• Facebook
  • Twitter
  • LINE

<著者> 株式会社スターコンサルティンググループ 代表コンサルタント 糠谷和弘


効率化と正社員化・大規模化で好循環へ

24年度介護報酬改定が目前に迫る中、介護業界、特に訪問介護業界では人材不足が顕著となり、経営に大きな影響を与えています。

人材採用にかかるコストの増大、訪問介護員の高齢化、人材確保がままならず事業所閉鎖となるケースまである一方で、2040年に向けて在宅介護ニーズは増加の一途をたどっています。次期改定を踏まえ、今後の訪問介護事業者がとるべき戦略にはどのようなものがあるのでしょうか。

スターコンサルティンググループ(東京都千代田区)の糠谷和弘社長に話を聞きました。

目次
1.「訪問+通い」の新サービス類型創設
2.〝訪問介護難民〟のニーズに対応
3.〝大規模化〟で人材定着

1.「訪問+通い」の新サービス類型創設

新類型創設の背景にあるのは、訪問介護人材の不足です。有効求人倍率は15倍に上ると言われる中、訪問介護サービスを受けたくても受けられない「訪問介護難民」も激増しているのが現状です。そこで、デイサービス事業所で訪問介護までカバーできる仕組みとすることで、この訪問介護のニーズに既存資源で対応していくことが目指されています。

訪問介護図.JPG

(出所=スターコンサルティンググループ)



この新類型は地域密着型サービスの枠組みに位置づけられる予定ですが、これは地域ごとにマネジメントさせること、乱立を防ぐことが目的と考えられます。

また、今のところは要介護度別の包括報酬になる予測ですが、一定の参入を要するためには魅力的な水準で、かつ利用定員も多く設定しないと参入が進みませんし、ケアマネジャーの配置についても、在宅ケアマネが継続して対応できないと利用が進みません。

また、デイの職員が訪問介護までこなせるようにするのであれば、訪問担当者に必須の「介護職員初任者研修」の修了を不要にすべきと考えます。

ただし、これらが期待通りとなり参入が促進されたとしても、デイ事業者にとってはオペレーション上非効率になったり、利益が見合わなかったりといった障壁が想定されます。大きなビジネスチャンスとなるような要件にならない限り、訪問介護事業者が影響を受けるほどの普及にはならないのではないでしょうか。


2.〝訪問介護難民〟のニーズに対応

よって、新類型の創設を以てしても〝訪問介護難民〟は解消されないと考えられることから、やはり訪問介護事業者に対応が求められます。

外国人介護人材の活躍の場を訪問系サービスにも広げようとする国の議論も進んでいますが、現状ではまだ対応できないため、国内のリソースでなんとかせざるを得ません。限られた人材で多くの利用者に対応していくためには、業務の効率化が不可欠です。

訪問介護事業者は①正社員化②ICT化③直行直帰・フレックス制度の導入――を前提に仕組みを構築しましょう。

正社員化

まず①については、現在多くの訪問介護事業者がとっている登録ヘルパーのモデルでは、利用者とヘルパーとをマッチングする手間が発生します。ヘルパーを正社員化することで、人材の安定化、質の向上を図ることができます。

ただ、正社員として募集しても、採用が難しいことには変わりはありません。他社よりも好条件にすることは不可欠です。そのためには、1人のヘルパーの稼働時間、訪問人数を最大化できるように、集客することも重要でしょう。

ICT化、直行直帰・フレックス制度の導入

また、②ICT化が前提とはなりますが、介護記録システムとタブレットなどを活用することで、③直行直帰・フレックス制度の導入が可能となります。利用者宅と事務所とを往復する移動の無駄がなくなり、自宅やカフェなどで記録業務ができるため、より多くの利用者に対応できるようになるでしょう。

そして何より重要となるのは「交渉術」です。午前中や夕方など、利用者がサービスを利用したい時間帯は被ってしまうものです。しかし、多くの利用者に対応するためには、希望時間とは異なる時間であっても納得してもらえるよう交渉し、スケジュールを組むことが重要です。



3.〝大規模化〟で人材定着

訪問介護事業所1ヵ所のみを運営する事業者も多いと思います。しかし、1事業所に3人などの勤務では、長期休暇はおろか休憩時間も確保しにくいのではないでしょうか。

そこで、7~10人の職員を雇用し、複数人で介護にあたることを提案します。複数人で介入することでサービスの質も向上しますし、よくある「担当ヘルパーが他法人に転職したところ、利用者が一緒に離れてしまった」などのケースを防ぐことにもつながるでしょう。

業務効率化で仕事の量と質を高め、正社員化と大規模化で人材が定着する。この好循環を目指した業務改革が目指されます。




制作:株式会社高齢者住宅新聞社
制作年月:2023年7月


記事内冒頭.jpg

メルマガバナー.jpg

ランキングバナーjpg.jpg

記事内掲載用バナー_650×150-2.jpg

PROFILEプロフィール

PROFILE

糠谷 和弘(ぬかや・かずひろ)

㈱スターコンサルティンググループ 代表コンサルタント

介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設長&リーダーの教科書(PHP)」などがある。

関連サービス

資金繰りの改善で事業の拡大をお手伝いいたします!

ファクタリングを利用すれば、「資金使途自由」かつ「スピーディー」な現金調達が可能です!
●設備の入れ替えを考えているが、資金繰りに余裕がない・・・
● 一時的に収支が悪化してしまい、運転資金の確保に困っている・・・
● 施設の開設後、当初計画より稼働率が上がらず、給与資金の調達に苦労している・・・  etc.
   
このようなお悩みは、ファクタリングサービスで解決できます!
ぜひ一度ご相談ください。

*アクリーティブ(芙蓉リースグループ)*

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE