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<著者>渡辺貴之 ネットワーク渡辺税理士法人代表社員 公認会計士・税理士・行政書士・コンサルタント

親子の承継時に慎重に進めるべき案件の一つが土地・建物の引き渡しです。そもそも不動産は金額が大きくなるだけに、相続対策をはじめさまざまな観点から対策を練る必要があるようです。早めにシミュレーションし、スムーズな承継を目指しましょう。


「親子承継において、診療所の土地・建物を同時に後継者へ渡す必要があるか」との質問を受けることがあります。それに対してお答えするには、まず、「誰が診療所の土地・建物を所有しているか」が、ポイントになります。先代や先代の配偶者が個人で所有しているか、医療法人が所有しているかを、近くの法務局で登記簿謄本を参照・確認してみる必要があります。

土地・建物の所有者変更等はすべて法務局へ登記をしなければなりません。登記簿謄本での情報が、第三者に対して所有権を主張できる情報となります。

しかし、先代の認識と、登記簿謄本での所有者が違うことがあります。

医療法人設立時に土地・建物を医療法人に拠出したにもかかわらず、その際に所有者変更の届け出を法務局に出していないことが原因である場合が多いのです。このようなことがあれば、即座に取引のある司法書士等に確認をしてもらい、登記を変更してください。

次に、医療法人が診療所の土地・建物を所有している場合は、先代から後継者に当該土地・建物を承継する必要はありません。医療法人の出資金を先代から後継者に承継すれば、実質的に土地・建物も承継されるため、それで手続き完了となります。

一方、個人で所有している場合はどうでしょうか。

事業承継時において「診療所の土地・建物を後継者に渡さなければいけない」ということはありません。先代が個人として保有し続け、後継者は医療法人を通して先代に賃料を払い続けるケースも多くあります。

先代としても、退職し承継した後に収入がなくなるのが心もとないため、このように対応することで収まりがよくなります。

さらに、先代の相続時に当該土地・建物は、相続税法において小規模宅地の特例制度を利用することで相続税評価額を低くすることができます。

ただし、さまざまな条件もありますので、先代の相続対策のシミュレーションを描き、土地・建物を個人でどうするのかを決めるのが一般的です。

不動産は大きな金額になりやすく、また上記以外にもさまざまな論点が関係します。そのため判断を誤ると金額的な影響が大きくなります。早め早めに決めていくのがよいでしょう。


監修:㈱日本医療企画
取材年月:2022年3月


ランキング.jpg収入・費用.jpg2202208 サムネ - .jpg開業.jpg202208 サムネ - コピー.jpg

PROFILEプロフィール

PROFILE

ネットワーク渡辺税理士法人代表社員 公認会計士・税理士・行政書士・コンサルタント

渡辺貴之(わたなべ・たかゆき)
●慶應義塾大学商学部卒業後、大手監査法人にて中堅会社の上場準備支援業務に従事後、平成23年に渡辺税務会計事務所(現ネットワーク渡辺税理士法人)に入社。2015年1月に同会計事務所が税理士法人化し、社員税理士・副社長となる。18年11月、社長に就任。現在は会計監査業務だけでなく、経営コンサルティング業務、開業支援業務、医院承継支援業務も実施している。

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