開業するにあたって、自身で購入した不動産によりクリニックを開業するのか(戸建て開業)、不動産を賃借してクリニックを開業するのか(テナント開業)について、決断する必要があります。今回は、テナント開業のポイントをご紹介いたします。
テナント開業のメリット・デメリット
テナント開業は、初期費用がおさえられ、自己資金が少なくて済み、立地の良いエリアに開業できる可能性が高いなどのメリットがあります。
一方で、撤退時の原状復帰にお金がかかる場合や、設計の自由度に制約のある場合、テナントオーナーの都合に左右される場合があるなどのデメリットがあります。さらに、契約や設備の面で気を付けるべき点もあります。
どのようなテナントが理想的?
場所がある程度定まったら、テナントの立地やサイズ感をチェックしましょう。例えば、手術を行う眼科であれば、通院が必要となり付き添いも多いことが予想されます。したがって、駐車場の有無や駅からの利便性、待合室において付添人が待つスペースがあるか否かなどについて検討する必要があります。
テナント自体が魅力的だとしても、テナントビル内に入っている他の会社の業種にも注意を払わなければいけません。クリニックに似つかわしくない業種が同じテナントビルに入っている場合、集患に悪影響が及んでしまうおそれがあります。医療モールの場合にはそのような懸念点はありませんが、同じ診療科目のクリニックが入っている場合は集患が難しくなることがあるのでご留意ください。
院外処方
場所を選定する初期段階で調剤薬局のことを念頭に置いておかなければなりません。院外処方を選ぶ際は、薬局からのアクセスがよい立地を選定すべきであります。この点、医療モールであれば、ビル内、ないしはビルの近くにすでに薬局がある可能性が高いです。
テナントの設備・契約のチェック
テナントの設備や契約についてチェックすべき点を紹介します。
・建築基準法上のチェック
耐震構造やアスベストの有無、消防設備について確認しておきましょう。
・天井高や床下配管工事
医療機器を設置する関係上、天井高に留意が必要となります。医療機器を搬送する経路が確保されているかについてもご確認ください。また、電気設備やトイレの確認なども忘れずに行いましょう。
このような確認を行う際には、クリニック開業を専門としている業者さんに依頼されることをお勧めします。
・契約期間
テナントを借りて開業する場合に契約期間に期限が設けられていることがあります(定期借家契約)。例えば契約を結んでから20年後に退去することを前提に契約を結んだ場合、順調にクリニック経営ができている場合であっても、期間が満了すれば退去を求められるケースがあります。したがって、賃貸借契約を結ぶ際には定期借家契約を避けるか、もしくは契約期間の縛りがどの程度のものなのか、テナントオーナーと相談するべきであります。
・増築や改造
増築や改造はテナントオーナーの同意なしで行うことができません。医療法上の基準を満たすために改装が必要であれば、テナントの改装が可能かどうか確認しておきましょう。
・広告の規制
広告は集患には大事なポイントとなります。例えば、〇〇クリニックなどの看板を立ててはいけないとなると、集患に大きな影響を与えます。
おわりに
テナント開業のメリット・デメリットや気を付けるべきチェックポイントについてご紹介しました。これらのポイントを念頭に、納得のいく開業をしてください。
<著者> 日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬 税理士
制作年月:2022年10月17日
PROFILEプロフィール

日本クレアス税理士法人 執行役員 中川 義敬
税理士(近畿税理士会所属)
【経歴】
2007年税理士登録、2009年に日本クレアス税理士法人入社。
現在に至るまで、東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、
税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、
相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング、
決算早期化等に従事。
医院の新規開業支援、会計税務、医業承継・相続対策など、
個人医院から大病院までをサポートしてきた医療分野での高い経験を
生かすため、2019年7月大阪本部 本部長に就任。現在に至る。
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