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<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明

コロナ禍のなかで、事業者、とりわけ医療機関に対しては緊急対応のかたちで無利子・無担保融資などが行われ、それによって「一息ついた」ところが多かったようです。ただ、これらは返済しなければならず、そのための原資を確保する必要があります。その元手となる収益を確保する道筋をしっかり描く必要がありそうです。

目次
01:歯科医院の収支構造
02:院長の自信が経営危機につながる場合も
03:コロナの影響が残っている歯科医院も
04:最後に

新型コロナウイルス感染の発生・まん延から、まもなく丸3年が経とうとしています。新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に陥った企業向けの実質無利子・無担保融資の返済が本格化してきています。しかし、業績が改善せず、返済はおろか破綻に追い込まれる中小企業が急増しています。医療機関も例外ではありません。コロナ融資の返済準備は進んでいるでしょうか。



01:歯科医院の収支構造

歯科医院の収支構造は一般的に、売上に対する原価率が20%未満と粗利益率が高い一方で、人件費や家賃などの固定費も高く、損益分岐点売上を超えると、それを超えた売上の80%以上が利益として残る構造になっています。(「損益分岐点売上高」とは、利益が±0〈トントン〉のときの売上高をいいます)

損益分岐点売上高に加え、自費売上が200万円上乗せになると160万円利益が残ります。一方で、例えば保険患者さんが減り、50万円、売上が減ると40万円の赤字になります。

歯科医院は損益分岐点を超えると大きく利益が残りますが、損益分岐点を下回ると赤字になり、現預金は減っていきます。このことを忘れないでいただきたいのです。


02:院長の自信が経営危機につながる場合も

自費売上を前提に経営する院長の多くは、「自分がちょっと頑張れば自費をもっと増やせる」との自信をお持ちです。コロナの影響で高齢者や予防患者が減っても、「頑張って減った分を自費でカバーすればいい」考える傾向があります。しかし、1、2回カバーできたからと言って、いつもカバーできるわけではないのです。

自費売上はどうしても波があり、一方で保険売上は安定しています。保険売上が下がってきている場合、患者さんが離れていることが考えられ、元に戻すのも時間がかかります。自費でいつでもカバーできると言っているうちに時間が経過し、資金繰りが厳しくなる例は珍しくありません。だからこそ保険の患者さんが減っていないか気にしていただきたいのです。もし変化が見られた場合、すぐに手を打つことをお勧めします。


03:コロナの影響が残っている歯科医院も

コロナの感染拡大により、一時期ほとんどの医院で患者さんが減りました。その後徐々に回復している医院もあれば、まだ完全に戻り切っていない歯科医院もあります。コロナ関連融資で資金を積み増していれば、元本の返済がなく、利子補給があれば、当面は心配ないかもしれません。ただ、患者さんが戻りきっていない歯科医院では、元本返済が始まると返済に苦労するのが目に見えています。


04:最後に

今はコロナ融資で手元資金に余裕がある医院も多いかもしれません。しばらくの間は多少の赤字でも、資金が底をつくことはないでしょう。まだ手元に資金があるうちに、新しい診療メニューの導入、増患対策、従業員のレベルアップ教育などの次の手を打ちましょう。


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制作年月:2023年6月23日


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PROFILEプロフィール

PROFILE

株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント

岩田義明(いわた・よしあき)
●早稲田大学教育学部教育心理学科を卒業後、リクルートの関連会社で採用時の人の評価から、人事制度の設計など、人事全般を経験。その後経営全般に係る仕事を志向し、経営コンサルティング会社に転職。2011年より現職。現在は医療機関の経営計画作りから、目標を設定、達成のための具体的な行動計画への落し込みまで実施。PDCAサイクルを回すことで改善活動を継続させ、医院の体質から収益性の改善まで幅広く行っている。

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