• Facebook
  • Twitter
  • LINE

<取材先>鹿野 晃 医療法人社団晃悠会 ふじみの救急病院 院長

目次
01:新型コロナ流行当初から発熱外来等に対応
02:新型コロナ対応の実績で診療所から病院へ転換
03:収束後も見据えた展開で地域のニーズに応え続ける

当院は2018年、「ふじみの救急クリニック」としてスタートしました。救急救命センターで長年勤務するなかで、病院勤務医としてできることに限界を感じ試行錯誤していたときに偶然知ったのが、「救急クリニック」という新しい選択肢でした。

当院が担ったのは、軽症~中等症、時には一刻を争う重症の救急患者に24時間365日対応する地域医療の受け皿です。地域の二次救急、三次救急の病院への軽症患者の殺到を防ぎ、本来の重症患者の受け入れに専念してもらうことで、地域内で救急患者の受け入れを完結する円滑な連携と機能分担に資すると考えてのことでした。


実際に、当院の開業以前、当院がある埼玉県ふじみ野市、富士見市、三芳町の21町からなる入間東部地区では年間約1万件の救急要請のうち、3000件が地域外へ送られていました。ただ、開業後は約1500件を当院が受け入れるようになりました。


さらに、195月からはEMT科を設置し、自前の救急隊を発足。地元の救急隊の負担を軽減し、要請があった個人宅や介護施設へのお迎えから転院搬送まで一括対応できるように整備しました。このように、救急患者を地域で診て地域に帰す、〝地産地消〟の医療に貢献してきたと考えています。


そんな当院は2012月、19床の救急クリニックから、38床の小規模な救急病院へと転換しました。この背景には、当時の新型コロナウイルス感染症への対応や、そこで感じた課題、新型コロナ収束後にも求められる首都圏近郊の救急医療のスタンスがあります。


新型コロナ流行当初から発熱外来等に対応

新型コロナの流行当初から、当院では4月には敷地内でプレハブ2個を利用した「発熱外来」を設置したほか、院内の10床の大部屋で新型コロナの入院患者の加療も開始しました。発熱外来のプレハブは、コロナ禍以前から進めていた新病棟の建設のため、建築業者が仮設事務所や倉庫用に設置したものを、工事現場の移動にともない無償でいただきました。


発熱患者が増加するにつれて、発熱外来以外の一般患者の動線も踏まえ発熱外来のプレハブを、道路を挟んで向かいの別駐車場へ移し、さらにプレハブを増やして個室と外来部門も設置。最終的に、19個のプレハブ病棟と9個の発熱外来プレハブの計28個からなる、「発熱外来・PCRセンター」になりました。


この当時はまだ国や県の要請ではない完全に自発的な取り組みで、採算も度外視の持ち出しで行いました。ただ、収束の兆しがまったく見えないなか、仮に10床の大部屋に1人感染者が入院すれば、残り9床を持て余すことになります。県内でも入院病床が足りていなかった時期ですから、いっそ全病床を外に出してプレハブで個室をつくり、19床の新型コロナ用の病床を整備したほうが良いと考えたのです。


一方、一般の救急医療については、コロナ禍以降激減しました。これは、外出控えで交通事故や転倒といった外傷系の患者などは減少したからです。また、外来についても、脳神経外科のかかりつけ患者の受診控えや検査の延期などもあり、経営的には厳しい時期もありました。

新型コロナ対応の実績で診療所から病院へ転換

その後も、埼玉県の要請もあり新型コロナ患者疑いの方の受入れや、時に重症者対応も行っていました。ただ、そのなかで課題となっていったのが、現場と経営のかい離でした。重点医療機関として重症者対応が求められる一方、有床診療所ではICU・HCUが持てず、関連の算定や補助金申請ができなかったのです。


そこで、それまでの新型コロナ対応の実績から昨年12月、19床から38床への臨時増床が認められた結果、正式にICU1床、HCU6床でECMOなど超重症患者対応も可能な病院への転換が叶ったのです。

ふじみの救急 - copy.JPG


そもそも当院ではコロナ禍以前から、新病棟のほかにもER機能の強化、人員や脳神経外科部門の拡充、リハビリ部門の開設、CT、MRI等の各種検査の増設、そして、血管造影や心臓カテーテル手術への対応など、機能拡充に向けた体制整備を進めていました。そのため転換後は、心疾患や脳梗塞といった救急患者の受け入れからカテーテル手術、術後管理まで担えるスペックを備えることができました。


たとえば、脳梗塞の救急患者の場合、以前は受け入れ後に血栓溶解療法などの救急処置は行えず、その後のカテーテルによる血栓回収術などは地域外の病院に搬送するほかなかったのが、自前で対応できるようになりました。


これにより、新型コロナの収束後も、遠方の病院への搬送を減らし、救命率はもちろん後遺症の軽減や復帰率が向上するなど、より一層地域完結型の救急医療体制への貢献が期待できます。

収束後も見据えた展開で地域のニーズに応え続ける

新型コロナに限らず、今後も大規模な新興感染症の流行は起こりえること。さらに、首都直下型地震といった災害対応についても、これからは救急専門診療所や小規模な救急病院が大病院にはない機動力を活かして対応していくポテンシャルを持っていると、私は考えています。


今回、当院は臨時増床による病院転換が認められましたが、新型コロナ収束までに引き続き実績を積み上げ、22年以降の地域医療構想調整会議でも検討のうえ、収束後も小規模病院として運用していく構想も練っています。


また、それに向けて、増員した人員体制を維持していくためには、新しい事業展開も必要となります。三次救急の受け入れももちろんですが、昨年4月からはふじみの救急訪問看護ステーションを開設し、訪問看護・リハビリテーションを開始したほか、病院でも在宅医療部門も立ち上げ、訪問診療も始まりました。さらに、民間救急隊についても、1隊から2隊体制へとさらに充実させています。

新型コロナ後も救急専門診療所や小規模救急病院の役割や存在意義が失われることはなく、引き続き地域や患者さんのニーズに応えていきたいと思います。


制作:㈱日本医療企画

(取材年月:2020年9月)


注目のコラム記事
【FUJITA】サムネ作成用400 .jpg 【人気記事】サムネ作成用.jpg


事業承継情報

事業承継はこちら.png



PROFILEプロフィール

医療法人社団晃悠会 ふじみの救急病院

鹿野 晃 院長

URL

関連サービス

👉「リース」をお考えの方 シャープファイナンス(リース)

診療を支える設備は必要不可欠な要素です。事業拡大時の設備投資において、リースであれば費用が平準化がされ、コストの把握が容易になります。設備投資を検討されている方は豊富な取引実績がある(医科/22,000件、歯科/約28,000件)シャープファイナンスに是非ご相談ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE