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目次
01:目指すべき医業収入とは?
02:歯科医院経営 収入・費用の目安
03:経営体質強化のため、職員が定着する組織を目指そう
04:職員のモチベーション向上の方法
05:キャッシュに着目した経営が大事
06:経営シミュレーションの作成方法

目指すべき医業収入とは?

● 医業収入は当面目標として「3000万円」を目指そう

あるグループが統計をまとめたところ、歯科医院の年間医業収益は平均で、個人医院が約4600万円、医療法人医院が約1億2000万円といいます。事業規模が大きいほど自由診療が占める割合も高くなるようです。歯科医院経営の目安の一つとしていいのではないでしょうか。

私たち税理士が歯科医院の先生方と初めてお会いする場合、決算書を拝見することになります。
この時、まずどこに着目し、どう判断するかといったことを大まかに述べてみたいと思います。当法人も参加しているある職業会計人グループが作成している、歯科医院の統計データ(以下、データ)をもとにお話を進めます。

● 医業収入はどのくらいか

データによると、平均の年間医業収入は個人経営の医院で4598万円、医療法人で12190万円となっています。歯科医の先生方の会合でこのデータをお話したところ、「平均収入額が大きすぎるのではないか」といったご指摘を受けました。このデータはいずれも、夜間開業や午前中のみの診察といった歯科医院はほとんど含まれておらず、会計事務所に業務委託するようなフルタイムで稼働している歯科医院ばかりです。「これから拡大させよう」という先生方にはやはり、一つの目安としていただきたいと思います。

● 自由診療の総収入に占める割合

医業収入における自由診療の割合は、個人医院で14%、医療法人院で25%となっています。矯正歯科を中心に扱う歯科医院でない場合でも、都市部では自由診療の割合が50%を超えるところも珍しくありません。

さらに、年間の医業収入が1億円を超える医院に限ってみると、自由診療費は27%となります。規模の大きい医院ほど診療内容のメニューが多く自由診療の収入比が高くなることがうかがえます。

歯科医院経営 収入・費用の目安

● 原価率

歯科医院の変動費は「材料費」と「外注技工料」に分けることができます。個人・医療法人を問わず、全医院で材料費が対医業収入比8%、外注技工料が同7%、両費用を合計すると15%となります。言うまでもなく医院の提供する診療内容によって変動費率は変わります。補綴の割合が高くなれば当然、変動費率は高くなりますし、予防中心なら下がります。

いずれにせよ、収入に連動する費用ですから事業計画を策定する際も原価率を念頭に置く必要があります。例えば、原価率が対収入比20%である場合、月間で収入を100万円増やしても手残りは、80万円となります。

● 人件費率

歯科医院の最大の固定費は人件費です。データによると個人・医療法人全体で対医業収入比は平均21%となっています。この比率が30%を超えると経営は厳しくなります。
ただ、気をつけていただきたいのは、しっかり昇給し、休暇も取れる環境を用意し、厚生年金などの法定福利費も整備していかなければ、良いスタッフは集まらないという側面もあるということです。工夫することでなんとか25%程度に抑えていただきたいと思います。

● 医業利益

個人医院の場合は所得額と言い換えてもいいでしょう。年間平均利益は1280万円です。個人医院の場合は所得から、専従者給与(つまり、家族への給与)を控除します。
ただ、専従者給与は家族への支払いで、就業時間や職種などが反映されているわけではありませんから、通常は専従者給与を控除する前の数値を参照します。控除前で見ると1634万円です。医療法人も役員報酬について、役員報酬を差し引く前で見ますと利益は2883万円となります。

年間利益が3000万円を超える歯科医院は全体の23割程度と推定されます。せっかくリスクを背負って開業したのですから、ここを一つの目標とされてはいかがでしょうか。

経営体質強化のため、職員が定着する組織を目指そう

医院の安定・拡大には職員の力が不可欠であることは言うまでもありません。ただ、歯科医院界はさまざまな業種のなかでも特に人の動きが激しいことで知られます。そこで力のある職員に長く働いてもらうには、組織の風通しをよくするなど、日頃からの経営サイドの配慮が求められるようです。

歯科医院の職員の採用は日に日に難しくなっており、さまざまな業種のなかでも人の動きが特に激しくなっている市場の一つです。ですから、採用後に即戦力として期待できる人材を確保することは、非常に困難なことになっています。

せっかく採用ができても、職員が医院の一員として働くということに誇りや喜びを持っていなければ、場合によっては院長の意志に反する行動をとりかねません。長く、そしてより良く働いてもらうには、医院の職員としての基本姿勢や規範、モラルなどをあらかじめ示し、十分な理解をはかった上で就労してもらうことが大切です。

● 経営体質の強化のために

経営体質の強化には、スタッフの協力が欠かせません。歯科医院を動かすのはスタッフであり、歯科医院が評価されるのもスタッフ次第なのです。また、立案した診療方針や歯科医院のコンセプトを実現するには、スタッフの確保・育成に注力すべきです。そのためには、次のような意識を持って職員育成にあたることが重要となります。

● 労働環境の整備とスタッフ満足度

スタッフ満足度を上げるためには医院の労働環境の整備が欠かせません。

ただ、いくら労働環境を整備しても、医院のコンセプトをスタッフが理解していなかったり、また理解していても納得して業務に取り組んでいなかったりすれば、想定される成果は得らません。スタッフの満足度を高めることは、これからの歯科医院経営にとっては必須です。より良い歯科医院経営を行うには、生き生きと働くスタッフが不可欠なのです。スタッフ満足は患者満足につながり、ひいては歯科医院に大きなメリットをもたらします。

職員のモチベーション向上の方法

モチベーションを高める最も大きな要因は、スタッフの“仕事についての満足”“自分の仕事について認められている”という気持ちです。スタッフに気持ちよく働いてもらうためには、院長のリーダーシップのもと、法律を遵守した基本的な労務管理を実施するとともに、モチベーションを高めるための取り組みが求められます。

スタッフを動機づけるには効果的なインセンティブの設定が必要です。

例として

・毎月患者数の目標値を提示し達成したときは大入り袋を出す

・半年ごとに患者数目標を設定し1割オーバーすると賞与を1割、増額する

などです。

患者数を増やすための対策を実行するとスタッフに負荷がかかるため、院長とスタッフ間のコミュニケーションを良好に維持し、組織の風通しをよくしておく必要があります。朝礼やスタッフミーティングなどを通じて目標の達成度などを発信する、また目標を達成した時には食事会などのイベントを行うなどの非公式なコミュニケーションも有効となります。

キャッシュに着目した経営が大事

患者も増え、所得も安定しているにもかかわらず、思ったほどお金がない……そんな「勘定合って銭足らず」な事態はしばしば起こります。こうした事態を防ぐためにも、支払いや生活資金も踏まえた収支シミュレーションを描き、対策を講じる必要がありそうです。

医院経営を続けていくと、所得は高くなり多額の税金を納めているものの、思ったほどお金が残らないということがしばしば起こります。そこで重要になるのが「キャッシュ(現金)」の管理です。今回は利益だけではなくキャッシュに着目した経営について説明します。

● 収入は多いが支出も多い

歯科医師の先生は、平均と比べて収入は比較的多いですが、支出についても平均と比べて大きくなることが少なくありません。もちろん、所得が増えたことに伴って税金が増えるという要素もありますが、気持ちに余裕ができ、金遣いが荒くなることが大きな要因です。子どもの学費・医院の設備投資・引退後の生活資金……。考えなければいけない事項は多岐にわたります。

経営シミュレーションの作成方法

● 経営シミュレーションの作成

・毎日頑張っているが、思ったほどお金が残らない

・思い通りの人生をおくるためには、どのくらいお金が必要なのか?

・どのくらいの売上高まで頑張れば、必要なお金が残せるのか?

というようなことでお困りの先生は結構多くおられます。これを解決するために経営シミュレーションの作成が有効になります。

● 経営シミュレーション作成のSTEP

経営シミュレーションの作成については以下のようなSTEPになります。

STEP1 現状把握

「今の状態で残っているお金はいくら?」を算出します。

STEP2 ライフプランから必要資金を出す

ライフプランから、老後資金・教育資金・設備資金・住宅資金などの様々な必要資金を検討し、「そのためには、今年1年でお金をどれだけ残さなければならないのか…?」を算出します。

STEP3 ギャップを見つけて対策を練る

「今年1年でお金を残すために、どれだけ売上高が必要なのか?」

「医院経費や生活費をどれくらい使えるのか?」

などをライフプランから逆算してシミュレーションし、経営計画を作成します。

STEP4 図解で直感的に理解する

シミュレーション結果を図解表示し、会計の知識がなくても簡単に理解できるようにします。経営シミュレーションを作成することにより、院長自身のありたい未来を思い描くとともに、それに向けてどう進んでいくかをご検討いただきたいと思います。


著者:日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之
監修:㈱日本医療企画、芙蓉総合リース㈱
制作年月:2022年10月19日

・引用記事
【解説】医業収入は当面目標として「3000万円」を目指そう
【解説】経営を支えるのは「ヒト」!職員が定着する組織を目指そう

【解説】「所得は高いのにお金がない…」を防ぐ キャッシュに着目して計画的な経営を!


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PROFILEプロフィール

PROFILE

日本クレアス税理士法人 大阪本部会長

上田久之(うえだ・ひさゆき)
○姫路西高校から神戸大学経営学部会計学科へ。在学中に公認会計士試験に合格。日本の四大監査法人の一角をしめる新日本監査法人を経て、1982年、大阪市中央区にて開業。MMPG全国会常務理事・元歯科部会長、日本歯科医療管理学会会員。

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