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<著者>岩田義明 株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント

事業承継において「スタッフもそのまま引き継ぐ」ケースはしばしば見ることができますが、特に親子承継の場合、「先代の頃のやり方」が強く残ることが想定できそうです。患者の安心感を得やすい一方、後継者としてはやりづらい面もあるようです。注意点を解説していただきます。

歯科医院を承継する後継者にとって、あらかじめ患者の個性や性格が分かり、診療の流れを熟知しているスタッフを譲り受けられることは大きな魅力です。院長が変わっても同じスタッフが継続して勤めてくれれば、患者も安心して来院できます。

事業承継にあたり、スタッフを承継できるメリットは、①スタッフを採用する費用がかからない、②スタッフを教育訓練する費用がかからない、③採用教育の時間を削減できる、④患者との関係性ができているため、経営者交代による患者離れを防げる――という点が挙げられます。

デメリットは、①前院長のやり方を変えにくい、②スタッフの在職年数が長い場合、退職金の支払いが高額になる(隠れ債務の存在)――という点が挙げられます。

その中で、スタッフの処遇条件、退職金、有休の付与をどうするのかなど労務の問題をあらかじめ取り決めておくことはとても重要です。

明確な取り決めをせずに承継すると、新しい処遇にスタッフが不満を持ち、退職することが容易に考えられます。そうなると、スタッフ補充のために新たに採用・教育コストが発生するため、後継者は不満を持ちます。

したがって、事業を承継する側は、スタッフの退職リスクが少なくなるように手を打たなければなりません。

たとえば、「『処遇は少なくとも半年から1年は変わらない』という取り決めをする」「前院長が半年から1年程度残り、患者の引き継ぎやこれまでのやり方を伝える」という方法があります。

一定の引き継ぎ期間を設け、これまでのやり方やスタッフ、業績について後継者が理解をしたうえで、変更すべきものは変更するのであれば、理解も得られやすくなります。
合わせて、雇用契約書などの取り交わしができていないのであれば、この機会に取り交わし、安心して働ける環境を提供する経営者であることを示すのがよいでしょう。

親子承継の場合、処遇を変更しなければ、スタッフはそのまま勤めてくれることが多いものです。ただ、長年勤めているスタッフが後継者である新院長を子どものころから知っている場合、お互いにやりづらかったり、新しいやり方の導入にスタッフが消極的だったりすることが考えられます。



監修:㈱日本医療企画
取材年月:2022年3月


ランキング.jpg収入・費用.jpg2202208 サムネ - .jpg開業.jpg202208 サムネ - コピー.jpg

 

PROFILEプロフィール

PROFILE

株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント

岩田義明(いわた・よしあき)
●早稲田大学教育学部教育心理学科を卒業後、リクルートの関連会社で採用時の人の評価から、人事制度の設計など、人事全般を経験。その後経営全般に係る仕事を志向し、経営コンサルティング会社に転職。2011年より現職。現在は医療機関の経営計画作りから、目標を設定、達成のための具体的な行動計画への落し込みまで実施。PDCAサイクルを回すことで改善活動を継続させ、医院の体質から収益性の改善まで幅広く行っている。

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