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<著者>合同会社knot 代表 筒井祐智

中小事業者の活用事例紹介 効率化や採用競争力強化の一助に


介護業界におけるDX化が加速しています。一方、導入にかけるコストなどに課題感を持つ中小事業者も多いでしょう。

そこで、中小企業庁および独立行政法人中小企業基盤整備機構の監督の下実施されている「IT導入補助金」の概要や活用事例などについて、介護事業者向けのコンサルティング事業などを手掛ける合同会社knot(東京都港区)の筒井祐智代表社員に話を聞きました。

目次
01:IT導入補助金とは
02:活用にあたり必要なポイント
03:実際の導入事例を紹介
04:具体的な導入事例と費用負担例
05:利益を生み出すITツール
06:導入時のサポート機能

01.IT導入補助金とは

<IT導入補助金概要図>
筒井さん原稿図①(制度概要図).jpg

この補助金は、介護会社に限らず幅広く中小企業を対象に、ITツール導入を推進するためのものです。実際に導入にかかった経費の一部を補助してもらうことが可能で、ツールの活用による業務効率化や売上アップの実現をサポートする補助金といえます。

これまでの通常枠(A・B類型)に加え、2019年度補正予算にてサイバーセキュリティを対象とした「セキュリティ対策推進枠」、21年度補正予算にてインボイス制度対応を見据えた「デジタル化基盤導入枠」(デジタル化基盤導入型・複数社連携IT導入類型)も追加されました。それぞれの補助率については以下の通りです。

筒井さん原稿図②(通常枠).png筒井さん原稿図③(セキュリティ対策推進枠).png筒井さん原稿図④ー1(デジタル化基盤導入類型).png筒井さん原稿図④ー2(デジタル化基盤導入類型).png筒井さん原稿図⑤(複数社連携IT導入類型).png(IT導入補助金2022ホームページより引用)



02.活用にあたり必要なポイント

昨今、介護現場でのIT・ICT化、DXといったことが非常に多く聞かれるようになりました。経営者はこれに対する課題感を持っており、進めていかなければならないと考えていることと思います。今一度、IT活用を進めていくうえで必要なポイントとしてお伝えしたいのは、次の2点です。

・自社の強み、弱みをしっかり認識して分析すること
・分析したうえで、自社における課題にあったITツールを選び、導入すること


まだまだ現場ではアナログ文化が強く根付いています。手書きの書類やFAXのやり取りも、他業界と比してやはり多いように感じます。

介護業界の人材不足が深刻化の一途をたどる中、さらに採用の難易度が上がり、定着のハードルも高くなっていくことが推測されます。効率化できる業務は効率化することで、職員の働きやすさや求職者にとっての魅力向上に繋げたいといった思いは皆さんあると思います。

とはいえ、なかなか進まないのが実状でしょう。私も前職では介護事業会社の社長を務めており、全国120拠点ほどデイサービス事業所を展開していました。様々な角度からIT化を試みましたが、なかなか進まなかった経験を持っています。

導入が難しい理由として、スタッフの年齢層においてベテランが多く、そうした方々が苦手感を持つ傾向にあることが挙げられます。また、システムトラブルがあった時などに、現場スタッフでは対応できないことへの懸念も見られました。そもそも、ITツールに対する心理的抵抗感により排除してしまうといった根本の原因もあります。

そして経営側の大きな理由としては、介護報酬が縮小されていく流れの中で、中小事業者では「極力コストをかけたくない」という思いがあるでしょう。しかし、一歩踏み込んで業務効率化を推進することで、実現した暁には残業の削減、セキュリティ強化、コミュニケーションの増加といった効果が期待できると思います。

こうした効率化によって職員の負担を軽減し、離職防止に努めることこそが、介護事業領域共通の課題であるといえます。


03.実際の導入事例を紹介

介護事業領域でIT化できる業務にはどういったものがあるのでしょうか。一般社団法人サービスデザイン推進協議会がHP上で公開している事例を参考にみてみましょう。


悩み①:護施設の各利用者の情報や介護サービス記録を電子化して、介護士同士でも情報を共有しやすい環境を作りたい

👉クラウド上で介護計画の作成や介護サービス実施記録の入力や集計、サービスの評価などを管理できるツール、ソフトウェアの導入を提案


悩み②:利用者の方々の介護レベルやその時々の体調によって食事量・回数などを変更する必要がある。そのためにどうしても出てしまう食品ロスを、少しでも減らしたい

👉献立の作成や食材発注管理、在庫管理を効率的に行える給食管理システムの導入を提案


悩み③:自宅から訪問介護利用者宅までの距離が近いため直接現場に向かいたいが、事務所に行かなければタイムカードが押せず、出退勤の登録ができない


👉スマートフォンやタブレットのアプリケーションを使って、介護士が出退勤時刻を登録できるシステムの導入を提案

以上のようなケースは非常に参考になると思います。その他の事例や解説は、「IT導入補助金2022」のWEBサイトに掲載されています。ぜひご参考にしてみてください。


04.具体的な導入事例と費用負担例

次に、具体的なサービス内容や導入にかかった費用、補助額などに関する事例も見てみましょう。

グッドツリー社が開発・販売している「ケア樹」は、LIFE対応も整備した介護記録、請求業務などが可能なクラウド型介護ソフトです。在宅、施設サービスに幅広く対応でき、導入実績は全国約3000事業所。導入、ランニングコストが低いことも特徴です。この「ケア樹」の導入事例を2つご紹介します。

1つ目の事例では、従業員規模8名の居宅介護支援事業所が、すでに活用していたシステムのリプレイスに補助金を活用。「ケア樹」を複数年契約し、iPad8台を導入しました。これにより、ケアマネがリモート対応可能になった、ソフトの利便性が上がって業務効率化を図ることができた、といった効果が得られました。

このケースにおける実績としては、申請額80万円に対し60万円支給。実質20万円でICTツールを導入できた事例となります。

2つ目の事例では、従業員規模90名の医療法人(介護老人保健施設、ショートステイ、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションなどを運営)が、コロナ禍の下オンライン面会を居室で行うためのWi-Fi環境整備、そしてLIFE対応のソフトへの切り替えも図りたいといった目的で補助金を活用。
iPad最大15台、Wi-Fi環境整備、ケア樹1年契約といった導入を行った結果、オンライン面会時のリハビリ動画共有、Wi-Fi環境を活用した見守りセンサーの導入、報告書類のデータ化などが可能になりました。

このケースでは、申請額470万円に対し235万円が補助金により支給され、総投資額の半額で導入できた事例となっています。



05.利益を生み出すITツール例

また、Moff社が開発・販売している「モフトレ」は、個別機能訓練計画書の作成から訓練の実施、自動記録、出力、計測、評価まで可能なサービスです。自社開発のウェアラブル端末とモーション認識、データ解析を組み合わせて提供するもので、個別機能訓練加算の算定に特化しています。全国400施設以上のデイサービスで活用されていますが、注目したいのは、この導入によって売上が上がるという点になります。

通常のサービス利用料年間65万円のうち、IT導入補助金により年間32・5万円ほどの負担が必要にはなりますが、加算収益で見た場合、定員30名、週6日稼働のデイで個別機能訓練加算Ⅰ(イ)を算定した場合には、月間30万円強、年間400万円強の売上アップに繋げることが可能となります。投資額を差し引いても、年間370万円ほどの利益を生み出すことができるツールであることがわかります。

また、コニカミノルタ社では、「連絡、面会、イベント、安否確認」などの介護施設で起こる様々なシチュエーションに対応可能な介護特化のコミュニケーション用総合アプリ「HitomeQコネクト」を開発、販売。このサービスはLINEアプリとも連携している点が特徴で、利便性の高いツールといえます。

様々なサービスが開発されているので、自社のサービス、業務の中でどの部分をIT化できるのかを考え、複数試してみることが重要です。

06.導入時のサポート機能

IT導入補助金の仕組みの中には、「IT導入支援事業者」というサポーターのような機能があり、この支援事業者に相談しながら相談、検討、運用まで行うことができます。

コスト面に課題を持つ中小事業者も、補助金を活用することで、自施設での導入を実現できます。効率化や負担軽減に役立てることで、その先にあるサービスの質の向上、採用競争力の強化などに繋げていくことができるでしょう。

 

 ※本記事は、㈱高齢者住宅新聞社が221214日に開催した介護事業者向けセミナー「2024年度介護保険制度改正の理解とインボイス制度対応におけるデジタル化の必要性について」の内容を編集し作成したものです。


監修:㈱高齢者住宅新聞社
制作年月:2023年2月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

筒井 祐智(つつい・よしとも)

合同会社knot 代表
●福岡市出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、富士銀行を経て、医療法人に入職。
事務・管理業務に従事した後、グループ内の医薬品開発企業の経営企画責任者としてIPO、M&A等を主導。
その後、早稲田エルダリーヘルス事業団 代表取締役を務め、日本デイサービス協会理事、全国介護事業者連盟東京支部副支部長等を歴任。

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