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<取材先>医療法人アストロイノベーション 淀屋橋クアトロアールクリニック(大阪市中央区)

目次
01:遠隔診断も活用して スピーディーな診断を実施
02:病理診断の要件が見直しに 診療報酬改定が追い風に

遠隔診断も活用して スピーディーな診断を実施

大阪府の府庁所在地であり、大手企業本社や大阪証券取引所などが立ち並ぶ活気あるオフィス街エリアでもある大阪市中央区。そんな中心地に位置するビルの8階にあるのが、淀屋橋クアトロアールクリニックだ。同院には、いわゆる風邪といった一般患者が来院することはめったにない。なぜなら、同院が専門とするのは、病院や診療所、検査機関からの依頼を受けて行う、「病理診断」「臨床検査診断」「放射線診断」だからだ。

管理者の菅野渉平理事長は、病理専門医、細胞診専門医、臨床検査専門医、放射線診断専門医など12の専門資格を保有する、同院の最終責任診断医だ。現在掲げる3つの診断事業のうち、最も伸びているのは、病理診断だという。

「ほとんどの医療機関は、検査機関に病理検査をするための標本づくりを依頼し、その標本を元に病院の医師が診断を行っています。当院は、病理診断を行う医師が不在の医療機関から依頼を受けて診断を行っています」(菅野理事長)

具体的には、がんや腎生検の病理診断は、光学顕微鏡像をデジタル化し、ディスプレイ上で顕微鏡観察できるバーチャルスライドを使用。パソコンで遠隔診断ができるため、病理診断医がどこにいても迅速に診断ができる。大阪、東京、アメリカにいる病理診断医が連携し、常にダブルチェックを経てスピーディーに診断結果を返送する。

手術中に採取した組織やその周辺の組織が、がんであるかどうかを診断する術中迅速診断にも対応。限られた時間で、手術で摘出した範囲が適性かどうか、手術を完了させてよいかを判断するため、最新のバーチャルスライド機器を導入した。好立地も、バイク便などで標本を受け取りやすくする狙いだ。

病理診断の要件が見直しに 診療報酬改定が追い風に

ちょうど開業した2016年の診療報酬改定で、病理診断の要件見直しが図られたことも、成長の追い風となっているという。従前は、病院・診療所は病理診断科を標榜する保険医療機関に病理診断を依頼する際、病理判断料として150点を算定する仕組みで、依頼側に利益が残らなかった。

しかし、16年度診療報酬改定によって、同院のような施設基準を満たす医療機関と提携している旨を届け出ることで、病理診断料450点と病理診断管理加算120点を算定可能になった。この報酬から、依頼元の医療機関が同院に診断料を支払っても利益が残る仕組みになったのだ(図)。

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同院はこの提携先としての要件をすべてクリアしているのに加え、検査機関ではできない術中迅速診断への対応や、検査機関に依頼するよりも迅速な対応が評判を呼び、口コミで依頼件数は右肩上がりに増加。現在、1日当たりの依頼検査数は150200件に上り、術中迅速診断以外は、通常、他の検査機関では2週間前後かかる診断書の発行も、その約半分の1週間程度行なっている。

「常勤医3人と非常勤医師数人、事務スタッフ2人で連携しスピーディーに対応するようにしています。バーチャルスライドの機器導入にはコストがかかりましたが、それ以外は、基本的に人件費や家賃以外のコストはかかりません。検査1件当たりの報酬はそれほど高くないものの利益率は高く、売上は毎年最高益を更新しています。今年は検査機関を新規開設したほか、さらに1機関を買収し、診断だけではなく、標本作成から一括受注できる体制を整える予定です」と、菅野理事長は語る。

さらに、病理診断事業に続く同院の柱として伸びている事業として、産業医活動がある。菅野理事長は、第1種作業環境測定士や労働衛生コンサルタントの資格も有し、院内にも労働衛生コンサルタント事務所を併設している。

「病理診断や放射線診断の医師は絶対数が不足しているため、大学や検査機関に努める医師は過酷な労働を強いられています。私自身もそんな体験をしたことから、産業医の勉強を始めたのですが、開業後、産業医へのニーズが多いことに驚いています。当初は数事業所に対応していましたが、今では65事業所の産業医を務めています」(菅野理事長)

「病理診断科」「放射線診断科」「臨床検査科」「労働衛生コンサルタント」――と、同院が掲げる事業は、どれも単価での開業で採算を取るのは難しい分野だ。病理専門医や放射線専門医は診断単価が安いため、検査機関や大学病院で勤務する道がほとんどである。

しかし、菅野理事長は、「単科ではなく、専門性の高い複数化を標榜すれば、各分野の利益を合算できるほか、どれか1事業が不振でも他事業で補えるというメリットがあります」と、強調する。

今後は、各専門分野の医師を追加雇用し、ワークシェアと事業規模拡大につなげるとともに、中長期的には、診療所や病院とのネットワーク強化やM&Aを進め、健診から診療、検査、手術など治療までをグループ内で実施できる体制をつくりたいと語る。



制作:㈱日本医療企画

(取材年月:20213月)


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PROFILEプロフィール

PROFILE

医療法人アストロイノベーション 淀屋橋クアトロアールクリニック

菅野渉平 理事長

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