<著者>株式会社富士経営総合センター 岩田義明
開業資金はいったいどのくらいかかるのでしょうか。初期段階の設備資金に加え、当面のあいだは収益もそれほど見込めないことを踏まえると、運転資金もある程度、確保する必要があります。一方で、建築費の高騰は止む気配がありません。そのあたりも踏まえて考える必要がありそうです。
開業を考える歯科医師にとって、いくらお金がかかるのかは気になるところでしょう。
当法人でご支援した事例をもとに、現時点(2022年7月)ではどの程度必要かを考えてみます。
- 目次
- 01:今テナントで開業しようとすると8500万円かかる
- 02:開業費用が高騰しているのはなぜか
- 03:開業資金が増えると毎月の返済額も増えることをお忘れなく
- 04:開業費用の内訳・相場
- 05:テナントの家賃
- 06:内装費用
- 07:ユニットは開業時、何台くらい入れたらいいの?
- 08:レセコンについて
- 09:レントゲン、コンプレッサ他(機械室関係)
- 10:ホームページの作成
- 11:内覧会
- 12:リクルート費用・材料仕入れ・院内家電
- 13:開業前運転資金
- 14:開業前運転資金の考え方のポイント
今テナントで開業しようとすると8500万円かかる
結論から申しますと、テナントの場合、設備資金と運転資金を合わせて8500万円必要です。
設備資金とは、診療所を借りる際の敷金や内装費、器械設備、医院の看板やホームページ作成費用などに充てられる資金のことです。
運転資金とは、事業を行う上で必要になる資金のことで、前払い家賃や人件費、水道光熱費に充てる費用です。
事業が軌道に乗るまでの間、毎月かかる費用の5カ月分程度の運転資金を用意しておきます。
開業費用が高騰しているのはなぜか
8500万円もかかるのか、と思った方もいると思います。実はここ数年で開業費用は高くなっているのです。
簡単な内訳例を示すと、表のようになります。(あくまで一例です)
項目 | 金額 | |
1 | 内装費 | 3,000万円 |
2 | 看板 | 150万円 |
3 | 医療器械 | 3,000万円 |
4 | 敷金等 | 400万円 |
5 | 内覧会 | 150万円 |
6 | HP作成 | 100万円 |
7 | その他 | 400万円 |
8 | 運転資金 | 1,000万円 |
合計 | 8,500万円 |
開業費用の内訳をみると、内装費用と医療機器がそれぞれ3000万円となっています。10年前であればそれぞれ2000万円程度でした。
内装費が増えているのは、単純に内装費の坪単価が上昇しているからです。建築資材の高騰と人件費の高騰がそのまま坪単価の上昇につながっています。例えば10年前であれば坪単価50万円でそれなりの内装ができましたが、今では坪単価80万~90万円程かかります。特にここ2年間で急に上がっています。
もう一つは医療器械です。開業後しばらくはユニット2台で足りますが、最近は3台からスタートする先生が増えてきました。これだけで設備資金は250万~300万円増えます。
10年前には開業時に導入していなかったCTの導入が当たり前になってきました。それだけではなく、マイクロスコープも導入したいとする先生も増えてきました。
開業資金が増えると毎月の返済額も増えることをお忘れなく
10年前は6000万円で開業できました。自己資金1000万円で借入5000万円(返済期間10年)の場合、月々の返済額は約42万円です。
8500万円かかる今は、自己資金1500万円、借入7000万万円(返済期間10年)とすると、月々の返済額は約58万円になります。開業をお考えの先生方には、この返済額と自分の生活費を足した金額が、毎月生み出さなければいけない最低限の利益(売上-経費)ということを覚えておいていただきたいと思います。
開業費用の内訳・相場
開業にあたっては内装工事、ユニット設置、レセコン導入、ホームページ作成、内覧会――など、さまざまな準備が必要で、開業にあたってはこれらの支出も念頭に置かなければなりません。ここでは実際の相場感を踏まえて解説していただきます。
開業するにはさまざまな費用がかかります。それぞれの費用のポイントを解説します。
テナントの家賃
テナント開業の場合には、敷金として家賃の6~10カ月分と不動産屋に仲介手数料として1カ月分、前家賃1カ月分の計8~12カ月分の家賃が最初にかかります。
【テナント開業の場合のポイント】
坪単価×坪数 ⇒ 何坪くらいの診療所を検討するか。
例 25坪で4台、30坪で5台くらいのイメージです。
内装費用
内装はさまざまですが、1つの目安として坪単価税抜きで80万~90万円です。
(例)30坪の診療所の場合、30坪×80万円=2400万円(税抜き)
ユニットは開業時、何台くらい入れたらいいの?
開業時には2台あれば十分に診療は回ります。配管は4台、5台分あったとしてもユニットを全部設置する必要はありません。患者さんの人数が1日平均で15人を超え始めたら3台目を検討してください。
※ユニット1台あたりの相場は250万~350万円です。
レセコンについて
レセコンについては、コンピューターですので5~6年くらいの期間で買い換えが必要になります。そのため、リースと購入のどちらでも構いません。ただし、購入の場合には銀行からの融資を受けないといけませんので、融資枠に余裕がない場合はリースを選択することをお勧めします。
レントゲン、コンプレッサ他(機械室関係)
レントゲンについては、先生のやりたい診療によりCTを導入するのか、セファロも必要か、という観点で決めるとよいです。実際にCTを導入しても利用する頻度が著しく低い医院もあります。開業後の診療方針、ビジョンを考えて医療機器の導入を検討してください。
ホームページの作成
現在、ホームページは患者様を呼び込むツールとしては一番の効果的です。保険診療の新規の患者さんの来院動機として多いのは、「いつも医院の前を通っている」「家の近くだから」という来院動機も多いですが、そのような方々も、ホームページを確認してから来院します。
➡金額として30万~150万円の予算が必要です。
内覧会
内覧会を行うか行わないかで、初月のレセプト件数は倍くらい変わります。内覧会の役割は周囲の方々に「ここに歯科医院がありますよ!」というアピールです。
内覧会の相場金額として130万円です。
リクルート費用・材料仕入れ・院内家電
(ア)リクルート費用は、知り合いの人を連れてくるかどうかでも費用は変わりますが、リクルート予算として20万円は確保しましょう。
(イ)材料仕入れ代については、概算で200万円を予算として確保します。実際はもっと下がるかもしれません。
(ウ)院内家電としてコピー機、冷蔵庫、レンジ、洗濯機、PC、待合室のイスなどが必要になります。予算として60万円は確保しておくとよいでしょう。
相場金額として下記の予算取りをしてください。
※リクルート費用 ➡ 20万円
※材料仕入れ費用 ➡ 200万円
※院内備品 ➡ 60万円
開業前運転資金
開業前運転資金に含まれるものとしては、診療所の家賃や借入金利息、採用した従業員の給与、税理士費用や社労士費用などが入ります。
実際に家賃はいつから発生するのかなど、契約時にフリーレントの交渉ができると開業前運転資金の負担を減らすことができます。
開業前運転資金の考え方のポイント
➡開業前の家賃の支払う合計額+50万円ほどを予算に。1カ月でかかる費用の合計額の最低5カ月分の確保は必要と考えるべきです。
例)月に200万円かかる場合は、200万円×5カ月分=1000万円必要
制作年月:2022年10月3日
PROFILEプロフィール

株式会社富士経営総合センター コンサルティング事業部チーフコンサルタント
岩田義明(いわた・よしあき)
●早稲田大学教育学部教育心理学科を卒業後、リクルートの関連会社で採用時の人の評価から、人事制度の設計など、人事全般を経験。その後経営全般に係る仕事を志向し、経営コンサルティング会社に転職。2011年より現職。現在は医療機関の経営計画作りから、目標を設定、達成のための具体的な行動計画への落し込みまで実施。PDCAサイクルを回すことで改善活動を継続させ、医院の体質から収益性の改善まで幅広く行っている。
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