。顧客を明確にしているからこそできる意思決定です。 あなたの診療所でも一度、表1、2を参考にしながら真の顧客を調べてみてはいかがでしょうか。 表1 使命と顧客を理解するためのステップ ①現実の顧客は誰なのか ②その人たちはどこにいるのか、何を買う(来院する)のか ③継続的な顧客とはどんな人たちか ④なぜ顧客になってくれているのか ⑤顧客でなくなった人はどのような人たちか ⑥誰が顧客になり得るのか ⑦本来、誰が顧客であるべきなのか ⑧どのような人たちに顧客になってほしいのか ⑨顧客になってほしい人たちから選ばれているのか 表2「主要顧客は誰か」を考えるためのワークシート ①あなたがサービスを提供するそれぞれ異なったグループの人々について、また満足させなければならないあらゆる主要顧客について考えてください。 ・私たちの主要顧客は誰ですか(名前をあげてください) ・それぞれの顧客にどのような価値を提供していますか ②私たちの長所、資質および資源は、これらの顧客のニーズと一致していますか。 ・もし一致しているとすれば、 それはどういう点においてですか。 ・もし一致していないのなら、 なぜ一致していないのですか。 制作年月:2017年7月 監修:日本医療企画

「中間役職者」の任命方法 「次のリーダー候補」も決めて育成を(2023.2.1)
主任などの「中間役職者」の任命ポイントとは? すぐに実践できる方法をご紹介! 令和4年度の下期に入って、来期の「組織」についての相談が増えています。介護事業は〝労働集約型〞のビジネスですから「組織」のあり方がとても大事です。 私がここで言う「組織」とは、次の6つを指します。 □各セクションの人員数 □チーム編成 □役職者の配置方法 □役職者の役割 □指示命令系統(縦のライン) □横断型組織(委員会、専門職チーム、プロジェクトチーム) これらを一つひとつ、しっかりと〝意図〞を持って考えるべきです。なぜなら、それぞれにおいて適切な意思決定ができれば組織はより強固になり、ちょっとやそっとのピンチでも揺るがない状態になるからです。 しかし、昨今の採用難や新型コロナウイルス、物価高による収益性の低下により、余裕をもった人員の配置が難しくなっています。前述のテーマにおいて、理想的な計画ができたとしても、その通りに実行することは困難かもしれません。そのような理由から最近は、多くの施設長が「主任クラスの適任者がいなくてとても苦労する」という悩みをもっています。 そこで今回は、主任などの「中間役職者」の任命ポイントをお伝えします。意識してもらいたいポイントは5つあります。 【本文】 ①5人ごとにチームをつくる 組織論で良く言われるのは「優秀なリーダーが管理できる部下の人数の限界は7人である」ということです。となれば、標準的なリーダーの部下の数は、それより少ないのが適正数といえるでしょう。 私は、だいたい5人の職員に対して、1人の役職者を配置するように指導しています。ユニット型の特養をイメージしたらわかりやすいでしょう。だいたい正職員が4〜5名くらいで構成されています。加えてパートが数人。となると、全体の人数は7〜8人になりますから、ユニットリーダー1人、サブリーダー1人の合計2人の役職者を配置すれば、そのチームは安定するでしょう。 ②「役割」を明確にする 役職者が、気が効く人物であれば幅広く活躍してくれるかもしれませんが、上司がいちいち指示しないと動けないタイプだったら、他の一般職と変わりないかもしれません。手当だけもらって働きがないのであれば、組織の〝お荷物〞にもなりかねません。特に「サブリーダー」や「副主任」という補佐的な役職は、役割が明確でない組織が多いです。役割は明確にしましょう。 例えば、ある社会福祉法人では、副主任の役割を以下に決めました。 □会議の声掛け(参加促進) □会議議事録の作成 □会議不参加者への口頭伝達 □シフト調整のための声掛け □日勤リーダーへの指導 □人事考課時のパート面談(フィードバック) ③〝伸びしろ〞で任命 前述のように「役職者にする適任者がいない」という声は、よく聞かれます。それは「すぐにでもリーダーが務められる能力がある職員」という条件で選んでいるからではないでしょうか。やったこともないのに、はじめからできる人など稀です。そうではなく、その人の〝伸びしろ(成長する余地、可能性)〞で任命しましょう。 ④役職者研修 たとえその人物に〝伸びしろ〞があったとしても、やっているうちに勝手に成長するのを待っていては、時間がかかり過ぎます。即戦力になってもらうためには、役職者としてのスキルを身につける研修が不可欠です。テーマはこの連載を参考にしてください。リーダー、サブリーダークラスが身につけるべき知識、スキルは、施設長とそう大きくは違いません。 ⑤次の候補者をつくっておく 新施設を開設したり、役職者がやめてしまったときに「誰にしたらよいか」と慌てないためにも、次のリーダー候補をあらかじめ決めておく(準備しておく)べきです。特に大きな組織では、経験年数や等級によって〝階層別研修〞を実施すると良いでしょう。 ある宮城県の法人では2年目になると「先輩職員研修」、3年目には「指導職員研修」を受講します。また、2等級に昇級すると「次世代リーダー研修」を受講しており、役職者はその受講者から選ばれる仕組みとなっています。 新たな研修などは、年度初めの4月から導入する法人がほとんどでしょう。いまからなら、まだ十分に間に合います。ぜひ議論してみましょう。 【著者】 糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ 介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポ

【後編】リブランディングでさらなる成長へ(2023.1.25)
保険外事業が売上比率1割を占めるまでに成長 当社のリブランディング戦略に注目! <取材先> ㈱RARECREW 代表取締役 日下部竜太 【大見出し】 リブランディングでさらなる成長へ 【サブ見出し】 保険外事業多角化 高齢者と周辺企業をつなぐ役割 【リード】 入浴特化型の3時間型デイサービス「いきいきらいふSPA」や訪問介護、居宅介護支援など、東京を中心に全国22事業所で在宅介護サービスを展開するRARECREW(東京都台東区)。今年で創業20年を迎えた同社の日下部竜太社長に、事業モデルや資金調達・財務管理手法、新規事業などについて話を聞いた。【後編】 【本文】 ■保険外事業 売上比率1割を占めるまで成長 ――保険外サービス事業にも積極的に取り組んでいます。 日下部 15年の介護保険制度改正議論の際に訪問介護の生活援助サービスを介護給付から外すという内容が示された時、在宅介護従事者には激震が走りました。その中には日常生活における買い物代行も含まれています。独居高齢者にとって日常生活品の買い物ができなくなることは、在宅生活の継続が困難になることを意味します。 こうした背景から、17年よりデイでの買い物サービス「いきいきらいふマルシェ」を開始。高価な商品よりも、日常生活で必要な食品などを中心に品目構成しました。重視したことはお客様自身が「選択」できることです。 また、食品・日用品に加え、デイなどの施設での衣料品販売事業「Flassy」もスタートしました。コロナ禍における高齢者の在宅生活の意欲向上を目的に、日常生活必要品である下着・肌着類をはじめ靴などの季節衣料品各種の販売を実施。サイズや色、生地感なども実際に触って確認いただけるようサンプル展示を行い、リーズナブルな価格帯で提供しています。ファッションや日常生活を楽しんでいただけるような季節商品も並びます。 実際に現在この事業単体での売上は、デイの介護報酬の減少分を十分カバーできる成果となっており、売上比率の1割を占めます。さらに「いきいきらいふマルシェ」の流通事業から様々なマーケティングデータを分析することで、外部企業とのアライアンスが結ばれるなど新しい事業展開につながっています。 また、行政からの委託により、買物弱者支援事業として東京都内の古い団地など、近隣に買い物に行くことが難しい高齢者集合住宅地における移動販売も実施。当社ではこれらのサービスを通じて、コロナ禍で打撃を受けているご当地食材や食品の販売協力も行っています。 さらに、限界集落地方への販売支援として、山梨県丹波山村の地域おこしに協力しています。地方の人口減少問題は都市部の比ではありません。その実情は今後の日本国内のあちこちで発生していくものです。当社としては、ワーケーション先としての人材交流から始まって、現在は「QOLたばやま」にシニアマーケティング情報の提供と商品卸を開始しています。当社の高齢者向け販売データを商品卸に活用することで、地域の活性化につながるよう協力しているところです。 ■シニアマーケットの可能性 高齢者の利便性向上にビジネスチャンス ――今後の展望について、聞かせてください。 日下部 創業20周年を経て、21年9月1日に社名を変更。株式会社RARECREWとしてリスタートを切りました。新社名の意味は、「世の中にないものを形にする稀有な存在の企業」として「人の可能性を大事に」し、「世の中に新しい発想でサービスや商品、価値を生み出していく」。そんな「稀有な人の集団」を指します。同時に刷新した経営理念は「BEYOND THE BORDER」。介護業界、介護保険制度・サービスと言う小さな枠組を越えて、他者を助ける社会を創ることを目指します。 シニアマーケットには無限の可能性があります。提携企業等外部との共同開発や実地検証は、お客様の声を形にする上で必須となります。活動メンバーの人材開発の為には、一般ビジネスキルの向上が必要。自身のスキルが一般市場でどう評価されるのかも可視化していく取り組みをしています。 お客様の声を形にするため、新規事業開発を行う中で、「いきいきらいふマルシェ」や「Flassy」などがすでに具現化されていますが、今後については、 ・基盤モデル:短時間×入浴×中重度ケア×通所サービスの拡大 ・リハビリ専門職・大学連携チームによる機能訓練プログラム開発 ・シニアの生活実態調査による真のニーズデータ活用 ・外部アライアンスによる新規事業展開 を基本方針として活動していきます。大手外部企業との商品企画や販売企画などテストマーケティングも始まっており、さらには、社会問題となっている高齢者へのデジタルトレーニングにも取り組んでいます。 【図④事業内容】 少子高齢化・人口減少が社会問題として叫ばれて久しいですが、人口が減少していくということは、ほとんどのマーケット(市場)の縮小を意味します。日本国内に限って言えば、シニアマーケットだけが膨らんでいくということです。 数年前より日本デイサービス協会・全国介護事業者連盟などの業界団体の理事や幹事を引き受けるようになり、立場的にも介護業界やシニアマーケットへの企業相談を頼まれるようになりました。しかし、優秀なマーケティング部隊がいるはずの大手メーカーなどから、「なぜこのような商品開発になるのか」と思える相談が寄せられます。必要なのは、「高齢者の生活実態のデータや情報」だろうと考えるようになりました。 多くの介護サービス事業者は介護保険制度のサービスで対応しようとするので、制度上で出来ないことは対応優先順位が低くなるため、介護保険サービスだけで解決できない課題や問題が山積みです。要介護認定者数は約690万人(22年5月末時点)に対して、介護保険給付受給者(サービス利用者)数は約400万人(同)となっています。つまり、約290万人(約42%)もの方が、介護サービスを利用する目的で要介護認定を受け、サービスを使っていないのが実態です。様々な理由があるとは思いますが、実際に使いたいと思えるサービスがないという声も聞かれます。 高齢者の生活を支えていくには、保険外の自費サービスや様々な企業の商品・サービスを組み合わせていくことが求められます。私たち介護サービス事業者は、高齢者と周辺企業をつなぐ存在であるべきです。生活の困りごとを解決するために、実際のお客様のニーズをしっかり周辺企業につなぐことで、高齢者の利便性が上がり、周辺企業には実のあるビジネスチャンスが生まれてくるはずです。

企業版ふるさと納税は結局得なのか?メリットと留意点を解説(2023.01.24)
<著者> 米本合同税理士法人 令和2年度の税制改正で法人関係税の税額控除の拡充や人材派遣型の創設など大幅に変更されたことで企業の関心が高まり本制度を活用する企業が大きく増加しています。 今回は本制度の概要とともに税制改正に伴う変更点についてもご紹介していきます。 目次 ■企業版ふるさと納税はどんな制度なのか? ■基本的なポイント ■メリット ■制度を利用するにあたっての留意点 ■実施するには? ■まとめ 企業版ふるさと納税はどんな制度なのか? 企業版ふるさと納税とは、国が認定した自治体の地方創生の取り組みに対して企業が寄附をすることで税負担が軽減される制度のことです。 さらに、令和2年度の税制改正により税の軽減効果が拡大され、税額控除の特例措置の適用期間が令和6年度末まで延長されました。 返礼品の禁止や本社が所在する自治体への寄附が制度上対象外になるなど条件もありますが、寄附額の下限が10万円からとなっているため企業からみて利用しやすい制度となっています。 基本的なポイント 1. 税の軽減効果 自治体への通常の寄附の損益算入による軽減効果(寄附額の約3割)に加え、法人関係税が寄附額の最大6割控除されます。 そのため実質的な企業の負担が約1割まで圧縮されます。 例えば1,000万円寄附すると、最大で約900万円の法人関係税が軽減されます。 控除上限額は、各税目の「寄附額の割合」と「税額上限」のうち、いずれか小さい方の値を合計します。 税目 寄附額の割合 税額上限 法人住民税 寄附額の4割 法人住民税額の20% 法人税 法人住民税で4割に達しなかった場合に、その残額 ただし、寄附額の1割を限度 法人税額の5% 法人事業税 寄附額の2割 法人事業税額の20% 2. 人材派遣型の創設 自治体の地方創生の取り組みに対して、企業が専門知識やノウハウを有する人材を自治体へ派遣することで、人件費相当額を寄附額に含めて税額控除が受けられるというものです。 地方公共団体の職員として任用される場合か、地域活性化事業を行う団体等であって、寄附活用事業に関与するものに採用される場合に適用されます。 事業の企画・実施に派遣人材が参画することで地域貢献がしやすくなり人材育成の機会として活用できます。 メリット 寄附先の自治体HPなどに企業名が掲出されることで地方創生に向けた社会貢献活動に取り組む姿勢を社会にPRできます。また、SDGsの実現に向けた支援活動として認知され企業のイメージアップにつながります。 そして、寄附先の自治体とのつながりを深めることで、新たなパートナーシップを構築でき、地域の資源を生かした新事業の開拓などビジネスチャンスにつなげることも可能になります。 制度を利用するにあたっての留意点 本社が所在する地方公共団体と地方交付税の不交付団体である地方公共団体については、本制度の対象となりません。 また、寄附を行うことの代償として経済的な利益を受け取ることは禁止されています。 そのため返礼品の禁止だけでなく、寄附の見返りとして補助金を受け取ることや有利な利率で貸付をしてもらうなどが該当となります。 そして、個人版の自己負担額は一定の限度額はありますが基本的に2千円なのに対して企業版は寄附額の約1割となっています。 制度を利用するにあたって個人版との違いも理解しておく必要があります。 さらに医療法人の場合は診療科目等にもよりますが保険診療等は事業税が非課税となる関係上事業税額が少なく上記図解の上限である「法人事業税額の20%」の制限に引っかかりやすく、自己負担割合が3割程度になるケースもありますので事前に自己負担割合のシミュレーションを行い寄付額を決定する必要があります。 実施するには? 企業版ふるさと納税の実施には自治体とのやり取りが重要となります。 (1) 事業内容などを確認しながら寄附する自治体を選定します。 (2) 地方創生事業に寄附を申し込む (3) 自治体と今後の方針について話し合います。 ※寄附のみ行う場合は、寄付先の自治体にその旨を伝えて、特典を受け取らないことも可能です。 (4) 自治体から受領証を受け取ります。 (5) 法人関係税の税額控除を受けます。 まとめ 企業版ふるさと納税は、自治体が全国にあるため寄附金の使い道も数多くあります。 本制度を有効活用すれば法人のイメージアップに繋げたり、寄附先の自治体とパートナーシップを築いたり、または縁のある自治体に恩返しをすることもできます。ただし個人版のふるさと納税と異なり、企業版のふるさと納税は自己負担額が約1割~3割で返戻品などがなく、単純な節税目的のみで行おうとするとキャッシュを損なうことにも繋がりかねないため注意が必要です。 企業に合う寄附先や事業を選び、寄附額の規模を考慮したうえで検討することをお勧めします。 企業版ふるさと納税についてご不明点等ございましたら、米本合同税理士法人までご連絡下さい。 米本合同税理士法人では、上記のような節税に関する記事を多数掲載しております。ご興味のある方は是非ご覧ください。 (医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) FacebookやTwitterでも税務会計や経営に関する情報発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Facebook) https://m.facebook.com/100088041642414/ (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2023年1月24日

【解説】厚生労働白書 ~介護人材の確保~(2023.1.19)
医療・福祉分野の就業者は2040年に96万人不足、介護現場は生産性向上が急務 介護注目ニュース デイサービス 通所介護 訪問介護 厚生労働白書 ~介護人材の確保~ 「人材確保」は社会保障における最重要課題-。2022年版「厚生労働白書」では、「団塊ジュニア」世代が65歳超となる2040年に医療・福祉人材が96万人不足すると推計し、人材不足が一層深刻化していくとの見通しを示している。人材確保と生産性向上の両面で対応が急務だ。 足元の介護職の有効求人倍率は3.6倍 訪問介護事業所の54%が「不足」と回答 2040年に全就業者の約2割にあたる1,070万人が医療・福祉分野で働く必要がある一方、確保できる人材は974万人にとどまり、100万人近くも不足すると厚労省は推計している(資料1)。 2021年時点の医療・福祉分野の就業者数は891万人で、約20年間でほぼ倍増しているが、2025年以降は20~64歳の現役世代人口が急減することで、需要増に人材確保が追いつかない事態に直面する。2022年版の厚生労働白書は、メインテーマに「社会保障を支える人材の確保」を据え、高齢・少子化が進むなかでの課題にスポットをあてており、厚生労働省の強い危機感が示されている。 介護分野に注目すると、全国の介護職員は2020年度時点で211.9万人となっており、介護サービス利用者の増加に伴い、2000年の54.9万人から約3.9倍に増加している。しかし、2021年の介護職員の有効求人倍率は3.64倍と全産業計の1.03倍より大幅に高く、近年は高い水準が続いており、特に東京や愛知などの都市部は4倍を超えている。また、介護サービス事業所における介護職員の充足状況に関する調査(2020年度)でも、現場の人手不足感は増している。施設等の32.4%が「不足」と回答している一方、訪問介護事業所では54.1%に上っており、特に訪問介護員の需要が高くなっている(資料2)。 こうした足元の状況を見ても、人材確保はまさに喫緊の課題であることがわかるが、将来必要となる介護職員数は団塊の世代がすべて75歳を超える2025年度に約243万人、2040年度には約280万人と推計されている。 生産性向上へ組織マネジメント改革も 「社会福祉連携推進法人制度」にも期待 厚生労働省は2019年6月に策定した「医療・福祉サービス改革プラン」で、単位時間サービス提供量を5%(医師は7%)以上改善し、男女ともに健康寿命を3年以上延ばすことにより、より少ない就業者数で将来の需要増に対応することが可能と推計している。「人生100年時代」を見据え、健康寿命の延伸により一人一人のQOLの向上や「生涯現役」の就労と社会参加を実現するとともに、医療・介護サービスが必要となる人の増加を抑制していく、つまり需要も抑えるという考え方だ。 そのうえで、より少ない人手で効率的に、質の高い医療・福祉サービスの提供も実現できるよう、厚生労働白書では「ロボット・AI・ICT等の活用」や「タスク・シフト/シェア」を推進する必要性をあらためて強調。それらの取り組みを医療・福祉現場で広めていくためには、施設・事業所トップのリーダーシップのみならず、リーダー級職員の積極的な関与など、多くの職員の協力が必要であり、組織マネジメント改革が求められることも指摘している。特に介護ロボットなどのテクノロジーの導入当初は、その扱いに不慣れであることなどから一時的に業務の効率性が下がり、効果を実感するまでに一定の時間がかかるなど、継続的なマネジメントにより施設長や介護職員が一体となって取り組む必要があるからだ。 また、老人福祉事業等を運営する社会福祉法人は1事業1法人という運営形態も多く、運営が厳しい状況にあることが指摘されてきた。近年は多事業経営や法人間連携により経営が安定し、人材確保もしやすくなるといった観点から、それらに取り組む例が出てきており、支援の一環として2022年4月に始まった「社会福祉連携推進法人制度」の活用にも期待を寄せている。 ―社会福祉連携推進法人とは(参考:厚生労働省 社会福祉連携推進法人の運営等について)― 社会福祉連携推進法人は、①社員の社会福祉に係る業務の連携を推進し、②地域における良質かつ適切な福祉サービスを提供するとともに、③社会福祉法人の経営基盤の強化に資することを目的として、福祉サービス事業者間の連携方策の新たな選択肢として創設された。2以上の社会福祉法人等の法人が社員として参画し、その創意工夫による多様な取組を通じて、地域福祉の充実、災害対応力の強化、福祉サービス事業に係る経営の効率化、人材の確保・育成等を推進する。地域共生社会の実現に向け、地域ニーズに対応した新たな取組の創出、その担い手となる福祉・介護人材の確保・育成等を進めていく観点から、地域の福祉サービス事業者間の連携・協働のためのツールとして有効に活用されることが期待されている(資料3)。 4テーマで業務効率化の効果測定へ 電子申請・届出で文書負担の軽減も 効率的で質の高い介護サービスの提供という課題に対し、厚生労働省は2022年度、「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」に取り組んでいる。テクノロジーや「介護助手」の活用などの効果を実証し、得られたデータの分析を行い、2024年度介護報酬改定の検討に資するエビデンスを収集するのが目的だ。6・7月の事前調査に続き、10月と12月に事後調査、2012年12月~2023年3月にデータ分析を行い、結果をとりまとめる。 事業のテーマは、(1)見守り機器等を活用した夜間の見守り、(2)介護ロボットの活用、(3)介護助手の活用、(4)介護事業者等からの提案手法-の4つ。 具体的に(1)では、介護老人福祉施設(特養)や介護老人保健施設(老健)など約40施設を対象に、転倒の予防・早期発見や見守り業務の質向上を踏まえた夜勤業務の効率化、夜勤職員の精神的な負担軽減への効果を測る。(2)では、移乗支援、排泄予測、介護業務支援に関する介護ロボット・ICT機器を導入し、それぞれ「日中ベッド上で過ごす利用者の行動範囲の拡充、移乗介助の身体的負担の低減」、「利用者に合わせた適切なタイミングでの排泄支援による失禁等に伴うリネン交換などの業務時間削減」、「記録のための二度手間(メモ→介護ソフトに転記)の改善による正確な情報の記録」などの効果を測定。(3)では、特養や老健など約20施設を対象に、介護助手の業務と役割分担を明確化したうえで、介護助手導入によるケアの質確保、職員の業務負担軽減の効果を検証する。(4)では、特養や特定施設17施設において、ICTや介護ロボット、介護助手活用などを組み合わせた手法の評価を行う。 介護現場の業務効率化に向けては、文書負担の軽減も求められており、既存の「介護サービス情報公表システム」を改修して構築した「電子申請・届出システム(資料4)」の運用が2022年10月から始まっている。政府は2025年度までの全国への普及を目指している。 (2022年12月15日時点の情報に基づき作成)

歯周病とその治療について(2023.01.19)
<著者>科研製薬株式会社 目次 1.歯周病を知る、治す情報サイト「歯周病治療ナビ」について ・ 歯周病とは ・ 歯周病の治療について 2.歯周治療のガイドライン2022 1.歯周病を知る、治す情報サイト「歯周病治療ナビ」について 歯周病は、日本人が歯を失う原因の第一位となっています。1) 科研製薬では、歯周病の症状や治療の大切さについて多くの方々に知っていただきたく、患者さんおよび一般向けの歯周病疾患啓発Webサイト「歯周病治療ナビ」を開設しています。 歯科医師の先生方がご自由にお使いいただけるリンクバナーも掲載しています。 貴院のウェブサイトからこのバナーで「歯周病治療ナビ」にリンクいただくことで、貴院が歯周病治療を行っていることを、患者さんにお伝えいただく一助となれば幸いです。 本記事では、歯周病治療ナビの内容を一部ご紹介いたします。 《コンテンツ》 ・歯周病を知ろう(歯周病ってなに?歯周病が全身に影響?) ・歯周病を治そう(歯周病はどうやって治療するの?歯周組織を再生する治療法があるの?) ・歯周病セルフチェックシート ・[動画]知ろう治そう歯周病の新常識 ・ 歯周病とは 歯周病は歯と歯ぐきの境目に付着したプラーク(歯垢)・歯石の中に存在する歯周病菌により、歯肉の発赤、腫れ、出血などが起きる病気です。 プラークの中の細菌により、歯周組織(歯を支える歯ぐきや骨など)が破壊される病気で、日本人が歯を失う原因の第一位となっています。 また、35歳以上で8割以上の人がかかっているとされる無視できない国民病です。 歯周病が進行すると歯と歯ぐきの間に深いすき間(歯周ポケット)ができ、そのままにしておくと歯を支える骨(歯槽骨)などの歯周組織が破壊されて、結果的に歯を失う原因になります。 <参考文献>2)より引用 近年の研究で、歯周病が様々な疾患や全身状態に悪影響を及ぼすおそれが指摘されています。3) 中でも糖尿病との関連性は強く、糖尿病が歯周病を悪化させたり、歯周病が糖尿病を悪化させたりと、悪影響を及ぼし合う場合があります。 ・ 歯周病の治療について ①歯周基本治療 プラークコントロールが何よりの歯周病治療です。 毎日のブラッシングと定期的な歯科医院でのプロフェッショナルケアで、軽度の歯周病は治療でき、歯周病の予防にも繋がります。 <参考文献>2)より引用 <参考文献>2)より引用 ②歯周外科治療 自分で行うブラッシングや歯科医院で行うプラークコントロールだけでは歯周病の改善がみられない場合、原因を確実に除去するために外科的な処置を行うことがあります。 ・フラップ手術 外科的に歯周ポケットの深いところにあるプラークや歯石の徹底的な除去などの処置を行います。 J063歯周外科手術 4 歯肉剝離掻爬手術:630点/1歯 (2022年4月現在)* ・歯周組織再生療法 細胞を増やす成長因子を成分とする医薬品等を破壊された歯周組織に塗布するなどして、歯周組織の再生を促します。 歯周組織再生療法は、その名のとおり歯を支えている歯周組織を再生する治療法でこの治療を受けることで自身の歯を長く温存できる可能性があります。 現在は保険診療で提供できる歯周組織再生療法もあります。 「歯周病治療ナビ」の中から、「歯周病について」、「歯周病の治療について」の項目を一部ご紹介いたしました。 その他セルフチェックシート等もございますので、ぜひご利用ください。 *歯周病治療ナビに点数の記載はございません。 2.歯周治療のガイドライン2022 2022年3月に日本歯周病学会より発表された「歯周治療のガイドライン 2022」は、2015年以来の改訂となります。 今回の改訂では、社会情勢の変化に合わせ、日本における歯周病の実態、分類、全身性疾患への配慮、検査、診断、治療計画、口腔バイオフィルム感染症、インプラント周囲疾患の治療、さらに継続管理までを視野にいれて作成されました。 また、高齢者、有病者あるいは在宅医療、周術期患者、障害者への歯周治療を行うにあたり、医療従事者との連携を含め、考慮すべき事項に焦点が当てられています。 超高齢社会を迎えた日本では、今後の歯周病予防および歯周治療への取り組みがより一層重要になると考えられています。歯周治療が正しく行われることによって、口腔の健康を維持し、ひいては全身の健康向上に寄与することが望まれます。 <参考文献> 1) 8020推進財団調査2018年 2) 歯周病を知る、治す治療サイト「歯周病治療ナビ」(科研製薬株式会社作成) 3) 特定非営利活動法人 日本歯周病学会編、歯周病と全身の健康(2016) 4) 歯周治療のガイドライン2022(特定非営利活動法人 日本歯周病学会編) 制作:2022年12月

医業承継のポイントについて~売り手編~(2022.01.17)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 全国の開業医のうち、70歳以上の先生は全体の22%超を占め、今後も開業医の高齢化はより一層進むと考えられています。将来の選択肢として、医院を第三者に譲渡する「第三者承継」が挙げられます。そこで今回は第三者承継の売り手の立場からその特徴やメリット等を紹介します。 目次 01:特徴 02:承継のメリット 03:留意が必要なポイント 04:おわりに 特徴 医業の承継は、一般の事業会社とは異なり、承継者に医師免許が必要になるので、親族に医師がいない場合には第三者へ承継することもご検討いただく必要があります。開業医の高齢化が進むとともに、年々第三者承継の件数が増えています。第三者承継であれば、承継に伴い、譲渡対価が見込めるので、リタイア後の生活資金として見込むことができます。 承継のメリット 第三者承継のメリットとして以下の内容が挙げられます。 ▶地域医療の継続が図れる ▶従業員の雇用の継続が図れる ▶建物を診療所仕様のまま、譲渡または賃貸できる ▶譲渡対価に営業権を織り込める ▶テナントの場合、原状回復費用が不要 ▶賃貸する場合、他業種に比して比較的有利な賃料設定ができ、長期安定的な収入を確保 できる 従来親族に医師がいない場合には、医院の閉院が選択肢に挙がりましたが、医院を閉院してしまうと、今まで診ていた患者の診療を継続することができず、また従業員の雇用も守ることができませんでした。第三者に医院を承継することで、診療・雇用の継続が可能となります。 また、医院を閉院することになると、閉院に際して原状回復費用などの資金が必要となりますが、第三者に承継することができれば、原状回復工事が不要となりますし、医院の営業権に対して譲渡対価の増加を期待することができます。 留意が必要なポイント 医院承継の売り手側は、以下の点に注意が必要です。 ▶譲渡対価の算定 ▶譲渡した場合には税金がかかる 第三者承継を行うためには、医院の買い手を探すところから始める必要があります。たとえ買い手が見つかったとしても、当事者同士が納得できる条件で譲渡価格の交渉を行う必要があります。 個人診療所を承継した場合には、その年の1月1日から事業承継の日までの事業所得について、確定申告をしなければなりません。申告を行う際には事業所得だけではなく、医療機器などの譲渡に係る譲渡所得も含まれますので、ご留意ください。 おわりに 医業承継は、売り手側・買い手側のどちらにもメリットがありますが、承継を実行するには様々な問題を解決する必要があり、専門的な知識や経験が必要となります。ご不安に感じられる先生方は税理士などの専門家にご相談いただければと思います。

かかりつけ医機能の制度整備の議論を継続 社保審・医療部会(2023.01.11)
目次 01. ■ 現行案は医師・患者双方の「手上げ方式」とは言えないとの意見も 02. 書面交付で「かかりつけ医機能として提供する医療の内容を説明」、当初案を修正 03. 慢性疾患患者に限定せず希望者全てに書面交付を 健保連・河本専務理事 04. ■ かかりつけ医機能の制度整備に関する2022年11月までの議論 05. かかりつけ医機能報告制度を創設へ 06. 医師からの書面交付と説明で「かかりつけの関係」にあることを確認 07. かかりつけ医機能報告と協議結果の医療計画への反映は26年度以降の見通し 現行案は医師・患者双方の「手上げ方式」とは言えないとの意見も 社会保障審議会・医療部会は12月5日、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」について議論を深めた(資料1)。特に医師からの書面交付などを通じて「かかりつけの関係」を確認する仕組みについては、保険者の委員から、慢性疾患患者に対象を限定した厚生労働省案では政府の全世代型社会保障構築会議が求める医師・患者双方の「手上げ方式」とは言えないと、見直しを求める意見もあった。 かかりつけ医機能の制度整備について厚労省は- (1)医療機関が自院のかかりつけ医機能を都道府県に報告する「かかりつけ医機能報告制度」を創設する。 (2)報告結果を踏まえ、都道府県はかかりつけ医機能を担う医療機関を確認・公表するとともに、地域に不足する機能がある場合は対応策を地域の協議の場で検討する。 (3)医療機能情報提供制度の情報提供項目をわかりやすい表現に見直し、国民・患者がかかりつけ医を探しやすい環境を整える。 (4)医師と患者が「かかりつけの関係」を確認できる仕組みを導入する。 -などの具体案を前回の部会に提示している。 書面交付で「かかりつけ医機能として提供する医療の内容を説明」、当初案を修正 このうち(4)はインフォームド・コンセント(I・C)の一環として実施することを想定したもの。当初案は、継続的な医学管理が必要な患者であって、かつ患者が希望する場合には、医師が書面交付と説明を行って「かかりつけの関係」にあることを確認するとしていた。だが、前回の部会で「医師と患者間で全く新しい契約関係が生じるのか」といった意見が出たため、厚労省はI・Cの一環という趣旨がより伝わるよう、「医療機関が書面交付などにより、かかりつけ医機能として提供する医療の内容を説明する」と修正(資料2)。 さらに交付する書面のイメージ例として、「生活習慣病指導管理料」の算定時に作成する「療養計画書」や、「地域包括診療料」・「認知症地域包括診療料」の算定時に使用する患者向け説明書(提供する医療の内容などを記載)と同意書を部会に提示した。 書面の内容について山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は、「地域包括診療料の説明書のように、何ができるのかを患者に伝える項目が必要だ」と指摘。神野正博委員(全日本病院協会副会長)は、「入退院時の支援や入院機能がない場合はどこと連携するのかなど、より具体的にイメージできるような書面がいいのではないか」と述べた。 慢性疾患患者に限定せず希望者全てに書面交付を 健保連・河本専務理事 一方、河本滋史委員(健康保険組合連合会専務理事)は、「持病のない患者がこの枠組みに入ってこないのはあまりにバランスを欠く」と慢性疾患患者に対象が限られることを問題視。「医師が判断した患者しか手を上げられないのであれば、全世代型社会保障構築会議が求めている医師・患者それぞれの手上げ方式とは言えない。国民・患者が希望した場合は書面交付を受けられるようにするべきだ」と見直しを求めた。 また、現在の案は医師と患者の関係が1対1であることを想定したものではなく、複数の診療科に通う患者が複数の医療機関と書面を交わすことも可能。こうした点について島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)は、「個々の診療所が臓器別の診療を行い、全人的なものがないと今と何が違うのかとなってしまう」と疑問を呈し、より詳細な制度設計を検討する際には、日常的によくある疾患の診療や疾患別ではない全人的な対応などについても議論する必要があるとの認識を示した。 (資料1)かかりつけ医機能が発揮される制度整備(骨格案) (出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集) (資料2)患者に対するかかりつけの関係の説明について (出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集) ■ かかりつけ医機能の制度整備に関する2022年11月までの議論 「かかりつけ医機能の制度整備」をめぐっては、遡ること2022年 6月、政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2022」において、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」との方針が明記された。それを受け、厚生労働省は「第8次医療計画等に関する検討会」で7月から議論を開始している。医療法では、医療計画(外来医療計画)への「かかりつけ医」に関する記載は求めていないが、今後の外来医療提供体制の整備に附随する事項として、かかりつけ医機能の強化が位置付けられた。 しかし、政府が2021年12月に閣議決定した「新経済・財政再生計画改革工程表2021」では、「かかりつけ医機能を有効に発揮するための具体策を23年度にかけて検討する」と記載されていた一方、2024年度からの第8次医療計画は都道府県が2023年度中に策定しなければならず、それと併せた議論は2022年いっぱいとの制約がある。そのため、2022年9月からは社会保障審議会・医療部会でも議論が始まっており、そちらに検討の場を移して議論が進んでいる。 かかりつけ医機能報告制度を創設へ 2022年11月には、厚生労働省は社会保障審議会・医療部会に、かかりつけ医機能が発揮される制度整備についての具体案を提示した。医療機関が自院のかかりつけ医機能を都道府県に報告する「かかりつけ医機能報告制度」を創設。かかりつけ医機能の定義を法定化した上で、国民がかかりつけ医を探す助けとなるよう、医療機能情報提供制度の情報提供項目をわかりやすい内容に見直す。医療部会が年内に制度整備の基本的考え方をとりまとめる。 政府の全世代型社会保障構築会議が2022年11月にまとめた論点整理は、医療機関と患者それぞれの「手上げ方式」を軸にかかりつけ医機能の制度整備を検討する方針を打ち出しており、2022年11月の厚労省案はこれを踏まえた内容となっている。 制度整備は- (1)国民の多様な医療ニーズへの対応 (2)全ての国民への情報提供 -が大きな柱となる。 (1)では、「かかりつけ医機能報告制度」を創設。医療機関に▽外来医療(幅広いプライマリケア等)の提供▽休日・夜間の対応▽入退院時の支援▽在宅医療の提供▽介護サービス等との連携-の5つの機能を担う意向の有無や、意向がある場合は単独か他院と連携して提供するのかを都道府県に報告することを求める(資料3)。都道府県は報告結果から地域における機能の充足状況や、これらの機能をあわせ持つ医療機関を確認・公表。不足する機能がある場合は、地域の協議の場で、▽病院勤務医が地域で開業し、地域医療を担うための研修や支援の企画実施▽地域で不足する機能を担うことを既存・新設の医療機関に要請▽地域医療連携推進法人の設立活用-といった対応策を検討し、結果を公表する。 医師からの書面交付と説明で「かかりつけの関係」にあることを確認 医師が継続的な医学管理が必要と判断される患者に書面の交付と説明を行い、医療機関と患者双方が「かかりつけの関係」にあることを確認する仕組みも導入する。 (2)では、かかりつけ医機能を「身近な地域における日常的な医療の提供や健康管理に関する相談等を行う機能」と定義し、法律にも明記。医療機能情報提供制度は現在も、かかりつけ医機能に関する情報として、「地域包括診療加算」や「機能強化加算」の届出状況などを公表しているが、国民から見てわかりにくいとの指摘が多いことから、情報提供項目を見直す。詳細は今後、有識者や専門家を交えて検討を進めるが、例えば▽対象者の別(高齢者、子どもなど)▽日常的によくある疾患への幅広い対応▽入退院時の支援など医療機関との連携の具体的内容▽休日・夜間の対応を含めた在宅医療や介護との連携の具体的な内容-など、国民・患者目線でわかりやすいものとする考え。 かかりつけ医機能報告と協議結果の医療計画への反映は26年度以降の見通し (1)、(2)とも2023年度に制度設計の詳細を検討。かかりつけ医機能報告制度は24年度から25年度にかけて個別医療機関からの報告と地域の協議の場での議論を行い、その結果を26年度以降適宜、医療計画に反映させていく。医療機能情報提供制度の情報提供項目見直しは、24年度以降に予定されている全国統一システムの導入に合わせて実施する(資料4)。 (資料3)地域におけるかかりつけ医機能の充実強化に向けた協議のイメージ (出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集) (資料4)かかりつけ医機能が発揮される制度整備の進め方のイメージ (出典:厚生労働省 第94回社会保障審議会医療部会 資料より一部抜粋編集) (編集:株式会社日本経営)

【基礎編】通所介護の開業で押さえておきたいポイント(2023.1.11)
通所介護の開業を考えている方必見!まず最初に知っておくべきポイントを確認しよう。 デイサービス 通所介護の開業でおさえておきたいポイント 1.開業にあたり、まず検討すべきこと 新たに通所介護事業をはじめようとしたときに、まず大前提として、法人格を有していることが条件となります。そのうえで検討しなければならないことが2つあります。それは、 ①利用者はいるのか ②職員は揃うのか です。 それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。 ①利用者がいるか ひとくちに通所介護といっても、大きく分けて次の3種類があります。 法律根拠 対象者 定員 人員配置基準 その他の基準 通所介護 老人福祉法第5条の2第32項または第20条の2の2 介護保険法第8条第7項 要介護1-5 19人以上 管理者1 相談員1 看護職員または介護職員2以上 機能訓練指導員1 介護職員は(利用者数-15)/5+1で配置。 例:利用者20名→介護職員2 利用者30名→介護職員4 機能訓練室+食堂で合わせて利用者1人あたり3㎡以上 相談室 浴室(任意) 静養室 事務室 トイレ 地域密着型通所介護 老人福祉法第5条の2第32項または第20条の2の2 介護保険法第8条第17項 要介護1-5 19人未満 管理者1 相談員1 看護職員または介護職員利用者15人まで1、16人以上は2 機能訓練指導員1 介護職員は(利用者数-15)/5+1で配置。 例:利用者20名→介護職員2 利用者30名→介護職員4 認知症対応型通所介護 老人福祉法第5条の2第32項または第20条の2の2 介護保険法第8条第18項 要支援1.2 要介護1-5 1単位あたり 12人以下 管理者1 相談員1 看護職員または介護職員1単位あたり2以上 機能訓練指導員1 ※介護予防事業は2017年より介護予防・日常生活支援総合事業に移行 ※機能訓練指導員とは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師または准看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師を指す それぞれ少しずつですが対象者、人数、職員配置などが違います。まず、どのような通所介護サービスをどの程度の規模で行うのかを決める必要があります。 では利用者は、どこにでもいるのでしょうか。 既に多くの通所介護事業所が存在していますが、中には休止・廃止する事業所や事業規模を縮小する事業所もあります。特に新型コロナウイルス感染症拡大の影響は大きく、利用者が通所しなくなったため事業が立ちいかなくなり、閉鎖した事業所もあります。通所できる利用者を見つけることは簡単ではありません。 なぜ利用者を見つけるのは難しいのでしょう。 通所介護事業とは、通所できるくらい元気な高齢者を対象とした事業ということができます。その方の状態(要介護度)が進めば施設に入所したり、訪問介護等他の在宅サービスに移行してしまいます。「デイサービスにおけるサービス提供実態に関する報告書(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)」によると、通所介護の平均利用年数は3年未満が6割を大きく超え、5年以上利用する高齢者は16.7%しかいないとされています。つまり6人のうち5人は5年以内に入れ替わり、常に新たな利用者をみつけなければなりません。 もうひとつの問題は、どこで事業を行うかです。 通所介護事業所は既に多く存在し、どのエリアで実施するにしても他のデイサービス事業所があることでしょう。競合するエリアに、既にどのくらいの他のデイサービスがあるかを調査する必要があります。 競合エリアに既にある通所介護事業所の特色も把握します。食事サービスの提供や入浴サービス提供の有無、リハビリに力を入れているなど、エリアのニーズと併せて把握する必要があります。 そして規模を検討します。小規模でやるのか、または認知症対応型とするのかなど、競合エリアとなる地域のニーズとサービスの提供量を調査し、決定しなければなりません。 ②職員は揃うのか エリアや規模、特色などについて決定したら、職員を確保しなければなりません。以前から介護職員を確保することは難しいといわれています。しかし調べてみると、介護職員の離職が他の業種と比較して特に高いわけではなく、全業種平均とほぼ同じです。 ではなぜ人が集まらないといわれているのでしょう。それは給料が安く、体力的にハードな職種と思われているからです。給料水準は確かに高いとはいえませんが、体力的にハードかというと、特別養護老人ホームなど身体介護が業務の中心であればハードといえますが、通所介護の場合、身体介護はそれほどハードとはいえません。そこには多少の誤解もありそうです。通所介護の場合、求められるスキルの第1はコミュニケーションスキルです。 利用者は日中の数時間を通所介護事業所で過ごします。そこでは職員や他の利用者との関わりを通して、穏やかな時間を過ごせなければなりません。資格は特に問われないことが多いですが、大切なのは利用者が気持ちよく過ごせる時間を提供できるかです。なお通所介護事業所は送迎がありますので、普通自動車免許は必要となる場合が多いです。 2.開業までの検討事項 上記ポイントをふまえた上で、検討事項を時系列で表示すると以下のようになります。 ①サービス内容と規模の決定・・・・内容と規模、特色も決めておきます。 ②自治体への事前申請・・・・自治体に事前申請を行い、当該エリアのニーズなども協議します。 ③物件契約・・・送迎車を置くことができることが物件の条件のひとつとなるでしょう。 ④内装工事・・・通所介護事業所には設備の基準がありますので、内装工事の際には自治体の立会が望ましいです。 ⑤備品の購入またはリース契約 ⑥新規指定前研修(東京都の場合)・・・・東京都の場合には指定申請の前に研修を受講することとされています。 ⑦指定申請 3.開業時に必要な条件、資格、認可、設置基準 介護保険事業者としての指定をとることが一番です。職員が所定の人員配置基準を満たしているか、出来上がった事業所は設備についての面積基準等を満たしているか、などをチェックします。設備に関しては、完成してから直すのは大変ですから、詳細な図面を準備して事前に自治体と十分打ち合わせをすることが必要です。 4.開業前後の必要資金の目安 通所介護事業所は、サービスを提供した翌々月に国保連から対価を受け取ります。つまり、4月に提供したサービスの対価が国保連から入金されるのは6月になってからです。その間も人件費をはじめ各種経費の支出は待ってくれませんから、開業時の運転資金として介護報酬の3ヶ月分が必要だということになります。 人件費、家賃、送迎車両の維持費(駐車場を別途借りる場合にはその料金も)は、利用者が少ない時でも必ず発生しますから、ゆとりのある資金計画が必要です。 5.利用者獲得のために 何か特色を持たせることが有効です。「うちのデイは〇〇が特色だ」といえるものを作ることです。それは機能訓練でもよいし、特徴的なレクリエーション活動でもよいと思います。また入浴設備が広くてきれい、食事がとてもおいしいでもよいと思います。 特色を持たせたら、エリアの潜在的利用者に知ってもらわなければなりません。積極的に見学の受け入れを行い、事業所の認知度を高めていきます。 職員との関わりをセールスポイントとする場合には、介護福祉士の有資格者が多くいることや、機能訓練指導員を基準配置を超えて置いている、などがポイントとなるでしょう。また通所介護事業所にとって送迎の重要度は高く、安心して任せられる運転が上手なドライバーを確保していることもポイントになります。 他の利用者との関わりも重要です。よく耳にするのは、「同じ趣味の利用者がいないからつまらない」、「話のあう友達がいない」などです。先日、ある通所介護事業所にお邪魔しましたら、「将棋を指せる人がいなくてつまらないから、事業所を替える。」と仰る利用者がいました。これらのニーズは事業を開始した後の個別ニーズですが、これらにも丁寧に対応していく必要があります。 制作:2023年1月 【著者】 辻・本郷 税理士法人 菊池典明(きくち・のりあき) 2014年税理士登録。2012年辻・本郷 税理士法人大阪支部に入社。株式会社のほか医療法人、社会福祉法人、公益法人等の税務・会計に関する業務を中心に、法人の事業承継や個人の相続コンサルティングを担当。 2017年に社会福祉法人部を創部、2020年より医療法人、社会福祉法人、公益法人及び地方公共団体へのサービス推進に従事。

【中編】赤字でも活用可能な「経営革新計画」の特別融資(2022.12.28)
倒産の危機を回避した方法とは?経営管理における重要な指標についても詳しく解説 <取材先> ㈱RARECREW 代表取締役 日下部竜太 【大見出し】 赤字でも活用可能な「経営革新計画」の特別融資 【サブ見出し】 倒産の危機回避 現在の経営管理指標を語る 【リード】 入浴特化型の3時間型デイサービス「いきいきらいふSPA」や訪問介護、居宅介護支援など、東京を中心に全国22事業所で在宅介護サービスを展開するRARECREW(東京都台東区)。今年で創業20年を迎えた同社の日下部竜太社長に、事業モデルや資金調達・財務管理手法、新規事業などについて話を聞いた。【中編】 【本文】 ■大幅な計画未達で赤字 救ったのは「経営革新計画」の制度融資 ――資金調達や財務管理のテクニックについても聞かせてください。 日下部 銀行からの融資による資金調達が主でしたが、ちょうど「いきいきらいふSPA」拡大に向かっていた2012年、「経営革新計画」の承認申請にチャレンジしました。 【図②経営革新計画とは】 今後の展開の中で「通常融資のほかにこの特別融資を使える状態にしておくことが、いざとなった時の切り札になる」と考え、この革新計画に位置付けた特別融資制度に着目。申請書を提出したところ、東京都初のデイサービスモデルにおける経営革新計画の承認を得ることができました。 その後、11年からのFC方式による展開加速を行う中で、若手の積極採用とともに優秀な幹部陣を迎え本部人員を増員していきました。会社の組織化が図られ、12年からわずか3年で直営20事業所、FC21事業所の合計41事業所に拡大。売上は右肩あがりで創業から13年連続増収を達成し、本部人員も更に強化、従業員数も240名弱の大所帯になっていました。資金繰りでは、年間5店舗(2200万円/1店舗調達資金)開設、これを2年続けて調達しており、合計10店舗の直営出店分だけでも借入金総額は2億2000万円に。 しかし13年の後半、状況が一変。加速度的な直営出店、急な本部人員拡大による人材投資、1店舗開設と同等額の研修センターの開設などが行き過ぎた投資となっていました。新店の人材確保も間に合わず、1店舗開設にあたり6名~7名、3ヵ月毎に1店舗のペースで開設となれば、育成もまったく追いつかない事態が発生しました。収支が計画通りに進まないどころか、大幅な計画未達となっていったのです。 負の連鎖が表面化した際には「倒産」の2文字が頭をよぎり、支出削減を強化するとともに、経営の立て直しに向け時間を稼ぐため動きました。資金捻出については、利用したら抜け出せないファクタリングは、最終手段として出来れば使いたくないと考え、思い出したのが赤字でも活用可能な「経営革新計画」の制度融資でした。1銀行1000万円を2行から受け、2000万円を調達。この間に支出削減に取り組みました。まずは業務の徹底的な洗い出し、そしてFCの管理体制強化、直営店舗の立て直し。モデル事業所の適正人員の指標の明確化と管理の徹底。余剰人員は全員営業PR活動に移し、集客活動を強化。シフトコントロールと業績関連のKPI管理の徹底も行い、3ヵ月で立て直しに成功しました。 現在の運営管理、経営管理はすべてこの時の指標をブラッシュアップして行っています。情報の透明性を重視する必要性と、「上手くいっている時こそ慎重に、ピンチの時ほど大胆に」行動することの重要性を学びました。なお、倒産寸前のピンチを救ってくれた「経営革新計画」は、計画である以上実行した結果を報告するのですが、5年計画の結果、東京都経営革新優秀賞を受賞。銀行など金融機関の反応も非常によいものになりました。その後は財務戦略の重要性を身をもって体験したため、メガバンクをはじめ地方銀行、信用金庫、政府系金融公庫からバランスよく借入を行っていきました。 金融機関との関係性は経営をしていく上でとても重要な指標です。多くの経営者は資金調達したい時に金融機関に声をかけて、求められる資料を提出するという流れの付き合いだと思います。しかし、戦略的に資金調達しようと思えば、しっかりと毎年決算報告会を行い、信用力を高めておくことが必要になります。決算報告会では成績報告とともに、次年度の事業計画についても数字をもって説明することをおすすめします。これで金融機関は、経営状況をしっかり分析できているか、今後の事業展開をどう考えているのか、追加資金需要のタイミングをどう考えているかなど、経営者の能力を知ることができる機会になるので、経営者としての評価が高まると私は考えています。金融機関をパートナー企業と捉え、しっかりと協力してもらえる体制を作っておくことは何より重要なことだと認識しています。 ■国が推奨 人件費割合を単価の45%に ――運営管理、経営管理の指標について、詳しく教えてください。 日下部 介護事業において適正利益・売上を目指すにあたり、重要なのはシフト管理と人員配置です。例えば当社における1つのデイサービスモデルでは、出勤人数を1日4人として月のオペレーションを組むと、30日の稼働で120コマとなります。これを正社員とパートで埋めていきますが、この際に標準オペレーションに照らし合せて最も適正な配置を行います。現在の当社のパート比率は7割。今後の社会環境変化を見据えた戦略的な人材配置として、正社員とパートの比率を5:5にしていきたい考えです。 なお、デイの場合、新規開設店舗の立ち上がりは半年で60~65%の稼働を目標としています。既存店舗では目標稼働率87%、人件費割合は単価の45%に設定。なお、この人件費割合は厚生労働省資料「地域区分について」(下表参照)において地域係数とともに示されており、国が推奨する数値に近づければ利益が出ることになります。 【図③地域区分について】 当社の現在の人件費割合は50~55%。国が本体報酬の引き下げや処遇改善を行う施策を進める中では難しい状況ですが、目標として維持していきます。こうした数値を意識することで、例えば稼働率87%を満たしているのに目標売上に到達しない店舗は「顧客単価が低い」と判断し、営業指導に入るなど対策ができます。こうした数値はすべてKPIとして指標化し開示することで、一現場スタッフも意識するようになりました。 (プロフィール) RARECREW(旧社名 いきいきらいふ) 代表取締役 日下部竜太 一般社団法人日本デイサービス協会 理事 一般社団法人全国介護事業者連盟東京支部 幹事 2002年、部品メーカーの研究開発職から転身し、介護の世界に足を踏み入れる。訪問介護、居宅介護支援、福祉用具貸与、通所介護の立ち上げから安定運営ノウハウの構築を担う。 入浴特化型短時間デイサービスモデルを全国に展開。業態開発から標準化マニュアル策定を得意とする。新卒採用にも力を入れ、「若手を鍛える」研修講師、ビジネスコーチとしての顔も持つ。

医療法人に損益計算書情報の提出を義務づけ 経営情報DB検討会 ~給与情報の提出は任意、23年度中の施行目指す~(2022.12.6)
<編集>株式会社日本経営 【概要】 ○厚生労働省の検討会が医療法人の経営情報のデータベース(DB)化に関する報告書をまとめた。 ○医療法を改正して、医療法人立の病院、診療所(四段階税制適用法人は除外)に、病院会計準則に基づく損益計算書(収益・費用)の情報などの提出を求める仕組みを創設。医療法人の経営情報DBを構築し、分析結果の国の政策立案への活用や国民への情報提供を行う。 ○法人の負担を軽減する観点から、貸借対照表(資産・負債など)の提出は求めず、既存の事業報告書等の情報を活用。給与費関連の情報の提出は任意とする。 厚生労働省の「医療法人の経営情報(*資料1)のデータベースの在り方に関する検討会」は11月8日、報告書をまとめた。 医療法人設立の病院・診療所に収益・費用などの経営情報や職種別の給与に関する情報(任意)の提出を求め、医療法人の経営情報データベース(DB)を構築する新たな仕組みを創設。国の政策立案や医療従事者の処遇改善などに活用するほか、個別法人が特定できないように属性でグルーピングした分析結果を公表し、国民に医療がおかれている現状・実態を理解してもらうことに役立てる。今後、社会保障審議会・医療部会での承認を経て、医療法改正の準備に入る。 (*資料1)医療法人の経営情報 (出典:厚生労働省 第1回医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会(オンライン会議)参考資料より一部抜粋編集) 新制度は原則全ての医療法人を対象とするが、法人税制度で社会保険診療報酬の所得計算の特例措置(いわゆる四段階税制)が適用されている小規模法人は除く。 収集する経営情報は、病院会計準則に基づいて作成された損益計算書(収益及び費用)の情報。法人の事業形態が多角化している現状を踏まえ、対象事業は病院と診療所に限定した上で、医療機関ごとの情報提出を求める。資産、負債、純資産の情報は、施設単位で貸借対照表を作成していない法人が一定数あることから提出は求めず、各法人が都道府県知事に届け出ている事業報告書等の法人単位の貸借対照表を活用する。 目次 職種ごとの給与費合計額・延べ人数は任意提出項目に 第三者提供制度の具体策は施行後に検討、DBの運用等にはWAMが関与 医療法人の経営情報DBを23年度中に構築 職種ごとの給与費合計額・延べ人数は任意提出項目に 給与費の関係では、処遇改善を議論する際の参考指標になる「職種ごとの年間1人当たり給与額」を算出するために、「職種ごとの給与費の合計額」と「職種ごとの延べ人数」の情報が必要になる。このうち前者は対象期間を暦年(直近1月1日から12月31日)に設定。後者は「病床機能報告」の毎年7月1日時点の「職種別の人数」の活用を基本とし、同制度の対象外である無床診療所などの場合のみ、同じ7月1日時点の人数の報告を求める。ただし、財務諸表の作成には必要ない項目が含まれるなど、法人の負担が増える点に配慮し、これら給与費関連情報の提出は任意とする。 施行時期は23年度のできる限り早期に設定。施行後に決算期を迎える法人から順次情報提出を求め、23年度中のDB構築を目指す。その際には、提出期限の延長や制度開始から一定期間は提出内容の簡素化を認めるなどの経過措置を設ける。 医療法人の運営の透明性確保と医療がおかれている状況に対する国民の理解を促す観点から、国はDBに蓄積された法人の経営情報を分析し、公表する。その内容は、属性等に応じてグルーピングした分析結果のみとし、個別の医療機関の情報は公表しないこととする。 第三者提供制度の具体策は施行後に検討、DBの運用等にはWAMが関与 学術研究などに利用目的を限定した「第三者提供制度(仮称)」も創設する。実際にはDBに一定数以上のデータが蓄積されてからの運用となるため、データの充実を見据えた施行期日を設定し、それまでの期間を提供対象となる情報の内容、利用目的の限定方法、再識別させないための方法、利用申請の適切性を審査する仕組みなどの検討に充てる。 なおDBの構築・運用と経営情報の分析は、国と独立行政法人福祉医療機構(WAM)が連携して行う方向で検討が進められている(*資料2)。 (*資料2)運用のイメージ (出典:厚生労働省 第2回医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会(オンライン会議)参考資料より一部抜粋編集) (2022年11月8日時点での情報に基づき作成) 医療法人の経営情報DBを23年度中に構築 遡ること10月、厚生労働省の「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」は、初会合を開いた。この中で厚労省は、原則、全ての医療法人を対象に財務諸表などの提出を求めてDB化するとともに、個別医療法人が特定できないように属性などでグルーピングした経営情報の分析結果を国民に公表する案を提示した。11月の検討会を受けて国は2023年度中のDB構築を目指すとしている。 新たなDBとは、国による医療法人の詳細な経営情報の把握・分析と国民への情報開示を目的に構築。厚労省は、▽効率的かつ持続可能な医療提供体制の構築のための政策の検討▽医療従事者等の処遇改善の適正化に向けた検討▽診療報酬改定の基礎資料である医療経済実態調査の補完▽医療が置かれている現状や実態に対する国民の理解促進-などへの活用が期待できるとしている。医療法人の経営実態の把握では、行政による法人の監督・指導を目的とした事業報告書等の届出制度がすでに存在するが、趣旨や目的が異なることから、今回新たに創設する仕組みは別の制度として位置付ける。今後は、年度内のDB構築の全容に注目が集まる。 (編集:株式会社日本経営)

【知っておきたい】クリニックの開設にあたり押さえておきたいポイント(2022.12.26) ~事前準備編~
<編集> 辻・本郷 税理士法人 クリニックの開業を考えている先生の中には、「どのように開業準備を進めれば良いのか分からない」という人も少なくないのではないでしょうか。開業するためには、事前の準備(基本構想の決定、経営シミュレーション等)が最も重要であり、その後いくつかのステップと、それぞれにおいてポイントを押さえておかなければなりません。今回はクリニック開業の事前準備のポイントを解説いたします。 <はじめに> 厚生労働省が行っている「医療施設動態調査」によると、令和4年4月末時点の一般診療所の施設数は全国で104,778件。施設件数は、前年同期比で1,352件増加しており、その数は年々増加傾向にあります。特に東京・大阪・名古屋等の主要都市では増加が著しく、大都市圏では、引き続き激しい患者獲得の競争が続くと言えるでしょう。 ■ 地方別にみた施設数 ■ 診療所 30年 31年 R2年 R3年 R4年 地方別割合(%) 全国 101,959 102,298 102,638 103,426 104,778 北海道 3,386 3,387 3,366 3,392 3,431 3.3 東北地方 6,520 6,500 6,449 6,482 6,603 6.3 関東地方 33,006 33,288 33,694 34,102 34,760 33.2 中部地方 17,369 17,394 17,419 17,543 17,791 17.0 近畿地方 19,305 19,382 19,443 19,637 19,830 18.9 中国地方 6,700 6,670 6,642 6,623 6,582 6.3 四国地方 3,359 3,331 3,305 3,284 3,279 3.1 九州地方 12,314 12,346 12,320 12,363 12,502 11.9 ■ 地方別にみた施設数(増減数) ■ 診療所 30年 31年 R2年 R3年 R4年 地方別割合(%) 全国 ― 339 340 788 1,352 北海道 ― 1 -21 26 39 2.9 東北地方 ― -20 -51 33 121 8.9 関東地方 ― 282 406 408 658 48.7 中部地方 ― 25 25 124 248 18.3 近畿地方 ― 77 61 194 193 14.3 中国地方 ― -30 -28 -19 -41 -3.0 四国地方 ― -28 -26 -21 -5 -0.4 九州地方 ― 32 -26 43 139 10.3 *厚生労働省「医療施設動態調査」令和4年4月末現在 当社集計 2009年に日本医師会が実施した「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」によると、医師が新規開業したときの平均年齢は41.3歳です。 開業後年数別開業年齢によると、5年以内は44.9歳、10~20年は41.7歳、30年超は37.5歳となっています。アンケート調査は少し古いデータですが、数十年前の時代よりも近年は勤務医として経験を積み重ねてから開業する傾向がより強まっているのではないでしょうか。また、アンケート調査の中の開業動機で最も多いのは「理想の医療の追求(42.4%)」、次が「将来に限界を感じた(35.1%)」という結果でした。弊社が開業をお手伝いした先生からも、病院勤務医の過重労働や負担など同じようなお声を多数いただいており、このような現状からも、開業希望の先生はまだまだ増えると推測されます。 ■ クリニック開業される主な動機 (当社調べ) ■ 理想の医療の追求 ・地域医療に貢献したい ・患者とゆっくり向き合った医療がしたい 勤務医としての限界 ・将来に限界(病院におけるポストレス) ・過重労働・負担の増大による疲弊 ・病院の待遇が悪い ・激務が給料に反映されない ライフプランの実現 ・定年後の生活設計や子供の教育資金と相続 ・親や奥様に開業を勧められて 開業後はお給料をいただく勤務医から売上を上げる『経営者』となります。しかしながら、ビジネス経験の少ない先生がクリニックの経営を行うのは大変です。開業までにやるべきことは多岐にわたり、かなりの手間や時間がかかります。開業後も、クリニックとしての利益を上げるための運営・管理業務はすべて先生が主体的に行います。スタッフの管理、医薬品の管理、設備管理、経理業務、集患対策など業務内容・量は広範囲にわたり、これらを継続的に行う必要があります。医師にとって開業することは、理想の医療や収入アップを実現させる方法の一つではありますが、臨床以外の業務もきちんと把握し業務にあたっていく必要があります。 なお、開業にはゼロから立ち上げる「新規開業」と、既存のクリニックを承継して開業する「承継開業」がありますが、今回のコラムでは「新規開業」にフォーカスし解説いたします。 ① 基本構想の決定 ② 開業地の選定と診療圏調査 【開業形態の選択(賃貸か購入か)】 ③ 事業計画書の作成(経営シミュレーション) 【開業時にかかる初期コスト】 ④ 収支の見積もり(キャッシュフローの算定) ① 基本構想の決定 競合クリニックが多いエリアで開設する場合は、患者がクリニックを「選ぶ」まさにレッドオーシャンの時代です。患者に選んでもらうクリニックとなるためには、先生がどのように主体的に開業すればよいでしょうか。はじめの一歩として「基本構想の決定」について以下、解説いたします。 初めに大切なのが、開業するにあたり、どの様なクリニックを作りたいか、どの様な医療を行いたいかなど、経営理念や診察方針を明確にする必要があります。行いたい診療内容によってはターゲットとなる患者層も異なり、掲げる診療科目によっても異なります。先生の強みはその診療科目によって表現されることになるので、まずはご自身が「理想」とするクリニック像を思い描き、それを明確な根拠を元に事業計画として文章や数字に書き起こし、「現実」に近付けていきましょう。 ② 開業地の選定と診療圏調査 クリニックを開業する上で「開業地の選定」は、今後のクリニックの運命を左右する最も重要なファクターとなります。駅前で開業するか、住宅街で開業するか、オフィス街で開業するかといった開業地域を探す際も診療内容によって左右されることになります。 また、開業地を選定する理由としては、ゆかりや思い入れのある場所で開業する、条件のいい場所を見つけて開業するなどが挙げられます。 後者の場合、ご自身が専門とする診療科目に対応する人口は十分か、競合クリニックがどの程度あるかを調べ、来院患者数を想定する診療圏調査が必須となります。その他にも、来院するための交通の便、見つけやすい場所にあるか、人や車の交通量はどうか、駐車場のスペースを確保することができるかといった部分も重視する必要があります。 ご自身の理想とする条件を満たす場所は多くはありませんが、妥協して後悔しないためにも時間をかけて調査をしましょう。 【開業形態の選択(賃貸か購入か)】 クリニックの経営を行うにあたり考慮すべき事項は多岐にわたります。開業にあたっては、内装工事や医療器機の購入などで多くの資金が必要になりますが、物件を購入される場合はさらに資金が必要になります。ご自身が所有している不動産がない限り、新規開業される先生は初期投資が少ない賃貸を選択されるケースがほとんどです。ただし、ご自身の理想とするクリニックは購入でしか描けない可能性もあるため、開業前に下記の表を参考に各々のメリット・デメリットを把握しましょう。 賃貸 購入 メリット ・初期費用が少ない ・撤退や移転がしやすい ・建物の管理を行わなくてよい ・内装だけでなく外観も自由に設計可 ・改修や増築が可能 ・中途解約の概念がないため違約金などは発生しない ・自分の資産になる ・駐車場の確保がしやすい デメリット ・毎月の家賃が発生 ・賃上げのリスクが発生する ・更新時期以外の解約では違約金が発生する可能性がある ・予期せぬテナントが入居する可能性あり ・建物によっては、利用制限がある ・一度に多額の資金が必要 ・簡単に撤退や移転ができない ・建物の管理を行う必要がある ・固定資産税等が発生する ③ 事業計画書の作成(経営シミュレーション) 事業計画とは事業の見通しを具体的に数字にすることで、利益や資金繰りを計画することです。「これぐらい利益が出るとうれしいかな」という希望的観測ではなく、実現性の高い数字として起こすことで、クリニックを運営するための資金がどれほど必要かはっきりさせることができます。実際に金融機関で融資を受ける際には説得力のある事業計画書が必須となります。 事業計画書の作成にご不安を覚える場合は、コンサル会社などの専門家に依頼するのも一つの手段です。 今回は実際にご自身で事業計画書を作成される際、その実現性の高い数字に必要な大きなポイントとして、開業時にかかる初期コスト、収支の見積もりの2点を主に見ていきましょう。 【開業時にかかる初期コスト】 クリニックの開業にあたり、最も気になるポイントは開業時にかかるコストではないでしょうか。開業には多額の資金を要するため、開業される多くの先生方が内装工事、医療機器やその他コストのために金融機関から融資を受けることになります。そのため初期コストを抑えるために電子カルテや一部医療機器につきリースを選択される先生方もいらっしゃいます。各業者さんに相見積りを取り、実際にかかるコストを把握しましょう。 ■ 主要科目別開業コストの目安表 ■ 科目 面積 内装工事費 医療設備・OA・什器 従業員数 運転資金 内科 100㎡(30坪)以上 賃貸 坪60~70万円 購入 坪80万円以上 3,500万円 4~5名 1,500万円 ~4,000万円 小児科 130㎡(40坪)以上 2,000万円 4~5名 整形外科 165㎡(50坪)以上 3,500万円 5~8名 耳鼻咽喉科 100㎡(30坪)以上 3,000万円 3~5名 皮膚科 70㎡(20坪)以上 2,000万円 3~5名 眼科 130㎡(40坪)以上 4,500万円 4~6名 心療内科 100㎡(36坪)以上 800万円 2~3名 ・賃貸の場合、仲介料、礼金・保証金、前家賃など家賃の約10か月分が必要 ・土地を購入し自院を建設 ⇒ 1億5,000万円以上 ・借地で自院を建設 ⇒ 8,000万円~1億円以上 ※上記はあくまでも目安となります。導入する医療機器や診察に要するスペースによって大きく変動いたしますのでご留意ください。 ④ 収支の見積もり(キャッシュフローの算定) 事業計画書を作成する上で、最も重要なのが収支の見積もり(キャッシュフロー算定)となります。金融機関より融資を受ける上では、返済する能力がないとそもそも融資を受けることは不可能です。そのため明確な根拠を元に収支予測し、長期的に見て黒字になるような見積もりをすることが必須となります。 見積もる際の注意点として、国保・社保の診療報酬の請求分は2か月後の入金となるため、開業当初は資金が目減りしていきます。この点を踏まえて開業1年目は見積りをしていきましょう。 以下は収入と支出の見積りポイントとなります。 ・収入の見積もり 収入(医業収益)の具体的な数字を見積もるためには、1日の来院患者数、診療科目に沿った患者1人あたり診療単価をもとに一月ごと、一年ごとで確認する必要があります。 その地域の来院患者予測をたて、おおよその収入を見積もりましょう。ご自身での調査は不可能ではありませんが、調査会社やコンサルタントがお手伝いをしてくれるケースが多いです。 ・支出の見積もり 開業後にかかる経費を把握し、毎月どれだけのコストがかかるか算出する必要があります。下記の一覧を目安に毎月のキャッシュアウトを算出しましょう。 ・人件費 ・家賃 ・リース料 ・診療材料費、医薬品費 ・水道光熱費 ・消耗品費 ・通信費 ・衛生費 ・その他経費 (その他) ・生活費 ・借入金の返済(1年目は据え置きのケースが多い) 最後に クリニックの開業当初は、患者さんが集りにくく業績としては芳しくないケースが多いです。患者さんに周知され、安定して利益がでるまでは運転資金は目減りしていき、生活費は貯蓄から捻出しなければなりません。 開業されるまでの様々な事項について、開業支援のお手伝いをしてもらえる信頼できるパートナー選びが重要になります。時間的にも経験的にもパートナーがいなければスムーズに開業することは出来ません。特に、開業前後については様々な業種と関わりを持つことになるため、幅広いネットワークがあり、開業に精通している信頼できるパートナーをそばに置いておくことが重要になります。そして、大切なご家族から理解を得ることが出来ているかということも、忘れてはいけない重要なポイントになります。

【クリニック(医科・歯科) 専用】開業医のための経営相談箱
【無料・会員登録不要】税会計士や専門家に、皆様の経営課題を相談してみませんか? <ご質問例> ■ 診療報酬 ・増収につながる診療報酬改定内容、対応方法を知りたい ■ 経営管理 ・コロナ後、赤字経営となり、立て直したい ・経費(材料費、人件費 等)を削減したい ■ 人事 ・スタッフの退職率を下げたい ■ 承継 ・高齢のため、診療所を承継したい ・相続について何をすべきか知りたい 開業医は医師でもあり、経営者でもあります。クリニック経営は資金管理、人事・労務管理、会計管理、費用管理 等、やるべきことが多くありますが、勤務医時代には、どれもこれまで経験したことがないことばかりであり、苦労が多いのも事実です。 そのような課題解決につながる情報のご提供をしています。ぜひともご利用ください。 *当サイトは東証プライム上場「芙蓉総合リース株式会社」が運営しております。

出勤しない役員の報酬、いくらまで出して大丈夫?(2022.12.21)
<著者> 米本合同税理士法人 事業承継の過程で実務から引退した先代院長を役員として残したり、現在、他所で勤務中の後継者を役員にしたりと、いわゆる「非常勤役員」がいる法人は多いです。そうした法人より「非常勤役員への役員報酬はいくらまで出して良いですか」とご質問をいただくことがよくあります。 目次 ■ 非常勤役員への報酬「目安」 ■ 非常勤役員に報酬を出すための検討事項 1.形式的な基準:社員総会 2.実質基準 ■ 未成年者・学生への役員報酬は要注意! ■ 非常勤役員への債務保証料支払いの活用も検討を! ■ 非常勤役員への報酬「目安」 法人税法上は、「常勤」役員と「非常勤」役員を分ける明確な基準はなく、また、役員報酬の適正金額の数値基準(一般的な従業員の何倍まで 等)もありません。非常勤役員への報酬金額を争った過去の裁判の判例から、月5万円~15万円ほどの役員報酬であれば損金算入を否認されるリスクの低い、安全な報酬金額と言えます。 (平9.9.29裁決、裁決事例集No.54 306頁) (平17.12.19裁決、裁決事例集No.70 215頁) (※月5万~15万円だから絶対に経費否認されないと保証するものではありません。) ■ 非常勤役員に報酬を出すための検討事項 非常勤役員であっても、業務内容や経営への貢献度等の理由から、出来るだけ報酬を支給したい場合が有ると思います。役員の報酬が是認となるためには、以下の2つの基準があります。この基準を満たせるように検討・準備を行いましょう。 1.形式的な基準:社員総会 会社法では、役員報酬は定款または社員総会の決議によって定めます。あるいは、社員総会で役員報酬の総額(上限)を決めて、理事会で各自の報酬金額を決定します。そのため、社員総会・理事会を開催し、それを議事録として、記録に残すことが重要です。 特に以下の2点が確認できるように、記載しておきましょう。 ・理事会で定めた報酬金額と実際に支給された金額が一致しているか ・理事会で決めた報酬金額が社員総会で決めた上限を超えていないか 2.実質基準 ①の書類上の定めの有無に加えて、業務実態と役員報酬金額が見合うかを検討する必要があります。 ・役員としての職務の内容・出勤日数や時間 ・病医院の収益状況 ・院内の他の従業員への給与金額 ・同種の類似規模の法人の役員の勤務状況や報酬との比較 これらの内容を報酬金額決定時に相談・決定し、記録に残しましょう。さらに決定した業務が実行されているか日報等で記録しておきましょう。 【非常勤役員への報酬「目安」】で記載の通り、役員報酬には明確な数値基準が無いため、①・②の基準についてしっかり記録に残すことで、否認されるリスクを低減できます。 ■ 未成年者・学生への役員報酬は要注意! 【非常勤役員に報酬を出すための検討事項】の②実質基準について否認されやすいのが、未成年者の学生への役員報酬の支払です。過去の裁判例では、13~16歳の子息を取締役として役員報酬10万円を支払ったが否認された例もあります。 (東京地裁平成8年11月29日(税務訴訟資料221号7824頁)) この例では、子息の年齢と学生であること、さらに海外留学でほぼ日本にいない事から法人の経営状況を把握し、経営に関する業務を行っていたとは認められない、とされました。未成年者・学生への役員報酬は特に、実質基準を満たすのか、金額は妥当か、きっちり確認・検討・対策を講じる必要がございます。 ■ 非常勤役員への債務保証料支払いの活用も検討を! 役員報酬を払う以外にも、法人から役員に債務保証料の支払を行うなどの方法があるので、そちらも併せて検討する事で、最大限 役員に支払いを行うことが出来ます。 (非常勤役員に高額な報酬を支払う方法(債務保証)についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/iryou/service/economy/10.html 心配な場合は、専門家にご相談を 上記の通り、非常勤役員への役員報酬は明確な基準がないため、多くの経営者の方が支払いたい役員報酬が妥当か否か迷います。心配になった時は、経験豊富な税理士へ相談しながら報酬金額を決めることをお勧めします。 米本合同税理士法人では、上記のような節税に関する記事を多数掲載しております。ご興味のある方は是非ご覧ください。 (医療法人の節税についてもっと知りたい方はこちら) FacebookやTwitterでも税務会計や経営に関する情報発信しています。 フォロー頂けると嬉しいです。 (Facebook) https://m.facebook.com/100088041642414/ (Twitter) https://mobile.twitter.com/okawa0620 制作年月:2022年12月20日

【前編】業界初の入浴特化型短時間デイ「いきいきらいふSPA」開発から学ぶ(2022.12.21)
制度改定への柔軟な対応 新業態モデルの開発に学ぶ成功ポイント【入浴特化型デイ】 <取材先> ㈱RARECREW 代表取締役 日下部竜太 【大見出し】 業界初の入浴特化型短時間デイ「いきいきらいふSPA」開発から学ぶ 【サブ見出し】 報酬改定に柔軟に対応 今後は産学連携へ 【リード】 入浴特化型の3時間型デイサービス「いきいきらいふSPA」や訪問介護、居宅介護支援など、東京を中心に全国22事業所で在宅介護サービスを展開するRARECREW(東京都台東区)。今年で創業20年を迎えた同社の日下部竜太社長に、事業モデルや資金調達・財務管理手法、新規事業などについて話を聞いた。【前編】 【本文】 ■全国初、入浴特化型短時間デイを開発 ――2009年、全国初の入浴特化型短時間デイサービスのモデルを打ち出しました。 日下部 訪問介護で事業を開始して2年目の04年、訪問介護、居宅介護支援、福祉用具が事業が順調に軌道に乗り黒字化した折に、デイ事業を開始しました。当時は99.9%が1日滞在型のデイであり、当社も1日型デイを開設。しかし、「目的は入浴。入浴が済んだら帰りたい」とのクレームが相次ぎました。当時のデイ利用者の男女比は2:8で、クレームはすべて男性からのものということに着目し調査を行うと、デイ利用の目的は8割が「入浴」との本音が判明。 差別化の図りにくい介護保険事業において、全国初の入浴特化型短時間デイという新業態モデルを開発するにあたり、テーマは「男性高齢者が行きたくなるデイサービス」としました。介護施設と意識させない工夫として「入浴」×「短時間」×「リラクゼーション」をコンセプトに、外装には、「通所介護」「デイサービス」を表記しないなどの手法を取り、大浴場中心の当時のデイに対してプライバシー保護の観点で個室浴を完備した入浴特化型短時間デイ「いきいきらいふSPA」1号店を開設しました。 ある程度の稼働に達した時に検証してみると、男女比は5:5となっていました。このニーズにしっかり応えていかなければいけないと感じ、ここから「いきいきらいふSPA」の拡大戦略がスタート。11年より展開速度を高め、よりニーズに応えるべくフランチャイズ(FC)方式を採用しました。全国で44事業所まで拡大しましたが、度重なる介護保険改正の影響により小規模モデルのFC展開から方針転換し、現在は都内を中心に全19事業所。FC店は1ヵ所を残しほかはすべてライセンス運営に切り替えています。 ■15年報酬改定を経て、中重度者対応へ ――さらに、中重度者対応の入浴特化型短時間デイ「リズム・リゾート」、機能訓練も組み合わせた「サニーガーデン」も展開。 日下部 当社(旧社名:いきいきらいふ)は友人と共同で立ち上げたもので、当初私は経営幹部として参画しました。社長に就任した翌年の15年は、介護業界の大転換期となる介護保険法改正の年。通所介護は△9%と過去最大の下げ幅となり、私たちのモデルでは最大△13%程度と大打撃を受けました。 中長期的に取り組むべきデイサービスモデルの開発にあたり、制度改正に対応してバージョンアップしていくため、機能訓練強化や入浴の自立支援を目的として、入浴機能維持向上評価システム「バスアセスメント」を開発、導入。デイの社会的役割の見直しとお客様の利用目的に照らし合わせた個別対応の重要性を再認識することでサービス内容を強化しました。 バスアセスメントの概要は以下の通りです。 【図①バスアセスメント概要】 入浴特化型「いきいきらいふSPA」は軽中度者向けで、出来るだけ在宅に近い環境を目指し、自宅での入浴環境を再現すべく個室浴を採用。入浴の基本動作訓練と実際の浴室での安全な実践的トレーニングを経て、最終的には自宅で入浴できるようになることを目標として運営していました。そうした中で、新たなニーズの存在に気が付きます。 それは、中重度の介護が必要な方・医療依存度の高い方・体力面で長時間利用が不向きな方の入浴ニーズです。これを受け、16年に中重度対応型入浴特化3時間デイサービス「リズム・リゾート」をトライアル店として開設。コンセプトは「生活リズム改善」です。これまでの個室浴に加え、個浴と機械浴(ミスト浴)を完備しており、車椅子の方、心臓疾患のある方でも安心して入浴できる環境を用意し、さらに看護師を常駐とすることで健康管理体制と機能訓練体制を実現しました。 現場から挙げられた事例では、寝たきりの状態から利用が始まった91歳の男性が、3ヵ月で杖歩行が出来る状態になったという例もあります。アルコール中毒や昼夜逆転、筋力低下がありましたが、看護師の介入により座位にて軽負荷筋力トレーニングを実施、徐々に立ち上がりなどの練習を加え、杖歩行まで回復しました。身体的機能の向上とともに、入浴への意欲も向上し生活リズムも正常化、昼夜逆転などの問題も改善。一般個浴槽での入浴も可能になりました。 こうした「リズム・リゾート」でのノウハウと検証結果より、さらなる機能訓練強化型モデルとして「サニーガーデン」も20年に開設。サニーガーデンは、中重度者向けの短時間型・入浴+機能訓練の組み合わせです。看護師のほか、リハビリ専門職も配置しました。 広々とした屋内環境にて状態改善に向けた機能訓練に本格的に取り組むことができるように設計し、段階的に自宅環境を整備した個浴での自立入浴に進んでもらうようにしています。都内では適正賃料の中で物件として機能訓練ができる広さを得ることが出来なかったため、名古屋や大阪にエリアチェンジ。広い物件を確保し、入浴時の自立の基礎動作でもある立ち上がり、立位保持、歩行を中心に行いました。現在、「リズム・リゾート」は1事業所、「サニーガーデン」は3事業所を展開。年間約2事業所のペースで新規開設しています。 21年介護保険法改正にて科学的介護推進加算としてLIFEが始まりましたが、私たちは実際の要介護高齢者に日々向き合う中で、ビックデータ解析では細かいニーズ対応は難しく、この加算取得に取り組むだけでは不十分だと考えます。一方で、介護現場において定性面の定量化は取り組まなければならない大事な課題です。そこでリハビリ専門職・大学連携チームによる機能訓練プログラムの検証と開発を行うことにしました。新たに理学療法士の管理者を加え、関西医療大学の藤井啓介先生を含めたプロジェクトチームを結成し、アカデミックな知見から多角的検証作業に取り組んでいます。今後、検証された入浴時の自立支援トレーニングをブラッシュアップして運営していく方針です。 (プロフィール) ㈱RARECREW(旧社名 いきいきらいふ) 代表取締役 日下部竜太

医業承継のポイントについて~買い手編~(2022.12.15)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 開業医の高齢化や世代交代が進む中で、現在承継開業が注目されています。採用や機器購入のプロセスが省けるため、新規開業に比べ少ない資金により開業することができます。今回は買い手の立場からその特徴やメリットを紹介します。 目次 01:特徴 02:承継開業のメリット 03:留意が必要なポイント 04:おわりに 1.特徴 従来であれば開業する場合、新規で開業しゼロから集患を行う、いわゆる新規開業が主流でありましたが、開業医の高齢化が進むとともに、年々承継開業の件数が増えています。承継開業は新規開業に比べ、初期投資を低く抑えることができ、また患者を引継ぐことができるので、開業直後の集患面においても優位となります。したがって今後、承継開業の件数が益々増えることかと思われます。 2.承継開業のメリット 承継開業のメリットとして以下のメリットが挙げられます。 ・経営面 開業直後に「患者が来院してくれるのか」どうかが重要なポイントとなります。一般的に開業直後は、軌道に乗るまで資金繰りが苦しいですが、承継開業であれば、既存クリニックの患者を引継ぐことが見込めますので、安心して診療に集中することができます。 ・ローコストでの開業 直近1,2年で開業に必要な予算が急激に上昇しています。クリニックの内装工事代は一昔前より1~2倍上昇していますし、医療機器の価格についても上昇しています。新規で開業するとなると、クリニックの内装工事代や医療機器(戸建開業の場合には、不動産購入コストを含む)を自ら調達する必要があり、初期投資のみで1億円を超えることも少なくありません。 一方で承継開業であれば、内装や医療機器を既存クリニックより引継ぐことが可能となるため、初期投資を大幅に抑えることができます。 ・採用面 現在人手不足が顕在化しており、医療業界においても例外ではありません。特に新型コロナ感染症流行後において人手不足が深刻となり、いずれのクリニックも採用面で苦戦しています。しかし承継開業であれば、既存クリニックの経験豊富なスタッフを引継ぐことができるので、当面は採用面で苦労することはないかと思われます。 3.留意が必要なポイント このようにメリットが多い医院承継ですが、留意すべき点があります。 ・デューデリジェンスの必要性 デューデリジェンスとは、既存クリニックの価値やリスクの調査を行うことで、クリニックの財務の正確性や表面化していないリスクを調査する手段となります。クリニックの財務状況やリスクを調査することは、譲渡価格の妥当性についての判断材料になりますし、何より将来のリスクを把握し、医院承継の妥当性を判断することは今後の経営にとって重要となります。 ・診療圏の調査 既存クリニックの患者を引継ぐことができるとはいえ、今後の安定した医院経営のためには新規の患者を増やしていくことが大切になります。既存患者の属性を把握しながら、今後どのような集患をしていくべきかの戦略を立て、候補となる開業予定地でどの程度の患者数が見込めるかを調査し、競合の有無をチェックしましょう。 4.おわりに 承継開業は比較的少額な投資により開業できますが、既存クリニックを引継ぐが故にリスクも孕んでいます。悔いのない開業を進めるためにも専門家にご相談されることをお勧めします。 制作年月:2022年12月15日

介護現場のICT・ロボット導入 助成情報や活用状況を解説(2022.12.15)
導入が進む介護ロボット いま介護事業者が押さえておくべきポイントを詳しく解説! <取材先> 公益財団法人テクノエイド協会 五島清国 介護ロボットの助成情報を解説 介護現場のICT・ロボット導入 現状と活用方法を解説 【目次】 ①利用者の立場でICT・介護ロボット活用を ②導入支援事業、各都道府県の助成 最新情報 ③R5年度新たに設置「介護生産性向上総合相談センター」とは 【エトキ】 公益財団法人テクノエイド協会 五島清国企画部長 【リード】 介護現場における「生産性向上」に向けたICT活用や、2011年に始動した介護ロボットの普及促進に向けた取り組みが本格的に推進され始めたのは2018年頃。これ以降、毎年この分野に財源が確保されるようになり、その額や内容も拡充されている。これらの取り組みの現状や、現場での活用は実際どのように進められているのだろうか。ICT、ロボット等の補助事業の実施主体となる各都道府県の状況や補助対象となる機器などについて、公益財団法人テクノエイド協会(東京都新宿区)の五島清国企画部長に話を聞いた。 【本文】 ――生産性向上に向けた、介護現場のICT活用の現状について、ご見解を聞かせてください。 五島 移乗用リフトやセンサー類など、入居系施設での活用事例がよく聞かれますが、在宅系サービスにおける活用も自発的に導入が進んでいるのではという感覚です。施設のように1ヵ所に職員や利用者がいるわけではない環境だからこそ、連絡・連携のためのシステムやアプリが多くの事業所で活用されています。業界団体の勉強会などに参加した際に話を聞くと、事業所とヘルパーの連携、利用者とのマッチングなどにおいてもシステム化が進んでいることがわかります。 導入補助は厚生労働省によるもののほかに、経済産業省のものもあります。厚労省による補助は「地域医療介護総合確保基金」の利用が多く、実施主体は都道府県。2022年度のICT導入支援事業の概要は以下の通りです。 【図①】 (出所:厚生労働省資料より引用) 基本的には2分の1を下限に補助がなされますが、4分の3まで下限を引き上げるための要件も拡充されています。22年度は「ICT導入計画による文書量の半減」「ケアプランデータ連携システムの利用」の2つの要件が拡充されましたが、ケアプランデータ連携システムの本格稼働は23年度のため、この要件は機能していない現状です。 ――介護ロボットの普及についてはいかがでしょうか。 五島 ロボットと定義される①「情報を感知(センサー系)」し、②「判断(知能・制御系)」して、③「動作する(駆動系)」という3つの要素技術を有するもののうち、ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器が「介護ロボット」と呼ばれます。厚労省「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」においては、当協会でも開発・実証フィールド(開発中の介護ロボットの安全性や使用効果の評価・検証等に協力する意向を示していただける介護施設等)の募集をするなどして、介護現場「ニーズ」と開発側「シーズ」のマッチングを支援しています。 現在、ロボット介護機器の重点開発分野に位置づけられているのは▽移乗支援(装着・非装着)▽移動支援(屋外・屋内・装着)▽排泄支援(排泄物処理・トイレ誘導・動作支援)▽見守り・コミュニケーション(施設・在宅・生活支援)▽入浴支援▽介護業務支援――です。実際に製品を比較して選ぶことができる機会は少ないため、当協会では、統一の基準で細かくスペックを示した介護ロボットの「試用貸出リスト」をHP上に掲載しています。また、商品化された福祉用具・介護ロボットの導入を前提に、より多くの介護施設等において適宜・適切な介護ロボット等の利用の推進を図ることを目的とした「介護ロボット等の試用貸出事業」も実施。貸出機器情報一覧は以下の通りで、実際に試用することで利活用の検討につなげてもらいたい考えです。 https://www.techno-aids.or.jp/robot/jigyo.shtml#tab43_detial 当協会では、介護ロボットの導入や補助の活用に関する実態調査を2018年度から実施。今年度11月時点の調査結果も公表しており、4月には年間の確定値も出されます。都道府県ごとの助成制度の一覧も随時更新しています。 https://www.techno-aids.or.jp/robot/file04/result-donyu.pdf なお、地域医療介護総合確保基金を利用した介護ロボット、ICTの導入支援補助額等の概要は次の通りです。 【図②③】 (出所:厚生労働省資料より引用) 2020年度に、一律上限30万円であった介護ロボット導入補助額(1機器あたり)のうち「移乗支援」「入浴支援」のものについては上限が100万円に引き上げられました。ほかにも、見守りセンサー導入に伴う通信環境整備(Wi-Fi工事、インカム)の補助上限は1事業所あたり750万円に引き上げられ、補助台数の制限も撤廃されています。さらに、国が定める一定のスキームを満たすことで、事業主負担を2分の1から4分の3まで小さくすることも可能となりました。 一方で、こうした拡充の実施は23年度までの扱いですので、24年の介護報酬改定において、引き続き補助の範囲内で取り組みを進めていくのか、あるいは報酬体系に組み込んでいくのか、注視して見定めていく必要があるでしょう。 また、製品のIoT化とクラウドシステムの普及により、在宅・施設を問わず介護DXが推進される中、カメラやデータの取り扱いについては、介護現場の生産性向上に向けたICT、ロボット技術の利用を推進するうえで建設的な議論が求められます。 ――23年度以降のICT・介護ロボット導入支援は、どのように進められていくのでしょうか。 五島 厚労省「令和5年度予算概算要求」が9月に出されましたが、地域医療介護総合確保基金において「介護生産性向上推進総合事業」に137億円が計上されています。ここで新たに示されたのは、「介護生産性向上総合相談センター(仮称)」の設置。介護事業所における生産性向上の取り組みに係る各種相談や支援などを一括し、網羅的に取り扱うワンストップ型の総合相談窓口が、各都道府県に設置されることとなります。順次設置に向かうようで、基金からは3分の2の補助がなされる方針です。 24年度以降、全国で同センターの設置に向けて動き出すことが期待されます。基金から細かく実施されている補助のメニューを整理・一括できるため、介護事業者の方々にとってはワンストップで相談できるというメリットがあるでしょう。 当法人は、1987年の設立です。福祉用具や介護ロボットの調査研究、開発の促進、情報提供などを長く行ってきました。「生産性向上」においては、業務の工夫により「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすという捉え方がありますが、介護・福祉は他産業とは異なり「生活の場」であるという認識は重要です。利用者個人の生活において「ムダ」「ムラ」などあって当然だと思います。福祉用具や介護ロボットの活用が、利用者本人にどのように作用するのか、生活機能がどう向上するのかなどについて、今一度考える必要があるでしょう。 例えばリフトは、「コミュニケーションツール」でもあります。寝たきりの人がリフトを使って車椅子に移るということは、見える世界が変わるということ。リフトを動かすのは人の手であり、リフトを動かしているときにはふれあいや会話が生まれます。事業者においては、こうした福祉用具・介護ロボットの活用をどのようにケアプランに落とし込むかを検討し、プラン見直しの際にはしっかりと要・不要を見極めなければなりません。自施設に取り入れる際、どのような活用がどういった効果をもたらすかという視点とともに、当事者の立場における「良い取り組み」を一層追求することが望まれます。 制作:㈱高齢者住宅新聞社 取材年月:2022年11月 プロフィール 五島清国(ごしま・きよくに) 公益財団法人テクノエイド協会 企画部長 ●1993/2~ 公益財団法人テクノエイド協会企画部 福祉用具・介護ロボットに関する調査研究及び情報の収集・提供、開発・普及に関する各種事業、評価、標準化に関する事業を担当

在宅における複合型サービスの新設などを検討へ【介護保険部会】(2022.12.9)
2024年度からの「第9期介護保険事業(支援)計画」に向けた議論で、厚生労働省は11月14日の社会保障審議会・介護保険部会に、「地域包括ケアシステムの更なる深化・推進」に関する論点を提示した。訪問や通所の複数の在宅サービスを組み合わせた新たな複合型サービスや、介護サービス事業者が経営情報を定期的に都道府県知事に届け出る仕組みの創設などを検討課題に挙げた。 介護注目ニュース 地域包括ケアシステムの深化・推進に関する議論は、(1)生活を支える介護サービス基盤の整備、(2)様々な生活上の困難を支え合う地域共生社会の実現、(3)保険者機能の強化-を軸に進められている。 このうち(1)で厚労省は、特に85歳以上人口の急増が見込まれる都市部において居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複数の在宅サービス(訪問・通所)を組み合わせて提供する複合型サービスの新設を論点として提示。既存の定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護などのように機能が類似・重複しているサービスの将来的な整理・統合を見据えた検討も促した。介護保険事業(支援)計画で必要なサービス量を見込む際に、病床の機能分化・連携に伴う需要も勘案し、医療計画との整合を図る必要性も指摘した(資料1)。 要介護1・2の特養への特例入所はばらつきが指摘される運用を適正化 要介護1・2の高齢者のうち、やむを得ない事情で在宅生活が困難な高齢者に特別養護老人ホームへの入所を特例的に認める措置(特例入所)にも言及。地域によって運用にばらつきがあることを問題視し、早急に実態を把握した上で運用の適切化を図ることについて検討を求めた。医療法人に倣って介護サービス事業者にも財務諸表等の経営情報の都道府県知事への定期的な届け出を求める制度を設け、厚生労働大臣がこれら情報のデータベースを整備する案も提示した(資料2)。 (2)では地域包括支援センターの業務負担軽減を進める観点から、センター以外にも介護予防支援の指定対象を拡大することや、居宅介護支援事業所や小規模多機能型居宅介護事業所といった地域密着型の拠点をブランチやサブセンターとして活用することなどを検討課題に位置づけた(資料3)。(3)では要介護認定の有効期間の上限(現行は新規・区分変更申請は12カ月、更新認定は48カ月)の延長の是非について、議論を要請。介護認定審査会の運用では、ICTを活用しての実施を認めている新型コロナ対応の特例的取扱いを感染収束後も恒久的な対応として継続することの検討を求めた。 部会は11月中に個別論点に関する議論を終え、12月上旬から取りまとめに向けた議論に入る。 (資料1)複数サービスを組み合わせて提供する事業者の取組 (出典:厚生労働省 第101回社会保障審議会介護保険部会 参考資料より一部抜粋編集) (資料2)介護施設・事業所等の経営状況の把握について (出典:厚生労働省 第101回社会保障審議会介護保険部会 参考資料より一部抜粋編集) (資料3)地域の在介センター等をサブセンターとして 設置し効果的な地域支援を行っている例(山口県 山陽小野田市) (出典:厚生労働省 第101回社会保障審議会介護保険部会 参考資料より一部抜粋編集) (2022年11月14日時点での情報に基づき作成) 第8期で重要視された介護人材確保や業務効率化への更なる推進を 介護保険事業(支援)計画とは、介護保険の理念である高齢者の自立支援・重度化 防止等に向けた各市町村の取組を推進するため、実態把握・課題分析を踏まえ、地域における共通の目標を設定し、関係者間で共有するとともに、その達成に向けた具体的な計画のことであり、保険給付の円滑な実施のため、3年間を1期として策定している。現在は第8期(2021年度から2023年度まで)であり、2024年度から始まる第9期は、2024年度診療報酬・介護報酬の同時改定とも時期が重なることから、注目を集めている。 ちなみに、第7期の基本指針のポイントは、①高齢者の自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化の推進、②「我が事・丸ごと」、地域共生社会の推進、③平成30年度から同時スタートとなる医療計画等との整合性の確保、④介護を行う家族への支援や虐待防止対策の推進、⑤「介護離職ゼロ」に向けた、介護をしながら仕事を続けることができるようなサービス基盤の整備-であった。第8期は、①2025・2040年を見据えたサービス基盤、人的基盤の整備、②地域共生社会の実現、③介護予防・健康づくり施策の充実・推進(地域支援事業等の効果的な実施)、④有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅に係る都道府県・市町村間の情報連携の強化、⑤認知症施策推進大綱等を踏まえた認知症施策の推進、⑥地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び業務効率化の取組の強化、⑦災害や感染症対策に係る体制整備-の7ポイント。 特に、⑥「地域包括ケアシステムを支える介護人材確保および業務効率化の取り組みの強化」は、厚労省が総合的な介護人材確保対策や介護現場革新会議を推進しており、介護保険部会の委員も特に重要視していた。人材確保対策としての介護職員の処遇改善や業務効率化へ繋がるICTの活用等、徐々に進んでいる印象はあるが、更なる推進への計画策定に期待したい。 (編集:株式会社日本経営)

介護現場における『営業の基本』(2022.12.1)
<著者> 株式会社ねこの手 代表取締役 伊藤亜記 「利用者を増やし、稼働率をあげるにはどうしたら良いか?」という相談が介護事業者からは寄せられます。介護保険が施行され22年経ちましたが、介護現場で活躍する方のなかには、「営業」という言葉に馴染めない人も多いと思います。今回は、「営業の基本」について紹介します。 1.営業の3原則 ⑴営業は「間接営業」 私達にとってお客様は2種類にわけられます。一方は直接サービスを使う「お客様」、もう一方は、そのお客様を紹介して下さる取引先としての「お客様」です。特に、取引先の信認や評判に関わるリスクを回避するよう努めることが営業の第一歩です。 ⑵営業は「数」と「質」 重要なポイントを逃して「数」ばかりに目を向けた営業を繰り返しても顧客紹介には至りません。また、「内容」ばかりに目を向けて件数が少なければ、顧客紹介の確率も一向に上がりません。常に、数と質の両方を追求する姿勢を持ってください。 ⑶「印象」→「内容」→「信頼」→「紹介」 顧客紹介に繋げるためには、まず、私たちが担当者に「良い第一印象」を持ってもらえるように対応して信頼を得ることが不可欠です。その後のサービス提供をきちんと実施することはもちろんのこと、「継続フォロー」としての「報告・連絡・相談」があってこそ、磐石な関係が構築されるのです。 2.営業の基本 ~日々の心がけで顧客のニーズ掘り起こし~ ⑴第一印象は、「0.6秒」で決まる! 会って最初の一瞬で印象は決まってしまいます。髪形・服装・身だしなみ・振舞い・声のトーンなど、最初の一瞬を大事にしましょう。 ⑵PUSH型(サービス売込型)の営業は止めましょう! 自分の担当しているサービスの売込に注力しすぎると、取引先担当者が発している顧客ニーズを見逃してしまいがちです。過度な売込は止めましょう。 ⑶「エピソードトーク」(成功事例)は5つ以上用意する! 私たちと取引先担当者が最も共感を得られるのは、お客様やサービスに関する話題です。 「どのサービスを、どのように利用して、どのようにお客様の自立支援に結びついたのか」など、最低でも5つ以上の成功事例を用意し、訪問先の状況(担当者のタイプや地域性)に合わせた事例を伝えます。 当然、お客様のプライバシー保護と、嘲笑・侮蔑に感じられることのないよう配慮することは絶対条件です。具体的なイメージを元にした話を進めることが、担当者との心理的な距離を縮めるきっかけとなります。 ⑷スケールメリットや数の論理を前面に出さない! 謙虚に進めていく為にも、スケールメリットを前面に出した話は厳禁です。あくまで「地域において、皆様に支えられながら事業展開させて頂いている」という認識で話しましょう。 ⑸「ありがとうございます」を意識! 「ありがとうございます(お礼)」と「すみません/申し訳ありません(謝罪)」は、違う言葉として使い分けてください。「今日は、お忙しいところお時間を頂いて○○○○○」。 皆さんは○に当てはまる言葉はどちらを使っていますか?ほとんどの方は何気なく「すみません/申し訳ありません」を使いがちです。全ての場面において、「ありがとうございます!」を心がけて使うようにして下さい。相手の反応が変わり、自分の心理状況も大きく変化します。 ⑹会話のキャッチボールを心がける! 一方的に話をするよりは、様々な話題で会話が弾むことが重要です。話題として最も良いのは、お客様自身のことや介護保険などであることを忘れないでください。 難しいサービスのことではなく、今、目の当たりにしているお客様の状況を仮定し、ニーズの掘り起こしを進めましょう。その中で、「担当者が気づいていなかった」「担当者が最も重視していた」内容に合致することで、担当者との連帯感は格段に上がります。 3.営業の基本 ~コミュニケーションの一工夫で信頼関係構築~ ⑴相手にとことん集中! 話を進める上で、最も重要なのが「相手が何に興味を持っているか」を見極めることです。相手の「目の動き」「手の動き」「メモの取り方」「質問の進め方」などにその兆候が顕著に現れます。 それらを見逃さないためには、例えば資料やタブレット端末を使って説明する際にも、相手に目を配りながら話を進めることが必要です。その準備として、説明の内容は完全に把握しておく必要があります。時間を忘れるくらい、とことん相手に集中しましょう。 ⑵「なるほどね」「そうそう」などの種類の反応はチャンス! 「驚き・発見・共感」などの意思表示が見られた場合、その日の訪問営業は概ね成功です。 逆に、このような反応を引き出すためには地域で起こった事や介護保険関連のニュースなど、様々な話題の引出しを持って面談に臨む必要があります。 ⑶「~ですか?」よりも「~ですよね」形式! 相手に対して判断を仰ぐ質問は、答えをネガティブにさせる傾向があります。反対に、相手に同意を求める形式の内容は、よほど大きく否定される内容ではない限り、「そうねぇ」から「そうそう」まで肯定的な返答を導き出しやすいものです。 また、最初の質問であればあるほど、ある程度抽象的な質問の方が、ポイントを小さく絞った質問より、簡単に返答いただけることが多いです。 例えば、「グループホームに興味を持たれているお客様はいらっしゃいますか?」と言う質問よりも、「認知症をお持ちのお客様、いらっしゃいますよね」のほうが、肯定的で、次に続く返答を導きやすいものです。 ⑷「YES・NO」形式で返答できる簡単な質問から! 一種の「フット・イン・ザ・ドア」テクニックの応用として、「簡単な承諾=小さな答えの導き出し」を繰り返すことで、大きな情報の引出しやサービスに依頼に繋げることができます。 最初に「YES」と答えた相手は、次の依頼に対して否定する確率が数段下がってくることは、科学的に証明されています。 例えば、お客様に関する情報を引き出す際、「担当CM名」や「要介護度」などの個人情報の核心に迫る質問よりは、「男性の方ですか?」といった限りなく一般的な質問のほうが、応えて頂き易いものです。 ⑸「両面呈示」の説得力! 聞かれて都合の悪い点(デメリットなど)は、こちらから話をすることで説得力が増すことがあります。 物事には、全てメリットとデメリットがあります。しかし、サービスを利用して頂きたいと思うあまり、そのメリットの面しか話さない場合があります。これを片面(一面)呈示と呼びます。 しかし、説得力のある話をする場合には、デメリットも敢えて呈示することの方が効果的です。 例えば、洋服を買いに行った時、全ての商品が「お似合いですよ!」と言う販売員よりも、「こちらの柄は、あまりお顔映りが良くないですね」と、ある程度のネガティブな情報を呈示する販売員の方が信用したくなるのではないでしょうか。 但し、信頼を損なうと判断される可能性のある情報を、むやみに呈示することは却ってマイナスになる場合があるので、必ずカウンターパートとなるポジティブ情報を吟味して活用して下さい。 ⑹一度会えたからといって窓口を増やすのはご法度! 営業していると、話を聞いてくれる取引先とそうではない取引先に分かれます。話を聞いてくれる取引先は「好印象で関係が出来ている」と思いがちで、次々と違う担当者を連れて同行営業を重ねる人がいます。これは、タイミングを間違うと、折角出来つつある関係を崩す危険性がありますので注意してください。 日々の営業活動で、まずはできることから始めてみましょう!

スタッフが退職しやすいタイミングと退職を防ぐモチベーションアップ策(2022.11.14)
<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 人材の確保は歯科医院にかぎらず、あらゆる業界に当てはまる経営課題となっていますが、確保した人材に定着してもらうことも重要です。その裏返しとして「離職防止策」があります。退職しやすいタイミングを見計らった対策も講じる必要があるようです。 また、スタッフの退職理由は「仕事や職場への不安」「組織からの評価」「将来のキャリア」など、職歴に応じて変化していきます。スタッフの属性に合わせたモチベーションアップ策が必要になるようです。 スタッフがなかなか定着してくれないというお悩みを多くの院長から伺います。苦労して採用したスタッフが半年もしないで退職してしまったり、一人前になったスタッフが他のクリニックへ転職してしなったりして困っているというのです。 スタッフの退職は医院にとって痛手であるだけでなく、スタッフ自身にとっても早期退職や転職を繰り返すことは、キャリアを積むうえでマイナスになります。 目次 01:スタッフが退職しやすいタイミング 02:入職3カ月以内の新人の場合 03:入職2~3年目の中堅スタッフの場合 04:入職5年以上のベテランの場合 05:スタッフの成長段階によって対応が変わってくる 06:退職を防ぐモチベーションアップ策 07:入社3カ月以内のスタッフへの対応法 08:入社後2~3年目のスタッフへの対応法 09:入社5年以上経過したスタッフへの対応法 10:まとめ スタッフが退職しやすいタイミング 一般的に、入職後3カ月以内、入職後3年のタイミングでの退職が多いと言われているほか、勤続が長いベテランスタッフが退職する場合もあります。それぞれの原因を整理してみます。 入職3カ月以内の新人の場合 入社したてのスタッフは不安と緊張でいっぱいです。職場にも仕事にも慣れていません。先輩が声を掛けてフォローしてくれる職場であればすぐに溶け込み、仕事も少しずつ慣れていきますが、放っておかれるような職場であれば、自分の居場所が見つけられず、すぐに退職してしまいます。また、採用時と入社後の条件が違った場合にも、早期退職します。 入職2~3年目の中堅スタッフの場合 仕事を一通りできるようになり、一人前との戦力として認めて欲しい時期です。この時期に、院長や先輩スタッフが出来ていない事を注意し、指導ばかりしていると、いつまでたっても認めてくれないと職場への不満がたまり、仕事への意欲も低下してしまいます。 入職5年以上のベテランの場合 歯科医院のなかで見本となり、後輩の指導を期待される時期です。一方で仕事への慣れとマンネリ感も出てくるため、常に「このままここで働き続けていいのか……」という悩みを抱えている可能は高いです。そのような時に、院長が「あなたなら出来て当たり前」という態度で接していると、スタッフは評価されているのか、何を期待されているのかわからず、モチベーションが下がっていきます。 スタッフの成長段階によって対応が変わってくる このように、スタッフの不安や不満、意欲の低下は、マズローの欲求段階説で考えると理解しやすくなります。心理学者マズローは、人間の欲求には5段階あると提唱しました(*図1)。 ①の入社3カ月以内のスタッフは安全欲求の段階にあります。職場が安心できる場所であれば安全欲求が満たされ、1つ上位の社会的欲求の段階に移ります。職場のメンバーから認められることで社会的欲求が満たされると、さらに上位の尊厳欲求の段階に入ります。 *【図①】マズローの欲求段階説 退職を防ぐモチベーションアップ策 スタッフが退職を防ぐためには、成長の段階に対応を決めておくとよいでしょう。入社したばかりのタイミングで起こりやすい退職と、ある程度仕事を覚え一人前になったのちの退職、ベテランスタッフの退職は、それぞれ背景が違っている可能性が高いです。 入社3カ月以内のスタッフへの対応法 新人は「仕事を覚えられるか」「職場の人間関係に馴染めるか」という不安を抱いています。この2つの不安を解消するため、以下のような方法があります。 1.業務手順をマニュアル化する 新人はマニュアルがあると安心します。先輩社員にとっても、新人受入れの準備が楽になるうえ、歓迎しているという意思表示にもなります。 2.チェックリストを用意する チェックリストによって、スキル習得の目標設定と進捗状況が分かります。きちんとした教育の仕組みがあると安心です。 3.3カ月以内に実技試験をする 入社後早い時期に実技試験に合格することで、新人に自信がつきます。先輩は、新人の練習に付き合うことで、新人と関わる機会ができます。 入社後2~3年目のスタッフへの対応法 入社2~3年目になると、自分の仕事は一通りこなせるようになります。新人扱いがなくなり一人前に扱われるようになる一方、できないことを注意、指摘されることが増えます。 スタッフが抱いている「自分はこの仕事に向いているのか」「自分は役に立っているのか」「このまま続けていいのだろうか」という不安を解消するためには以下のような方法みがあります。 1.年に1回、スタッフとの個別面談を実施する スタッフの日頃考えていること(困っている事や要望)を聞き、その後に院長が期待している役割や目指してほしいことを伝えます。 2.業務改善の役割を任せる 日常業務以外に業務改善係を任せます。この取り組みを通じて、改善する方法を考え、実行し、改善し成果を上げるプロセスを体験することができ、仕事の幅が広がります。 3.外部研修への参加を支援する このままでよいのか迷っているスタッフには、外部研修への参加させることも考えましょう。スキルアップの達成感を味わえ、学ぶ意欲を支援する制度を整えるのも一つの方法です。 入社5年以上経過したスタッフへの対応法 入社5年目以上のスタッフは医院の戦力となっているはずです。医院全体のことを考えてくれる人か、自分のことだけを考える人かに分かれる時期でもあります。自分の経験を後輩に伝え、育成してくれれば、経営を支える存在となります。 1.リーダーに任命する 組織のリーダーとして公式に任命します。公式に任命することにより、リーダーとして活動しやすくします。 2.リーダーの役割を明確化する リーダーに任命されたスタッフの不安を解消するためにも、リーダーの役割、期待をはっきりさせます。 3.手当をつけ評価する リーダー手当をつけることによってモチベーションを上げるとともに、役割を評価していることを伝えます。後輩にとっては、目指すべきポジションとなります。 まとめ このようにスタッフの成長の段階に応じ、適切な対応は変わってきます。「そこまで気にしなきゃいけないの⁉」という意見もあるかもしれませんが、そこまで院長が気にしていただきたいのです。歯科医院は、院長とスタッフで構成される組織です。組織のメンバー次第で、できることも大きく変わり、雰囲気も違ってきます。さまざまな取り組みをご紹介しましたが、成果はすぐに表れないかもしれません。しかし、組織は徐々に変わってくるのです。ぜひ長い目で見てください。 制作年月:2022年11月14日

ICTを核に生産性向上 やさしい手の「財務管理手法」に迫る(2022.11.24)
<取材先> 株式会社やさしい手 同社が取り組む財務管理テクニックやICT活用とは? 「人依存」脱却し、サービスの持続可能性追求 訪問介護やデイサービス、ショートステイ、訪問看護など在宅系サービスを主軸に、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護、住宅型有料老人ホームなどの介護事業16種、全国で約300事業所を手がけるやさしい手(東京都目黒区)。介護事業者向けコンサルティングやシステムの開発・販売・導入サポートまで幅広く展開している。今回は、同社が取り組む財務管理のテクニックやICT活用について、管理本部の有賀和敏本部長、通所統括支社の下田哲也支社長、コンサルティング事業本部ソリューション事業部の前田和世副部長の3名に話を聞いた。 【本文】 ――2年前より、固定費のコントロールに向けた各種取り組みを行っていると聞きました。 有賀 介護事業を運営する上での固定費は、その多くを人件費が占めます。固定費の削減は利益率を上げるためにも重要な取り組みと捉え、全社で取り組んできました。 なお、固定費は売上高の増減に関わらず発生する費用であるのに対し、変動費は売上高の増減に比例して発生する費用になります。固定費を圧縮するほど、利益が出やすい組織になるということです。 当社の基幹事業となる訪問介護における人材は、大きく正社員と非常勤社員(登録ヘルパー)の2つに分かれます。正社員は固定費、非常勤社員は変動費の扱いになるため、正社員の比率を下げ、非常勤比率を上げることで変動費率を高めています。 介護事業は、3年に一度の介護報酬改定の影響で収益が変動する上、昨今のコロナ禍など災害・社会情勢による影響も大きく受けます。進展する超高齢社会においても、ニーズが高まる一方で、高齢者数の変化などには地域差も大きい。こうした不確実性のリスクに柔軟に対応しつつ、利用者の方々にサービスを提供し続けられる会社であるために、当社ではこうした策を取っています。 ニーズが高まっている繁忙期に確保した人材が、その後余剰となってしまったり、研修・教育のコストがかかりすぎてしまったりするリスクへの対応です。 他方で、訪問介護事業では人材確保が難しいと言われて久しい現状がある中、主婦層などには、時間に柔軟で働きやすい登録ヘルパーとしての雇用に需要があるという実感もあります。 就職希望者の生活に合った形で、無理なく働き続けてもらえる環境整備にも力を入れています。 ――これらのコントロールを行いつつ、サービスの質を維持・向上するための仕組みとは。 有賀 以前は拠点ごとに勘定科目などを見てきましたが、これをサービスラインごとに見られるようにした上で、科目ごとの「標準ライン」を設定しました。例えば住宅系サービスでは、施設規模に応じて朝、昼、夜の時間帯ごとに最適な人員配置基準を定め、その中で収めるよう取り組んでいます。 サービスごとにこうした細かいルールを作り、それぞれの勘定科目を横串で見ることで、「標準ライン」を超えてしまっている拠点について検討することができます。この際、変動比率で見たり、損益分岐で見てみたりと様々な角度から見ることで異常値が見えてくるので、「売上に応じた投資になっているか」常に確認することが可能です。 同時に、この「標準ライン」はサービス品質を守るものでもあります。これを下回っているようなケースもすぐに拾い上げ対応することが可能です。会社の持続可能性と、サービスの質、どちらも維持する上で、当社にとって重要な指標です。 ――デイサービスにおける、コロナ禍の影響と対応について教えてください。 下田 ここにきて、第7波で閉鎖する事業所が増えているように感じます。当社にとっても新型コロナ長期化の影響はもちろんありますが、常に「稼働率を落とすことなく通常営業を続ける」ための取り組みを行っています。 職員にはワクチン接種を積極的に進めることで罹患の際にも重度化しないよう管理していることに加え、2年前の新型コロナ流行直後よりICTも活用しています。「ばいたるイルカ」という、出勤前に職員が体温を入力することで発熱者を把握するためのシステムを自社開発し活用してきました。 出勤時に検温を行う場合、万が一陽性であった際すでに事業所にいることがリスクになりますが、システムを活用することで出勤前に情報を共有することができます。発熱した職員への速やかな検査誘導などフォローも可能で、蔓延防止に寄与してきました。 「ばいたるイルカ」は外販も行っており、導入には、各都道府県で実施しているコロナ禍の介護事業所等を対象としたサービス提供体制確保のための補助金も活用できます。 ――積極的にシステム導入を行っていますが、その真の目的とは。 前田 職員の負担軽減、業務の可視化・効率化など目的は様々ありますが、最も重要なのは「業務の標準化」だと考えます。 介護の仕事は「人依存」の側面が強いため、「人」ごとの業務のバラつきが収益にも影響します。例えば、ある登録ヘルパーが月170時間勤務したというデータがあるとして、そのうち実際にサービス提供をしたのは何時間か、という分析まで可能な仕組みが、当社にはあります。こうしたデータを基に、より生産性を上げていけるということです。 現在、デイサービスの送迎ルートの作成でもシステムを活用しているところです。他システムとの連携などまだ課題はありますが、ゆくゆくはルート作成業務を、人ではなくシステムが行えるよう活用していきたい考えです。 こうしたルート作成やシフト作成などは、立場のある職員が行うケースが多いですが、これも「人依存」と言えます。これらの業務はAさんにしかできなかったが、システムを活用することでBさん、Cさんもできるようになる。 これが業務の標準化であり、こうして生まれた時間によって、AさんはBさん、Cさんの育成に時間をかけることができるようになります。「業務の標準化」が「サービスの質の向上」に直結するケースと言えるでしょう。 ほかにも、訪問介護では、ご利用者様のサービス予定とヘルパーの就労予定を照らし合わせ、最も近くにいるヘルパーをボタン1つで派遣する、といったことが1つのシステムでできるものもあります。当社は基本的に開発側なので補助金を活用できませんが、こうしたシステムをパッケージで取り入れる事業者は、経済産業省や各都道府県が実施しているICT導入補助金を活用できます。 また、当社では、各種処遇改善加算の使途の管理にもシステムを活用しています。先にお話ししたように、職員それぞれの生産性なども把握可能なので、頑張っている人に頑張った分支払う制度、評価に基づいて支払う制度など手当を15種類創設し、運用しています。 本社直轄で行うプロジェクトチームの評価などもあり、職員それぞれのやる気や生産性の向上につながる仕組みになっています。「人」に依存せず、「システム」にも依存しない、当社ならではの運営を目指していく考えです。

クラウド会計ソフト導入を検討されている方必見!税理士から見たメリットと思わぬ落とし穴とは?(2022.11.21)
<著者> 米本合同税理士法人 昨今、弊社でも従来のPCインストール型の会計ソフトに加えて、クラウド型の会計ソフトを選択するお客様も増えてきました。 今回はクラウド会計ソフトの導入にあたり、メリットや注意点についてお話しします。 目次 ■クラウド会計ソフトを選ぶメリット ■クラウド会計ソフトの分類 ■年間の売り上げが一定規模以上の企業は導入に注意が必要 ■クラウド会計ソフトを過信してはいけない ■クラウド会計ソフトを選ぶメリット 1.入力の自動化で手間を省くことができる 銀行口座やクレジットカードの明細情報を、インターネットを通じて自動取得し、あらかじめ指定しておいたルールに従って自動で仕訳を行えます。対応するPOSレジや、大手通販サイトの売上情報を連携して仕訳を作成することもできます。入力の二度手間や転記ミスを防止でき、手入力を大幅に減らすことで会計業務の手間を省けます。 2.インターネットにつながる環境があれば利用できる インターネットにつながる環境があれば利用できるので、場所を選ばずに利用できます。在宅勤務などのリモートワークにも柔軟に対応が可能です。基本的にパソコンの機種やOSを問わずに利用できるので、新たに専用の機器を用意する手間もかかりません。 3.リアルタイムにデータを活用できる ソフトとデータの両方がクラウド上にあるメリットを活かして、複数台での同時利用ができます。例えば、経理担当者が複数いる企業であれば効率よく業務分担ができます。経営者が自社の資金繰りなどの状況を手元のスマートフォンでリアルタイムに確認するといったことも可能です。 4.経理領域との連携で業務改善ができる クラウド型の経費精算、請求管理などの機能を組み合わせることで、更なる経理業務の省力化や生産性の向上が可能です。 ■クラウド会計ソフトの分類 クラウド会計ソフトは成り立ちにより大きく2つに分類できます。 1.従来のPCインストール型の会計ソフトをクラウド化したもの(MJS、弥生など) 従来のPCインストール型のソフトの使い勝手を踏襲しつつ、クラウド化によるメリットを加えたものです。既存の利用者に配慮して操作性や機能は従来の製品と大きく変わらないように作られています。 既にいずれかの会計ソフトを利用中で、使い慣れた操作方法でクラウド化によるメリットを活用されたいお客様や、基本的な簿記の知識がある方にお勧めです。 2.完全クラウド型として新たに開発されたもの(マネーフォワード、freeeなど) 一般的な会計ソフトの基本要件を備えながら、クラウドを活用して入力を自動化し、手入力をできるだけなくして会計業務の負担を減らすことを目的に作られています。 また、初心者向けの機能として、仕訳作成時にAIを活用した勘定科目選択のサポート機能も備えています。会計と連携する経費精算や請求管理などの機能を標準で一通り備えていますので、これからはじめて会計ソフトを利用する方にお勧めです。 利用料金は、使用する機能や従業員数によって変動します。 クラウド会計ソフトは利用期間に応じて料金を支払うサブスクリプション型のため、買い取り型が一般的なPCインストール型の会計ソフトに比べると割高になります。 また、経費精算などの経理領域の機能は、利用する従業員数に応じて追加料金が必要になるケースが殆どですが、料金に見合うだけのメリットがありますので、会計業務の省力化だけでなく経理業務の効率化も含めて検討してはいかがでしょうか。料金は各メーカーのWebサイトで試算が可能です。 ■年間の売り上げが一定規模以上の企業は導入に注意が必要 現状のクラウド会計ソフトはPCインストール型の会計ソフトに比べると操作性が劣ります。また仕訳の入力件数が多くなると処理が遅くなるケースもあります。 クラウド会計ソフトの導入により、日常の入力業務は省力化できますが、年間の仕訳件数が一定の規模以上になりますと、操作性の問題などで月次決算の際に思わぬ時間が取られるなど、逆に業務負担が増えてしまうことも考えられます。 そのような場合は、まずは経費精算や請求管理などの経理領域からクラウド化し、会計処理は従来のPCインストール型の会計ソフトを使う方法もご検討ください。 最近はPCインストール型の会計ソフトでも、銀行口座やクレジットカードの明細情報を連携できる製品が増えています。 クラウド会計ソフトはメリットだけでなく、制限も多くあります。経理業務の何もかもをクラウドで行おうとすると、業務手順をクラウドに合わせて変える必要もでてきます。 業務規模が大きいと自社だけでの対応が難しいケースも考えられますので、専門のコンサルタントへの相談もご検討ください。 ■クラウド会計ソフトを過信してはいけない クラウド会計ソフトを導入することで、多くのケースで業務の手間を省くことできますが、それで正しい会計処理ができるかは別です。 例えば、仕訳自動化の登録の際に処理方法を誤って登録してしまうと、誤ったまま自動で仕訳が繰り返し登録される恐れがありますし、取込方法を間違えると仕訳が二重で計上されてしまうといったこともあります。他にも、経理初心者の方がAIによる判断を過信すると、処理を誤るケースも考えられます。 現状では、従来の会計ソフトと同様に判断は人が行う必要があるため、利用には正しい経理知識が必要になります。 米本合同税理士法人では各ソフトウェアメーカーの認定パートナーとして、お客様の導入をサポートいたします。導入をご検討の際はぜひご相談をいただければと思います。 (他の情報についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/column/index.html (医療関係情報についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/iryou/index.html

【補助金情報】2022年度版 東京都の診療所・クリニック(医科・歯科) が活用できる補助金を紹介(2022.11.9)
<著者> 芙蓉総合リース株式会社 東京都のすべての補助金が掲載されている「TOKYO補助金サーチ見える化ボード(運営者:東京都)」の情報のなかから、補助対象者が診療所(医科*、歯科)の補助金情報をご紹介いたします。是非、診療所経営でご活用ください。 *訪問看護を含む。 *補助対象者が病院のものは除いております。 *コロナに伴う補助金において、申請期限が過ぎているものは除いております。 目次 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所 ■ 目的:保育所設置促進(工事費補助) ・院内保育事業運営費補助金 ・院内保育事業運営費補助事業 ■ 目的:看護職員 離職防止(研修費用補助) ・東京都新人看護職員研修事業費補助金(民間団体) ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護 ■ 目的:訪問看護支援(雇用支援補助) ・令和4年度訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業(補助金) ■ 目的:訪問看護師の勤務環境の向上(給与補助) ・令和4年度訪問看護ステーション代替職員(研修及び産休等)確保支援事業≪産休等代替≫ ▶ 給付対象診療所:医科・歯科 診療所 ■ 目的:外国人患者受入れ(整備補助) ・東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業補助金 ~~<令和4年度 交付終了>~~ ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護 ■ 目的:教育体制の強化(人件費補助) ・*令和4年度終了*令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所 ■ 目的:医療提供体制の改善(研修費用補助) ・*令和4年度終了*東京都専門医認定支援事業補助金 ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助) ・*令和4年度終了*東京都産科医等確保支援事業補助金 / 分娩手当に係る補助金 ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助) ・*令和4年度終了*東京都産科医等育成支援事業補助金 / 研修医手当に係る補助金 ■目的:オンライン診療促進(設備投資補助) ・*令和4年度終了*東京都オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業補助金(民間団体) ▶ 給付対象診療所:歯科 診療所 ■ 目的:在宅歯科診療促進(設備整備補助) ・*令和4年度終了*東京都在宅歯科診療設備整備費補助金 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所 ■ 目的:保育所設置促進(工事費補助) ・院内保育事業運営費補助金 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 目的 病院内保育所の施設整備に要する経費の一部を補助することにより、病院内保育所の設置促進を図り、医療従事者の確保、離職防止及び再就業の促進に資することを目的とする。 ▶ 補助対象経費 1.病院内保育所を新たに開設するために行う新築、増改築及び改修に要する工事費及び工事請負費 2.既存の病院内保育所の新築及び増改築に要する工事費及び工事請負費 ▶ 基準額 次に掲げる基準面積に下記単価及び所要の調整率を乗じた額とする。 ・基準面積 収容定員(ただし、30人を限度とする。)×5平方メートル ・1平方メートル当たりの単価 鉄筋コンクリート 155,800円 ブロック 136,400円 木造 155,800円 ▶ 補助率 0.66(ただし、都の予算の範囲内。) ▶ スケジュール 時期 内容 4月上旬 事業計画提出 5月頃 都審査会 6月頃 内示通知 (内示後に着工) 意向調査(翌年度補助金を受ける意向の有無を回答) 11月頃 交付申請 1月頃 交付決定 4月上旬 実績報告 5月中旬 額の確定(補助金の支出) 9月頃 消費税仕入控除税額報告提出 ※上記スケジュールは見込みであり、前後する可能性があります。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 病院内保育所運営事業について ・院内保育事業運営費補助事業 ▶ 目的 都内の病院及び診療所に従事する職員のために院内保育施設を運営する事業について助成し、医療従事者の離職防止及び再就業を促進するとともに、医療機関による入院治療の必要はないが、安静の確保に配慮する必要がある集団保育が困難な児童の保育(以下「病児等保育」という。)を行うことを目的とする。 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 補助対象経費 区分 保育児童数 保育士等職員数 保育時間 月額保育料 A型特例 1人以上 2人以上 8時間以上 10,000円以上 A型 4人以上 2人以上 8時間以上 B型 10人以上 4人以上 10時間以上 B型特例 30人以上 10人以上 10時間以上 ▶ 基準額 各病院内保育施設につき次により算定した額より別に定める病院内保育施設の運営に係る設置者の負担能力指数による調整率を乗じて得た額の合計額 基準額=[基本額{( ア × 180,800円 × 12月 )- イ }× ウ ]+ 加算額(エ) ア 型別人員(A型特例:1人、A型:2人、B型:4人、B型特例:6人) イ 保育料収入相当額 ウ 負担能力指数による調整率 エ 加算項目による加算額 ・24時間保育 23,410円 × 運営日数 ・病児等保育 187,560円 × 運営月数 ・緊急一時保育 20,720円 × 運営日数 ・児童保育 10,670円 × 運営日数 ・休日保育 11,630円 × 運営日数 ▶ 補助率 2/3(ただし、都の予算の範囲内。) ▶ スケジュール 時期 内容 6月頃 意向調査(当該年度補助金を受ける意向の有無を回答) 12月から1月頃 交付申請 3月頃 交付決定(補助金の支出) 5月頃 実績報告 7月から8月頃 額の確定(補助金の返還) 9月頃 消費税仕入控除税額報告 ※上記スケジュールは見込みであり、前後する可能性があります ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 病院内保育所運営事業について ■ 目的:看護職員 離職防止(研修費用補助) ・東京都新人看護職員研修事業費補助金(民間団体) ▶ 補助対象 診療所 この補助金の交付対象は、新人看護職員を採用する都内の病院等とする。ただし、国立の病院及び国立高度専門医療研究センターを除く。 ▶ 目的 都内の病院等が実施する新人看護職員、新人保健師及び新人助産師が基本的な臨床実践能力を獲得するための研修に要する経費を補助することにより、新人看護職員研修体制の整備を促進し、看護の質の向上及び早期離職防止を図る。 ▶ 補助対象経費 新人看護職員研修の実施に必要な経費(研修費用、教育担当者経費) <詳細>この補助金の対象とする経費は、別表の第2欄に定める経費とする。 ▶ 基準額 1.別表の第1欄に定める基準額と第2欄に定める対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。 2.前項により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に別表の第3欄に定める補助率を乗じて得た額を都の予算の範囲内で交付するものとする。ただし、算出された額に 1,000 円未満の端数が生じた場合は、これを切り捨てるものとする。 ▶ 補助率 1/2 ▶ スケジュール 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 東京都新人看護職員研修事業 【過去事例】有床診療所における研修事例(平成23年度の事例) 岩手県:一関中央クリニック[176KB] 埼玉県:鶴ヶ島在宅診療所[198KB] 和歌山県:紀の川クリニック[247KB] ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護 ■ 目的:訪問看護支援(雇用支援補助) ・令和4年度訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業(補助金) ▶ 補助対象 診療所 ① 介護保険法第41条1項本文の指定を受けている者で、同法第8条第4項に規定する訪問看護を行う事業者であること(※みなし指定の病院及び診療所は含まれません。)。 ② 対象となる訪問看護ステーションの所在地が都内であること ③ 指定から1年以内で当該訪問看護ステーションに事務職員の配置がないこと。ただし、令和3年度本事業を活用して新たに配置したステーションは対象とする。 ▶ 目的 訪問看護ステーションの労働環境の改善を図るため、小規模な訪問看護ステーションが新たに事務職員を雇用し、看護職員の事務負担を軽減することで、看護職員が専門業務に注力できる環境を整備することを支援し、もって在宅における療養環境の向上と地域包括ケアの推進を図る。 ▶ 補助対象経費・基準額・補助率 項目 対 象 経 費 上限額 補助率 事務職員 給与費 事業計画に基づき新たに雇用する事務職員の人件費 (給料、報酬、賃金、法定福利費、福利厚生費、賞与及び手当含。) 1,041円(時) 10/10 交通費 訪問看護ステーションが負担する事務職員の交通費 800円(日) ▶ スケジュール 提出期限:令和4年5月31日(火) ※ただし、6月1日(水)以降に新規開設する事業所等は、事務職員を雇用しようとする月の前月10日までに、都担当者にご連絡の上提出してください。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 【補助金】令和4年度訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業について ■ 目的:訪問看護師の勤務環境の向上(給与補助) ・令和4年度訪問看護ステーション代替職員(研修及び産休等)確保支援事業≪産休等代替≫ ▶ 補助対象 診療所 (1)研修代替事業 当該訪問看護ステーションの業務に従事する保健師、助産師、看護師又は准看護師について、交付申請の時点において、常勤換算方法で2.5以上かつ7未満となる員数を配置していること。 (2)産休等代替事業 当該訪問看護ステーションの業務に従事する保健師、助産師、看護師又は准看護師について、交付申請の時点において、常勤換算方法で2.5以上かつ7未満となる員数を配置していること。 ▶ 目的 訪問看護ステーションに勤務する看護職員が研修等を受講する場合又は、出産、育児又は家族の介護のため長期間にわたって休業する場合に、当該訪問看護ステーションが代替職員の確保にかかる経費を支援することにより、訪問看護師の勤務環境の向上及び定着の推進を図り、もって在宅における療養環境の向上と地域包括ケアの推進を図るため、東京都(以下「都」という。)が予算の範囲内で補助するために必要な事項を定めることを目的とする。 ▶ 補助対象経費 代替職員に支払う給与費等(1時間当たり3,200円上限) ▶ スケジュール 提出期限:事業計画書提出期限 令和4年5月31日(火) ※ただし、上記締切日を過ぎた後に開設したステーション等は、研修を始めようとする月の前月10日までに、都担当者まで連絡の上、申請すること。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 【補助金】令和4年度訪問看護ステーション代替職員(研修及び産休等)確保支援事業≪産休等代替≫ ▶ 給付対象診療所:医科・歯科 診療所 ■ 目的:外国人患者受入れ(整備補助) ・東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業補助金 ▶ 目的 外国人が言葉や文化の隔てなく、症状に応じて安心して医療機関を受診できるよう、医療機関が外国人患者を受入れるに当たり必要な整備への補助を行います。 ▶ 補助対象 診療所 都内医療機関(診療所を含む。)のうち「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」に選定されている医療機関又は「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」への応募を検討している医療機関。 >>>補助対象 医療機関リストはこちら(2022年10月時点、都内医療機関に限る)<<< ▶ 補助対象経費 ア 多言語対応ツールの導入 受付・会計、診療、検査、入院の各場面において利用できる多言語対応ツール (会話集や指差しツール、翻訳機、通訳機能等を備えたタブレット端末)等の作成又は導入に係る費用 イ 院内文書の多言語化 院内文書(問診票や検査の説明資料、院内スタッフの名札等)の多言語化のための 翻訳・作成に係る費用 ウ 案内表示の多言語化 多言語化のための翻訳・作成に係る費用 エ ホームページの多言語化 多言語化のための翻訳・作成に係る費用 オ 外国人患者の受入れに対応するためのシステムの導入 多言語対応のためのシステム(電子カルテ等)及び外国人患者の受入れ状況の 把握のためのシステムの導入又は改修 カ 職員の語学力の向上等(研修、通信講座等の受講) 民間団体等が実施している医療通訳養成研修・通信講座その他の医療従事者 向けの語学に関連した研修・通信講座等の受講に係る費用 ▶ 基準額 130万円 ▶ 補助率 2分の1 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年11月25日(金曜日)必着 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 令和4年度東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業 追加募集 ~~<令和4年度 交付終了>~~ 今年度の交付は終了しておりますが、来年度も募集継続となる可能性もあるため、ご参考として紹介いたします。 ▶ 給付対象診療所:医科 訪問看護 ■ 目的:教育体制の強化(人件費補助) ・*令和4年度終了*令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業 ▶ 補助対象 診療所(令和4年度補助対象事業者の要件(一部抜粋)) (1)開設から1年以上経過している、都内の訪問看護ステーションであること。 (2)前年度の月平均訪問看護件数が、常勤看護職1名当たり60件以上であること。 (3)前年度に、サービス提供体制強化加算・ターミナルケア加算・緊急時訪問看護加算等の算定実績があること。ただし、サービス提供体制強化加算の算定実績がない場合は、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)第10号をすべて満たすこと。(研修・カンファレンス・健康診断の実施) (4)管理者又は指導者の訪問看護経験が5年以上であること。 (5)本補助金の交付を過去に受けたことがない事業所であること。(※令和2年度以前の「新任訪問看護師就労応援事業」の交付は含まない) (6)訪問看護経験3年以上かつ当該事業所に1年以上勤務する常勤の看護職員を2名以上配置していること。 (7)訪問看護経験が豊富な常勤の看護職を指導者として充てること。 (8)常勤換算方法で2.5人以上かつ7人未満であること。(新卒採用は、2.5人以上。) (9)事業所に「管理者・指導者育成研修」の「育成定着推進コース」研修受講修了者がいること。(当年度の研修修了でも可。) ▶ 目的 訪問看護未経験の看護職を雇用し、育成を行う訪問看護ステーションに対し、教育体制の強化を図るための支援をすることで、訪問看護ステーションで働く看護職員の勤務環境の向上及び定着の推進を図り、もって在宅における療養環境の向上と地域包括ケアの推進を図ること ▶ 補助対象経費 訪問看護未経験の看護職を雇用・育成する訪問看護ステーションに対する人件費等を助成する。 ▶ 基準額 項目 対象経費 基準額(上限) 補助率 給与費 (1)新たに雇用した新任訪問看護師(新卒者除く) 雇用後2か月にかかる人件費 2,400円/1時間 1/2 (2)新たに雇用した新卒訪問看護師(*) 雇用後6か月にかかる人件費 外部研修受講経費 (1)新たに雇用した新任訪問看護師(新卒者除く) 雇用後8か月までに受講する外部研修にかかる受講経費 (事業所負担分のみ) 50,000円/1人 (2)新たに雇用した新卒訪問看護師(*) 雇用後8か月までに受講する外部研修にかかる受講経費 (事業所負担分のみ) 100,000円/1人 (*)新卒訪問看護師の詳細は、【補助金】令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業の「補助対象となる新任訪問看護師の条件(概要)」をご参照ください。 ▶ 補助率 1/2 ▶ スケジュール 令和4年度終了 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 【補助金】令和4年度東京都新任訪問看護師育成支援事業 ▶ 給付対象診療所:医科 診療所 ■ 目的:医療提供体制の改善(研修費用補助) ・*令和4年度終了*東京都専門医認定支援事業補助金 ▶ 補助対象 診療所 東京都内に所在する診療所 ▶ 目的 専門医制度の仕組みが円滑に構築され、地域医療への配慮や研修機会の確保に資するよう、指導医派遣等を行う医療機関に対する支援を行うことにより、専門医の質の一層の向上や医療提供体制の改善を図ることを目的とする。 ▶ 補助対象経費 ■医療機関が以下の事業を実施する場合、必要な経費(※)を補助いたします。 ※具体的な対象経費及び基準額につきましては、「東京都専門医認定支援事業補助金交付要綱」をご確認ください。 1 .東京都の医師不足地域の研修医療機関において専門研修を促進するため、地域医療に配慮した専門研修プログラムの策定を行う。 2 .東京都の医師不足地域の研修医療機関において、地域医療に配慮した形で小児科、救急科、産婦人科及び総合診療の専門医研修を促進するため、以下に示すいずれかの手法で指導医の派遣等を行う。 (1)指導医の派遣 (2)指導医による出張指導 3 東京都のキャリア形成支援プログラムに基づき、東京都の研修医療機関において専門医研修を促進するため、以下に示すいずれかの手法で指導医の派遣等を行う。 (1)指導医の派遣 (2)指導医による出張指導 4 地域医療に従事する総合診療専門医の育成を促進するため、東京都のへき地・離島の医療機関において、総合診療研修を行う。 ▶ 基準額 補助金の交付額は、次の(1)及び(2)により算出された額を予算の範囲内で交付するものとする。ただし、算出した額に 1,000 円未満の端数が生じた場合には、これを切り捨てるものとする。 (1) 別表1の第1欄に定める基準額と第2欄に定める対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定する。 (2)(1)により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額に2分の1を乗じて得た額を交付額とする。 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 補助率 1/2 ▶ スケジュール 【提出期限】 令和4年10月5日(水曜日) ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 専門医認定支援事業(補助金) ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助) ・*令和4年度終了*東京都産科医等確保支援事業補助金 / 分娩手当に係る補助金 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 目的 産科医等の処遇改善により産科医療機関及び産科医等の確保を図るため、分娩手当等に係る経費を補助 ▶ 補助対象経費 「差引事業費」と「対象経費の実支出予定額」と「基準額」とを比較していずれか少ない方 ▶ 基準額 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 補助率 東京都、独立行政法人(地方独立行政法人を除く。)及び国立大学法人等が開設者の医療機関にあっては1/3、その他の医療機関等(分娩施設)は2/3 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年10月31日(月曜日) ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 産科医等育成・確保支援事業補助金関係様式(分娩手当・研修医手当) ■ 目的:産科医等の処遇改善(診療手当補助) ・*令和4年度終了*東京都産科医等育成支援事業補助金 / 研修医手当に係る補助金 ▶ 補助対象 診療所 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 目的 臨床研修修了後の専門的な研修において産科を選択する医師に対し支給する研修手当等に係る経費を補助 ▶ 補助対象経費 「差引事業費」と「対象経費の実支出予定額」と「基準額」とを比較していずれか少ない方の額 ▶ 基準額 詳細は下記、申請詳細にて、ご確認ください。 ▶ 補助率 東京都、独立行政法人(地方独立行政法人を除く。)及び国立大学法人等が開設者の医療機関にあっては1/3、その他の医療機関は2/3 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年10月31日(月曜日) ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 産科医等育成・確保支援事業補助金関係様式(分娩手当・研修医手当) ■目的:オンライン診療促進(設備投資補助) ・*令和4年度終了*東京都オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業補助金(民間団体) ▶ 目的 かかりつけ医等によるオンライン医療相談、オンライン受診勧奨及びオンライン診療(以下「オンライン医療相談・診療等」という。)を推進するため、医療機関が実施する環境整備を支援することを目的とする。 ▶ 補助対象 診療所 都内に所在する病院又は診療所(歯科診療所は除く。以下「医療機関」という。)であって、東京都知事が適当と認める者。 ただし、以下の者を除く。 (1) 次の者が開設する医療機関 ア 地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人及び同条第2項に規定する特定独立行政法人 イ 独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人及び同条第2項に規定する特定独立行政法人 ウ 国立大学法人法(平成15年法律第112号)第2条第1項に規定する国立大学法人 (2) 健康保険法(大正11年法律第70号)第63条第3項第1号に規定する保険医療機関ではない医療機関 (3) この補助金の交付を受けたことがある医療機関 ▶ 補助対象経費 オンライン医療相談・診療等のための専用の情報通信機器等の初期経費(パソコン、タブレット(スマートフォンは除く。)、カメラ、マイク、ヘッドセット、ルーター等) ※ リース料、保守費用、通信費等の経常的な経費は補助対象外 ■ 対象経費 詳細→補助金申請手続きの手引き P1 ▶ 基準額 基準額 40万円 ▶ 補助率 補助率 1/2 ▶ スケジュール 提出期限:令和4年11月9日(水曜日)【当日消印有効】 ※交付申請受付期間中に到着した申請書類等は、順次審査いたします。 ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 令和4年度オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業について ▶ 給付対象診療所:歯科 診療所 ■ 目的:在宅歯科診療促進(設備整備補助) ・*令和4年度終了*東京都在宅歯科診療設備整備費補助金 ▶ 補助対象 診療所 下記、すべての条件に適合する事業者。 1.区市町村、公的団体及び民間事業者のいずれかとする。 2.事業の実施主体において別表に定める研修等を受講した、歯科医師が常に勤務していること。 ▶ 目的 主に高齢期・寝たきり者等に対する在宅歯科医療の推進に資するため、在宅歯科医療を実施する医療機関に対し、在宅歯科医療機器等の設備を整備することにより、安全で安心な質の高い歯科医療提供体制の充実を図ることを目的とする。 ▶ 補助対象経費 在宅歯科医療に必要な医療機器等の備品購入費 (※ 1品100,000円に満たないものについては、対象外) ▶ 基準額 基準額 1か所あたり 3,638千円 ▶ 補助率 補助率 2/3 ▶ スケジュール 令和4年10月14日(金曜日)まで ▶▶▶ 提出方法等 申請詳細 ◀◀◀ 東京都在宅歯科医療設備整備事業 引用元:「TOKYO補助金サーチ見える化ボード」 <医師向け おすすめ記事> <歯科医向け おすすめ記事>

効果的な「指導者研修」の方法 まずは「リーダーになるメリット」を(2022.11.18)
<著者>株式会社スターコンサルティンググループ 糠谷和弘 代表コンサルタント 新卒が入社して半年、入所施設なら夜勤で独り立ち、通所施設なら送迎に1人で行くようになっている頃だと思います。指導計画通りに順調に進んでいますか? 新人教育において絶対にやってはならないのは、「職人的指導」になります。〝背中で教える教育〞、〝経験と勘に頼った指導〞から脱却しなくてはなりません。基本から応用に進むように手順を決め、座学とOJTに分けて効率的、効果的に指導するのが重要でした。しかし、いくらプログラムを作りこんでも、実際に指導するトレーナー役がそのことを理解していなければ台無しになってしまいます。 そこで、愛知県のある法人では、毎年下期に「指導者研修」を実施することにしました。対象は入社して2〜5年目の職員。どのようなことを行っているのか、具体的に見ていきましょう。 ■指導者になるメリット 指導者になることをネガティブに受け止める人は多くいます。確かに仕事が増えるということはありますが、人に指導するには、自分のしている業務を整理して言語化し、噛み砕いて説明しなければなりませんから、より業務を深く理解し、自分自身のスキルを向上させるきっかけになります。そのため、この法人ではまずリーダー予定者に「メリット」から伝えることにしています。 ■指導者の役割 指導者の役割は、ただ教えてスキル向上をサポートするだけではありません。「習得状況の把握」「指導計画の見直し」「不安の解消」のほか、それらの情報を上司やほかのスタッフに発信し、協力してもらわなければいけません。指導者研修では、テーマごとの具体的な動きを伝えます。 例えばこの法人では、毎月、リーダー会議で、下記のフォームによって指導の進捗報告をすることを義務付けています。報告内容から、個別に今後の対策を練るのです。議論する時間は1人5分程度ですが、とても成果が上がっています。 ■面談の方法 指導上もっとも大事なのが、トレーナーと新人との面談です。研修では、面談手順の指導だけでなく、ロールプレイまで行います。内容は、 ①アイスブレイク ②まず長所、できていることを褒める ③チェックリストでの評価から、習得が遅れているところ(目標)を共有する ④②の項目の指導日(時間)を決める ⑤不安点を聞き出す また、指導が不慣れなトレーナーの場合には、面談に上司が同席することもあります。この法人では、以下のようにルールを決めています。 【面談頻度】月1回ユニット会議の前 【面談時間】20分程度 【面談者】トレーナー 【ユニットリーダーの同席】トレーナー初心者は3回目まで同席、トレーナー経験者は2回に1度同席 ■対象者別の指導のポイント 介護業界では、新人は学校を卒業したての人材ばかりではありません。年上の新人に指導することもよくあります。年下が先輩でも謙虚に聞いてくれれば良いですが、うまくいかないこともあります。また、相手が外国人ということもあるでしょう。研修では、想定される対象者ごとに指導のポイントや注意点を伝えています。 例えばこの法人では、50代以上で無資格未経験の中途採用者が多いため、以下のようなことを伝えています。 □年上であることに配慮した言葉遣いで指導する(敬語をしっかり使う) □熟年者にありがちな「落とし穴」をあらかじめ伝える(知ったかぶりしてしまう等) □介助方法の間違いを正すときは、他のスタッフのいないところで行う □面談ではできる限り上長を同席させる いまの時期は、新人のスキルに差がでてくるころです。裏を返せば指導者のテクニックに差が出る時期とも言えます。この時点での反省を次に活かせるように、しっかりと準備しましょう。 監修:㈱高齢者住宅新聞社 制作年月:2022年10月 著者:㈱スターコンサルティンググループ 代表コンサルタント 糠谷和弘 (ぬかや かずひろ)●介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)などがある。

【解説】医業承継のポイントについて(2022.11.15)
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 現在日本では、中小企業を中心とした後継者不足が顕在化しています。もちろん医療業界も例外ではなく、診療所経営者の高齢化が進んでおり、次世代への事業承継が大きな課題となっています。今回は「親族承継」に焦点をあてた事業承継の進め方についてご紹介いたします。 目次 01:医業承継のパターン 02:個人診療所の親族承継のポイント 03:医療法人の親族承継のポイント 04:出資持分有りの医療法人の親族承継 05:出資持分無しの医療法人の親族承継 医業承継のパターン 診療所の事業承継には、診療所の経営主体が「個人」か「医療法人」かによって、また承継者が「親族」か「第三者(他人)」かによって解決すべき課題が異なります。 個人診療所の親族承継のポイント 親族承継は、他人に診療所を引継ぐ、いわゆる「第三者承継」に比べ、診療所の職員や患者の理解が得やすく円滑に承継を進めることができます。しかし事業承継には、事前に解決すべき課題が多々あります。 (ポイント1) 承継時期・診療方針・スタッフの入替・借入金の引継ぎなど、診療所の承継において親族間で話し合うべき事項が多々あります。これらの話し合いを経ないまま承継を行うと、診療所の承継者にとって思わぬトラブルが生じるおそれがありますので、親族間で腹を割って話し合いましょう。 (ポイント2) 診療所を承継するためには、医療機器やクリニック(土地または建物)など事業用資産を次世代に承継することとなります。承継方法には、「親から子に売却するケース」や「親が子に相続(贈与)するケース」がありますが、いずれの方法がよいのか検討する必要があります。 戸建開業の場合、クリニックの建物や土地の金額が高額になるので、一般的に相続により承継するケースが多く見受けられますが、相続人が複数いる場合には相続を円滑に進めるために遺言書を作成しておくことをお勧めします。 医療法人の親族承継のポイント 診療所の経営主体が医療法人である場合には、クリニックの事業用資産を承継する個人診療所とは異なり、医療法人の「経営権」及び「財産権」を承継することとなります。医療法人には、設立時期によって「出資持分あり」の医療法人と「出資持分なし」の医療法人が存在することとなりますが、「出資持分あり」の医療法人と「出資持分なし」の医療法人では承継方法が異なることとなります。 出資持分有りの医療法人の親族承継 「出資持分あり」の医療法人の場合、医療法人の出資持分(財産権)を承継することとなるため、医療法人の出資持分の価値が高ければ高いほど、承継する際に税負担が重くなります。 出資持分無しの医療法人の親族承継 「出資持分なし」の医療法人の場合、出資持分(財産権)が存在しませんので、「経営権」のみ承継することとなります。そのため、個人診療所を承継する場合、あるいは「出資持分あり」の医療法人の出資持分を承継する場合とは異なり、贈与税や相続税などの税負担を考慮に入れる必要はありません。 ただ「出資持分なし」の医療法人を解散させる場合には、医療法人の財産は国に帰属することとなるため、退職金を支給するなど医療法人に財産が残らないような対策を講じる必要があります。 親族に医師がいる場合、診療所経営の出口戦略として親族承継が挙げられますが、今回ご紹介したように親族承継には診療方針の引継ぎ、患者・スタッフとの人間関係の引継ぎ、課税面での課題、相続にまつわる問題など事前に検討すべき事項が多々あります。円滑な親族承継を迎えるためにも、専門家にご相談されることをお勧めします。 制作年月:2022年11月15日

【最新】新型コロナ関連 最新の助成金・融資を解説!(2022.11.11)
新型コロナ関連 介護事業者向け助成最新情報まとめ 10月以降の見直し項目 要確認を 2020年より世界的な流行が続く新型コロナウイルス感染症。依然としてその猛威は衰える兆しがなく、第7波も介護サービス事業者に大きな影響を与えている。今回は、新型コロナ対策として事業者にかかる負担を軽減するべく、行政より発出されている助成金・融資などの最新情報を一部紹介する。 【本文】 ■コロナ禍におけるかかり増し費用の助成 まずは、新型コロナ関連の支援で最も多く活用されているであろう厚生労働省「新型コロナウイルス感染症流行下における介護サービス事業所等のサービス提供体制確保事業」。新型コロナ陽性者、濃厚接触者に対応した介護事業所の「かかり増し費用」に対する助成だ。地域医療介護総合確保基金を活用したもので、22年度予算額は137億円に上る。 同事業による助成の対象となるのは▽新型コロナ感染者が発生又は濃厚接触者に対応した介護サービス事業所・施設等(休業要請を受けた事業所を含む)▽新型コロナ流行に伴い居宅でサービスを提供する通所系サービス事業所▽感染者が発生した施設等の利用者の受け入れ及び応援職員の派遣を行う事業所――。 対象経費については、「通常の介護サービスの提供では想定されないかかり増し費用」として▽緊急時の介護人材確保に係る費用▽職場環境の復旧・環境整備に係る費用▽連携により緊急時の人材確保支援を行うための費用――が該当する。 なお、基準単価は以下の通り。 〈図①〉 ■施設内療養に対する支援 22年9月末までとされていた「高齢者施設等における施設内療養に関する支援」については、12月末まで期間が延長された。 これは、病床逼迫等によりやむを得ず施設内療養を行うこととなった場合に、必要な感染予防策を講じた上でのサービス提供等を行った際、施設内療養者1名につき15 万円の支援を行う補助制度。これに加え、まん延防止等重点措置区域等において、施設内療養者数が一定数を超える場合には、施設内療養者1名あたり更に1万円/日(通常補助制度とあわせて最大30万円)を追加補助するもの。 なお、22年10月1日より、補助期間が見直されていることに留意が必要。10月以前の補助期間は発症日から起算して15日間を原則としていたが、これが10日に見直されている。ただし、発症日から10日間経過後も療養解除基準を満たさない場合は、当該基準を満たす日まで最大15日間とする。 ■福祉医療機構による優遇融資 融資では、20年より実施されている独立行政法人福祉医療機構による福祉貸付事業「新型コロナウイルス感染症により機能停止等となった社会福祉施設等に対する優遇融資」がある。福祉医療機構では、社会福祉施設等を整備する際に必要となる設置・整備資金や経営資金を長期・固定・低利で融資しており、新型コロナにより、当該施設の責に帰することができない事由で機能停止等になった場合の経営資金については、通常の融資条件から貸付利率の引き下げ等の優遇措置を講じた融資を行っている。 同融資においては、情勢に応じ、貸付利率の引き下げや一定額までの無担保融資化等も随時行われたが、22年10月より当初5年間の無利子の取扱いが終了するなど一部融資条件が変更となった。 現在の融資条件については以下の通り。 〈図②〉 福祉医療機構は資金用途について、「新型コロナの影響による減収の補てん等に充てる経営資金であり、人件費や経費に充てていただくもの」としている。なお、本貸付金を既往借入金の繰上返済、建築資金への流用、他法人への流用又は転貸等に充てることは、目的外使用にあたり、繰上償還を求める可能性があるため留意。 ■新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金 次に、厚労省が支給する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」。これは、新型コロナ罹患及びまん延防止措置の影響により休業させられた労働者のうち、休業手当の支払いを受けられなかった人が、当該労働者の申請により休業支援金・給付金を受け取ることができるものだ。22年10月~11月末の期間においては、1日あたり支給額が上限8800円とされている。この期間の休業に対する申請期限は23年2月末。 〈図③〉 事業主においては、休業の事実について確認するための書類作成などは必要になるが、金銭的負担はない。事業所の所在する地域によっては、一定以上の罹患者が発生した場合には事業所閉鎖などの要請を受けることがあるのが現状だ。こうした事態に備え、従業員に周知するなどして活用することが望ましい。 ■経産省による「新型コロナウイルス感染症特別貸付」 新型コロナの影響により、一時的に業況悪化を来している事業者を対象とする「国民生活事業」および一時的に売上の減少など業況悪化をきたしているが、中長期的には業況が回復し、かつ発展することが見込まれる中小企業者を対象とする「中小企業事業」の2種が用意されている。日本政策金融公庫による貸付で、どちらも無担保で利用可能。 「国民生活事業」対象者は、具体的には▽最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している者▽業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が「過去3ヵ月の平均売上高」「令和元年12月の売上高」「令和元年10月から12月の平均売上高」のいずれかと比較して5%以上減少している者――となる。融資限度枠は8000万円、返済期間は20年以内。 「中小企業事業」の対象の要件は、最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期に比し5%以上減少していること、またはこれと同様の状況にあること、そして、中長期的にみて業況が回復し、かつ発展することが見込まれること。融資限度額は直接貸付6億円で、このうち4億円を限度として、当初3年間は基準利率から0.9%低減した利率が適用される。こちらも返済期間は20年以内。なお、実質無利子化・利子補給については22年9月30日を以て取り扱いが終了しているため留意。 22年3月、政府により中小企業への支援策として「中小企業活性化パッケージ」(資金繰り支援、収益力改善・事業再生・再チャレンジ支援)が公表されたが、その後4月、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」により決定した「日本公庫等の実質無利子・無担保融資等の期限延長」が9月末に終了したところ。そして9月8日に策定された「中小企業活性化パッケージNEXT」により、ポストコロナへの段階的移行をはかることを目的に、コロナ禍における資金繰り支援の継続・拡充が中小企業庁より発表された。厳しい経営環境の中で抱えた負債の返済という視点から、収益力改善や事業再生などを加速させたいという前向きな視点への転換が促される。 〈図④〉 (出典:経済産業省ウェブサイト(当該ページのURL) ■経産省による「セーフティネット保証5号」 経済産業省が行う「セーフティネット保証5号」制度に関しては、20年3月より社会福祉施設等関連業種についても新たに指定がなされた。同制度は、経営の安定に支障が生じている中小企業者を、一般保証(最大2.8億円)とは別枠で借入債務の80%を保証する資金繰り支援制度。新型コロナによる利用控え等による減収にも適用が可能だ。 社会福祉施設等関連の対象業種は▽看護業▽特別養護老人ホーム▽介護老人保健施設▽通所・短期入所介護事業▽訪問介護事業▽認知症グループホーム▽有料老人ホーム▽地域密着型特別養護老人ホーム▽地域密着型通所介護▽養護老人ホーム▽経費老人ホーム▽その他の老人福祉・介護事業▽その他の児童福祉事業▽その他の障害福祉事業――など。 新型コロナの長期化・拡大による経済活動の抑制等に伴う影響を受けている事業者等について、認定基準の運用の緩和も実施している。利用の際は、取引のある金融機関又は最寄りの信用保証協会に相談のこと。 ■内閣府による「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」 20年閣議決定の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の一環として創設された「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」。新型コロナの影響を受けている地域経済や住民生活を支援し地方創生を図るため、各自治体が地域の実情に応じた事業を行うための交付金として活用されている。22年9月、この中から「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」が新たに創設された。 当該交付金は、エネルギー・食料品価格等の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対 し、地方公共団体が地域の実情に応じてきめ細やかに必要な事業を実施する取り組みに、より重点的・効果的に活用することとされている。予算額は6000億円、実施主体は都道府県及び市区町村。この推奨事業者として、「医療・介護・保育施設、公衆浴場等に対する物価高騰対策支援」が挙げられた。 一般社団法人日本デイサービス協会が218の加盟事業所に対して22年7月に行った調査によると、休業や利用控えなどの影響が大きく見られた通所介護事業者においては、特に燃料費高騰の影響として、電気代約16%、ガス代約28%、ガソリン代約22%の上昇が見られたという。こうした事態を受け、内閣府としても、当該交付金のより一層の活用を促している。 【最新】新型コロナ関連 最新の助成金・融資を解説!(2022.11.11)

専門技術を磨き、顔の見える関係を広げ紹介患者を増やすー他院との付き合い方ー(2022.11.8)
<取材先>金子耳鼻咽喉科(大阪市阿倍野区) 金子敏彦院長 「1度の手術で治し切る医療」をモットーに、年間200件以上(延べ800件超)の日帰り手術を行う金子耳鼻咽喉科。来院患者は当初、大半がホームページ経由でしたが、他科診療所や大阪府内の手術施設のない耳鼻咽喉科診療所からの紹介も増えています。 その背景には、地道な信頼関係の構築があります。 「開業以降、横のつながりを特に大切にしてきました。医局を離れた後、医師一人で診察を続けることは、臨床・経営両方の面で、ある意味、とても危険です。大きな組織に属しているうちは最新の医療情報は勝手に入ってきますが、開業するとそうはいきません。医療の進化は加速度的に早くなっているので、漫然と同じことをしていると、診療レベルが低下しかねません」と話す金子敏彦院長。 専門性を高く保ち、他院との差別化を図るために、自己研鑚を積むとともに常時アンテナを張るよう心がけているそうです。加えて、「誘われた飲み会を断らない」のもポリシーだと言います。 「お酒の席でざっくばらんに情報交換をするのは、結果的に臨床レベルの向上だけでなく、営業にもつながっています」 意思を同じくする耳鼻科医とは3、4カ月毎に勉強会を行っています。「症例をもとに議論することで、私の診療スタイルや技術は相手に伝わります。力量のわからない医師に大切な患者さんは紹介できないでしょう。もちろん知識のアップデートにも役立ちます」と金子院長。 同じ耳鼻咽喉科でも「めまい診療が得意」「睡眠時無呼吸症候群に詳しい」「発声を研究している」など、それぞれに得意分野がある医師とは患者を紹介し合う連携をしています。 最適な医療を受けられるため患者にとっての利点も大きいです。同院では完全予約制を敷いているものの、他院からの紹介患者を速やかに受け入れられるよう、常時「新患枠」を設けています。 紹介患者の診察後は、専門的所見を添えて丁寧に返事を書きます。どのように診断を下したのかを順序立てて根拠をもとに説明し、必要ならばCT画像も添付する。日帰り手術という特徴があるため、同一診療科からの紹介も多いですが、紹介患者に対しては、きちんと説明し手術後は紹介元の診療所に戻します。 紹介患者と紹介元へのきめ細かな配慮で、次の紹介につなげているのです。 「診療所の技術と姿勢を周囲に理解してもらう機会づくりは必要です。業界は狭いので、悪いうわさが立つようでは誰も患者を紹介しようとは思いません。営業活動という意識はありませんが、横のつながりを大事にし、日々の診療を地道にまじめに続けていくことは、新患獲得の両輪ではないでしょうか」 取材先:金子耳鼻咽喉科(大阪市阿倍野区) 金子敏彦院長 監修:日本医療企画 (取材・掲載年:2019年5月)

心や個人の問題に留めずメンタルヘルスをサポートしよう(2022.11.1)
<取材先>株式会社IDO 代表取締役 井戸 和宏 メンタルヘルスと聞くと、「心の病」「繊細な人がなる」といったイメージを持つ人もいるでしょう。 しかし、実際のメンタルヘルスは心の状態のみならず、日々の生活や働き方とも大きく関わってきます。 介護事業者向けのメンタルヘルス研修を行っている株式会社IDO代表取締役の井戸和宏さんに話を伺いました。 メンタルヘルス不調への気付きと対応が必要 ──新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、介護現場における職員の心理的ストレスも大きくなっています。そうした中、介護事業所にも職員のメンタルヘルス対策への取り組みがますます求められるようになってきました。最初に、事業所におけるメンタルヘルス対策とはどのようなものか教えていただけますか。 メンタルヘルス対策の基本は、厚生労働省が掲げている『職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜』の中で示されている「4つのケア」になります。 ①職員自身がストレスを理解して自らのストレスを予防・軽減する「セルフケア」、②管理者が職場環境の改善や職員の相談対応に努める「ラインによるケア」、③産業医などが専門的立場から職員や管理者を支援する「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、④職場外の機関や専門家を活用する「事業場外資源によるケア」の4つで、職場のメンタルヘルスケアはこれらのケアで構成されます。 例えば、職員が自身のストレスに気付いた場合、それを上手く解消する方法を身に付けてセルフケアを行えれば、問題はそこで解決します。ところが、セルフケアで対応しきれない場合は、管理者に相談して解決を図ります。あるいは、職員本人が不調を自覚していないときは、管理者が早期に気付いて声をかけ、職員の健康回復に努めます。しかし、管理者でも対応が困難な場合は、産業医や人事労務管理の職員などに介入してもらい、環境改善などに取り組む必要が生じます。それでもなお、解決困難なケースでは、外部の専門的な相談機関に依頼し、支援やサービスを提供してもらい改善を図る、という流れになります。 ——メンタルヘルス対策というと、精神的にかなり深刻な状態に陥った人に対して行われるものというイメージがあります。 介護現場でのメンタルヘルスというと、うつ病の人や業務の継続が困難になってしまった人など、かなり重症のケースを想像しがちですが、いわゆる「メンタルヘルス不調」と呼ばれる状態に対してメンタルヘルスケアが必要であると考えられています。 「メンタルヘルス不調」とは、「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」と定義されています。具体的には、人間関係のトラブルで悩んでいる、ストレスで飲酒量が増えてしまったなど、誰でも思い当たるような心理や行動の変化を幅広く含んでいます。 職員のメンタルヘルスは経営に大きく関わる問題 ──「精神力の弱い人が心を病んでしまうのであり、メンタルヘルスは個人の問題」という考え方もあると思います。メンタルヘルス対策に法人全体で取り組む意味はどこにあるのでしょうか。 たしかに、ストレス耐性には個人差があるので、同じ職場にいてもストレスに耐えられなくなってしまう人と、大丈夫な人がいます。しかし、ストレスに弱い人が耐えられなくなって職場を去ってしまうと、残されたストレス耐性の高い人に仕事が集中し、その人もいずれバーンアウトして離職する恐れが出てきます。そうなると、最終的には組織の働き手がいなくなり、経営も立ち行かなくなる。メンタルヘルスケアは、ストレスに弱い個人の問題に留まらないのです。 ──ストレス耐性の高い人だけを集めることができれば、上手くいくようにも思えます。 働き手が辞めても、すぐに補充の人が入ってきてくれた時代もありましたが、今はそうはいきません。特に介護現場のような労働集約型の職場では、人手が減ってしまうことは経営上の大きなマイナスになります。 ストレス耐性やパフォーマンスの高い人に依存して、仕事を集中させるのではなく、“できる人にも無理をさせない”マネジメントが求められているのです。図表1のように、ストレスが小さいと「低パフォーマンス」になりますが、大きすぎると、本来、高パフォーマンスを発揮できる人も「バーンアウト・メンタル不調」に陥る。メンタルヘルス対策では、そのどちらにも偏らない“中庸”をめざすことが重要です。それが個人としても、組織としても「最適なパフォーマンス」に繋がるのです。 モチベーションを保つには自分の目標を持たせる ──介護業界特有のメンタルヘルス上の問題はありますか。 どんな仕事にもストレスは付き物です。それでも多くの人が簡単に離職しないのは、モチベーションが保たれているからです。モチベーションを高める要素には、身体の健康状態が良いこと、明確な目標があること、使命感が持てること、そして、どんな状況にも適応できる柔軟性があることなどが挙げられます。 介護職の人は、使命感が強いのです。目の前の利用者を元気にしたい、幸せにしたいという強い思いを持っている人が多いと思います。しかし、自分の目標が明確にある人は意外と少ないのではないでしょうか。ここでいう“目標”とは、「リーダーになりたい」とか「資格を取って専門性を高めたい」といった、具体的な“なりたい自分像”のことです。使命感だけで仕事をしていると、例えば、全身全霊で介護した利用者が中々改善しないとか、亡くなってしまったといった場面で力尽きてしまいやすいのです。将来の目標も、介護に携わる意義も見失って、仕事を辞めてしまう人もいます。 職員の“なりたい自分像”を明確にすることは人材育成の上でも極めて重要です。本人が自分でそれを見つけられないときは、上司などが話を聞きながら一緒に目標を考えてあげることも必要です。 ──介護事業所の場合、上司にあたる管理職が現場に出るケースも多く、職員の相談に乗り、目標を一緒に考えるとなると負担です。 そうですね。事業所の規模が小さくなるほど管理職の負担は大きくなりやすく、一般職の3倍以上の業務量を抱えている管理職も珍らしくありません。 図表2に、経営者、部長職、課長職、一般職に分けて、それぞれの立場における悩みやストレスを示していますが、最も負担が重くなるのが、課長職やリーダー職です。この立場の人は、上司(部長職)とのコミュニケーションに悩まされる一方、部下(一般職)からの相談や要望にも応えなければなりません。上と下との“板挟み”になりやすいポジションで、心労もかさみやすいのです。 課長職の業務量が過多で、一人ひとりの一般職員の相談に時間をかけられないケースでは、外部の専門機関に依頼して、職員個々の悩みには外部機関のカウンセラーに対応してもらい、事業所にフィードバックする仕組みを取り入れるのも一案です。職員が仕事上抱えた悩みは、怒りや嘆きなどの激しい感情を伴うこともあり、できるだけ早く対応してあげる方がよいでしょう。本人も、ひとまず“信頼できる相手”に話を聞いてもらえるだけで、気持ちがすっきりすることが多いのです。事業所が依頼している専門機関のカウンセラーであれば、職場の状況もある程度理解しているので、安心して相談を持ちかけやすいと言えます。 メンタルヘルスが良好なら介護の質も向上する ──これからメンタルヘルス対策に取り組もうとする事業所に、まずどこから手を付ければよいのか、アドバイスをいただけますか。 メンタルヘルス対策のキーパーソンとなる、組織の中間層に位置する課長職やリーダー職に向けて、メンタルヘルス対策の研修を行うことから始めるとよいでしょう。次いで、一般職にセルフケアの方法を学んでもらいます。そして、両者がお互いのストレスを理解し、一部の人に負荷がかかり過ぎないように調整しながら、業務を上手く進めていく方法を考え、工夫することが求められます。 このときに重要なのは、どの職員にもメンタルヘルス対策の全体像をきちんと把握してもらうということ。全体像というのは、職員から受けた相談が、その後どこでどう分析・検討され、最終的にどのような形で解決・改善に至るかという道筋のことです。職員が業務上の悩みを上司に相談すれば、職場の課題が解決され、環境が改善し、組織が良くなるという見通しが持てることが大切です。 ある調査では、職員同士の人間関係が円滑な事業所では、認知症利用者のBPSDが表れにくいと報告されています。職員が安心し、希望を持って働ける職場環境では、利用者も大きなメリットを享受できるということです。 ──メンタルヘルス対策は介護の質にも関わるということですね。 そうです。ただし、メンタルヘルス対策を常に優先するということではなく、他の課題とのバランスをとっていくことが大事です。例えば、介護の仕事は職員がまとまった休暇を取りにくく、負荷のかかった状態が続きやすいですが、個々人の状況や希望に応じて交代で休暇が取れるようにするといった配慮をすべきでしょう。負荷がかかり、ストレスのある時もあるけれど、ストレスから解放されて休める時期も用意することで、心身のバランスをとってもらうのです。こうした調整には、一人ひとりに合わせたきめ細かな対応が必要です。 職員のメンタルヘルス状態を知ることは、人材育成や事業運営にとっても大きな意味があります。どの職員が、どのタイミングで、どのような役割を担うと最も高いパフォーマンスが発揮できるかを考えてマネジメントすることができれば、職員自身にとっても、その職員から介護を受ける利用者にとっても、そして、介護事業を運営していく事業所にとってもプラスになるはずです。ですから、職員のメンタルヘルス対策は、介護経営において重視すべきテーマだと言えるのです。

予防歯科のカギを握る歯科衛生士の定着を実現しよう
<著者>坂田信及 社会保険労務士・医療経営士 多くの歯科医療機関は予防歯科機能を果たすことが求められる一方、歯科衛生士の採用は大変厳しい状況です。歯科衛生士の定着はきわめて重要な経営課題と言えそうですが、そのポイントとして「安心して働ける労働環境の整備」「歯科衛生士の使命感の充足」が挙げられるようです。 現在、多くの歯科医療機関は、予防歯科の機能を果たすことが求められています。その中でカギを握っているのが、歯科衛生士の採用・教育です。 歯科衛生士の求人倍率は現在、一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会などによるとおおよそ20倍程度であり、住居から通勤が近いところを選ぶ傾向も指摘されています。 筆者自身のこれまでの経験から言うと、歯科衛生士の採用ではやはり「職場環境の整備」が重要で、 ▽社会保険の完備(健保・厚生) ▽賠償責任保険 ▽有給の消化率 ▽福利厚生 なかでも ▽産休・育休の制度の充実 ▽セミナー・研修の受講支援 ――等を挙げることができる。 教育体制の整備や、それらを通じたやりがいの熟成も重要です。 先輩から後輩への教育すなわち、1年後に自分がどうなっているのかを肌で感じられるような職場環境の整備、また歯科医を中心とする診療チームのなかで、自分がいかに技術をあげ、自分がチームのなかで貢献できていくかを感じていけるかが大切です。 予防歯科の充実は、衛生士が自ら患者様を長期的に担当し、信頼関係を構築していく体制を構築することにつながります。 自らを信頼し頼ってくれる人々への口腔内を守り、健康を守る仕事という認識を熟成し、やりがいを持ってもらえます。予防歯科の場合、それこそ親子3代を診るというケースもあり、家族ぐるみになる場合もあり、患者様から信頼を得ることができるということになります。長期勤務すなわち離職率の低下につながっていくでしょう。 歯科衛生士に限らず、マズローの欲求5段階説「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」のうち、最も高い位置にある「承認欲求」「自己実現の欲求」を、医院のなかで満たしていくような組織を構築していくかが重要ですが、そこでは今お話ししたこと以外に、院長先生が、「スタッフを大切に思っている」ということが、スタッフに感じ取ることができる施策を行っていくことも欠かせません。 衛生士さんに限らず職員の離職率の低下にもつながり、地域にも必要とされる歯科医院が構築できると思います。 著者:坂田信及 社会保険労務士・医療経営士 掲載日:2022年10月

介護事業者が選択しうる資金調達手法・補助金活用
<取材先> 合同会社TYパートナーズ 代表社員 筒井祐智 介護事業者向けコンサルティング事業などを行うTYパートナーズ(東京都港区)。全国110ヵ所超でデイサービスを展開する早稲田エルダリーヘルス事業団の元社長である筒井祐智代表に、持続可能な介護事業経営に向けた、資金調達手法や補助金・助成金の活用について伺いました。 【本文】 ■負債による資金調達 まず、資金調達の手法についてですが、大きく4つに分かれます。1つ目は「負債による調達」(表①参照)。金融機関や自治体の制度融資、ノンバンク(ビジネスローン)、私募債などからの借入がこれに当たります。 金融機関からの融資について、具体的には、都市銀行や地方銀行、信用金庫、信用組合、政府系金融機関(政策金融公庫等)など。創業間もない事業者は銀行からの融資を受けるのが難しい場合もあり、信用保証協会を利用した融資や、政府系金融機関の創業融資を活用するケースも多くあります。福祉に特化した仕組みとしては、福祉医療機構(WAM)による福祉貸付事業の活用もできます。 2つ目は「自治体の制度融資」。地方自治体と民間金融機関、信用保証協会の3機関が連携して実行する融資です。創業間もない事業者や初めて融資を受ける事業者でも利用しやすいというメリットがあり、新型コロナウイルス感染症関連の制度もあります。 3つ目が「ノンバンク(ビジネスローン)」。銀行以外の金融機関であるノンバンクは、信販会社、消費者金融等が提供する事業資金に特化した金融商品です。金融機関からの調達に比べ、調達にかかる時間は短いが金利が高 く返済の負担が大きいのが特徴。介護給付費を担保に借入を行うといったローンもあります。 そして4つ目「私募債」は、企業が発行した社債を、投資家や取引先など50人未満の人々に販売し調達を行う手法です。手続きが公募債に比べて簡易で、保証人を立てる必要がない等のメリットある一方で、償還時の一括返済や調達コストが高いといったデメリットもあります。 ■資産の現金化による資金調達 次に、資産(債券や不動産)を売却することによる調達手法です(表②参照)。 まず「債券の流動化(ファクタリング)」ですが、これは介護報酬債権をファクタリング会社に譲渡することで資金を調達します。通常2ヵ月の介護報酬債権の現金化を早期化できる一方で、事務手数料等がかかるため、満額を受け取ることはできない点がデメリットと言えます。また、短期的な活用にとどめない場合、長期的には資金繰りを悪化させる可能性があるので注意が必要です。 そして、「不動産のオフバランス」。保有している不動産を売却して資金調達を行いますが、売却した不動産を不動産会社より借りる(リースバック)ため、そのままの拠点で運営を継続できます。 昨今では、クラウドファンディングの活用事例も増えてきました。これによる施設の流動化(オフバランス)も見られます。 ■資本の増強 さらに、「第三者割当増資」等により資本を増強する手法もあります(表③参照)。 負債ではないので返済の必要がない点がメリットですが、出資者による経営への関与・干渉が想定されるため、自由な経営が難しくなる可能性があるでしょう。 ■助成金・補助金の活用 また、助成金や補助金の活用は非常に重要です。事業の発展や雇用促進、設備投資等を目的として国や地方公共団体が提供する資金であるため、融資と違い、返済の必要がありません。申請の採択から入金までに時間は要しますが、活用しない手はないでしょう。例えば新型コロナ関連の貸付は、厚労省では現在約2兆円の規模で実行されています。なお、助成金と補助金の違いについて、助成金は厚労省管轄のものが多く、雇用の安定や職場環境の改善を目的とした制度であり、補助金は、主に経済産業省管轄で、創業支援や設備投資関連の事業が対象となります(表④参照)。 具体的に、「人材雇用」「人材育成」「従業員の待遇向上」「職場環境の整備」「介護機器の導入」に分けて、活用可能な助成金・補助金を見てみましょう(表⑤参照)。 まずは「人材雇用」関連の助成金です。「キャリアアップ助成金(正社員コース)」は、従業員の待遇や福利厚生制度を充実させたいと考える経営者を支援する制度。就業規則や労働協約等に基づいて、有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換・直接雇用した場合に助成金が支給されます。例えば有期雇用を正規雇用へ転換した場合では、1人あたり57万円~72万円支給となります。ほかにも、職業経験・技能等の理由で安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業者等からの紹介を受けて一定期間試行雇用した場合に助成金を支給する「トライアル雇用助成金」制度や、高年齢者や障害者などの就職困難者を継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主を支援する「特定求職者雇用開発助成金」、中途採用による雇用の活性化を目的とする「中途採用等支援助成金」、65歳以上への定年の引上げや高年齢者の雇用管理制度の整備、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換を行う場合に支給される「65歳超雇用推進助成金」等があります。 次に、「人材育成」関連の助成金を見てみましょう(表⑥参照)。 「人材開発支援助成金」は、職業訓練などの人材開発にかかった費用の一部を支給する助成金です。岸田政権が掲げる経済政策「新しい資本主義」において、「人への投資」が第一の優先課題として挙げられたことを受け、令和4年に「人への投資促進コース」が追加され、現在計8つのコースが用意されています。ほかに、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進する規則などを導入・推進する事業者を支援するための「キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)」や、非正規雇用労働者と正規雇用労働者に共通する諸手当に関する制度を策定する事業者の支援を目的とした「キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)」等があります。 「従業員の待遇向上」関連では、仕事と家庭を両立できるような環境づくりを推進するための「両立支援等助成金」、「職場環境の整備」関連では、中小企業団体が従業員の労働環境の向上や人材の確保を行い、雇用管理や雇用創出を行うことを推進する「人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)」も活用できます(表⑦参照)。 「介護機器の導入」に関する補助金には、例えば「IT導入補助金」があります。中小企業および小規模事業者が業務改善のためにITツールを導入する際、その経費の一部を補助することでこれらの施策を支援するためのもので、A類型とB類型に分かれており、B類型のほうが求められる条件のハードルが高い分、支給される補助額も高くなっています。補助対象はソフトウェア費用、クラウド利用料、ITツール導入関連費用。補助額はA類型で30万~150万円、B類型で150万~450万円(いずれも補助率は1/2以内)です。ほかに、「ICT補助金」「介護ロボット導入支援補助金」などがあります(表⑧参照)。 ■情報をキャッチすることが重要 助成金・補助金は、廃止になるものや新たに追加されるものがあり、管轄も各省庁、都道府県、自治体等様々で情報源も異なります。こうした情報に常にアンテナを張り、いち早くキャッチし続けることが重要です。WEB上での探し方としては、①厚労省、経産省、内閣府等の省庁のHPで探す②各自治体のHPで探す③中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」サイトで探す――等の方法で、地道に情報を集める必要があります。 介護業界では、「人材関連」「介護機器導入」に活用できるものが多くありますので、自社での取り組みに適用できる助成金・補助金を利用しない手はありません。持続可能な介護事業経営のために、資金調達や助成金・補助金の活用に関する知識を常にアップデートしておくことが重要でしょう。 ※本記事は、㈱高齢者住宅新聞社主催の、9月13日に開催した介護事業者向けセミナー「介護事業者に必要な財務・会計知識~持続可能な介護経営のために~」の内容を編集し作成したものです。 筒井 祐智(つつい・よしとも) 合同会社TYパートナーズ 代表社員 福岡市出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、富士銀行を経て、医療法人に入職。事務・管理業務に従事した後、グループ内の医薬品開発企業の経営企画責任者としてIPO、M&A等を主導。その後、早稲田エルダリーヘルス事業団 代表取締役を務め、日本デイサービス協会理事、全国介護事業者連盟東京支部副支部長等を歴任。

今さら聞けないふるさと納税の概要とメリット
著者:米本合同税理士法人 ふるさと納税という言葉は、CMも流れており広く知られていますが、実際にどのような制度かと聞かれると、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。今回は、このふるさと納税について説明します。 目次 1.ふるさと納税は、どのような制度? 2.ふるさと納税のメリットは? 3.ふるさと納税を実際に行うには? 1.ふるさと納税は、どのような制度? ふるさと納税は納税とつきますが、実際には応援したい地域に対する寄付のことを言います。「ふるさと」とつくため故郷にしかできないと思われがちですが、実際にはどの地域に対してでも行うことが出来ます。 ふるさと納税をすることにより、寄付した金額のうち2,000円を超える部分については、所得税や住民税の控除が受けられますし、寄付金の使い道を指定でき、寄付した地域からお礼の品として名産品なども頂ける制度となっています。 2.ふるさと納税のメリットは? ふるさと納税のメリットは主に3つあります。 1つ目は、ふるさと納税をした地域からお礼の品として名産品などが届くことです。 地域や金額によって、食料品や温泉利用権、家電など様々なお礼の品があります。「ふるさと納税」と検索すると、専用サイトが出てきますので、そのサイトからお礼の品がどのようなものかを確認することもでき、お礼の品から寄付をする地域を選ぶことも可能です。 例えば、大阪市にふるさと納税する場合には、1万円以上の寄付で「大阪市立ミュージアム御招待証」が送られてきます。 2つ目は、寄付した金額の使い道を指定できることです。 ふるさと納税は、環境保全や産業の振興など様々な用途で使用されます。 自治体によっては、寄付した金額をどのように使って欲しいかを指定することもできます。 3つ目は、ふるさと納税額のうち、一定額が所得税、住民税から控除されることです。 ふるさと納税では、一定の控除限度額内であれば、寄付をした金額から2,000円を差し引いた額を所得税や住民税から控除することが出来ます。 そのため、限度額までであれば、実質的な負担は2,000円となりますが、お礼の品が届くため、このお礼の品の分が得するという形になります。(お礼の品の実際の購入価額が2,000円を超える場合には、その超えた分が得になります。) 控除限度額については、ふるさと納税をする方の収入や扶養人数などによって変わります。「ふるさと納税 限度額」と検索すると、簡易計算できるサイトもありますので、限度額を知りたいという方は一度計算してみてはいかがでしょうか。 また限度額については、ふるさと納税する年の1月1日から12月31日までの金額となります。限度額の寄付をした場合でも、年が変われば今まで寄付した分がリセットされ、 再度限度額が使えるようになります。 3.ふるさと納税を実際に行うには? ふるさと納税を行う手続きは、地域によって異なりますので、応援したい地域のホームページ等で確認するか、直接お問い合わせをして手続きをします。 また、ふるさと納税の専用サイトがありますので、お礼の品や寄附金の使用用途から選んで手続きを行うことも可能です。(サイト経由で寄付が出来ない地域もあります。) 昨今高所得者に対する課税強化や児童手当の廃止など、一定の所得を超えると制用が受けられない制度が増加しています。ふるさと納税は所得が多ければ多いほど限度額が増える仕組みですので、有効活用していくことで実質的に支出を減らすことが可能です。ある意味高所得者の方に対する救済措置と解釈することも出来ると個人的には考えています。 今年もあと3ヶ月をきり、そろそろふるさと納税を始めようかと考えている方もいると思います。弊社ホームページでは上記の他ふるさと納税の流れなどを図解を踏まえて解説しておりますので、まだふるさと納税をされたことがなく、気になっている方は是非アクセスしてみて下さい。 著者:米本合同税理士法人 (ふるさと納税に関する弊社コラムはこちら) https://www.yonemoto.or.jp/column/column13.html (弊社についてもっと知りたい方はこちら) https://www.yonemoto.or.jp/iryou/index.html

【解説】歯科診療所の開業費用の内訳と相場を知ろう。開業資金、テナントなら8500万円。
<取材先>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 開業にあたっては内装工事、ユニット設置、レセコン導入、ホームページ作成、内覧会――など、さまざまな準備が必要で、開業にあたってはこれらの支出も念頭に置かなければなりません。ここでは実際の相場感を踏まえて解説していただきます。 目次 01:テナントの家賃 02:内装費用 03:ユニットは開業時、何台くらい入れたらいいの? 04:レセコン 05:レントゲン、コンプレッサ他(機械室関係) 06:ホームページの作成 07:内覧会 08:リクルート費用・材料仕入れ・院内家電 09:開業前運転資金 10:開業前運転資金の考え方のポイント 開業するにはさまざまな費用がかかります。それぞれの費用のポイントを解説します。 1.テナントの家賃 テナント開業の場合には、敷金として家賃の6~10カ月分と不動産屋に仲介手数料として1カ月分、前家賃1カ月分の計8~12カ月分の家賃が最初にかかります。 【テナント開業の場合のポイント】 坪単価×坪数 ⇒ 何坪くらいの診療所を検討するか。 例 25坪で4台、30坪で5台くらいのイメージです。 2.内装費用 内装はさまざまですが、1つの目安として坪単価税抜きで80万~90万円です。 (例)30坪の診療所の場合、30坪×80万円=2400万円(税抜き) 3.ユニットは開業時、何台くらい入れたらいいの? 開業時には2台あれば十分に診療は回ります。配管は4台、5台分あったとしてもユニットを全部設置する必要はありません。患者さんの人数が1日平均で15人を超え始めたら3台目を検討してください。 ※ユニット1台あたりの相場は250万~350万円です。 4.レセコンについて レセコンについては、コンピューターですので5~6年くらいの期間で買い換えが必要になります。そのため、リースと購入のどちらでも構いません。ただし、購入の場合には銀行からの融資を受けないといけませんので、融資枠に余裕がない場合はリースを選択することをお勧めします。 5.レントゲン、コンプレッサ他(機械室関係) レントゲンについては、先生のやりたい診療によりCTを導入するのか、セファロも必要か、という観点で決めるとよいです。実際にCTを導入しても利用する頻度が著しく低い医院もあります。開業後の診療方針、ビジョンを考えて医療機器の導入を検討してください。 6.ホームページの作成 現在、ホームページは患者様を呼び込むツールとしては一番の効果的です。保険診療の新規の患者さんの来院動機として多いのは、「いつも医院の前を通っている」「家の近くだから」という来院動機も多いですが、そのような方々も、ホームページを確認してから来院します。 ➡金額として30万~150万円の予算が必要です。 7.内覧会 内覧会を行うか行わないかで、初月のレセプト件数は倍くらい変わります。内覧会の役割は周囲の方々に「ここに歯科医院がありますよ!」というアピールです。 内覧会の相場金額として130万円です。 8.リクルート費用・材料仕入れ・院内家電 (ア)リクルート費用は、知り合いの人を連れてくるかどうかでも費用は変わりますが、リクルート予算として20万円は確保しましょう。 (イ)材料仕入れ代については、概算で200万円を予算として確保します。実際はもっと下がるかもしれません。 (ウ)院内家電としてコピー機、冷蔵庫、レンジ、洗濯機、PC、待合室のイスなどが必要になります。予算として60万円は確保しておくとよいでしょう。 相場金額として下記の予算取りをしてください。 ※リクルート費用 ➡ 20万円 ※材料仕入れ費用 ➡ 200万円 ※院内備品 ➡ 60万円 9.開業前運転資金 開業前運転資金に含まれるものとしては、診療所の家賃や借入金利息、採用した従業員の給与、税理士費用や社労士費用などが入ります。 実際に家賃はいつから発生するのかなど、契約時にフリーレントの交渉ができると開業前運転資金の負担を減らすことができます。 10.開業前運転資金の考え方のポイント ➡開業前の家賃の支払う合計額+50万円ほどを予算に。1カ月でかかる費用の合計額の最低5カ月分の確保は必要と考えるべきです。 例)月に200万円かかる場合は、200万円×5カ月分=1000万円必要 制作年月:2022年9月21日 ~関連記事~ >>記事一覧へ戻る

最悪の場合は「保険医」取り消し 「指導・監査」に至る理由とは?
<著者>株式会社日本医療企画 情報企画開発グループ 保険診療を行う上で、切っても切れないのが行政の指導・監査です。各地域の厚生局が担当していますが、そのキッカケとなるのは診療報酬請求に絡んだものが多いようです。 一般的に、開業時には医療法、健康保険法、労働法、不動産関連法、税法――と多方面で行政的手続きが必要になりますが、その後は必要になる場面は多くありません。承継時、あるいは分院展開する際は法人化しなければなりませんので、そのための手続きが発生しますが、目立ったものと言えばそのくらいのようです。 ただ、例外的に行政と深くかかわる機会として「指導・監査」があります。順序としては①集団指導、②集団的個別指導、③個別指導、④監査――が設けられており、指導で改善が見られない場合、監査に至るというケースで進みます。最悪の場合、保険医療機関の指定や保険医登録の取り消しも起こりえるだけに、注意が必要です。 個別指導・監査では、医院を訪問した指導医療官から多岐にわたって質問を受けます。診療の基本的な流れや患者の診療内容などについて、患者の診療内容明細書に基づいて確認することが一般的です。指導はおおむね2時間、監査は丸一日かけて行われ、通常は複数回に及ぶことになります。 取り消し処分にまで至ったケースを見ると、その理由として多いのは、 ▽架空請求(実際には行っていない保険診療を行ったとして請求) ▽水増請求(実施した保険診療に未実施の保険診療を水増しして請求) ▽振替請求(実施した保険診療を点数の高い別の診療に振り替えて請求) ▽保険適用外診療の保険請求(実施した保険適用外診療〈自由診療〉について、保険適用の診療として請求)――などです。 個別指導・監査に至るタイミングとしては、各地域の厚生局の担当官が「診療内容や診療報酬請求に不正または著しい不当があったことを疑うに足りる理由があると判断する場合」というのが一般的な解釈です。 しかし、実際のお話をうかがうと、医院とトラブルを起こした従業員が厚生局に駆け込むケースもあるそうです。 労務問題についても同様ですが、やはり退職する従業員は、気持ちよく、温かく送り出すことが求められると言えますが、不正請求は現に戒めなければならないことは、論を待ちません。

【歯科診療所の承継開業時のポイント、注意点】コンサルタントによる解説
<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 目次 01:設備を引き継ぐ場合のメリット、注意点 02:スタッフを引き継ぐ場合の注意点 03:目に見えないものの引継ぎにも配慮しよう 04:親子承継時の注意点 設備を引き継ぐ場合のメリット、注意点 一般的に、事業承継で設備を引き継げるメリットとして「引き継いだその日から診療ができる」点が挙げられます。親子承継ならば、当該設備についての細かなチェックもかなり省略できそうです。ただ、「診療内容」については親子の間で確認しておく必要があるようです。 歯科医院の価値は、「事業価値(事業としての生み出される利益)」と設備などの「資産価値」の2つから決まってきます。後者には、土地建物の他にも、医療機器や事務機器、家具など、さまざまなものがあります。ここでは、「設備」について取り上げます。 事業承継で設備を引き継ぐメリットは、引き継いだその日から診療ができるということです。 設備投資を継続的に行っている医院を承継する場合には、新規開業してすべて揃えるよりもはるかに安価で必要な設備を手に入れることができます。内装も定期的に更新されているのであれば変える必要もありません。 一方で、設備投資を行っていない医院を承継する場合は、必要な設備を追加で購入したり、内装を更新したりする必要があります。同時に、更新するために診療を休まなければなりません。 設備を引き継ぐ際の注意事項としては、引き継ぐ設備や医療機器・備品については、すべてリスト化し、それぞれの現在価値(もしくは資産台帳の簿価)を確認します。その上で、引き継ぐ予定の機械・器具・内装を確認し、不具合がないかをチェックします。 <資産となる項目> ●土地・建物もしくは内装工事(設備工事、外構工事などを含む) ●医療機器や事務機器 ●医療法人の場合:出資金 ●車両 ●借入・リース等の債務 ●材料・備品等の在庫 ●賃貸の場合:敷金、保証金 ●印刷物・広告・HP そのため、継承にあたっての医院見学の際に、そのチェックを承継する側と後継者が一緒に進めておくべきです。そうすることで、引き継いだ後のトラブルを防止することができます。 その他、医療材料の在庫も必ず確認しましょう。特に高価なインプラントなどは、後継者が利用する予定があれば問題ありませんが、利用しないのであれば対象から外すと取り決めておきましょう。 リース設備などの負債の引継ぎをどうするかに関しては、レセコンなどについて、当事者だけで話を済ませるのではなく、リース会社に契約状況と残債(未払い金)を確認しておきます。その上で残債を引き継ぐ場合は、残債部分は売買価格から差し引くことになります。 親子承継の場合は、設備についての細かなチェックは必要ありません。むしろ、今後の設備投資についての方針が問題となります。 「先進的な治療方法をやりたい後継者」と「無駄な設備投資はさせたくない前院長」という構図になってしまうと、トラブルのもとと、なりがちであることも付け加えておきます。 スタッフを引き継ぐ場合の注意点 事業承継において「スタッフもそのまま引き継ぐ」ケースはしばしば見ることができますが、特に親子承継の場合、「先代の頃のやり方」が強く残ることが想定できそうです。患者の安心感を得やすい一方、後継者としてはやりづらい面もあるようです。注意点を解説していただきます。 歯科医院を承継する後継者にとって、あらかじめ患者の個性や性格が分かり、診療の流れを熟知しているスタッフを譲り受けられることは大きな魅力です。院長が変わっても同じスタッフが継続して勤めてくれれば、患者も安心して来院できます。 事業承継にあたり、スタッフを承継できるメリットは、①スタッフを採用する費用がかからない、②スタッフを教育訓練する費用がかからない、③採用教育の時間を削減できる、④患者との関係性ができているため、経営者交代による患者離れを防げる――という点が挙げられます。 デメリットは、①前院長のやり方を変えにくい、②スタッフの在職年数が長い場合、退職金の支払いが高額になる(隠れ債務の存在)――という点が挙げられます。 その中で、スタッフの処遇条件、退職金、有休の付与をどうするのかなど労務の問題をあらかじめ取り決めておくことはとても重要です。 明確な取り決めをせずに承継すると、新しい処遇にスタッフが不満を持ち、退職することが容易に考えられます。そうなると、スタッフ補充のために新たに採用・教育コストが発生するため、後継者は不満を持ちます。 したがって、事業を承継する側は、スタッフの退職リスクが少なくなるように手を打たなければなりません。 たとえば、「『処遇は少なくとも半年から1年は変わらない』という取り決めをする」「前院長が半年から1年程度残り、患者の引き継ぎやこれまでのやり方を伝える」という方法があります。 一定の引き継ぎ期間を設け、これまでのやり方やスタッフ、業績について後継者が理解をしたうえで、変更すべきものは変更するのであれば、理解も得られやすくなります。 合わせて、雇用契約書などの取り交わしができていないのであれば、この機会に取り交わし、安心して働ける環境を提供する経営者であることを示すのがよいでしょう。 親子承継の場合、処遇を変更しなければ、スタッフはそのまま勤めてくれることが多いものです。ただ、長年勤めているスタッフが後継者である新院長を子どものころから知っている場合、お互いにやりづらかったり、新しいやり方の導入にスタッフが消極的だったりすることが考えられます。 目に見えないものの引継ぎにも配慮しよう 事業承継で引き継ぐのは患者やスタッフ、設備など目に見えるものだけではありません。医院が育んできた雰囲気、そして経営を支えてきた経営・管理のシステムも承継の対象となります。患者、スタッフの安心感を得るためにも、こうした「目に見えないもの」にも配慮することが大切なようです。 競争が激しい歯科医院の環境では、新規開業よりも、患者を引き継げる事業承継のメリットは大きいと言えます。経営が順調な医院を、承継者が適切に承継できれば、一定の収益と認知度、ブランドを獲得することができます。 注意すべきは、開業から長年経過し、集患に力を入れていなかった医院では、患者が高齢化しており、新患が少ないことです。 それでも、患者を引き継げることは大きなメリットなのは、本来なら、開業から広告宣伝を行い、徐々に認知度を高め、ブランドイメージを確立していくところを、ショートカットすることができるからです。 しかし、「患者が高齢化している」「自分の診療方針に合わない患者が多い」といった場合は、患者の引き継ぎがかえってデメリットになることもあります。 そうならないためにも、承継する側と後継者の診療方針が合っているかを事前に確認しておきましょう。患者を引き継ぐ際には、前院長が後継となる医師を紹介したり、連名のあいさつ状を発送したり、来院者のカルテ内容を引き継いだりすれば、患者は安心します。 引き継ぎがうまくいかないと、新しい院長へのクレームにつながりかねません。たとえば、自由診療の保証期間など、承継に当たってはっきりさせておく必要のある問題は、新しい院長になってもそのまま引き継ぐかどうか、事前に取り決めて告知しておくことも大切です。 開業から長年経過している歯科医院は、患者数は多いものの、新患が少ない場合があり、将来的に患者が減っていくことが容易に想像できます。実際の新患数だけでなく、ホームページの内容が適切か、SEO・MEOの対策を打っているかどうかを必ず確認しましょう。打たれていない場合には、ホームページを作り直し、SEO・MEO対策に取り組みましょう。 親子承継の場合、患者は、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合もあると思います。大先生についている患者は、大先生と若先生のやり方を比較します。診療方針が一致している場合は問題ありませんが、異なる場合は患者から「大先生とは違う」と言われ、患者が離れるということが起こります。そのため、一定期間は引き継ぎ期間を設け、徐々に方針を変更するのが良いでしょう。 親子承継時の注意点 歯科医院にかぎらず、医療機関で親子承継がある場合、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合があります。この時に注意したいのが大先生と若先生の診療スタイルです。患者の多くは大先生のスタイルに馴染んでいると考えられます。スタイルや方針を変えるにしても、十分な移行期間を設ける必要がありそうです。 競争が激しい歯科医院の環境では、新規開業よりも、患者を引き継げる事業承継のメリットは大きいと言えます。経営が順調な医院を、承継者が適切に承継できれば、一定の収益と認知度、ブランドを獲得することができます。 注意すべきは、開業から長年経過し、集患に力を入れていなかった医院では、患者が高齢化しており、新患が少ないことです。 それでも、患者を引き継げることは大きなメリットなのは、本来なら、開業から広告宣伝を行い、徐々に認知度を高め、ブランドイメージを確立していくところを、ショートカットすることができるからです。 しかし、「患者が高齢化している」「自分の診療方針に合わない患者が多い」といった場合は、患者の引き継ぎがかえってデメリットになることもあります。 そうならないためにも、承継する側と後継者の診療方針が合っているかを事前に確認しておきましょう。患者を引き継ぐ際には、前院長が後継となる医師を紹介したり、連名のあいさつ状を発送したり、来院者のカルテ内容を引き継いだりすれば、患者は安心します。 引き継ぎがうまくいかないと、新しい院長へのクレームにつながりかねません。たとえば、自由診療の保証期間など、承継に当たってはっきりさせておく必要のある問題は、新しい院長になってもそのまま引き継ぐかどうか、事前に取り決めて告知しておくことも大切です。 開業から長年経過している歯科医院は、患者数は多いものの、新患が少ない場合があり、将来的に患者が減っていくことが容易に想像できます。実際の新患数だけでなく、ホームページの内容が適切か、SEO・MEOの対策を打っているかどうかを必ず確認しましょう。打たれていない場合には、ホームページを作り直し、SEO・MEO対策に取り組みましょう。 親子承継の場合、患者は、これまでの先生を「大先生」、後継者を「若先生」と呼ぶ場合もあると思います。大先生についている患者は、大先生と若先生のやり方を比較します。診療方針が一致している場合は問題ありませんが、異なる場合は患者から「大先生とは違う」と言われ、患者が離れるということが起こります。そのため、一定期間は引き継ぎ期間を設け、徐々に方針を変更するのが良いでしょう。 <著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年3月

【歯科医院】安定経営のために知っておくべきこと・注意点
著者:日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 目次 01:目指すべき医業収入とは? 02:歯科クリニック経営にかかる費用 03:経営体質強化のため、職員が定着する組織を目指そう 04:職員のモチベーション向上の方法 05:キャッシュに着目した経営が大事 06:経営シミュレーションの作成方法 目指すべき医業収入とは? ● 医業収入は当面目標として「3000万円」を目指そう あるグループが統計をまとめたところ、歯科医院の年間医業収益は平均で、個人医院が約4600万円、医療法人医院が約1億2000万円といいます。事業規模が大きいほど自由診療が占める割合も高くなるようです。歯科医院経営の目安の一つとしていいのではないでしょうか。 私たち税理士が歯科医院の先生方と初めてお会いする場合、決算書を拝見することになります。 この時、まずどこに着目し、どう判断するかといったことを大まかに述べてみたいと思います。当法人も参加しているある職業会計人グループが作成している、歯科医院の統計データ(以下、データ)をもとにお話を進めます。 ● 医業収入はどのくらいか データによると、平均の年間医業収入は個人経営の医院で4598万円、医療法人で1億2190万円となっています。歯科医の先生方の会合でこのデータをお話したところ、「平均収入額が大きすぎるのではないか」といったご指摘を受けました。このデータはいずれも、夜間開業や午前中のみの診察といった歯科医院はほとんど含まれておらず、会計事務所に業務委託するようなフルタイムで稼働している歯科医院ばかりです。「これから拡大させよう」という先生方にはやはり、一つの目安としていただきたいと思います。 ● 自由診療の総収入に占める割合 医業収入における自由診療の割合は、個人医院で14%、医療法人院で25%となっています。矯正歯科を中心に扱う歯科医院でない場合でも、都市部では自由診療の割合が50%を超えるところも珍しくありません。 さらに、年間の医業収入が1億円を超える医院に限ってみると、自由診療費は27%となります。規模の大きい医院ほど診療内容のメニューが多く自由診療の収入比が高くなることがうかがえます。 歯科クリニック経営にかかる費用 ● 原価率 歯科医院の変動費は「材料費」と「外注技工料」に分けることができます。個人・医療法人を問わず、全医院で材料費が対医業収入比8%、外注技工料が同7%、両費用を合計すると15%となります。言うまでもなく医院の提供する診療内容によって変動費率は変わります。補綴の割合が高くなれば当然、変動費率は高くなりますし、予防中心なら下がります。 いずれにせよ、収入に連動する費用ですから事業計画を策定する際も原価率を念頭に置く必要があります。例えば、原価率が対収入比20%である場合、月間で収入を100万円増やしても手残りは、80万円となります。 ● 人件費率 歯科医院の最大の固定費は人件費です。データによると個人・医療法人全体で対医業収入比は平均21%となっています。この比率が30%を超えると経営は厳しくなります。 ただ、気をつけていただきたいのは、しっかり昇給し、休暇も取れる環境を用意し、厚生年金などの法定福利費も整備していかなければ、良いスタッフは集まらないという側面もあるということです。工夫することでなんとか25%程度に抑えていただきたいと思います。 ● 医業利益 個人医院の場合は所得額と言い換えてもいいでしょう。年間平均利益は1280万円です。個人医院の場合は所得から、専従者給与(つまり、家族への給与)を控除します。 ただ、専従者給与は家族への支払いで、就業時間や職種などが反映されているわけではありませんから、通常は専従者給与を控除する前の数値を参照します。控除前で見ると1634万円です。医療法人も役員報酬について、役員報酬を差し引く前で見ますと利益は2883万円となります。 年間利益が3000万円を超える歯科医院は全体の2~3割程度と推定されます。せっかくリスクを背負って開業したのですから、ここを一つの目標とされてはいかがでしょうか。 経営体質強化のため、職員が定着する組織を目指そう 医院の安定・拡大には職員の力が不可欠であることは言うまでもありません。ただ、歯科医院界はさまざまな業種のなかでも特に人の動きが激しいことで知られます。そこで力のある職員に長く働いてもらうには、組織の風通しをよくするなど、日頃からの経営サイドの配慮が求められるようです。 歯科医院の職員の採用は日に日に難しくなっており、さまざまな業種のなかでも人の動きが特に激しくなっている市場の一つです。ですから、採用後に即戦力として期待できる人材を確保することは、非常に困難なことになっています。 せっかく採用ができても、職員が医院の一員として働くということに誇りや喜びを持っていなければ、場合によっては院長の意志に反する行動をとりかねません。長く、そしてより良く働いてもらうには、医院の職員としての基本姿勢や規範、モラルなどをあらかじめ示し、十分な理解をはかった上で就労してもらうことが大切です。 ● 経営体質の強化のために 経営体質の強化には、スタッフの協力が欠かせません。歯科医院を動かすのはスタッフであり、歯科医院が評価されるのもスタッフ次第なのです。また、立案した診療方針や歯科医院のコンセプトを実現するには、スタッフの確保・育成に注力すべきです。そのためには、次のような意識を持って職員育成にあたることが重要となります。 ● 労働環境の整備とスタッフ満足度 スタッフ満足度を上げるためには医院の労働環境の整備が欠かせません。 ただ、いくら労働環境を整備しても、医院のコンセプトをスタッフが理解していなかったり、また理解していても納得して業務に取り組んでいなかったりすれば、想定される成果は得らません。スタッフの満足度を高めることは、これからの歯科医院経営にとっては必須です。より良い歯科医院経営を行うには、生き生きと働くスタッフが不可欠なのです。スタッフ満足は患者満足につながり、ひいては歯科医院に大きなメリットをもたらします。 職員のモチベーション向上の方法 医院の安定・拡大には職員の力が不可欠であることは言うまでもありません。ただ、歯科医院界はさまざまな業種のなかでも特に人の動きが激しいことで知られます。そこで力のある職員に長く働いてもらうには、組織の風通しをよくするなど、日頃からの経営サイドの配慮が求められるようです。 歯科医院の職員の採用は日に日に難しくなっており、さまざまな業種のなかでも人の動きが特に激しくなっている市場の一つです。ですから、採用後に即戦力として期待できる人材を確保することは、非常に困難なことになっています。 せっかく採用ができても、職員が医院の一員として働くということに誇りや喜びを持っていなければ、場合によっては院長の意志に反する行動をとりかねません。長く、そしてより良く働いてもらうには、医院の職員としての基本姿勢や規範、モラルなどをあらかじめ示し、十分な理解をはかった上で就労してもらうことが大切です。 ● 経営体質の強化のために 経営体質の強化には、スタッフの協力が欠かせません。歯科医院を動かすのはスタッフであり、歯科医院が評価されるのもスタッフ次第なのです。また、立案した診療方針や歯科医院のコンセプトを実現するには、スタッフの確保・育成に注力すべきです。そのためには、次のような意識を持って職員育成にあたることが重要となります。 ● 労働環境の整備とスタッフ満足度 スタッフ満足度を上げるためには医院の労働環境の整備が欠かせません。 ただ、いくら労働環境を整備しても、医院のコンセプトをスタッフが理解していなかったり、また理解していても納得して業務に取り組んでいなかったりすれば、想定される成果は得らません。スタッフの満足度を高めることは、これからの歯科医院経営にとっては必須です。より良い歯科医院経営を行うには、生き生きと働くスタッフが不可欠なのです。スタッフ満足は患者満足につながり、ひいては歯科医院に大きなメリットをもたらします。 キャッシュに着目した経営が大事 患者も増え、所得も安定しているにもかかわらず、思ったほどお金がない……そんな「勘定合って銭足らず」な事態はしばしば起こります。こうした事態を防ぐためにも、支払いや生活資金も踏まえた収支シミュレーションを描き、対策を講じる必要がありそうです。 医院経営を続けていくと、所得は高くなり多額の税金を納めているものの、思ったほどお金が残らないということがしばしば起こります。そこで重要になるのが「キャッシュ(現金)」の管理です。今回は利益だけではなくキャッシュに着目した経営について説明します。 ● 収入は多いが支出も多い 歯科医師の先生は、平均と比べて収入は比較的多いですが、支出についても平均と比べて大きくなることが少なくありません。もちろん、所得が増えたことに伴って税金が増えるという要素もありますが、気持ちに余裕ができ、金遣いが荒くなることが大きな要因です。子どもの学費・医院の設備投資・引退後の生活資金……。考えなければいけない事項は多岐にわたります。 経営シミュレーションの作成方法 ● 経営シミュレーションの作成 ・毎日頑張っているが、思ったほどお金が残らない ・思い通りの人生をおくるためには、どのくらいお金が必要なのか? ・どのくらいの売上高まで頑張れば、必要なお金が残せるのか? というようなことでお困りの先生は結構多くおられます。これを解決するために経営シミュレーションの作成が有効になります。 ● 経営シミュレーション作成のSTEP 経営シミュレーションの作成については以下のようなSTEPになります。 STEP1 現状把握 「今の状態で残っているお金はいくら?」を算出します。 STEP2 ライフプランから必要資金を出す ライフプランから、老後資金・教育資金・設備資金・住宅資金などの様々な必要資金を検討し、「そのためには、今年1年でお金をどれだけ残さなければならないのか……?」を算出します。 STEP3 ギャップを見つけて対策を練る 「今年1年でお金を残すために、どれだけ売上高が必要なのか?」 「医院経費や生活費をどれくらい使えるのか?」 などをライフプランから逆算してシミュレーションし、経営計画を作成します。 STEP4 図解で直感的に理解する シミュレーション結果を図解表示し、会計の知識がなくても簡単に理解できるようにします。経営シミュレーションを作成することにより、院長自身のありたい未来を思い描くとともに、それに向けてどう進んでいくかをご検討いただきたいと思います。 著者:日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之 監修:㈱日本医療企画 制作年月:2022年10月19日

「介護サービス」「食事の提供」「住まいの提供」 3つの「品質」を高くするために資金を投入
<取材先>NPOヘルスケア・デザイン・ネットワーク 矢作 成実 全国33法人・622事業所を展開し、1万2,000人を超える職員が働く湖山グループ。 売上高は右肩上がりを続けており、2020年度は700億円にも上っています。 では、事業で得た収益は何に投じているのでしょうか。 ここでは、同グループの矢作成実氏に「湖山グループのお金の振り分け方」について伺いました。 給与体系と職能が連動 モチベーションを維持させる 図表にあるように、各法人全体の売上を合わせると、湖山グループ全体の売上高は年々上り続けています。規模感でいえば、上場企業の介護大手10社のなかに入る規模ではあります。 「介護事業の内訳は、『介護サービス』『食事の提供』、施設系であれば『住まいの提供』の3つ。これらの品質を高めることが重要であり、ここに資金を大きく投入しています」と、矢作氏が話すように、湖山グループの資金使途は、いたってシンプルです。さらにその使い道について、介護サービスであれば、 ●人材の採用レベルと教育レベルを上げる ●処遇に関しては、労働分配率の向上を徹底的に図る という風に分けています。 採用は全国各法人の人材部門と連携するNPOヘルスケア・デザイン・ネットワーク側で情報を共有します。新型コロナ禍以降はオンラインによる求人が増えたことから、大手サービスを利用したり、ウェブ面接を導入するなど、求職者とのタッチポイントを強化する面に投資しています。 処遇に関しては、無資格で入職した新卒職員の場合、入職後3年間で実務者養成講座を修了し介護福祉士の資格を取得し、27歳の時点で経営初級講座を受講する、というキャリアラダーを構築。その後、マネジメント職を希望する職員に対しては経営基礎講座の受講を認めるなど教育体制を整えており、こうした職能レベルに応じて給与を上げるシステムを構築しています。職員自身も、自身の入社年次や研修受講歴、取得資格などから給与がどのように上がるのかが分かるため、モチベーションアップにも繋がっているようです。 食事の提供については、食材などを本部が一括して購入・配布することでコスト軽減を図る、という手法を使っていないことに、大きな特徴があります。「メニュー作成も各施設に任せていますが、恐らく食材原価は売上の7〜8割というところが多いでしょう。新潟や会津など米どころに施設が多いからかこだわりがあるようで、かなり質の高いお米を使っています。ある施設の方は『この地域で一番食事がおいしいのはうちの施設』と話すくらいです」と、矢作氏。そこからは、「食材費を削って、利益率を高める」という考えが存在しないことがわかります。 職員に投資をすることが安定した運営に繋がる 建物は需要の高い特別養護老人ホームを中心に、年7〜8棟をコンスタントに開発しています。その際は金利上昇のリスクに備えて長期固定金利でしか借りていないといいます。「安心感が異なります。金融機関と長期的な関係をつくるため、中間・期末時は法人別・グループ全体の決算を報告し、事業計画発表会にもお越しいただき、事業内容をご確認いただきます」と、矢作氏。 施設運営は教育・情報開示・権限移譲の方針の下、現場で考え損益を意識するよう求めており、法人全体で適正利益が出ていれば問題ないとしています。 利益が出ることは喜ばしいこと、と考えがちですが、同グループではむしろ利益が出ると「人が足りていないのでは?」という発想になると言います。コストのなかでは人件費が大きい割合を占めているため、利益が出るということは適正な人員配置になっていない可能性がある、という意識をグループ全体が共有しているのです。 「赤字は出せませんが、利益を必要以上に追い求めることはしないという考えが、グループ全体に浸透しています。損益分岐点は各法人・施設が把握していますので、それを踏ま えて、どこまで費用を使っていいのかという計算を徹底して行っているのです」と、矢作氏は説明します。 そのため、期末に資金が残ると賞与として配るケースも珍しくありません。 「介護事業所は職員がいないと始まりません。ご利用者はもちろん、職員を大事にするのは湖山泰成代表の考えでもあります。新型コロナ禍にある今期は『職員を守るためにお金を使う』のスローガンのもと、各施設がPCRの検査キットなどを購入し、安心して働ける環境づくりに力を入れています」と矢作氏が説明するように、給与だけではなく福利厚生や環境整備などに利益を回すことで、職員が働き続けやすい体制を敷いているのです。2021年6月からは、一部の施設で全職員に対して朝食を無料で提供することも始めています。食費を気にせず食を楽しめる環境をつくることで、業務に集中できるようにしたいという、湖山代表の思いを具現化したものです。 その他、お祭りなどのイベントを積極的に開催するなど、地域貢献事業にも取り組んでいます。「地域包括ケアシステムの中、みなさんが仲間です。貢献できることをするからこそ地域の中で認められます。こういった事業にもお金は惜しまないのがグループ全体の方針です」 借り入れでは堅実な姿勢を示しつつ、必要なところでは投資を惜しみません。結果、利用者や職員の満足度は上がり、サービスに磨きがかかっていきます。理想的なサイクルではないでしょうか。

立地選定の手順とポイント 開業タイプ(テナント)~テナントの選び方、チェックすべきポイント~
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 開業するにあたって、自身で購入した不動産によりクリニックを開業するのか(戸建て開業)、不動産を賃借してクリニックを開業するのか(テナント開業)について、決断する必要があります。今回は、テナント開業のポイントをご紹介いたします。 目次 01:テナント開業のメリット・デメリット 02:どのようなテナントが理想的? 03:院外処方 04:テナントの設備・契約のチェック 05:おわりに テナント開業のメリット・デメリット テナント開業は、初期費用がおさえられ、自己資金が少なくて済み、立地の良いエリアに開業できる可能性が高いなどのメリットがあります。 一方で、撤退時の原状復帰にお金がかかる場合や、設計の自由度に制約のある場合、テナントオーナーの都合に左右される場合があるなどのデメリットがあります。さらに、契約や設備の面で気を付けるべき点もあります。 どのようなテナントが理想的? 場所がある程度定まったら、テナントの立地やサイズ感をチェックしましょう。例えば、手術を行う眼科であれば、通院が必要となり付き添いも多いことが予想されます。したがって、駐車場の有無や駅からの利便性、待合室において付添人が待つスペースがあるか否かなどについて検討する必要があります。 テナント自体が魅力的だとしても、テナントビル内に入っている他の会社の業種にも注意を払わなければいけません。クリニックに似つかわない業種が同じテナントビルに入っている場合、集患に悪影響が及んでしまうおそれがあります。医療モールの場合にはそのような懸念点はありませんが、同じ診療科目のクリニックが入っている場合は集患が難しくなることがあるのでご留意ください。 院外処方 場所を選定する初期段階で調剤薬局のことを念頭に置いておかなければなりません。院外処方を選ぶ際は、薬局からのアクセスがよい立地を選定すべきであります。この点、医療モールであれば、ビル内、ないしはビルの近くにすでに薬局がある可能性が高いです。 テナントの設備・契約のチェック テナントの設備や契約についてチェックすべき点を紹介します。 ・建築基準法上のチェック 耐震構造やアスベストの有無、消防設備について確認しておきましょう。 ・天井高や床下配管工事 医療機器を設置する関係上、天井高に留意が必要となります。医療機器を搬送する経路が確保されているかについてもご確認ください。また、電気設備やトイレの確認なども忘れずに行いましょう。 このような確認を行う際には、クリニック開業を専門としている業者さんに依頼されることをお勧めします。 ・契約期間 テナントを借りて開業する場合に契約期間に期限が設けられていることがあります(定期借家契約)。例えば契約を結んでから20年後に退去することを前提に契約を結んだ場合、順調にクリニック経営ができている場合であっても、期間が満了すれば退去を求められるケースがあります。したがって、賃貸借契約を結ぶ際には定期借家契約を避けるか、もしくは契約期間の縛りがどの程度のものなのか、テナントオーナーと相談するべきであります。 ・増築や改造 増築や改造はテナントオーナーの同意なしで行うことができません。医療法上の基準を満たすために改装が必要であれば、テナントの改装が可能かどうか確認しておきましょう。 ・広告の規制 広告は集患には大事なポイントとなります。例えば、〇〇クリニックなどの看板を立ててはいけないとなると、集患に大きな影響を与えます。 おわりに テナント開業のメリット・デメリットや気を付けるべきチェックポイントについてご紹介しました。これらのポイントを念頭に、納得のいく開業をしてください。

介護事業者に必要な「財務・会計」の基礎知識
<取材先> 株式会社Moff 代表取締役社長 土田泰広 PEファンドで大手介護事業者の買収にも携わった経験を持つ土田泰広氏。公認会計士でありグロービス経営大学院経営研究科の准教授としても活躍する土田氏に、「財務・会計」の基礎知識について伺いました。 【本文】 ■【初級編】PL(損益計算書)とBS(賃借対照表) フローとストックの関係 まずは、PLとBSの活用について説明します。 介護事業経営においては、介護報酬や家賃収入、各種利用料などによる「売上」があります。売上から人件費や賃料、給食委託費などほぼ固定費となる「売上原価」、そして「販管費」「経常損益」などを足し引きしたものが「純利益」です。こうした現場のオペレーションのサイクルを表したものがPLとなります。 制度ビジネスである介護事業においては、売上が報酬改定等によって変動する中、いかに売上・コストを管理して利益を確保するかが重要と言えるでしょう。 厚生労働省「2020年度介護事業経営実態調査」によると、業界平均の収支差率は2.4%。人件費等の固定費が大きなウエイトを占める上、人員配置等の規制もあるためこの削減余地は乏しいと言えます。加えて、3年に1度の報酬改定による収益・利益への影響も大きい。人件費への投資効果を最大化するためには、生産性向上・コスト管理や、ノウハウ・情報共有でのチーム力向上、多様なフィールドで活躍できる「職員のマルチタレント化」といった取り組みが必要でしょう。 PLが現場のオペレーションのサイクルであることに対し、BSは経営マネジメントのサイクルです。企業が持つ「資産」における、銀行などからの借入金にあたる「負債」と起業の際の種銭や返済の必要のない出資金、利益など「純資産」の割合を表すのがBS。通常、企業は種銭を入れ、借入金を活用して資金を拡大し、事業資産へ投資する。そして生み出した利益が蓄積される、といったサイクルを回して運営しています(図①参照)。 介護事業と一言で言っても、施設系サービス企業と在宅系サービス企業とではBSはまったく異なります。仮に同じ売上規模の2社を比較してみても、施設系企業では、不動産などによる負債が大きくなり、その分資産も大きくなります。BSを軽く(小さく)するために、一部不動産をREIT等に売却し運営を受託するという方法もあります。一方で在宅系企業は、施設系の約5割と少ない資産で事業化ができるというメリットがあります(図②参照)。 安定成長のためには、地域内の需要・競合を踏まえた上で、こうしたアセットモデルとフローモデルをいかにミックスさせるかが重要です。 ■【中級編】ROE(自己資本利益率)活用のメリット 次に、ROE活用のメリットを紹介します。純資産における利益の割合を示すROEは、企業の価値を示す重要な指標となります。利益を純資産で割ることで算出します。 また、ROEは以下の3つの要素に分解することができます(図③参照)。 ①売上における利益の割合を示す「利益率」 ②総資産における売上を示す「総資産回転率」 ③総資産が自己資本の何倍となるかを示す「財務レバレッジ」 利益率や総資産回転率の数字を高めることは重要ですが、財務レバレッジに関しては、数値が高すぎる状態は負債過多と言えます。逆に低い場合は、事業拡大の余地ありと見ることができます。 サービスの質とコスト管理がどのような状態かを示す「利益率」、商売の作り方とビジネスモデルがどのような状態かを示す「総資産回転率」、そして成長の志と決断力を示す「財務レバレッジ」の3指標を可視化するROEについて、決算を公開する介護上場企業を例に比較してみると、それぞれの企業の経営課題や改善ポテンシャルが見えてきます(図④参照)。 それぞれの数値を最適化するための打ち手について、「利益率」改善のためには▽ICT導入による効率化・生産性向上▽現体制で算定できる加算強化▽各種調達コストの見直し。「総資産回転率」改善のためには▽資産不要の保険外サービスの強化▽運転資本の改善(回収・支払いサイクル)▽余剰資金・遊休資産の処分。「財務レバレッジ」改善のためには▽融資を活用したM&Aや事業所開設▽配当・自社株買いの拡大▽各種補助金の活用――など、具体的な対策も考えられるでしょう。 ■【発展編】経営力が高まるICT導入の考え方 最後に、重要な視点として、経営力が高まるICT導入の考え方について紹介します。現在、介護事業所で注目を集めるICT機器は主に、介護記録や請求ソフトなど「記録・申告系」、チャットボットやテレビ電話、インカムなど「コミュニケーション系」、シフト・送迎管理など「業務システム系」、ベッドセンサーやカメラなど「見守り系」、身体機能・認知機能測定など「リハビリ・アセスメント系」があります。 厚労省が行った「ICT導入の効果に関する調査」によると、導入した7割の事業所が間接業務の削減、直接ケア時間の増加、ミス減少等の効果を実感しているようです(図⑤参照)。 しかし、「削減した間接業務時間」は1人当たり月平均30分ほど、「増加した直接ケア時間」は30分未満もしくは変化なしの事業所が最多との結果。果たして、ICT導入に取り組んだ事業所が得たかった効果はこれでよいのでしょうか。 私は、ICTツールの導入効果を「経営貢献度」として確認する必要があると考えています。まずは、「アナログ業務の効率化に貢献しているか」。残業代や職員の心理的負担を削減し、本来のケアに集中できるといった効果があれば、人件費・離職率の抑制に貢献できており、PLにおけるコスト効率化に該当すると言えます。 次に、「スタッフの戦力アップに貢献しているか」。業務標準化により、経験・スキルに依存しない柔軟な人員体制が実現できていれば、固定的な人件費のフレキシブル化につなげられるでしょう。 そして、「新たな売上獲得に活用できるか」という視点です。ICTを最大限に活用し、このレベルを目指す意識が必要になります。 このレベルが指すのは、ICT導入で得たデータを活用することで、個人に最適な自費サービスの提供を行ったり、他社との差別化ツールとして入居率・稼働率の向上を実現したりするケースにあたります。新たな加算の算定や保険外収益を生み出すことで、利益率・ROEの向上に直接的に貢献します。効率化という視点だけでは不十分であり、固定費のフレキシブル化と、「稼ぐICT」を検討すべきなのです。 ■【雑談編】ファンドから見た介護業界の魅力 ちなみにこれは雑談ですが、昨今、介護業界におけるM&Aやファンドによる買収の動きが目立っています。2017年以降M&A件数は大きく伸びており、国内外の大手ファンドが、大手介護事業者を数百億~1000億円以上の価格で買収しています。近年では、20年のベインキャピタルによるニチイ学館の買収(約1100億円)、MBKパートナーズによるツクイホールディングス買収(約630億円)などが記憶に新しいところです。 介護業界でこうした投資ファンド案件が増えた理由について、第一に「安定的な需要と、報酬改定が行われるまでの数年間の安定的なキャッシュフロー」が挙げられます。中でも、不動産を有する施設系企業の企業価値評価がより確立されています。 また、介護保険法施行から約20年が経ち、事業承継のタイミングで「売りもの」が増えたこと、収益構造やオペレーションが類似しており規模の経済が働きやすいこと、ベストプラクティスの横展開がしやすいこと。そして、大手企業によるM&A意欲が高く、IPO以外のエグジットも見やすいことなどがあります。 これらを踏まえると、このM&A時代に経営者としてどうあるべきかが見えてきます。買い手となりたい場合は、エージェント等を通じて、定期的に売り案件の情報を確認しておくこと、そして、自ら興味ある企業をリストアップし、経営陣や株主にアプローチを仕掛けることなどが必要です。 売り手となりたい場合は、買い手の観点から客観的な自社事業の評価を常に確認しておくこと、M&Aに際しボトルネックとなりえる論点(法的、関係会社、株主等)を確認しておくこと、経営陣が買い手となるMBOも視野に入れてみること、などが効果的でしょう。 ※本記事は、9月13日開催の介護事業者向けセミナー「介護事業者に必要な財務・会計知識~持続可能な介護経営のために~」の内容を編集し作成したものです。 土田 泰広(つちだ・やすひろ) 株式会社Moff代表取締役 社長 早稲田大学政治経済学部卒。監査法人トーマツ経て、シカゴ大学にて経営学修士(MBA)課程を修了。経営コンサルティング会社A.T.カーニーにて企業再生等のプロジェクトを経験。その後、米系投資ファンド及び日系金融機関にてプライベートエクイティ投資にて、投資先企業のDD/審査及び投資後のM&A・アライアンス戦略を支援。Moff入社後は取締役CFOとして資金調達、事業開発に従事した後、2021年6月より代表取締役社長を務める。三菱総合研究所 介護サービス専門コンサルタント、グロービス経営大学院経営研究科准教授、日本公認会計士。

【院長のためのドラッカー講座】理念・使命とは何か
<著者>内藤孝司 医療法人る・ぷてぃ・らぱん 理事長兼CEO 使命が自分のものになると仕事にワクワクできる 組織には明確な使命が必要です。使命が希薄では、職員に対して組織や仕事が魅力的なものとはなり得ません。使命なき組織は、そこで働く人々に価値ある仕事を提供することは不可能です。ある会社では入社説明会でいつも使命についての話をしていましたが、1年間、使命を語ることなく新入社員を採用したところ、その世代の社員は仕事に対する意識が低くなったそうです。 そのため、一流の経営者や幹部は使命と成果について考えているものです。しかし、売り上げや規模を目標としている企業が多く、使命を持って事業を行っている組織は少数派です。また、使命を優秀な人材を獲得するため、あるいは売り上げを伸ばすための飾り物(ツール)と考えているところも多く、そういった組織ではトップ以下、使命を覚えていなかったり忘れていたりして対外的に語ることができないのが実情です。 私が学んだドラッカー塾では、使命の講義の際にサンタクロースが事例としてよく出てきます。サンタクロースの使命は、子どもたちに夢を与えることです。しかし、この仕事を単に時間給で考えたらどうでしょうか。 寒い冬に子どものいる家庭を一軒一軒訪れて煙突に登り、物音を立てないように息を潜めてプレゼントを置いていく。正直、割に合わない仕事と言えます。しかし、誰もがその仕事を崇高でかけがえのない仕事だと思っています。これが使命なのです。 使命は私たちに「仕事の価値」と「エネルギー」を与えてくれるとともに、自分がとるべき行動と決定の明確な指針となってくれます。また、価値ある使命が優秀な人材を獲得し、成長させ、到達すべき理想や目標を示し、具体的に何をすべきかを教えてくれるのです。使命が自分のものになっている人は、仕事に対してワクワクできるのです。 また、逆境にあっても諦めずに続ける力を持っています。反対に、使命がない人の多くは数年後に仕事が変わっています。それは、目的が地位やお金だからです。やってもやってもうまくいかないとき、使命がない人は諦めてしまいます。 離職者が多く悩んでいる診療所は、組織に使命がないか、あったとしても希薄、もしくはお金が目的で使命に共感していない人を雇用し続けているからかもしれません。自らの組織の使命と働く人々の価値観をもう一度チェックしたほうがいいでしょう。 スタッフに支持され大切にされる使命をつくる では、使命をどうつくったらいいのでしょうか。使命とは、世の中を変えたり、自らが基準の設定者になり得るものでなければならないと言われています。どういうことかをジョンソン・エンド・ジョンソンの例から解説します。 同社は1982年のタイレノール事件(シアン化合物混入事件)のとき、「タイレノールにシアン化合物混入の疑いがある」と判明した時点で、多額の損失が出ることを覚悟したうえで、速やかに消費者に対して、新聞の一面広告、専用フリーダイヤルの設置、10万回以上に及ぶテレビ放映などの手段で回収と注意を呼びかけました。これは当時としては異例でしたが、同社には「消費者の命を守る」ことを謳った使命があり、それが社内に徹底されていたため、このような対応を躊躇なく行いました。この対応法は、その後の企業の商品回収のモデルとなっています。 同社のような真の使命が最初からある診療所は少ないと言えます。私自身がそうでした。使命も理念もなく、ただ毎日働くだけで明確なビジョンもゴールも持ち合わせていませんでした。開業してから何年も経って、ほかの企業家から指摘を受けてようやく理念づくりに着手し、ドラッカー塾で学び始めてから使命をつくり上げました。今では診療所経営においての使命の重要さを痛感しています。 使命をつくる際の注意点としては、院長だけで作成すると、スタッフに共感を得られない場合、ただの飾り物になってしまうということです。トップダウンではなく、ボトムアップのほうが有効です。そこで働く人々が日常の仕事と使命がつながっていると感じられなければ、それは誤りなのです。また、使命はTシャツに一言で書けるような簡潔、明瞭なものでなければなりません。立派な意図を盛り込みすぎた長いものは覚えることができず、ぼやけてしまい、行動に移すことができないからです。 私の場合は、全スタッフに聞いてまとめ上げ、会議で賛同を得て、はじめて使命が完成しました。そのため、当法人の使命は今でもすべてのスタッフに支持され、大事にされています。使命があることでスタッフは上からの指示を待つことなく、使命に沿っているか否かで、自ら考えて行動に移すことができるようになりました。 最後に、使命は見直しが必要となる場合もあるため、組織や社会の変化、また時代に応じて変えていくことも必要です。使命達成と仕事の改善を考える場が必要であり、使命実現に向けた仕事を成し遂げた人を賞賛できるような組織にすることがリーダーである院長の重要な仕事となります。リーダーがなすべきことは、組織の使命と定めたことを、さらに個別に具体化していくことです。 使命や理念がなくとも遅くはありません。今から、あなた自身と診療所の価値観に合った使命や理念をつくり上げ、すぐに明確な行動に移せるようにしましょう。 (取材・掲載年:2017年6月)

新車の納期長期化 福祉車両への影響はいかに
<取材先>シャープファイナンス株式会社・芙蓉オートリース株式会社 昨今、半導体不足の影響により新車の納期が長期化しています。従来では数ヶ月の納期だったものが、現在では1年程かかることも珍しくありません。福祉車両も例外ではなく、入れ替えや調達の際になかなか車両が確保できず、お困りの介護事業者様も多いのではないでしょうか。 今回は、このようなお悩みを抱えている事業者様におすすめしたい、福祉車両の「中古リース」についてお話ししていきます。 購入でもリースでも、新車の入手が困難 訪問介護や通所介護で必須となる福祉車両ですが、現在は納期遅延の影響で新車がすぐに手に入らない状況が続いています。 福祉車両は架装装備の工程も加わりますので、一般車両よりも更に納期が長期化することとなります。 こうした納期遅延の影響は、福祉車両を“購入”する場合に限らず、“リース“で導入する際も同様です。 一般的にカーリースは、リース会社がカーディーラー等より新車を購入の上、お客様にリース車両として貸し出します。そのため、リース会社も新車の購入ができないとなれば、カーリースのお取組み自体も難しいということになります。 「新車の導入は現在考えていないので、自分たちにはあまり関係のない話だ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、想定外の事故や不具合で車両が修理不能となり、「急遽新たな車両が必要になったので急いでリースを契約したい」というご相談も少なくありません。 また、「人員の増加に伴い車両を増やすこととなった」、「サービスの質向上のために増車する必要がでてきた」というお問い合わせも多くいただきます。 突発的な車両の入れ替えや調達は、どの事業所にも起こりうることなのです。 意外と知られていない? 中古の福祉車両もリースが可能 近年、訪問介護や通所介護事業者様においては、福祉車両をリースでご導入するケースが増えています。 頭金や初期費用が不要であったり、車両の管理業務は全てリース会社が行うなど、購入よりもたくさんのメリットを享受できるためです。 >>「カーリースとは?」仕組みやメリットを解説 しかし、先ほどお話したとおり、現在は新車のリースをすぐにご利用いただけないケースも多々あります。 「中古車両の購入も考えたが、一時的に支出が膨らむことは避けたい。中古車両もリースできたらいいのに・・・」と考える方もいらっしゃるかと思います。 実は、中古車両もリースでご利用いただけるということをご存じでしょうか? 現在当社では、福祉車両の納期が長期化してお困りの介護事業者様には、中古車両のリースをご紹介しています。 というのも、車検整備と名義変更の完了次第で納車が可能なため、最短1ヵ月でお客様にお届けすることができるからです。 急に車両調達が必要となってしまったケースにおいては、まさに最適なサービスと言えます。 中古車両と聞くと、「古い」「汚い」など、マイナスなイメージをお持ちの方も多くいらっしゃいます。しかし、当社で扱う車両は基本的に4年落ちの型式のため、中古車両といっても見た目は新車とさほど遜色ありません。 また、性能面で「すぐに故障するのでは?」と心配するお声もよく聞かれますが、年式が比較的新しく走行距離も少ない車両を選定しておりますので、故障が頻発するようなことはありません。 万が一故障が発生した場合でも、新車リースと同様にメンテンスサービスが付いておりますので、修理後に安心・安全にご利用いただけます。 想定していなかった福祉車両の入れ替えや調達 どう対応する? ここまでお話ししてきたとおり、車両の調達といっても様々な方法が考えられます。 長期的目線で車両調達をご検討中なのか、あるいは短期間での納車を希望されているのかによっても、新車もしくは中古車、どちらを選ぶべきか変わります。 更には、コスト面や使用見込み期間、車両の管理業務軽減など、事業者様がどのような点を重視されるのかにより、リースもしくは購入どちらが最適かを選ぶ必要性もあります。 福祉車両の調達で悩まれている方がいらっしゃいましたら、是非一度ご相談ください。 Q1:リース契約の内容と、メンテナンス内容を教えてください。 →主な内容については、下表をご覧ください。 (注)一部地域においては、福祉架装のメンテナンスや故障時の代車サービスやをご提供できない場合があります Q2:メンテナンスリースで契約中の車両を修理に出したいのですが、別途費用が発生するのでしょうか? →部品交換や修理費用等も月額に含めてお支払いいただけます。そのため、修理の都度費用が発生することはありません。 (主な契約内容やメンテナンス内容については、Q1をご覧ください) Q3:メンテナンス内容についてですが、修理や部品交換に回数制限はありますか? →リース期間中であれば、回数制限なくご利用いただけます。 ※消耗部品(タイヤ、バッテリー、ワイパーゴム等)については、経年劣化・摩耗による交換となります。 Q4:都道府県別で、サービス提供地域に制限はありますか? →全国どこの事業者様でもご利用いただけます。当社は全国に営業所がありますので、各拠点よりきめ細やかなサービス提供が可能です。 また車両の故障時においても、全国に提携先の修理工場がありますので、すぐにご対応が可能です。 Q5:車両に社名やロゴを入れることは可能ですか? →はい、オプションでラッピングサービスも承っています。

他の業界での当たり前を 介護業界の当たり前に
<取材先>株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長 松田 吉時 「介護のプロ」を標榜する株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ。 2008年の創業から急成長していますが、そこには「利益を生み出す仕組みづくり」といった言葉では説明できない、シンプルかつ明快な経営戦略がありました。 マネジメントができる人材が活躍できるポストを作る 「『業績が急激に伸びていますが、どんな魔法を使っているんですか』と聞かれますが、そういうものは特にないんです。重要なのは、当たり前のことをコツコツと、論理立てて積み重ねること。これは会社が事業を展開する上でも、社員が事業所の管理者として成功する上でも同様だと考えています」と話すのは株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ取締役副社長の松田吉時さん。 「介護」×「IT」をコンセプトに、〝業界の当たり前を変えていく〟を命題としている同社は、訪問介護、居宅介護支援、通所介護などの在宅系サービスを中心に展開しています。2008年の創業以来、毎年約1.4倍のペースで成長を続けています。2022年8月現在、同社が運営する介護事業所は、訪問介護事業所を中心に200カ所。社員数は約2,200名で売上高は140億円(2021年度)に達しています。 同社が"経営の原則"として重視しているのは、まず従業員への対応だと言います。具体的には、業務の効率を上げて利益を生み出したら、その分平均給与を上げて、利益を社員に還元することが一つ。もう一つは、事業の規模を拡大することで、ポストの数を増やし、キャリアパスを示すことです。 同社の事業は、IT化などにより業務効率を上げると共に、地域への認知度と地域のシェアを高めるドミナント戦略に則って進められています。「訪問介護でいえば、1事業所あたりの売り上げが月1,000万円、利用者120〜130人程度の規模を一つの目安と考えています。その規模を超えると、非常に運営が難しくなります」と、松田さんは話します。 この規模の事業所では約20人の正社員ヘルパーが必要となりますが、利用者120人×ヘルパー20人の組み合わせを常にイメージしながらシフトを組まざるを得ず、シフト作成などの業務負担も多大になります。そこで、ひとつの事業所で売り上げが1,000万円を超えたところは、営業範囲を分割し、近隣に事業所を新規開設するという戦略を立てています。 このように、売り上げ規模に応じて事業所数を増やしていくと、必然的に新しい事業所をマネジメントする人材が常に必要となります。つまり、「事業所を増やす」という経営戦略と「各事業所をマネジメントできる人材を育成する」という人材育成を両立していく必要があります。 同社が目指す方向性について、松田さんはこう話します。 「介護は、電気や水道、道路などと同様の社会インフラだと考えています。なので、介護サービスを世の中に広く均等に供給することが私たちの責務と言えるでしょう。一方でお客様からの要望にできるだけ応えることも、介護事業者としては成すべきこと。従業員と会社とお客様の3つの思いを一つにして、妥協点を見つけるわけです。こういったことまで考えながらシフトを組んでいくことが、訪問介護事業の肝になります」 たとえば同社の場合、深夜帯での訪問介護のサービスは、従業員の負担を考えて行っていません。しかし、それを希望する利用者がいた場合、同社では「①なぜ深夜にサービスが必要なのか」「②それは深夜でないと叶えることはできないのか」「③深夜でなくても大丈夫であれば、シフトをどのように組めばいいのか」「④深夜でしか対応できないのであれば、ほかの事業者に対応を依頼することはできないのか」と深掘りして考えます。結果として④の結論に至った場合、もちろん同社の売り上げにはならなりません。しかし、「⑤イレギュラーだが深夜に職員を働かせる」といった対応は取りません。「お客様の要望すべてに応えることが、当社が目指す介護ではないからです。できること、できないことを見極め、当社でできない場合にはどうすればお客様の要望に対応できるか知恵を出し、提案する、ということが重要だと思っています」と、松田さんは強調します。 これは、社員への負担を増やすのではなく、今ある資源で適正に事業所が回るようにすることが、持続可能な介護サービスの提供には重要である、と同社では認識しているからです。それぞれの事業所がきちんと回っていくことが、同社の業績に直結します。事業所がマネジメントとサービス提供に専念できるよう、本社はサポート体制の拡充に余念がありません。 「請求業務を始め、労務や法務、介護保険等については、本社の専門部署がバックアップします。また、ITのツールを開発し、情報共有と情報の見える化を徹底するなど、現場業務負荷の削減は常に考えています」 新卒社員を2年目から管理者に登用 事業を拡大し、事業所の数が増えていくと、その分それを管理する人材が必要になります。同社でも最初は中途採用の人材にそうしたポストを任せていましたが、うまくいかないことも多かったと言います。そこで、思いきって新卒出身の社員に任せてみたところ、おおむね1年程度の現場経験があり、体系立った研修をしっかり受けた社員であれば、十分事業所のマネジメントを任せられることが分かってきました。そこで同社では、マネジメント・経営の経験を積みたい新卒社員に向けた「マネジメントコース」と、介護現場での専門性を高めたい新卒社員に向けた「プロフェッショナルコース(プロコース)」という二種類の採用枠を設け、それぞれに合わせたキャリアパスを構築しています(下図)。 マネジメントコースは常勤ヘルパーを経験した後、1〜2年で管理者となるのが目標です。一方、プロコースは3年後にサービス提供責任者を目指すというものです。明確に目指すもの、自身のキャリアパスが分かるため、社員にとっても働いた先が見えやすいと言います。 なお、管理者になると、担当している事業所の売り上げが伸びると、その分が給与に反映される仕組みとなっています。単に責任だけが重くなるのではなく、自身の働き方が待遇に直結するという点は、マネジメントを目指す人には魅力でしょう。なお、それぞれのコースを選ぶ比率は、マネジメントコース1に対してプロコース2の割合になっていると言います。 「介護業界で長く働いてきた人に、急に『マネジメントの視点を持て』と言っても、それまでの業界の常識などが邪魔をしてしまい、抵抗感を持つ人が多いのです。むしろ社会経験はないが優秀な新卒社員のほうが、フラットな価値観のところから経営的な視点を教育していくことができるので、合理的な判断ができるようになります。私たちが新卒に『マネジメントコース』を用意している意味はそこにあります」と同社取締役の太原有理さんは説明します。 「量」が不足する介護業界に一石を投じる 同社の大きな特徴として、訪問介護をメインにしていながらも、正社員の比率が高いことが挙げられます。中途採用に加え、創業3年目から新卒採用も開始し、今や全従業員のうち84%を正社員が占めるまでになりました。これにより、教育が行き届き、サービスの均質化が実現できると共に、シフト管理がしやすくなっていると言います。 「正社員は朝9時から夜6時まで、1日8時間×5日で週に40時間という、稼働できる枠が先に決まっています。一方、登録ヘルパーが主体だと、シフトはヘルパーさんの都合次第となり、スケジュールのコントロールが難しくなります」 また、「正社員に夜勤は付きもの」というイメージが強い介護業界にあって、夜勤がないことは採用の大きなアピールポイントになっています。 一方で、正社員の雇用を拡大することは、事業規模の拡大とセットになっているため、リスクも高くなります。 「私たちは、そもそも介護には『量』が足りていないと思っています。人手不足で十分なサービスが受けられない人が増えてきている現状においては、一定レベルのケアをしっかり世の中に広げていくことがまず重要だと思っています。そのためには、リスクを覚悟の上で規模を大きくしていかなくてはいけません。『理想の介護』を少数精鋭で追求したい、という事業者も多いですが、我々の目指すベクトルは違います」と太原さんは強調します。「事業所を増やすなかで『管理者が足りない』『でも、中途だとうまくいかない』と他業界のように新卒採用を始め、うまく回るようになりました。あくまで試行錯誤の連続ですが、他の業界では普通のことを、いかに介護業界にも取り入れていくか、これからも日々挑戦です」(松田さん) (写真キャプション) PH1 株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長の松田吉時さん 図表 松田吉時 株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長 東京都新宿区新宿4-1-6 JR新宿ミライナタワー15F Tel:03-6273-1925 URL:www.careritz.co.jp プロフィール 2008年の創業以来、IT技術を活用し介護業界No.1をめざす同社は、毎年約1.4倍のペースで成長を続ける。訪問介護を中心に200の事業所と施設を運営し、社員2,200名以上を雇用(2022年8月時点)。今後は首都圏と名古屋に加え、仙台、京都、大坂、兵庫など、全国主要都市へ事業を展開し、業界No.1を経営目標とし売り上げ1,000憶円をめざす。

ー「アイモvifa」後編 ー ヘッドマウント型から卓上型へ 患者の“受けやすさ”を最大限追求
<取材先>株式会社クリュートメディカルシステムズ 代表取締役 江口 哲也 社長 より気軽な緑内障検査の実施を目的に開発された、株式会社クリュートメディカルシステムズの卓上型視機能評価機「アイモvifa」。 従来の検査所要時間を大幅に短縮し、スタッフの労力を減らし、患者さんの負担も軽減する、まさに「三方よし」の製品となっています。しかし、これが実現するまでには、同社によるさまざまな試行錯誤がありました。 後編では、そんな「アイモvifa」の開発ストーリーをご紹介します。 >>前編 「今後も増加する緑内障検査のニーズ 、卓上型視野計「アイモvifa」がより効率的な検査を提供」 <㈱クリュートメディカルシステムズが開発した「imo vifa」> 従来機で得られた知見が「アイモvifa」に活かされた “暗室がなくても検査ができる視野計”。このコンセプトのもと同社が最初に開発・販売したのが、「アイモvifa」の前身である「アイモ」です。 これは、ヘッドマウントディスプレイ型の視野計で、患者が頭部に装着することで外界の光を遮断。表示されるプログラムに沿って検査すれば、暗室・スタッフ付き添いなしでもスムーズに検査できるという設計でした。 「アイモ」の発売後、導入した眼科ユーザーからは検査プログラムの精度や、スタッフや暗室が必要ない点など、想定していた課題に対する一定の評価が得られました。しかし、一方で以下のような新しい課題もいくつか寄せられました。 ①事前準備の手間 従来の「アイモ」では、瞳孔間距離や焦点位置などを調整するためのダイヤルがついており、検査前にスタッフが患者ごとに手動で調整する仕組みでした。ダイヤル調整自体は難しい操作ではなく、慣れればスムーズにできたようですが、そうした新しい作業を覚えるのが手間だという、現場スタッフからの声もあったようです。 ②機器の重量 「アイモ」には、光学系やコンピュータなど、必要な機器やプログラムがすべて本体に搭載されていました。「アイモ」1台で完結するのがメリットですが、総重量が約1.8kgありました。従来の暗室検査より、はるかに短時間で場所を選ばず検査できる半面、「患者さんに装着してもらうには少々重い」といった意見が寄せられたのです。 そこで、こうしたユーザーからの意見をもとに、同社では後継機の「アイモvifa」の開発過程においてハード・ソフトの両面から試行錯誤を実施。これらの課題解決に取り組みました。 まず、ハード面では、“暗室がなくても検査ができる視野計”という当初からのコンセプトはそのままに、ヘッドマウントディスプレイ型ではなく、患者が機器を覗き込むことで光を遮断し検査する卓上型視野計へとデザインを変更しました。これにより、患者にかかる負担を低減したほか、「アイモvifa」の重さ自体も軽量化に着手。総重量は「アイモ」の半分近くまでカットできました。 <暗室不要。設置場所を選ばないため、換気の良い明室でも検査が可能> <両眼解放。アイパッチでの遮蔽が不要で、両眼を開いたまま視野検査が可能> ソフト面では、たとえば、「アイモvifa」の内蔵カメラが患者の眼球の動きや位置を検知。その情報から患者の瞳孔間距離や焦点位置を自動調整できるように、検査プログラムをアップデートしました。このように、従来はスタッフが操作しなければならなかった手順の自動化に努めたことで、かかる手間を省略しました。 <「imo vifa」 ユーザーインターフェース> 江口代表取締役は、「ユーザーの皆様からのご意見のもと、『アイモvifa』の開発・販売に至るまで、約4年かかりました。順調に開発が進んだかといえばそうではなく、機能を改善するためにレンズなどのパーツを大きくしたいが、そのうえでコンパクトにするにはどうすればいいか、検査の精度を保ったまま自動化・効率化するためのプログラムの改善──など、部品1つの位置も緻密に配置しました。プロフェッショナルである当社のエンジニアたちの試行錯誤が、実を結んだ結果です」と振り返りました。 眼科診療所の生の声、そして同社の開発陣の試行錯誤によって生まれた「アイモvifa」。 ぜひ、効率的で質の高い緑内障検査に役立ててはいかがでしょうか。 制作年月:2022年9月21日

医師転職の傾向と対策 選ばれる診療所になるにはこの6つから取り組むべし
取材先:日本医療企画 取材年月:2019年2月 目次 傾向と対策 ①開業トレーニング 傾向と対策 ②学べる環境 傾向と対策 ③人事評価 傾向と対策 ④柔軟な勤務形態 傾向と対策 ⑤診療支援 傾向と対策 ⑥目指す医療を明確にする 07:見出し07 08:見出し08 09:見出し09 10:見出し10 傾向と対策 ①開業トレーニング ここで一定期間働けば開業に向けた準備ができる 自院での勤務を、将来の開業に向けたトレーニングの場と位置づけ、それを〝売り〟にリクルートしている診療所もあります。 開業志向を持つ病院勤務医にとっては、地域医療や集患方法、患者およびスタッフ対応など、診療所のマネジメントを生で学べる、魅力的な職場環境です。これらの経験がないままに開業するのは容易ではないからです。そこでの仕事にやりがいを感じ、結果として長く働いてくれる医師もいるかもしれません。 もちろん、急な退職や患者を連れての開業などのリスクを避ける工夫も必要でしょう。勤務医がほしい診療所と開業ノウハウを知りたい医師、お互いWin-Winとなれるよう、①(次の医師をリクルートするため)独立開業する際は1年以上前に知らせてもらう、②自院と競合になるような半径数㎞以内での開業は避けてもらう――の2点については入職時に契約を交わしておくべきです。後からの契約だと揉めるもとになってしまいます。 傾向と対策 ②学べる環境 「診療所だからこそ学べる」そんな魅力的な要素がある 医師にとって学べる環境はやはり魅力があります。「学び」と言ってもテーマは多岐にわたりますが、診療所の場合、病院ではなかなか学べない領域で勝負するのが得策です。 他にはない専門性を持つケースは別ですが、専門医療や先端医療で競ってもかなわないことが多いです。 在宅医療や緩和ケア、認知症ケア、看取り、患者サービスなどは病院よりも診療所のほうが進んでいるケースが多いです。さらには、介護事業を含めた地域包括ケアシステムの構築や、地域貢献事業といった切り口もあります。もちろん、「傾向と対策①」の開業準備も有効でしょう。 傾向と対策 ③人事評価 頑張って仕事をした分はきちんと報酬で報いられる 自分の評価に不満を持つ医師は少なくありません。仕事の動機としてお金がすべてではないですが、成果報酬型の給与を望む医師は一定数います。病院では医局からの医師派遣もあり、大胆な給与体系はつくりにくいです、診療所の場合、トップの考え方次第。貢献してくれる医師を報酬で評価しやすいのは診療所の強みの1つでしょう。 診療所と勤務医双方にメリットが大きいのは、仕事をすればするほど給与が上がる出来高連動型。ただし、基準が曖昧だとトラブルになるため、医師に求めること、評価のポイント、患者数に合わせたインセンティブなどを明確にしたうえで契約することが大切です。 傾向と対策 ④柔軟な勤務形態 時短勤務など自分の時間を大切にできる 子育てや介護などで、限られた時間しか勤務できないという医師もいます。そのため「週2日午前中だけ」といったフレキシブルな勤務も「売り」になります。 ある在宅専門診療所では、子どもと過ごす時間を増やしたいという勤務医のニーズに応えるため、診療以外の仕事は、自宅でもできる仕組みをつくり、時短勤務を実現。子育て中の医師からは「宿題をしている子どもと向き合いながら、書類作成ができる」と好評です。時短勤務だと現場になじめない恐れもあるのでフォローも大切。これは事務長がいる診療所が総じて強いです。 傾向と対策 ⑤診療支援 周辺作業の必要がなく自分の診療に専念できる 「診療に専念したい」という医師は多いです。そのため、電子カルテの入力をはじめ検査や診療補助、治療の説明などの診療周辺業務から解放されることも魅力です。 医師が診療に専念し、多くの患者を診れば、売上も増加する。患者と向き合う時間が増えれば、患者の満足度も上がるでしょう。業務効率の向上は、結果として労働時間を短縮させる可能性も高い。生産性の向上や長時間勤務の解消のためにも医師が診療に専念できる環境づくりは重要です。 傾向と対策 ⑥目指す医療を明確にする 自分が本当に求めていた共感できるコンセプトがある 目指す医療コンセプトを明確に打ち出し、その意味や目的がより多くの医師に届くよう、ホームページやSNSで発信します。自院が本当にほしい医師から共感を得られるかもしれない。たとえば、ある救急医療専門の診療所では、その思いに賛同して「ここで働かせてほしい」という医師が大勢訪れています。 広範囲に分院展開している診療所を除いて、勤務医採用と言っても大半は数人でしょう。そうであれば「他にはない環境」「目指す医療」といった理念ややりがいで勝負するという選択肢もあります。自分がどんな医療、どんな社会を目指しているのか。多くの医師に届けるため、できればメディアを通じて発信したいです。 監修:日本医療企画 取材年月:2019年2月

社交ダンスで介護予防 習い事感覚で通って表情にも変化が
<取材先>ダンス・ド・サロンマキ 管理者・生活相談員 牧野 愛 「ダンス・ド・サロンマキ」は、社交ダンスに特化したデイサービスです。 高齢者には少しハードルが高そうに思える社交ダンスを、どのようにデイサービスに取り入れているのでしょうか。管理者で生活相談員の牧野愛さんに話を聞きました。 本格的な指導のもと 社交ダンスを学ぶ場を提供 「ダンス・ド・サロンマキ」(神奈川県相模原市)は2017年にオープンした、社交ダンスに特化した生活支援型通所事業所です。管理者である牧野さん自身は社交ダンス経験者ではありませんが、市内で訪問介護と地域密着型の通所介護事業所を1カ所経営している自身の母親、そして娘が趣味で社交ダンスを楽しんでいます。そのような環境にあることから、社交ダンスと介護という組み合わせでのサービス提供に思い至ったと言います。 「社交ダンスは戦後に流行し、当時は各地にダンスホールもたくさんあったので、若い頃に社交ダンスに親しんだ高齢者は意外と多いのです」と牧野さん。長く社交ダンスを続けている人は、80代になっても90代になっても背筋がピンと伸びていて、若々しい人が多い。それならば、高齢者に引き続き社交ダンスを楽しんでもらう場をデイサービスで提供すればいいのではないか、と考えたそうです。そこで社交ダンスのスタジオを作りデイサービスを運営する傍ら、上階にある事務所で居宅介護支援事業所も運営しています。 「ダンス・ド・サロンマキ」は生活支援型通所サービスなので、対象は要支援者と要支援状態となる恐れのある高齢者。週2回、水曜日と金曜日の13時から15時までの2時間、サービスを提供しています。プログラムはバイタルチェックから始まり、準備体操をしてから社交ダンスのレッスンをスタート。プロまたはアマチュアのダンス講師による指導を受けたあと、最後にストレッチをして終了となります。ケガを防ぐためにもレッスン前後の体操やストレッチは、介護スタッフの指導のもと、入念に行っています。 「主に水曜日はラテンダンス、金曜日はスタンダードダンスと分けて、それぞれダンス講師に来てもらっており、プロA級や元アマチュアチャンピオンなど、一流の方に教えていただいています。母や娘が社交ダンスをやっている関係で様々なツテをたどり、お願いしています。ですから、デイサービスといえども指導は本格的。社交ダンスの経験がある利用者の方にも満足のいくものになっているのではないかと思います」 体力アップと同時に認知機能低下の防止にも 社交ダンスの経験はないが以前から興味がありやってみたいと思っていた人、家族に勧められた人、友達に誘われて……など、ここにやってくる利用者の参加理由は様々です。「教室に通うのは敷居が高いと思っている方や、何か趣味を見つけたいと思っている方などにはおすすめです。介護保険を使えるので、一般的な教室より費用面でもかなり気軽に通えて、お得だと思います」 実際に利用者はデイサービスというより習い事に来ているような雰囲気で、趣味の仲間と楽しんでいるような様子です。最初は地味だった服装もどんどんお洒落なものに変わったり、普通の室内履きで練習していた人が「ヒールを履きたい」と言うようになるといった変化も見られます。最初は姿勢が悪く、一人でデイサービスに来れなかった人が、通ううちに背筋がピンと伸び、一人で歩いて通えるようになったケースもあります。 「送迎はあえてしていません。ご自分で来てもらうことも訓練になります」と、工夫を示します。 利用者は趣味の仲間に会う感覚で通ってくるので、迎えに行かなくても「行きたくない」と言って休む人はほとんどいません。「ボケないように……」と言って通い始めた人が、いつしか「上達したい」と考えるようになるなど、目的が変化する点も大きなポイントです。 「社交ダンスは全身運動で、前や横だけでなく、後ろにも移動します。後退する動きというのは日常生活ではあまりしないので、普段は使わない筋肉も鍛えられます。それと、音楽に合わせなければいけないし、相手を感じながら動かなければいけないので、踊ると同 時にさまざまな感覚が刺激されるのです」と牧野さん。体力アップに加えて認知症予防の効果も期待できると言います。 現在、「ダンス・ド・サロンマキ」では、年に1回、トッププロを迎え、ダンスパーティを開催。利用者同士で一緒にダンスショップに行って衣装を選んだりするのも、通い続けるモチベーションになっています。また、成果発表の場もあり、見に来た家族からの「去年より上手になっていてすごい」などの声も、励みになっているようです。 牧野さんが利用者の変化を一番感じるのは、その表情だと言います。趣味もなく、ずっと家で過ごしていた人は表情が暗く、声も小さい。それがデイサービスに通ううちに笑顔が増え、声も大きくなってきます。「こんなに笑う人だったんだ」と驚くこともあるほどだと言います。 「課題があるとすれば、利用者数が少ないこと。別の事業所を持っているから運営できていますが、経営的には厳しい部分もあります」と、牧野さん。未経験の人でも練習すれば十分踊れるようになると、新たな利用者獲得に意欲を示します。「老後に趣味があるのとないのとでは大きな違いがあります。楽しみを見つけられると生活が豊かになりますし、介護が必要な状態になるのを遅らせることができると思います。社交ダンスは男女ペアで踊るのが基本なので、できれば男女同じくらいの人数が望ましい。男性にもぜひ参加してほしいなと思っています」

職員を大切にしたことで入職待機者が続出
<取材先> 社会福祉法人あいの土山福祉会 特別養護老人ホーム エーデル土山 介護士長 岩田 秀信 求職者を集めるだけでも苦労が絶えない昨今、「職員の空きが出るまで待ちたい」と入職希望者が列をなしている施設が存在します。それが、特別養護老人ホーム エーデル土山です。 滋賀県ののどかな郊外に建つ特養のどこに、職を求める人たちを惹きつける理由があるのでしょうか。介護士長の岩田秀信さんに聞きました。 入職待機者が続出する6つのポイント 社会福祉法人あいの土山福祉会が運営する特別養護老人ホーム エーデル土山は、滋賀県の南部、甲賀市土山町に位置します。開設は1999年4月。従来型35床とショートステイ5床に加え、ユニット型を30床併設しています。 そんな同施設では、2021年10月現在15人以上が入職待ちだと言います。 「入職の応募があった時点で、職員が空くまで待つのか、一旦(応募を)取り下げるのかを確認します。そして、『待つ』と答えた人には一度施設見学をし、入職の意思を再度確認しています」と、岩田さんは説明します。 入職待機者がいたこともあり、2020年開設した地域密着型特別養護老人ホームリトルブックも、募集から1カ月で職員が揃いました。 同施設が掲げる“入職待機者が続出するポイント”は6つあります。 それが、「ワークライフバランス・働きやすい環境」「負担のかからないケア」「スタッフの健康促進」「スタッフ特典」「待遇・福利厚生」「キャリアアップ、育成」です。 まず、「ワークライフバランス・働きやすい環境」についてです。 同施設では、残業ゼロとともに、1日の勤務時間は7.5時間、年間休日は120日を実現しています。会議や研修は勤務時間内に行うとともに、定時になったら帰るよう促すなど、残業しない仕組みを作っています。 また、余剰人員を確保し配置に余裕を持たせることで、有休が取りやすい環境を整備。取得率は80%だそうです。 「負担のかからないケア」では、移乗用リフトの導入や、自動体圧分散式エアーマット、自動窓拭きロボなども使用し、スタッフの負荷や疲労の軽減に繋げています。 また、「スタッフの健康促進」では、スタッフ専用のフィットネスジムを設置。酸素カプセルも置くなど、スタッフの疲労回復に寄与しています。 「スタッフ特典」の中身は年1回の社員旅行ですが、日帰り旅行や国内・海外旅行など複数のコースから、気の合う職員同士で4名程度のグループを組み、好きなコースを選んで旅する仕組みです。 「待遇・福利厚生」では、年収450万円以上(介護福祉士経験10年以上の目安)を打ち出すとともに、正社員の定年を70歳とし、60歳以降の昇給も保証しています。 6つ目の「キャリアアップ、育成」では、「プリセプターシップ」と呼ばれる教育制度を採用しています。年齢の近いスタッフが新人職員の指導を、約2カ月間マンツーマンで行なった後、1年間ペアを組み、成長を促す仕組みです。 求職者が魅力を感じる点について、「残業がないことや、腰痛を抱えない介護を徹底している点。また、長めの連休が取れるのも理由の一つのようです。給与面も魅力的だと聞いています」と、岩田さんは推察します。 同施設では、求人サイトなどに情報を掲載していないため、ホームページからの応募が多いと言います。そのため、職場環境などをホームページ上で全面に押し出し、関心を引かせるように工夫、応募者のほとんどは中途採用で、地域も広島や名古屋、大阪など多方面です。 「中途の応募者は介護未経験が少なくありません。これは、未経験でもしっかり指導する当法人のシステムが、評価されたからだと思っています」と岩田さんは話します。 職員が自作したホームページ。介護施設らしくないデザインが目を引く 離職率40%から働き方改革を発起 開設当初は職場環境がひどい状態だった、と岩田さんは振り返ります。 「長時間労働が常態化し、サービス残業なども多く、労働基準監督署から是正勧告を受けたほどでした。その当時の離職率は40%に上っていました」 こうした事態に強い危機感を抱き、改革を押し進めていったのが、同施設の施設長の廣岡隆之さんです。 当時、事務局長だった廣岡さんは自身が子育て中だったこともあり、今でいう働き方改革をスタートさせ、まず残業をなくすことから取り組んだと言います。 働き方改革は、廣岡さんが施設長となったことで加速。介護施設における主な3つの離職理由「残業」「腰痛」「メンタル不調」をなくす「トリプルゼロ」の取り組みを推し進めました。改革の根底にあるのは「スタッフファースト」の考え方です。 働きやすい環境を実現し、職員の定着率を上げることで入居者に対するケアも充実し、施設の収益増につなげることに成功。同時に、ホームページや研修テキストを施設で独自に作成。浮いた経費を職員の給与等に還元しました。 学生に向けた介護の魅力発信にも注力する同施設。地域の中高生対象の職場体験に加え、小学生の施設訪問も実施しています。 小学校で出前授業を行い、介護機器の体験をしてもらうことも 「利用者と交流してもらったりと、介護の楽しさや面白さを伝えています。実際、見学に来た生徒がその後、職員になったこともあります」と手応えを話す岩田さん。 同施設の快進撃は止まりそうにありません。

立地選定の手順とポイント 開業タイプ(一戸建て)~診療圏調査のやり方、診療圏調査データ活用の仕方~
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 開業するにあたって、自身で購入した不動産によりクリニックを開業するのか(戸建て開業)、不動産を賃借してクリニックを開業するのか(テナント開業)について、決断する必要があります。今回は戸建て開業について、立地選定の手順とポイントをご紹介いたします。 目次 01:クリニックの理念/経営方針に沿った候補地のリストアップ 02:診療圏調査を行う 03:土地のチェック 04:戸建て開業のメリット・デメリット 05:おわりに クリニックの理念/経営方針に沿った候補地のリストアップ リストアップした土地は自身の理念に沿っていますでしょうか。 「地域医療に貢献したい」、「自費収入に注力したい」など自身の理念によって求められる立地・地域性が異なります。土地をリストアップする前に、自身の理念を明確にしましょう。 診療圏調査を行う 安定した医院経営を行うためには、いかに新規患者を呼び込むことができるかどうかがポイントになります。そこで候補となる開業予定地で、どの程度の患者数が見込めるのかについて調査する必要があります。 診療圏の調査結果は、金融機関との融資交渉を行う上でも重要な根拠資料となりますので、候補地を選定する際には診療圏調査を実施しましょう。 土地のチェック 候補地の選定には土地の特殊性について注意が必要となり、以下の代表的な注意点があります。 ・市街化調整区域 市街化調整区域とは市街化を抑制すべき区域として指定される区域となり、不動産の建築が原則認められません。行政に許可申請を行えば、クリニックの建築は可能ですが、市街化が抑制されている地域であることから、集患に苦労される場合があります。 ・農地 農地として定められた土地に開業する場合には、農地転用が必要です。手続きに時間を要することがあり、余裕を持った開業スケジュールを組む必要があります。 ・定期借地権 普通借地権とは異なり、地主を保護する権利となるため、契約期間が満了すると自動的に契約が更新されません。契約を更新できない場合には、契約満了後、地主に返還する必要がありますので、賃貸借契約を締結する際には契約更新の有無について地主と交渉することをお勧めします。 戸建て開業のメリット・デメリット ・メリット 戸建て開業は設計の自由度が高く、理想とするクリニックを建築することができます。また駐車場を確保しやすいため、車による通院が期待できます。 ・デメリット 不動産の取得費用がかかるため、テナント開業と比較して初期投資額が大きくなります。また不動産の老朽リスクを負うため、定期的なメンテナンスが必要です。 おわりに 開業を考えられる際には、まず初めに自身の理念・経営方針を明確にしてから土地の選定を進めるべきかと考えます。戸建て開業には上記に記載した通り自由度が高い等のメリットがある反面、初期投資が大きくなるデメリットもあるため、十分に検討し納得のいく決断が必要です。 人生において大きな決断となりますので不安を感じられる場合には、専門家にご相談ください。

整体やエステできれいになって 気持ちも明るく前向きに
<取材先>株式会社サンスマイル 取締役・統括部長 中井 恵光 整体やエステ、リフレクソロジーなどを行う「美スマイル」。サービスに美容を取り入れることで利用者の明るい表情や外出意欲を引き出すなどの効果を生んでいます。 「美スマイル」を運営する株式会社サンスマイル取締役・統括部長の中井恵光さんに話を聞きました。 自分たちが得意な整体や美容を武器に介護に参入 株式会社サンスマイルは、東京都町田市や八王子市などを中心にデイサービス、訪問介護事業所、有料老人ホームなどを展開。会社の立ち上げは2014年で、美容に特化したデイサービス「美スマイル」をオープンしたのが始まりでした。 「もとは整体の店舗を全国展開する会社だったのですが、当時、介護現場での虐待などの暗いニュースを耳にする機会が多く、従来の介護に疑問を感じていました。そこで立ち上げたのが、『美スマイル』です。私たちはたまたま整体や美容関連の事業をやっていたので、それを武器に介護をやってみよう、と思い至りました。どんな分野でもそうですが、特に後発の場合、何か特徴がないと闘っていけません。私たちが勝負できるのは美容だと思ったのです」と、中井さんは開設までの経緯を説明します。 もともと整体をはじめ、ヨガやマッサージ、エステ、リフレクソロジーなどのノウハウはありました。加えて、それらの施術を行うインストラクターなどを育てる学校も運営していたので、人材確保のルートもあります。こうしてデイサービス「美スマイル」をスタートすることとなりました。 デイサービスのプログラムは、健康チェックを済ませたあと、椅子に座って行うヨガを取り入れた体操からスタートします。20分ほどかけてゆっくり動いたあとは、整体を行います。整体といっても骨格の歪みを治すような施術ではなく、筋肉をほぐして可動域を広げ、股関節や肩などの動きを良くして生活しやすくすることが目的です。 整体のあとは、フェイシャルエステかリフレクソロジーでリフレッシュ。フェイシャルエステは顔のマッサージやパックが中心で、リフレクソロジーはふくらはぎを中心にオイルで足をマッサージすることで血行を促進し、むくみの解消を目指します。高齢者には冷え性の人が多いため、「足がポカポカ温まる」と好評です。どちらも施術は15〜20分ほど。この他に月1回、希望者にネイルのサービスも行っています。 可動域が広がったり、むくみが取れて歩きやすくなることで、転倒防止や健康維持に繋げるほか、エステなどで気持ちよさを感じてもらうことで、身体と心の両方のケアが可能になります。「エステのあと、『きれいになりましたね』と声をかけると、表情がパーッと明るくなります。デイに通うことで、外に出るようになったり、人と会うようになったり、会話が増えたりするきっかけになればと思っています」 リハビリ特化型に行く一歩手前のデイサービスに 介護事業を開始した当初は、「介護施設なのにリハビリはやらないんですか」「本当に結果は出るんですか」など、ケアマネジャーになかなか理解されない日々が続いたと言います。しかし、「また行きたい」「通いたい」という人が徐々に増え、口コミで利用者が広がっていきました。それに伴いケアマネジャーからの紹介数も増えていったと言います。 「いきなり機能訓練と言われても、『つらい』『面倒くさい』と、デイサービスに行かなくなってしまう人は多いと聞きます。当社ではそういう方に気軽に来てもらって、楽しんでもらいたいと考えています。リハビリに特化しているデイサービスは他にもあるので、差別化という意味でも、外に出るための第一歩として、当デイを捉えてもらえば良いと思っています。家に閉じこもっていると筋肉が落ちて寝たきりになってしまったり、認知症の問題なども出てくるので、そうならないための第一歩ですね」 2022年2月時点での利用者の平均介護度は2程度。全体の9割以上が女性です。デイサービスに通っていると知られたくない人もいるので、送迎車に介護事業所とわかるステッカーは貼っていません。 「『自分はまだ元気だから大丈夫』と思っている人が、通いたいと思ってくれるのが一番嬉しいです。重度化しないために利用するという目的で通ってもらうことが、私たちのサービスには合っていると思っています」と中井さん。利用者の状態に合わせてデイサービスを使い分けてほしい、と話します。 「美スマイル」は現在、町田と成城の2カ所で展開。どちらも好評で、利用者の家族からも「楽しく通っている」「表情が明るくなった」と言われることが多いと言います。 利用者に楽しく通ってもらうために心がけていることについて聞くと、「チームワークづくりです」と中井さん。どんなに知識があっても、どんなに技術があっても、介護の仕事は一人ではできません。スタッフがバラバラでは良いサービスはできないので、スタッフ間のコミュニケーションを重視。そのため、特に施設長の研修に力を入れ、スタッフ一人ひとりときちんと向き合い、悩みや不安があれば、いち早く気づいて対応するよう指導していると言います。 「従来の介護に疑問をもち、自分たちができる介護をやっていこう、との思いで立ち上げたときの気持ちを忘れずに、利用者やご家族ともしっかりコミュニケーションを図りながら、『ここに来てよかった』と思ってもらえる施設づくりを続けていきたいと思っています」

開業志望の勤務医を分院長へ 承継・独立を前提とした分院戦略
<取材先>医療法人隆由会(大阪市都島区ほか)大瀧隆博 院長 2010年、大阪市内で「整形外科おおたきクリニック」を開業した医療法人隆由会では、これまで本院合わせて通算8つの診療所を展開し、そのうち2診療所を分院長に承継売却しています。 昨今では、新型コロナウイルス感染症の流行もあるが、大瀧隆博理事長は分院展開への影響について、「戦略としてはコロナ禍前後で変わっていません」と説明する。 「もちろん、展開する予定だった分院の計画を見直すといったことはありましたし、すでに20年5月開業で準備が進んでいた7番目の分院に関しては、どうなるか未知数でした。ただ、いざ蓋を開けてみれば、1回目の非常事態宣言下でも特に大きな変化はなく、これまでの分院同様1日130~140人と順調に成長しました。分院長になった先生の熱意もあってのことでしょう」 また、分院展開の狙い自体も、一般的な自法人の規模拡大とは少々異なると言います。というのも、患者からのニーズはもちろんですが、大瀧理事長が新しい分院の立ち上げを検討する大きな要因の一つに、「開業志望の医師のニーズ」があるからです。 「1つ目の分院の際は特に承継などは意識しておらず、自法人で運営するつもりで開院しました。ただ、やはり勤務医の先生のなかには将来独立したい思いがある方も少なくありません。それならば、熱意のある先生であれば、最初から承継を前提に分院長になっていただくほうが、分院長は開業に関するリスクを抑えて独立できますし、当法人としても意欲のある医師に来てもらえるといった、WIN-WINの関係をつくれるのではと考え直したのです」(大瀧理事長) そのため、同法人が分院をつくるタイミングは、「承継前提で分院長になりたい」という医師の応募があったときです。なお、分院を手放すことによる経営面の影響も懸念されますが、実際には譲渡金による収益を次の投資に回せますし、分院長だけ独立のため退職した場合、次の分院長の募集やそれが決まるまでの運営などの経営課題も出てくるため、結果として経営リスクの低減にもつながっているそうです。 大瀧理事長は、「おそらく、当法人内の各診療所の経営がうまくいっているからこそ、勤務医の皆さんも『自分もやってみたい』と、より独立への気持ちが強くなるのかなと感じています。その気持ちに逆行して定着してもらうよりも、その流れに乗ってしまったほうが物事もうまくいくと思い、実際にこの方針に転換してよかったと思っています。現状は、当法人の規模拡大のための分院展開はまったく考えておらず、熱意のある先生からのニーズがあった際に、随時検討していくつもりです」と語りました。 分院長として働いてもらいながら将来の独立を後押しする、新しいスタイルの分院戦略と言えるでしょう。 (取材・掲載年:2022年7月) ~関連記事~ >>記事一覧へ戻る

目玉を明確にすることで ブランド力を発信
<取材先>有限会社新井湯 介護部長 渡邊 扶美 デイサービスセンター湯〜亀 管理者 渡邉 千尋 良いもの、質の高いもの、ユニークなものと大勢の人に認められるものを構築して的確に情報発信すれば、自社・自法人のブランド力の向上に直結します。それは「ものづくり」を行う製造業だけに留まりません。無形のサービス=対人サービスである介護でも可能なことです。 優れたサービス、ユニークなサービスは人の耳目を集められます。アイデアをどのように活かし、どのように浸透させていくかは、大きなカギになります。 目次 銭湯とデイサービスの一体化で地域に浸透 ー手足を伸ばせる大浴場は魅力的 ーサービスの質の高さが地域に浸透 銭湯とデイサービスの一体化で地域に浸透 手足を伸ばせる大浴場は魅力的 一般の住宅にも集合住宅の個室にも風呂やシャワーが普及した結果、大都市と地方都市とを問わず、年々銭湯は街から姿を消しています。しかし、大浴場で手足を伸ばしてのんびりとお湯に浸かれることを魅力的に思う人はいるし、飲食機能なども付加したスーパー銭湯のなかには、人気を博しているところもあります。 「私ども『デイサービス湯〜亀(ゆ~き)』は、原点は銭湯であり、そこに、ほかの事業所にはないユニークさがあると思います」と語るのは、同事業所の責任者である渡邉千尋さんです。 同事業所は、「新生湯」という屋号で銭湯を経営する有限会社新井湯が運営しています。銭湯の広々とした脱衣所を、昼間はデイサービスのホールとして活用し、食事やレクリエーション、機能回復訓練などの場としています。入浴時間にはそのまま銭湯の大型浴槽に入ることができます。サウナ、歩行訓練のできる水流浴槽など各種の浴槽があり、壁面のタイル画は、間違いなく銭湯であることを感じさせてくれます。銭湯としての営業は、デイサービスの利用者が帰宅後の15時半から始まります。 もともとは2000年に、地域に入浴が困難になった高齢者が増えたことから、従業員がヘルパー資格を取り、そうした高齢者を送り迎えし、銭湯への入浴介助を始めたことにあります。そして、2003年に、現在のスタイルのデイサービスセンターをスタートさせました。 「銭湯の常連のお客様が高齢になって、そのままデイのご利用者にスライドしてくるという形で、徐々に増えていきました」と、渡邉さんは説明します。利用定員18人未満の地域密着型デイサービスだが、利用率は高く、9割程度を維持しています。大浴槽に皆で一斉に入浴し、和気あいあいとした雰囲気で楽しめます。人気の理由はそこにあります。こうして昼はデイサービス、夜は銭湯という営業スタイルが定着したのです。 サービスの質の高さが地域に浸透 デイサービスが成功を収めると、2004年に訪問介護を開始。その後は、居宅介護支援、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅などに事業を広げていきました。 「昭和27年以来続く銭湯として地域に育ててもらい、地域に恩を返し、利益を還元するという思いが強かったのです」と語るのは介護事業部長の渡邊扶美さん。介護保険外の事業でも、フィットネスジム「P2M」や最寄りの荏原町駅周辺のスポット紹介や介護・健康づくりの相談窓口となっている「EBA4」などが地域の顔になっています。 新型コロナ禍では、2020年3月には利用者が2〜3人という日もあったと言います。しかし、入浴時に3密とならないように呼びかけるなど衛生面で十分に配慮し、信頼を回復。「おかげ様で、今は概ね8〜9割の稼働率を維持できています」という状況だそうです。 「事業所の食事で出すお弁当が、大変に評判がよいですね。最寄りの商店街のお米屋さんにつくってもらっていますが、精米がよく、ご飯がとても美味しいようです」と言う渡邊さん。ほかにも、常駐する理学療法士が考案した転倒予防体操のほか、健康づくりではフィットネスジムとコラボしたメニューもあると言います。また、音楽療法士を招いての歌声喫茶も事業所内の良い雰囲気をつくり出しています。 「事業所が気に入ってもらえるのはお風呂がきっかけですが、デイの本質は、来てもらってADLの向上に取り組んでもらうことだと考えています。特に独居のかたが、この新型コロナ禍で出かけられなくなり、筋力が低下するとそれを回復させることも大変です。そうしたことを防ぐことこそが、私どもの役割です」と、渡邊さんは強調します。珍しい銭湯+デイサービスを展開する湯〜亀は、地域の高齢者の自立支援の受け皿としてなくてはならない存在なのです。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2020年8月

大規模化の先に見える 新しいデイサービスの姿
<取材先>株式会社エムダブルエス日高 大規模化と一口に言っても、漫然と大きなものをつくるのではなく、広さの確保と集客を両立させなければなりません。空間や組織の余裕を活かし、新しいことにチャレンジすることが大切です。 目次 「大きいことは良いこと」を地で行く大規模デイサービス 新しい技術の導入に次々に挑戦する 斬新なアイデアを実現することで地域の顔に めざすは「かかりつけ」のデイサービス 「大きいことは良いこと」を地で行く大規模デイサービス 群馬県一円で介護事業を営む株式会社エムダブルエス日高。そのデイサービス事業の要となっているのが、高崎市にある「地域福祉交流センター」です。 デイサービス事業である「日高デイトレセンター」を中核とする複合施設です。 デイサービスの最大定員は何と400名に達します。建物の1階には広大なホールがあり、さらに、カフェスペースや機能訓練スペース、調理室、風呂、相談コーナーなどがあります。 2階も1階と同等の面積の機能訓練の場となっており、天候の悪い日でもウオーキングができるトラックも整備されています。さらに周囲に麻雀室、PC教室、図書室、機能訓練のマシン室、陶芸教室、ゴルフシミュレーションなどがあります。 保険外の事業として、55歳以上の人を対象とした会員制のシニア・トレーニングルームまであります。 「さすがに緊急事態宣言が出た前後には、定員に対する稼働率は50%程度に下がったのですが、それ以降は徐々に持ち直しました。現在は80%くらいまで戻しています」と、同社の代表取締役である北嶋史誉さんは、状況を説明します。 同センターは、大規模通所介護(Ⅱ)を算定する全国でも数少ない大型事業所です。 大規模な事業所のデメリットとして、多くの利用者が集まれば集まるほど、利用者同士、あるいは利用者と職員のつながりが希薄になることがあげられます。 現在のような危機のときには、個人間の仲の良いことが、その場に行こうという動機になる場合があるし、危機が小さくなったときに実績を取り戻すのにも都合が良いように思えます。 しかし、必ずしも、そうではないと北嶋さんは言います。 「そこに集まる人が、程よい距離感を保てるのが、大規模デイサービスの良いところです。当センターとしては、いつ、誰に来てもらっても構いません。随時利用できる場所もありますから、センター内の自分の好きなところへ行っていただいて構わないのです。ご利用者様にもいろいろな人がいます。濃密な関係のなかで利用者間のトラブルを抱えたり、人間関係にいやな思いをしたりということもあり得ます。そういうことが、当センターにはありません。そういう人から距離を置くことができるからです」と、北嶋さんは語ります。 もちろん、デイサービスとしての基本は外しません。 バイタルチェックに始まり、入浴、食事、レクリエーションなど。そこには、ただケアマネジャーに紹介された利用者が来て、ホールに座らされ、レクを押しつけられる……といったような窮屈さも感じられません。 距離感と自由さが、居心地のよさにつながります。 同センターのような事業所が、どこでもつくれるというものではないのも確かです。 人口希薄な地域では土地は入手しやすいでしょうが、大規模な施設をつくっても定員を満たすほどの人が集まりません。 大都市では人が集まっても、大きい施設を建てる土地を確保することが難しい。大規模化といっても、簡単に実現できるわけではないのです。 「当センターは十分に大都市である高崎市と前橋市の市境の地域に立地していますから、1個の政令指定都市に匹敵する商圏人口があります。それでいて、両市の郊外部にあたり、広大な土地が入手しやすかったのです」と、北嶋さんが語るように、ここには大規模デイを成立させる好条件が整っていたのです。 新しい技術の導入に次々に挑戦する 「せっかく大規模施設をつくって運営に余裕もあるのですから、どんどん新しいことにチャレンジしていきたいと思っています」と、北嶋さんは語ります。 同社は医療法人社団日高会が形成する日高グループの一翼をなしており、このグループには介護・医療のICT化に取り組む会社・法人もあります。 それらと協力して、業務のICT化も進めているし、デイサービスのオンライン化も進めています。 特に「ICTリハ」と呼ばれるアプリにより、リハビリの利用者のデータをクラウドに集積。最適なリハビリメニューを自動的に作成しています。 そうしたICT基盤を活かして、さらなるチャレンジに乗り出しています。 「現在の新型コロナ禍において、デイサービスの訪問事業への振り替えや電話を使っての確認業務に介護報酬が付くようになりました。これは一つのチャンスであり、デイサービスのリモート化を進め、リアルなデイサービスとの組み合わせで『ハイブリット・デイサービス』を展開しているのです」と、北嶋氏は解説します。 これはデイサービスに行きたいが、新型コロナ感染症を避けるなどの理由により、自宅に待機している利用者に向けて考案したものです。 そうした利用者のスマホに専用アプリをインストールしてもらいます。 そのアプリを立ち上げると、簡単に同社のデイサービスにアクセスでき、テレビ電話機能を通じて、バイタルのチェック、簡単なリハビリ指導、各種の相談、デイに来ている利用者との会話などができます。 「普通デイに来れば、挨拶してまず、バイタルをチェックします。同じタイミングで、自宅にいる人にもスマホでアクセスしてバイタルをチェックします。さらに食事やリハなどのアクティビティのタイミングを合わせて、自宅のご利用者様とアクセスすれば、居ながらにして事業所に来ているような疑似的なサービスが行えるわけです」と、北嶋さんは説明します。 常時ではなく、今回のコロナ禍のような緊急事態下や、災害後の交通途絶が生じた場合に、特に有効な仕組みだと考えており、リアルなデイサービスと組み合わせるから「ハイブリット」となるわけです。 高齢者にはスマホの取り扱いは難しいと思われるかもしれませんが、その点でも万全です。 「ガラケーでもアクセスできるようにしています。また、弊社では保険外事業でエックスモバイルの代理店も展開しています。当センターで相談してもらえれば、スマホの購入の手続きもできますし、PC教室と平行してスマホの教室も行っています。一貫して対応できます」と、北嶋さんは笑顔を見せます。 斬新なアイデアを実現することで地域の顔に もともとエムダブルエス日高は、斬新なアイデアに次々に取り組んできました。 たとえば、「フレッシー便」。これは、地元のスーパーであるフレッセイと提携して、各事業所に移動販売車を回らせるサービスです。 足腰が弱ったり、近くのスーパーがなくなったりして、遠くまで買い物に行くのが大変になったという利用者が、各事業所の駐車場に乗りつけた販売車で買い物をします。 買ったものは、送迎車で利用者自身ともども運んでもらえます。足腰が弱ったり、車の運転ができなくなったりして、買い物難民となっていた利用者には好評のサービスです。 また、毎週火曜日に市内の各所を巡回する「モバイルスーパー」も行っています。 AIによる最適配車を可能にしたシステムを活用し、非通所日の利用者を送迎車に相乗りさせ、目的地で降ろす「福祉Mover」など、次々にユニークなアイデアを実現することで、地域における知名度を高めています。 また、「福祉Mover」を使った相乗りは、新潟県の阿賀野市でも実験を始めており、介護業界全体にも波及する様相を見せています。ネットを介して現場の声を集め、「KAIGO FUTURE」のように、介護業界全体のイメージアップを狙う動きもあります。 めざすは「かかりつけ」のデイサービス 次々に新しいアイデアを実現しているエムダブルエス日高ですが、決して奇抜さを狙っているわけではありません。 「孤独や社会的孤立といったものを解消し、ご利用者様の自立支援のお手伝いをするためにも、デイサービスは不可欠な事業であると考えています。その大切な事業を継続させるためにも、さまざまな経営努力が必要になります。確かに介護報酬の基本的なところでは苦しい状況が続いてきましたが、新型コロナウイルスの問題などもあって、厳しい規制が緩んでもいます。それを利用しない手はありません」と、北嶋さん。 特に地方都市では、大規模化がデイサービス経営の存続の鍵を握っていると考えています。ですが、前述のように大規模化はどこでもできるわけではありません。 「それならば、地域にサテライトのデイサービスをいくつか展開し、機能分担するという方法もあるでしょう。弊社でもこのセンターの近所に『日高在宅療養センター デイサービス』や『第2デイサービスセンター』があります。小規模でも良いので、そういうサテライト的な事業所を持ち、入浴中心、生きがいづくりの活動中心、リハビリ活動中心などを打ち出し、短時間サービスで回転させていくという方法もあるのではないでしょうか」と、北嶋さんは提案します。 そうすることで、一つの地域に事業所が集まり、地域で主導的な事業者になれるかもしれません。 そして、何よりも、福祉事業者として、利用者との関係性を構築することが大切だと言います。 「今考えているのは、『かかりつけデイサービス』という概念です」と、最後に北嶋さんは語りました。 もちろん、高齢者が介護サービスを受けていれば、地域包括支援センターやケアマネとも関係をもっているでしょうし、施設にいれば生活相談員だっています。 在宅でも、利用している事業所のスタッフとも密接な関係があるはずです。 「それでも在宅のご利用者様が何か困り事があったり、相談事があったときに、一番近くにある介護事業所は、デイサービスのはずです。医療の世界では『かかりつけ医』ということが長年にわたって言われ、最近では『かかりつけ薬局』も制度にあります。2025年に向け、高齢者介護の世界においても『かかりつけ』という気安く相談事に応じられる介護事業所が必要になってくると思います。その時には、デイサービスこそがその役割を果たせるように力を付けていく必要があると思います」と、北嶋さんは力強く語りました。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2020年8月

「眠れない」を徹底的に追及し誰もが安心できる環境をつくる
<取材先>青山・表参道睡眠ストレスクリニック(東京都港区) 2017年に開業した青山・表参道睡眠ストレスクリニック。「“睡眠”の面から心身の健康維持のサポートを」を理念に、患者の「眠れない」といった症状に対し、あらゆる角度から原因を追究し、治療に結びつけています。特に専門的に診ているのは、不眠やいびき、睡眠時無呼吸症やむずむず脚症候群などの睡眠障害と、ストレスによる不安や、抑うつ状態、パニック症状などです。 開業の経緯を中村真樹院長は、「以前勤務していた睡眠総合ケアクリニック代々木には、睡眠時無呼吸症の患者だけで1カ月1300人も訪れていました。そちらをサポートする診療所をつくりたいと、同じ沿線の表参道で開業しました。このエリアには日本を代表する企業が多いことも理由の1つです」と説明します。患者層は30~40代、働き盛りのビジネスパーソンが中心です。 「『眠れない』といった症状を訴える患者が多いです。また、不安や抑うつ状態の患者もいます。不眠と抑うつ状態を併発している人は、眠れないために精神的な疲れで抑うつ状態になっているのか、それとも鬱が原因で不眠になっているのかを見極める必要があります。さらに、最近多いのはむずむず脚症候群が原因の不眠です。また、本人はしっかり寝ているつもりでも、日中眠くなるといった人のなかに、周期性四肢運動障害という睡眠中の四肢の不随意の痙攣を認めることがあります。これにより熟睡ができずに日中の眠気の原因になり得ます。この確定診断には当院と連携する医療機関で本格的な検査をしています」 睡眠時無呼吸症の患者も多く来院する同院では、CPAP治療に注力しています。CPAP治療におけるボトルネックとなっていたのが、患者が受診時にCPAPの使用状況を保存したデータカードやUSBを自宅に置き忘れてしまうこと。データを確認できないと適切な指導管理ができないため、同院では通信回線によるクラウド型データ管理システムのCPAPを導入。患者はカードやUSBを持ってくる必要がなく、身軽に受診することができるといいます。 このように、ストレスを抱えた患者を対象としている同院では、職員の働きやすさを重視した残業のない就業環境づくりにも取り組んでいます。「スタッフが疲弊していては患者も不安になります。そのため、定時に帰宅できるよう綿密に受診予約を調整しています。その結果、レセプト業務で忙しくなる繁忙時期も定時で帰宅できています」 監修:日本医療企画 (取材・掲載年:2019年8月) ~関連記事~ >>記事一覧へ戻る

ミスを責めない風土がミスを減らす第一歩
<取材先>株式会社富士経営総合センター 岩田義明 ミスは誰でも起こしますが、それが本当に大きな影響を及ぼすのは、起きたミスを皆で共有できず、対処が遅れた場合であるとの指摘があります。この「ミス共有の遅れ」を防ぐには、「ミスを責めない」風土が重要になるようです。 ミスは誰でも起こしてしまいますが、できるかぎり減らしたいものです。誰もミスをしたいとは思っていませんが、ミスは起こります。本稿では、ある歯科医院で行ったミーティングの取り組みをご紹介します。 〇「ミス」は医院の評判を下げる スタッフの皆さんに「ミスをする」とどうなるか順を追って尋ねていくと、図【悪循環】にあるように、最終的には「医院の評判が下がる」と答えていました。「ミスをなくす」とどうなるかを尋ねると、図【良循環】にある通り、「医院の評判が上がる」と答えていました。また、悪循環と良循環のどちらが良いかスタッフに尋ねると、全員が「良循環がいい」と答えました。 〇ミスは隠すと影響が大きくなる 今度は、「ミスがどうなったら困るのか」を聞きました。スタッフからは「ほかの業務に支障が出たら困る」「院長の機嫌が悪くなったらまずい」との意見がありました。さらに「どのような場合にミスの影響が大きくなりますか」と質問すると、「ミスしたことを隠していた場合」に影響が大きくなるとの意見で一致しました。 〇「ミス」を隠したくなる心理 一般的にミスを隠したくなるのは、「怒られたくない」という心理がありますからです。ミスを隠すことでどのような影響が出るかに思いが及ばず、「怒られる」「評価が下がる」という考えから離れられなくなっているのです。そのような気持ちになっている時には、指導されても「怒られた」という気持ちにしかならず、指導された内容は本人の頭には残りません。 〇「ミス」を認めることが、「ミス」を減らす第一歩 最後に「これまでに経験したミスを全部挙げてください」というワークを行いました。一定時間に、思いつく限りのミスを付箋に書いてもらうと、平均で一人10個以上のミスが挙がってきました。加えて、ベテランも若手も同じようなミスをしていたことも分かりました。 そこで筆者は、「誰でも同じようなミスをします。大事なのはミスを認め、すぐに報告し、リカバリーすることです」と伝え、起こったミスを自分だけでなく、先輩にも相談し、リカバリー策を打ち、他の業務にも影響をさせないことを重視すべきと強調しました。その上で、「再発防止のためにはどうしたらよいか策を考えること」を伝え、「リカバリー策と再発防止策」の検討につなげたのです。 制作年月:2022年8月17日

1店舗目との距離もポイント 職員の異動や送迎がスムーズに
<著者>株式会社ポラリス 代表取締役 森 剛士 1つ目のデイサービスの運営がうまくいき黒字化を果たすと、次の展開を考えることになります。デイサービスもサービス業の1種であることを考えると物件取得は事業拡大を考えるうえで大きな要素の一つになります。 不動産はテナントと土地から建てる場合に分けられますが、土地から探す場合はどうしても費用が掛かるので事業拡大フェーズでもかなり財務基盤や信用が増した時期での実施をお勧めします。テナントを探す方法としては不動産情報サイトと地元の不動産、そして自分で開業希望地を車等で回り自分の目で探す方法があります。最近ではグーグルマップのストリートビューを活用することで効率化も図れます。 お勧めの場所は最初のデイサービスと商圏、すなわち送迎エリアがぎりぎり接する場所です。職員の行き来がしやすく、営業などの相乗効果が見込まれるからです。職員の通勤のしやすさや渋滞の有無にも気を付けましょう。 デイサービスの場合、用途変更という手続きが必要な場合があり、150㎡以上の場合は注意が必要です。建築許可証がない場合、用途変更ができずデイサービスの許可が出ない場合があります。デイサービスには相談室、事務室、静養室、食堂、機能訓練室、障害者用トイレが必要です。他にも必要に応じて、厨房、入浴設備などが必要になります。またローカルルールがあることもあるので開業予定地の地方自治体に問い合わせましょう。 工務店によっては自分たちで図面を書いてくれることもありますが、仕様がしっかり定まっていないと後々トラブルになることが多くお勧めはできません。デイサービスの設計経験のある設計士にお願いし、工務店は最低2カ所以上の見積もりを取ってできるだけ安い内装を行う事が重要です。内装のグレードによりますが120㎡の床面積で1,500万円以内に収まれば比較的リーズナブルだと考えていいでしょう。 またデイサービスは多くの送迎車を使います。職員が車通勤をする場合の駐車場も必要です。建物の横や裏面に縦列駐車を活用したりすると台数を確保しやすくなります。駐車場が足りずに、敷地外に月極駐車場を何台も借りることになる場合があるので注意しましょう。 内装に関してはここでは詳しく触れませんが建物の形が悪かったり、柱が多かったりすると死角が多くなり、デイサービス向きではない場合があります。同じテナントでも、床がモルタルで覆われていたりするとトイレの増設や給排水工事などで大きな出費になることもあります。 監修:日本医療企画㈱ 制作年月:2022年4月

新型コロナに振り回されながらも理念を掲げたホームページを開設!
<著者> 厚別ひばりクリニック 院長 野崎浩司 救急科専門医・麻酔科認定医 さて、執筆時(20年5月4日)に発表しましたが、新型コロナウイルス感染症(以下、新コロ)対策としての緊急事態宣言が今月末まで延長されることになりました。この3カ月ほどは感染防止のために面会制限を行う医療機関も多く、思った以上に挨拶回りや面談などは進んでいません。 当初の予定ではクリニック近隣の総合病院などへの挨拶回りを終えているはずだったのですが、実際は計3カ所(札幌市医師会厚別区支部長、副支部長、1施設の病院連携室)にしか挨拶できていない。緊急事態宣言が解除されない限り、これ以上は難しいでしょう。 そこで今考えているのは、自己紹介パンフレットを作成し、病院長や連携室、周辺施設や訪問看護ステーションなどへ事前に送付するという方法。もちろん、今回の流行が収まれば改めて施設まで挨拶に伺う予定です。 医療機関以外では、広告を掲載予定の地域新聞「まんまる新聞」や、近隣にある北海道情報大学などにも挨拶に行こうと考えていましたが、そこは医療機関への挨拶が終わってからアポイントを取る予定。 また、一緒に医療モールに入居予定の医師(4人)と、一度もご挨拶していないのも気になっていますが、こちらも現状が落ち着いて「3密」が許されてからになるでしょう。 挨拶回り以外にも、家具や什器のショールームが閉まっていて実物を見に行けてなかったり、機器展示を楽しみにしていた学会もウェブ開催や延期になったりと、細かい部分での予定も狂い始めてはいます。 理念を明示したホームページを開設 一方、まだ内容はスカスカではありますが、厚別ひばりクリニックのホームページを立ち上げて公開しました。開院5カ月前にHPを開設した目的としては、集患はもちろん、スタッフ募集の役割も大きいと考え、院長の挨拶とともにクリニックの理念も作成し掲載することに。 厚別ひばりクリニックの理念 ①常に最新の知識や技術を学び、ガイドラインを遵守した診療を心がけてまいります。 ②地域の皆様が住み慣れた地域で健康寿命を伸ばしていけるように、支えてまいります。 ③患者さんはもちろん、スタッフやその家族まで幸せにできるようなクリニックの運営を目指します。 ①は、ありがちですが、患者のためにも紹介先の若い医師などから陰で笑われることのないような診療を心がけたい。スタッフにも嫌がられない程度に勉強会もしていこうと思います(「クリニックに来たのに勉強会があるのはダルい」というようなスタッフはNG)。 ②は、国の進める「地域包括ケア」そのものですが、かかりつけ医&町医者として、地域の施設や多職種とも積極的に絡んで「顔の見える関係」を構築していきたい。 ③は、スタッフが働きやすく(母親が働きやすいシフトなど)、そして何かあれば(病気、家族の介護など)お互いに休みも取りやすい雰囲気、環境をつくりたい。スタッフ自身と家族の誕生日の計2日まで「特別休暇」を与えたりもしてみたい。「募集してもスタッフの集まらない時代に、そんなの無理。甘い」と諸先輩方は仰るかもしれませんが、スタッフが共通の目標に向けて、お互いに気遣いができ、長く勤めたくなるクリニックを目指していきたいです。 相見積もりで驚愕の価格差!内装業者も決定 HP公開にあたり、早急に完成させる必要があったのが、診療時間でした。リハビリやペインクリニックにおいては高齢者がメインターゲットではありますが、働き盛りの世代にも役立つためには、週2回程度は遅くまで診療する日も設ける必要があると考えていました。 近くに地下鉄ひばりが丘駅もあるので、仕事帰りに生活習慣病の薬をもらいに来たり、予防接種やリハビリの需要にも応えたい。他院で定期的な処方を受けているスタッフが、「遅くまで診療する曜日が固定されていれば、そこを目指して予定立てるので毎日遅くまで開く必要はない」と言っていたのを参考に決めました。 月・金 9:00〜17:30 火・木 9:00〜18:30 水・土 9:00〜12:30(午前のみ) そして内装工事(C工事)に関しては、不動産会社が費用を負担して行う基本工事(A工事)の担当業者が決まらないため、設計事務所が早めに複数の業者に見積もりを依頼してそのなかで決めることになりました。 結論から言うと、高いところと安いところでは1000万円以上の価格差が出ることになった。そのなかで、医療関係の工事実績もあり、設計事務所からの情報も聞いたうえで、アイ・エム・コーポレーションに依頼することを決めました。 制作:株式会社日本医療企画 (取材年月:2020年6月) ~関連記事~ 記事一覧へ戻る

開業時にかかる業務 ~開業時に行う業務一覧と開業スケジュール~
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士 医師のクリニック開業を迎えるまでには様々な工程があります。開業に向けて必ず検討しておくべき事項について、具体的なスケジュールを交えながら、必要な手続き等をご紹介いたします。 目次 01:開業6か月前までに行う事項 02:開業2か月前までに行う事項 03:開業2か月~開業直前に行う事項 04:開業後に行う事項 開業スケジュール *1市町村により異なります。 開業6か月前までに行う事項 <医療方針確定~テナント契約(不動産購入)> 医療方針確定 12~10か月前 開業スケジュール作成 12~10か月前 立地の選定 12~6か月前 設計・建築業者/医療機器・設備/医薬品の選定 12~6か月前 事業計画策定 ~6か月前 銀行との融資交渉 ~6か月前 テナント契約(不動産購入) ~6か月前 開業したい時期が決まっているならば、遅くともその1年前から開業準備に取り掛かることをお勧めいたします。このうち特に重要な事項が「立地の選定」と「銀行との融資交渉」です。 「立地の選定」はクリニックの行く末を左右しますので、集患を見込める立地の選定が必要となります。また「銀行との融資交渉」の際には、先生のイメージを数値に落とし込んだ事業計画書を作成する必要があります。 開業2か月前までに行う事項 <医師会加入手続き~従業員研修> 医師会加入手続き ~2か月前 ロゴマーク・看板・HPデザイン作成 ~2か月前 診察券・名刺・封筒・チラシ作成 ~2か月前 求人広告 ~2か月前 インターネットが普及した現在、患者の多くはインターネットを通じて医療機関の情報を入手しています。開業にあたっては、見やすいホームページを作成し、情報発信を行うことで集患を試みる医療機関もございます。 なおホームページ作成にあたっては、「比較優良広告」、「患者の主観に基づく体験談の広告」、「誤認の恐れがある治療等の前・後の写真の広告」などについては規制されているため、掲載内容について十分な注意が必要です。 開業2か月~開業直前に行う事項 <面接実施~内覧会の実施> 面接実施 2か月前~開業前 従業員研修 2か月前~開業前 保健所・厚生局書類提出 おおよそ2か月前*1 開業前DM発送 1か月前~開業前 内覧会の実施 2~1週間前 *1市町村により異なります。 保険診療を行う場合には、厚生局に「保険医療機関指定申請」の提出が必要です。所定の期限内に「保険医療機関指定申請」ができていないと、保険請求を行うことができませんので、手続きの期限についてご留意ください。 開業後に行う事項 <税務手続き、社会保険・労働保険手続き> 税務手続き 開業届 開業後1か月以内 青色申告承認申請書 開業後2か月以内*2 社会保険・労働保険手続き 所定の期限 開業前DM発送 1か月前~開業前 内覧会の実施 2~1週間前 *2以前より不動産所得や事業所得がある場合には、開業した年の3/15までが提出期限となります。 開業される際には、税務関連や社会保険・労働保険関連の手続きを行う必要がございます。各手続きごとに期限が定められていますので、ご留意ください。 ~終わりに~ ご紹介しましたように、開業までには多くの事項を遂行する必要がございます。 どの事項も重要ですので、ご不安に感じられる先生方は税理士などの専門家にご相談いただければと思います。 ~関連記事~

数字を見える化することで 職員の意識を高めていく
<取材先>社会福祉法人小田原福祉会 経営の数字の見える化というと、難しく感じたり、現場の職員に示しても意味がないと思われがちです。社会福祉法人小田原福祉会では、パート職員にいたるまで収入・支出の数字を見える化しています。 目次 担当エリアを細分化し リーダーの責任エリアを限定 数字を見せることで 収入・支出への意識が高まる 数字が見えることで 経営が理解できる 担当エリアを細分化し リーダーの責任エリアを限定 開設から45年を迎える社会福祉法人小田原福祉会。2018年の理事長の交代を機に、経営のあり方を大きく刷新しました。 その目的を、同法人理事長で介護福祉経営士2級の時田佳代子さんは次のように語ります。「これからの経営を考えたときに、極力職員全員が経営に参加する仕組みが必要と感じていました。特に当法人の事業は在宅サービスが7割を占め、事業所も2つの自治体にまたがり、40カ所ほどが地域内に分散し展開しています。その結果、法人本部からは日々の状況を直接把握することに困難を感じていました」 その当時、同法人はエリアを3つに分けてサービスを提供していました。エリアがカバーする地域が広い分、リーダー自身も十分にマネジメントを機能させることができませんでした。 そこで、7つへとエリアを再編成。サービス種別ごとに組織化して効率化を図るというアイデアもあったが、今後の地域包括ケアシステムの構築を視野に入れ、 担当エリアを小さくすることで、より地域のことを知ることができるようにしたのです。 この再編には、地域をよりよく知る以外に、もう一つ目的がありました。それが、リーダーの育成です。「3つのエリアごとにリーダーを置いていましたが、彼らは皆60代以上であり、次世代のリーダー育成が急務となっていました。7つのエリアに細分化することで、1つのエリアのリーダーが担う役割・業務を少なくし、若手がリーダーに登用された際も大きな負担感を感じないようにしました」と、時田さんは振り返ります。 法人経営を担う次世代リーダーの育成は、法人の未来を確かなものにし、同時に全員経営をスタートさせる鍵でもあったわけです。 数字を見せることで 収入・支出への意識が高まる 一人ひとりが組織の一員として経営に参加するためには、日々の業務が経営の数字に反映されることを理解しなければなりません。そのために毎月の収支を現場で管理する仕組みを整えました。 さらに2018年からはアメーバ経営※の手法を採用し、事業所ごとに毎月「部門別採算表」を作成し、収支の背景を把握できるようにしました (図表)。 採算表や月次報告書のフォーマットを作成した同法人事務局長の神矢孝之さんは「毎月数字をタイムリーに見せ、自分たちが行っていることの効果を確認できるようにしました。数字を見て、対策を考える習慣がつくようになり、ひと月ごと、科目ごとといった具合に収入と支出がどうなっているのか、職員全員が意識するようになりました」と、その効果を語ります。 事業所ごとに稼働率や延べ利用者数などから収入を、人件費や水道光熱費などから支出を把握し、前月との数字の違いなどを根拠をもって説明できるようにしていくことで、現場スタッフも注意するようになり、経費削減などの意識も高まっていったと言います。 「今月は収入が少ないから、修繕は来月に回して経費を削減するようにしたり、水道光熱費でソーラー電源を活用している事業所は、夏場はソーラーのお湯を使うようにするなど、身近な改善策が徹底されるようになってきました」と、神矢さんは職員の動きが変わったと話します。 一番費用が掛かるのは人件費だとわかると、利用者が少ない日はパート職員自ら早上がりなどを申し出るなどして、支出を下げる工夫も行われていると言います。 「開始当初は赤字部門の職員も、誰かがどうにかしてくれるものと思っていた雰囲気もありました。しかし、数字が見えるようになることで、自部門が赤字のままでは問題であると思うようになり、どうすればいいのかを考え、対策をとるようになる。その結果が出ると、達成感を感じられるようになり、数字への意識が定着していったのです」と、時田さんも職員の動きの変化を語ります。さらに、自部門の収支が理解できるようになると、その次に法人内での自部門の位置づけや、ほかの部門の取り組みも注視するようにもなってきていると言います。自部門だけでなく、一歩高い目線で法人全体を見ることにもつながっているそうです。 さらに2020年春から続く新型コロナ禍においても、同法人では経営を考えたうえでの事業活動の継続、という選択を多くの職員が支持したのも、見える化をした一つの成果なのかもしれません。 「もちろん感染対策を徹底したうえで行いました。私たちの仕事はどんなことがあってもご利用者様を引き受けなければならない責任とともに、ここでサービスを止めたら法人の経営がどうなるのか、という危機意識を職員全体がもっていたからこそ、自粛やサービスの停止といった話にはなりにくかったのだと思います」と、時田さんは話します。 数字が見えることで 経営が理解できる こうした数字を見せることに対し、介護や福祉の分野になじまないという声もたびたび聞かれます。しかし、「福祉だから、介護だからといって、経営を疎かにしてはならない」と、2人は口をそろえます。リーダーには経営に対する責任と権限が付与されるが、同時に報酬も伴うからこそ、未来に対する希望が生まれます。 「法人経営の安定を考えれば、介護報酬だけに依存する経営は見直さないといけません。職員が人生をかけて働くぐらいの気概をもてるような法人にしていくうえでは、働いた分職員の暮らしや人生にも見返りがあるようにしていかなければなりません」と時田さんは指摘し、職員の業務への向き合い方が、法人全体の経営にも大きな影響を与えることに気づかせていきたいと話します。 ここ数年で急速に見える化を進めた同法人だが、最初からすべて職員にオープンにしたのではないと言います。支出に含まれる人件費の割合が高いため、支出を減らすことを考える際に、人件費にばかり目が向かないように、当初は人件費以外の部分のみを一般の職員には見せていたと言います。「経費削減はある程度できて、これ以上削減するとサービス提供の質に影響する、という時点で人件費の削減を考える、という流れで進めました」と神矢さん。一つの数字に一喜一憂するのではなく、全体の流れを見ることを職員に再三指摘してきたと言います。 「数字を見える化することで、職員を、リーダーを育てていくのです。過去の数字を重視するのではなく、数字を見て次の目標をどのように立てるか、どのようなアクションをとるべきかを考える力を育てていくことが大切。今後は、数字を見て、予測し、達成するプロセスを組み立てていけるように、職員を育てていくことをめざします」と、時田さんは今後の展望を語ります。 制作:日本医療企画㈱ 取材年月:2021年2月

出入管理システムを活用して施設内外の安全に担保する!
<取材先>綜合警備保障株式会社(ALSOK) 診療所や介護施設には患者・利用者の個人情報、薬品・備品などをはじめ、外部流出が厳禁なモノも多く保管されています。施設によっては専用室を設け、スタッフの出入りも制限したほうがいい物品を有しているケースもあるでしょう。 ただ、誰が、いつ、何のために出入りしたか。アナログで確認・記録するのはなかなか難しいです。そんなニーズに応えるのが、ALSOKの出入管理システムです。 <ALSOK株式会社の出入管理システム> これは基本的に、出入管理したい扉などへ電気錠を設置し、専用の操作カードやキーで開錠、その情報を管理用パソコンなどで記録することで入退室を管理する仕組みとなっています。管理用端末に記録される情報は、出入時間、カード・キーのIDなどで、それを見れば、いつ、誰が、どこの電気錠の扉を開けたのかすぐにわかります。 また、手動での開錠のほか、管理用端末からの遠隔操作や、設定した時間以降は開錠できないようにするスケジュール管理機能、特に重要な場所には、2人以上でなければ入室・在室できない「2名照合機能」などを搭載することもできます。 設置する電気錠の数や機能に関しては、施設側のニーズや規模に応じて、同社の担当者がコストパフォーマンスおよびセキュリティ上最適なプランを選定します。 外部からの侵入だけではなく内部での不正行為防止にも こうした出入管理システムを導入するメリットは、主に外部・内部の2つの観点から挙げられます。 まず、外部については、入口や重要な保管室などに設置することで外部からの侵入者に対する高い防犯効果を発揮します。あるいは、診療所などではスタッフに診療所の鍵を預けたい場合もありますが、万が一紛失すると鍵穴ごと交換しなければならなかったり、預けた人が自由に出入りできたりしてしまうリスクがあります。 その点、出入管理システムであれば、仮にカードやキーを紛失してもその登録情報を消去するだけで済み、鍵穴交換は不要です。加えて、開錠可能時間を設定しておけば、カード・キーを持つ人の開錠できる時間帯も制限できるでしょう。 一方、内部に関しては、カード・キーごとにアクセス制限を設定することで重要な場所には特定のスタッフのみ入退室可能にもできます。たとえば、医薬品などの保管室には備品管理担当のみ入れるようにするといった振り分けをすると、施設内の不正行為を未然に防止できるでしょう。 また、介護施設などでは、各個室すべてに設置するパターンもあれば、利用者は立ち入り禁止の場所にのみ設置するパターンの両方でニーズがあるそうです。 そのほか、生体認証やオンラインセキュリティ、設備管理システムなど、防犯・防災対策の多種多様な機器との連携が可能である点も、老舗の警備会社である同社ならではの強みと言えるでしょう。 テナント診療所から大型病院まで、幅広い場所での対応可能なラインナップを取り揃えた同社の出入管理システム。施設内外のセキュリティ強化を検討している経営者の皆様は、ぜひ一考されてはいかがでしょうか。 制作年月:2022年7月26日

人を育てる組織としてのガバナンスとは
<著者>北海道介護福祉道場あかい花 代表 菊地 雅洋 生産労働人口が大幅に減り続けているわが国では、全産業で人手不足が深刻化しています。そのなかで他産業より待遇が悪いと印象づけられている介護事業者には、募集をかけても応募してくる人材が少なく、より深刻な人材不足に直面しています。 それがゆえに介護事業者の一部では、応募してきた人の能力チェックを十分に行わないまま、機械的に採用してしまう傾向が強まっています。そうして採用された人のなかには、対人援助に不向きで、教育の力が及ばないスキルの低い人も存在することになります。 対人援助は人の感情に寄り添うサービスであるため、マニュアルに沿った機械的な作業だけを行っていればよい仕事ではなく、利用者の心理状態を慮りながら、自ら考えて裁量を働かせなければならない場面もあります。決して単純作業ではなく、知的労働です。そのような職業であるにもかかわらず、採用時の選択を放棄して、対人援助に不向きな人を採用すると、結果的にはほかの職員に負担がかかり、能力のある職員がバーンアウトします。さらに能力がない職員によって介護サービスの現場で不適切なサービスが生まれ、そうした行為がエスカレートして虐待に繋がるなどの深刻な経営リスクに直結する場合があります。そういう意味では、人材不足だからこそ採用はより慎重に行い、かつ介護事業者自らが、人を育てる組織としてのガバナンスを確立しなければならないのです。 しかし、応募してきた人の能力を採用段階ですべて的確に見抜くことは不可能です。面接担当者がどのように努力しようと、わずか一度の面接で、人の能力や性格を見抜くことはできず、良かれと思って採用した人物が期待外れで、