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<取材先> ㈱RARECREW 代表取締役 日下部竜太

倒産の危機回避 現在の経営管理指標を語る


入浴特化型の3時間型デイサービス「いきいきらいふSPA」や訪問介護、居宅介護支援など、東京を中心に全国22事業所で在宅介護サービスを展開するRARECREW(東京都台東区)。今年で創業20年を迎えた同社の日下部竜太社長に、事業モデルや資金調達・財務管理手法、新規事業などについて話を聞いた。


>>前編:業界初の入浴特化型短時間デイ「いきいきらいふSPA」開発から学ぶ


大幅な計画未達で赤字 救ったのは「経営革新計画」の制度融資


――資金調達や財務管理のテクニックについても聞かせてください。


日下部●銀行からの融資による資金調達が主でしたが、ちょうど「いきいきらいふSPA」拡大に向かっていた2012年、「経営革新計画」の承認申請にチャレンジしました。


図②経営革新計画とは.png
今後の展開の中で「通常融資のほかにこの特別融資を使える状態にしておくことが、いざとなった時の切り札になる」と考え、この革新計画に位置付けた特別融資制度に着目。申請書を提出したところ、東京都初のデイサービスモデルにおける経営革新計画の承認を得ることができました。

その後、11年からのFC方式による展開加速を行う中で、若手の積極採用とともに優秀な幹部陣を迎え本部人員を増員していきました。会社の組織化が図られ、12年からわずか3年で直営20事業所、FC21事業所の合計41事業所に拡大。

売上は右肩あがりで創業から13年連続増収を達成し、本部人員も更に強化、従業員数も240名弱の大所帯になっていました。資金繰りでは、年間5店舗(2200万円/1店舗調達資金)開設、これを2年続けて調達しており、合計10店舗の直営出店分だけでも借入金総額は2億2000万円に。

しかし13年の後半、状況が一変。加速度的な直営出店、急な本部人員拡大による人材投資、1店舗開設と同等額の研修センターの開設などが行き過ぎた投資となっていました。新店の人材確保も間に合わず、1店舗開設にあたり6名~7名、3ヵ月毎に1店舗のペースで開設となれば、育成もまったく追いつかない事態が発生しました。収支が計画通りに進まないどころか、大幅な計画未達となっていったのです。

負の連鎖が表面化した際には「倒産」の2文字が頭をよぎり、支出削減を強化するとともに、経営の立て直しに向け時間を稼ぐため動きました。資金捻出については、思い出したのが赤字でも活用可能な「経営革新計画」の制度融資でした。

1銀行1000万円を2行から受け、2000万円を調達。この間に支出削減に取り組みました。まずは業務の徹底的な洗い出し、そしてFCの管理体制強化、直営店舗の立て直し。モデル事業所の適正人員の指標の明確化と管理の徹底。余剰人員は全員営業PR活動に移し、集客活動を強化。シフトコントロールと業績関連のKPI管理の徹底も行い、3ヵ月で立て直しに成功しました。

現在の運営管理、経営管理はすべてこの時の指標をブラッシュアップして行っています。情報の透明性を重視する必要性と、「上手くいっている時こそ慎重に、ピンチの時ほど大胆に」行動することの重要性を学びました。

なお、倒産寸前のピンチを救ってくれた「経営革新計画」は、計画である以上実行した結果を報告するのですが、5年計画の結果、東京都経営革新優秀賞を受賞。銀行など金融機関の反応も非常によいものになりました。その後は財務戦略の重要性を身をもって体験したため、メガバンクをはじめ地方銀行、信用金庫、政府系金融公庫からバランスよく借入を行っていきました。

金融機関との関係性は経営をしていく上でとても重要な指標です。多くの経営者は資金調達したい時に金融機関に声をかけて、求められる資料を提出するという流れの付き合いだと思います。しかし、戦略的に資金調達しようと思えば、しっかりと毎年決算報告会を行い、信用力を高めておくことが必要になります。

決算報告会では成績報告とともに、次年度の事業計画についても数字をもって説明することをおすすめします。これで金融機関は、経営状況をしっかり分析できているか、今後の事業展開をどう考えているのか、追加資金需要のタイミングをどう考えているかなど、経営者の能力を知ることができる機会になるので、経営者としての評価が高まると私は考えています。

金融機関をパートナー企業と捉え、しっかりと協力してもらえる体制を作っておくことは何より重要なことだと認識しています。



国が推奨 人件費割合を単価の45%に


――運営管理、経営管理の指標について、詳しく教えてください。


日下部●介護事業において適正利益・売上を目指すにあたり、重要なのはシフト管理と人員配置です。

例えば当社における1つのデイサービスモデルでは、出勤人数を1日4人として月のオペレーションを組むと、30日の稼働で120コマとなります。これを正社員とパートで埋めていきますが、この際に標準オペレーションに照らし合せて最も適正な配置を行います。

現在の当社のパート比率は7割。今後の社会環境変化を見据えた戦略的な人材配置として、正社員とパートの比率を5:5にしていきたい考えです。

なお、デイの場合、新規開設店舗の立ち上がりは半年で60~65%の稼働を目標としています。既存店舗では目標稼働率87%、人件費割合は単価の45%に設定。なお、この人件費割合は厚生労働省資料「地域区分について」(下表参照)において地域係数とともに示されており、国が推奨する数値に近づければ利益が出ることになります。


図③地域区分について.jpg当社の現在の人件費割合は50~55%。国が本体報酬の引き下げや処遇改善を行う施策を進める中では難しい状況ですが、目標として維持していきます。こうした数値を意識することで、例えば稼働率87%を満たしているのに目標売上に到達しない店舗は「顧客単価が低い」と判断し、営業指導に入るなど対策ができます。

こうした数値はすべてKPIとして指標化し開示することで、一現場スタッフも意識するようになりました。


>>後編はこちら


編集:㈱高齢者住宅新聞社
制作年月:2022年12月


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PROFILEプロフィール

PROFILE

日下部竜太(くさかべ・りゅうた)

RARECREW(旧社名 いきいきらいふ) 代表取締役
一般社団法人日本デイサービス協会 理事
一般社団法人全国介護事業者連盟東京支部 幹事
●2002年、部品メーカーの研究開発職から転身し、介護の世界に足を踏み入れる。訪問介護、居宅介護支援、福祉用具貸与、通所介護の立ち上げから安定運営ノウハウの構築を担う。
入浴特化型短時間デイサービスモデルを全国に展開。業態開発から標準化マニュアル策定を得意とする。新卒採用にも力を入れ、「若手を鍛える」研修講師、ビジネスコーチとしての顔も持つ。

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