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<著者>日本クレアス税理士法人 大阪本部会長 上田久之

あるグループが統計をまとめたところ、歯科医院の年間医業収益は平均で、個人医院が約4600万円、医療法人医院が約1億2000万円といいます。事業規模が大きいほど自由診療が占める割合も高くなるようです。歯科医院経営の目安の一つとしていいのではないでしょうか。

私たち税理士が歯科医院の先生方と初めてお会いする場合、決算書を拝見することになります。この時、まずどこに着目し、どう判断するかといったことを大まかに述べてみたいと思います。当法人も参加しているある職業会計人グループが作成している、歯科医院の統計データ(以下、データ)をもとにお話を進めます。

目次
01:医業収入はどのくらいか
02:自由診療の総収入に占める割合
03:原価率
04:人件費率
05:医業利益

医業収入はどのくらいか

データによると、平均の年間医業収入は個人経営の医院で4598万円、医療法人で12190万円となっています。歯科医の先生方の会合でこのデータをお話したところ、「平均収入額が大きすぎるのではないか」といったご指摘を受けました。このデータはいずれも、夜間開業や午前中のみの診察といった歯科医院はほとんど含まれておらず、会計事務所に業務委託するようなフルタイムで稼働している歯科医院ばかりです。「これから拡大させよう」という先生方にはやはり、一つの目安としていただきたいと思います。

自由診療の総収入に占める割合

医業収入における自由診療の割合は、個人医院で14%、医療法人院で25%となっています。矯正歯科を中心に扱う歯科医院でない場合でも、都市部では自由診療の割合が50%を超えるところも珍しくありません。

さらに、年間の医業収入が1億円を超える医院に限ってみると、自由診療費は27%となります。規模の大きい医院ほど診療内容のメニューが多く自由診療の収入比が高くなることがうかがえます。

原価率

歯科医院の変動費は「材料費」と「外注技工料」に分けることができます。個人・医療法人を問わず、全医院で材料費が対医業収入比8%、外注技工料が同7%、両費用を合計すると15%となります。言うまでもなく医院の提供する診療内容によって変動費率は変わります。補綴の割合が高くなれば当然、変動費率は高くなりますし、予防中心なら下がります。

いずれにせよ、収入に連動する費用ですから事業計画を策定する際も原価率を念頭に置く必要があります。例えば、原価率が対収入比20%である場合、月間で収入を100万円増やしても手残りは、80万円となります。

人件費率

歯科医院の最大の固定費は人件費です。データによると個人・医療法人全体で対医業収入比は平均21%となっています。この比率が30%を超えると経営は厳しくなります。

ただ、気をつけていただきたいのは、しっかり昇給し、休暇も取れる環境を用意し、厚生年金などの法定福利費も整備していかなければ、良いスタッフは集まらないという側面もあるということです。工夫することでなんとか25%程度に抑えていただきたいと思います。

医業利益

個人医院の場合は所得額と言い換えてもいいでしょう。年間平均利益は1280万円です。個人医院の場合は所得から、専従者給与(つまり、家族への給与)を控除します。

ただ、専従者給与は家族への支払いで、就業時間や職種などが反映されているわけではありませんから、通常は専従者給与を控除する前の数値を参照します。控除前で見ると1634万円です。医療法人も役員報酬について、役員報酬を差し引く前で見ますと利益は2883万円となります。

年間利益が3000万円を超える歯科医院は全体の23割程度と推定されます。せっかくリスクを背負って開業したのですから、ここを一つの目標とされてはいかがでしょうか。



制作年月:2022年3月
監修:㈱日本医療企画


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PROFILEプロフィール

PROFILE

日本クレアス税理士法人 大阪本部会長

上田久之(うえだ・ひさゆき)
○姫路西高校から神戸大学経営学部会計学科へ。在学中に公認会計士試験に合格。日本の四大監査法人の一角をしめる新日本監査法人を経て、1982年、大阪市中央区にて開業。MMPG全国会常務理事・元歯科部会長、日本歯科医療管理学会会員。

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